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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】振れ止め装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0047 20190101AFI20240119BHJP
【FI】
F24F1/0047
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019089726
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186825
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218835(JP,A)
【文献】実開昭59-049820(JP,U)
【文献】特開2008-275204(JP,A)
【文献】特開2011-141013(JP,A)
【文献】特開平08-145461(JP,A)
【文献】特開2003-003485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井空間に吊り下げられた状態で支持される天井吊り下げ物の振れ止め装置であって、
前記天井吊り下げ物の第1の側面の上端部において前記天井吊り下げ物の上面に接合させた状態に配置され、前記第1の側面と所定の角度で前記第1の側面の両端部に繋がる一対の側面の上端部と係合する第1係合部と、前記第1の側面の上端部と係合する第2係合部とを有する第1連結部材と、
前記天井吊り下げ物の前記第1の側面の反対側に位置し、前記第1の側面と平行な第2の側面の上端部において前記天井吊り下げ物の上面に接合させた状態に配置され、前記第2の側面と所定の角度で前記第2の側面の両端部に繋がる一対の側面の上端部と係合する第1係合部と、前記第2の側面の上端部と係合する第2係合部とを有する第2連結部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを相互に連結する連結部と、
を備え、
前記第1連結部材及び第2連結部材は、前記天井吊り下げ物の前記第1の側面及び前記第2の側面の下部近傍位置に設けられる複数の取付片のそれぞれに接続される一対のボルト部材を、前記天井吊り下げ物の上面位置において前記天井吊り下げ物に連結固定することを特徴とする振れ止め装置。
【請求項2】
前記一対のボルト部材は、天井空間において垂下状態に設置される吊りボルトであることを特徴とする請求項1に記載の振れ止め装置。
【請求項3】
天井空間において垂下状態に設置される吊りボルトを接続する防振部材を更に有し、
前記防振部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井空間に設置される空気調和機などの天井吊り下げ物を振れ止めするための振れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井空間に吊り下げられた状態に設置される空気調和機が知られている(例えば、特許文献1,2)。この空気調和機は、平面視略矩形状であり、互いに平行な二つの側面のそれぞれの下部近傍位置に、吊りボルトなどのボルト部材を連結するための一対の取付片を備えている。そのような空気調和機を天井空間に設置する場合、二つの側面のそれぞれに設けられている一対の取付片に対して、天井スラブなどの天井構造から垂下するボルト部材の下端部が連結される。すなわち、隠蔽式の空気調和機は、合計4本のボルト部材によって互いに平行な二つの側面の下部近傍が支持された状態で天井空間に設置される。
【0003】
図11は、空気調和機300を天井空間に設置した状態における従来の支持構造200を示す図である。図11に示すように、従来の支持構造200は、天井スラブなどの天井構造8から吊りボルトなどのボルト部材209が垂下しており、そのボルト部材209の下端部において空気調和機300を支持する構造である。空気調和機300は、側面の下部近傍位置にボルト部材209を連結するための一対の取付片311,311を備えており、その一対の取付片311,311にボルト部材209の下端部が連結される。これにより、空気調和機300は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される。
【0004】
空気調和機300がボルト部材209によって吊り下げられた状態に設置されると、空気調和機300を振れ止めするためのブレース213がボルト部材209に取り付けられる。ブレース213は、互いに隣り合う2本のボルト部材209どうしを連結するように斜め方向に配置され、一方のボルト部材209の上部と他方のボルト部材209の下部とを連結固定する。隣り合う2本のボルト部材209,209の間に2本のブレース213が交叉配置されることにより、ボルト部材209,209が固定され、空気調和機300を振れ止めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-71789号公報
【文献】特開2001-330272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の支持構造200は、ブレース213を空気調和機300の上面よりも高い位置でボルト部材209,209に連結する構造である。そのため、ボルト部材209,209の下部(図11に示す領域Rの部分)においてブレース213による振れ止め効果を得られない。その結果、地震発生時にはボルト部材209,209の下部が振動し、それに伴って空気調和機300も振動してしまうという問題がある。
【0007】
また、この種の空気調和機300は、装置本体に対して冷媒配管や送風ダクトなどが接続されるため、装置本体が振動すると、それらの接続部が破損してしまい、地震が収まった後にも正常稼働することができなくなるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、空気調和機などの天井吊り下げ物を支持するボルト部材を固定し、天井吊り下げ物を振れ止めする効果を従来よりも有効に発揮できるようにした振れ止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される天井吊り下げ物の振れ止め装置であって、前記天井吊り下げ物の第1の側面の上端部において前記天井吊り下げ物の上面に接合させた状態に配置され、前記第1の側面と所定の角度で前記第1の側面の両端部に繋がる一対の側面の上端部と係合する第1係合部と、前記第1の側面の上端部と係合する第2係合部とを有する第1連結部材と、前記天井吊り下げ物の前記第1の側面の反対側に位置し、前記第1の側面と平行な第2の側面の上端部において前記天井吊り下げ物の上面に接合させた状態に配置され、前記第2の側面と所定の角度で前記第2の側面の両端部に繋がる一対の側面の上端部と係合する第1係合部と、前記第2の側面の上端部と係合する第2係合部とを有する第2連結部材と、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを相互に連結する連結部と、を備え、前記第1連結部材及び第2連結部材は、前記天井吊り下げ物の前記第1の側面及び前記第2の側面の下部近傍位置に設けられる複数の取付片のそれぞれに接続される一対のボルト部材を、前記天井吊り下げ物の上面位置において前記天井吊り下げ物に連結固定することを特徴とする構成である。
【0012】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する振れ止め装置において、前記一対のボルト部材は、天井空間において垂下状態に設置される吊りボルトであることを特徴とする構成である。
【0013】
に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する振れ止め装置において、天井空間において垂下状態に設置される吊りボルトを接続する防振部材を更に有し、前記防振部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材に固定されることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天井吊り下げ物の取付片に接続される一対のボルト部材の上部を連結部材が天井吊り下げ物の上面位置において相互に連結して固定するため、ボルト部材の相対変位を抑えることができ、これによって天井吊り下げ物が大きく振動することを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態である振れ止め装置を含む天井吊り下げ物の支持構造を示す斜視図である。
図2】空気調和機に対して第1実施形態の振れ止め装置が取り付けられた状態を示す図である。
図3】第1実施形態の振れ止め装置を用いて空気調和機を天井空間に設置した状態の一例を示す図である。
図4】第1実施形態の振れ止め装置を用いて空気調和機を天井空間に設置した状態の別の例を示す図である。
図5】第2実施形態の振れ止め装置を含む空気調和機の支持構造を示す斜視図である。
図6】空気調和機に対して第2実施形態の振れ止め装置が取り付けられた状態を示す図である。
図7】第2実施形態の振れ止め装置を用いて空気調和機を天井空間に設置した状態の一例を示す図である。
図8】第2実施形態の振れ止め装置を用いて空気調和機を天井空間に設置した状態の別の例を示す図である。
図9】第3実施形態の振れ止め装置を含む空気調和機の支持構造を示す斜視図である。
図10】第3実施形態の振れ止め装置が空気調和機に取り付けられた状態を示す図である。
図11】従来の空気調和機の支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である振れ止め装置1を含む天井吊り下げ物の支持構造を示す斜視図である。図1に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、他の図においても共通する座標系である。本実施形態の振れ止め装置1は、天井吊り下げ物を天井空間に吊り下げた状態で支持するボルト部材9の下部を固定し、天井吊り下げ物を振れ止めする装置である。本実施形態では、天井吊り下げ物として、隠蔽式の空気調和機100を例示する。この空気調和機100は、天井スラブなどの天井構造と天井パネルとの間の天井空間に隠蔽された状態で設置される。
【0019】
空気調和機100は、内部に熱交換器が設けられた平面視略矩形状の箱形ユニットであり、その周囲に4つの側面110a,110b,110c,110dを有している。例えば、側面110aには、冷媒配管などを接続するための接続部が設けられている。この側面110aの両端下部の所定位置には、ボルト部材9の下端部を接続するための一対の取付片111,111が設けられている。また、側面110aの反対側に位置し、側面110aと平行な側面110bにも、同様に、両端下部の所定位置に一対の取付片111,111が設けられている。これら2つの側面110a,110bの両端には、残り2つの側面110c,110dが接続されている。そして側面110cには、熱交換された空気を吹き出すための吹出口118が設けられており、側面110dには、空気を内部の熱交換器に導くための吸気口(図示省略)が設けられる。つまり、この空気調和機100は、側面110dに設けられている吸気口から空気を吸い込み、側面110cに設けられている吹出口118から熱交換された空気を吹き出すように構成される。尚、側面110cの吹出口には、図示を省略する吹出ユニットを接続することが可能であり、また側面110dの吸気口には、図示を省略する吸気ユニットを接続することが可能である。
【0020】
この空気調和機100は、天井空間に垂下する4本のボルト部材9の下端部が、互いに平行な2つの側面110a,110bのそれぞれに設けられている一対の取付片111,111に接続されることにより、天井空間において吊り下げられた状態で支持される。これら一対の取付片111,111は、空気調和機100の側面110a,110bの下部において水平方向(Y方向)に所定間隔を隔てて設けられている。各取付片111は、例えばU字状に切り欠いた挿通部を有しており、その挿通部にボルト部材9を挿通することが可能である。そしてボルト部材9に2つのナット151,152を装着した状態でボルト部材9の下端部を取付片111の挿通部に挿通し、2つのナット151,152で取付片111を挟み込むことにより、ボルト部材9の下端部が取付片111に接続される。このように各取付片111にボルト部材9の下端部が連結されることにより、空気調和機100は、4本のボルト部材9によって支持される状態となる。
【0021】
本実施形態の振れ止め装置1は、上記のような空気調和機100の側面110a,110bに設けられた取付片111に連結されるボルト部材9を、取付片111の上方位置において空気調和機100に固定することにより、ボルト部材9の下部の振動を抑制し、空気調和機100を振れ止めする装置である。この振れ止め装置1は、例えば互いに対称な形状を有する2つの連結部材2,3によって構成される。それら2つの連結部材2,3のうち、一方が第1の連結部材2であり、他方が第2の連結部材3である。
【0022】
連結部材2は、空気調和機100の一の側面110aの上端部において空気調和機100の上面110eに沿うように配置され、側面110aの両端下部に設けられている一対の取付片111,111に接続されている2本のボルト部材9を、空気調和機100の上面位置において相互に連結し、それら2本のボルト部材9の相対変位を規制するように構成される。
【0023】
連結部材2は、一の側面110aと平行なY方向に延びる長尺部材であり、空気調和機100の上面110eに接合するように配置される長尺の平板部10と、その平板部10から上方に立設する縦板部14とを有している。平板部10の両端部には、空気調和機100の上面110eの端部(-X方向の端部)を超えて側面110aに設けられている一対の取付片111,111の上方位置まで延設される幅広のボルト保持部11,11が設けられる。
【0024】
一方、連結部材3は、連結部材2と対称の構造である。すなわち、連結部材3は、一の側面110bと平行なY方向に延びる長尺部材であり、空気調和機100の上面110eに接合するように配置される長尺の平板部10(図示省略)と、その平板部10から上方に立設する縦板部14とを有している。そして連結部材3の平板部10の両端にも、空気調和機100の上面110eの端部(+X方向の端部)を超えて側面110bに設けられている一対の取付片111,111の上方位置まで延設される幅広のボルト保持部11,11が設けられる。
【0025】
連結部材2,3のボルト保持部11,11には、取付片111,111に設けられている挿通部の鉛直線上となる位置にボルト部材9を取り付けるための取付部15が設けられている。図1では、取付部15がボルト部材9を挿通可能な孔として構成される場合を例示している。しかし、これに限られるものではなく、取付部15は、ボルト保持部11,11の側方端部まで開放させたU字状の切欠として形成されるものであっても構わない。例えば、取付部15をU字状の切欠として形成することにより、空気調和機100が既にボルト部材9によって支持されている状態であっても、連結部材2,3のボルト保持部11,11を後付けでボルト部材9に取り付けることができるという利点がある。
【0026】
また、連結部材2,3の両端部には、各側面110a,110bの両端部に繋がる一対の側面110c,110dの上端部と係合する第1係合部12,12が設けられる。例えば、第1係合部12,12は、平板部10の両端部を下方に90度折り曲げることにより形成される。これらの第1係合部12,12が空気調和機100の側面110c,110dの上端部と係合することにより、連結部材2,3は、空気調和機100に対してY方向に相対変位しない状態に設置可能である。
【0027】
さらに、連結部材2,3の平板部10の中央部には、各側面110a,110bの上端部と係合する第2係合部13が設けられる。例えば、第2係合部13は、平板部10の中央部の端から延設させた折曲片を下方に90度折り曲げることにより形成される。第2係合部13は、連結部材2,3が空気調和機100に対してX方向に相対変位しないように規制するためのものである。
【0028】
連結部材2,3は、第1係合部12,12と第2係合部13とが空気調和機100の形状及びサイズに適合する位置に設けられる。そのため、第1係合部12,12が2つの側面110c,110dの上端部に係合し、且つ、第2係合部13が各側面110a,110bの上端部に係合した状態に配置されることにより、連結部材2,3は、空気調和機100の上面110eに対して位置決めされた状態に配置される。
【0029】
また、連結部材2,3の縦板部14の両端近傍位置には、連結ボルト31,32(図2参照)を装着するための装着部16,16が設けられる。装着部16,16は、例えば連結ボルト31,32を挿通可能な孔として形成される。ただし、装着部16,16は、必ずしも孔に限られない。例えば、装着部16は、縦板部14の上端まで開放させたU字状の切欠として形成されるものであっても構わない。
【0030】
振れ止め装置1は、上記のようにして各連結部材2,3の平板部10が空気調和機100の上面110eに沿うように配置された状態でボルト部材9がボルト保持部11の取付部15に挿通され、ボルト保持部11を挟んでボルト部材9の上下に予め装着しておいた2つのナット21,22が締め付けられることにより、ボルト保持部11が取付片111よりも上方の位置でボルト部材9を保持した状態に固定される。このとき、連結部材2は、空気調和機100の側面110aに設けられている一対の取付片111,111に接続される2本のボルト部材9を、空気調和機100の上面位置において相互に連結し、それら2本のボルト部材9の相対変位を規制する状態に取り付けられる。また、連結部材3も同様であり、空気調和機100の側面110bに設けられている一対の取付片111,111に接続される2本のボルト部材9を、空気調和機100の上面位置において相互に連結し、それら2本のボルト部材9の相対変位を規制する状態に取り付けられる。
【0031】
図2は、空気調和機100に対して振れ止め装置1が取り付けられた状態を示す図である。上記のようにして連結部材2,3が空気調和機100の上面110eに配置されると、連結部材2,3の縦板部14に設けられた装着部16に対して連結ボルト31,32が装着される。すなわち、連結ボルト31,32が装着部16に挿通され、連結ボルト31,32の両端にナット33が締着されることにより、連結部材2,3が2本の連結ボルト31,32によって相互に連結された状態となる。これにより、2つの連結部材2,3が、空気調和機100の上面110eにおいてX方向に相対変位しないように固定される。
【0032】
このようにして振れ止め装置1は、2つの連結部材2,3が空気調和機100の上面110eにおいてX方向及びY方向の双方に相対変位しないように取り付けられる。すなわち、各連結部材2,3は、平板部10の両端部において側方に張り出したボルト保持部11の取付部15に挿通された2本のボルト部材9を、取付片111の上方位置(空気調和機100の上面110eと同じ高さ位置)で連結固定することにより、2本のボルト部材9がY方向において相対変位しないように保持している。また、各連結部材2,3は、連結ボルト31,32によって相互に連結されるため、相対変位しない。これにより、空気調和機100を支持する4本のボルト部材9は、振れ止め装置1によってX方向及びY方向のそれぞれにおいて相対変位しないように、空気調和機100の上面110eの高さ位置で固定されることになる。そのため、振れ止め装置1は、空気調和機100を支持する4本のボルト部材9が取付片111,111とボルト保持部11,11との間において振動しないように、4本のボルト部材9を保持することが可能であり、従来よりも優れた振れ止め効果を発揮するのである。
【0033】
上記のように振れ止め装置1が取り付けられる空気調和機100は、天井スラブなどの天井構造から吊り下げられた状態に支持される。図3は、振れ止め装置1を用いて空気調和機100を天井空間に設置した状態の一例を示す図である。図3に示す例では、天井スラブなどの天井構造8に比較的近い位置に空気調和機100が設置される状態を示している。この状態では、天井構造8の下面と空気調和機100の上面と間隔Hが比較的小さくなる。そのため、天井構造8から垂下するボルト部材9に対して斜め補強材となるブレースを配置することができない。しかしながら、本実施形態の振れ止め装置1を空気調和機100の上面110eに設置して4本のボルト部材9を空気調和機100の上面位置で空気調和機100に固定することにより、各ボルト部材9は、上端部と下端部との間の中間位置が空気調和機100に固定される。そのため、仮に地震が発生したとしても、振れ止め装置1は、4本のボルト部材9の下部が相対変位しないように保持することができ、空気調和機100の振動幅を小さく抑えることができる。したがって、本実施形態の振れ止め装置1は、ブレースを配置することができない場合であっても、空気調和機100の振れ止め効果を発揮する。
【0034】
図4は、振れ止め装置1を用いて空気調和機100を天井空間に設置した状態の別の例を示す図である。図4に示す例では、天井スラブなどの天井構造8から比較的離れた位置に空気調和機100が設置される状態を示している。この状態では、天井構造8の下面と空気調和機100の上面と間隔Hが比較的大きくなり、天井構造8から垂下するボルト部材9の上部に対して斜め補強材となるブレース61を配置することができる。そのため、ボルト部材9の上部と下部にブレース連結金具60を取り付け、互いに隣り合う2本のボルト部材9の間に2本のブレース61を交叉させた状態に配置し、各ブレース61の上部と下部とがブレース連結金具60に連結される。このようなブレース61を4本のボルト部材9を頂点とする4面に配置することにより、4本のボルト部材9は、その上部において相互に連結された状態となる。
【0035】
また、4本のボルト部材9の下部は、振れ止め装置1によって空気調和機100に固定される。そのため、仮に地震が発生したとしても、振れ止め装置1は、4本のボルト部材9の下部を相対変位しないように保持しているので空気調和機100の振動幅を小さく抑えることができる。つまり、本実施形態の振れ止め装置1は、ブレース61による振れ止め効果が得られないボルト部材9の下部を空気調和機100の上面に固定しているため、ボルト部材9の下部が振動することによる空気調和機100の振動を抑制することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、空気調和機100の取付片111,111に接続されるボルト部材9が、天井空間において垂下状態に設置される吊りボルトである場合を例示した。本実施形態では、振れ止め装置1に防振部材を設け、その防振部材を介して吊りボルトが空気調和機100を支持できるようにした振れ止め装置1について説明する。
【0037】
図5は、第2実施形態の振れ止め装置1を含む空気調和機100の支持構造を示す斜視図である。また、図6は、第2実施形態の振れ止め装置1が空気調和機100に取り付けられた状態を示す図である。この振れ止め装置1は、第1実施形態で説明した連結部材2,3のボルト保持部11,11に対して防振部材40が取り付けられている。防振部材40は、連結部材2,3のボルト保持部11,11に対して固定された状態に取り付けられる。防振部材40をボルト保持部11,11に固定する手法は、特に限られるものではなく、溶接による固定であっても良いし、ボルトやナットを用いた固定であっても良い。
【0038】
防振部材40は、金属製の矩形枠体41を有している。防振部材40は、その矩形枠体41の上板部に吊りボルトなどのボルト部材9を挿通可能な孔43を有し、その孔43の下面側にバネなどで構成される防振ダンパー42が取り付けられた構成である。また、矩形枠体41の下板部には、上板部の孔43と同軸となる位置にボルト部材50を挿通可能な孔44が設けられている。この孔44は、連結部材2,3のボルト保持部11,11に設けられている取付部15の孔と軸芯が一致する。そのため、連結部材2,3の下面側からボルト部材50の上端部を孔44に挿通することができる。
【0039】
この振れ止め装置1は、天井空間に垂下状態で設置される吊りボルトなどのボルト部材9の下端部を防振部材40の孔43から防振ダンパー42に差し込み、ボルト部材9の下端部にナット45を装着することでボルト部材9に支持された状態となる。例えば、天井吊り下げ物である空気調和機100は、その稼働中に機械振動を生じる。防振部材40は、そのような機械振動がボルト部材9及び天井構造に伝播しないようにするためのものである。
【0040】
一方、空気調和機100の側面110a,110bに設けられている取付片111,111には、ボルト部材50の下端部が2つのナット151,152によって取り付けられる。そのボルト部材50の上端部は、連結部材2,3の孔44に挿通され、ナット52が締着されることにより、連結部材2,3に固定される。つまり、ボルト部材50は、吊りボルトなどのボルト部材9からは物理的に分離された状態で空気調和機100を支持するように構成される。
【0041】
尚、振れ止め装置1のその他の構成は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0042】
したがって、本実施形態の振れ止め装置1は、第1実施形態と同様に、各連結部材2,3が各側面110a,110bの取付片111,111に接続される2本のボルト部材50を空気調和機100の上面110eで空気調和機100に固定してY方向の相対変位を抑えることができる。また、振れ止め装置1は、第1実施形態と同様に、各連結部材2,3は、連結ボルト31,32によって接続されるため、空気調和機100を支持する4本のボルト部材50がXY平面内において相対変位することを抑制することができる。それ故、本実施形態の振れ止め装置1は、従来よりも優れた振れ止め効果を発揮する。
【0043】
さらに本実施形態の振れ止め装置1は、天井空間において垂下する吊りボルトなどのボルト部材9の下端部に対して防振部材40を介して接続されるため、空気調和機100の稼働中に発生する機械振動を天井スラブなどの天井構造に伝播させない構造である。そのため、天井構造の上側のフロアに、機械振動が伝わることを抑制し、静寂なフロア空間を形成することができるという利点がある。
【0044】
図7は、本実施形態の振れ止め装置1を用いて空気調和機100を天井空間に設置した状態の一例を示す図である。図7に示す例では、天井スラブなどの天井構造8に比較的近い位置に空気調和機100が設置される状態を示している。この状態では、天井構造8の下面と空気調和機100の上面と間隔Hが比較的小さくなる。そのため、天井構造8から垂下するボルト部材9に対して斜め補強材となるブレースを配置することができない。しかしながら、本実施形態の振れ止め装置1を空気調和機100の上面110eに設置して4本のボルト部材50を空気調和機100の上面位置で空気調和機100に固定することにより、各ボルト部材50は、上端部と下端部とが空気調和機100に固定される。そのため、仮に地震が発生したとしても、振れ止め装置1は、4本のボルト部材50が相対変位しないように保持することができ、空気調和機100の振動幅を小さく抑えることができる。したがって、本実施形態の振れ止め装置1は、ブレースを配置することができない場合であっても、空気調和機100の振れ止め効果を発揮する。
【0045】
図8は、本実施形態の振れ止め装置1を用いて空気調和機100を天井空間に設置した状態の別の例を示す図である。図8に示す例では、天井スラブなどの天井構造8から比較的離れた位置に空気調和機100が設置される状態を示している。この状態では、天井構造8の下面と空気調和機100の上面と間隔Hが比較的大きくなり、天井構造8から垂下するボルト部材9の上部に対して斜め補強材となるブレース61を配置することができる。そのため、ボルト部材9の上部と下部にブレース連結金具60を取り付け、互いに隣り合う2本のボルト部材9の間に2本のブレース61を交叉させた状態に配置し、各ブレース61の上部と下部とがブレース連結金具60に連結される。このようなブレース61を4本のボルト部材9を頂点とする4面に配置することにより、4本のボルト部材9は相互に連結された状態となる。
【0046】
また、空気調和機100を支持する4本のボルト部材50は、振れ止め装置1によって空気調和機100に固定される。そのため、仮に地震が発生したとしても、振れ止め装置1は、4本のボルト部材50を相対変位しないように保持しているので空気調和機100の振動幅を小さく抑えることができる。つまり、本実施形態の振れ止め装置1は、ブレース61による振れ止め効果が得られないボルト部材50を空気調和機100に固定しているため、ボルト部材950が振動することによる空気調和機100の振動を抑制することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上記第1及び第2実施形態では、吊り下げ対象物として、隠蔽式の空気調和機100を例示した。これに対し、本実施形態では、吊り下げ対象物がパッケージエアコンなどのように天井パネル面と同じ高さに設置される空気調和機100である場合を例示する。
【0048】
図9は、第3実施形態の振れ止め装置1を含む空気調和機100の支持構造を示す斜視図である。また、図10は、第3実施形態の振れ止め装置1が空気調和機100に取り付けられた状態を示す図である。吊り下げ対象物である空気調和機100は、例えば図9に示すように平面視概略八角形の形状を有している。つまり、空気調和機100の周囲には、8つの側面が設けられている。そして吊りボルトなどのボルト部材9を接続するための取付片111は、それら8つの側面のうちの4つの側面120b,120c,120e,120fに設けられている。このうち、2つの側面120b,120cの間には、側面120aが位置しており、別の側面120e,120fの間には、側面120dが位置している。
【0049】
本実施形態の振れ止め装置1は、上記実施形態で説明したものと同様に、例えば互いに対称な形状を有する2つの連結部材2,3によって構成される。それら2つの連結部材2,3のうち、一方が第1の連結部材2であり、他方が第2の連結部材3である。
【0050】
連結部材2は、空気調和機100の一の側面120aの上端部において空気調和機100の上面110eに沿うように配置され、側面120aの両端部に対して所定の角度で繋がる一対の側面120b,120cの下部に設けられている取付片111,111に接続される2本のボルト部材9を、空気調和機100の上面120gと同じ高さ位置において相互に連結し、それら2本のボルト部材9の相対変位を規制するように構成される。
【0051】
連結部材2は、一の側面120aと平行なY方向に延びる長尺部材であり、空気調和機100の上面120gに接合するように配置される長尺の平板部10と、その平板部10から上方に立設する縦板部14とを有している。平板部10の両端部には、空気調和機100の上面110eの端部(-X方向の端部)を超えて側面120b,120cに設けられている取付片111,111の上方位置まで延設されるボルト保持部11,11が設けられる。
【0052】
一方、連結部材3は、連結部材2と対称の構造である。すなわち、連結部材3は、一の側面120dと平行なY方向に延びる長尺部材であり、空気調和機100の上面120gに接合するように配置される長尺の平板部10と、その平板部10から上方に立設する縦板部14とを有している。そして連結部材3の平板部10の両端にも、空気調和機100の上面110eの端部(+X方向の端部)を超えて側面120e,120fに設けられている取付片111,111の上方位置まで延設されるボルト保持部11,11が設けられる。
【0053】
連結部材2,3のボルト保持部11,11には、取付片111,111に設けられている挿通部の鉛直線上となる位置にボルト部材9を取り付けるための取付部15が設けられている。図9では、取付部15がボルト部材9を挿通可能な孔として構成される場合を例示している。しかし、これに限られるものではなく、取付部15は、ボルト保持部11,11の側方端部まで開放させたU字状の切欠として形成されるものであっても構わない。
【0054】
また、連結部材2の平板部10には、側面120aと側面120bとの接続位置及び側面120aと側面120cとの接続位置に対応する位置に第1係合部12と第2係合部13とが設けられる。第1係合部12は、側面120b,120cの上端部と係合するように配置される。また、第2係合部13は、側面120aの上端部と係合するように配置される。
【0055】
また、連結部材3の平板部10にも、同様に、第1係合部12と第2係合部13とが設けられる。連結部材3の第1係合部12は、側面120e,120fの上端部と係合するように配置され、第2係合部13は、側面120dの上端部と係合するように配置される。
【0056】
連結部材2,3に設けられる第1係合部12及び第2係合部13は、振れ止め装置1を空気調和機100の上面120gにおいて位置決めしておくためのものである。すなわち、第1係合部12及び第2係合部13が空気調和機100の側面の上端部に係合することにより、振れ止め装置1は、空気調和機100の上面120gにおいて位置決めされた状態で配置される。
【0057】
そして図10に示すように、連結部材2,3を空気調和機100の上面120gに配置し、2本の連結ボルト31,32を用いて連結部材2,3を連結することにより、2つの連結部材2,3は、空気調和機100の上面に固定される。これにより、振れ止め装置1は、空気調和機100を支持する4本のボルト部材9の下部を空気調和機100に固定することができ、従来よりも優れた振れ止め効果を発揮する。
【0058】
尚、本実施形態においても、第2実施形態で説明したようにボルト保持部11,11に対して防振部材40を配置した構成を採用しても良い。
【0059】
(変形例)
以上、本発明に関する幾つか実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0060】
例えば、上記実施形態では、振れ止め装置1が、主として、空気調和機100を取り付け対象とした場合を例示した。しかし、本発明の振れ止め装置1は、空気調和機100以外の天井吊り下げ物にも適用することが可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、2つの連結部材2,3が互いに対称な形状である場合を例示した。しかしながら、空気調和機100などの天井吊り下げ物は、必ずしも左右対称な形状でないことがある。そのため、第1の連結部材2を、天井吊り下げ物の一の側面の上端部に対応する形状とし、第2の連結部材3を、天井吊り下げ物の他の側面の上端部に対応する形状としても良い。つまり、2つの連結部材2,3は、必ずしも対称な形状であることを要しない。言い換えると、2つの連結部材2,3は、天井吊り下げ物の互いに対向する側面の上端部において、それぞれが天井吊り下げ物の上面に沿うように配置することができれば良い。この場合、天井吊り下げ物の上面に凹凸があれば、連結部材2,3をそのような凹凸に沿う形状としても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、平板部10に第1係合部12と第2係合部13とが設けられる場合を例示した。これら第1係合部12及び第2係合部13は、振れ止め装置1が空気調和機100に対して相対変位しないように位置決めするためのものである。しかし、平板部10が例えばビスなどの締着部材を用いて空気調和機100の上面に固定される場合は、第1係合部12及び第2係合部13を設けることは必須ではない。
【0063】
また、上記実施形態では、2つの連結部材2,3が別体として構成され、連結ボルト31,32を用いて連結される場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、振れ止め装置1は、上述した2つの連結部材2,3を予め一体化させた構造として実現しても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、天井吊り下げ物が設置される天井構造の一例として天井スラブを例示した。しかし、天井吊り下げ物が設置される天井構造は、必ずしも天井スラブに限られない。例えば、天井空間に鋼材などが組み付けられて構成される構造物などが存在する場合は、そのような構造物などに対して天井吊り下げ物が設置されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1…振れ止め装置、2,3…連結部材、9,50…ボルト部材、10…平板部、11…ボルト保持部、12…第1係合部、13…第2係合部、100…空気調和機(天井吊り下げ物)、111…取付片。
図1
図2
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図11