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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20240119BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B23B51/00 S
A61B17/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023103018
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517098310
【氏名又は名称】株式会社メドメタレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】山内 祐二
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104772(JP,A)
【文献】特開平10-058291(JP,A)
【文献】特表2012-529375(JP,A)
【文献】特許第5940205(JP,B1)
【文献】特開2018-176360(JP,A)
【文献】特開2019-188525(JP,A)
【文献】特開2019-115939(JP,A)
【文献】特開2017-109274(JP,A)
【文献】特開2017-042879(JP,A)
【文献】特開2014-166660(JP,A)
【文献】特開2012-161912(JP,A)
【文献】特開2010-058179(JP,A)
【文献】特許第7206572(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3224645(JP,U)
【文献】特表2013-506562(JP,A)
【文献】国際公開第2017/034032(WO,A1)
【文献】特開2020-175465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0067114(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0036622(US,A1)
【文献】特開2014-065081(JP,A)
【文献】特開2019-181615(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00-51/14
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線まわりに回転させるドリル本体の外周に形成された切り屑排出溝と、
前記ドリル本体の外周から前記切り屑排出溝を横切って先端側斜め上方に向けて形成さ
れた第1シンニング面と、
前記第1シンニング面との境界稜線に主切れ刃となる第1切れ刃を形成し、前記第1シ
ンニング面と接して、ドリル回転方向と反対側に形成される第1逃げ面と、
前記第1シンニング面の先端側であって、当該第1シンニング面と接し、ドリル回転方
向と反対側に形成される第2シンニング面と、
前記第2シンニング面と前記第1逃げ面との境界稜線に形成される第2切れ刃と、
を有し、
前記第1切れ刃の外周側端部が、ドリル外周面または当該ドリル外周面近傍にまで到って
いるドリル。
【請求項2】
前記第2切れ刃の前記第2シンニング面による第2すくい角が正角であることを特徴と
する請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記第2すくい角が20°~60°である請求項2に記載のドリル。
【請求項4】
先端部に形成されるチゼルエッヂの長さが零である請求項1~3のいずれか1項に記載
のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドリル全般に関し、特に医療用のドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
穿孔に使用されるドリルは数多くの産業分野で使用されている。手術に使用されるドリ
ルは骨の穿孔に良く用いられる。骨は表面が硬い皮質骨に覆われ、内部は柔らかい海綿骨
となっている。皮質骨は非常に硬く、ショア硬度で90以上であり、この硬度は、ビッカ
ース硬度で820Hv、ロックウェル硬度で64.7HRcに相当する。
【0003】
図10に示すドリルは、手術用ドリルであり、切削力を向上させ、先端部内終端から外
周に掛けて創成する切刃の切削能力を向上させることによって摩耗し難く、且つ切削力に
優れた医療用ドリルを提供することを目的知するものである。
【0004】
図10は、特許文献1の図2の相当する図であり、図10(a)は先端側から見た平面
図であり、図10(b)は先端部分の側面図である。シンニング切り刃101が先端部に
形成され、シンニング切り刃101は、シンニングにより形成されたすくい面106と逃
げ面103の境界に形成されている。主切り刃102は、シンニング切り刃101と連続
して、シンニング切り刃101の外周側に形成されている。主切り刃により形成されたす
くい面105とシンニング切り刃101より形成されたシンニング面108形成されてい
る。2つのシンニング切り刃101の間にはチゼル104が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-108223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の医療用ドリルでは、シンニング切り刃101を形成するシンニング
面108が軸対象に2カ所にしかなく、切れ味を高めるためにシンニングの凹部を大きく
すると芯厚が小さくなりドリルの剛性が下がり、ドリルの損傷を避けることができない。
一般的に、ドリルは繰り返し使用されるものであるため、耐久性が必要とされるが、引用
文献1に記載のドリルでは耐久性に問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切れ味が良く優れた耐
久性を有するドリルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、軸線まわりに回転させるドリル本体の外周に形成された切り屑排出溝
と、前記ドリル本体の外周から前記切り屑排出溝を横切って先端側斜め上方に向けて形成
された第1シンニング面と、前記第1シンニング面との境界稜線に主切れ刃となる第1切
れ刃を形成し、前記第1シンニング面と接して、ドリル回転方向と反対側に形成される第
1逃げ面と、前記第1シンニング面の先端側であって、当該第1シンニング面と接し、ド
リル回転方向と反対側に形成される第2シンニング面と、前記第2シンニング面と前記第
1逃げ面との境界稜線に形成される第2切れ刃と、を有するドリルである。
【0009】
本発明(1)では、第1シンニング面と第2シンニング面を軸方向に備えているので、
芯厚を大きくすることができる。その結果、ドリルの切れ味と耐久性を上げることができ
る。
【0010】
本発明(2)は、前記第2切れ刃の前記第2シンニング面による第2すくい角が正角で
あることを特徴とする本発明(1)のドリルである。
【0011】
本発明(2)では、前記第2切れ刃の前記第2シンニング面による第2すくい角が正角
であることを特徴としているので、ドリルを被穿孔体に斜めに当てて穿孔する際にドリル
のずれを小さくすることができる。特に、皮質骨のような硬度の高いものを穿孔するとき
は好ましい。
【0012】
本発明(3)は、前記第2すくい角が20°~60°である本発明(2)のドリルであ
る。すくい角の大きさが小さすぎると刃先の強度が小さくなり、すくい角の大きさが大き
すぎるとドリル先端が滑りやすくなる。種々の角度を検討したところ、下限は、20°が
好ましく、30°がさらに好ましく、35°がさらにより好ましい。上限は、60°が好
ましく、50°がより好ましく、45°がさらにより好ましい。
【0013】
本発明(4)は、先端部に形成されるチゼルエッジの長さが零である本発明(1)~(
3)のいずれかのドリルである。チゼルエッジが実質的にないので先端が鋭く、皮質骨に
ドリル先端を皮質骨にあてがって回転させると、最初の段階の食いつきがさらに良くなり
より滑りにくくなる
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切れ味が良く優れた耐久性を有するドリルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1のドリル全体を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態1のドリル全体を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態1のドリル先端部を示す斜視図である。
図4】ドリルのすくい角の正負を説明する模式図である。
図5】本発明の実施形態2のドリル全体を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態2のドリル先端部を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態1のドリルを用いて穿孔試験をした後の先端部の状態を示す写真である。
図8】特許文献1に記載のドリルを用いて穿孔試験をした後の先端部の状態を示す写真である。
図9】本発明の実施形態1のドリルと特許文献1に記載のドリルの穿孔試験結果を示す図である。
図10】特許文献1に記載のドリルの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、
本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限す
ることを意図するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態1のドリル全体を示す側面図であり、ドリル1は、ドリル本
体2の一端に形成されたシャンク部3と、刃部4を備えている。刃部4には先端からシャ
ンク部3にかけて切り屑排出溝6が形成され刃先部5と連なっている。
【0018】
図2は、本発明の実施形態1のドリル全体を示す斜視図であり、ドリル1は、ドリル本
体2の一端に形成されたシャンク部3と、刃部4を備えているが、本発明の特徴は刃先部
5の形状にある。第1シンニンング面10と第1逃げ面11の境界に第1切れ刃14が形
成されている。第1逃げ面11の回転方向と反対側に第2逃げ面13が形成されている。
第1シンニンング面10の先端側であって、当該第1シンニング面10と接し、ドリル
回転方向と反対側第2シンニング面12が形成されている。第2シンニング面12と第1
逃げ面11との境界稜線に第2切れ刃15が形成されている。
2つの対向する第1逃げ面11の間には、チゼルエッジ16が形成されている。第2逃
げ面13は切り屑排出溝6と連結している。
【0019】
第1切れ刃14はドリル外周にまでつながっており、切れ刃は第1切れ刃14と第2切
れ刃15の二つであるが、この形態に限られる必要はなく、特許文献1のドリルのように
切り屑排出溝6をすくい面とし、ドリル外周面に逃げ面を形成して主切り刃を第1切れ刃
14の外周側に設けてもよい。
【0020】
図3は、図2に示す本発明の実施形態1のドリル1の先端部分の刃先部5を拡大した斜
視図である。切り屑排出溝6、第1シンニンング面10,第1逃げ面11、第2シンニン
グ面12、第2逃げ面13、第1切れ刃14、第2切れ刃15、チゼルエッジ16は図に
示す通りであり、説明は省略する。
【0021】
図4は、ドリルのすくい角の正負を説明する模式図であり、図4(A)はすくい角が正
角の場合を、図4(B)はすくい角が負角の場合を示している。すくい面と逃げ面との関
係が(A)の場合がすくい角=正角であり、(B)の場合がすくい角=負角である。すく
い角が正角の場合は刃先が鋭く、被穿孔体に刃先が鋭く食い込むのでドリルの刃先が滑り
にくくなる。
【0022】
図5は、本発明の実施形態2のドリル全体を示す斜視図である。図2に示す実施形態1
のドリルと殆ど同じ構造をしているが、実施形態1のドリルではドリル先端にチゼルエッ
ジ16があったが、図5に示す実施形態2のドリルではチゼルエッジがなく、先端が点P
となっている。
チゼルエッジがあることによって、第2シンニング面12により形成される肉厚が大き
くなるが、チゼルエッジがなくなると先端部の肉厚が小さくなる代わりに先端が被穿孔体
に鋭く突き刺さり切れ味が良くなる。その他の部分は図2と同じなので説明を省略する。
【0023】
図6は、実施形態2のドリル先端部を示す斜視図であり、先端Pにチゼルエッジが形成
されていない以外は、図3に示す実施形態1のドリルと同じなので説明を省略する。
【0024】
図7(A)と図7(B)は、実施形態1のドリル(実施例)を用いて穿孔試験をした後
の先端部の状態を示す写真であり、図8(A)と図8(B)は、特許文献1に記載のドリ
ル(比較例)の穿孔試験をした後の先端部の状態を示す写真である。以下に穿孔試験条件
を示す。
<穿孔試験条件>
(1)ドリルの形状;実施例と比較例は共に3.2mmの直径を有する。実施例の芯厚は
1.2mmで、比較例の芯厚は0.8mmであった。
(2)被穿孔体;皮質骨シート(SAW3401-06)10mm厚みの板状体である。
(3)回転速度;760RPM
(4)ドリル押圧力;30N
【0025】
図7(A)は実施例1の穿孔テストを行った後の刃先の写真であり、損傷は全く見られ
なかった。図7(B)は図7(A)の反対側の刃先の写真であり、この写真からも損傷は
見られなかった。
図8(A)は比較例の穿孔テストを行った後の刃先の写真であり、丸で囲った部分に刃
のめくれの損傷が見られた。。図8(B)は図8(A)の反対側の刃先の写真であり、切
り刃に大きな窪みの損傷が生じていた。この損傷は、先端から0.84mmの位置で、長
さ0.5mmの大きさであった。これらの観察から、本願発明の実施例のドリルは比較例
に比べて非常に耐久性が高いと思われる。
【0026】
図9(A)は、上記条件で穿孔試験を行ったときの試験結果である。本発明の実施形態
1のドリルの穿孔時間は11秒であり、特許文献1に記載の比較例では20秒かかり大き
な差があった。
45°傾斜させたときの穿孔試験を行ったときの試験結果である。本発明の実施形態1
のドリルの穿孔時間は16秒であり、特許文献1に記載の比較例では22秒かかり大きな
差があった。また、45°傾けたときのドリルの滑り距離は、本発明の実施形態1のドリ
ルの滑り距離は4mm秒であり、特許文献1に記載の比較例では8mmであり、明らかな
違いがあった。
【0027】
図9(B)は、上記条件での穿孔試験を繰り返し(3回)行ったときの試験結果である
。本発明の実施形態1のドリルの穿孔時間は13秒~16秒の間で変化はあまりなかった
が、特許文献1に記載の比較例では17秒~47秒と大きく変化しており、実施形態1の
ドリルの耐久性が比較例と比べて格段に良いことがわかった。
【0028】
本発明の実施形態1のドリルの耐久性が比較例のそれと比べて良い理由は、刃先部の損
傷が図7に示す本発明の実施形態1のドリルでは殆ど見られなかったのに対して、比較例
では図8に示すように1回の穿孔試験で損傷が生じていたことに起因していると考えられ
る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明したように、本発明のドリルは、例えば骨を穿孔する手術において、切れ味が
良く優れた耐久性を有するドリルとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1;ドリル
2;ドリル本体
3;シャンク部
4;刃部
5;刃先部
6;切り屑排出溝
10;第1シンニンング面
11;第1逃げ面
12;第2シンニング面
13;第2逃げ面
14;第1切れ刃
15;第2切れ刃
16;チゼルエッジ
P;先端点
【要約】
【課題】切れ味が良く優れた耐久性を有するドリルを提供すること。
【解決手段】軸線まわりに回転させるドリル本体2の外周に形成された切り屑排出溝6と
、前記ドリル本体の外周から前記切り屑排出溝を横切って先端側斜め上方に向けて形成さ
れた第1シンニング面10と、前記第1シンニング面との境界稜線に主切れ刃となる第1
切れ刃14を形成し、前記第1シンニング面と接して、ドリル回転方向と反対側に形成さ
れる第1逃げ面11と、前記第1シンニング面の先端側であって、当該第1シンニング面
と接し、ドリル回転方向と反対側に形成される第2シンニング面12と、前記第2シンニ
ング面と前記第1逃げ面との境界稜線に形成される第2切れ刃15と、を有するドリル。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10