(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】心臓補助システム用軸流ポンプおよび心臓補助システム用軸流ポンプの製造法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/18 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
F04D29/18 101Z
(21)【出願番号】P 2021517526
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2019064157
(87)【国際公開番号】W WO2019229223
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102018208541.2
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520469457
【氏名又は名称】カルディオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KARDION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ストッツ, インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ボイエルレ, ニコ
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03127562(EP,A1)
【文献】特表昭61-500059(JP,A)
【文献】特表2016-532500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを通して血管に挿入するための心臓補助システムであって、
軸流ポンプを備え、前記軸流ポンプは、
それを通って延びる回転軸を有する管形状のポンプハウジング
、近位端、および遠位端と、
前記ポンプハウジング内に延在し且つ前記回転軸の周りに回転可能なポンプローターであって、前記ポンプローターはハブと、
少なくとも一つのブレード要素とを備え、前記
少なくとも一つのブレード要素は前記ハブの周りに少なくとも部分的にらせん状に巻かれ且つ前記
遠位端から前記近位端に向かう方向の前記ポンプハウジング内に血液を軸方向に引き込むように構成されているポンプローターと、を備え、
前記ポンプハウジングは、
前記ポンプローターの上流にあり且つ前記ポンプハウジング内に引き込まれた前記血液を受けるように構成され、前記
遠位端に近い入口開口部と、
前記ポンプハウジング内に引き込まれた前記血液を横方向に排出するように構成され
、前記近位端に近い少なくとも一つの周辺の出口開口部と、をさらに備え、
前記少なくとも一つのブレード要素は、反り曲
線を有し、
前記反り曲線は、前記回転軸と同軸の円筒の外表面における前記少なくとも一つのブレード要素の外形の中心線であり、前記円筒の前記外表面は前記回転軸に平行な第一の軸(z)および前記第一の軸(z)に垂直な第二の軸(Φ)を有し、
前記反り曲線の
ブレード角度(β)は、前記
第一の軸
(z)に沿って、前記
遠位端から始まり
前記近位端に向かって前記ブレード角度(β)が最大である変曲点に至る方向に増大するとともに、前記
ブレード角度(β)は前記変曲点の後に
前記回転軸に沿って減少し、
前記ブレード角度(β)は、前記反り曲線の接線と前記第二の軸(Φ)との間で測定される角度であり、
前記回転軸に対して放射状に位置し且つ前記少なくとも1つのブレード要素のブレード高さSHが最大ブレード高さSHMAXに対して25%≦SH/SHMAX≦100%と画定されている前記ポンプローターの領域において、前記反り曲
線の前記変曲点は、前記出口開口部の上流の縁部の領域に位置していることを特徴とする、心臓補助システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのブレード要素は、波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクションを含むことを特徴とする、請求項1に記載の心臓補助システム。
【請求項3】
前記波状ブレード湾曲を有する前記少なくとも1つのブレードセクションは、前記少なくとも一つの出口開口部に開放している前記ポンプハウジングのハウジングセクションに少なくとも部分的に位置している前記ポンプローターのセクションに構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項4】
前記波状ブレード湾曲は、前記ブレードセクションの径方向延長の方向に変化することを特徴とする、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項5】
前記波状ブレード湾曲は、前記回転軸からの距離が増大するにつれて増大することを特徴とする、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブレード要素は、前記波状ブレード湾曲を有する前記少なくとも1つのブレードセクションにおいて、前記回転軸に沿って変化する厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項7】
前記ハブは、前記心臓補助システムの遠位端に面することを特徴とする、請求項1に記載の心臓補助システム。
【請求項8】
前記ハブは、前記回転軸に沿って、前記入口開口部から始まり前記出口開口部に向かう方向に増大する直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の心臓補助システム。
【請求項9】
カテーテルを通して血管に挿入するための心臓補助システムであって、
軸流ポンプを備え、前記軸流ポンプは、
回転軸の周りに回転可能なポンプローターであって、前記ポンプローターはハブと、
少なくとも一つのブレード要素とを備え、前記
少なくとも一つのブレード要素は前記ハブの周りに少なくとも部分的にらせん状に巻かれ且つ前記ハブに向かう方向の前記ポンプ内に血液を軸方向に引き込むように構成されているポンプローターと、
前記ポンプ内に引き込まれた血液を横方向に排出するように構成されている少なくとも1つの周辺の出口開口部と、を備え、
前記少なくとも一つのブレード要素は、反り曲
線を有し、
前記反り曲線は、前記回転軸と同軸の円筒の外表面における前記少なくとも一つのブレード要素の外形の中心線であり、前記円筒の前記外表面は前記回転軸に平行な第一の軸(z)および前記第一の軸(z)に垂直な第二の軸(Φ)を有し、
前記反り曲線の
ブレード角度(β)は、前記
第一の軸
(z)に沿って、前記ローターの上流端から始まり前記出口開口部に向かって
前記ブレード角度(β)が最大である変曲点に至る方向に増大するとともに、前記
ブレード角度(β)は、前記変曲点の後に
前記回転軸に沿って減少し、
前記ブレード角度(β)は、前記反り曲線の接線と前記第二の軸(Φ)との間で測定される角度であり、
前記回転軸に対して放射状に位置し且つ前記少なくとも1つのブレード要素のブレード高さSHが最大ブレード高さSHMAXに対して25%≦SH/SHMAX≦100%と画定されている前記ポンプローターの領域において、前記反り曲
線の前記変曲点は、前記出口開口部の上流の縁部の領域に位置していることを特徴とする、心臓補助システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのブレード要素は、波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクションを含むことを特徴とする、請求項
9に記載の心臓補助システム。
【請求項11】
前記波状ブレード湾曲を有する前記少なくとも1つのブレードセクションは、前記少なくとも一つの出口開口部に開放している前記ポンプ
のセクションに少なくとも部分的に位置している前記ポンプローターのセクションに構成されていることを特徴とする、請求項
10に記載の心臓補助システム。
【請求項12】
前記波状ブレード湾曲は、前記ブレードセクションの径方向延長の方向に変化することを特徴とする、請求項
10に記載の心臓補助システム。
【請求項13】
前記波状ブレード湾曲は、前記回転軸からの距離が増大するにつれて増大することを特徴とする、請求項
10に記載の心臓補助システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのブレード要素は、前記波状ブレード湾曲を有する前記少なくとも1つのブレードセクションにおいて、前記回転軸に沿って変化する厚さを有することを特徴とする、請求項
10に記載の心臓補助システム。
【請求項15】
前記ハブは、前記心臓補助システムの遠位端に面することを特徴とする、請求項
9に記載の心臓補助システム。
【請求項16】
前記ハブは、前記回転軸に沿って、前記ローターの上流端から前記出口開口部に向かう方向に増大する直径を有することを特徴とする、請求項
9に記載の心臓補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓補助システム用軸流ポンプ、および心臓補助システム用軸流ポンプを製造するための方法に関する。本発明はさらに、心臓補助システム用軸流ポンプを製造するための装置、およびそのような製造方法を実行および/または制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全を有する患者の心血管補助、とりわけ、心臓ポンプ機能の一部または全部を引き継ぐシステムが使用される。これらのシステムは、略して心臓補助システムまたはVAD(補助人工心臓)とも称され、患者における短期心臓補助のための一時的なシステムおよび長期的な使用のための永久的システムに分類され得る。このようなシステムの一つの構成要素は、通常、血液ポンプ、典型的には遠心ポンプ(ターボポンプ)であり、これは、内蔵された電気モーターによって駆動され、インペラによって必要な血流を産生する。ポンプは、異なる位置に移植され得る。ポンプは、例えば、侵襲性胸骨切開術によって外側から心臓に縫合され得、またはカテーテルによって低侵襲的様式で大動脈または心室内に配置され得る。後者の場合、ポンプの最大許容外径は、一般に10mmに制限され、そのため、軸流インペラを有する軸流ポンプの使用が望ましい。プロセスにおいて、輸送される血液は、大動脈に戻るために、円筒形ポンプハウジングの外周に配置された出口開口部を通して排出される。
【0003】
遠心ポンプでは、インペラの回転によって渦が流れに発生する。例えば、固定子としても知られる下流の固定ガイドホイールによって、渦を低減し得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、血液を効率的かつ穏やかに輸送できる心臓補助システム用の軸流ポンプを提供することである。この目的は、請求項1および請求項14に規定する軸流ポンプ、および請求項15に規定する製造方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に規定される。
【0005】
心臓補助システム用のこのような軸流ポンプ、心臓補助システム用のそのような軸流ポンプを製造する方法、前述の方法を使用する装置、およびそのような製造方法を実行および/または制御するためのコンピュータプログラムが、以下に記述される。
【0006】
本発明は、ポンプハウジング上の出口開口部に対するインペラの適切な位置と連動して、少なくとも部分的に波状に湾曲した心臓補助システムの軸流遠心ポンプ用のインペラ上のブレードを使用することにより、特に穏やかかつ効率的な流体輸送を達成できるという知識に基づく。
【0007】
インペラの設計の結果、血液損傷の低減によって効率が向上する。例えば、限られた設置スペースなどの特定の境界条件下では、固定されたガイドホイールなしで行うことは理にかなっているが、通常、それは付随したポンプ効率の低下をもたらす。インペラまたはそのブレードの設計を使用することおよびポンプハウジングに対してそれらを適切に配置することにより、今や、効率の低下を少なくとも部分的に補正することが可能である。また、これにより溶血による血液損傷も低減し得る。
【0008】
本発明による軸流ポンプは、特に、以下の特徴を有し得る。
血管内に配置するためのポンプハウジング、および回転軸の周りを回転できるようにポンプハウジング内に取り付けられまたは取り付けられ得、かつ、ハブを有し、回転軸の方向に輸送媒体を輸送するためのハブの周りで少なくとも部分的にらせん状に巻かれた少なくとも一つのブレード要素からなり、ブレード要素が、波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクションを含む、ポンプローターを含む。
【0009】
軸流ポンプは、輸送媒体を軸方向に吸引するための内蔵型電気モーターを有する遠心ポンプであると理解され得る。吸引された輸送媒体は、例えば、径方向または対角方向に、ポンプハウジング内の一つまたは複数の横方向出口開口部を通して排出され得る。心臓補助システムは、特に、カテーテルによって低侵襲的様式で大動脈または心室内に配置され得るチューブまたはホース状のポンプ装置であると理解され得る。心臓補助システムは、例えば、10~15mmの最大外径を有し得る。ポンプハウジングは、ホースまたはチューブ状のハウジングであると理解され得る。血管は、(大)動脈または心室であると理解され得る。したがって、血液は輸送媒体であると理解され得る。ポンプローターは、流体が軸方向に流れる軸流ポンプのインペラであると理解され得る。ポンプローターは、例えば、ハブの周りで少なくとも部分的にらせん状に巻かれ得る、かつ波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのねじセクションを含み得る、二つ以上のブレード要素を備え得る。波状ブレード湾曲は、少なくとも一つの波腹および少なくとも一つの波底によって特徴付けられる、ブレード要素の反り曲線の起伏であると理解され得る。
【0010】
一実施形態によると、ブレード要素は、一つまたは複数の反り曲線によって説明または画成されてもよく、それぞれが少なくとも一つの変曲点、および/または局所的に一定もしくは可変な増厚を有し、特に、反り曲線の湾曲を表す接線の接線勾配は、最初に流れの方向で増加し、変曲点の後に再び減少して波状ブレード湾曲を生成する。結果として、反り曲線の方向に波状ブレード湾曲が生じ得る。
【0011】
本事例では、ブレード要素の反り曲線は、特に、ポンプローターの回転軸と同軸の円筒の外表面におけるブレード要素の外形の中心線であり、外形に嵌合するすべての円の中心、すなわち、外形全体にわたって上部と下部までの同じ(横断)距離を有する曲線である、と理解され得る。
【0012】
さらなる実施形態によると、ポンプハウジングの外表面は、輸送媒体の横方向の吐出のための少なくとも一つの出口開口部を有し得る。ポンプローターの設置状態では、ブレードセクションは、少なくとも部分的に出口開口部と反対であり得る。これにより、輸送媒体の径方向または対角方向の排出が効率的かつ穏やかに行われることが確実となる。
【0013】
変曲点は、出口開口部の領域、例えば、特に、例えば、出口開口部の開始時など、軸流ポンプが動作中、上流にある出口開口部の縁の領域に配置され得る。これにより、軸流ポンプの効率がさらに向上し得る。
【0014】
さらなる実施形態によると、ブレード要素は、ポンプローターの始点から開始してハブの周りでらせん状に巻かれ得、接線勾配は、ポンプローターの始点から開始して増加し、変曲点の後に再び減少する。こうした実施形態は、血液損傷を低減させることで、軸流ポンプの効率を特に良く向上させる。
【0015】
さらなる実施形態によると、波状ブレード湾曲は、ブレード要素の径方向延長の方向で変化し得る。径方向の延長は、回転軸から始まる径方向の延長であると理解され得る。結果として、ブレード湾曲は、複数の方向の異なる境界条件に最適に適合され得る。
【0016】
さらなる実施形態によると、波状ブレード湾曲は、回転軸からの距離が増大するにつれて拡大し得る。これにより、軸流ポンプは可能な限り最大の効率を達成し得る。
【0017】
これはまた、ハブが流れの方向に増大する直径を有する場合、有利である。これは、回転軸に対して、径方向または対角方向の輸送媒体の穏やかな排出を支持する。
【0018】
本明細書に提示されるアプローチはまた、心臓補助システムの軸流ポンプを製造する方法を生み出し、この方法は、
血管内に配置するためのポンプハウジングを形成する工程と、
ハブおよび、輸送媒体を輸送するためのハブの周りで少なくとも部分的にらせん状に巻かれた少なくとも一つのブレード要素からなり、ブレード要素が波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクションを含む、ポンプローターを形成する工程と、
ポンプローターが、回転軸の方向に輸送媒体を輸送するために、回転軸の周りを回転できるように取り付けられる、ポンプハウジング内にポンプローターを配置する工程と、を含む。
【0019】
この方法は、例えば、ソフトウェアまたはハードウェアにおいて、または、例えば、制御装置においてなど、ソフトウェアとハードウェアの混合形態において実装され得る。
【0020】
本明細書に提示したアプローチはさらに、対応する装置において、本明細書に提示した方法の変形の工程を実行、制御、および/または実装するように構成される装置を生み出す。本発明の根底をなす目的はまた、装置の形態の、本発明のこの設計変形によって、迅速かつ効率的に達成され得る。
【0021】
この目的のために、装置は、信号またはデータを処理するための少なくとも一つの演算器、信号またはデータを記憶するための少なくとも一つの記憶装置、センサもしくはセンサからのセンサ信号を入力するためまたはアクチュエータへデータもしくは制御信号を出力するための、アクチュエータに対する少なくとも一つのインターフェースおよび/または通信プロトコルに埋め込まれたデータを入力もしくは出力するための少なくとも一つの通信インターフェースを備え得る。演算器は、例えば、信号プロセッサ、マイクロコントローラなどであり得、それによって、記憶装置は、フラッシュメモリ、EPROM、または磁気記憶装置であり得る。通信インターフェースは、無線および/または有線方式でデータを入力もしくは出力するように構成され得、それによって、有線データを入力または出力できる通信インターフェースは、例えば、前述のデータを電気的にもしくは光学的に、対応するデータ伝送回線から入力またはデータ伝送回線に出力し得る。
【0022】
特に、プログラム製品またはプログラムがコンピュータもしくは装置上で実行されるとき、機械可読キャリアまたは、半導体メモリ、ハードドライブメモリもしくは光学メモリなどの記憶媒体上に記憶され得、かつ上述の実施形態の一つに従う方法の工程を実行、実装および/もしくは制御し得るプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムもまた有利である。
【0023】
本発明の有利な設計例は、図面に概略的に示され、以下の記述においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面は以下を示す。
【0025】
【
図1】
図1は、一設計例による軸流ポンプを有する心臓補助システムである。
【
図2】
図2は、ブレード要素を有し、ハブを有する、
図1の心臓補助システムの軸流ポンプの側面図である。
【
図4】
図4は、波状ブレード湾曲を有するブレードセクションを備えたブレード要素を有する
図1および
図2の軸流ポンプの斜視図であり、比較のために、波状湾曲部分を有しない軸流ポンプのための従来型ブレード要素の幾何学的形状を示す。
【
図5】
図5は、ハブの表面に対して異なるブレード高さを有する、
図1および
図2に示される軸流ポンプのブレード要素の図である。
【
図6】
図6は、正規化された経線座標m/mMaxに沿って、円周方向とブレード要素の反り曲線との間に形成されたブレード角度βの外形である。
【
図7】
図7は、一設計例による軸流ポンプを製造する方法のフロー図である。
【
図8】
図8は、
図7の方法を実行および/または制御するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい設計例の以下の説明では、様々な図に示される要素に対して、同じまたは類似の参照符号が使用され、それらは同様の効果を有し、それによってこれらの要素の反復した説明が省略される。
【0027】
図1は、一設計例による軸流ポンプ102を有する心臓補助システム100の概略図を示す。心臓補助システム100は、チューブまたはホース状構成を有する。心臓補助システム100は、カテーテルによって低侵襲的様式で大動脈または心室などの血管内に配置し得る軸流遠心ポンプシステムとして実現される。軸流ポンプ102は、回転軸302を有し、回転軸302を取り囲む心臓補助システム100のチューブ状セクションとして実現されるポンプハウジング104を含み、例えば、この場合は血液である、輸送媒体を横方向に排出するための反対側の三つの横方向の出口開口部106を含む。代替的な設計例によれば、ポンプハウジング104は、円周方向に分布した、ただ一つ、二つ、三つ、または三つより多い数の出口開口部106を含む。インペラとも称されるポンプローター108は、ポンプハウジング104内に回転可能に取り付けられ、
図1に示す軸流ポンプ102の組み立て状態において、前述のポンプローターは、いくつかのセクションにおいて出口開口部106の反対側にある。ポンプローター108は、出口開口部106を介して、血液を軸方向に引き込み、径方向または対角方向に排出するように機能する。
【0028】
可能な限り最大に効率的かつ穏やかな血液の輸送を確実にするために、ポンプローター108は、少なくとも一つのらせん状に巻かれたブレード要素110を備える。ブレード要素110の反り曲線は、出口開口部106の上流開始の領域に変曲点を含む。
【0029】
図2は、側面から見た
図1の軸流ポンプ102の概略図である。軸流ポンプ102のハブ200の周りにらせん状に巻かれたブレード要素110が示される。ハブ200は、ポンプローター108の内部コアを形成する。輸送媒体の流れ方向は、三つの矢印で概略的に示される。輸送媒体は、ポンプローター108の上流であり、導入開口部として機能するポンプハウジング104の前面入口開口部を通して引き込まれる。
【0030】
この設計例によれば、ブレード要素110は、ポンプローター108の上流端から全長にわたって、またはハブ200の少なくとも大部分にわたって延在する。ハブ200は、流れ方向に増大する直径を有し、その結果、ハブ200の構成が流れ方向に厚くなる。これにより、輸送媒体の径方向または対角方向の排出が容易になる。
【0031】
ブレード要素110は、ブレード要素110の反り曲線204の複数の湾曲によって画定される、波状ブレード湾曲を有するブレードセクション202を含む。波状ブレード湾曲は、本明細書では、少なくとも一つの符号の変化に関連するブレードセクション202の湾曲における変化であると理解されるべきである。
【0032】
図2から分かるように、ポンプローター108の設置状態では、ブレードセクション202の少なくとも一つの部分的セクションは、出口開口部106の反対にある。
【0033】
この設計例によれば、ブレードセクション202は、出口開口部106の流れに面する縁の領域206内に少なくとも部分的に配置される。ブレードセクション202は、凸状と凹状湾曲との間の移行を表す。
【0034】
一例として、
図2によるポンプローター108は、二つのブレード要素110を含み、それらはハブ200の周りに同じ方向に巻かれ、それぞれがブレードセクション202を含む。代替的な設計例によれば、ポンプローター108は、そのようなブレード要素110の三つ以上を用いて実現される。
【0035】
図3は、
図1および2のブレード要素110の反り曲線204の実施の概略図を示す。二対のブレード角度α1、β1およびα2、β2が、一例として描かれ、その各々が、反り曲線204の湾曲を表す接線300の接線勾配を表す。各接線300は、ポンプローターの回転軸302に平行なz軸およびz軸に垂直なφ軸により円筒座標系に引き込まれる。φ軸は、ポンプローターの円周方向を表す。
【0036】
図3から分かるように、接線勾配は、垂直矢印で示されるように、最初に流れ方向で増大し、その後再び減少する。この設計例によれば、接線勾配は、最初はブレード先端304からブレード要素110のブレード後縁306まで連続的に増大し、反り曲線204の変曲点310に達すると、再び減少する。点308は、ポンプハウジングの出口開口部を介して流れ排出の位置、より正確には軸方向の流れ排出の開始を示す。ここでの目的は、変曲点310および流れ排出の開始点308が近接していることを確実にすることである。
【0037】
すでに説明したように、一設計例によれば、ポンプローターは、少なくとも二つのブレード要素110によって実現される。輸送媒体は、ポンプローターに軸方向に送達されるか、またはポンプローターによって引き込まれ、ポンプハウジング内の一つまたは複数の出口開口部を通して径方向かつ対角方向に排出される。ブレード要素110は、ブレード表面または反り曲線204で形成された接線300と回転軸302またはz軸との間の角度αが軸方向に変化するように構成される。円周方向またはφ軸とブレード表面または反り曲線204との間の角度βは、反対の範囲に変化する。角度βは、少なくともポンプローターの最大直径の領域、すなわち、ブレード要素110のブレード先端の領域内のセクションにおいて、ポンプローターの開始、すなわち、ブレード先端304から、流れ方向が増大するように変化する。角度βは、特に、流れ排出開始領域308またはその近位において、少なくともポンプローターの最大直径の領域、すなわち、ブレード要素110のブレード先端のあるセクションにおいて、最大値をとる。
【0038】
図4は、側面から見た
図1および
図2の軸流ポンプ102の概略図である。ポンプハウジング104によって囲まれたポンプローター108の領域は、ポンプハウジング104が出口開口部を有さず、長方形400でマークされている。一つの出口開口部106を有するポンプハウジング104によって囲まれた領域内に延在する、ブレード要素110の波状ブレード湾曲が、はっきりと視認可能である。波状ブレード湾曲のない従来型ブレード要素402が、比較のためにブレード要素110の横に描かれる。
【0039】
図5は、ポンプローター108のハブの表面に対して異なるブレード高さを有する、
図1および
図2に示される軸流ポンプのブレード要素の図である。ハブ200の表面に対するブレード要素110の異なるブレード高さを表す五本の横線を示す。最大ブレード高さにおいて、第一の線501は0%を表し、第二の線502は25%を表し、第三の線503は50%を表し、第四の線504は75%を表し、第五の線505は100%を表す。
【0040】
図6は、正規化された経線座標m/mMaxに沿った
図3のブレード角度βの変化を示す図である。五つの曲線の補助により、ブレード要素のブレード高さ、すなわち、ハブからのその反り曲線の半径距離の関数として、ブレード角度βの変化が異なるブレードセクションに対して示される。
図5と同様に、第一の曲線601は、0パーセントのブレード高さでのハブの高さでの第一の線501に沿ったブレード要素のセクションに対応し、第二の曲線602は、25%のブレード高さでの第二の線502に沿ったブレード要素のセクションに対応し、第三の曲線603は、50%のブレード高さでの第三の線503に沿ったブレード要素のセクションに対応し、第四の曲線604は、75パーセントのブレード高さでの第四の線504に沿ったブレード要素のセクションに対応し、第五の曲線605は、100%のブレード高さでの、すなわち、ブレード先端最大インペラ径での、第五の線505に沿ったブレード要素のセクションに対応する。ポンプハウジングの出口開口部における流れ排出の開始は、ハッチングされた領域606でマークされる。
【0041】
一方、図は、ブレード角度β、したがって反り曲線の湾曲が、ハブからの半径距離に応じて、流れ方向に異なる変化を有することを示す。一方、考慮されるセクションのブレード角度βは、最初に流れの方向に増大し、頂点の後に再び減少することが分かるが、これは、この場合、それぞれの曲線またはブレード角度βの最大値を表す。経線座標に沿った頂点の位置は、ハブからの反り曲線の半径距離によって変化する。
【0042】
図6によると、ブレード高さ25~100パーセントの反転点は、ハッチング領域606の直前または直後のいずれかであり、回転軸302の方向に見たポンプハウジング104の入口開口部からの距離は、ポンプハウジング104の入口開口部に面するポンプハウジング104の出口開口部106の縁の距離に対応する。したがって、回転軸302上に位置する同様の座標原点に関して、ポンプハウジング104の入口開口部と、ハッチングされた領域606に対応するポンプローター108の領域とに面する出口開口部106の側面は、互いに対応する、すなわち、互いに等しい、または互いにわずかにずれた軸座標を有する。
【0043】
対照的に、0パーセントのブレード高さの反転点は、ハッチング領域606の前にはっきりと位置しており、ここでは、10~20パーセントの経線座標の領域にある。
【0044】
一設計例によれば、ポンプローターは、出口開口部を介した流れ排出開始の領域またはさらには流れ排出の近位に、しかし少なくともブレード先端の外側領域におけるブレード角度βにおいて頂点を有する。この領域では、したがって、凹面から凸面への反り曲線の湾曲の変化が存在する。ブレード要素のこの設計により、流れの渦が低減され、効率的な動作が可能になり、それに伴い、損傷の低減による穏やかな流体輸送が可能になる。
【0045】
図7は、
図1~6を参照して上述した軸流ポンプなどの、一設計例による軸流ポンプを製造するための方法700のフロー図を示す。工程710では、ポンプハウジングならびに、ハブおよびハブの周りにらせん状に巻かれたブレード要素を有するポンプローターが形成される。ブレード要素は、少なくとも波状ブレード湾曲を有するセクションにおいて構成される。さらなる工程720では、ポンプローターがポンプハウジング内に配置される。ポンプローターは、回転軸の方向に輸送媒体を輸送するために、回転軸の周りを回転できるように取り付けられる。
【0046】
図8は、
図7の方法700を実行および/または制御するための装置800の概略図を示す。装置800は、ポンプハウジングおよびポンプローターを形成するための第一ユニット810と、ポンプローターをポンプハウジング内に配置するための第二ユニット820と、を備える。
【0047】
設計例が第一の特徴と第二の特徴との間の「および/または」連結を含む場合、これは、一実施形態による設計例が第一の特徴と第二の特徴の両方を含み、別の実施形態によれば、第一の特徴のみまたは第二の特徴のみを含むことを意味すると理解されるべきである。
【0048】
要約すると、本発明の以下の特徴は、特に注目すべきである。心臓補助システム用の軸流ポンプ102は、血管内に配置するためのポンプハウジング104、ならびに回転軸の周りを回転できるようにポンプハウジング104に取り付けられた、または取り付け可能であり、ハブ200および回転軸302の方向に輸送媒体を輸送するためのハブ200の周りで少なくとも部分的にらせん状に巻かれた少なくとも一つのブレード要素110からなるポンプローター108を備える。ポンプ効率の向上のために、ブレード要素110は、波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクション202を含む。
【0049】
本発明は特に、以下の条項に明記される態様に関する。
(項目1)
心臓補助システム(100)用の軸流ポンプ(102)であって、軸流ポンプ(102)が、以下の特徴を有する。
血管内に配置するためのポンプハウジング(104)、ならびに回転軸(302)の周りで回転できるようにポンプハウジング(104)に取り付けられた、または取り付けられ得、ハブ(200)および回転軸(302)の方向に輸送媒体を輸送するためのハブ(200)の周りに少なくとも部分的にらせん状に巻かれた少なくとも一つのブレード要素(110)からなるポンプローター(108)を有し、
ブレード要素(110)が波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクション(202)を含む。
(項目2)
ブレード要素(110)が、それぞれ少なくとも一つの変曲点を有し、および/または局所的に厚さが可変となる、一つまたは複数の反り曲線(204)によって画定され、特に、反り曲線(204)の湾曲を表す接線(300)の接線勾配が、最初に流れ方向に増大し、変曲点の後に再び減少して波状ブレード湾曲を生じさせる、項目1に記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目3)
ポンプハウジング(104)の外表面が、輸送媒体の横方向の排出のための少なくとも一つの出口開口部(106)を含み、ポンプローター(108)の取付け状態では、ブレードセクション(202)は、出口開口部(106)に対して少なくとも部分的に反対である、項目1または2のいずれか一つに記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目4)
少なくとも一つの反り曲線の変曲点が、出口開口部(106)の領域に位置し、特に、出口開口部(106)の流れに面したまたは上流縁の領域(206)に位置する、項目2および3に記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目5)
ブレード要素(110)が、ポンプローター(108)の始点(304)から開始するハブ(200)の周りでらせん状に巻かれ、接線勾配が、ポンプローター(108)の始点(304)から開始して増大し、変曲点の後に再び減少する、項目2~4のいずれか一つに記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目6)
波状ブレード湾曲がブレードセクション(202)の径方向延長の方向に変化する、項目1~5のいずれか一つに記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目7)
波状ブレード湾曲が、回転軸(302)からの距離が広がるにつれて増大する、項目1~6のいずれか一つに記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目8)
ハブ(200)が、流れ方向に増大する直径を有する、項目1~7のいずれか一つに記載の軸流ポンプ(102)を含む。
(項目9)
心臓補助システム(100)用の軸流ポンプ(102)を製造するための方法(700)であって、
血管内に配置するためのポンプハウジング(104)、ならびに、ハブ(200)および輸送媒体を輸送するためにハブ(200)の周りに少なくとも部分的にらせん状に巻かれた少なくとも一つのブレード要素(110)からなり、ブレード要素(110)が波状ブレード湾曲を有する少なくとも一つのブレードセクション(202)を含むポンプローター(108)を形成する工程(710)と、
ポンプローター(108)をポンプハウジング(104)内に配置する工程(720)であって、ポンプローター(108)が、回転軸(302)の方向に輸送媒体を輸送するために、回転軸(302)の周りで回転できるように取り付けられる工程(720)と、を含む。
(項目10)
項目9に記載の方法(700)を実行および/または制御するよう構成されたユニット(810、820)を備える、装置(800)。
(項目11)
項目9に記載の方法(700)を実行および/または制御するよう構成される、コンピュータプログラム。
(項目12)
項目11に記載のコンピュータプログラムが記憶される、機械可読記憶媒体。