(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ウェーハ上のデバイスの保護処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
(21)【出願番号】P 2021123954
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】394002464
【氏名又は名称】日化精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】只野 剛
(72)【発明者】
【氏名】小沼 弘典
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 悠太
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140391(JP,A)
【文献】特開2016-115800(JP,A)
【文献】特開2003-188129(JP,A)
【文献】特開2011-155112(JP,A)
【文献】特開2003-273043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスを形成したウェーハの裏面を研削する薄化工程(バックグラインド)に入る前から、バックグラインド工程を経て、デバイスのダイシング工程が完了するまでの間、ウェーハ表面のデバイスを一貫してコート膜で保護してお
くウェーハ上のデバイスの保護処理方法
であって、
前記コート膜はアクリル樹脂系表面コート剤から形成されていて、
前記アクリル樹脂系表面コート剤は、分子量の異なる複数種のアクリル樹脂が配合されていて平均分子量6,000~8,000に調整されているアクリル樹脂系表面コート剤で、
前記コート膜の膜厚は1.50~7.50μmとされている
ウェーハ上のデバイスの保護処理方法。
【請求項2】
デバイスが形成されているウェーハの表面にコート剤によってコート膜を形成し、その上からバックグラインド用の表面保護テープ(BGテープ)を貼付し、その表面側を固定し裏面側を研削(バックグラインド)してウェーハを薄化し、ウェーハの裏面をウェーハフレームに張設されているダイシングテープに固定し、上記BGテープを剥がして、各デバイスに切り分ける個片化処理(ダイシング)が完了するまで上記デバイスの表面を一貫して覆っていたコート膜を洗浄除去するウェーハ上のデバイスの保護処理方法
であって、
前記コート剤はアクリル樹脂系表面コート剤であり、
前記アクリル樹脂系表面コート剤は、分子量の異なる複数種のアクリル樹脂が配合されていて平均分子量6,000~8,000に調整されているアクリル樹脂系表面コート剤で、
前記コート膜の膜厚は1.50~7.50μmとされている
ウェーハ上のデバイスの保護処理方法。
【請求項3】
上記コート
膜の膜厚は2.00~4.50μmとされている請求項1又は2に記載のデバイスの保護処理方法。
【請求項4】
前記コート
膜の鉛筆硬度がB~2Hである請求項
1~3のいずれかに記載のデバイスの保護処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に多数のデバイスが形成されているウェーハに対する処理方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンまたはサファイア等の化合物を基板とした、LSI、CMOS、パワーデバイスその他のパターン付きウェーハには、各デバイス(デバイスチップ)が縦横に走るストリートによって区画されて多数形成されている。
【0003】
こうした表面に多数のデバイスが形成されているウェーハは、ウェーハを出来るだけ薄くしてデバイスを格納した状態の厚みが薄くなるように、デバイス側の表面を粘着性を有する保護テープ(BGテープ)で覆って保護し、このBGテープ側を固定してからウェーハの裏面側を研削することによって、ウェーハの厚みを薄くする薄化(バックグラインド)処理が行われている。
【0004】
この薄化処理の終わったウェーハは、裏面をウェーハフレームに張設したダイシングテープに貼付し、上記表面のBGテープを剥がしてから、高速回転するブレードによりストリートに沿ってダイシングを行ってデバイスを個片化する。その上で、上記ダイシングテープに紫外線(UV)を照射してその粘着作用を弱め、個片化されたデバイスを出荷用のシートに移載し、純水洗浄を行い、デバイスの検査を行って次工程へと出荷している。
【0005】
上記従来の工程において、ウェーハの裏面の研削(バックグラインド)工程と、個片化(ダイシング)工程においてウェーハの表面に形成されているデバイスに研削片などの微粒子が付着してこれを汚染することが多く見られた。
【0006】
すなわち、ウェーハの裏面の研削工程においては、ウェーハの表面と、表面に形成したデバイスとの高低差によって、BGテープが充分にデバイスの表面を覆うことが出来ず、ウェーハ表面とデバイスの間に研削屑等が入り込んで、デバイスを汚染することがある。更には、BGテープの粘着剤も汚染の原因となる。
【0007】
また、デバイスの個片化工程においては、ウェーハと回転するダイシングブレードの間に加工処理液を流して切断箇所の冷却をしながら、かつ、切断時の摩擦抵抗を少なくしてダイシングを円滑に行うと共に、ダイシングによって生ずる切り屑を水(純水)によって洗い流すようにして除去しているのであるが、充分に除去することができずデバイスを汚染してしまうことがある。
【0008】
上記ウェーハをダイシングする場合、ウェーハは裏面側を粘着性のダイシングテープに貼り付け、さらにこのダイシングテープをウェーハフレームに固定してダイシング処理を行っている。
このダイシング処理を行う際に、ダイシングブレードはウェーハのストリートに沿って各デバイスに切断するのであるが、このダイシングブレードの刃先は、ウェーハを貼り付けているダイシングテープの粘着剤層に入り込むようにして切断が行われている。
【0009】
この時ダイシングブレードは、ウェーハのダイシング屑を生じると共に、ブレードの刃先はダイシングテープの粘着剤層の粘着剤を巻き上げて微細片として散乱するようになり、こうした微細片には粘着性が有るところから、デバイスの表面に付着してしまい、洗い流すことができないことから汚染の原因となっている。
【0010】
また、ウェーハの上に形成されたデバイスの表面は酸化膜によって覆われているが、上記ダイシングブレードによって各デバイスに切断する際に、ブレードによって酸化膜が部分的にひび割れて剥がされ、剥がされた酸化膜が飛散してデバイスの表面を傷付けて損傷することが見られる。
【0011】
特に、カメラに使用される撮像素子(イメージセンサー)においては、デバイス(チップ)の表面のレンズ(センサー画素部)に上記の如きダイシング屑や粘着剤の微細片が少しでも付着したり、画素部を傷付けたりすることは、素子としての性能を落し、不良率上昇の大きな原因となっているもので、こうした現象を避けるための更なる改良が望まれている。
【0012】
また、ダイシング処理が終わって個片化されたデバイスはダイシングテープから出荷用のシートに移載され、純水で洗浄されて次工程への出荷用の検査が行われているが、こうした工程中においても製造環境、作業員の存在に起因するところの、取り除くことが難しいダスト類が撮像素子などのデバイスの表面に付着することによって、性能を落とすことも無視できないものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の如きデバイスが表面に形成されたウェーハの裏面を研削する薄化(バックグラインド)工程の最初から、デバイスの個片化(ダイシング)工程においてウェーハから生じる研削屑やダイシング屑だけでなく、むしろこれよりも悪影響を及ぼすものと考えられるダイシングテープの粘着剤層から生じる粘着剤の微細片によるデバイスに対する汚染及び上記酸化膜片の飛散によるデバイスの損傷を効果的に防ぐと共に、一貫してデバイスに対する汚染を確実に防ぐようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
表面にデバイスを形成したウェーハの裏面を研削する薄化工程(バックグラインド)に入る前から、バックグラインド工程を経て、デバイスの個片化工程が完了するまでの間、一貫してウェーハ表面のデバイスをコート膜で保護しておき、ウェーハ上のデバイスを保護しながら処理するものである。
【0016】
また、デバイスが形成されているウェーハの表面にコート剤を塗布してコート膜を形成し、その上からバックグラインド用のBGテープを貼付し、その表面側を固定して裏面側を研削してウェーハを薄化する。次いで、ウェーハの裏面をウェーハフレームに張設されているダイシングテープに固定してからBGテープを剥がし、各デバイスに切り分ける個片化処理を行い、この工程が終わるまで上記各デバイスの表面を一貫して覆っていたコート膜を洗浄除去するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、最初は、表面にデバイスを形成したウェーハの裏面の薄化工程に入る前から、デバイスの個片化工程を終えて、次の工程に出荷する直前まで、デバイスの表面をコート膜で一貫して覆うようにしたので、ウェーハの表面のデバイスは処理工程中も何ら汚染されることがなく、デバイスとしての機能を確実に保持することができる。
【0018】
また、このコート膜によってダイシングブレードによって生じる削り屑や、ダイシングテープから生じる粘着剤の細片がデバイスの表面に付着すること、及び部分的に剥がされた酸化膜の飛散による損傷が防がれ、ダスト類の付着も防止される。
そして、このコート膜は洗浄によってきれいに剥がされるので、汚染の無いきれいな表面を有する個片化されたデバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の保護処理方法の実施例の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ウェーハの表面にデバイスを形成する工程を終えたもの(1)は、ウェーハの裏面を研削して、ウェーハの薄化が行われる。
こうしたウェーハの薄化は、デバイス全体としての厚みを薄くすることによって、デバイスを搭載する部位の厚みを薄くすることが出来ると共に、デバイスが占める容積を小さくすることによって、集積された搭載を可能とするために為されるものである。
【0021】
このウェーハの表面には、縦横に走るストリートを介して多数のデバイスが形成されているので、上記ウェーハの裏面の薄化工程に入る前に、ウェーハの表面をコート剤によって覆うようにする(2)。
【0022】
こうしたコート剤の基材としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、ロジン変性フェノール樹脂などのロジン類がある。また、(メタ)アクリル酸とその他共重合可能なモノマーとの共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル樹脂がある。
そして、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、その他、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0023】
上記コート剤の基材として好ましいものとしては、ロジン類、テルペン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリプロピレングリコールなどを必要に応じて適宜に混合したものがある。
【0024】
上記したコート剤の基材は、後記するようにアルカリ水溶液などのアルカリ洗浄液にて除去可能な樹脂が特に有効である。こうしたものとして、上記の樹脂の中では、例えば、ロジン類、アルカリ可溶性のアクリル樹脂、エポキシ樹脂などがあり、またそれらの混合物などがある。
【0025】
このコート剤の基材には、さらに、多糖類、脂肪酸、脂肪酸エステル、および界面活性剤などを添加することができる。これらのものは、各々単独で、又は適宜に混合しても使用することができる。こうした添加成分は、コート剤の塗膜形成性および洗浄除去性を向上させることができる。
【0026】
上記の添加成分としては、例えば、多糖類としてセルロース、デンプン、グリコーゲンなど、脂肪酸類としてカプロン酸、カプリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸など、脂肪酸エステルとしてカプロン酸メチルエステル、カプロン酸エチルエステル、カプリル酸メチルエステル、カプリル酸エチルエステルなど、界面活性剤としてアニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系などの界面活性剤がある。
【0027】
上記コート剤における平均ガラス転移点(Tg)は、特に限定されるものではないが、約50~80℃程度のものにするとよい。
上記したコート剤、添加剤などは、有機溶媒に適宜に配合し、公知の方法で均一に溶解分散して通例、約10~40質量%程度の溶液にして使用するとよい。
こうした有機溶媒としては、全体を均一状態に分散できるアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族類などが挙げられる。これらは単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
このコート剤は、デバイスの形成されたウェーハ表面に浸漬法、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で塗布される(2)。好ましくはスピンコート法により塗布し、約80℃~150℃で乾燥し、ウェーハ表面に均一的なコート膜を形成することができる。
このコート膜の膜厚は約1.50~7.50μm程度とすると良く、好ましくは約2.00~4.50μm程度にすると良い。
【0029】
上記の如く形成したコート膜の硬さは余りに硬いものではなく、鉛筆硬度においてB~2H程度になるようにするのが好ましい。
こうしたコート剤で被覆したウェーハの表面には、プラスチックシートの一面に粘着剤層を形成した公知の薄化(バックグラインド)工程用のBGテープを更に貼付する(3)。
【0030】
そして、ウェーハの表面を覆っているBGテープ側を固定して、ウェーハの背面側を研削(バックグラインド)(4)し、ウェーハの厚みを薄膜化する。
この時、ウェーハの研削片がBGテープとウェーハ表面の隙間から中に入ることがあっても、ウェーハ表面に形成されているデバイスはコート膜によって覆われているので、デバイスが汚染されることはない。
上記薄化処理が終わったら、その裏面をダイシングテープに貼り付けて固定し(5)、ダイシングフレームに取付ける。
【0031】
次に、上記BGテープを剥がし(6)、コート膜によって覆われている薄化されたウェーハを次の個片化工程(ダイシンング)(7)に送る。
この個片化工程は、固定されたウェーハに対して、ウェーハ表面に形成した各デバイスの間を隔離している縦横に走るストリートに沿って、高速回転するダイシングブレードによって各デバイスを個片化する。
【0032】
このダイシングは、切削水を供給しながら上記ダイシングブレードがストリートに沿って走り、ブレードが各デバイスに切り離す。このとき、ブレードによる切削によってウェーハから切削屑が出るが、それと共に切削の際にブレードの先端はダイシングテープの粘着剤層及びその下のダイシングテープ基材にまで食い込むようになり、これらを細片化して巻上げるようになる。
【0033】
こうした切削屑や細片化された粘着剤などは、切削水によって除去されるようになるが、充分に除去されず残されるものもある。ウェーハの切削屑は比較的に除去し易いが、粘着剤層から出た細片には粘着性が残っているので、ウェーハの表面に付着し易い性質がある。しかし、上記の如くウェーハの表面側のデバイスは、コート膜によって被覆されているので、デバイスを汚染させることなく保護することができる。
【0034】
また、デバイス表面に形成されている酸化膜も、上記したコート膜によって覆われているので、酸化膜がダイシングブレードによって部分的に剥がされ(デラミネーション)、剥がされた酸化膜片がデバイスの表面に飛散して損傷を与えることも効果的に抑制することができる。
【0035】
上記ダイシングを終えたら、上記各デバイスを覆っているコート剤を洗浄して除去するようにする(8)。
このコート剤によるコート膜を除去する洗浄剤としては、上記したようにアルカリ水溶液などのアルカリ洗浄液にて洗浄するのが特に有効である。
こうした洗浄剤として、カセイソーダ、カセイカリ、アンモニアなどのアルカリ剤からなるアルカリ水溶液がある。
また、アルカノールアミン、アミルアルコール、水溶性アミン類などの有機アルカリ、珪酸塩や炭酸塩などの無機アルカリ塩などの水溶性溶液を使用することができる。
【0036】
こうして、一貫してデバイスの表面を覆っていたコート膜を除去したら、ダイシングテープの粘着剤層に紫外線(UV)を照射して(9)、粘着剤層の粘着性を弱めるようにする。
上記粘着性の弱まったダイシングテープの粘着剤層の上に載っている個片化されたデバイスは、次工程への出荷用のシートの上に並べて載せるように移し替えるようにする(10)。
【0037】
出荷用のシートの上に移載してから、更に純水を使用して充分に洗浄し(11)、汚れの無い、綺麗なデバイスを得るようにする。
こうして清浄にされた各デバイスは、検査工程を通して(12)、規格に合格したものを次の工程へと出荷するようにするとよい。
上記したコート膜の除去は、場合によっては、個片化したデバイスを出荷用のシートの上に移載した後で行うようにすることもでき、更にその後で純水を使用して充分に洗浄するようにしてもよい。
【実施例】
【0038】
実施例及び比較例を作製するために、以下に記載するようなコート剤を用意した。
試料1:樹脂固形分が、分子量10000以上のアクリル樹脂を35%、分子量1000
0未満のアクリル樹脂を25%と、ロジンアルコールを32%と、可塑剤を8%とす
る平均分子量6000のコート剤。
【0039】
試料2:樹脂固形分が、分子量10000以上のアクリル樹脂を47%、分子量1000
0未満のアクリル樹脂を33%と、ロジンアルコールを10%と、可塑剤を10%と
する平均分子量8000のコート剤。
試料3:樹脂固形分が、分子量10000以上のアクリル樹脂を89%、分子量1000
0未満のアクリル樹脂を11%と、ロジンアルコールを0%と、可塑剤を0%とする
平均分子量20000のコート剤。
【0040】
試料4:樹脂固形分が、分子量10000以上のアクリル樹脂を74%、分子量1000
0未満のアクリル樹脂を9%と、ロジンアルコールを9%と、可塑剤を8%とする平
均分子量25000のコート剤。
試料5:樹脂固形分が、分子量10000以上のアクリル樹脂を89%、分子量1000
0未満のアクリル樹脂を11%と、ロジンアルコールを0%と、可塑剤を0%とする
平均分子量35000のコート剤。
【0041】
上記試料を使用して、実施例1~9を作製した。
(実施例1)
試料1に対して溶媒のアルコールを2倍量(容量)加えてコート剤を作成し、このコート剤をSi基板の上にデバイスとしてCMOSイメージセンサーを形成した8インチのウェーハの表面にスピンコートによって塗布し、膜厚が4.08μmのコート膜を形成したものである。
【0042】
(実施例2~9)
表1に示すようなコート剤を使用して、実施例1に準じて表1に示す膜厚のコート膜を形成した。
【0043】
(比較例1)
比較例1は、コート剤を使用せず、コート膜を形成してないものであり、他は実施例1と同様のものである。
【0044】
(試験)
実施例1~9,比較例1において、コート剤によるコート膜を形成したときの性能を見るために、以下の試験を行った。
【0045】
(デラミ発生比率の試験)
コート膜を形成して、上記した一連のウェーハの薄化処理、ダイシング処理を行い、洗浄剤を使用してコート膜を除去した後で、デバイス表面の酸化膜に剥がれが生じている(デラミネーション)状態を外観検査装置によって観察した。
コート膜を形成していない比較例1のデラミネーションの状態を100%として、実施例の状態を同様に数値化(%)して表示した。
【0046】
(評価基準)
数値(%)が小さい程、デラミネーションが生じている割合が少なくなっていることを表わしている。
(試験結果)
試験の結果は、表1に示すとおりである。
【0047】
(考察)
実施例1~9のものでは、デバイス表面の酸化膜のデラミネーションの発生比率が44~96%と比較例1における100%より少なくなっており、コート剤によるコート膜の形成が、デバイスの保護に有効に作用していることが判る。
【0048】
【符号の説明】
【0049】
1 デバイスを形成したウェーハ
2 コート剤塗布
3 BGテープ貼り
4 バックグラインド
6 BGテープ剥がし
7 ダイシング
8 コート剤除去