(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】キャスタおよびキャスタを備えた物品
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
B60B33/00 U
B60B33/00 V
(21)【出願番号】P 2022136650
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598137423
【氏名又は名称】藤沢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 仁司
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-284489(JP,A)
【文献】実開平07-013242(JP,U)
【文献】特開2001-301628(JP,A)
【文献】特開2002-326504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に取付可能なキャスタであって、
前記物品に対して回転不能に固定される固定部材と、
前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な支持部材と、
前記支持部材に回転可能に取り付けられており、前記支持部材と共に、前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な車輪と、
所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪が、前記固定部材に対して回転可能である第一位置から、前記第一位置よりも前記物品から離れた第二位置に移動するときに、前記所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪を所定の向きに配向する配向機構と、
前記第二位置において、前記所定の向きに配向された前記支持部材および前記車輪を前記固定部材に対して回転不能となるようにロックするロック機構と、
を備え、
前記ロック機構は、
前記固定部材の前記所定の向きに設けられた第一係合部と、
前記支持部材に設けられ、前記第一係合部と係合する第二係合部と、
を含み、
前記配向機構は、前記支持部材に設けられ、前記第二係合部を前記第一係合部に案内する案内部を含み、
前記案内部は、前記第二係合部の位置が最も突出していない、前記第二係合部に向けて傾斜する傾斜面を含み、前記案内部の最も突出した部分は尖った形状を有し、
前記所定の向きを向いておらず且つ前記第一位置にある前記支持部材および前記車輪は、前記傾斜面が前記第一係合部に接触した状態で、前記固定部材に対して回転しながら前記第二位置に移動する、
キャスタ。
【請求項2】
前記第一係合部のうち、少なくとも前記案内部と接触する面は曲面である、
請求項1に記載のキャスタ。
【請求項3】
前記支持部材および前記車輪を前記第二位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備える、
請求項1に記載のキャスタ。
【請求項4】
前記第一係合部のうち、少なくとも前記案内部と接触する面は曲面であり、
前記支持部材および前記車輪を前記第二位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備える、
請求項1に記載のキャスタ。
【請求項5】
物品に取付可能なキャスタであって、
前記物品に対して回転不能に固定される固定部材と、
前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な支持部材と、
前記支持部材に回転可能に取り付けられており、前記支持部材と共に、前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な車輪と、
所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪が、前記固定部材に対して回転可能である第一位置から、前記第一位置よりも前記物品から離れた第二位置に移動するときに、前記所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪を所定の向きに配向する配向機構と、
前記第二位置において、前記所定の向きに配向された前記支持部材および前記車輪を前記固定部材に対して回転不能となるようにロックするロック機構と、
を備え、
前記ロック機構は、
前記固定部材の前記所定の向きに設けられた第一係合部と、
前記支持部材に設けられ、前記第一係合部と係合する第二係合部と、
を含み、
前記配向機構は、前記支持部材に設けられ、前記第二係合部を前記第一係合部に案内する案内部を含み、
前記案内部は、前記第二係合部の位置が最も突出していない、前記第二係合部に向けて傾斜する傾斜面を含み、
前記第一係合部のうち、少なくとも前記案内部と接触する面は曲面であり、
前記所定の向きを向いておらず且つ前記第一位置にある前記支持部材および前記車輪は、前記傾斜面が前記第一係合部に接触した状態で、前記固定部材に対して回転しながら前記第二位置に移動する、
キャスタ。
【請求項6】
前記支持部材および前記車輪を前記第二位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備える、
請求項5に記載のキャスタ。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載のキャスタが取り付けられた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタに関する。また、本発明は、当該キャスタを備えた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子など家具にはキャスタが取り付けられている。特許文献1は、上部に、被覆クッションを組み込み装着させたキャスタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばキャスタ付きの椅子を上下に積み重ねる場合、上側の椅子の車輪を、下側の椅子に引っ掛からないような向きに整列させる必要がある。従来のキャスタでは、使用者が車輪の向きを整列させる必要があり、手間が掛かっていた。
【0005】
本発明は、車輪を所定の向きに自動的に配向可能なキャスタを提供することを目的とする。また、本発明は、当該キャスタを備えた物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
物品に取付可能なキャスタであって、
前記物品に対して回転不能に固定される固定部材と、
前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な支持部材と、
前記支持部材に回転可能に取り付けられており、前記支持部材と共に、前記固定部材に対して、並進移動可能で、且つ回転可能な車輪と、
所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪が、前記固定部材に対して回転可能である第一位置から、前記第一位置よりも前記物品から離れた第二位置に移動するときに、前記所定の向きを向いていない前記支持部材および前記車輪を所定の向きに配向する配向機構と、
前記第二位置において、前記所定の向きに配向された前記支持部材および前記車輪を前記固定部材に対して回転不能となるようにロックするロック機構と、
を備えるキャスタ。
【0007】
(項目2)
前記ロック機構は、
前記固定部材の前記所定の方向に設けられた第一係合部と、
前記支持部材に設けられ、前記第一係合部と係合する第二係合部と、
を含む、
項目1に記載のキャスタ。
【0008】
(項目3)
前記配向機構は、前記支持部材に設けられ、前記第二係合部を前記第一係合部に案内する案内部を含む、
項目1または2に記載のキャスタ。
【0009】
(項目4)
前記案内部は、前記第二係合部の位置が最も突出していない、前記第二係合部に向けて傾斜する傾斜面を含み、
前記所定の向きを向いておらず且つ前記第一位置にある前記支持部材および前記車輪は、前記傾斜面が前記第一係合部に接触した状態で、前記固定部材に対して回転しながら前記第二位置に移動する、
項目3に記載のキャスタ。
【0010】
(項目5)
前記支持部材および前記車輪を前記第二位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備える、
項目1から4のいずれか1項に記載のキャスタ。
【0011】
(項目6)
項目1から5のいずれか1項に記載のキャスタが取り付けられた物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャスタでは、配向機構により、車輪を所定の向きに自動的に配向することができると共に、ロック機構により、所定の向きに配向された車輪を回転不能にロックできる。これにより、使用者が車輪の向きを揃える手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3B】
図3Aとは反対側から見たキャスタの分解斜視図である。
【
図4】固定部材が支持部材および車輪に対して下方に移動したキャスタの断面図である。
【
図5】車輪が所定の向き(
図2A参照)から90°回転したキャスタの平面図である。
【
図6】車輪が所定の向き(
図2A参照)から90°回転したキャスタを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のキャスタ100およびキャスタ100を備える物品1000について、図面を参照しつつ説明する。なお、説明の便宜上、
図1に示す上下方向および前後方向をそれぞれ、キャスタ100の上下方向および前後方向として説明する。
【0015】
<1.キャスタおよび物品の全体構成>
図2Bに示すように、本発明のキャスタ100は、物品1000に取り付けて使用される。物品1000としては、例えば、椅子や机といった家具が挙げられるが、物品1000は、これらに限定されない。
【0016】
図1Aに示すように、キャスタ100は、主に、固定部材10と、支持部材20と、車輪30と、配向機構と、ロック機構と、を備える。
【0017】
配向機構は、固定部材10の一部および支持部材20の一部から構成されている。配向機構は、所定の向きを向いていない車輪30を、所定の向きに自動的に配向するための機構である。
【0018】
ロック機構は、固定部材10の一部および支持部材20の一部から構成されている。ロック機構は、配向機構によって所定の向きに配向された車輪30を、その所定の向きから回転しないようにするためにロックする機構である。
【0019】
図2Bおよび
図4に示すように、固定部材10は、物品1000に固定される。支持部材20および車輪30は、ロック解除位置(「第一位置」に相当する。
図4参照。)と、ロック位置(「第二位置」に相当する。
図2B参照。)との間で、固定部材10に対して移動可能である。ロック解除位置とは、支持部材20および車輪30が、固定部材10に対して固定部材10の中心軸周りで回転可能である位置のことである。ロック位置とは、支持部材20および車輪30が、ロック解除位置よりも物品1000から離れており、且つ固定部材10に対して回転不能である位置のことである。
【0020】
配向機構は、ロック解除位置にあり且つ所定の向きを向いていない支持部材20および車輪30を、固定部材10の中心軸周りを回転させながら、所定の向きに配向すると共にロック位置に移動させる。ロック機構は、所定の向きに配向され且つロック位置に移動した車輪30を、固定部材10に対して回転不能となるようにロックにする。これにより、車輪30が、所定の向きに配向された状態で維持される。
【0021】
以下、各構成要素の詳細を説明する。以下では、車輪30が前を向いている状態(
図1A参照)を、車輪30が所定の向きに配向された状態として説明する。すなわち、「前向き」を「所定の向き」として説明する。
【0022】
<1-1.固定部材>
主に
図1Aから
図3Bを参照して、固定部材10について説明する。
【0023】
図3Aおよび
図3Bに示すように、固定部材10は、上下方向に延びる、概ね棒状の部材から成る。固定部材10は、取付部11と、第一挿入部12と、第二挿入部13と、第一係合部14と、を備える。
【0024】
取付部11は、固定部材10を、物品1000に対して固定するための部分である。固定部材10は、物品1000に対して、回転不能に、且つ、上下方向に並進移動不能に(すなわち、固定部材10が物品1000に接近しないように且つ物品1000から離隔しないように)固定される。
【0025】
取付部11は、円柱状である第一部分111と、第一部分111の下部から径方向外方に延びる第二部分112と、を備える。取付部11は、例えば、物品1000の開口部内に圧入される。これにより、固定部材10は、物品1000に固定される。
【0026】
第二部分112は、後述する筒部22の貫通穴の内径よりも大きい水平方向長さを有する。そのため、固定部材10を支持部材20に対して下方に移動させたとき、第二部分112は、筒部22の貫通穴内には挿入されず、筒部22の上端に接触する(
図4参照)。第二部分112が筒部22の上端に接触することで、固定部材10は停止する。このように、第二部分112は、固定部材10の下方への移動量を制限するストッパとして機能している。
【0027】
第一挿入部12は、第二部分112から下方に延びている。第二挿入部13は、第一挿入部12から下方に延びている。第一挿入部12および第二挿入部13は、概ね円柱状である。
【0028】
図2Bに示すように、第一挿入部12および第二挿入部13は、筒部22の貫通穴内に挿入される。第一挿入部12は、筒部22の貫通穴の内径よりもわずかに小さい外径を有する。第二挿入部13の外径は、第一挿入部12の外径よりも小さい。したがって、第一挿入部12と第二挿入部13との間には、段差15が形成されている。また、第二挿入部13の外面と筒部22の内面との間には、隙間が形成されている。この隙間には、弾性部材40が配置される。弾性部材40は、例えば、コイルバネであり、弾性部材40の中心には、第二挿入部13が挿入される。弾性部材40の上端は、段差15に接触している。弾性部材40の下端は、筒部22の突起部221に接触している。
【0029】
第一係合部14は、第二挿入部13の下部に設けられている。第一係合部14は、配向機構およびロック機構の一部を構成している。
図1Cに示すように、第一係合部14が、支持部材20の第二係合部222に係合することにより、支持部材20および車輪30が、固定部材10に対して、固定部材10の中心軸周りで回転不能になる。第一係合部14は、例えば、第二挿入部13の下部から径方向外方に突出するピンなどの突出部であり、第二係合部222は、第一係合部14を収容する凹部である。
【0030】
後述するように、第一係合部14は、筒部22の案内部223に接触する。第一係合部14のうち、少なくとも案内部223と接触する面は、曲面であることが好ましい。第一係合部14は、例えば、円筒状または円柱状であることが好ましい。
【0031】
<1-2.支持部材>
主に
図1Aから
図3Cを参照して、支持部材20について説明する。
【0032】
図3Aおよび
図3Bに示すように、支持部材20は、本体部21と、筒部22と、を備える。
【0033】
本体部21は、円形部材の下部が水平に切断された形状をしている。本体部21の円弧は、後述する第一車輪部材31の外周および第二車輪部材32の外周と同じ曲率を有している。本体部21の前後方向中央には、車軸33を挿入するための貫通穴21aが設けられている。
【0034】
筒部22は、本体部21の中心から後方に偏位した位置に設けられ、本体部21に一体形成されている。筒部22は、上下方向に延びる貫通穴を有する。貫通穴を画定する内面は、円筒状である。既に述べた通り、この貫通穴内には、第一挿入部12、第二挿入部13および弾性部材40が挿入される。
【0035】
図2Bおよび
図3Cに示すように、筒部22は、突起部221と、第二係合部222と、案内部223と、を備える。
【0036】
図2Bに示すように、突起部221は、筒部22の下部から径方向内方に突出している。弾性部材40は、突起部221上に配置される。
【0037】
第二係合部222は、ロック機構の一部を構成している。
図3Cに示すように、第二係合部222は、筒部22の下端の前方に設けられている。第二係合部222は、第一係合部14と係合する。第一係合部14が突出部である場合、第二係合部222は、その突出部を収容する凹部である。
【0038】
案内部223は、配向機構の一部を構成している。案内部223は、車輪30が所定の向きに配向されるように、支持部材20および車輪30を案内する。
図3Cに示すように、案内部223は、筒部22の下端で、且つ筒部22の貫通穴の周囲に設けられた傾斜面である。案内部223のうち、後方部分(第二係合部222とは180°反対に位置する部分)は最も下方に突出しており、前方部分(第二係合部222)は最も下方に突出していない。すなわち、案内部223の後方部分は、本体部21の下面からの高さが最も高く、したがって最も下方に位置しており、案内部223の前方部分は、本体部21の下面からの高さが最も低く、したがって最も上方に位置しており、案内部223は、後方から前方に向けて次第に上方に傾斜している。案内部223の後方部分(最も下方に突出した部分)は、平坦ではなく、尖った形状であることが好ましい。
【0039】
<1-3.車輪>
主に、
図3Aおよび
図3Bを参照して車輪30について説明する。
【0040】
車輪30は、第一車輪部材31と、第二車輪部材32と、車軸33と、を備える。第一車輪部材31と第二車輪部材32とは同一の構造を有する。第一車輪部材31は、その中心に、車軸33を挿入するための挿入穴31aを有する。第二車輪部材32は、その中心に、車軸33を挿入するための挿入穴32aを有する。
【0041】
第一車輪部材31は、支持部材20の一方側に配置され、第二車輪部材32は、支持部材20の他方側に配置される。車軸33は、支持部材20の貫通穴21a、第一車輪部材31の挿入穴31aおよび第二車輪部材32の挿入穴32aに挿入される。車軸33により、第一車輪部材31と第二車輪部材32とが連結される。こうして、第一車輪部材31、第二車輪部材32および車軸33は、支持部材20に対して回転可能に取り付けられる。
【0042】
<2.キャスタの使用方法>
図2Bおよび
図4を参照して、車輪30を固定部材10に対して回転自在にする方法(すなわち、物品1000の移動方向を変える方法)について説明する。
【0043】
弾性部材40の弾性力(すなわち、バネ定数)は、物品1000および固定部材10の自重以上となるように設定されている。そのため、
図2Bに示すように、物品1000に重力以外の下方への外力が加えられていない場合、固定部材10に対して物品1000の自重が掛かっても、弾性部材40の弾性力により、固定部材10は下がらないようになっている。したがって、第一係合部14は、第二係合部222と係合したままである、すなわち、支持部材20および車輪30は、ロック位置にあり、ロック機構によりロックされ、固定部材10に対して回転できない。
【0044】
物品1000の移動方向を変えたい場合、
図4に示すように、使用者は、弾性部材40の弾性力に抗して物品1000を下方に押す。物品1000が下方に押されることにより、物品1000および固定部材10が、支持部材20に対して下方に並進移動する(言い換えると、支持部材20および車輪30は、物品1000に近づくように、固定部材10の軸方向に並進移動する。)。固定部材10が下方に並進移動することにより、第一係合部14が第二係合部222から離脱する(すなわち、支持部材20および車輪30はロック解除位置に移動する。)。また、弾性部材40は、段差15と突起部221との間で圧縮される。こうして車輪30のロックが解除され、支持部材20および車輪30は、固定部材10に対して回転可能になる。車輪30が回転自在になることにより、物品1000を方向転換することができる。
【0045】
次に、
図5および
図6を参照しつつ、配向機構を利用して、所定の向きを向いていない車輪30を所定の向き(前向き)に整列させる方法について説明する。なお、以下で「床面」とは、車輪30が、その上を接触しながら転がる面の総称であり、室内の床面に限定されない。
【0046】
例えば、椅子を上下に積み重ねる際には、上側の椅子の車輪30が、下側の椅子に引っ掛かるのを防ぐために、上側の椅子の車輪30を、所定の向き(すなわち、下側の椅子に引っ掛からない向き)に配向する必要がある。
【0047】
図5は、車輪30が床面に接触しており、且つ、所定の向き(
図2A参照)から90°回転した状態を示している。このとき、
図6に示すように、第一係合部14は、第二係合部222から離脱し、案内部223上に位置しており、支持部材20および車輪30は、ロック解除位置にある。また、弾性部材40は、段差15と突起部221との間で圧縮されている(
図4参照)。この状態から、使用者が物品1000を持ち上げ、車輪30を床面から離すと、弾性部材40の弾性力ならびに支持部材20および車輪30の自重により、支持部材20および車輪30が固定部材10に対して下方に回転移動する。より詳細には、案内部223は、第二係合部222の位置が最も低くなった傾斜面であるため、支持部材20および車輪30は、第二係合部222の位置が前方になるように、案内部223が第一係合部14に接触したまま固定部材10の軸周りを回転して前向きに配向される(すなわち、支持部材20および車輪30はロック位置に移動する)。そして、第二係合部222が第一係合部14と係合することにより、車輪30が前を向いた状態でロックされる。
【0048】
<3.特徴>
本発明のキャスタ100では、配向機構により、車輪30を自動的に所定の向きに配向することができると共に、ロック機構により、所定の向きに配向された車輪30を固定部材10に対して回転不能となるようにロックできる。したがって、使用者が車輪30を操作して所定の向きに向ける必要がなく、また、一旦車輪30が所定の向きに配向されると、車輪30が別の向きを向いてしまうことがないため、車輪30を整列させる手間を省くことができる。
【0049】
案内部223が傾斜面であることにより、簡単な構造により案内部223を構成できる。
【0050】
案内部223の最も突出した部分が尖った形状であることにより、その尖った部分が第一係合部14と接触したとき、支持部材20は安定しない。よって、案内部223の最も突出した部分が第一係合部14と接触したときでも、支持部材20および車輪30はその位置で停止することなく、回転して下方に移動することができる。
【0051】
第一係合部14のうち、少なくとも案内部223と接触する面が曲面であることにより、第一係合部14と案内部223との間の接触面積が小さくなるため、摩擦抵抗が小さくなる。これにより、支持部材20および車輪30は、ロック解除位置からロック位置に移動する際に、固定部材10の中心軸周りでスムーズに回転できる。
【0052】
キャスタ100が弾性部材40を備えていることにより、弾性部材40の弾性力によって、支持部材20および車輪30がロック位置に戻りやすくなる。
【0053】
<4.変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に、本発明の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0054】
(1)固定部材10の物品1000に対する固定方法は圧入に限定されない。固定部材10は、例えばネジなどの締結部材よって物品1000に固定されてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、車輪30が床面に接触しており、物品1000に重力以外の下方への外力が加えられていない場合でも、車輪30がロック機構によりロックされている場合について説明した。しかしながら、ロック機構は、車輪30が床面から離れた後、配向機構により車輪30が所定の向きに配向された際に、車輪30をロックできさえすればよく、車輪30が床面に接触している場合にまで、車輪30をロックしている必要はない。したがって、弾性部材40の弾性力は、物品1000および固定部材10の自重よりも小さくてもよい。この場合、車輪30が床面と接触すると、使用者が物品1000を下方に押さなくても、物品1000および固定部材10の自重により、固定部材10が支持部材20に対して下がるため、第一係合部14が第二係合部222から離脱し、車輪30が、ロック解除され、回転自在となる。あるいは、
図7に示すように、例えば、キャスタ100は弾性部材40を備えていなくてもよく、この場合も、使用者が物品1000を下方に押さなくても、物品1000および固定部材10の自重により、固定部材10が支持部材20に対して下がる。そして、第一係合部14が第二係合部222から離脱し、車輪30がロック解除され、回転自在となる。キャスタ100が弾性部材40を備えていなくても、車輪30が床面から離れるように使用者が物品1000を持ち上げると、支持部材20および車輪30の自重により、支持部材20および車輪30は、固定部材10に対して下方に移動でき、配向機構により所定の向きに配向される。
【符号の説明】
【0056】
100 キャスタ
10 固定部材
14 第一係合部(配向機構およびロック機構の一部)
20 支持部材
222 第二係合部(ロック機構の一部)
223 案内部(配向機構の一部)
30 車輪
40 弾性部材
1000 物品
【要約】
【課題】車輪を所定の向きに自動的に配向可能なキャスタを提供する。
【解決手段】キャスタ100は、固定部材10と、支持部材20と、車輪30と、配向機構と、ロック機構と、を備える。配向機構は、所定の向きを向いていない支持部材20および車輪30を所定の向きに配向する。ロック機構は、所定の向きに配向された支持部材20および車輪30を固定部材10に対して回転不能となるようにロックする。
【選択図】
図2B