(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】配管ライニング装置、及び配管ライニング方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20240119BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2023182182
(22)【出願日】2023-10-24
【審査請求日】2023-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519370142
【氏名又は名称】MEIKOU建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】重光 明博
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-020987(JP,A)
【文献】特開2006-090397(JP,A)
【文献】特開平10-034749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0128413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内壁をライニング材で覆うことが可能な配管ライニング装置であって、
前記既設管内を自在に移動可能な移動車両と、
帯状の前記ライニング材を
巻回した状態で前記移動車両に搭載可能なライニング材収納部と、
前記ライニング材収納部から前記ライニング材を引出して前記既設管内壁に溶着可能な溶着部と、を備え、
前記移動車両は、駆動部を含み、前記既設管内を一方の方向又は他方の方向に自在に移動可能であることを特徴とする配管ライニング装置。
【請求項2】
前記溶着部は、超音波振動により前記ライニング材を
前記既設管内壁に溶着可能であることを特徴とする請求項1に記載の配管ライニング装置。
【請求項3】
前記移動車両
は、車輪押圧部により車輪を前記既設管の内壁に押し付け
て一方の方向又は他方の方向に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の配管ライニング装置。
【請求項4】
既設管内壁をライニング材で覆う配管ライニング方法であって、
前記既設管内を移動車両が一方
又は他方の方向に移動しながら、帯状の前記ライニング材を前記既設管内壁に溶着することを特徴とする配管ライニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の内壁に帯状ライニング材を溶着して更正する配管ライニング装置、及び配管ライニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路等の地中には、水道やガス等の配管が埋設されている。こうした既設管がひび割れや腐食を生じたり、老朽化したりした場合の対策の一つとして、その既設管を掘削することなく地中に埋設された状態で配管の内壁にライニング材を施し補修する工法が広く実用化されている。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる管状のライニング材を既設管に挿入するとともに、ライニング材の内部に加熱装置を牽引する。そして、加熱装置によりライニング材を加熱し繊維強化樹脂層を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2011-121282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、施工現場における装置の占有面積が大きく、例えば、配管系統が複雑に入り込んでいる施工現場では設置が困難な場合が発生するという問題があった。また、搬送や現場搬入コストも増加する傾向があるとともに、ライニング材の既設管への挿入においては距離が長くなって既設管との摩擦等の抵抗により挿入が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、簡便に既設管を更正することを可能にし、施工効率のよい配管ライニング装置、及び配管ライニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、既設管内壁をライニング材で覆うことが可能な配管ライニング装置であって、
前記既設管内を自在に移動可能な移動車両と、
帯状の前記ライニング材を巻回した状態で前記移動車両に搭載可能なライニング材収納部と、
前記ライニング材収納部から前記ライニング材を引出して前記既設管内壁に溶着可能な溶着部と、を備え、
前記移動車両は、駆動部を含み、前記既設管内を一方の方向又は他方の方向に自在に移動可能であることを特徴とする配管ライニング装置を提供するものである。
【0008】
この構成により、簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることができる。また、必要な箇所に自在に移動可能であることから、部分的な補修も可能である。
【0009】
配管ライニング装置であって、前記溶着部は、超音波振動により前記ライニング材を前記既設管内壁に溶着可能な構成としてもよい。
【0010】
この構成により、簡便な構成して効率よくライニング材を連続的に溶着することができる。
【0011】
配管ライニング装置であって、前記移動車両は、車輪押圧部により車輪を前記既設管の内壁に押し付けて一方の方向又は他方の方向に移動する構成としてもよい。
【0012】
この構成により、配管内の必要位置に素早く移動することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明は、既設管内壁をライニング材で覆う配管ライニング方法であって、
前記既設管内を移動車両が一方又は他方の方向に移動しながら、帯状の前記ライニング材を前記既設管内壁に螺旋状に溶着することを特徴とする配管ライニング方法を提供するものである。
【0014】
この構成により、簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配管ライニング装置、及び配管ライニング方法により、簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1における配管ライニング装置を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1における配管ライニング装置のA-A´断面図である。
【
図3】本発明の実施例1における配管ライニング装置のB-B´断面図である。
【
図4】本発明の実施例1における配管ライニング装置のC-C´断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における既設管内に配置された配管ライニング装置を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1における配管ライニング装置のA-A´断面図である。
図3は、本発明の実施例1における配管ライニング装置のB-B´断面図である。
図4は、本発明の実施例1における配管ライニング装置のC-C´断面図である。
【0018】
(配管ライニング装置)
本発明の実施例1における配管ライニング装置100は、既設管Pを掘削することなく地中に埋設された状態で配管の内壁にライニング材を施し補修する装置である。すなわち、搬入口から既設管P内に配管ライニング装置100を挿入し、補修箇所に自ら移動して搭載している帯状のライニング材を既設管Pの内壁に溶着するものである。
【0019】
配管ライニング装置100は、自ら移動するための駆動部1(1a、1b)、車輪2(2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h)、及び車輪押圧部9を備えた移動車両7を有している。駆動部1aは、配管ライニング装置100の一方の端部付近に設けられ、駆動部1bは、移動車両7の他方の端部付近に設けられている。一方の4つの車輪2a、2b、2c、2dは、駆動部1aにより駆動され、他方の4つの車輪2e、2f、2g、2hは、駆動部1bにより駆動される。また、車輪2(2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h)はそれぞれに設けた油圧シリンダからなる車輪押圧部9により既設管Pの内壁に押し付けられ、車輪2(2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h)が回転するように駆動されることで移動車両7は既設管P内を一方の方向又は他方の方向に自在に移動することができる。
【0020】
駆動部1(1a、1b)の駆動は、図示しないコントローラで駆動、停止や移動速度の調整を行う。コントローラは、駆動部1(1a、1b)に対して有線又は無線で電気的に接続される。
【0021】
配管ライニング装置100の移動車両7は、樹脂素材からなるライニング材Lを巻回した状態で搭載するライニング材収納部10を有している。そして、このライニング材Lを巻き出して引出しながら、既設管Pの内壁に後述のように超音波溶着することができる。
【0022】
ライニング材Lを既設管Pの内壁に溶着するために、移動車両7には、超音波発振部3(3a、3b、3c、3d)、ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)、及びロータリーホーン押圧部8(8a、8b、8c、8d)からなる溶着部11を搭載している。超音波発振部3(3a、3b、3c、3d)は超音波振動を発振するとともに、ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)を回転させることができる。ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)は、超音波発振部3(3a、3b、3c、3d)が発振した超音波振動をライニング材L及び既設管P内壁に伝達する。
【0023】
ロータリーホーン押圧部8(8a、8b、8c、8d)が、ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)を油圧シリンダにより既設管Pの内壁に押しつけることで、ライニング材Lを既設管P内壁に溶着する。ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)は既設管P内壁の内周に沿って回転しながら伝達された超音波振動により巻きだされるライニング材Lの短手方向端部を連続的に既設管Pの内壁に溶着することができる。
【0024】
このとき、移動車両7が一方の方向又は他方の方向に移動することで、既設管Pの内壁に押し付けられたロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)によりライニング材Lを溶着後の隣接するライニング材Lに短手方向の端部を重ねて螺旋状に既設管Pの内壁に溶着することができる。このとき、移動車両7の移動速度は、ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)が既設管P内周を1回転する時間に一定の距離を一定の所定速度で移動するとライニング材Lを一定のピッチで螺旋状に溶着することができる。
【0025】
また、ロータリーホーン4a、4cが巻き出して引出されたライニング材Lの一方の短手方向端部付近に位置し、ロータリーホーン4b、4dが巻き出されたライニング材Lの他方の短手方向端部付近に位置することで、ライニング材Lの短手方向両端部を途切れなく既設管Pの内壁に溶着することができる。
【0026】
なお、実施例1においては、移動車両7が一定の所定速度で移動しながら、ロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)によりライニング材Lを螺旋状に既設管Pの内壁に溶着するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、移動車両7は移動せず停止した状態でライニング材Lを既設管Pの所定の内壁に溶着するようにしてもよい。
【0027】
また、実施例1においては、4つのロータリーホーンによりライニング材Lを既設管Pの内壁に溶着するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、2つか3つのロータリーホーンでライニング材Lを既設管Pの内壁に溶着するようにしてもよいし、5つ以上のロータリーホーンでライニング材Lを既設管Pの内壁に溶着するようにしてもよい。
【0028】
移動車両7には、切断刃5が設けられており、ライニング材Lを切断することができる。これにより、既設管P内壁の補修箇所のライニングを完了した際にライニング材Lを切断することができる。
【0029】
なお、実施例1においては、ライニング材Lを巻回した状態で移動車両7に搭載するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、折り畳んだ状態で移動車両7に搭載するように構成するようにしてもよい。いずれの場合もライニング材Lを引出して既設管Pの内壁に溶着すればよい。
【0030】
また、実施例1においては、ライニング材Lを樹脂素材からなるものとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ゴム素材からなるものとしてもよいし、ガラス素材からなるものとしてもよく、既設管Pの特徴に合わせて選択すればよい。
【0031】
(配管ライニング方法)
まず、搬入口から既設管P内にクレーン等を用いて、配管ライニング装置100を挿入する。そして、図示しないコントローラを操作して、車輪押圧部9の油圧シリンダを伸長させて車輪2(2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h)を既設管P内壁に押し付け、駆動部1(1a、1b)を駆動させる。そして、移動車両7を補修開始位置まで移動させ、ロータリーホーン押圧部8(8a、8b、8c、8d)の油圧シリンダを伸長させてロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)を既設管P内壁に押し付ける。次に、超音波発振部3(3a、3b、3c、3d)を発振させて超音波振動をロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)に伝達するとともに、移動車両7を一方の方向又は他方の方向に所定速度で移動させながら、ライニング材Lを引出してその短手方向両端を既設管P内壁に螺旋状に超音波で溶着する。
【0032】
このとき、ロータリーホーン4a、4cが巻き出して引出されたライニング材Lの一方の短手方向端部付近に位置し、ロータリーホーン4b、4dが巻き出されたライニング材Lの他方の短手方向端部付近に位置することで、ライニング材Lの短手方向両端部を既設管Pの内壁に溶着することができる。
【0033】
補修箇所の補修が完了したら、ライニング材Lを切断刃5で切断する。そして、移動車両7の移動を停止するとともに、超音波発振部3(3a、3b、3c、3d)の発振を止め、ロータリーホーン押圧部8(8a、8b、8c、8d)の油圧シリンダを収縮させてロータリーホーン4(4a、4b、4c、4d)を既設管Pの内壁から引き離す。
【0034】
そして、移動車両7を移動させて搬出口からクレーン等を用いて搬出することで、既設管Pの内壁の更正が完了する。
【0035】
なお、実施例1においては、移動車両7を移動させながらライニング材Lを螺旋状に既設管P内壁に溶着するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、移動車両7を移動させず停止させてライニング材Lを既設管Pの所定の内壁に溶着するようにしてもよい。
【0036】
このように、実施例1においては、既設管内壁をライニング材で覆うことが可能な配管ライニング装置であって、
前記既設管内を自在に移動可能な移動車両と、
帯状の前記ライニング材を前記移動車両に搭載可能なライニング材収納部と、
前記ライニング材収納部から前記ライニング材を引出して前記既設管内壁に溶着可能な溶着部と、
を備えたことを特徴とする配管ライニング装置により、簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることができる。
【0037】
また、既設管内壁をライニング材で覆う配管ライニング方法であって、
前記既設管内を移動車両が一方の方向に移動しながら、帯状の前記ライニング材を前記既設管内壁に螺旋状に溶着することを特徴とする配管ライニング方法により、簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明における配管ライニング装置、及び配管ライニング方法は、既設管の更正の分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1(1a、1b):駆動部
2(2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h):車輪
3(3a、3b、3c、3d):超音波発振部
4(4a、4b、4c、4d):ロータリーホーン
5:切断刃
6:カバー
7:移動車両
8(8a、8b、8c、8d):ロータリーホーン押圧部
9:車輪押圧部
10:ライニング材収納部
11:溶着部
100:配管ライニング装置
L:ライニング材
P:既設管
【要約】
【課題】簡便に既設管を更正することを可能にして施工効率を向上させることを課題とする。
【解決手段】既設管P内壁をライニング材Lで覆うことが可能な配管ライニング装置であって、前記既設管内を自在に移動可能な移動車両7と、帯状の前記ライニング材を前記移動車両に搭載可能なライニング材収納部10と、前記ライニング材収納部から前記ライニング材を引出して前記既設管内壁に溶着可能な溶着部11と、を備えたことを特徴とする配管ライニング装置100とした。
【選択図】
図1