(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/17 20230101AFI20240119BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240119BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20240119BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240119BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240119BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240119BHJP
H10K 50/155 20230101ALI20240119BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240119BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20240119BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20240119BHJP
【FI】
H10K50/17
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
H05B33/22 A
G09F9/30 365
H05B33/22 D
H10K50/155
H10K85/60
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2022086215
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】202110592096.5
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210355382.4
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲ホウ▼ 惠▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】崔 至皓
(72)【発明者】
【氏名】丁 華龍
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 仁傑
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-139044(JP,A)
【文献】特開2013-118173(JP,A)
【文献】特開2021-070681(JP,A)
【文献】特表2017-538282(JP,A)
【文献】特開2009-076817(JP,A)
【文献】特表2016-507475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
H10K 50/10
H10K 59/10
H05B 33/26
H05B 33/22
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または反射率が高い材料組成物であり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または半透明または透明な材料組成物であり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第2有機層の厚さが
120nm
以上であり、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが-5.25eV未満であり、
前記第1有機層の導電率が1×10
-4S/m超え1×10
-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと、前記少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eV未満であり、
前記第1有機層の一方側が第1電極に直接接触し、前記第1有機層の他方側が第2有機層に直接接触し、前記第2有機層は、第3有機層に直接接触する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満であり、且つ前記第1有機層における前記第1有機材料の重量ドーピング割合が5%
を上回らない、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記第1電極は、Ag、Ti、Cr、Pt、Ni、TiN、および上記材料とITOおよび/またはMoOxの組成物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第2電極は、MgAg合金、MoOx、Yb、Ca、ITO、IZO、またはこれらの組合せから選ばれる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.25eV未満である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.2eV未満である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.1eV以下である、請求項
1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
第3有機層と第2電極との間に設けられた電子注入層をさらに含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記電子注入層は、Yb、Liq、LiFのうちの1種又は複数種を含む、請求項
8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記第2有機層の厚さが125nm超えである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
第2有機層の厚さが150nm超えである、請求項
10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記第1有機層の導電率が2×10
-4S/m超え8×10
-3S/m未満である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記第1有機材料は、式1で表される構造を有する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(式1中、
XおよびYは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R”’、O、SまたはSeから選ばれ、
Z
1およびZ
2は、出現毎に同一または異なってO、SまたはSeから選ばれ、
R、R’、R”およびR”’は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
各々のRは、同一または異なってもよく、R、R’、R”およびR”’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項14】
前記第2有機材料は、式2で表される構造を有する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
(式2中、
X
1~X
8は、出現毎に同一または異なってCR
1またはNから選ばれ、
Lは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、
Ar
1およびAr
2は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
R
1は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ
る。)
【請求項15】
基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む第1有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または反射率が高い材料を含む組合せであり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または半透明または透明な材料を含む組合せであり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第1厚さを有し
、第2有機層の厚さが120nm以上であり、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが-5.25eV未満であり、
前記第1有機層の導電率が1×10
-4S/m超え1×10
-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eV未満であり、
前記第1有機層の一方側が第1電極に直接接触し、前記第1有機層の他方側が第2有機層に直接接触し、前記第2有機層は、第3有機層に直接接触し、
前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子は、同等の電流密度下での電圧が、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧の110%を上回らず、そのうち、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、下記相違点1)~3)以外、第1有機エレクトロルミネッセンス素子と同様であり、
相違点1)は、前記第1有機層が、第1有機材料、および、第2有機材料とは異なる第3有機材料を含有することであり、
相違点2)は、前記第2有機層が、第3有機材料からなることであり、
相違点3)は、前記第2有機層と第3有機層との間に、第2有機材料からなる第4有機層が含まれることであり、
前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層と第4有機層の合計厚さが第1有機エレクトロルミネッセンス素子における第1厚さの90%~110%である、第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
同等の電流密度下での電圧が第2有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧を上回らない、請求項
15に記載の第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが、第2有機エレクトロルミネッセンス素子における第3有機材料のHOMOエネルギーレベルよりも小さい、請求項
15に記載の第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルと第2有機材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.1eV以下である、請求項
15に記載の第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
前記第2有機層の厚さが
125nm超えである、請求項
15に記載の第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
前記第2有機層の厚さが150nm超えである、請求項
19に記載の第1有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、表示コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、および該有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)は、ほぼ30年間の発展を経験して、最初のイーストマンコダック(Eastman Kodak)のTangおよびVan Slykeにより報道された二重有機層構造(AppliedPhysicsLetters、1987、51(12):913-915)から、現在の広く用いられた6~7個の機能層を有する構造へと変化し発展している。各々の機能層の導入により、キャリアの輸送性能を大幅に向上させ、さらに、機能層の異なる材料を選択することにより、キャリアのバランスを制御することができるため、素子の性能が大きく改善されている。しかしながら、より多くの機能層および材料を導入するために、より多くのプロセスステップおよびより多くの真空室が必要となるので、生産コストが必然的に高くなってしまう。また、機能層が多ければ多いほど、インタフェースが多くなる恐れがある。インタフェースは、欠陥が存在するため、通常、キャリアの輸送過程における弱い一環となっており、素子の性能に影響を及ぼす場合が多い(JiangY、ZhouDY、DongSC、etal.19‐2:SidSymposiumDigestofTechnicalPapers、2019.)(H.Yamamotoetal.、52.3、758・SID2014DIGEST)。そのため、素子の性能をほぼ維持した上で、素子の構造を簡素化し、膜層および/または材料の数を低減することができれば、生産コストを効果的に低下させることができる。
【0003】
現在、商用の素子の構造には、陰極、陽極、および陰極と陽極との間に設けられた一連の有機機能層が含まれている。該有機機能層は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロッキング層(EBL)、発光層(EML)、正孔ブロッキング層(HBL)、電子輸送層(ETL)および電子注入層(EIL)などを含む。そのうち、HILは、通常、低比率のp型導電ドープ材料(PD)を正孔輸送材料(HTM)にドーピングすることにより構成されており、そのドーピング比率が一般的に1~3%である。HTLは、通常、HILに用いられたHTMにより構成されている。発光層は、通常、少なくとも1つのホスト材料および少なくとも1つの発光材料により構成されている。ある発光層は、デュアルホストアーキテクチャを採用してもよいが、黄色光または白色光の発光層の場合、デュアル発光材料アーキテクチャを採用してもよい。通常、発光層におけるホスト材料のHOMOエネルギーレベルがHTMのHOMOエネルギーレベルよりも深いため、正孔が直接的にHTLからEMLに進入すると、高い障壁を出会うことがある。この問題を解決するために、人々は、HOMOエネルギーレベルがHTMとホスト材料との間にあるEBL(Prime層または第2正孔輸送層とも呼ばれる)を導入する。素子の構造を簡素化するために、HTLとEBLを1つに組合せ、エネルギーレベルの深いHTMを用いることによりHILとEMLを連結することは、実行可能な構想である。それと同時に、良好な正孔注入能力を有するように、LUMOエネルギーレベルがより深いPD材料を用いてエネルギーレベルの深いHTMにドーピングする必要があるという問題が存在する。しかし、現在、商用のPD材料のLUMOエネルギーレベルが-5.05eVであり、エネルギーレベルの深いHTMに対して効果的なp型ドーピングを行うことができない。
【0004】
特許出願CN201911209540Xは、本出願人がその前に出願したものであり、深いLUMOエネルギーレベルを有するPD材料を用いて、深いHOMOエネルギーレベルを有する正孔輸送材料(HTM)にドーピングして共蒸着することにより、正孔注入層(HIL)を形成するとともに、ボトムエミッション青色光素子に使用することを開示している。エネルギーレベルがより整合し、膜層および材料が低減するため、素子の電圧を低下させ、耐用年数を向上させ、プロセスを簡素化することができる。しかしながら、該出願では、ボトムエミッション素子の構造が用いられ、その陰極、陽極および電子注入層がいずれもトップエミッション素子と異なることに起因して、素子体系におけるキャリアの分布で相違している。特許出願CN2021101318064は、本出願人がその前に出願したものであり、簡単な構造で垂直に積層して積層素子の実施例を構成することにより、良好な素子の性能を取得することを開示している。該出願では、複数の発光ユニットが垂直積層という物理的形態で配置されることで、回路上の直列接続の特徴を実現するため、積層OLED(物理的形態から)または直列接続OLED(回路接続から)とも呼ばれる。上記出願では、いずれも、トップエミッション素子の構造が最適化されていない。トップエミッション素子の構造を最適化すると、HTMの厚さが向上するので、素子の低電圧の要求を満たすために、他の関連する機能層の性能、特に電気的性能を総合的に考慮しなければならない。これは、上記出願において言及されていないものである。
【0005】
現在、表示領域では、最もよく用いられる素子の構造は、トップエミッション素子であり、通常、目標顔色を達成するように、マイクロキャビティ効果を調節するために、より厚いHTLおよびEBLを用いる場合がある。たとえば、赤色光・緑色光トップエミッション素子は、一般的に、HTLとEBLの合計厚さが180~190nm程度である。こんなに厚い膜層に対しては、HOMOエネルギーレベルが深いHTMが用いられば、きっと電圧の急激な向上を引き起こしなければならないことで、素子の性能に深刻に影響を与えている。また、トップエミッション素子に用いられる陰極、陽極および電子注入層の材料は、いずれもボトムエミッション素子と異なっている。たとえば、通常のボトムエミッション素子には、1~2nmのLiqがEILとして用いられ、100nm以上のAl(非透明)が陰極として用いられている。トップエミッション素子には、一般的に、1~2nmのYbがEILとして用いられ、10~15nmのMgAg合金(通常、Mg:Ag=1:9、半透明)が陰極として用いられている。このように、ボトムエミッションおよびトップエミッション素子の電子注入の状況が異なるため、素子体系全体のキャリアのバランス状況が異なっている。陰極の一方側には相違があるだけでなく、陽極の一方側にも相違がある。ボトムエミッションおよびトップエミッション素子の陽極がいずれもITOであるにもかかわらず、トップエミッション素子は、正孔注入用のITO層が一般的に薄く、5~20nmであるが、ボトムエミッション素子は、80~120nmであり、異なる厚さのITOの表面粗度が異なることに起因して、正孔注入の状況にも影響を与えることがある。また、通常、トップエミッション素子は、ITOの調製プロセスがボトムエミッションと異なり、続いてITO仕事関数のずれを導入して、さらに正孔注入に影響を与えている。そのため、トップエミッション素子において簡単な構造を実現するために、材料を改めて最適化して選択する必要がある。
【0006】
それ以外、現在、通常のトップエミッション素子において、HILは、一般的にHTMにPD材料がドーピングされる形態を採用し、良好な正孔注入能力を確保するために、厚さが約10nmであり、導電率が約1×10-3S/mのエネルギーレベルであり、用いられるHTM材料のHOMOエネルギーレベルも対応して浅く、通常-5.1eV程度である。よく用いられる発光層におけるホスト材料のHOMOエネルギーレベルが-5.4eV程度およびその以下であるため、HTMとホスト材料とが0.3eV程度超えのエネルギーレベル差を形成して、正孔の輸送に影響を与えている。陽極からHIL層への正孔の注入が十分であるが、HILからEMLへの輸送中において障壁が高いことにより制限される。そのため、EBL層を追加して障壁遷移を行う必要があるので、生産コストおよび複雑度を向上させ、素子の性能にも影響を与える恐れがある。一方、大量の正孔がHILからHTLへ注入され、さらにEBLまたはEMLへ輸送されている。しかし、インタフェースにおいて障壁が高いことにより、正孔がインタフェースにおいて堆積して、正孔過剰を引き起こすので、素子の性能にも影響を与える恐れがある。本発明の研究から分かるように、素子において、HOMOエネルギーレベルの深いHTM材料が用いられることにより、ホスト材料のエネルギーレベルに整合し、HILとEMLとの間に設けられることにより、障壁を低下させ、膜層を低減させることで、生産コストを低下させ、素子の性能を向上させることができる。それと同時に、エネルギーレベルの深いPDがHTMにドーピングされることにより、良好な正孔注入を確保することができる。その際、導電率が1×10-4S/mエネルギーレベルに低下可能であるが、正孔輸送層に良く整合することができるため、正孔過剰および堆積を回避することができる。そのため、効率がほぼ変化しない場合には、電圧の低下、および耐用年数の向上の効果を実現することができる。実際には、より低い導電率は、素子における画素間クロストークのリスクを低下することに寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願第201911209540X
【文献】中国特許出願第2021101318064
【非特許文献】
【0008】
【文献】AppliedPhysicsLetters、1987、51(12):913-915)
【文献】JiangY、ZhouDY、DongSC、etal.19‐2:SidSymposiumDigestofTechnicalPapers、2019.
【文献】H.Yamamotoetal.、52.3、758・SID2014DIGEST
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題の少なくとも一部を解決するために、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例によれば、基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または材料組合せであり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または材料組合せであり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第2有機層の厚さが80nm超えであり、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機層の導電率が1×10-4S/m超え1×10-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと、前記少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第1有機層の一方側が第1電極に直接接触し、前記第1有機層の他方側が第2有機層に直接接触する、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0011】
本発明の一実施例によれば、
基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む第1有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または材料組合せであり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または材料組合せであり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第1厚さを有し、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機層の導電率が1×10-4S/m超え1×10-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子は、同等の電流密度下での電圧が、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧の110%を上回らず、そのうち、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、下記相違点1)~3)以外、第1有機エレクトロルミネッセンス素子と同様であり、
相違点1)は、前記第1有機層が、第1有機材料、および、第2有機材料とは異なる第3有機材料を含有することであり、
相違点2)は、前記第2有機層が、第3有機材料からなることであり、
相違点3)は、前記第2有機層と第3有機層との間に、第2有機材料からなる第4有機層が含まれることであり、
前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層と第4有機層の合計厚さが第1有機エレクトロルミネッセンス素子における第1厚さの90%~110%である、第1有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0012】
本発明の他の実施例によれば、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示コンポーネントがさらに開示される。
【0013】
本発明の他の実施例によれば、上記第1有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示コンポーネントがさらに開示される。
【0014】
本発明は、トップエミッションを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を開示しており、有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔注入層の導電率、および正孔輸送材料と発光層におけるホスト材料とのエネルギーレベル差などの各機能層の電気的性能を最適化することにより、良好な素子の性能、たとえば素子の電圧の低下および耐用年数の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】典型的なトップエミッションOLED素子である。
【
図2】簡素化したトップエミッション素子の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
OLED素子には、通常、陽極層、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロッキング層(EBL)、発光層(EML)、正孔ブロッキング層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、陰極層、およびキャッピング層が含まれる。これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、p型ドープの正孔輸送層の実例は50:1のモル比でF4-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号および第5707745号において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ堆積された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2003/0230980号において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において、保護層が記載されている。
【0017】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略することができる。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用することができる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0018】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0019】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0020】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0021】
「頂部」とは、基板から最も遠く、「底部」とは、基板から最も近いことを意味する。第1層が第2層「上」に設けられていると記載されている場合、第1層が基板から相対的に遠いように設けられている。第1層が第2層「と」「接触する」ことを規定していない限り、第1層と第2層との間に他の層が存在してもよい。例示的には、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0022】
「溶液が処理可能である」とは、溶液または懸濁液の形態で液体媒体に溶解、分散または輸送可能であり、および/または液体媒体から堆積可能であることを意味する。
【0023】
本明細書において、金属の仕事関数とは、1つの電子を物体の内部からちょうどこの物体の表面に移動させたところまで必要となる最も少ないエネルギーである。本明細書において、全ての「金属仕事関数」がいずれも負値で表され、すなわち、数値が小さいほど(絶対値が大きいほど)、電子を真空エネルギーレベルに吸着させることが必要となるエネルギーが大きくなる。たとえば、「金属仕事関数が-5eVよりも小さい」とは、電子を真空エネルギーレベルに吸着させることが5eVよりも大きいエネルギーを必要となることを指す。
【0024】
本明細書において、HOMOエネルギーレベル(最高被占分子軌道:highest occupied molecular orbital)およびLUMOエネルギーレベル(最低未占有分子軌道:lowest unoccupied molecular or-bital)の値は、電気化学的サイクリックボルタンメトリーにより測定される。電気化学的サイクリックボルタンメトリーは、最もよく用いられる有機材料のエネルギーレベルの測定方法である。測定方法は、武漢科思特計器有限公司製の型番CorrTestCS120の電気化学的ステーションが用いられると共に、プラチナディスク電極を作業電極、Ag/AgNO3電極を参照電極、プラチナワイヤ電極を補助電極とする3電極作業体系が用いられた。無水DCMを溶剤、0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、測定待ち化合物を10-3mol/Lの溶液に調製し、テスト前に、溶液に窒素ガスを10min導入して酸素を除去した。計器のパラメータ設定は、以下の通りである。走査速度100mV/s、電位間隔0.5mV、テストウィンドウ-1V~1V。本明細書において、すべての「HOMOエネルギーレベル」、「LUMOエネルギーレベル」というエネルギーレベルがいずれも負値で表され、数値が小さいほど(すなわち、絶対値が大きいほど)、エネルギーレベルが深くなることを表す。本願において、エネルギーレベルがある値よりも小さいという記述は、エネルギーレベルが数値的にこの値よりも小さい、すなわちよりマイナスな値を有することを示す。たとえば、本願において、「第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満である」とは、第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが数値的に-5.1よりもマイナス、たとえば、第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.11eVであることを示す。本明細書において、HTM材料とホスト材料とのHOMOエネルギーレベル差がHOMOHTM-HOMOHOSTと定義される。通常、ホスト材料のHOMOエネルギーレベルがより深いので、この差が正の値である。本明細書において、HTM材料のHOMOとPD材料のLUMOとのエネルギーレベル差がLUMOPD-HOMOHTMと定義され、この値が正であってもよいし、負であってもよい。
【0025】
置換基の専門用語の定義について
【0026】
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0027】
アルキル基とは、本明細書に用いられるように直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基は、炭素原子数1~20のアルキル基であってもよく、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキサンであることが好ましい。また、アルキル基は、置換されていてもよい。
【0028】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように環状のアルキル基を含む。シクロアルキル基は、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基であってもよく、炭素原子数4~10のシクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の実例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。そのうち、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシルであることが好ましい。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0029】
ヘテロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル鎖のうちの1つまたは複数の炭素が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子で置換されてなる。ヘテロアルキル基は、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基であってもよく、炭素原子数1~10のヘテロアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のヘテロアルキル基であることがより好ましい。ヘテロアルキル基の実例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基、メトキシメトキシメチル基、エトキシメトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルゲルマニウムメチル基、トリメチルゲルマニウムエチル基、トリメチルゲルマニウムイソプロピル基、ジメチルエチルゲルマニウムメチル基、ジメチルイソプロピルゲルマニウムメチル基、tert-ブチルジメチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムエチル基、トリイソプロピルゲルマニウムメチル基、トリイソプロピルゲルマニウムエチル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリイソプロピルシリルメチル基、トリイソプロオイルシリルエチル基。また、ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0030】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖、分岐鎖および環状オレフィン基を含む。鎖状のアルケニル基は、炭素原子数2~20のアルケニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の例は、ビニル基、プロピレン基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタテトラエニル基およびノルボルニルアルケニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0031】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖のアルキニル基を含む。アルキニル基は、炭素原子数2~20のアルキニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の実例は、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、3-エチル-3-メチル-1-ペンチニル基、3,3-ジイソプロピル1-ペンチニル基、フェニルエチニル基、フェニルプロピニル基などを含む。そのうち、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、フェニルエチニル基であることが好ましい。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0032】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であってもよく、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素原子数6~12のアリール基であることがより好ましい。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレンおよびナフタレンであることが好ましい。非縮合アリール基の例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。また、アリール基は、置換されていてもよい。
【0033】
複素環基または複素環とは、本明細書に用いられるように、非芳香族の環状基を考慮する。非芳香族複素環基は、環原子数3~20の飽和複素環基および環原子数3~20の不飽和非芳香族複素環基を含み、そのうちの少なくとも1つの環原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれ、非芳香族複素環基は、環原子数3~7のものであることが好ましく、窒素、酸素、ケイ素または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。非芳香族複素環基の実例は、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソペンチル、ジオキサニル、アジリジニル、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、オキサシクロヘプタトリエニル、チアシクロヘプタトリエニル、アザシクロヘプタトリエニルおよびテトラヒドロシロールを含む。また、複素環基は、置換されていてもよい。
【0034】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を含んでもよく、そのうちの少なくとも1つのヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれる。イソアリール基とは、ヘテロアリール基も指す。ヘテロアリール基は、炭素原子数3~30のヘテロアリール基であってもよく、炭素原子数3~20のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素原子数3~12のヘテロアリール基であることがより好ましい。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フランジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボラン、1,3-アザボラン、1,4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0035】
アルコキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-ヘテロアルキル基または-O-複素環基で表される。アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基および複素環基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アルコキシ基は、炭素原子数1~20のアルコキシ基であってもよく、炭素原子数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシエチルオキシ、メトキシメチルオキシおよびエトキシメチルオキシを含む。また、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0036】
アリールオキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。アリール基およびヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アリールオキシ基は、炭素原子数6~30のアリールオキシ基であってもよく、炭素原子数6~20のアリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例は、フェノキシおよびビフェノキシを含む。また、アリールオキシ基は、置換されていてもよい。
【0037】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール基で置換されたアルキル基を含む。アラルキル基は、炭素原子数7~30のアラルキル基であってもよく、炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましく、炭素原子数7~13のアラルキル基であることがより好ましい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。
【0038】
アルキルシリル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたシリル基を含む。アルキルシリル基は、炭素原子数3~20のアルキルシリル基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルシリル基であることが好ましい。アルキルシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルジエチルシリル、エチルジメチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、トリ-tert-ブチルシリコン、トリイソブチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、およびメチルジ-tert-ブチルシリルを含む。また、アルキルシリル基は、置換されていてもよい。
【0039】
アリールシリル基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基で置換されたシリル基を含む。アリールシリル基は、炭素原子数6~30のアリールシリル基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールシリル基であることが好ましい。アリールシリル基の例は、トリフェニルシリル、フェニルジビフェニルシリル、ジフェニルビフェニルシリル、フェニルジエチルシリル、ジフェニルエチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジイソプロピルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソブチルシリル、ジフェニル-tert-ブチルシリルを含む。また、アリールシリル基は、置換されていてもよい。
【0040】
アルキルゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたゲルマニウム基を含む。アルキルゲルマニウム基は、炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルゲルマニウム基であることが好ましい。アルキルゲルマニウム基の例は、トリメチルゲルマニウム基、トリエチルゲルマニウム基、メチルジエチルゲルマニウム基、エチルジメチルゲルマニウム基、トリプロピルゲルマニウム基、トリブチルゲルマニウム基、トリイソプロピルゲルマニウム基、メチルジイソプロピルゲルマニウム基、ジメチルイソプロピルゲルマニウム基、トリ-tert-ブチルゲルマニウム基、トリイソブチルゲルマニウム基、ジメチル-tert-ブチルゲルマニウム基、メチルジ-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アルキルゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0041】
アリールゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基またはヘテロアリール基で置換されたゲルマニウム基を含む。アリールゲルマニウム基は、炭素原子数6~30のアリール基ゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールゲルマニウム基であることが好ましい。アリールゲルマニウム基の例は、トリフェニルゲルマニウム基、フェニルジビフェニルゲルマニウム基、ジフェニルビフェニルゲルマニウム基、フェニルジエチルゲルマニウム基、ジフェニルエチルゲルマニウム基、フェニルジメチルゲルマニウム基、ジフェニルメチルゲルマニウム基、フェニルジイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルブチルゲルマニウム基、ジフェニルイソブチルゲルマニウム基、ジフェニル-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アリールゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0042】
アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、且つこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0043】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換の複素環基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアルキニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアルキルゲルマニウム基、置換のアリールゲルマニウム基、置換のアミノ基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスフィノ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルゲルマニウム基、アリールゲルマニウム基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスフィノ基のうちのいずれか1つの基が、重水素、ハロゲン、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、非置換の環原子数3~20の複素環基、非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基およびこれらの組合せから選ばれる1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0044】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定することができることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0045】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0046】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0047】
本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣り合う置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいことは、隣り合う置換基が結合して環を形成してもよい情況を含むだけでなく、隣り合う置換基が結合して環を形成しない情況を含む。隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣り合う置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、または更に離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣り合う置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0048】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化1】
【0049】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化2】
【0050】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、さらに離れる炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化3】
【0051】
また、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基の一方が水素を表す場合に、第2置換基は水素原子が結合された位置に結合されて環を形成することを意味すると認められている。下記式で例示する。
【化4】
【0052】
本発明の一実施例によれば、
基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または材料組合せであり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または材料組合せであり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第2有機層の厚さが80nm超えであり、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機層の導電率が1×10-4S/m超え1×10-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと、前記少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第1有機層の一方側が第1電極に直接接触し、前記第1有機層の他方側が第2有機層に直接接触する、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0053】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満である。
【0054】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが-5.25eV未満である。
【0055】
本発明の一実施例によれば、第2有機層は、第3有機層に直接接触する。
【0056】
本発明の一実施例によれば、前記第1電極は、Ag、Ti、Cr、Pt、Ni、TiN、および上記材料とITOおよび/またはMoOxの組合せからなる群から選ばれる。
【0057】
本発明の一実施例によれば、前記第2電極は、MgAg合金、MoOx、Yb、Ca、ITO、IZO、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0058】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.26eV以下である。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.25eV未満である。
【0060】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.2eV未満である。
【0061】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eV未満である。
【0062】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.2eV未満である。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと第1有機材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.1eV以下である。
【0064】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は第3有機層と第2電極との間に設けられた電子注入層をさらに含む。
【0065】
本発明の一実施例によれば、前記電子注入層は、Yb、Liq、LiFのうちの1種又は複数種を含む。
【0066】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機層の厚さが100nm以上である。
【0067】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機層の厚さが120nm以上である。
【0068】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機層の厚さが125nm超えである。
【0069】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機層の厚さが150nm超えである。
【0070】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率が2×10-4S/m超え8×10-3S/m未満である。
【0071】
本発明の一実施例によれば、第1有機材料は、式1で表される構造を有する。
【化5】
(式1中、
XおよびYは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R”’、O、SまたはSeから選ばれ、
Z
1およびZ
2は、出現毎に同一または異なってO、SまたはSeから選ばれ、
R、R’、R”およびR”’は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
各々のRは、同一または異なってもよく、R、R’、R”およびR”’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよい。)
【0072】
本発明の一実施例によれば、第2有機材料は、式2で表される構造を有する。
【化6】
(式2中、
X
1~X
8は、出現毎に同一または異なってCR
1またはNから選ばれ、
Lは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、
Ar
1およびAr
2は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
R
1は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式2中、隣リ合う置換基は、結合して環を形成していてもよい。)
【0073】
本発明の一実施例によれば、式1中、XおよびYは、出現毎に同一または異なってCR’’R”’またはNR’から選ばれ、R’、R”およびR”’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、好ましくは、R、R’、R”およびR”’は、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0074】
本発明の一実施例によれば、式1中、XおよびYは、出現毎に同一または異なってO、SまたはSeから選ばれ、Rのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、好ましくは、Rは、いずれも少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0075】
本発明の一実施例によれば、式1中、前記電子求引性基のハメット定数が0.05以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。
【0076】
本発明の一実施例によれば、式1中、前記電子求引性基は、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基、およびハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、炭素原子数7~30のアラルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数2~20のアルキニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、炭素原子数3~20のアルキルシリル基、炭素原子数6~20のアリールシリル基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0077】
本発明の一実施例によれば、式1中、前記電子求引性基は、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ピリミジン基、トリアジン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0078】
本発明の一実施例によれば、式1中、XおよびYは、出現毎に同一または異なって下記構造からなる群から選ばれる。
O、S、Se、
【化7】
(R
2は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
好ましくは、R
2は、出現毎に同一または異なってF、CF
3、OCF
3、SF
5、SO
2CF
3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ペンタフルオロフェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
VおよびWは、出現毎に同一または異なってCR
vR
w、NR
v、O、SまたはSeから選ばれ、
Arは、出現毎に同一または異なって、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
A、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、R
vおよびR
wは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
Aは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、前記いずれか1つの構造において、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、R
vおよびR
wのうちの1つまたは複数が現れる場合、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、R
vおよびR
wのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、好ましくは、前記少なくとも1つの電子求引性基を有する基は、F、CF
3、OCF
3、SF
5、SO
2CF
3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ペンタフルオロフェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。)
【0079】
ただし、「*」は、前記XおよびY基と、式1におけるデヒドロベンゾビスオキサゾール環、デヒドロベンゾジチアゾール環またはデヒドロベンゾジセレナゾール環との結合箇所を示す。
【0080】
本発明の一実施例によれば、式1中、XおよびYは、出現毎に同一または異なって下記構造からなる群から選ばれる。
O、S、Se、
【化8】
(「*」は、前記XおよびYと、式1におけるデヒドロベンゾビスオキサゾール環、デヒドロベンゾジチアゾール環またはデヒドロベンゾジセレナゾール環との結合箇所を示す。)
【0081】
本発明の一実施例によれば、式1中、Rは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、およびハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基およびホスホノキシ基のうちの1つまたは複数の基で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0082】
本発明の一実施例によれば、式1中、Rは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、メチル基、イソプロピル基、NO2、SO2CH3、SCF3、C2F5、OC2F5、OCH3、ジフェニルメチルシリル基、フェニル基、メトキシフェニル基、p-メチルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、ビフェニル基、ポリフルオロフェニル基、ジフルオロピリジル基、ニトロフェニル基、ジメチルチアゾール基、CNまたはCF3のうちの1つまたは複数で置換されたビニル基、CNまたはCF3のうちの1つで置換されたエチニル基、ジメチルホスホノキシ基、ジフェニルホスホノキシ基、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、F、CNまたはCF3のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基またはビフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、ジフェニルボラニル基、オキサボランアントリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0083】
本発明の一実施例によれば、式1中、XおよびYは、
【化9】
である。
【0084】
本発明の一実施例によれば、式1中、Rは、出現毎に同一または異なって下記構造からなる群から選ばれる。
【化10-1】
【化10-2】
(
【化11】
は、前記R基と、式1におけるデヒドロベンゾビスオキサゾール環、デヒドロベンゾジチアゾール環またはデヒドロベンゾジセレナゾール環との結合箇所を示す。)
【0085】
本発明の一実施例によれば、式1で表される化合物において、2つのRは、同一である。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記式1化合物は、式3で表される構造を有する。
【化12】
(式3における2つのZの構造が同一であり、2つのRの構造が同一または異なり、前記Z、X、Y、Rは、それぞれ対応して下記表に示される原子または基から選ばれ、
式3で表される構造を有する化合物は、下記化合物からなる群から選ばれる。)
【0087】
本発明の一実施例によれば、式2中、Lは、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のビフェニレン基、置換または非置換のテルフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のフルオレニレン基、置換または非置換のシリコフルオレニレン基、置換または非置換のカルバゾリリデン基、置換または非置換のジベンゾフラン基、置換または非置換のジベンゾチエニレン基、置換または非置換のジベンゾセレノフェン基、置換または非置換のフェナントリレン基、置換または非置換のトリフェニレニレン基、置換または非置換のピリジレン基、置換または非置換のスピロビフルオレン基、置換または非置換のアントラセン基、置換または非置換のピレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、好ましくは、Lは、置換または非置換のフェニレン基、または置換または非置換のビフェニレン基から選ばれ、より好ましくは、Lは、フェニレン基またはビフェニレン基である。
【0088】
本発明の一実施例によれば、式2中、R1は、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、好ましくは、R1は、水素、重水素、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれる。
【0089】
本発明の一実施例によれば、式2中、Ar1およびAr2は、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリール基から選ばれ、好ましくは、Ar1およびAr2は、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、フルオレン基、ジベンゾチエニル基、スピロビフルオレン基、ピリジン基またはピリミジン基から選ばれる。
【0090】
本発明の一実施例によれば、前記式2で表される構造を有する化合物は、以下の化合物からなる群から選ばれる。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【化13-6】
【0091】
本発明の一実施例によれば、上述したいずれか1つの実施例に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、表示コンポーネントがさらに開示される。
【0092】
本発明の他の実施例によれば、
基板と、
基板上に設けられた第1電極と、
第1電極の上に設けられた第2電極と、
第1電極と第2電極との間に設けられた有機層と、を含む第1有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第1電極は、反射率が高い材料または材料組合せであり、前記第2電極は、半透明または透明な材料または材料組合せであり、
前記有機層は、第1有機層、第2有機層および第3有機層を含み、
前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含有し、
前記第2有機層は、第2有機材料からなり、且つ第1厚さを有し、
前記第3有機層は、発光層であり、少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つのホスト材料を含有し、
前記第1有機層の導電率が1×10-4S/m超え1×10-2S/m未満であり、
前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルと少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満であり、
前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子は、同等の電流密度下での電圧が、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧の110%を上回らず、そのうち、第2有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、下記相違点1)~3)以外、第1有機エレクトロルミネッセンス素子と同様であり、
相違点1)は、前記第1有機層が、第1有機材料、および、第2有機材料とは異なる第3有機材料を含有することであり、
相違点2)は、前記第2有機層が、第3有機材料からなることであり、
相違点3)は、前記第2有機層と第3有機層との間に、第2有機材料からなる第4有機層が含まれることであり、
前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層と第4有機層の合計厚さが第1有機エレクトロルミネッセンス素子における第1厚さの90%~110%である、第1有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0093】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子は、同等の電流密度下での電圧が第2有機エレクトロルミネッセンス素子を上回らない。
【0094】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが第2有機エレクトロルミネッセンス素子における第3有機材料のHOMOエネルギーレベルよりも小さい。
【0095】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが-5.25eV未満である。
【0096】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1有機材料のLUMOエネルギーレベルが-5.1eV未満である。
【0097】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルと第2有機材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eV未満である。
【0098】
本発明の一実施例によれば、述第1有機材料のLUMOエネルギーレベルと第2有機材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.2eV未満である。
【0099】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルと第2有機材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.1eV以下である。
【0100】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層の厚さが80nm超えである。
【0101】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層の厚さが125nm超えである。
【0102】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層の厚さが100nm以上である。
【0103】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層の厚さが120nm以上である。
【0104】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2有機層の厚さが150nm超えである。
【0105】
本発明の一実施例によれば、上述したいずれか1つの実施例に記載された第1有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示コンポーネントがさらに開示される。
【0106】
図1は、典型的なトップエミッションOLED素子の構造図を示す。そのうち、OLED素子100には、陽極層101、正孔注入層(HIL)102、正孔輸送層(HTL)103、電子ブロッキング層(EBL)104、発光層(EML)105、正孔ブロッキング層(HBL)106、電子輸送層(ETL)107、電子注入層(EIL)108、陰極層109、およびキャッピング層110が含まれる。そのうち、陽極層101は、反射率が高い材料または材料組合せであり、Ag、Ti、Cr、Pt、Ni、TiN、および上記材料とITOおよび/またはMoOx(酸化モリブデン)の組合せを含むがそれに限定されず、反射率が50%超え、好ましくは、80%超え、より好ましくは、90%超えである。陰極層109は、半透明または透明の導電材料であり、MgAg合金、MoOx、Yb、Ca、ITO、IZOまたはこれらの組合せを含むがそれに限定されず、その透明度が一般的に30%超え、好ましくは50%超えである。電子輸送層107は、単層Ybであってもよい。発光層105は、通常、少なくとも1つのホスト材料および少なくとも1つの発光材料をさらに含有してもよいし、正孔ブロッキング層106は、選択可能な層である。励起子がEBLおよびEMLインタフェースにおいてクエンチイングすることないことを確保するために、EBL材料の三重項のエネルギーレベルがEMLにおけるホスト材料の三重項を上回ることを確保する必要がある。正孔注入層102は、単一材料の層であってもよく、たとえばHATCNがよく用いられる。正孔注入層102は、正孔輸送材料に一定の比率のp型導電ドープ材料がドーピングされたものであってもよく、一般的にドーピング比率が5%を上回らず、1%~3%が良よく用いられる。このようなp型導電材料がドーピングされた正孔注入層は、通常、単一材料の層に対して、より低い電圧を有するため、広く用いられる。よく用いられる正孔輸送層材料、たとえば表1における化合物HT1は、HOMOエネルギーレベルが-5.09eVであり、よく用いられる陽極層のITO仕事関数が-4.8eVに近づき、陽極層からの正孔の効果的な注入を確保することができる。しかしながら、大部分の発光層におけるホスト材料のHOMOエネルギーレベルは、正孔輸送層材料よりも遥かに深く、一般的に-5.3eV~-5.6eVであるので(たとえば、表1における化合物RH1およびRH2)、正孔が輸送層から発光層に進入する時に相対的に高い障壁を出会うことを引き起こす。正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベルもホスト材料のエネルギーレベルに近づくことができれば、正孔が発光層に輸送される前に、障壁が減少し、さらに消失する。しかしながら、深すぎるHOMOエネルギーレベルにより、正孔の陽極層からの注入が困難となり、オーミック接触が悪くなり、電圧が向上する。研究から分かるように、エネルギーレベルの深い正孔注入層材料にp型導電ドープ材料をドーピングすることにより、この現象を緩和することができるが、よく用いられるp型導電ドープ材料、たとえば表2における化合物HTのLUMOエネルギーレベルが僅かに-5.04eVである。そのため、本願の発明者は、それがエネルギーレベルの深い正孔輸送材料とよいドーピング効果を形成することができず、よりよい整合のために、p型導電ドープ材料のLUMOエネルギーレベルもより深い必要があることを発見した。
【0107】
本発明では、すべての化合物に対しては、いずれもサイクリックボルタンメトリー(CV)により化合物の電気化学的性質が測定された。測定方法は、武漢科思特計器有限公司製の型番CorrTestCS120の電気化学的ステーションが用いられると共に、プラチナディスク電極を作業電極、Ag/AgNO3電極を参照電極、プラチナワイヤ電極を補助電極とする3電極作業体系が用いられた。無水DCMを溶剤、0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、測定待ち化合物を10-3mol/Lの溶液に調製し、テスト前に、溶液に窒素ガスを10min導入して酸素を除去した。計器のパラメータ設定は、以下の通りである。走査速度100mV/s、電位間隔0.5mV、テストウィンドウ-1V~1V。表1には、上記テスト方法で測定された一部の正孔輸送材料HTMと一部のホスト材料のHOMOエネルギーレベルが示され、表2には、上記テスト方法で測定された一部のPD材料のLUMOエネルギーレベルが示される。
【0108】
【0109】
【0110】
化合物HT1、H-176、化合物70、化合物72、化合物56、化合物HT、化合物RH1、化合物RH2、および化合物BHの構造式は、以下の通りである。
【化14】
【0111】
HTMおよびPD材料のエネルギーレベルに整合することは、効果的な正孔注入を確保するための最初のステップであるが、PD材料のドーピング比率も正孔注入能力に影響を与えることがある。我々は、正孔注入層の導電率を測定することにより、その正孔注入能力を定量分析した。通常、一定の範囲内に、PDドーピング比率が高いほど、導電率が高くなる、すなわち正孔注入能力が強くなった。導電率が低すぎると、正孔注入が不十分であるので、電圧が向上することを引き起こし、EMLにおける複合領域が陽極に向かって移動するので、耐用年数が低下することを引き起こす可能性もある。逆に言えば、導電率が高すぎると、正孔注入が過剰であるので、効率が低下することを引き起こす可能性があり、特に電子不足体系において極めて顕著である。それと同時に、表示分野においてHILの導電率が高すぎると、画素間横方向クロストークの問題をもたらす可能性がある。そのため、HILの導電率が一定の範囲、たとえば1×10-4~1×10-2S/mにあるべきであり、2×10-4~8×10-3S/mが好ましい。
【0112】
導電率の測定方法は以下の通りである。真空度10-6Torr、一定のドーピング比率で(表2において、PD材料が3%、2%および1%の重量比で表1におけるHTMにドーピングされる)、測定待ちサンプルHTMおよびPD材料を、共蒸着により、アルミニウム電極が予め配置されたテスト基板に堆積し、厚さ100nm、長さ6mm、幅1mmのテスト待ち領域を形成した。電極に電圧を印加して電流を測定する方法により、該領域の抵抗値を得た。さらに、オームの法則および幾何学的寸法に基づき、膜層の導電率を算出した。注意すべきことに、HTMおよびPD材料が変化しない、すなわちそのエネルギーレベル差が変化しない場合でも、ドーピング比率を調節することにより、一定の程度で正孔注入能力を調節することができる。一方、HTMとPD材料とのエネルギーレベル差の違いが大き過ぎると、ドーピング比率による正孔注入能力の調節が限られている。表3には、上記導電率のテスト方法で測定された一部のHTMと異なる比率のPDを組み合わせた導電率の測定結果が示される。
【0113】
【0114】
図2は、簡素化したトップエミッション素子の構造模式図である。そのうち、OLED素子200には、陽極層201、正孔注入層(HIL)202、正孔輸送層(HTL)203、発光層(EML)204、正孔ブロッキング層(HBL)205、電子輸送層(ETL)206、電子注入層(EIL)207、陰極層208、および被覆層209が含まれる。同様に、発光層204は、通常、少なくとも1つのホスト材料および少なくとも1つの発光材料をさらに含有し、正孔ブロッキング層205は、選択可能な層である。正孔輸送層203の厚さは、通常のトップエミッション素子におけるHILとEMLとの間に介在するすべての膜層の厚さの合計に相当すべきであるが、マイクロキャビティ効果に基づいて微細調整してもよく、一般的に80nm超え、好ましくは、125nm超え、より好ましくは、150nm超えである。上記簡素化したトップエミッション素子の構造において、HTL層の膜厚が増加し、発光層に達した正孔の量が低下し、複合領域が陽極に向かって移動することがある。簡素化したトップエミッション素子の構造において、EBLがないので、励起子がHTLおよびEMLインタフェースにおいてクエンチイングすることがないことを確保するように、EMLに直接接触したHTLにおけるHTMの三重項のエネルギーレベルがEMLにおけるホスト材料の三重項を上回ることを確保する必要がある。
図2に示す簡素化したトップエミッションOLED素子200において、正孔輸送層203に用いられた正孔輸送材料HTMは、深いHOMOエネルギーレベルを有し、そのHOMOエネルギーレベルと発光層204における少なくとも1つのホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.27eV未満、好ましくは、0.25eV未満、より好ましくは、0.2eV未満である。小さいエネルギーレベル差により、正孔がEMLに進入する際の障壁を低下させ、電圧を効果的に低下させることができ、特に、トップエミッション素子において、それにより厚すぎるHTMによる電圧の向上を相殺することができる。表1における各材料のHOMOエネルギーレベルを参照しながら、表4には、表1におけるHTMのHOMOエネルギーレベルとホスト材料のHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差、および表2におけるPD材料のLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差であるHOMO
HTM-HOMO
RH、およびLUMO
PD-HOMO
HTMが示される。これから分かるように、正孔輸送材料化合物H-176と、ホスト材料RH1およびRH2とのエネルギーレベル差は、それぞれ0.12および0.09eVであり、いずれも0.27eV未満である。良好な正孔注入を確保するために、HTMとPD材料のエネルギーレベルも整合する必要があり、すなわち(LUMO
PD-HOMO
HTM)が0.23eV未満、好ましくは、0.2eV未満、より好ましくは、0.1eV未満である。特に、化合物H-176のような深いHOMOエネルギーレベルを有するHTM材料に対して、同様に深いLUMOエネルギーレベルを有するPD材料、たとえば化合物70を組み合わせることにより、より効果的な正孔注入を実現することができる。表4に示すように、そのエネルギーレベル差が0.1eVである。
【0115】
【実施例】
【0116】
素子の実施例
【0117】
以下、下記実施例を参照しながら、本発明についてさらに詳しく説明する。下記実施例に用いられる化合物は、当業者により容易に取得可能であるため、その合成方法をここで繰り返し説明しない。たとえば、全文援用により組み込まれた中国特許出願CN112745333Aから見つけ出すことができる。明らかに、下記実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。当業者であれば、下記実施例に基づき、改良によって発明の他の実施例を取得することができる。
【0118】
実施例1:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0119】
まず、予め図形化されたインジウムスズ酸化物ITO75Å/Ag1500Å/ITO150Åを有する厚さ0.7mmのガラス基板を陽極201として用い、ここでAgの上に蒸着した150ÅITOが正孔注入機能を果たした。その後、基板をグローブボックスで乾燥させて水分を除去し、ホルダに取り付けて真空室に置いた。以下、指定された有機層に対して、真空度が約10-6Torrの場合、0.01-10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順に陽極層上に蒸着を行った。まず、化合物H-176および化合物70を共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)202として用い、化合物H-176を蒸着して正孔輸送層(HTL、1900Å)203として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用いた。次に、正孔輸送層上に化合物RH1および化合物RDを共蒸着して発光層(EML、98:2、400Å)204として用い、化合物HBを蒸着して正孔ブロッキング層(HBL、50Å)205として用い、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層(ETL、40:60、350Å)206として用い、厚さ10Åの金属Ybを蒸着して電子注入層(EIL)207として用い、金属銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)を共蒸着して陰極(Cathode、9:1、140Å)208として用いた。最後、650Åの材料CPLを蒸着して被覆層(CPL材料は、620nmにおける屈折率が約1.68の材料であり、前記屈折率は、北京量拓テック有限公司製の型番ES01のエリプソメーターにより、シリコンウェーハ上に蒸着された厚さ30nmのCPL材料をテストした)209として用いた。そして、該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0120】
比較例1-1:
図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子100が製造される。
【0121】
化合物HT1および化合物70を共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)102として用い、化合物HT1を蒸着して正孔輸送層(HTL、1200Å)103として用い、化合物H-176を蒸着して電子ブロッキング層(EBL、700Å)104として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用いる以外、実施例1の製造方法と同様である。
【0122】
比較例1-2:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0123】
化合物H-176および化合物HTを共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)202として用いる以外、実施例1の製造方法と同様である。
【0124】
詳細の素子の層構造および厚さを表5に示す。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0125】
【0126】
化合物RD、HB、ETおよびLiqの構造式は、以下のように示される。
【化15】
【0127】
表6は、実施例1および比較例1-1~1-2における素子の性能を纏める。そのうち、色座標、電圧、および電流効率は、電流密度10mA/cm2で測定されたものであり、素子の耐用年数(LT97)は、80mA/cm2の駆動下で輝度が初期輝度の97%に減衰した実際測定時間である。
【0128】
【0129】
実施例1の素子において、LUMOエネルギーレベル-5.17eVの化合物70をp型導電ドープ材料として用いて、HOMOエネルギーレベル-5.27eVの化合物H-176にドーピングして正孔注入層材料として用いた。表4から分かるように、HTMのHOMOエネルギーレベルとPDのLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.1eVである。2%のドーピング条件下で、表3から分かるように、その導電率が4.6×10-4S/mである。該導電率が1×10-4S/m超えであると、正孔の陽極から有機層への注入が良好であることが説明されている。注意すべきことに、表3から分かるように、化合物70のドーピング比率を、たとえば1%低下させることにより、導電率を低下させることができる。逆に言えば、化合物70のドーピング比率を3%に向上させることにより、導電率を向上させることができる。比較例1-1は、業界でよく用いられる赤色光素子の構造であり、素子のデータから分かるように、業界内の高い赤色光素子の性能に達した。比較例1-1に比較して、顔色を確保した上で、実施例1における効率および耐用年数がやや向上し、且つ電圧が0.4V低下した。表3から分かるように、比較例1-1に用いられるHIL層の導電率が40.4×10-4S/mであり、この導電率の正孔注入が実施例1よりも優れているが、比較例1-1における電圧が実施例1よりも高い。表4から分かるように、実施例1におけるHILは、HTM(すなわち、H-176)と赤色光ホスト材料RH1とのHOMOエネルギーレベル差が0.12eVであり、比較例1-1におけるHILは、HTMがHT1であり、RH1とのHOMOエネルギーレベル差が0.30eVである。HTMと発光層におけるホスト材料とのHOMOエネルギーレベル差の低下は、素子電圧に支配的な影響を及ぼすことが説明されている。次に、機能層の数の低減により、インタフェースによる欠陥の数を低減させることができ、電圧の低下にも役立っている。
【0130】
比較例1-2における正孔注入層は、化合物HTをp型ドープ材料として用い、H-176をHTMとして用いた。表3から分かるように、導電率が1×10-4S/mであり、実施例1を下回った。これから分かるように、その正孔注入能力が実施例1に及ばなかった。同様に、エネルギーレベル差にも反映されてもよい。比較例1-2は、LUMOエネルギーレベル-5.04eVの化合物HTをp型導電ドープ材料として用い、HOMOエネルギーレベル-5.27eVの化合物H-176にドーピングして正孔注入層材料として用いた。表4から分かるように、HTMのHOMOとPDのLUMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eVであり、実施例1における0.1eVを上回るので、同様なドーピング比率で正孔注入能力が実施例1に及ばないことを引き起こした。そのため、比較例1-2における電圧が8.5Vに達し、電流効率がほぼ実施例1と同様であることを維持可能であるが、耐用年数が45%低下した。ここでは、比較例1-2および実施例1におけるHTM(すなわち、H-176)と赤色光ホスト材料RH1とのHOMOエネルギーレベル差は、いずれも0.12eVである。相違点は、同じドーピング濃度下で、正孔注入層の導電率が異なるのみにある。
【0131】
上記実施例と比較例との比較から分かるように、HTMと発光層におけるホスト材料とのHOMOエネルギーレベル差、および正孔注入層の導電率は、素子の性能、特に素子の電圧および耐用年数に対して重要な役割を担っている。本願における導電率およびエネルギーレベル差を同時に満たした実施例1は、CIEおよび効率がほぼ変化しないままで、素子の電圧を低下させ、素子の耐用年数を向上させることができる。
【0132】
実施例2:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0133】
化合物RH2および化合物RDを共蒸着して発光層(EML、98:2、400Å)204として用いる以外、実施例1の製造方法と同様である。
【0134】
比較例2-1:
図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子100が製造される。
【0135】
化合物RH2および化合物RDを共蒸着して発光層(EML、98:2、400Å)105として用いる以外、比較例1-1の製造方法と同様である。
【0136】
比較例2-2:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0137】
化合物H-176および化合物HTを共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)202として用いる以外、実施例2の製造方法と同様である。
【0138】
詳細の素子の層構造および厚さを表7に示す。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0139】
【0140】
表8は、実施例2および比較例2-1~2-2における素子の性能を纏める。そのうち、色座標、電圧、および電流効率は、電流密度10mA/cm2で測定されたものであり、素子の耐用年数(LT97)は、80mA/cm2の駆動下で輝度が初期輝度の97%に減衰した実際測定時間である。
【0141】
【0142】
実施例2における素子は、正孔注入層が実施例1と同様であり、正孔の陽極から有機層への注入が良好である。そのうち、比較例2-1は、業界でよく用いられる赤色光素子の構造である。素子のデータから分かるように、業界内の高い赤色光素子の性能に達した。比較例2-1に比較して、顔色を確保した上で、実施例2における電圧が0.5V低下し、耐用年数が27%向上しながら、素子の効率が相当することを維持した。実施例2におけるHTM(すなわちH-176)と赤色光ホスト材料RH2とのHOMOエネルギーレベル差の絶対値が0.09eVであり、比較例2-1において、該差が0.27eVであるからである。より小さい障壁により、電圧が低下し、さらに正孔が効果的に発光層に輸送されることを確保することができる。
【0143】
比較例1-2に類似し、比較例2-2における正孔注入層は、化合物HTをp型ドープ材料として用い、H-176をHTMとして用いた。表3から分かるように、その導電率が1×10-4S/mであり、実施例2を下回った。これから分かるように、その正孔注入能力が実施例2に及ばなかった。同様に、エネルギーレベル差にも反映されてもよい。比較例2-2は、LUMOエネルギーレベル-5.04eVの化合物HTをp型導電ドープ材料として用いて、HOMOエネルギーレベル-5.27eVの化合物H-176をドーピングして正孔注入層材料として用いた。表4から分かるように、PDのLUMOエネルギーレベルとHTMのHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eVであり、実施例2における0.1eVを上回った。そのため、比較例2-2は、電圧が7.3Vに達し、電流効率がほぼ実施例2と同様であることを維持可能であるが、実施例2における耐用年数に対して大幅に44%低下した。ここでは、比較例2-2および実施例2におけるHTM(すなわちH-176)と赤色光ホスト材料RH2とのHOMOエネルギーレベル差の絶対値は、いずれも0.09eVである。相違点は、正孔注入層の導電率が異なるのみにある。
【0144】
上記実施例と比較例との比較から分かるように、HTMと発光層におけるホスト材料とのHOMOエネルギーレベル差、および正孔注入層の導電率は、素子の性能、特に素子の電圧および耐用年数に対して重要な役割を担っている。本願における導電率およびエネルギーレベル差を同時に満たした実施例2は、CIEおよび効率がほぼ変化しないままで、素子の電圧を低下させ、素子の耐用年数を向上させることができる。
【0145】
実施例3-1:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0146】
まず、予め図形化されたインジウムスズ酸化物ITO75Å/Ag1500Å/ITO150Åを有する厚さ0.7mmのガラス基板を陽極201として用いた。ここでは、Agの上に蒸着した150ÅITOが正孔注入機能を果たした。その後、基板をグローブボックスで乾燥させて水分を除去し、ホルダに取り付けて真空室に置いた。以下、指定された有機層に対して、真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順に陽極層上に蒸着を行った。まず、化合物H-176および化合物70を共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)202として用い、化合物H-176を蒸着して正孔輸送層(HTL、1210Å)203として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用いた。次に、正孔輸送層上に化合物BHおよび化合物BDを共蒸着して発光層(EML、98:2、200Å)204として用い、化合物HB2を蒸着して正孔ブロッキング層(HBL、50Å)205として用い、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層(ETL、40:60、300Å)206として用い、厚さ10Åの金属Ybを蒸着して電子注入層(EIL)207として用い、金属銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)を共蒸着して陰極(Cathode、9:1、140Å)208として用いた。最後、650Åの材料CPLを蒸着して被覆層(CPL材料は、620nmにおける屈折率が約1.68の材料であり、前記屈折率は、北京量拓テック有限公司製の型番ES01のエリプソメーターにより、シリコンウェーハ上に蒸着された厚さ30nmのCPL材料をテストした)209として用いた。そして、該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0147】
実施例3-2:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0148】
化合物H-176および化合物72を共蒸着して正孔注入層(HIL、96:4、100Å)として用い、化合物H-176を蒸着して正孔輸送層(HTL、1210Å)として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用いる以外、実施例3-1の製造方法と同様である。
【0149】
比較例3-1:
図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子100が製造される。
【0150】
化合物HT1および化合物70を共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)102として用い、化合物HT1を蒸着して正孔輸送層(HTL、1160Å)として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用い、化合物H-176を蒸着して電子ブロッキング層(EBL、50Å)104として用いる以外、実施例3-1の製造方法と同様である。
【0151】
比較例3-2:
図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子200が製造される。
【0152】
化合物H-176および化合物HTを共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)として用いる以外、実施例3-1の製造方法と同様である。
【0153】
比較例3-3:
図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子100が製造される。
【0154】
化合物HT1および化合物72を共蒸着して正孔注入層(HIL、98:2、100Å)として用い、化合物HT1を蒸着して正孔輸送層(HTL、1160Å)として用いながら、マイクロキャビティ長調節層として用い、化合物H-176を蒸着して電子ブロッキング層(EBL、50Å)として用いる以外、実施例3-2の製造方法と同様である。
【0155】
詳細の素子の層構造および厚さを表9に示す。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0156】
【0157】
素子に新たに用いられる材料の構造は、以下のように示される。
【化16】
【0158】
【0159】
なお、業界内で熟知されているように、表示パネルにおいて、青色光素子の効率は、業界で、一般的にその顔色の要素を考慮する必要があり、すなわちCE/CIEyが用いられた。
【0160】
実施例3-1における素子は、正孔注入層が実施例1および2と同様であり、正孔の陽極から有機層への注入が良好である。そのうち、比較例3-1は、業界でよく用いられる青色光素子の構造である。比較例3-1に対して、顔色が同様であることを確保した上で、実施例3-1における耐用年数が4倍向上し、効率CE/CIEyが157から171に向上し、すなわち9%向上し、その電圧が0.2V向上したが、綜合性能から見れば、実施例3-1は、比較例3-1よりもより優れている。なお、実施例3-1におけるHTM(すなわちH-176)と青色光ホスト材料BHとのHOMOエネルギーレベル差の絶対値が0.26eVであり、比較例3-1において、該差が0.44eVである。比較例3-1において、正孔が直接的にHTLからEMLに進入する際に高い障壁を出会うと、よく用いられる商用の素子の構造を用いる(素子においてEBL層が追加される)ことにより、障壁の緩衝を行った。該EBL層がない素子において、電圧が比較例3-1における電圧に対して少なくとも0.5V以上高くなり、効率および耐用年数が大幅に低下した。実施例3-1において、素子の効率および耐用年数が大幅に向上しながら、電圧が比較例3-1に相当し、僅かに0.2V向上した。実施例3-1における素子は、正孔が効果的に発光層に輸送されることを確保可能であることが説明されている。
【0161】
比較例1-2および2-2に類似し、比較例3-2における正孔注入層は、化合物HTをp型ドープ材料として用いて、H-176をHTMとして用いた。表3から分かるように、その導電率が1×10-4S/mであり、実施例3-1を下回った。これから分かるように、その正孔注入能力が実施例3-1 に及ばなかった。同様に、エネルギーレベル差にも反映されてもよい。比較例3-2は、LUMOエネルギーレベル-5.04eVの化合物HTをp型導電ドープ材料として用いて、HOMOエネルギーレベル-5.27eVの化合物H-176にドーピングして正孔注入層材料として用いた。表4から分かるように、PDのLUMOエネルギーレベルとHTMのHOMOエネルギーレベルとのエネルギーレベル差が0.23eVであり、実施例3-1における0.1eVを上回った。そのため、比較例3-2における電圧が6.5Vに達し、効率CE/CIEyが僅かに163であり、耐用年数が僅かに2hである。これに対して、実施例3-1における電圧が2.4V低下し、効率CE/CIEyが5%向上し、耐用年数が24倍向上した。ここでは、比較例3-2および実施例3-1におけるHTM(すなわちH-176)と青色光ホスト材料BHとのHOMOエネルギーレベル差の絶対値は、いずれも0.26eVである。相違点は、正孔注入層の導電率が異なるのみにある。
【0162】
実施例3-2は、実施例3-1を基に、主に化合物72でHIL層のPD材料を代替し、同じ青色光素子において、実施例3-1と同様に優れた素子の性能を取得することができる。実施例3-1と比較例3-1との比較に類似し、実施例3-2は、比較例3-3に対して、その効率CE/CIEyおよび耐用年数にいずれも大きな優位が存在し、比較例3-3もよく用いられる商用の素子の構造を用いた。実施例3-2は、素子の効率および耐用年数が大幅に向上しながら、電圧が比較例3-3に相当し、僅かに0.2V向上した。実施例3-2における素子は、正孔が効果的に発光層に輸送されることを確保可能であることが説明されている。
【0163】
上記実施例と比較例との比較から分かるように、HTMと発光層におけるホスト材料とのHOMOエネルギーレベル差、および正孔注入層の導電率は、素子の性能、特に素子の電圧、効率および耐用年数に対して重要な役割を担っている。本願における導電率およびエネルギーレベル差を同時に満たした実施例3-1~3-2は、CIEおよび効率がほぼ変化しないままで、さらに効率を向上させ、素子の耐用年数を向上させることができる。
【0164】
要するに、本願に係るトップエミッションを有する有機エレクトロルミネッセンス素子は、HIL層の導電率や、HTMと発光層におけるホスト材料とのエネルギーレベル差などの有機機能層の電気的性質を組み合わせて最適化することにより、良好な素子の性能、特に素子の電圧の低下および耐用年数の向上を取得することができる。
【0165】
ここで記載される各種の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。そのため、当業者にとって、保護しようとする本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例および好ましい実施例の変形を含むことが自明である。本発明の構想を逸脱しない前提で、本明細書に記載される材料および構造の多くは、他の材料および構造で代替することができる。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定的ではないことを理解すべきである。