(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】車載ナビゲーションシステム用のアダプタ
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240119BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G01C21/26 A
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2023176315
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302026885
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【氏名又は名称】鈴木 和政
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】松葉 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 悠二
(72)【発明者】
【氏名】篠田 篤史
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7274798(JP,B2)
【文献】特許第7343936(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速情報及び走行距離情報の少なくともいずれかを含む車両情報を受信する受信部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、
前記第1の推定走行距離から前記第2の推定走行距離を引いた差が大きいほど前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を小さくするように、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【請求項2】
車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速パルス信号が車両情報として入力される信号入力部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、
前記第1の推定走行距離から前記第2の推定走行距離を引いた差が大きいほど前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を小さくするように、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【請求項3】
前記パルス制御部は、前記第2期間及び前記第1期間のそれぞれで前記車両情報を受信した場合に各々の前記車両情報によって特定される前記第1の推定走行距離に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
請求項1又は請求項2に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【請求項4】
前記外部機器は、CAN通信線を含み、
前記車両は、前記車両情報を前記CAN通信線によって伝送し、
前記受信部は、前記CAN通信線から前記車両情報を受信する
請求項1に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【請求項5】
前記第2の推定走行距離は、基準時点から前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号のパルス数と1パルス毎の移動距離とに基づいて特定される前記基準時点からの走行距離であり、
前記パルス制御部は、前記基準時点からの前記第1の推定走行距離と前記基準時点からの前記第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
請求項1又は請求項2に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【請求項6】
前記車両で生成された車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させずに前記パルス制御部が生成した車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させる第1状態と、前記パルス制御部が生成した車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させずに前記車両で生成された車速パルス信号を直接的に前記車載ナビゲーションシステムに入力させる第2状態とに切り替わる切替部を有する
請求項1又は請求項2に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載ナビゲーションシステム用のアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載ナビゲーションシステム用のアダプタが開示される。特許文献1のアダプタは、車両に搭載されたナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するためのアダプタである。ナビゲーションシステムは、受信した車速パルス信号においてパルスを検出してから所定時間経過後に無効となる機能を有する。アダプタは、車速パルス信号をナビゲーションシステムに送信する第1期間と送信しない第2期間とを交互に繰り返す。第1期間の長さは、所定時間より短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアダプタを用いると、パルスを検出してから所定時間経過後にテレビ表示を無効とするような所定機能を有する車載ナビゲーションシステムに対し、走行中にテレビ等の映像表示を行わせることができる。しかし、特許文献1のアダプタは、第2期間(車速パルス信号を送信しない期間)に検知した車速パルス信号の個数や周期のみに基づいて次の第1期間に送信する車速パルス信号の周期を決定するため、車両が実際に走行した距離と車載ナビゲーションシステムが認識する車両の走行距離とがずれやすい。
【0005】
本開示の目的の一つは、車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、推定走行距離を反映させつつ実行できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである車載ナビゲーションシステム用のアダプタは、
車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速情報及び走行距離情報の少なくともいずれかを含む車両情報を受信する受信部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する。
【0007】
本開示の一つである車載ナビゲーションシステム用のアダプタは、
車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速パルス信号が車両情報として入力される信号入力部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する。
【0008】
本開示の一つである車載ナビゲーションシステム用のアダプタは、
車両に搭載される車載ナビゲーションシステムにCAN信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、前記CAN信号を受信し得る通信部と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記通信部に入力される信号の状態が前記車両の走行中を示す前記CAN信号の状態で第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記通信部に入力される信号の状態が前記車両の停止中を示す状態で第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速情報及び走行距離情報の少なくともいずれかを含む車両情報を受信する受信部と、
前記車両情報に基づいて前記CAN信号を生成し、前記通信部に送信する信号制御部と、
を有し、
前記信号制御部は、前記通信部に与える信号の状態を前記車両の走行中を示す前記CAN信号の状態で継続させる第1期間と、前記通信部の信号の状態を前記車両の停止中を示す状態で継続させる第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記第2期間で最後に取得した前記車両情報又は前記第1期間で取得した前記車両情報によって推定される推定走行距離を演算によって算出し、演算によって算出された前記推定走行距離に基づく車速データ又は走行距離データを含んだ前記CAN信号を前記通信部に向けて前記第1期間に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術によれば、車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、推定走行距離を反映させつつ実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタを含む車載システムを概念的に示すブロック図である。
【
図2】
図2(A)は、車速パルス信号を簡略的に例示する波形図であり、
図2(B)は、車速パルス信号の一部を拡大して説明する説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタにおける、データ取得のタイミング、第1期間の状態、第2期間の状態等を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、
図3の一部を拡大して詳細に説明する説明図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタを含む車載システムを概念的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタを含む車載システムを概念的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタにおける、データ取得のタイミング、第1期間の状態、第2期間の状態等を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタを含む車載システムを概念的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る車載ナビゲーションシステム用のアダプタを含む車載システムを概念的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の〔1〕~〔7〕の各々は、本開示に含まれる特徴的技術の一例である。
【0012】
〔1〕車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速情報及び走行距離情報の少なくともいずれかを含む車両情報を受信する受信部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0013】
上記〔1〕のアダプタは、変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間を第1基準時間よりも短くし、変化のない状態の車速パルス信号を送信する第2期間を第2基準時間よりも長くするように、第1期間と第2期間とを交互に繰り返すことができる。つまり、このアダプタは、車両走行中に映像信号に基づく映像表示が有効のとき、第1期間には変化がある状態の車速パルス信号を出力することができ、映像表示が無効になる前に変化のない状態の車速パルス信号に切り替わり得る。そして、このアダプタは、第2期間には、変化のない状態の車速パルス信号を出力することができ、このような第1期間と第2期間を交互に繰り返すため、このアダプタから車速パルス信号が送信される車載ナビゲーションシステムでは、映像表示が有効である状態が維持され得る。
更に、上記〔1〕のアダプタは、第1期間に送信するパルス信号の周期を設定する場合に、車両情報によって特定される車両の走行距離である第1の推定走行距離と、アダプタが車載ナビゲーションシステムに与えたパルス信号によって推定される走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、第1期間に送信するパルス信号の周期を設定する。よって、このアダプタは、車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、車両の実際の走行距離と車載ナビゲーションシステムが認識する車両の走行距離との差を反映させつつ実行することができる。
【0014】
例えば、特許文献1のアダプタは、第2期間に受信する車速パルス信号のパルス数をカウントし、第2期間に得られたパルス数cと、第1期間の長さaと第2期間の長さbとに基づいて、第1期間にc×(a+b)/bの数のパルスが送信されるようにナビゲーションシステムに車速パルスを与える。この方法では、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さに対して十分に短い場合にはある程度の効果を発揮するが、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さと同程度又は第2期間の長さよりも長くなった場合、車両の実際の走行距離とアダプタがナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される推定走行距離との誤差が生じる。例えば、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さよりも長くなる程度に車両が低速である場合、アダプタは第2期間に受信した車速パルス信号のパルス数を0とカウントする可能性が高くなる。このように0とカウントしてしまうと、車両が実際には低速で移動しているのにアダプタは車両を停止状態とみなすことになり、第1期間において車速パルスを出力しないことになってしまう。別の例としては、第2期間の長さが、第2期間に受信した車速パルス信号の1パルスの長さの1.5倍程度である場合、第2期間に受信したパルスのうち1パルス分に満たないパルスについて切り捨てることが考えられるが、この場合、アダプタは、第2期間に受信したパルス数cを1とカウントすることになり、第2期間に車両が走行した距離を正確に反映した値ではなくなってしまう。この場合、c×(a+b)/bの式により算出されるパルス数は、第2期間及び第1期間に車両が実際に生成するパルスの数とは異なってしまい、ナビゲーションシステムが認識する車両の走行距離(得られた車速パルス信号によって推定される推定走行距離)と車両の実際の走行距離との誤差が生じることになる。1パルス分に満たないパルスについて切り上げる方式を採用しても、第2期間のパルス数cを2とカウントしてしまい、第2期間に車両が走行した距離を正確に反映した値ではないため、同様の問題が生じることになる。このように、各第1期間において分解能による誤差が生じ、その誤差は第1期間が到来する毎に蓄積することになるため、このような方式で車速パルス信号を与えられるナビゲーションシステムでは、車両の実際の走行距離と当該ナビゲーションシステムが受信した車速パルス信号によって推定される推定走行距離とが大きくずれることになる。これに対し、上記〔1〕のアダプタは、所定の基準時点からの第1の推定走行距離と上記基準時点からの第2の推定走行距離との差に基づいて、この差を反映した形で車速パルス信号の周期を設定することができ、この差に起因する「ずれ」を生じにくくする方向で車速パルス信号の周期を設定することができれば、車載ナビゲーションシステムが車両の走行距離をより正確に把握することができる。特に、上記〔1〕のアダプタは、第2の推定走行距離の算出毎に、上記の差を反映して適切に周期を設定することができるため、特許文献1のアダプタのような問題(分解能に起因する誤差が第1期間の到来毎に蓄積することによって「ずれ」が大きくなる問題)は生じない。
【0015】
〔2〕車両に搭載される車載ナビゲーションシステムに車速パルス信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記車載ナビゲーションシステムに入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速パルス信号が車両情報として入力される信号入力部と、
前記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、前記車載ナビゲーションシステムに送信するパルス制御部と、
を有し、
前記パルス制御部は、
前記変化がある状態の車速パルス信号を送信する第1期間と前記変化がない状態の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記車両情報によって特定される前記車両の走行距離である第1の推定走行距離と、前記アダプタが前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される前記車両の走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0016】
上記〔2〕のアダプタは、上記〔1〕のアダプタと同様の効果を得ることができる。
【0017】
〔3〕前記パルス制御部は、前記第2期間及び前記第1期間のそれぞれで前記車両情報を受信した場合に各々の前記車両情報によって特定される前記第1の推定走行距離に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
〔1〕又は〔2〕に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0018】
上記〔3〕のアダプタは、第2期間に受信した車両情報で特定される第1の推定走行距離だけでなく、第1期間に受信した車両情報で特定される第2の推定走行距離も反映して、第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定することができる。
【0019】
〔4〕前記外部機器は、CAN通信線を含み、
前記車両は、前記車両情報を前記CAN通信線によって伝送し、
前記受信部は、前記CAN通信線から前記車両情報を受信する
〔1〕又は〔3〕に記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0020】
特許文献1のアダプタは、第1期間用の車速パルス信号を生成するにあたって、常にアダプタ外から受信した車速パルス信号を用いなければならず、アダプタ外で生成される車速パルス信号を用いずに新たに車速パルス信号を生成することはできない。上記アダプタは、この点で改善の余地がある。
これに対し、上記〔4〕のアダプタは、車両のCAN通信線から車両情報を受信し、この車両情報に基づいて新たに車速パルス信号を生成することができる。例えば、車速パルスは、車輪が一定程度回転した場合にパルスが発生することになるため、車速が非常に小さい場合にはパルスが発生してから次のパルスが発生するまでに非常に時間がかかってしまう。このため、パルスが発生してから次のパルスが発生するまでの長い期間にわたってリアルタイムに車速を把握できない懸念がある。一方、CAN通信線から車両情報を受信する方式では、ECUなどがCAN通信線に対して短い間隔で車両情報を出力し、アダプタがこの車両情報を監視できれば、車速が非常に小さい場合であっても車速に関係なく短い間隔で車両情報を取得できることになる。
【0021】
〔5〕前記第2の推定走行距離は、基準時点から前記車載ナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号のパルス数と1パルス毎の移動距離とに基づいて特定される前記基準時点からの走行距離であり、
前記パルス制御部は、前記基準時点からの前記第1の推定走行距離と前記基準時点からの前記第2の推定走行距離との差に基づいて、前記第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定する
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0022】
上記〔5〕のアダプタは、ある時点を基準時点として定め、その基準時点からパルスが最後に出力された時点までの第2の推定走行距離をより正確に求めることができる。そして、上記基準時点からの第1の推定走行距離と上記基準時点からの第2の推定走行距離との差を反映した形で車速パルス信号の周期を設定することができる。
【0023】
〔6〕前記車両で生成された車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させずに前記パルス制御部が生成した車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させる第1状態と、前記パルス制御部が生成した車速パルス信号を前記車載ナビゲーションシステムに入力させずに前記車両で生成された車速パルス信号を直接的に前記車載ナビゲーションシステムに入力させる第2状態とに切り替わる切替部を有する
〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0024】
上記〔6〕のアダプタは、アダプタ外で車両が生成する車速パルス信号を車載ナビゲーションシステムに入力させずにパルス制御部が生成した車速パルス信号を車載ナビゲーションシステムに入力させる状態と、パルス制御部が生成した車速パルス信号を車載ナビゲーションシステムに入力させずにアダプタ外で車両が生成する車速パルス信号を直接的に車載ナビゲーションシステムに入力させる状態とに切り替えることができる。
【0025】
〔7〕車両に搭載される車載ナビゲーションシステムにCAN信号を提供するアダプタであって、
前記車載ナビゲーションシステムは、表示装置と、映像信号に基づく映像表示を前記表示装置に行わせる制御装置と、前記CAN信号を受信し得る通信部と、を有する表示システムを備え、
前記表示システムは、前記映像信号に基づく前記映像表示が有効である状態で前記通信部に入力される信号の状態が前記車両の走行中を示す前記CAN信号の状態で第1基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を無効とし、前記映像信号に基づく前記映像表示が無効である状態で前記通信部に入力される信号の状態が前記車両の停止中を示す状態で第2基準時間よりも長く継続する場合に前記映像信号に基づく前記映像表示を有効とし、前記第1基準時間よりも前記第2基準時間のほうが長く設定され、
前記アダプタは、
前記車両において前記アダプタの外部に設けられた外部機器から車速情報又は走行距離情報の少なくともいずれかを含む車両情報を受信する受信部と、
前記車両情報に基づいて前記CAN信号を生成し、前記通信部に送信する信号制御部と、
を有し、
前記信号制御部は、前記通信部に与える信号の状態を前記車両の走行中を示す前記CAN信号の状態で継続させる第1期間と、前記通信部の信号の状態を前記車両の停止中を示す状態で継続させる第2期間とを交互に繰り返し、前記第1期間の長さを前記第1基準時間よりも短くし、前記第2期間の長さを前記第2基準時間よりも長くし、
前記第2期間で最後に取得した前記車両情報又は前記第1期間で取得した前記車両情報によって推定される推定走行距離を演算によって算出し、演算によって算出された前記推定走行距離に基づく車速データ又は走行距離データを含んだ前記CAN信号を前記通信部に向けて前記第1期間に送信する
車載ナビゲーションシステム用のアダプタ。
【0026】
上記〔7〕のアダプタは、車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、推定走行距離を反映させつつ実行することができる。
【0027】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に関する。
1.車載システム102の概要
図1には、車両100に搭載される車載システム102が概念的に示される。
車載システム102は、車両100に搭載されるシステムであり、車両100内において各種演算、各種制御、各種動作等を行い得るシステムである。車両100は、ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車など、いずれの種類の車両でもよい。
【0028】
車載システム102には、多数の機器が設けられ、これらの機器に対して電力を供給する配線や情報を伝送する通信線などが電気的に接続されている。
図1の例では、車載システム102が、車載ナビゲーションシステム104、電子制御装置180(以下、ECU180とも称される)、車速パルス信号発生源170、通信線140などを備えており、図示は省略されているが、
図1において図示されたもの以外の機器や配線も様々に設けられている。電子制御装置180は、複数種類のECUによって構成されていてもよい。なお、ECU180や通信線140は、外部機器の一例に相当する。
【0029】
通信線140は、車両100内において予め決められた通信プロトコルに従ってデジタル信号を伝送することを可能とする通信線である。以下で説明される代表例では、通信線140は、デジタル信号をシリアル通信によって伝送し得るシリアル通信バスとして機能する。具体的には、通信線140は、例えばCAN‐BUSとして構成され、CAN(Controller Area Network)プロトコルに従った通信を行うCAN通信線として機能する。車両100内において通信線140に接続される電子機器は、通信線140を介して相互に情報通信可能とされている。
【0030】
車両100は、通信線140によって車両情報を伝送する構成をなしている。例えば、ECU180は、公知の方法により、車両100の速度を継続的に検出し、予め定められた時間間隔で、通信線140に対して直近の車速の値を含む車速情報を送信するように動作してもよい。或いは、ECU180は、公知の方法により、車両100の総走行距離を継続的に検出し、予め定められた時間間隔で、通信線140に対して直近の総走行距離の値を含む走行距離情報を送信するように動作してもよい。車速情報や走行距離情報は車両情報の一例に相当する。このような動作により、通信線140には、所定の短時間毎に車両情報が伝送される。通信線によって伝送される車両情報は、ECU180から当該車両情報が送信された時点又は送信された時点の直前の上記総走行距離や上記車速などを含む。また、通信線140によって伝送される車両情報は、車速情報であってもよく、走行距離情報であってもよい。上記車速情報は、車両100の車速データであってもよく、車輪回転状態のデータであってもよい。上記走行距離情報は、車両100の総走行距離データであってもよく、ECUなどが計測する積算走行距離や区間走行距離、車輪回転状態などのデータであってもよい。
【0031】
車載ナビゲーションシステム104は、自身が搭載される車両100の位置を表示装置112において地図上に表示するナビゲーション機能、テレビ映像を表示装置112に表示するテレビ機能、DVDを再生した映像を表示装置112に表示するDVD機能、外部から車速パルス信号などのアナログ電圧信号を受信する受信機能、外部からデジタル情報を受信する受信機能、などを備える。車載ナビゲーションシステム104は、これらの機能を実現するために、主として、表示装置112、制御装置114、通信部120、信号入力部130などを備える。
【0032】
表示装置112は、テレビ映像、地図映像、DVD映像、その他の映像を表示し得る表示装置である。表示装置112は、公知の液晶表示装置などであってもよく、これ以外の表示装置であってもよい。
【0033】
制御装置114は、各種制御、各種演算、各種情報処理等を行い得る装置である。制御装置114は、表示装置112の表示を制御し得る装置であり、例えば所定の映像信号に基づく映像表示を表示装置112に行わせる得る装置として構成される。制御装置114は、1つの装置によって実現されてもよく、2つ以上の装置によって実現されてもよい。
【0034】
図1の例では、制御装置114においてテレビチューナ部114A、DVD再生部114B、ナビゲーション部114Cなどが含まれる。テレビチューナ部114A、DVD再生部114B、ナビゲーション部114Cは、それぞれが別々の装置として構成されていてもよく、これらのうちの複数が共通の装置によって実現されてもよい。
図1の例で制御装置114に含まれる機能はあくまで一例であり、他の機能を有していてもよい。例えば、車載ナビゲーションシステム104において外部からの映像信号の入力を可能とする映像入力端子が設けられ、当該映像入力端子に入力される映像信号に基づく映像を表示装置112に表示させるように制御装置114が動作してもよい。なお、図示は省略されているが、制御装置114には、CPUなどの演算装置を有する情報処理部、半導体記憶装置などの記憶装置を有する記憶部、なども設けられる。
【0035】
通信部120は、上述の通信線140に電気的に接続され、通信線140によって伝送される情報の受信や、通信線140への情報の送信などを行い得る通信装置である。代表例では、通信部120は、通信線140を介して伝送されるデジタル信号を受信する機能や、通信線140に対してデジタル信号を送信する機能を有している。通信部120が通信線140から受信したデジタル信号は、制御装置114によって処理され得る。
【0036】
信号入力部130は、車載ナビゲーションシステム104の外部から少なくとも車速パルス信号が入力される部分である。具体的には、信号入力部130は、アナログ電圧信号が入力されるアナログ入力端子を有しており、このアナログ入力端子に対して車載ナビゲーションシステム104の外部から車速パルス信号がアナログ電圧信号として入力されるようになっている。
【0037】
信号入力部130に入力される車速パルス信号は、例えば
図2のような信号である。
図2(A)のように、車速パルス信号は、ハイレベルの電圧の信号又は当該ハイレベルの電圧よりも低いローレベルの電圧の信号を含む信号である。車速パルス信号のローレベルの電圧は、所定の第1閾値未満の電圧であり例えば0V程度の電圧である。車速パルス信号のハイレベルの電圧は、所定の第2閾値以上の電圧であり例えば3.5V程度の電圧である。第2閾値は第1閾値と同じであってもよく、第1閾値よりも大きくてもよい。なお、ここで例示される各電圧値はあくまで一例であり、電圧値は別の値であってもよい。
図2(B)では、車速パルス信号の1~2周期に着目して示しており、T
pは周期であり、Xは、ハイレベルの電圧の期間である。本明細書において「変化のある状態」の車速パルス信号は、上記ハイレベルの電圧の信号と上記ローレベルの電圧の信号とが交互に繰り返される周期的な信号であり、パルスが断続的に継続する信号である。「変化のない状態」の車速パルス信号は、上記ハイレベルの電圧の信号又は上記ローレベルの電圧の信号のいずれかが継続する信号である。
【0038】
車載システム102には、車速パルス信号発生源170も設けられている。車速パルス信号発生源170は、アダプタ1とは別の装置として構成され、車両100の速度に対応する車速パルス信号を発生し得るように公知の構成によって実現される。車速パルス信号発生源170は、例えば車両100の車速に反比例する周期で
図2のような車速パルス信号を生成する。具体的には、車両100の車速がVである場合、T
p=K/Vの周期で車速パルス信号を生成し、車速が変化する場合には車速に対応する周期となるように車速パルス信号も変化させる。なお、上記の式においてKは、予め定められた係数であり、例えば固定値である。
【0039】
車載システム102では、表示装置112と制御装置114とを備えた構成で表示システム110が実現される。表示システム110は、表示を行う機能及び表示を制御する機能を有するシステムである。
【0040】
表示システム110は、映像信号に基づく映像表示を有効にする状態と、無効にする状態とに切り替わる。「所定の映像信号に基づく映像表示」は、予め定められた種類の映像表示であり、例えばテレビ放送の電波に基づいて生成される映像信号に基づくテレビ映像表示を含んでいてもよく、DVDを再生した場合に生成される映像信号に基づくDVD再生映像表示を含んでいてもよく、外部の情報機器(例えばスマートフォンなど)から車載ナビゲーションシステム104に与えられる映像信号に基づく映像表示を含んでいてもよい。例えば、「所定の映像信号に基づく映像表示」の一つとして、テレビ映像表示が含まれる場合、表示システム110は、テレビ映像表示を行うことが選択されている場合において映像信号に基づく映像表示を「有効」にしているときには表示装置112においてテレビ映像表示を行う。一方、表示システム110は、テレビ映像表示を行うことが選択されている場合において映像信号に基づく映像表示を「無効」にしているときには表示装置112においてテレビ映像表示以外の別画像を表示する。
【0041】
表示システム110は、自身が映像信号に基づく映像表示を「有効」にしているとき、即ち、映像信号に基づく映像表示が有効である状態で、車載ナビゲーションシステム104に入力される車速パルス信号に変化がある状態が第1基準時間よりも長く継続する場合に映像信号に基づく映像表示を無効に切り替える。一方、表示システム110は、自身が映像信号に基づく映像表示を「無効」にしているとき、即ち、映像信号に基づく映像表示が無効である状態で、車載ナビゲーションシステム104に入力される車速パルス信号に変化がない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合には、映像信号に基づく映像表示を「有効」に切り替える。上記第1基準時間よりも上記第2基準時間のほうが長く設定される。「車速パルス信号に変化がある状態」とは、車速パルス信号において上記第1基準時間内のパルスの個数が所定の第3閾値以上の状態である。上記第3閾値は予め定められた固定値であり、1であってもよく、1以上の数であってもよい。第3閾値は、車載ナビゲーションシステムの機種ごとに異なっていてもよい。「車速パルス信号に変化がない状態」とは、車速パルス信号において上記第2基準時間内のパルスの個数が所定の第4閾値未満の状態である。上記第4閾値は予め定められた固定値であり、1であってもよく、1以上の数であってもよい。第4閾値は、車載ナビゲーションシステムの機種ごとに異なっていてもよい。
【0042】
車載ナビゲーションシステム104は、信号入力部130において、車速パルス信号発生源170が生成した車速パルス信号を入力するような接続方法も採用することができるようになっている。このように接続された場合には、車速パルス信号発生源170が生成した車速パルス信号が車載ナビゲーションシステム104において受信及び処理されることになるが、この接続方法では、「所定の映像信号に基づく映像表示を走行中に無効とする機能」を解除することができない。そこで、このような接続方法に代えて、
図1のように、アダプタ1が生成する車速パルス信号を信号出力部24から信号入力部130に入力する接続方法を用いている。
【0043】
2.アダプタ1の概要
図1に示されるアダプタ1は、車載ナビゲーションシステム用のアダプタである。アダプタ1は、アダプタ1の外部に設けられた外部機器と車載ナビゲーションシステム104との間に介在する中間装置として機能する。アダプタ1は、車載ナビゲーションシステム104に対して車速パルス信号を提供する機能を有する。アダプタ1は、主に、受信部10とパルス制御部20とを備える。
【0044】
受信部10は、車両100においてアダプタ1の外部に設けられた外部機器から車両情報を受信する機能を有する。
図1の例では、外部機器は、ECU180や通信線140である。本明細書において、アダプタ1が車速パルス信号を生成するために利用する上記の「車両情報」は、車速情報であってもよく、走行距離情報であってもよい。上記車速情報は、車両100の速度を特定できる情報であればよく、例えば、車両100の車速データであってもよく、車輪回転状態のデータであってもよい。また、上記走行距離情報は、車両100の走行距離を特定できる情報であればよく、例えば、車両100の総走行距離データであってもよく、ECUなどが計測する積算走行距離や区間走行距離であってもよく、車輪回転状態などのデータであってもよい。なお、第1実施形態の代表例では、「車両情報」の一例として、車両100の総走行距離データが用いられる。具体的には、受信部10は、ECU180から通信線140に定期的に送信される総走行距離のデータをリアルタイムに受信する機能を有する。なお、ECU180から通信線140にデータが送信された場合において受信部10がそのデータを受信するタイミングは、ECU180から通信線140にデータが送信された直後に受信部10がほぼ遅延なく受信してもよく、わずかに時間が経ってから受信してもよい。代表例では、通信線140がCAN通信線であるCAN‐BUSとして機能し、車両100は、車両情報を通信線140(CAN通信線)によって伝送する。そして、受信部10は、通信線140(CAN通信線)からCAN通信によって車両情報(上記走行距離情報や上記車速情報など)を受信する。
【0045】
パルス制御部20は、上記車両情報に基づいて車速パルス信号を生成し、生成した車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する機能を有する。パルス制御部20は、車載ナビゲーションシステム104に送信する場合、常に又は所定条件が成立した場合に、「変化がある状態」の車速パルス信号を送信する第1期間と「変化がない状態」の車速パルス信号を送信する第2期間とを交互に繰り返すように動作し得る。
【0046】
図1のように、パルス制御部20は、演算部22と信号出力部24とを備える。演算部22は、各種演算や情報処理を行う部分であり、受信部10が受信した車両情報に基づいて車速パルス信号の周期を算出する部分である。信号出力部24は、信号の出力を行う部分であり、演算部22によって算出された周期に設定された車速パルス信号を出力する部分である。
【0047】
図1に示される例では、アダプタ1は、アダプタ1の外部に設けられた外部機器から車速パルス信号を受信しないようになっている。具体的には、車速パルス信号発生源170からアダプタ1に対して車速パルス信号が与えられない構成となっており、車速パルス信号発生源170からアダプタ1にアナログ電圧信号を伝送する通信線も設けられていない構成となっている。
【0048】
3.車速パルス信号の生成及び出力
アダプタ1において所定の開始条件が成立した場合に、演算部22は、第2期間と第1期間とを交互に設定し、短時間毎に車速パルス信号の周期を算出するように動作する。上記開始条件は、アダプタ1に対して電源投入があったことであってもよく、車両100内において所定操作が行われたことであってもよく、その他の条件が成立したことであってもよい。
【0049】
以下の説明では、第1期間の長さがP1であり、第2期間の長さがP2である。演算部22は、上記開始条件が成立した場合、第2期間を第2の長さ(第2の時間)P2で設定し、第1期間を第1の長さ(第1の時間)P1で設定し、第2期間と第1期間とを交互に繰り返すように動作する。なお、
図3、
図4に示される代表例では、第2期間の終了時点が、その次の第1期間の開始時点である。また、第1期間の終了時点が、その次の第2期間の開始時点である。第1期間の長さ(時間)P1は、予め定められた固定値であり、上述の第1基準時間Tb1よりも短い。第2期間の長さ(時間)P2は、予め定められた固定値であり、上述の第2基準時間Tb2よりも長い。第2期間の長さP2は、第1期間の長さP1よりも長い。第2基準時間Tb2の長さ(時間)は、第1基準時間Tb1の長さ(時間)よりも長い。
【0050】
本実施形態では、車両100が1km移動する毎に、車速パルス信号発生源170においてN個のパルスを出力する。以下で説明される代表例では、N=2548である。この値は、車両100の速度が変化しても一定であり、例えば、車両100が1km/hで走行しても、100km/hで走行しても、車両100が1km移動するまでの間に車速パルス信号発生源170はN個(代表例では、2548個)のパルスを発生させる。従って、1パルス当たりの車両100の移動距離Dpは1/N(km)(代表例では、0.0003924km)である。ゆえに、パルス数をカウントすることにより車両100の移動距離を求めることができる。
【0051】
以下の説明では、Ptは、基準時点(代表例では、アダプタ1の電源がオン状態になってから最初に車両情報(代表例では総走行距離データ)を取得した時)からアダプタ1が出力した総パルス数である。なお、基準時点のPtの初期値は0である。Poutは、パルスを出力可能な時間であり、第1期間の残時間である。Poutの最大値はP1である。後述される周期Tpの演算時点が「第2期間」又は「第1期間の開始時点」である場合には、Poutは、直近の第1期間の全期間である。周期Tpの演算時点が「第1期間開始後の第1期間中」である場合には、当該演算時点以降の第1期間の残時間である。
【0052】
演算部22は、例えば、最後に総走行距離データを取得した時刻がdxである場合において、その時刻dxに取得した総走行距離データによって特定される総走行距離がDxである場合、基準時点から時刻dxまでの車両100の走行距離Dnowは、Dnow=Dx-D0である。D0は、基準時点で受信部10が通信線140から取得する車両情報(代表例では総走行距離データ)によって特定される車両100の総走行距離である。代表例では、アダプタ1の電源がオン状態になってから最初にアダプタ1が車両100から車両情報(代表例では総走行距離データ)を取得した時点が基準時点である。
【0053】
演算部22は、以下の数1の式により、第1期間の残時間Poutに出力する車速パルス信号のパルスの周期Tpを算出する。
【0054】
【0055】
上記数1の式によって周期Tpを算出するにあたって、Dnowは、アダプタ1が通信線140を介して取得した車両情報によって特定される車両100の走行距離である「第1の推定走行距離」である。具体的には、Dnowは、最後に車両情報(代表例では総走行距離データ)を取得した時刻dxに取得した当該車両情報によって特定される車両100の総走行距離から、基準時点でアダプタ1が取得した車両情報(代表例では総走行距離データ)によって特定される基準時点での総走行距離を引いた値であり、基準時点からの第1の推定走行距離である。そして、Dp×Ptは、アダプタ1が車載ナビゲーションシステム104に与えたパルス信号によって推定される車両100の推定走行距離である「第2の推定走行距離」である。具体的には、Dp×Ptは、上記基準時点からの第2の推定走行距離である。つまり、この例では、アダプタ1が上記基準時点から車載ナビゲーションシステム104に与えた車速パルス信号のパルス数Ptと1パルス毎の移動距離Dpとに基づいて特定される基準時点からの走行距離が、「基準時点からの第2の推定走行距離」である。演算部22は、上記数1の式により、「基準時点からの第1の推定走行距離」と「基準時点からの第2の推定走行距離」との差に基づき、車両100が「基準時点からの第1の推定走行距離」と「基準時点からの第2の推定走行距離」との差に相当する距離を走行する場合に車両100において出力される車速パルス信号のパルス数((Dnow-Dp×Pt)/Dp)が、演算時点以降の第1期間の残時間Poutに出力されるように第1期間に送信する車速パルス信号の周期Tpを設定する。
【0056】
図4は、
図3の一部を拡大したものである。パルス制御部20は、例えば
図3、
図4のような例において周期T
pを設定する場合、以下のように行う。なお、
図3、
図4では、時刻d
0が基準時点であり、時刻d
1、d
2、d
3、d
4・・・d
n、d
n+1、d
n+2、d
n+3・・・のタイミングで受信部10が通信線140から総走行距離データを受信するものとする。例えば、時刻d
nの時点で受信部10が通信線140から取得する総走行距離データによって特定される総走行距離をD
nとし、時刻d
n+1の時点で受信部10が通信線140から取得する総走行距離データによって特定される総走行距離をD
n+1とし、時刻d
n+2の時点で受信部10が通信線140から取得する総走行距離データによって特定される総走行距離をD
n+2とする。
【0057】
演算部22は、
図4に示される第1期間の開始時点(時刻t1の時点)で、時刻t1の直後に送信する車速パルス信号の周期T
pを算出する場合、上述の数1と同様に、以下の数2の式により、周期T
pを算出する。但し、
図4の例では、時刻t1の時点において最後に総走行距離データを取得した時刻がd
nであり、時刻d
nで取得した総走行距離データによって特定される総走行距離がD
nであり、P
out=P1であり、D
now=D
n-D
0である。P
tは、基準時点から時刻t1までにアダプタ1が出力した総パルス数であるため、演算部22は時刻t1におけるP
tの値を把握できている。演算部22は、周期T
pの算出後には、周期T
pで車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する。
【0058】
【0059】
演算部22は、時刻t1の時点から周期Tpだけ進んだ時刻t2の時点において時刻t2の直後に送信する車速パルス信号の周期Tp’を算出する場合、以下の数3の式により周期Tp’を算出する。但し、Pout’=Pout-Tpであり、Dnow’=Dn-D0であり、Pt’=Pt+1である。演算部22は、周期Tp’の算出後には、周期Tp’で車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する。
【0060】
【0061】
演算部22は、時刻t2の時点から周期Tp’だけ進んだ時刻t3の時点において時刻t3の直後に送信する車速パルス信号の周期Tp’’を算出する場合、以下の数4の式により周期Tp’’を算出する。但し、Pout’’=Pout’-Tp’であり、Dnow’’=Dn+1-D0であり、Pt’’=Pt’+1であり、時刻dn+1で取得した総走行距離データによって特定される総走行距離がDn+1である。演算部22は、周期Tp’’の算出後には、周期Tp’’で車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する。
【0062】
【0063】
なお、演算部22は、受信部10が通信線140から総走行距離データを受信したことに応じて上記数1の式を適用してTpを算出しようとした場合に、Dnow=Dp×Ptとなるような場合(換言すれば、Dnow-Dp×Pt=0となる場合)もあり得る。このような条件が成立した場合には、演算部22は、直近に受信した総走行距離データを有効なものとして扱わず、次に取得する総走行距離データが示す値Dn+1と今回取得した総走行距離データが示す値Dnとの関係がDn+1>DnとなるまでTpを算出する処理は行わず、直近に受信した総走行距離データに基づく車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する動作も行わない。このような条件が成立する可能性が想定される場合としては、アダプタ1の電源がオン状態になった直後の期間において車両100が停止中である場合などが挙げられる。
【0064】
4.効果の例
上述されたアダプタ1は、「変化がある状態」の車速パルス信号を送信する第1期間を第1基準時間Tb1よりも短くし、「変化のない状態」の車速パルス信号を送信する第2期間を第2基準時間Tb2よりも長くするように、第1期間と第2期間とを交互に繰り返すことができる。つまり、このアダプタ1は、車両走行中に映像信号に基づく映像表示が有効のとき、第1期間には「変化がある状態」の車速パルス信号を出力することができ、映像表示が無効になる前に「変化のない状態」の車速パルス信号に切り替わり得る。そして、このアダプタ1は、第2期間には、「変化のない状態」の車速パルス信号を出力することができ、このような第1期間と第2期間とを交互に繰り返すため、このアダプタ1から車速パルス信号が送信される車載ナビゲーションシステム104では、映像表示が有効である状態が維持され得る。更に、アダプタ1は、第1期間に送信するパルス信号の周期を設定する場合に、車両情報によって特定される車両の走行距離である第1の推定走行距離と、アダプタ1が車載ナビゲーションシステム104に与えたパルス信号によって推定される第2の推定走行距離との差に基づいて、第1期間に送信するパルス信号の周期を設定する。よって、このアダプタ1は、車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、車両100の実際の走行距離と車載ナビゲーションシステム104が認識する車両の走行距離との差を反映させつつ実行することができる。
【0065】
例えば、特許文献1のアダプタは、第2期間に受信する車速パルス信号のパルス数をカウントし、第2期間に得られたパルス数cと、第1期間の長さaと第2期間の長さbとに基づいて、第1期間にc×(a+b)/bの数のパルスが送信されるようにナビゲーションシステムに車速パルスを与える。この方法では、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さに対して十分に短い場合にはある程度の効果を発揮するが、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さと同程度又は第2期間の長さよりも長くなった場合、車両の実際の走行距離とアダプタがナビゲーションシステムに与えた車速パルス信号によって推定される推定走行距離との誤差が生じる。例えば、車速パルス信号の1パルスの長さが第2期間の長さよりも長くなる程度に車両が低速である場合、アダプタは第2期間に受信した車速パルス信号のパルス数を0とカウントする可能性が高くなる。このように0とカウントしてしまうと、車両が実際には低速で移動しているのにアダプタは車両を停止状態とみなすことになり、第1期間において車速パルスを出力しないことになってしまう。別の例としては、第2期間の長さが、第2期間に受信した車速パルス信号の1パルスの長さの1.5倍程度である場合、第2期間に受信したパルスのうち1パルス分に満たないパルスについて切り捨てることが考えられるが、この場合、アダプタは、第2期間に受信したパルス数cを1とカウントすることになり、第2期間に車両が走行した距離を正確に反映した値ではなくなってしまう。この場合、c×(a+b)/bの式により算出されるパルス数は、第2期間及び第1期間に車両が実際に生成するパルスの数とは異なってしまい、ナビゲーションシステムが認識する車両の走行距離(得られた車速パルス信号によって推定される推定走行距離)と車両の実際の走行距離との誤差が生じることになる。1パルス分に満たないパルスについて切り上げる方式を採用しても、第2期間に受信したパルス数cを2とカウントしてしまい、第2期間に車両が走行した距離を正確に反映した値ではないため、同様の問題が生じることになる。このように、各第1期間において分解能による誤差が生じ、その誤差は第1期間が到来する毎に蓄積することになるため、このような方式で車速パルス信号を与えられるナビゲーションシステムでは、車両の実際の走行距離と当該ナビゲーションシステムが受信した車速パルス信号によって推定される推定走行距離とが大きくずれることになる。これに対し、本実施形態のアダプタ1は、上記基準時点からの第1の推定走行距離と上記基準時点からの第2の推定走行距離との差に基づいて、この差を反映した形で車速パルス信号の周期を設定することができ、この差に起因する「ずれ」を生じにくくする方向で車速パルス信号の周期を設定することができれば、車載ナビゲーションシステム104が車両100の走行距離をより正確に把握することができるようになる。特に、アダプタ1は、第2の推定走行距離の算出毎に、上記の差を反映して適切に周期を設定することができるため、特許文献1のアダプタのような問題(分解能に起因する誤差が第1期間の到来毎に蓄積することによって「ずれ」が大きくなる問題)は生じない。
【0066】
また、パルス制御部20は、受信部10が第2期間及び第1期間のそれぞれで車両情報を受信した場合に各々の車両情報によって特定される第1の推定走行距離に基づいて、第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定することができる。
【0067】
ところで、特許文献1のアダプタは、第1期間用の車速パルス信号を生成するにあたって、常にアダプタ外から受信した車速パルス信号を用いなければならず、アダプタ外で生成される車速パルス信号を用いずに新たに車速パルス信号を生成することはできない。上記アダプタは、この点で改善の余地がある。
これに対し、アダプタ1は、車両100の通信線140(CAN通信線)から車両情報を受信し、この車両情報に基づいて新たに車速パルス信号を生成することができる。よって、このアダプタは、車両情報として「アダプタ外で生成される車速パルス信号」のみを用いる場合に問題が生じるような場面において有利になる。例えば、車速パルスは、車輪が一定程度回転した場合にパルスが発生することになるため、車速が非常に小さい場合にはパルスが発生してから次のパルスが発生するまでに非常に時間がかかってしまう。このため、パルスが発生してから次のパルスが発生するまでの長い期間にわたってリアルタイムに車速を把握できない懸念がある。一方、通信線140(CAN通信線)から車両情報を受信する方式では、ECUなどが通信線140(CAN通信線)に対して短い間隔で車両情報を出力し、アダプタ1がこの車両情報を監視できれば、車速が非常に小さい場合であっても車速に関係なく短い間隔で車両情報を取得できることになる。ゆえに、特許文献1のアダプタと比較して、更新の頻度を高めることができる。また、本実施形態のアダプタ1は、通信線140(CAN通信線)から受信した車両情報を利用する方式を採用するため、より詳しい情報或いはより多様な情報を採用しやすくなる。
【0068】
アダプタ1は、ある時点(代表例では、アダプタ1の電源がオン状態になってから最初に総走行距離データを取得した時)を基準時点として定め、その基準時点からパルスが最後に出力された時点までの第2の推定走行距離をより正確に求めることができる。そして、上記基準時点からの第1の推定走行距離と上記基準時点からの第2の推定走行距離との差を反映した形で車速パルス信号の周期を設定することができる。
【0069】
アダプタ1は、当該アダプタ1の外部に設けられた外部機器(具体的には車速パルス信号発生源170)から車速パルス信号を受信しない構成となっている。このアダプタ1は、車速パルス信号を受信するための構成、或いは受信した後に処理するための機能、を用意せずに済み、装置構成の簡素化又は機能の簡易化を図りつつ、上述の基本課題を解決することができる。
【0070】
<第2実施形態>
次の説明は第2実施形態に関する。
第2実施形態の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ201は、
図5のような構成をなす。第2実施形態のアダプタ201が適用される車載システム202において、アダプタ201以外の部分は、アダプタ201が車速パルス信号発生源170から車速パルス信号を受信し得るように構成されている点を除き、上述の「1.車載システム102の概要」で説明された車載システム102の内容と同一の構成及び特徴を有する。
図5では、車載システム202において、
図1に示される車載システム102の各部分と同一の構成及び機能を有する部分については
図1の車載システム102と同一の符号が付されている。
【0071】
第2実施形態のアダプタ201は、車速パルス信号発生源170から車速パルス信号が入力されるようになっている点、車載ナビゲーションシステム104に入力する車速パルス信号を、「パルス制御部20が生成する車速パルス信号」と「外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号」とに切り替え得る点、のみが第1実施形態に係るアダプタ1と異なり、その他の点は第1実施形態に係るアダプタ1と同様である。具体的には、第2実施形態のアダプタ201は、上述の「2.アダプタ1の概要」及び「3.車速パルス信号の生成及び出力」で説明された内容と同一の構成及び特徴を有し、更に、切替部203付近の構成が付加されている。
図5では、アダプタ201において、
図1に示されるアダプタ1の各部分と同一の構成及び機能を有する部分については
図1のアダプタ1と同一の符号が付されている。
【0072】
図5のアダプタ201は、切替部203が設けられる。切替部203は、パルス制御部20が生成する車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に入力可能とし、外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に入力不能とする第1の切り替え状態と、パルス制御部20が生成する車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に入力不能とし、外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に入力可能とする第2の切り替え状態と、に切り替わる。アダプタ201に設けられた制御装置(例えばパルス制御部20)は、切替部203の切り替え状態を制御する。例えば、パルス制御部20は、第1の切り替え条件が成立した場合に切替部203を第1の切り替え状態に切り替え、第2の切り替え条件が成立した場合に切替部203を第2の切り替え状態に切り替える。
【0073】
上述の第1の切り替え条件は、例えば、車両100においてアダプタ201外に設けられた所定の操作装置が操作されて第1の操作状態になったことであってもよく、アダプタ201に設けられた所定の操作装置が操作されて第1の操作状態となったことであってもよく、その他の条件であってもよい。上述の第2の切り替え条件は、例えば、車両100においてアダプタ201外に設けられた所定の操作装置が操作されて第2の操作状態になったことであってもよく、アダプタ201に設けられた所定の操作装置が操作されて第2の操作状態となったことであってもよく、その他の条件であってもよい。
【0074】
「車両100においてアダプタ201外に設けられた所定の操作装置が操作されて第1の操作状態になったこと」が第1の切り替え条件とされる例では、当該操作装置に対して第1操作がなされて第1の操作状態になった場合に車両100からアダプタ201に対して第1信号が入力される。パルス制御部20は、このように第1信号がアダプタ201に入力された場合に、切替部203を第1の切り替え状態に切り替える。この場合、パルス制御部20が生成する車速パルス信号が切替部203を介して車載ナビゲーションシステム104に入力可能となり、一方で、外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号は切替部203によって遮断されるため車載ナビゲーションシステム104に入力されない。上述の第1の操作状態のときに上記操作装置に対して第2操作がなされて第2の操作状態になった場合には、車両100からアダプタ201に対して第2信号が入力される。パルス制御部20は、このように第2信号がアダプタ201に入力された場合に、切替部203を第2の切り替え状態に切り替える。この場合、パルス制御部20が生成する車速パルス信号は切替部203にて遮断されて車載ナビゲーションシステム104には入力されず、外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号が切替部203を通って直接的に車載ナビゲーションシステム104に入力される。なお、切替部203から車載ナビゲーションシステム104に車速パルス信号を直接的に入力する場合、切替部203に入力された車速パルス信号を変化させずにそのまま車載ナビゲーションシステム104に入力させてもよく、この例に限定されず、外部からアダプタ201に入力される車速パルス信号を、位相を反転させたり、増幅したりして車載ナビゲーションシステム104に入力させてもよい。
【0075】
<第3実施形態>
次の説明は第3実施形態に関する。
第3実施形態の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ301は、
図6のような構成をなす。
図6に開示される車載システム302は、ECU180及び通信線140の構成及び機能は、
図1の車載システム102におけるECU180及び通信線140の構成及び機能と同様である。
【0076】
図6の車載システム302に設けられる車載ナビゲーションシステム304は、自身が搭載される車両100の位置を表示装置112において地図上に表示するナビゲーション機能、テレビ映像を表示装置112に表示するテレビ機能、DVDを再生した映像を表示装置112に表示するDVD機能、外部から車速パルス信号などのアナログ電圧信号を受信する受信機能、外部からデジタル情報を受信する受信機能、などを備える。車載ナビゲーションシステム304は、これらの機能を実現するために、主として、表示装置112、制御装置114、通信部120などを備える。表示装置112は、テレビ映像、地図映像、DVD映像、その他の映像を表示し得る表示装置である。表示装置112は、公知の液晶表示装置などであってもよく、これ以外の表示装置であってもよい。
【0077】
制御装置114は、各種制御、各種演算、各種情報処理等を行い得る装置である。制御装置114は、表示装置112の表示を制御し得る装置であり、例えば所定の映像信号に基づく映像表示を表示装置112に行わせる得る装置として構成される。制御装置114は、1つの装置によって実現されてもよく、2つ以上の装置によって実現されてもよい。
【0078】
図1の例では、制御装置114においてテレビチューナ部114A、DVD再生部114B、ナビゲーション部114Cなどが含まれる。テレビチューナ部114A、DVD再生部114B、ナビゲーション部114Cは、それぞれが別々の装置として構成されていてもよく、これらのうちの複数が共通の装置によって実現されてもよい。
図1の例で制御装置114に含まれる機能はあくまで一例であり、他の機能を有していてもよい。例えば、車載ナビゲーションシステム104において外部からの映像信号の入力を可能とする映像入力端子が設けられ、当該映像入力端子に入力される映像信号に基づく映像を表示装置112に表示させるように制御装置114が動作してもよい。なお、図示は省略されているが、制御装置114には、CPUなどの演算装置を有する情報処理部、半導体記憶装置などの記憶装置を有する記憶部、なども設けられる。
【0079】
通信部120は、CAN信号の送信やCAN信号の受信を行い得る部分である。
図6の例では、通信部120は、CAN信号を伝送し得るように構成された通信線330に電気的に接続され、通信線330によって伝送されるCAN信号の受信や、通信線330へのCAN信号の送信などを行い得る通信装置として構成される。通信部120が受信したCAN信号は、制御装置114によって処理され得る。
【0080】
車載ナビゲーションシステム304の表示システム110は、映像信号に基づく映像表示が有効である状態で通信部120に入力される信号の状態が車両100の走行中を示すCAN信号の状態で第1基準時間よりも長く継続する場合に映像信号に基づく前記映像表示を無効とする。通信部120に入力される信号の状態が車両100の走行中を示すCAN信号の状態とは、例えば、車速が所定速度以上であることを特定し得るデータ(例えば、所定速度以上の車速データ等)を含む情報がCAN信号として通信部に断続的に入力される状態である。具体的には、表示システム110は、例えば、映像信号に基づく映像表示が有効である状態で車載ナビゲーションシステム304に対して車両100の走行中を示すCAN信号が第1基準時間よりも長く断続的に入力される場合に映像信号に基づく映像表示を無効とする。一方で、表示システム110は、映像信号に基づく映像表示が無効である状態で通信部120に入力される信号の状態が車両100の停止中を示す状態で第2基準時間よりも長く継続する場合に映像信号に基づく映像表示を有効とする。通信部120に入力される信号の状態が車両100の停止中を示す状態とは、例えば、車両100の走行中を示すCAN信号が入力されない状態であってもよい。或いは、車速が所定速度未満であることを特定し得るデータ(例えば、所定速度未満の車速データ等)を含む情報がCAN信号として通信部に断続的に入力される状態であってもよい。具体的には、表示システム110は、例えば、映像信号に基づく映像表示が無効である状態で車載ナビゲーションシステム304に対して、車両100の走行中を示すCAN信号が入力されない状態が第2基準時間よりも長く継続する場合、或いは、車両100の停止中を示すCAN信号が第2基準時間よりも長く断続的に入力される場合に映像信号に基づく映像表示を有効とするように機能する。そして、第1基準時間よりも第2基準時間のほうが長く設定される。
【0081】
アダプタ301は、車載ナビゲーションシステム用のアダプタである。アダプタ301は、アダプタ301の外部に設けられた外部機器と車載ナビゲーションシステム304との間に介在する中間装置として機能する。アダプタ301は、車載ナビゲーションシステム304に対してCAN信号を提供する機能を有する。アダプタ301は、主に、第1通信部310と信号制御部320とを備える。
【0082】
第1通信部310は、第1送信部310Aと第1受信部310Bとを備える。第1送信部310Aは、通信線140に対して情報を送信する機能を有する部分である。第1受信部310Bは、通信線140から情報を受信する機能を有する部分である。第1受信部310Bは、受信部の一例に相当し、車両100においてアダプタ301の外部に設けられた外部機器から走行距離情報や車速情報などの車両情報を受信する機能を有する。
図6の例では、外部機器は、ECU180や通信線140である。本実施形態では、「車両情報」は、車速情報であってもよく、走行距離情報であってもよい。上記車速情報は、車両100の速度を特定できる情報であればよく、例えば、車両100の車速データであってもよく、車輪回転状態のデータであってもよい。また、上記走行距離情報は、車両100の走行距離を特定できる情報であればよく、例えば、車両100の総走行距離データであってもよく、ECUなどが計測する積算走行距離や区間走行距離であってもよく、車輪回転状態などのデータであってもよい。代表例では、第1受信部310Bは、ECU180から通信線140に定期的に送信される車両情報(例えば総走行距離のデータ)をリアルタイムに受信する機能を有する。なお、ECU180から通信線140にデータが送信された場合において第1受信部310Bがそのデータを受信するタイミングは、データが送信された直後にほぼ遅延なく受信してもよく、わずかに時間が経ってから受信してもよい。代表例では、通信線140がCAN通信線であるCAN‐BUSとして機能し、車両100は、車両情報を通信線140(CAN通信線)によって伝送する。そして、受信部の一例に相当する第1受信部310Bは、通信線140(CAN通信線)からCAN通信によって車両情報(総走行距離情報や車速情報など)を受信する。
【0083】
信号制御部320は、演算部322と第2通信部324とを備え、通信線140(CAN通信線)から受信した上述の車両情報に基づいてCAN信号を生成し、車載ナビゲーションシステム304に送信する機能を有する。演算部322は、各種演算や情報処理を行う部分であり、第1受信部310Bが受信した車両情報に基づいて各種の値を算出する部分である。第2通信部324は、第2送信部324Aと第2受信部324Bとを備える。第2送信部324Aは、通信線330を介して車載ナビゲーションシステム304に対して情報を送信する機能を有する部分である。第2受信部324Bは、車載ナビゲーションシステム304から通信線330を介して情報を受信する機能を有する部分である。第2送信部324Aは、CAN信号の出力を行い得る。アダプタ301では、第1受信部310Bが通信線140から所定の車両情報以外の情報をCAN信号として受信した場合に、その情報をそのまま第2送信部324Aから通信線330を介して車載ナビゲーションシステム304に送信するようになっている。アダプタ301では、第1受信部310Bが通信線140から所定の車両情報をCAN信号として受信した場合に、その情報を受信した上で、新たな情報を生成して第2送信部324Aから通信線330を介して車載ナビゲーションシステム304に送信するか、又は情報を送信しないような対応が可能となっている。この場合の所定の車両情報は、上述した車速情報であってもよく、走行距離情報であってもよい。車速情報は、車両100の車速データであってもよく、車輪回転状態のデータであってもよい。走行距離情報は、車両100の総走行距離データであってもよく、ECUなどが計測する積算走行距離や区間走行距離、車輪回転状態などのデータであってもよい。また、アダプタ301では、第2受信部324Bが車載ナビゲーションシステム304から通信線330を介してCAN信号を受信した場合に、このCAN信号をそのまま第1送信部310Aから通信線140に送信するようになっている。
【0084】
信号制御部320は、以下のように動作する。信号制御部320は、車両100の走行中を示すCAN信号が通信線140に断続的に出力されている場合に、通信部120に与える信号の状態を車両100の走行中を示すCAN信号の状態で継続させる第1期間と、通信部120の信号の状態を車両100の停止中を示す状態で継続させる第2期間とを交互に繰り返す。例えば、信号制御部320は、第1期間に、車両100の走行中を示すCAN信号(例えば車速が所定速度以上であることを特定し得るデータ(車速データ等)を含む信号)を通信部120に対して断続的に送信し、第2期間には、車両100の走行中を示すCAN信号を通信部120に対して送信しない対応、又は、車両100の停止中を示すCAN信号(例えば、車速が所定速度未満であることを特定し得るデータ(車速データ等)を含む信号)を通信部120に対して断続的に送信する対応を行う。そして、信号制御部320は、第1期間と第2期間とを交互に繰り返し、第1期間の長さを第1基準時間よりも短くし、第2期間の長さを第2基準時間よりも長くするように動作する。車両100の走行中を示すCAN信号は、例えば、車速が0よりも大きい車速データを含むCAN信号である。
【0085】
信号制御部320は、アダプタ301が電源オン状態となった後、車両100においてアダプタ301の外部から通信線140に送信されるCAN信号(例えばECU180から送信される車速データや走行距離データ等)を取得する。そして、CAN信号(車両情報)を取得する毎に、取得したCAN信号に基づいて車速や走行距離を算出し、算出したデータを含むCAN信号を車載ナビゲーションシステム304に送信する。
【0086】
具体的には、以下のようにしてCAN信号に含めるデータを生成する。なお、以下の説明及び
図7において、P1は、第1期間の長さであり、P2は、第2期間の長さである。V
outは、アダプタ301が車載ナビゲーションシステム304に車速データを含むCAN信号を出力する時間であり、最大値はP1である。D
0は、アダプタ301が電源オンになってから最初にアダプタ301が通信線140から取得した、当該取得時点での車両100の総走行距離である。T
0は、アダプタ301が総走行距離D
0を取得した時刻である。代表例では、アダプタ301が電源オンになった時刻を0とし、T
0は、アダプタ301が電源オンになってからアダプタ301が総走行距離D
0を取得するまでの経過時間に相当する。D
1,D
2,D
3・・・D
nは、各タイミングでアダプタ301が取得した車両100の総走行距離である。T
1,T
2,T
3・・・T
nは、D
1,D
2,D
3・・・D
nの各々をアダプタ301が取得した時刻である。例えば、T
1は、アダプタ301がD
1を取得した時刻であり、T
2は、アダプタ301がD
2を取得した時刻である。D
tは、アダプタ301の電源オン時からの積算走行距離であり、電源オン時の初期値は0である。T
tは、アダプタ301の電源オン時から現在までの積算時間であり、初期値は0である。
【0087】
Dnowは、通信線140から取得した総走行距離Dnとアダプタ301の電源オン時に最初に通信線140から取得した総走行距離D0との差から、アダプタ301の電源オン時からの積算走行距離Dtを引いた値((Dn-D0)-Dt)である。Dnは、第1期間においては、第1期間に通信線140から取得した総走行距離であり、第2期間においては、第2期間に最後に通信線140から取得した総走行距離である。Tnowは、通信線140から総走行距離を取得した時刻とアダプタ301の電源オン時に最初に通信線140から総走行距離を取得した時刻との差から、アダプタ301の電源オン時から現在までの積算時間を引いた値((Tn-T0)-Tt)である。Tnは、第1期間においては、第1期間に通信線140から総走行距離を取得した時刻であり、第2期間においては、第2期間に最後に通信線140から総走行距離を取得した時刻である。Tvは、アダプタ301が車速データを含むCAN信号を車載ナビゲーションシステム304に送信してから次に通信線140から総走行距離Dnを受信するまでの時間である。Vは、アダプタ301が車載ナビゲーションシステム304に送信するCAN信号に含める車速データである。
【0088】
信号制御部320は、時刻t1においてCAN信号に含める車速(車速データ)の値を算出する場合、Vout=P1とし、Dt=0、Tt=0、とし、Dnow=(D2-D0)-Dtとし、Tnow=(T2-T0)-Ttとする。そして、V=Dnow/Tnowの式により、車速を算出する。この車速は、基準時点T0から時点T2までの車速を推定した値である。信号制御部320は、このように算出した車速(車速データ)の値を含むCAN信号を、時刻t1の直後に車載ナビゲーションシステム304に送信する。なお、本実施形態の代表例でも、基準時点T0は、アダプタ301の電源がオン状態になってから最初に車両情報(代表例では総走行距離データ)を取得した時である。
【0089】
信号制御部320は、時刻t2においてCAN信号に含める車速(車速データ)の値を算出する場合、Dt’=Dt+Dnowとし、Tt’=Tt+Tnowとし、Vout’=Vout-Tvとし、Dnow’=(D3-D0)-Dt’とし、Tnow’=(T3-T0)-Tt’とする。そして、V’=Dnow’/Tnow’の式により、車速を算出する。信号制御部320は、このように算出した車速(車速データ)の値を含むCAN信号を、時刻t2の直後に車載ナビゲーションシステム304に送信する。
【0090】
信号制御部320は、時刻t3においてCAN信号に含める車速(車速データ)の値を算出する場合、Dt’’=Dt’+Dnow’とし、Tt’’=Tt’+Tnow’とし、Vout’’=Vout’-Tv’とし、Dnow’’=(D4-D0)-Dt’’とし、Tnow’’=(T4-T0)-Tt’’とする。そして、V’’=Dnow’’/Tnow’’の式により、車速を算出する。信号制御部320は、このように算出した車速(車速データ)の値を含むCAN信号を、時刻t3の直後に車載ナビゲーションシステム304に送信する。
【0091】
信号制御部320は、時刻t4においてCAN信号に含める車速(車速データ)の値を算出する場合、Dt’’’=Dt’’+Dnow’’とし、Tt’’’=Tt’’+Tnow’’とし、Vout’’’=P1とし、Dnow’’’=(D6-D0)-Dt’’’とし、Tnow’’’=(T6-T0)-Tt’’’とする。そして、V’’’=Dnow’’’/Tnow’’’の式により、車速を算出する。信号制御部320は、このように算出した車速(車速データ)の値を含むCAN信号を、時刻t4の直後に車載ナビゲーションシステム304に送信する。
【0092】
このように、本実施形態では、信号制御部320は、第2期間で最後に取得した車両情報又は第1期間で取得した車両情報によって推定される推定走行距離に基づく車速(車速データ)の値を含んだCAN信号を第1期間に送信する。具体的には、第1期間において演算を行う時点(上述のt1、t2、t3、t4等)の直近(第1期間における直近又は第2期間における最後の取得時点)において通信線140から総走行距離を取得し、その1つ前に総走行距離を取得している場合、直近に取得した総走行距離と1つ前に取得した総走行距離との差によってその期間(1つ前の取得時点から直近の時点までの間)の推定走行距離を算出することができ、それらを取得した時刻の差によってその推定走行距離の走行に要した時間を推定することができる。そして、それらの値に基づき、推定走行距離を推定走行距離の走行に要した時間で割ることによってその推定走行距離の走行における車速を求め、この車速(車速データ)の値を含むCAN信号を第1期間に送信することができる。なお、本実施形態の代表例では、アダプタ1から車速(車速データ)の値を含むCAN信号を車載ナビゲーションシステム304に送信するが、アダプタ1から走行距離データ(例えば、総走行距離データや推定走行距離データなど)の値を含むCAN信号を車載ナビゲーションシステム304に送信する方式であってもよい。
【0093】
<第4実施形態>
次の説明は第4実施形態に関する。
第4実施形態の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ401は、
図8のような構成をなす。
図8に開示される車載システム402は、アダプタ401以外は
図6の車載システム302と同様の構成を有し、同様の機能を有する。アダプタ401は、切替部440が設けられている部分以外は、アダプタ301と同様の構成を有し、同様の機能を有する。アダプタ401は、第3実施形態のアダプタ301の機能を有し、更に、切替部440による切り替え機能が付加されている。
【0094】
図8に示される車載システム402では、切替部440は、第1の切り替え状態と第2の切り替え状態とに切り替わる。切替部440が第1の切り替え状態では、通信線140において伝送されるCAN信号が切替部440を介して車載ナビゲーションシステム104(具体的には通信部120)にそのまま入力可能とされ、第2通信部324から車載ナビゲーションシステム104への信号入力は切替部440によって遮断される。切替部440が第2の切り替え状態では、通信線140において伝送されるCAN信号が切替部440を介して車載ナビゲーションシステム104へ入力されることは遮断され、第2通信部324から車載ナビゲーションシステム104(具体的には通信部120)への情報入力は許可される。切替部440が第2の切り替え状態のときには第3実施形態のアダプタ301と同様に動作し得る。
【0095】
図8の例では、例えば、アダプタ401に設けられた制御装置(例えば信号制御部320)が、切替部440の切り替え状態を制御する。この例では、信号制御部320は、第1の切り替え条件が成立した場合に切替部440を上記第1の切り替え状態に切り替え、第2の切り替え条件が成立した場合に切替部440を第2の切り替え状態に切り替える。
【0096】
なお、
図8の例では、切替部440がアダプタ401の内部に存在するが、アダプタ401の外部に設けられていてもよい。この場合又は
図8の例では、アダプタ401の電源がオフ状態のときに第1の切り替え状態で維持されるようになっていれば、アダプタ401の電源がオフ状態のときに通信線140から車載ナビゲーションシステム304への入力が可能となり、有用である。
【0097】
<第5実施形態>
次の説明は第5実施形態に関する。
第5実施形態の車載ナビゲーションシステム用のアダプタ501は、
図9のような構成をなす。第5実施形態のアダプタ501が適用される車載システム502において、アダプタ501以外の部分は、アダプタ501が車速パルス信号発生源170から車速パルス信号を受信し得るように構成されている点を除き、上述の「1.車載システム102の概要」で説明された車載システム102の内容と同一の構成及び特徴を有する。また、第5実施形態のアダプタ501は、アダプタ501が車速パルス信号発生源170から信号入力部510によって車速パルス信号を取得し得るように構成されている点を除き、上述の「2.アダプタ1の概要」で説明されたアダプタ1の内容と同一の構成及び特徴を有する。
図9では、車載システム502において、
図1に示される車載システム102の各部分と同一の構成及び機能を有する部分については
図1の車載システム102と同一の符号が付されている。
【0098】
図9に示されるアダプタ501には、信号入力部510が設けられる。信号入力部510は、車両100においてアダプタ501の外部に設けられた車速パルス信号発生源170(外部機器)から車速パルス信号が車両情報として入力される部分である。
【0099】
第1実施形態のアダプタ1は、通信線140から受信した車両情報を利用して上述の「3.車速パルス信号の生成及び出力」で説明された方法によって車速パルス信号を生成するが、第5実施形態のアダプタ501は、信号入力部510に入力される車速パルス信号(車両情報)を利用して上述の「3.車速パルス信号の生成及び出力」で説明された方法によって車速パルス信号を生成することができる。この場合、「第1実施形態において上述のdn(d0、d1、d2、d3・・・の各々)の各時点で通信線140から受信した走行距離データによって車両100の総走行距離を特定する方法」に代えて、「信号入力部510に入力される車速パルス信号を受信した各時点での車両100の総走行距離を、信号入力部510に入力される車速パルス信号によって特定する方法」に代えればよい。例えば、基準時点からある時点までに入力される車速パルス信号のパルス数をカウントすれば、このパルス数によって基準時点から当該ある時点までの車両の走行距離を算出することができる。この点以外は、上述の「3.車速パルス信号の生成及び出力」で説明された方法によって車速パルス信号を生成することができる。
【0100】
なお、
図9の例では、受信部10が通信線140から情報を受信し得るように構成されているが、このような受信部10が無くてもよい。
【0101】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0102】
第1~第4実施形態のアダプタ1では、通信線140を介して走行距離情報(具体的には、その時点での車両100の総走行距離を示すデータ)を取得することで、取得時点の車両100の総走行距離を認識するが、車両情報として、通信線140を介して断続的に速度情報(具体的には、その時点での車両100の速度を示すデータ)を取得し、車両100の速度を積分することにより速度データ取得時点での総走行距離を認識してもよい。例えば、アダプタ1がある時点で通信線140から速度データを受信した場合、前回に速度データを受信した時点から今回速度データを受信した時点までの時間と今回受信した速度データとに基づいて当該時間で進んだ車両100の距離を算出することができる。このような演算を繰り返すことで、速度データを受信する毎に、基準時点から受信時点までの走行距離を算出することができる。このように得られた走行距離を、第1の推定走行距離Dnowとして用いてもよい。
【0103】
上述された実施形態では、アダプタ1において電源がオンとなった後、車両から最初に車両情報(例えば総走行距離データ)を受信した時点を基準時点としたが、アダプタ1において電源がオンとなった時点を基準時点としてもよい。
【0104】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1,201,301,401,501 :アダプタ
10 :受信部
20 :パルス制御部
22 :演算部
24 :信号出力部
100 :車両
102,202,302,402,502 :車載システム
104,304 :車載ナビゲーションシステム
110 :表示システム
112 :表示装置
114 :制御装置
114A :テレビチューナ部
114B :DVD再生部
114C :ナビゲーション部
120 :通信部
140 :通信線
170 :車速パルス信号発生源
180 :電子制御装置(ECU)
203 :切替部
310B :第1受信部(受信部)
320 :信号制御部
510 :信号入力部
【要約】
【課題】車載ナビゲーションシステムが車両の走行中に映像表示を行うことを可能にし得る制御を、推定走行距離を反映させつつ実行する。
【解決手段】アダプタ1において、パルス制御部20は、車両情報によって特定される車両の走行距離である第1の推定走行距離と、アダプタ1が車載ナビゲーションシステム104に与えた車速パルス信号によって推定される走行距離である第2の推定走行距離との差に基づいて、第1期間に送信する車速パルス信号の周期を設定し、設定された周期の車速パルス信号を車載ナビゲーションシステム104に送信する。
【選択図】
図1