(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】マトリックスメタロプロテアーゼ-1アンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240119BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240119BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240119BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240119BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61K31/7125 ZNA
A61K48/00
A61P43/00 111
A61P17/00
A61Q19/08
A61K8/84
(21)【出願番号】P 2020564534
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 KR2019005994
(87)【国際公開番号】W WO2019221570
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0057352
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519043383
【氏名又は名称】オリパス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハン ソン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ギホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ミョンヒョ
(72)【発明者】
【氏名】オ ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ホ ジュン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン カン ウォン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0105044(US,A1)
【文献】特表2011-518770(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029517(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051175(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/069764(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/122610(WO,A1)
【文献】European Journal of Biochemistry,2001年,268,1888-1896
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
によって表されるペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩:
式中、
nが、
14であり;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であり;
S
1、S
2、・・・、S
n-1、S
n、T
1、T
2、・・・、T
n-1、およびT
nが、水素であり;
XおよびYが、独立して、水素(hydrido)、または置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニルを表し
、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニルは
から選択され;
Zが
、アミノを表し;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nが、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに
式II、式III、または式IV
で表される非天然核酸塩基から独立して選択され;かつ、
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nのうち少なくとも4つが、式II、式III、または式I
Vによって表される非天然核酸塩基から独立して選択され、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6が、水素であり;
L
1が、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
3-、-CH
2-O-(CH
2)
4-、または-CH
2-O-(CH
2)
5-を表し、かつ、
L
2およびL
3が、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、-(CH
2)
6-、-(CH
2)
7-、および-(CH
2)
8-から独立して選択される。
【請求項2】
以下に示されるペプチド核酸誘導体である、請求項
1に記載のペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩:
(N→C) Fethoc-TA(6)C-TCA(6)-CC(1O2)A(6)-TA(6)T-A(6)T-NH
2
ここで、
A、T、およびCが、それぞれアデニン、チミン、およびシトシンの天然核酸塩基を有するペプチド核酸モノマーであり;
C(1O2)およびA(6)が、それぞれ、式VIおよび式VII:
によって表される非天然核酸塩基を有するペプチド核酸モノマーであり;かつ、
「Fethoc-」が、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」の略語である。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための化粧品組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼ-1によってもたらされる皮膚の老化を改善するための、ヒトマトリックスメタロプロテアーゼ-1プレmRNAを相補的にターゲッティングするペプチド核酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
老化の徴候は皮膚で最も目立つため、皮膚の老化は相当な関心を集めている。皮膚の老化に対する予防や治療は、生活の質において非常に重要であるため、既に高齢の者だけではなく若年層も、関連する健康食品、化粧品、医薬品、医療用品等に関心を持っている。皮膚の老化には2つの主なプロセスがある。1つは、加齢に伴う内因性または自然老化であり、もう1つは、日光への曝露、喫煙、および栄養失調などの外部要因によって発生する外因性老化である。
【0003】
皮膚への紫外線照射曝露は、マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)の発現を促進し、真皮の主要な構造成分であるコラーゲンの分解促進を引き起こす。さらに、喫煙は皮膚にマトリックスメタロプロテアーゼ-1 mRNAを誘導し、これは皮膚への紫外線照射曝露と同じ結果を引き起こす[J. Cosmetic Dermatology vol 6, 40-50 (2007)(非特許文献1)]。
【0004】
コラーゲンは、皮膚、血管、骨、歯、筋肉等、様々な結合組織における細胞外空間の主要な構造タンパク質である。コラーゲンは、ほとんどの組織および細胞の構造を支持する役割を果たしているため、その分解と変形は皮膚の老化に大きく影響を及ぼし得る[J. Pathol. vol 211, 241-251 (2007)(非特許文献2)]。
【0005】
マトリックスメタロプロテアーゼは、線維芽細胞、ケラチノサイト等で分泌される酵素であり、細胞外基質(ECM)と基底膜(BM)のすべての種類を分解できる。MMP-1(間質性コラゲナーゼ)、MMP-2(ゼラチナーゼ)、MMP-3(ストロメリシン)、MMP-7(マトリリシン)、MMP-8(好中球コラゲナーゼ)、およびMMP-12(メタロエラスターゼ)等、26種以上のマトリックスメタロプロテアーゼが同定されている[J. Biol. Chem. vol 277, 451-454 (2002)(非特許文献3); J. Matrix. Biol. vol 15, 519-526 (1997)(非特許文献4)]。
【0006】
紫外線照射曝露や喫煙によって生成される活性酸素種が、マトリックスメタロプロテアーゼ-1の過剰発現の原因であると言われてきた。その意味で、ビタミンA(レチノール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、カロチノイド、フラボノイド、緑茶、セレニウム等の、抗酸化剤および抗酸化作用のある機能食品が皮膚の老化の治療のために開発されており、作用メカニズムについての研究が現在行われている[Int. J. Food Sci. Technol. vol 73, 989-996 (2005)(非特許文献5); Kor. J. Aesthet. Cosmetol. vol 11, 649-654 (2013)(非特許文献6); Int. J. Mol. Med. vol 38, 357-363 (2016)(非特許文献7)]。
【0007】
皮膚の老化におけるメタロプロテアーゼ-1の重要性を勘案すると、皮膚の老化状態を改善および防ぎ得る、メタロプロテアーゼ-1発現のメカニズムに基づいた医薬品または化粧品を開発することは非常に興味深く、必要である。
【0008】
プレmRNA:遺伝情報は、DNA(2-デオキシリボース核酸)上に保持されている。DNAは、転写されて核内でプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を生成する。哺乳動物プレmRNAは、通常エクソンとイントロンからなり、エクソンとイントロンは、下記に模式図的に提供されるように互いに相互連結される。エクソンおよびイントロンを下記の図に例示したようにナンバリングする。
【0009】
プレmRNAのスプライシング:プレmRNAは、下記の図において模式図的に要約される「スプライシング」と総称される、一連の複雑な反応によるイントロンの除去後にmRNAにプロセッシングされる[Ann. Rev. Biochem. 72(1), 291-336 (2003)(非特許文献8); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5), 386-398 (2005)(非特許文献9); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2), 108-121 (2014)(非特許文献10)]。
【0010】
スプライシングは、プレmRNAとスプライシングアダブター因子との「スプライソソームE複合体」(すなわち、初期スプライソソーム複合体)の形成によって開始される。「スプライソソームE複合体」において、U1はエクソンNとイントロンNの接合部に結合し、U2AF35はイントロンNとエクソン(N+1)の接合部に結合する。よって、エクソン/イントロンまたはイントロン/エクソンの接合部は、初期スプライソソーム複合体の形成に重要となる。「スプライソソームE複合体」は、U2と追加的に複合体を形成すると、「スプライソソームA複合体」へと変化する。「スプライソソームA複合体」は、イントロンを除去するまたは切り出す一連の複雑な反応を経て近接するエクソン同士を接合する。
【0011】
リボソームタンパク質合成:タンパク質は、DNA(2-デオキシリボース核酸)によってコードされる。DNAは、細胞刺激に応答してまたは自発的に転写され、核でプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を生成する。プレmRNAのイントロンは、酵素によって切り出されてmRNA(メッセンジャーリボ核酸)をもたらし、次いでmRNAは細胞質に移動する。細胞質において、リボソームと呼ばれる翻訳機構の複合体がmRNAに結合し、複合体はコードされた遺伝情報をmRNAに沿ってスキャンしながらタンパク質合成を行う[Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)(非特許文献11); Cancer Res. vol 48, 2659-2668 (1988)(非特許文献12)]。
【0012】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO):DNA、mRNA、およびプレmRNAを含む核酸に塩基配列特異的な様式で(すなわち相補的に)結合するオリゴヌクレオチドを、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と称する。
【0013】
例えば、ASOが細胞質でmRNAに強く結合する場合、ASOは、mRNAに沿ったリボソームタンパク質合成を阻害し得る。ASOは、そのターゲットタンパク質のリボソームタンパク質合成を阻害するために細胞質内に存在する必要がある。
【0014】
スプライシングのアンチセンス阻害:ASOが核でプレmRNAに強く結合する場合、ASOは、プレmRNAのmRNAへのスプライシングを阻害または調節することができる。ASOは、プレmRNAのmRNAへのスプライシングを阻害または調節するために、核内に存在する必要がある。そのようなスプライシングのアンチセンス阻害によって、ASOがターゲットにするエクソンを欠如したmRNAまたは複数のmRNAが生成される。そのような(複数の)mRNAは、「スプライスバリアント」と称され、完全長mRNAによってコードされるタンパク質よりもさらに小さいタンパク質をコードする。
【0015】
基本的に、「スプライソソームE複合体」の形成の阻害によってスプライシングを妨げることができる。ASOが(5’→3’)エクソン-イントロンの接合部、すなわち「5’スプライス部位」に強く結合する場合、ASOはプレmRNAと因子U1との複合体の形成を阻止し、よって「スプライソソームE複合体」の形成を阻止する。同様に、ASOが(5’→3’)イントロン-エクソンの接合部、すなわち「3’スプライス部位」に強く結合する場合、「スプライソソームE複合体」は形成され得ない。
【0016】
3’スプライス部位および5’スプライス部位を下記の図において模式図的に例示する。
【0017】
非天然オリゴヌクレオチド:DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼによる分解に感受性であり、その治療的有用性が制限される。今まで、多くのタイプの非天然の(自然発生でない)オリゴヌクレオチドが開発され、徹底的に研究されてきた[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)(非特許文献13)]。これらの一部は、DNAおよびRNAに比べて長期間の代謝安定性を示す。幾つかの典型的な非天然オリゴヌクレオチドの化学構造を下記に提供する。そのようなオリゴヌクレオチドは、予想通り、DNAまたはRNAのように相補性核酸に結合する。
【0018】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド:ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)は、モノマー1つ当たり、骨格のホスフェート酸素原子中の一つが硫黄原子で置換されたDNA類似体である。このような小さい構造変化によって、PTOがヌクレアーゼによる分解に対して比較的抵抗性になった[Ann. Rev. Biochem. vol 54, 367-402 (1985(非特許文献14))]。
【0019】
PTOおよびDNAの骨格における構造的類似性を反映して、これらは共に、大部分の哺乳動物の細胞型における細胞膜の透過が十分ではない。しかし、DNAの輸送体を豊富に発現する一部の細胞型については、DNAおよびPTOは良好な細胞透過を示す。全身投与されたPTOは、肝臓および腎臓に分布し易いことが知られている[Nucleic Acids Res. vol 25, 3290-3296 (1997)(非特許文献15)]。
【0020】
インビトロでPTOの細胞透過を促進するために、リポフェクションが広く用いられている。しかし、リポフェクションは、細胞膜を物理的に変化させ、細胞毒性を生じることから、長期間のインビボでの治療的使用には理想的ではないだろう。
【0021】
過去30年にわたり、アンチセンスPTOおよびPTOバリアントが、癌、免疫学的障害、代謝疾患等を治療するのに臨床的に評価されてきた[Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)(非特許文献16); Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)(非特許文献17)]。そのようなアンチセンス薬物候補のうち多数は、1つにはPTOの不十分な細胞透過のために、うまく開発できなかった。この不十分な細胞透過を克服するためには、PTOは治療的活性のために高用量で投与される必要がある。しかし、PTOは、血液凝固時間の増加、補体活性化、尿細管性腎症、クッパー細胞活性化、および、脾腫、リンパ過形成、単核細胞浸潤などの免疫刺激を含む、用量制限毒性と関連することが知られている[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)(非特許文献17)]。
【0022】
多くのアンチセンスPTOについて、肝臓や腎臓の寄与が大きな疾患において、十分な臨床活性を示すことが明らかになっている。ミポメルセンは、LDLコレステロール輸送に関与するタンパク質であるapoB-100の合成を阻害するPTO類似体である。ミポメルセンは、アテローム性動脈硬化患者において十分な臨床活性を表したが、これはミポメルセンが肝臓に選択的に分布することに起因する可能性が高い[Circulation vol 118(7), 743-753 (2008)(非特許文献18)]。ISIS-113715は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の合成を阻害するPTOアンチセンス類似体であり、II型糖尿病患者において治療活性を示すことが明らかになった[Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6, 331-336 (2004)(非特許文献19)]。
【0023】
ロックド核酸:ロックド核酸(LNA)においては、RNAまたはDNAに対する結合親和性が増加するようにRNAの骨格リボース環が構造的に制約を受けている。よって、LNAは高親和性DNAまたはRNA類似体と見なされ得る[Biochemistry vol 45, 7347-7355 (2006)(非特許文献20)]。
【0024】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド:ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)においては、DNAの骨格ホスフェートおよび2-デオキシリボースが、それぞれホスホロアミデートおよびモルホリンに置換されている[Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71, 575-586 (2006)(非特許文献21)]。DNA骨格は負に荷電しているのに対し、PMO骨格は荷電していない。よって、PMOとmRNAの間の結合は、これらの骨格間の静電気的反発がなく、DNAとmRNAの間の結合よりもさらに強い傾向がある。PMOはDNAと構造的に非常に相違するため、PMOはDNAまたはRNAを認識する肝輸送体によって認識されないと言える。それにも拘らず、PMOは細胞膜を容易に透過できない。
【0025】
ペプチド核酸:ペプチド核酸(PNA)は、単位骨格としてN-(2-アミノエチル)グリシンを有するポリペプチドであり、ニールセン博士(Dr.Nielsen)と同僚らによって発見された[Science vol 254, 1497-1500 (1991)(非特許文献22)]。PNAの化学構造および略記命名法を下記の図に例示する。DNAおよびRNAのように、PNAもまた、相補性核酸に選択的に結合する[Nature (London) vol 365, 566-568 (1992)(非特許文献23)]。相補性核酸への結合において、PNAのN末端はDNAまたはRNAの「5’端」と同様なものと見なされ、PNAのC末端はDNAまたはRNAの「3’端」と同様なものと見なされる。
【0026】
PMOのように、PNA骨格は荷電していない。よって、PNAとRNAの間の結合は、DNAとRNAの間の結合よりもさらに強い傾向がある。PNAは、化学構造においてDNAと著しく相違するため、PNAはDNAを認識する肝輸送体によって認識されないと言え、DNAまたはPTOと異なる組織分布プロファイルを示す。しかし、PNAもまた、哺乳動物細胞膜の透過が十分ではない[Adv. Drug Delivery Rev. vol 55, 267-280, 2003(非特許文献24)]。
【0027】
PNAの膜透過性を改善させるための修飾核酸塩基:PNAは、陽イオン性脂質またはその均等物を付着させた修飾核酸塩基の導入によって、哺乳動物細胞膜に高度に透過性となった。そのような修飾核酸塩基の化学構造を下記に提供する。シトシン、アデニン、およびグアニンのそのような修飾核酸塩基は、予想通り、それぞれグアニン、チミン、およびシトシンと相補的にハイブリダイゼーションすることが明らかになった[PCT出願番号PCT/KR2009/001256(特許文献1); EP2268607(特許文献2); US8680253(特許文献3)]。
【0028】
PNAへのそのような修飾核酸塩基の組み込みは、リポフェクションの状況と類似している。リポフェクションによって、ホスフェート骨格を有するオリゴヌクレオチド分子は、リポフェクトアミンなどの陽イオン性脂質分子で囲まれ、そのようなリポフェクトアミン/オリゴヌクレオチド複合体は、裸のオリゴヌクレオチド分子に比べてかなり容易に膜を透過する傾向がある。
【0029】
それらのPNA誘導体は、良好な膜透過性に加え、相補性核酸に対して極めて高い親和性を有することが明らかになった。例えば、11~13塩基のPNA誘導体上への4~5個の修飾核酸塩基の導入は、相補性DNAとの二本鎖形成において20℃以上のTm増加を容易にもたらした。そのようなPNA誘導体は、単一塩基ミスマッチにも非常に影響を受けやすい。単一塩基ミスマッチは、修飾塩基の種類とPNA配列に応じて、11~22℃のTm損失を招いた。
【0030】
低分子干渉RNA(siRNA):低分子干渉RNA(siRNA)は、20~25塩基対の二本鎖RNAを指す[Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4), 657-685 (2003)(非特許文献25)]。siRNAのアンチセンス鎖は、何らかの形でタンパク質と相互作用して「RNA誘導サイレンシング複合体」(RISC)を形成する。次いで、RISCはsiRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAのある部分に結合する。RISCと複合体を形成したmRNAは切断を受ける。よって、siRNAはそのターゲットmRNAの切断を触媒的に誘導し、結果的にmRNAによるタンパク質発現を阻害する。RISCは、そのターゲットmRNA内の完全相補的配列に常に結合するわけではなく、これによりsiRNA治療法のオフターゲット効果に関連する懸念が生じる。DNAまたはRNA骨格を有する他のクラスのオリゴヌクレオチドのように、siRNAは、細胞透過性が十分ではなく、よって良好な膜透過性を有するように適切に製剤化されるかまたは化学的に修飾されない限り、不十分なインビトロまたはインビボ治療活性を示す傾向がある。
【0031】
マトリックスメタロプロテアーゼ-1 siRNA:ヒトMMP-1のmRNA内の19塩基のRNA配列をターゲットにするMMP-1 siRNAは、100nMでのリポフェクション後にヒト軟骨肉腫においてMMP-1 mRNAおよびタンパク質の発現を阻害したことが報告された[J. Orthop. Res. vol 23, 1467-1474 (2005)(非特許文献26)]。この結果は、MMP-1が関連する癌転移についての研究および癌治療の開発に有用であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】PCT出願番号PCT/KR2009/001256
【文献】EP2268607
【文献】US8680253
【非特許文献】
【0033】
【文献】[J. Cosmetic Dermatology vol 6, 40-50 (2007)
【文献】J. Pathol. vol 211, 241-251 (2007)
【文献】J. Biol. Chem. vol 277, 451-454 (2002)
【文献】J. Matrix. Biol. vol 15, 519-526 (1997)
【文献】Int. J. Food Sci. Technol. vol 73, 989-996 (2005)
【文献】Kor. J. Aesthet. Cosmetol. vol 11, 649-654 (2013)
【文献】Int. J. Mol. Med. vol 38, 357-363 (2016)
【文献】Ann. Rev. Biochem. 72(1), 291-336 (2003)
【文献】Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5), 386-398 (2005)
【文献】Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2), 108-121 (2014)
【文献】Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)
【文献】Cancer Res. vol 48, 2659-2668 (1988)
【文献】Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)
【文献】Ann. Rev. Biochem. vol 54, 367-402 (1985
【文献】Nucleic Acids Res. vol 25, 3290-3296 (1997)
【文献】Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)
【文献】Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006)
【文献】Circulation vol 118(7), 743-753 (2008)
【文献】Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6, 331-336 (2004)
【文献】Biochemistry vol 45, 7347-7355 (2006)
【文献】Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71, 575-586 (2006)
【文献】Science vol 254, 1497-1500 (1991)
【文献】Nature (London) vol 365, 566-568 (1992)
【文献】Adv. Drug Delivery Rev. vol 55, 267-280, 2003
【文献】Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4), 657-685 (2003)
【文献】J. Orthop. Res. vol 23, 1467-1474 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
抗酸化剤および抗酸化作用のある機能食品が、限られた効果で皮膚の老化の治療のために開発されており、作用メカニズムについての研究が現在進行中である。MMP-1に関連するsiRNAは、in vitroでMMP-1のmRNAとタンパク質の発現を阻害することが報告されたが、siRNAは、製造するには高価すぎる上、使用者の良好な服薬遵守のために経皮投与によって皮膚へ送達される必要がある。したがって、メタロプロテアーゼ-1の皮膚の老化における意義を考慮すると、メタロプロテアーゼ-1の発現のメカニズムに基づいて、皮膚の老化の症状を改善および防止し得る医薬品および化粧品を開発することは非常に興味深く、必要なことである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、式Iによって表されるペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する:
式中、
nは、10と21の間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であるか、またはヒトMMP-1プレmRNAと1つもしくは2つのミスマッチを伴って部分的に相補的であり;
S
1、S
2、・・・、S
n-1、S
n、T
1、T
2、・・・、T
n-1、およびT
nは、独立して、水素(hydrido)、重水素(deuterido)、置換もしくは非置換のアルキル、または置換もしくは非置換のアリールラジカルを表し;
XおよびYは、独立して、水素、重水素、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2-C(=S)-]、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアルキルアシル、置換もしくは非置換のアリールアシル、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のアルキルホスホニル、または置換もしくは非置換のアリールホスホニルラジカルを表し;
Zは、水素、重水素、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアミノ、置換もしくは非置換のアルキル、または置換もしくは非置換のアリールラジカルを表し;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nは、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;かつ、
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nのうち少なくとも4つは、置換または非置換のアミノラジカルが核酸塩基部分に共有結合している非天然核酸塩基から独立して選択される。
【0036】
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNAにおいて「エクソン5」のスキッピング(skipping)を誘導し、「エクソン5」が欠如したヒトMMP-1 mRNAスプライスバリアントをもたらし、よって、ヒトMMP-1プレmRNAを転写する遺伝子の機能的活性を阻害するのに有用である。
【0037】
「nは10と21の間の整数である」との条件は、文字通り、nは、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20の整数の群から選択され得る整数であることを意味する。
【0038】
式IのPNA誘導体における天然または非天然核酸塩基の化学構造を、
図1a~1cに例示する。本発明の天然の(すなわち自然発生の)または非天然の(自然発生ではない)核酸塩基は、
図1a~1cに提供される核酸塩基を含むが、これらに限定されない。そのような非天然核酸塩基の提供は、許容可能な核酸塩基の多様性を例示するためのものであり、よって本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0039】
式IのPNA誘導体を説明するために採用された置換基を、
図2a~2eに例示する。
図2aは、置換または非置換のアルキルラジカルの例を提供する。置換または非置換のアルキルアシルおよび置換または非置換のアリールアシルラジカルを
図2bに例示する。
図2cは、置換または非置換のアルキルアミノ、置換または非置換のアリールアミノ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアルキルスルホニルまたはアリールスルホニル、および置換または非置換のアルキルホスホニルまたはアリールホスホニルラジカルについての例を表す。
図2dは、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノカルボニルまたはアリールアミノカルボニルラジカルについての例を提供する。
図2eには、置換または非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換または非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換または非置換のアルキルオキシチオカルボニル、および置換または非置換のアリールオキシチオカルボニルラジカルについての例が提供される。そのような例示的な置換基の提供は、許容可能な置換基の多様性を例示するためのものであり、よって本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。当業者は、N末端またはC末端の置換基よりもオリゴヌクレオチド配列が、ターゲットプレmRNAにオリゴヌクレオチドが配列特異的に結合するための最も重要な因子であることを容易に理解できる。
【0040】
式Iの化合物は、従来技術[PCT/KR2009/001256]において例示されたように、相補的なDNAに強く結合する。式IのPNA誘導体とその完全長相補的DNAまたはRNAとの二本鎖は、水性緩衝液中で確実に測定するには高すぎるTm値を有する。式IのPNA化合物は、より短い長さの相補的DNAとも高いTm値をもたらす。
【0041】
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNAの「エクソン5」の5’スプライス部位に相補的に結合する[NCBI Reference Sequence:NG_011740]。16塩基の配列
は、ヒトMMP-1プレmRNAの「エクソン5」と「イントロン5」の接合部にわたっており、「エクソン5」からの8塩基と「イントロン5」からの8塩基からなる。よって、この16塩基のプレmRNA配列は、[(5’→3’)CAUAUAUG┃gugaguau]として慣習的に示すことができ、ここでエクソン配列およびイントロン配列は、それぞれ「大」文字および「小」文字で示され、エクソン-イントロン接合部は、「┃」によって表される。プレmRNAについての慣習的な表示は、ヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」と「イントロン5」の接合部にわたっている、30塩基の配列
によってさらに例示される。
【0042】
式Iの化合物は、ヒトMMP-1遺伝子から転写されたヒトMMP-1プレmRNAのターゲット5’スプライス部位に強く結合して、「スプライソソーム初期複合体」の形成を妨害し、「エクソン5」が欠如した(エクソン5スキッピング)MMP-1 mRNAスプライスバリアントを生成する。
【0043】
PNA誘導体がMMP-1プレmRNA中のターゲット5’スプライス部位と1つまたは2つのミスマッチを有する場合であっても、強力なRNA親和性によって、式Iの化合物は、MMP-1「エクソン5」のスキッピングを誘導することが可能になる。同様に、式IのPNA誘導体は、ターゲットスプライス部位に1つまたは2つのSNP(単一ヌクレオチド多型)を有するMMP-1突然変異プレmRNAにおいても、MMP-1「エクソン5」のスキッピングを依然として誘導することができる。
【0044】
式Iの化合物は、良好な細胞透過性を有し、従来技術[PCT/KR2009/001256]に例示されたような「裸の」オリゴヌクレオチドとして細胞内に容易に送達され得る。よって、本発明の化合物は、MMP-1プレmRNAにおいて「エクソン5」のスキッピングを誘導し、「裸の」オリゴヌクレオチドとしての式Iの化合物で処理した細胞においてMMP-1「エクソン5」が欠如したMMP-1 mRNAスプライスバリアントをもたらす。式Iの化合物は、細胞においてターゲットエクソンのスキッピングを強力に誘導するために、細胞中への送達のための如何なる手段も製剤も必要としない。式Iの化合物は、フェムトモル濃度以下の、「裸の」オリゴヌクレオチドとしての本発明の化合物で処理した細胞においてMMP-1「エクソン5」のスキッピングを容易に誘導する。
【0045】
良好な細胞または膜透過性のおかげで、式IのPNA誘導体を「裸の」オリゴヌクレオチドとして局所的に投与して、皮膚においてMMP-1「エクソン5」のスキッピングを誘導できる。式Iの化合物は、意図された治療的または生物学的活性のために、ターゲット組織内への経皮送達を増加させるための製剤を必要としない。通常、式Iの化合物は水および共溶媒に溶解され、ピコモル濃度以下で局所または経皮投与されてターゲットの皮膚において所望の治療的または生物学的活性を発揮する。本発明の化合物は、局所的な治療活性を発揮するために、過度にまたは侵襲的に製剤化される必要はない。それでも、式IのPNA誘導体は、局所用クリームまたはローションとして化粧品成分または助剤と一緒に製剤化できる。そのような局所用の化粧品クリームまたはローションは、皮膚の老化の治療に有用であり得る。
【0046】
本発明の化合物は、1aMから1nM超までの範囲の治療的にまたは生物学的に有効な濃度で対象に局所投与することができ、この濃度は、投与スケジュール、対象の条件または状況等によって変わる。
【0047】
式IのPNA誘導体は、注射剤、点鼻薬、経皮吸収パッチなどを含むがこれらに限定されず、様々な製剤とすることができる。また、式IのPNA誘導体は治療的に有効な用量で対象に投与することができ、投与用量は、適応症、投与経路、投与スケジュール、対象の条件または状況等に応じて多様であり得る。
【0048】
式Iの化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、メタンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等を含むがこれらに限定されない薬学的に許容可能な酸または塩基と組み合わせて使用できる。
【0049】
式IのPNA誘導体またはその薬学的に許容可能な塩は、クエン酸、塩酸、酒石酸、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、炭酸水素ナトリウム、蒸留水、保存剤等を含むがこれらに限定されない薬学的に許容可能な助剤と組み合わせて、対象に投与できる。
【0050】
関心対象となるのは、式IのPNA誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
nは10と21の間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であるか、または、ヒトMMP-1プレmRNAと1つもしくは2つのミスマッチを伴って部分的に相補的であり;
S
1、S
2、・・・、S
n-1、S
n、T
1、T
2、・・・、T
n-1、およびT
nは、独立して、水素、重水素ラジカルを表し;
XおよびYは、独立して、水素、重水素、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2-C(=S)-]、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアルキルアシル、置換もしくは非置換のアリールアシル、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のアルキルホスホニル、または置換もしくは非置換のアリールホスホニルラジカルを表し;
Zは、水素、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、または置換もしくは非置換のアミノラジカルを表し;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nは、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;かつ、
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nのうち少なくとも4つは、式II、式III、または式IV:
によって表される非天然核酸塩基から独立して選択され、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、水素および置換または非置換のアルキルラジカルから独立して選択され;
L
1、L
2、およびL
3は、式V:
によって表される、核酸塩基部分に塩基性アミノ基を共有結合する共有結合性リンカーであり、
式中、
Q
1およびQ
mは、置換または非置換のメチレン(-CH
2-)ラジカルであり、Q
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、・・・、およびQ
m-1は、置換または非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、および置換または非置換のアミノラジカル[-N(H)-または-N(置換基)-]から独立して選択され;かつ、
mは、1と15の間の整数である。
【0051】
高い関心対象となるのは、式IのPNAオリゴマー、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
nは、11と16の間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であり;
S
1、S
2、・・・、S
n-1、S
n、T
1、T
2、・・・、T
n-1、およびT
nは、水素ラジカルであり;
XおよびYは、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキルアシル、または置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニルラジカルを表し;
Zは、置換または非置換のアミノラジカルを表し;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nは、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nのうち少なくとも5つは、式II、式III、または式IVによって表される非天然核酸塩基から独立して選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、水素ラジカルであり;
Q
1およびQ
mは、メチレンラジカルであり、Q
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、・・・、およびQ
m-1は、メチレンおよび酸素ラジカルから独立して選択され;かつ、
mは、1と9の間の整数である。
【0052】
より高い関心対象となるのは、式IのPNA誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
nは、11と16の間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物は,ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であり;
S
1、S
2、・・・、S
n-1、S
n、T
1、T
2、・・・、T
n-1、およびT
nは、水素ラジカルであり;
Xは、水素ラジカルであり;
Yは、置換または非置換のアルキルオキシカルボニルラジカルであり;
Zは、置換または非置換のアミノラジカルであり;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nは、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;
B
1、B
2、・・・、B
n-1、およびB
nのうち少なくとも5つは、式II、式III、または式IVによって表される非天然核酸塩基から独立して選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、水素ラジカルであり;
L
1は、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
3-、-CH
2-O-(CH
2)
4-、または-CH
2-O-(CH
2)
5-を表し;かつ、
L
2およびL
3は、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、-(CH
2)
6-、-(CH
2)
7-、および-(CH
2)
8-から独立して選択される。
【0053】
特に関心対象となるのは、以下に示される化合物(ASO 1、アンチセンスオリゴヌクレオチド1)である、式IのPNA誘導体またはその薬学的に許容可能な塩である:
(N→C) Fethoc-TA(6)C-TCA(6)-CC(1O2)A(6)-TA(6)T-A(6)T-NH
2
ここで、
A、T、およびCは、それぞれアデニン、チミン、およびシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)およびA(p)は、それぞれ、式VIおよび式VII:
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
式中、pおよびqは整数であり、ASO 1において、pは1または6であり、qは2であり;かつ、
「Fethoc-」は「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」の略語であり、「-NH
2」は非置換のアミノ基の略語である。
【0054】
図3は、A、G、T、C、C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、およびG(pOq)と略記されたPNAモノマーの化学構造をまとめて明瞭に提供する。従来技術[PCT/KR2009/001256]で論議されたように、C(pOq)は、「グアニン」に対してハイブリダイズするため、「修飾シトシン」PNAモノマーと見なされる。A(p)およびA(pOq)は、「チミン」に対してハイブリダイズするため、「修飾アデニン」PNAモノマーと捉えられる。
【0055】
そのようなPNA誘導体に使用される略語を例示するために、ASO 1の化学構造を
図4に提供する。
【0056】
ASO 1は、プレmRNAへの相補的な結合のためのDNA配列
と同等である。この14塩基のPNAは、ヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」と「イントロン5」の接合部にわたっている30塩基のRNA配列
内の「太字」かつ「下線」表示した14塩基の配列と、14塩基の相補的な重複を有する。
【0057】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、対象におけるヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療する方法を提供する。
【0058】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、対象における皮膚の老化を治療する方法を提供する。
【0059】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための薬学的組成物を提供する。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための化粧品組成物を提供する。
【0061】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための薬学的組成物を提供する。
【0062】
いくつかの態様において、本発明は、本発明のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための化粧品組成物を提供する。
[本発明1001]
式I:
によって表されるペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩:
式中、
nが、10と21の間の整数であり;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であるか、またはヒトMMP-1プレmRNAと1つもしくは2つのミスマッチを伴って部分的に相補的であり;
S
1
、S
2
、・・・、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、・・・、T
n-1
、およびT
n
が、独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のアルキル、または置換もしくは非置換のアリールラジカルを表し;
XおよびYが、独立して、水素(hydrido)、重水素(deuterido)、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2
-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2
-C(=S)-]、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアルキルアシル、置換もしくは非置換のアリールアシル、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のアルキルホスホニル、または置換もしくは非置換のアリールホスホニルラジカルを表し;
Zが、水素、重水素、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアミノ、置換もしくは非置換のアルキル、または置換もしくは非置換のアリールラジカルを表し;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
が、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;かつ、
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
のうち少なくとも4つが、核酸塩基部分に共有結合している置換または非置換のアミノラジカルを有する非天然核酸塩基から独立して選択される。
[本発明1002]
nが、10と21の間の整数であり;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であるか、またはヒトMMP-1プレmRNAと1つもしくは2つのミスマッチを伴って部分的に相補的であり;
S
1
、S
2
、・・・、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、・・・、T
n-1
、およびT
n
が、独立して、水素、重水素ラジカルを表し;
XおよびYが、独立して、水素、重水素、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2
-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2
-C(=S)-]、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換のアルキルアシル、置換もしくは非置換のアリールアシル、置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換もしくは非置換のアルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のアルキルホスホニル、または置換もしくは非置換のアリールホスホニルラジカルを表し;
Zが、水素、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルキルオキシ、置換もしくは非置換のアリールオキシ、または置換もしくは非置換のアミノラジカルを表し;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
が、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
のうち少なくとも4つが、式II、式III、または式IV:
によって表される非天然核酸塩基から独立して選択され、
式中、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、およびR
6
が、水素および置換または非置換のアルキルラジカルから独立して選択され;
L
1
、L
2
、およびL
3
が、式V:
によって表される、核酸塩基部分に塩基性アミノ基を共有結合する共有結合性リンカーであり、
式中、
Q
1
およびQ
m
が、置換または非置換のメチレン(-CH
2
-)ラジカルであり、Q
m
が、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2
、Q
3
、・・・、およびQ
m-1
が、置換または非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、および置換または非置換のアミノラジカル[-N(H)-または-N(置換基)-]から独立して選択され;かつ、
mが、1と15の間の整数である、
本発明1001のペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩。
[本発明1003]
nが、11と16の間の整数であり;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であり;
S
1
、S
2
、・・・、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、・・・、T
n-1
、およびT
n
が、水素ラジカルであり;
XおよびYが、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキルアシル、または置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニルラジカルを表し;
Zが、置換または非置換のアミノラジカルを表し;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
が、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
のうち少なくとも5つが、式II、式III、または式IVで表される非天然核酸塩基から独立して選択され;
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、およびR
6
が、水素ラジカルであり;
Q
1
およびQ
m
が、メチレンラジカルであり、Q
m
が、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2
、Q
3
、・・・、およびQ
m-1
が、メチレンおよび酸素ラジカルから独立して選択され;かつ、
mが、1と9の間の整数である、
本発明1002のペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩。
[本発明1004]
nが、11と16の間の整数であり;
式Iの化合物が、ヒトMMP-1プレmRNA中の16塩基のプレmRNA配列
と10塩基の相補的な重複を少なくとも有し;
式Iの化合物が,ヒトMMP-1プレmRNAと完全に相補的であり;
S
1
、S
2
、・・・、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、・・・、T
n-1
、およびT
n
が、水素ラジカルであり;
Xが、水素ラジカルであり;
Yが、置換または非置換のアルキルオキシカルボニルラジカルを表し;
Zが、置換もしくは非置換のアミノラジカルを表し;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
が、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含む天然核酸塩基、ならびに非天然核酸塩基から独立して選択され;
B
1
、B
2
、・・・、B
n-1
、およびB
n
のうち少なくとも5つが、式II、式III、または式IVによって表される非天然核酸塩基から独立して選択され;
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、およびR
6
が、水素ラジカルであり;
L
1
が、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
2
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
2
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
3
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
4
-、または-CH
2
-O-(CH
2
)
5
-を表し、ここで;かつ、
L
2
およびL
3
が、右端が塩基性アミノ基に直接結合している、-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
2
-、-(CH
2
)
3
-O-(CH
2
)
2
-、-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
3
-、-(CH
2
)
2
-、-(CH
2
)
3
-、-(CH
2
)
4
-、-(CH
2
)
5
-、-(CH
2
)
6
-、-(CH
2
)
7
-、および-(CH
2
)
8
-から独立して選択される、
本発明1003のペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩。
[本発明1005]
以下に示されるペプチド核酸誘導体である、本発明1004のペプチド核酸誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩:
(N→C) Fethoc-TA(6)C-TCA(6)-CC(1O2)A(6)-TA(6)T-A(6)T-NH
2
ここで、
A、T、およびCが、それぞれアデニン、チミン、およびシトシンの天然核酸塩基を有するペプチド核酸モノマーであり;
C(pOq)およびA(p)が、それぞれ、式VIおよび式VII:
によって表される非天然核酸塩基を有するペプチド核酸モノマーであり、
式中、
pおよびqが、整数であり、pが1または6であり、qが2であり;かつ、
「Fethoc-」が、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」の略語である。
[本発明1006]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩の対象への投与を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための方法。
[本発明1007]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩の対象への投与を含む、皮膚の老化を治療するための方法。
[本発明1008]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための薬学的組成物。
[本発明1009]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または状態を治療するための化粧品組成物。
[本発明1010]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための薬学的組成物。
[本発明1011]
本発明1001のペプチド核酸誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚の老化を治療するための化粧品組成物。
【発明の効果】
【0063】
式IのPNA誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を投与することにより、ヒトMMP-1遺伝子転写に関連する疾患または症状を治療することができる。
【0064】
式IのPNA誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を投与することにより、皮膚の老化に関連する疾患または症状を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1a】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る天然核酸塩基または非天然(修飾)核酸塩基の例である。
【
図1b】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る天然核酸塩基または非天然(修飾)核酸塩基の例である。
【
図1c】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る天然核酸塩基または非天然(修飾)核酸塩基の例である。
【
図2a】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る置換基の例である。
【
図2b】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る置換基の例である。
【
図2c】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る置換基の例である。
【
図2d】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る置換基の例である。
【
図2e】式Iのペプチド核酸誘導体のために選択し得る置換基の例である。
【
図3】天然または修飾核酸塩基を有するPNAモノマーの化学構造である。
【
図5】本発明のPNA誘導体の合成に使用されたFmoc-PNAモノマーの化学構造である。
【
図6a】HPLC精製前の「ASO 1」のC
18逆相HPLCクロマトグラムである。
【
図6b】HPLC精製後の「ASO 1」のC
18逆相HPLCクロマトグラムである。
【
図7】C
18逆相分取HPLCによって精製された「ASO 1」のESI-TOF質量スペクトルである。
【
図8】「ASO 1」による、HDFにおけるMMP-1 mRNA形成の阻害(リアルタイムqPCR)を示す。
【
図9】aおよびbは、「ASO 1」による、HDFにおけるMMP-1タンパク質発現の阻害(ウエスタンブロットおよびタンパク質発現レベル変化のグラフ)を示す。
【
図10】aおよびbは、「ASO 1」による、HDFにおけるコラーゲンタンパク質発現の増加(ウエスタンブロットおよびタンパク質発現レベル変化のグラフ)を示す。
【
図11】aおよびbは、「ASO 1」による、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現の阻害(ウエスタンブロットおよびタンパク質発現レベル変化のグラフ)を示す。
【
図12】aおよびbは、「ASO 1」による、細胞外液におけるコラーゲンタンパク質発現の増加(ウエスタンブロットおよびタンパク質発現レベル変化のグラフ)を示す。
【
図13】「ASO 1」による、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現の阻害(ELISA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
発明を実施するための最良の形態
PNAオリゴマーの調製のための一般的な方法
PNAオリゴマーを、軽微であるが然るべく改変した従来技術[US6,133,444;WO96/40685]に開示された方法によってFmoc化学に基づいた固相ペプチド合成(SPPS)によって合成した。この研究に使用された固体支持体は、PCASバイオマトリックスインコーポレイテッド(PCAS BioMatrix Inc.)(カナダ、ケベック)から購入したH-リンクアミド-ケムマトリックス(H-Rink Amide-ChemMatrix)だった。修飾された核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーを、従来技術[PCT/KR2009/001256]に記載の通りにまたはこれを軽微に改変して合成した。修飾核酸塩基を有するそのようなFmoc-PNAモノマー、および自然発生の核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーを使用して、本発明のPNA誘導体を合成した。PNAオリゴマーをC18逆相HPLC(0.1%TFAを有する水/アセトニトリルまたは水/メタノール)によって精製して、ESI/TOF/MSを含む質量分析法によって特性決定した。
【0067】
スキーム1は、本研究のSPPSにおいて採用された典型的なモノマー伸長サイクルを例示し、合成詳細を下記の通りに提供する。しかし、当業者にとっては、自動ペプチド合成機または手動ペプチド合成機上でそのようなSPPS反応を有効に実行する際に、明らかに起こりうる小さな変更が多数ある。スキーム1の各反応段階を以下に簡単に提供する。
【0068】
[DeFmoc] 樹脂を1.5mLの20%ピペリジン/DMF中で7分間ボルテックスし、DeFmoc溶液をろ過して除去した。樹脂を1.5mLのMC、1.5mLのDMF、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、および1.5mLのMCで連続してそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に生成された遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマーとのカップリングに即時供した。
【0069】
[Fmoc-PNAモノマーとのカップリング] 固体支持体上の遊離アミンを以下の通りにFmoc-PNAモノマーとカップリングさせた。0.04mmolのPNAモノマー、0.05mmolのHBTU、および10mmolのDIEAを1mL無水DMF中で2分間インキュベートし、遊離アミンを有する樹脂に加えた。樹脂溶液を1時間ボルテックスし、反応媒体をろ過して除去した。次いで、樹脂を1.5mLのMC、1.5mLのDMF、および1.5mLのMCで連続してそれぞれ30秒間洗浄した。本発明に使用された修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーの化学構造を
図6に提供する。
図6に提供した修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、例として見なされるべきであり、よって、本発明の範囲を制限するものと見なしてはならない。当業者は、式IのPNA誘導体を合成するためのFmoc-PNAモノマーにおける多数のバリエーションを容易に理解することができる。
【0070】
[キャッピング] カップリング反応の後、反応しなかった遊離アミンを1.5mLのキャッピング溶液(DMF中の5%無水酢酸および6%2,6-ルチジン)中で5分間振盪させることによりキャッピングした。次いで、キャッピング溶液をろ過して除去し、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、および1.5mLのMCで連続してそれぞれ30秒間洗浄した。
【0071】
[N末端における「Fethoc-」ラジカルの導入] 塩基性カップリング条件下で樹脂上の遊離アミンを「Fethoc-OSu」と反応させることにより、「Fethoc-」ラジカルをN末端に導入した。「Fethoc-OSu」[CAS No.179337-69-0、C
20H
17NO
5、MW 351.36]の化学構造は下記の通りに提供される。
【0072】
[樹脂からの切断] 樹脂に結合したPNAオリゴマーを、1.5mLの切断溶液(トリフルオロ酢酸中の2.5%トリイソプロピルシランおよび2.5%水)中で3時間振盪させることにより、樹脂から切断した。樹脂をろ過して除去し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉砕洗浄し、得られた沈殿物を、逆相HPLCによる精製用にろ過して収集した。
【0073】
[HPLC分析および精製] 樹脂からの切断に次いで、PNA誘導体の粗生成物を、0.1%のTFAを含有する水/アセトニトリルまたは水/メタノール(勾配方法)で溶離するC
18逆相HPLCで精製した。
図6aおよび6bは、それぞれHPLC精製前後の「ASO 1」についての例示的なHPLCクロマトグラムである。
【0074】
式IのPNA誘導体についての合成例
ヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」の5’スプライス部位を相補的にターゲッティングするために、本発明のPNA誘導体を、上記に提供した合成方法に従いまたはこれを軽微に改変して製造した。ヒトMMP-1プレmRNAをターゲッティングするそのようなPNA誘導体の提供は、式IのPNA誘導体を例示するためのものであり、これを本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0075】
(表1)ヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」の5’スプライス部位を相補的にターゲッティングするPNA誘導体と質量分析法による構造特性決定データ
a)精密質量の理論値、
b)精密質量の観測値。
【0076】
表1は、ヒトMMP-1遺伝子[NCBI参照配列:NG_011740]から判読されたヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」の5’スプライス部位を相補的にターゲッティングするPNA誘導体と、質量分析法による構造特性決定データを提供する。表1における本発明のペプチド核酸誘導体の提供は、式IのPNA誘導体を例示するためのものであり、これを本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0077】
「ASO 1」は、ヒトMMP-1プレmRNA中の「エクソン5」と「イントロン5」の接合部にわたっている30塩基のRNA配列
内の「太字」かつ「下線」で表示した14塩基の配列と、14塩基の相補的重複を有する。よって、「ASO 1」はヒトMMP-1プレmRNA内の「エクソン5」との7塩基の重複および「イントロン5」との7塩基の重複を有する。
【0078】
相補的DNAに対する「ASO 1」の結合親和性
Tm値を以下の通りにUV/Vis分光計において測定した。15mLのポリプロピレンファルコンチューブ内の4mLの水性緩衝液(pH7.16、10mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl)中の4μMのPNAオリゴマーおよび4μMの14塩基の相補的DNAの混合溶液を、1分間90℃でインキュベートし、周囲温度まで徐々に冷却した。次いで、溶液を、気密式蓋が備えられた3mL石英UVキュベットに移し、UV/可視分光光度計(Agilent 8453)において260nmでのTm測定に供した。キュベットの温度を1分当り0.5または1.0℃ずつ上げながら、260nmでの吸光度の変化を記録した。吸光度対温度曲線から、吸光度の変化率が最も大きい温度をPNAとDNAとの融解温度Tm値として読み取った。Tm測定のための14塩基の相補的DNAは、バイオニア(Bioneer)(www.bioneer.com、テジョン、大韓民国)から購入し、追加の精製をせずに使用した。
【0079】
「ASO 1」は、14塩基の相補的DNAとの二本鎖について72.67℃のTm値を示した。
【実施例】
【0080】
式IのPNA誘導体の生物学的活性についての実施例
リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT qPCR)等を利用して、本発明のPNA誘導体のヒト皮膚線維芽細胞(HDF)におけるin vitroのMMP-1アンチセンス活性を評価した。この生物学的実施例は、式IのPNA誘導体の生物学的プロファイルを例示するための一例として示されるものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0081】
実施例1.「ASO 1」による、HDFにおけるMMP-1 mRNA形成の阻害
以下に記載するとおり、「ASO 1」について、HDFにおけるMMP-1 mRNA形成をダウンレギュレートする能力をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0082】
[細胞培養およびASO処理] HDF細胞を、Fibroblast growth kit-low serum(ATCC PCS-201-041)と1%ストレプトマイシン/ペニシリンを添加したFibroblast Basal Medium(ATCC PCS-201-030)中に維持し、37℃、5% CO2の条件下で増殖させた。60mm培養皿中で24時間安定化させたHDF細胞(3×105個)を、0(陰性対照)および100aM~1μMの「ASO 1」と共に24時間インキュベートした。
【0083】
[RNA抽出およびcDNA合成] ASOで処理した細胞から、RNeasy Mini kit(Qiagen、Cat.No.714106)を使用して製造業者の使用説明書に従い、全RNAを抽出し、PrimeScript(商標)1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara、Cat.No.6110A)を使用して400ngのRNAからcDNAを調製した。PCRチューブ内の400ngのRNA、1μlのランダムヘキサマー、および1μlのdNTP(10mM)の混合物に、DEPC処理水を総量が10μlになるように加え、65℃で5分間反応させた。反応混合物に10μlのPrimeScript RTアーゼを添加し、30℃で10分間反応させた後、続いて42℃で60分間反応させることにより、cDNAを合成した。
【0084】
[定量的リアルタイムPCR] ヒトMMP-1 mRNAの発現レベルを評価するために、Taqmanプローブを利用して、合成されたcDNAでリアルタイムqPCRを行った。PCRチューブ内のcDNA、Taqmanプローブ、IQ supermix(BioRad、Cat.No.170-8862)、およびヌクレアーゼフリー水の混合液を、CFX96 Touch Real-Time system(BioRad)を利用して以下のとおり特定されるサイクル条件に従い、反応させた:95℃で3分間(初期変性)の後、95℃で10秒間(変性)、60℃で30秒間(アニーリング)、および72℃で30秒間(重合)の50サイクル。1サイクル終了する毎に蛍光強度を測定し、PCR結果を溶融曲線によって評価した。各遺伝子のしきい値サイクル数(Ct)をGAPDHのCtで標準化した後、Ctの変化を比較して分析した。
【0085】
[ASOによるMMP-1 mRNAの減少]
図8に示されるように、対照実験と比較して、減少したMMP-1 mRNAの量は、それぞれ、「ASO 1」の1μM処理では65%、「ASO 1」の100aM~10nM処理では10~15%であった。
【0086】
実施例2.「ASO 1」による、HDFにおけるMMP-1タンパク質発現の阻害
以下に記載するとおり、「ASO 1」について、HDFにおけるMMP-1タンパク質をダウンレギュレートする能力をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0087】
[ウエスタンブロッティング] 実施例1と同様にHDF細胞を増殖させ、48時間後、細胞を低温PBS(リン酸緩衝食塩水)で2回洗浄し、50mM Tris-Cl(pH7.5)、150mM NaCl、1% NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、および0.1% SDS、プロテアーゼ阻害剤中に溶解した。タンパク質は、BCA溶液(Thermo、Cat.No.23225)を用いて定量し、8% SDS-PAGEゲルによって精製した。タンパク質をPVDFメンブレン(ポリビニリデンフルオライドメンブレン)(Millipore、Cat.No.IPVH00010)に移した後、スキムミルク緩衝液で1時間ブロッキングした。メンブレンを、1次抗体としての抗MMP-1(SantaCruz、Cat.No.58377)および抗β-アクチン(Sigma、Cat.No.A3854)でプローブし、2次抗体としてヤギ抗マウス(CST、Cat.No.7076V)を使用した。化学発光シグナルを検出するためにSuperSignal(商標)West Pico(PierAce、USA)を利用し、Gel Docシステム(ATTO)を使用することによりシグナル強度を測定した。各バンドのウエスタンブロッティングの結果を基に、MMP-1の相対的な発現レベルをImage-Jプログラムで定量した。
【0088】
[ASOによる、MMP-1タンパク質発現の阻害]
図9aおよび9bに示されるとおり、減少したMMP-1タンパク質発現レベルの量は、対照実験と比較して、「ASO 1」の100aM~1μM処理で20~50%であった。よって、「ASO 1」は、HDFにおいてMMP-1タンパク質発現をダウンレギュレートする能力を示すことが証明された。
【0089】
実施例3.「ASO 1」による、HDFにおけるコラーゲンタンパク質発現の増加
以下に記載するとおり、「ASO 1」について、MMP-1タンパク質発現減少に関連してHDFにおいてI型コラーゲンタンパク質発現をアップレギュレートする能力をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0090】
[ウエスタンブロッティング] 実施例1と同様にHDF細胞を増殖させ、48時間後、細胞を低温PBS(リン酸緩衝食塩水)で2回洗浄し、50mM Tris-Cl(pH7.5)、150mM NaCl、1% NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、および0.1% SDS、プロテアーゼ阻害剤中に溶解した。タンパク質は、BCA溶液(Thermo、Cat.No.23225)を用いて定量し、8% SDS-PAGEゲルによって精製した。タンパク質をPVDFメンブレン(ポリビニリデンフルオライドメンブレン)(Millipore、Cat.No.IPVH00010)に移した後、スキムミルク緩衝液で1時間ブロッキングした。メンブレンを、1次抗体としての抗MMP-1(SantaCruz、Cat.No.58377)および抗β-アクチン(Sigma、Cat.No.A3854)でプローブし、2次抗体としてウサギ抗ヤギ(Santacruz、Cat.No.2768)を使用した。化学発光シグナルを検出するためにSuperSignal(商標)West Pico(PierAce、USA)を利用し、Gel Docシステム(ATTO)を使用することによりシグナル強度を測定した。各バンドのウエスタンブロッティングの結果を基に、MMP-1の相対的な発現レベルをImage-Jプログラムで定量した。
【0091】
[ASOによる、I型コラーゲンタンパク質発現の増加]
図10aおよび10bに示されるとおり、増加したI型コラーゲンタンパク質発現レベルの量は、対照実験と比較して、「ASO 1」の100aM~1μM処理で30%より多かった。よって、「ASO 1」によるMMP-1タンパク質発現の減少により、HDFにおいてI型コラーゲンタンパク質発現をアップレギュレートする能力を示すことが証明された。
【0092】
実施例4.「ASO 1」による、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現の阻害(ウエスタンブロッティング)
細胞において「ASO 1」によって誘導されるMMP-1タンパク質発現の減少は、結果的に細胞外に分泌されるMMP-1タンパク質の発現レベルに影響を及ぼし得る。その意味で以下に記載するとおり、「ASO 1」について、「ASO-1」処理の48時間後の細胞の培養液におけるMMP-1タンパク質発現をダウンレギュレートする能力をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0093】
[ウエスタンブロッティング] 実施例1と同様にHDF細胞を増殖させ、48時間後、回収した細胞培養液を8% SDS-PAGEゲルによって精製した。分離されたタンパク質をPVDFメンブレン(ポリビニリデンフルオライドメンブレン)(Millipore、Cat.No.IPVH00010)に移した後、スキムミルク緩衝液で1時間ブロッキングした。メンブレンを、1次抗体としての抗MMP-1(SantaCruz、Cat.No.58377)でプローブし、2次抗体としてヤギ抗マウス(CST、Cat.No.7076V)を使用した。化学発光シグナルを検出するためにSuperSignal(商標)West Pico(PierAce、USA)を利用し、Gel Docシステム(ATTO)を使用することによりシグナル強度を測定した。各バンドのウエスタンブロッティングの結果を基に、MMP-1の相対的な発現レベルをImage-Jプログラムで定量した。
【0094】
[ASOによるMMP-1タンパク質発現の阻害]
図11aおよび11bに示されるとおり、細胞外液における減少したMMP-1タンパク質発現レベルの量は、対照実験と比較して、「ASO 1」の100pM~1μM処理で10~60%であった。よって、「ASO-1」は、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現をダウンレギュレートする能力を示すことが証明された。
【0095】
実施例5.「ASO 1」による、細胞外液におけるコラーゲンタンパク質発現の増加
「ASO 1」について、細胞外液におけるI型コラーゲンタンパク質発現をアップレギュレートする能力をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0096】
[ウエスタンブロッティング] 実施例1と同様にHDF細胞を増殖させ、48時間後、回収した細胞培養液を8% SDS-PAGEゲルによって精製した。分離されたタンパク質をPVDFメンブレン(ポリビニリデンフルオライドメンブレン)(Millipore、Cat.No.IPVH00010)に移した後、スキムミルク緩衝液で1時間ブロッキングした。メンブレンを、1次抗体としての抗MMP-1(SantaCruz、Cat.No.58377)でプローブし、ウサギ抗ヤギ(Santacruz,Cat.No.2768)を2次抗体として使用した。化学発光シグナルを検出するためにSuperSignal(商標)West Pico(PierAce、USA)を利用し、Gel Docシステム(ATTO)を使用することによりシグナル強度を測定した。各バンドのウエスタンブロッティングの結果を基に、MMP-1の相対的な発現レベルをImage-Jプログラムで定量した。
【0097】
[ASOによるI型コラーゲンタンパク質発現の増加]
図12aおよび12Bに示されるとおり、増加したI型コラーゲンタンパク質発現レベルの量は、対照実験と比較して、それぞれ、「ASO 1」の1pM処理で20%、1
μM処理で80%であった。よって、HDFにおいて「ASO 1」によって誘導されたMMP-1タンパク質発現の減少により、細胞外液におけるI型コラーゲンタンパク質発現をアップレギュレートする能力を示すことが証明された。
【0098】
実施例6.「ASO 1」による、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現の阻害(ELISA)
細胞において「ASO 1」によって誘導されるMMP-1タンパク質発現の減少は、結果的に細胞外に分泌されるMMP-1タンパク質の発現レベルに影響を及ぼし得る。その意味で、以下に記載するとおり、「ASO 1」について、「ASO-1」処理の48時間後の細胞の培養液におけるMMP-1タンパク質発現をダウンレギュレートする能力を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により評価した。
【0099】
[ELISA] 実施例1と同様にHDF細胞を増殖させ、48時間後、回収した細胞培養液におけるMMP-1発現レベルを、ヒトMMP-1 ELISAキット(abcam、Cat.No.ab100603)を用いて製造業者の使用説明書に従って、吸光度により評価した。
【0100】
[ASOによるMMP-1タンパク質発現の阻害]
図13に示されるとおり、減少したMMP-1タンパク質発現レベルの量は、対照実験と比較して、それぞれ、「ASO-1」の100pM~10nM処理で15~30%、1
μM処理で50%であった。よって、「ASO-1」は、細胞外液におけるMMP-1タンパク質発現をダウンレギュレートする能力を示すことが証明された。
【0101】
実施例7.式Iの化合物を含有する局所用セラムの調製(w/w%)
式Iの化合物、例えば「ASO-1」を、対象に局所適用するためのセラムとして製剤化した。局所用セラムは以下に記載するとおり調製した。多くのバリエーションの局所用セラムが存在し得ることを考慮すると、この調製物は一例として見なされるべきものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【0102】
パートAとパートBの混合物質を25℃で、それぞれ別のビーカー中で溶解した。パートAとパートBを混合して、3,600rpmホモジナイザーを25℃で5分間使用することにより乳化した。乳化したパートCを50メッシュでろ過し、ろ液をパートAとパートBの混合物に加えた。得られた混合物を、3,600rpmホモジナイザーを80℃で5分間使用することにより乳化した。パートDをパートA、B、およびCの混合物に加えた後、得られた混合物を、2,500rpmホモジナイザーを25℃で3分間使用することにより乳化した。最後に均一分散と完全脱泡を確認する。
【0103】
実施例8.式Iの化合物を含有する局所用クリームの調製(w/w%)
式Iの化合物、例えば「ASO 1」を、対象に局所適用するためのクリームとして製剤化した。局所用クリームは以下に記載するとおり調製した。多くのバリエーションの局所用クリームが存在し得ることを考慮すると、この調製物は一例として見なされるべきものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【0104】
パートAの物質を80℃で、パートBの物質を85℃で、それぞれ別のビーカー中で溶解した。パートAとパートBを混合して、3,600rpmホモジナイザーを80℃で5分間使用することにより乳化した。パートCとパートDを、パートAとパートBの混合物に加えた後、得られた混合物を、3,600rpmホモジナイザーを80℃で5分間使用することにより乳化した。パートEをパートA、B、C、およびDの混合物に35℃で加えた後、得られた混合物を、3,600rpmホモジナイザーを35℃で3分間使用することにより乳化した。最後に25℃での均一分散と完全脱泡を確認する。
【配列表】