(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ゴム栓
(51)【国際特許分類】
B65D 51/00 20060101AFI20240119BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B65D51/00 100
A61J1/05 315B
(21)【出願番号】P 2022571020
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024472
(87)【国際公開番号】W WO2022137609
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020214197
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149000
【氏名又は名称】株式会社大協精工
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】須藤 洋司
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-165861(JP,A)
【文献】特開平10-151171(JP,A)
【文献】実開平10-260(JP,U)
【文献】特開平8-275984(JP,A)
【文献】特開2013-103755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/00
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面を有する笠部と、
該笠部の下面に設けられた脚部と、を有するゴム栓であって、
前記脚部は、笠部下面側中央にテーパ基部を有し、
前記テーパ基部の曲率半径R1は、2mm以上4mm以下であることを特徴とする、ゴム栓。
【請求項2】
前記脚部の内壁の長さPは、前記脚部自体の長さDより長く、前記脚部自体の長さDに対して100%超160%未満である、請求項1に記載のゴム栓。
【請求項3】
前記テーパ基部の頂点を含む円弧の始点と終点との距離R2は、8mm以下である、請求項2に記載のゴム栓。
【請求項4】
前記笠部は、笠部上面側中央に凹部を備え、
前記距離R2に対して前記凹部の外径R3は、90%以下である、請求項3に記載のゴム栓。
【請求項5】
前記笠部は、針が穿刺される針刺し部を有し、
前記針刺し部の厚みEは、前記笠部の厚みCの60%以上100%未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム栓。
【請求項6】
前記針刺し部の厚みEは、3mm以下である、請求項5に記載のゴム栓。
【請求項7】
前記脚部自体の長さDに対して前記針刺し部の厚みEは、15%以上40%以下である、請求項5又は6に記載のゴム栓。
【請求項8】
前記脚部は、少なくとも切り欠きを一箇所有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のゴム栓。
【請求項9】
前記脚部には、脚部先端側の外周面にリング状の凸部が形成されている、請求項8に記載のゴム栓。
【請求項10】
凍結乾燥製剤の封入に用いられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のゴム栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム栓に関する。より詳しくは、コアリングの発生を抑制可能なゴム栓に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を保存する容器として、バイアルやアンプルがある。バイアルは、主にガラスやプラスチック等の医薬品用容器のリップに、ゴム栓が打栓されることで密閉されている。容器を開封(又は破壊)せずとも、ゴム栓に針を差し込むことによってシリンジ等の器具と連通させることができるため、不用意に容器を開放することなく衛生的に作業が可能である。
【0003】
一方で、医薬品用容器のリップに適用するゴム栓には、高度な品質特性及び物理的特性が要求される。例えば、抗生物質などの製剤を保存するバイアルのリップを密封又は止栓するゴム栓に要求される品質特性としては、その用途上、日本薬局方の輸液用ゴム栓試験に準拠すべきである。また、ゴム栓に針入部から針を穿刺する際に、ゴム栓を形成するゴムの一部(ゴム片)が削り取られる現象(コアリング)が生じにくいようにするための工夫も必要である。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1には、上面と下面を有する蓋部とこの蓋部の下面に設けられた脚部を有してなるゴム栓であって、蓋部中央の針刺し部分は、この針刺し部分の上面と下面の間に蓋部の下面が位置するように陥没され、笠部の下面はフラット(平坦)な形状になっていることにより、コアリングが少ないバイアル用ゴム栓が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、フランジを有する笠部と、該笠部の天面に凹部を有するように形成され、前記凹部から底面まで前記笠部を縦断するように形成された穿刺領域と、前記笠部の軸心に対して前記穿刺領域より外方位置であって、且つ、前記笠部の底面に下方に突出するように形成された脚部とを備えるバイアル用ゴム栓であって、前記穿刺領域はゴム硬さ20~35のゴムで形成され、かつ、前記笠部の前記凹部以外の天面はゴム硬さ58~90のゴムで形成され、複数の材質から構成されることにより、コアリングが少ないバイアル用ゴム栓が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、バイアルとこれに用いる密封装置において、ゴム栓に該当するシール部材を、バイアルの収容部内と外部空間とが連通した半打栓姿勢から、その連通を遮断する密封姿勢へ簡単に切換えでき、密封後はこの密封姿勢を確実に保持でき、しかも簡単な構成で安価に実施できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-24384号公報
【文献】国際公開第2012/090328号パンフレット
【文献】特開2011-50699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来行われてきたコアリング対策は未だ十分ではない。そこで、本発明では、コアリングが発生する問題を解決することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明では、上面と下面を有する笠部と、該笠部の下面に設けられた脚部と、を有するゴム栓であって、前記脚部は、笠部下面側中央にテーパ基部を有し、前記テーパ基部の曲率半径R1は、2mm以上4mm以下であることを特徴とする、ゴム栓を提供する。
本発明において、前記脚部の内壁の長さPは、前記脚部自体の長さDより長く、前記脚部自体の長さDに対して100%超160%未満であってよい。
本発明において、前記テーパ基部の頂点を含む円弧の始点と終点との距離R2は、8mm以下であってよい。
本発明において、前記笠部は、笠部上面側中央に凹部を備え、前記距離R2に対して前記凹部の外径R3は、90%以下であってよい。
本発明において、前記笠部は、針が穿刺される針刺し部を有し、前記針刺し部の厚みEは、前記笠部の厚みCの60%以上100%未満であってよい。
本発明において、前記針刺し部の厚みEは、3mm以下であってよい。
本発明において、前記脚部自体の長さDに対して前記針刺し部の厚みEは、15%以上40%以下であってよい。
本発明において、前記脚部は、少なくとも切り欠きを一箇所有していてよい。
本発明において、前記脚部には、脚部先端側の外周面にリング状の凸部が形成されていてよい。
本発明に係るゴム栓は、凍結乾燥製剤の封入に用いられてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コアリングの発生を抑制可能なゴム栓を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Aは、本発明に係るゴム栓の実施形態の一例を垂直横方向断面により説明する図であり、
図4のP-P線断面図である。Bは、Aの一部拡大図である。
【
図2】本発明に係るゴム栓の実施形態の一例を水平横方向から説明する図である。
【
図3】本発明に係るゴム栓の実施形態の一例を鉛直上方から説明する図である。
【
図4】本発明に係るゴム栓の実施形態の一例を鉛直下方から説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
本発明に係るゴム栓1は、
図1に示すように、上面と下面を有する笠部11と、該笠部11の下面に設けられた脚部12と、を有し、前記脚部12は、笠部下面側中央に、略半球状のテーパ基部10を有し、前記テーパ基部10の曲率半径R1は、2mm以上4mm以下であることを特徴とする。
【0014】
上述した特許文献1では、笠部の厚さと脚部の長さがほぼ同じであり、脚部の長さが短いため、コアリングの問題を解決しつつも、凍結乾燥製剤用ゴム栓のように半打栓時にゴム栓の安定性を確保できる脚部形状については言及されておらず、また、搬送時に倒れやすいという問題がある。
また、上述した特許文献2では、硬度の異なる複数のゴム材質からゴム栓を製造しているため、製造コストがかかるという問題がある。
更に、上述した特許文献3では、半打栓姿勢の際に、保持部材や保護蓋が必要となり、部品数が増えてしまうため、製造コストが増加するという問題がある。
【0015】
そこで、本発明では、コアリングが発生する問題を解決することを主目的としつつ、凍結乾燥製剤用ゴム栓のように半打栓時にゴム栓の安定性を確保できる脚部形状とし、硬度が同じ単一のゴム材質を用いてもコアリングの発生を抑制でき、部品数を減らし、製造コストをかけず、凍結乾燥に適したゴム栓も提供する。
【0016】
曲率半径R1は、
図1に示すように、テーパ基部10の頂点を含む円弧に対応する半径である。また、テーパ基部10の頂点から前記脚部12の中心に向かっておろした垂線(中心軸)上に曲率半径R1の中心点があり、前記円弧の始点及び終点を、「R止まり部1」とする。前記「R止まり部1」は、脚部12の内壁の長さPの一部である。曲率半径R1が2mm未満であると、脚部12の内側が小さくなり過ぎてしまい、中空針が脚部12の内壁を削ってコアリングが発生してしまう可能性が高くなる。また、曲率半径R1が4mmを超えると、脚部12で成型上の不良を生じやすくなる。
【0017】
曲率半径R1は、より好ましくは、2mm以上3mm以下である。
【0018】
本発明に係るゴム栓1は、後述する実施例に示すように、針として、プラスチック針及び金属針のいずれを用いた場合においても、コアリングの発生が抑制されている。特に、プラスチック針は、閉鎖式薬物搬送システム(Closed System Drug Transfer Device:CSTD)において用いられるため、本発明に係るゴム栓1は、CSTD用の製剤を封入するために用いることもできる。
【0019】
本発明に係るゴム栓1を形成する材料としては、例えばブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム等の合成ゴム又は天然ゴムなどが挙げられる。本発明は、例えばゴム栓を、フッ素系樹脂を含むフィルムでラミネートした、所謂ラミネートゴム栓にも適用可能である。前記フッ素系樹脂としては、例えば四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニール樹脂、四フッ化エチレン-エチレン共重合体樹脂、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂などが挙げられる。ラミネートするフィルムの厚みは、例えば0.002mm以上0.5mm以下とすることができる。また、本発明に係るゴム栓1の硬度は、例えば25~45であり、好ましくは28~40である。
【0020】
本発明において、前記脚部12の内壁の長さP(テーパ基部10の頂点から、R止まり部2のうち、脚部12の接地側で(脚部12内側先端で)平坦になる点までの長さ(
図1のA参照))は、前記脚部12自体の長さD(笠部下面から脚部12の接地側で平坦になる平面までの最短距離(
図1のA参照))より長く、前記脚部12自体の長さDに対して100%超160%未満であることが好ましく、100%超145%未満であることがより好ましい。これにより、脚部12をラミネートする際にフィルムが延ばされ過ぎて、フィルム破れ等の成型上の不具合が生じることを防ぐことができる。
【0021】
本発明において、前記テーパ基部10の頂点を含む円弧の始点と終点との距離R2は、8mm以下が好ましく、6mm以下がより好ましい。前記距離R2が10mmを超えると、成型性が悪く、また、脚部にフィルム貼付きにくい。また、前記距離R2が4mm未満であると、中心針により内壁面を削りやすく、また、コアリングが起きやすい。なお、前記距離R2は、
図1示すように、「R止まり部1」の点から、径方向に水平線を伸ばした前記テーパ基部10の頂点を含む円弧の弦長である。また、「R止まり部1」の始点及び終点の位置は、後述する凹部111の外径R3の位置や、必要な脚部12自体の長さDで定めることができる。更に、「R止まり部1」の始点及び終点の位置は、
図1に示すように笠部下面に設けた環状突起Bの外径位置と同一の高さ、又は環状突起Bの外径位置との高さ±10%の範囲内で定めることができる。
【0022】
また、「R止まり部1」は、脚部内側先端の「R止まり部2(R止まり部1側)」において、中心軸(線)に向かって延在する接線上に存在することが好ましい。また、「R止まり部1」と脚部内壁先端の「R止まり部2(R止まり部1側)」とを結ぶ接線に傾斜があることで、脚部12の全長を短くすると共に、脚部12の体積が増えることで、脚部12の安定性の向上、ひいてはゴム栓1全体の安定性を向上させることができる。また、金属針のみならず、金属針より径が太いプラスチック針等である中空針が斜めに刺さってもコアリングを生じにくく、コアリングの発生を回避することができる。
なお、「R止まり部2」は、
図1に示すように、脚部内側先端に設けた曲線上に2点あり、脚部12の接地側で(脚部12内側先端で)平坦になる点と、「R止まり部1」側の点と、からなる。本発明では、「R止まり部2」の2点を繋いだ曲線における曲率半径は、0.1~1.0mmが好ましく、約0.5mmとすることが特に好ましい。
【0023】
また、前記曲率半径R1と前記距離R2との関係は、2R1>R2、又は2R1=R2である。更に、前記曲率半径R1と前記距離R2は、
図1に示すように、笠部下面中央と脚部先端からD/2以上の高さ(位置)との間にある。
【0024】
図1及び
図3に示すように、前記笠部11は、笠部上面側中央に凹部111を備え、前記距離R2に対して前記凹部111の外径R3は、90%以下であることが好ましい。これにより、コアリングの発生をより抑制することができる。
【0025】
前記笠部11は、笠部上面側中央に凹部111を備えているが、前記凹部111の底面となる針が穿刺される針刺し部112を有し、前記針刺し部112の厚みEは、前記笠部の厚みCの60%以上100%未満であることが好ましい。60%以上とすることで、針刺し部112が薄くなり過ぎて破損し、薬液漏れ等が発生することを防ぐことができる。また、100%未満とすることで、コアリングの発生をより抑制することができる。
【0026】
この場合において、前記針刺し部112の厚みEは、3mm以下が好ましい。針刺し部112の厚みEが3mmを超えると、コアリングの発生リスクが大きくなる。また、針を穿刺する際の針刺抵抗も大きくなる。針刺し部112の厚みEの下限値は特に限定されないが、自己密封性及びバリア性を保つためにも、1mm以上であることが好ましい。
【0027】
また、この場合において、前記脚部12自体の長さDに対して前記針刺し部の厚みEは、15%以上40%以下であることが好ましい。15%以上とすることで、針刺し部112が薄くなり過ぎて破損し、薬液漏れ等が発生することを防ぐことができる。また、40%以下とすることで、コアリングの発生リスクを抑えることができる。
【0028】
図4に示すように、前記脚部12は、中央に前記針刺し部112と同じ直径で構成される円状のテーパ基部10を包含し、前記テーパ基部10を構成する円周の半分以上が開口するように切り欠き13を一箇所有することが好ましい。切り欠き13を一箇所有することで、切り欠きが二箇所で脚部12が二股構造の場合と比較して、半打栓時にリップの内壁への接触面積が大きくなるため、ゴム栓1のズレや外れの発生を抑制できる。また、半打栓時に前記脚部12がバイアルのリップに適合するように起立したままの状態となり、その際にバイアルからゴム栓1が抜けないように、前記脚部12の外周面に設けた凸部121が強固にリップの内壁に密着した状態となり、前記ゴム栓1を固定することができる。したがって、本発明に係るゴム栓1は、凍結乾燥製剤用とすることができ、半打栓時においても安定性を有する。また、切り欠き13を一箇所有することで、ゴム栓1自体が自立し易くなり、搬送時にゴム栓1が倒れることや、脚部12同士が密着するドッキングも防止できる。
【0029】
なお、凍結乾燥製剤を医薬品用容器に充填する方法は、一般的に、以下の(イ)~(ハ)の順で行われる。
(イ)製剤を医薬品用容器本体内に無菌的に充填する。
(ロ)次いで、医薬品用容器本体のリップにゴム栓を半打栓して異物の混入を防いだ状態で、凍結乾燥器内にて凍結乾燥を行う。
(ハ)凍結乾燥後、完全打栓して密栓し、凍結乾燥器から取り出す。
【0030】
図2及び
図4に示すように、前記脚部12には、脚部先端側の外周面には、テーパ形でリング状である凸部121が形成されていることが好ましい。これにより、上記(ロ)の工程における半打栓時に、医薬品用容器本体のリップの内壁面に対し、テーパ形状の窄みがガイドとなりスムーズに半打栓できると共に、前記リップの内壁面に対する接触面積を増加させ、ゴム栓1が安定且つ強固に固定されて医薬品用容器に篏合するようになる。
【実施例】
【0031】
以下、
図1に示す実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、
これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0032】
<試験例1>
凍結乾燥製剤用の医薬品用容器に実施例1及び実施例2のゴム栓を打栓し、下記表1に示す各種針を用いてコアリングの発生本数について調べた。
【0033】
[実施例1]
上面と下面を有する笠部11と、該笠部11の下面に設けられた脚部12と、を有するゴム栓1であって、前記脚部12は、笠部下面側中央にテーパ基部10を有し、前記テーパ基部10の曲率半径R1は2.65mmである、
図1に示すような構造のフッ素系樹脂でコーティングされた塩素化ブチルゴム製のゴム栓1を用意した。前記ゴム栓1の脚部12の内壁の長さPは、中心軸上にある笠部下面中央から脚部内壁先端で平坦になる点の「R止まり部2」までの長さであり、13.3mmであった。脚部12自体の長さDは10.2mmであった。また、前記脚部12の笠部下面側の距離R2は4.6mmであった。更に、前記笠部11は、笠部上面側中央に凹部111を備え、前記凹部111の外径R3は4.0mmであった。また、前記笠部11は、針が穿刺される針刺し部112を有し、前記針刺し部112の厚みEは2.5mmであった。
【0034】
[実施例2]
上面と下面を有する笠部11と、該笠部11の下面に設けられた脚部12と、を有するゴム栓であって、前記脚部12は、笠部下面側中央にテーパ基部10を有し、前記テーパ基部10の曲率半径R1は3.30mmである、
図1に示すような構造のフッ素系樹脂でコーティングされた塩素化ブチルゴム製のゴム栓1を用意した。前記ゴム栓1の脚部12の内壁の長さPは、中心軸上にある笠部下面中央から脚部内壁先端で平坦になる点の「R止まり部2」までの長さであり、13.2mmであった。脚部12自体の長さDは10.3mmであった。また、前記脚部12の笠部下面側の距離R2は5.3mmであった。ただし、本実施例2は、前記笠部11において、笠部上面側中央に凹部111は備えていない。また、前記笠部11は、針が穿刺される針刺し部112を有し、前記針刺し部112の厚みEは3.3mmであった。
【0035】
試験結果を、下記表1に示す。
【0036】
【0037】
本試験例1の結果から、上面と下面を有する笠部11と、該笠部11の下面に設けられた脚部12と、を有するゴム栓1であって、前記脚部12は、笠部下面側中央にテーパ基部10を有し、前記テーパ基部10の曲率半径R1は、2mm以上4mm以下であることを特徴とする、本発明に係るゴム栓1を用いることにより、コアリングの発生が抑制されることが示唆された。また、上記表1に示すように、本発明に係るゴム栓1は、プラスチック針及び金属針のいずれを用いた場合においても、コアリングの発生が少なかった。更に、針刺し部112の厚みEを3mm以下とすることで、よりコアリングの発生が抑制されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のことから明らかなように、本発明によれば、コアリングが発生する問題を解決できると共に、凍結乾燥製剤用ゴム栓のように半打栓時にゴム栓の安定性を確保できる脚部形状とし、硬度が同じ単一のゴム材質を用いてもコアリングの発生を抑制でき、部品数を減らし、製造コストをかけず、凍結乾燥に適したゴム栓を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ゴム栓
10 テーパ基部
11 笠部
111 凹部
112 針刺し部
12 脚部
121 凸部
13 切り欠き
R1 テーパ基部の曲率半径
R2 テーパ基部の頂点を含む円弧の始点と終点との距離
R3 凹部の外径
B 環状突起
C 笠部の厚み
D 脚部自体の長さ
E 針刺し部の厚み