(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】発光ダイオードチップ集積装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/24 20100101AFI20240119BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240119BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20240119BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20240119BHJP
H01L 33/42 20100101ALI20240119BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240119BHJP
【FI】
H01L33/24
G09F9/33
H01L33/08
H01L33/38
H01L33/42
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2023544515
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033346
【審査請求日】2023-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518271743
【氏名又は名称】アルディーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 元伸
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-049620(JP,A)
【文献】特開2022-002289(JP,A)
【文献】特表2021-530114(JP,A)
【文献】特開2021-125544(JP,A)
【文献】特表2021-513741(JP,A)
【文献】特開2021-071595(JP,A)
【文献】特開2020-086452(JP,A)
【文献】特開2020-057640(JP,A)
【文献】特表2020-506535(JP,A)
【文献】特表2018-505567(JP,A)
【文献】特表2013-545307(JP,A)
【文献】特開2005-064475(JP,A)
【文献】国際公開第2004/023569(WO,A1)
【文献】特開2003-216052(JP,A)
【文献】特開2000-068609(JP,A)
【文献】特開2000-058981(JP,A)
【文献】特開平06-188450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0088820(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0222732(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0279242(US,A1)
【文献】特開2023-010073(JP,A)
【文献】特開2023-009782(JP,A)
【文献】特開2022-141079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
G09F 9/30 - 9/46
H01L 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に下部幹線部電極と当該下部幹線部電極から分岐した一つまたは複数の下部支線部電極とを有する下部電極を有する基板と、
上記下部電極の上記一つまたは複数の下部支線部電極の上面により構成されたチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下に複数のp側電極および一つのn側電極を有する複数の縦型の発光ダイオードチップと、
上記発光ダイオードチップの上層の上部電極とを有し、
上記発光ダイオードチップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部支線部電極とが互いに電気的に接続され、上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続され、
上記上部電極は、上部幹線部電極と当該上部幹線部電極から分岐し、上記複数の下部支線部電極と交差するように上記チップ結合部に跨がる一つまたは複数の上部支線部電極とを有し、
上記一つまたは複数の下部支線部電極の数をL、上記一つまたは複数の上部支線部電極の数をUとしたとき、L×U≧4であり、
上記発光ダイオードチップは、
n型半導体層と、
上記n型半導体層上に互いに分離して複数設けられた多角錐台状の半導体層と、
それぞれの上記多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層と、
それぞれの上記発光層を覆うように全面に設けられたp型半導体層とを有し、
上記複数のp側電極はそれぞれの上記多角錐台状の半導体層の上面に対応する部分の上記p型半導体層の上面に互いに分離して設けられて上記p型半導体層に接触し、
上記多角錐台状の半導体層の上面の上方の上記p型半導体層の厚さは上記多角錐台状の半導体層の側面の上方の上記p型半導体層の
上記多角錐台状の半導体層の上面に対し垂直な方向に沿って測定した厚さより小さく、
チップ外周部の上記発光層を除いて上記発光層のうちの上記多角錐台状の半導体層の上面の上の部分がチップ側面に露出しないように構成され、
主としてそれぞれの上記多角錐台状の半導体層の上面の上記発光層から光が発せられるAlGaInN系またはAlGaInP系の発光ダイオードチップである発光ダイオードチップ集積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオードチップ、発光ダイオードチップ集積装置および発光ダイオードチップ集積装置の製造方法に関し、例えば、微小化したマイクロ発光ダイオード(LED)チップを基板上に多数集積したマイクロLEDディスプレイに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型テレビやスマートフォンなどの表示装置(ディスプレイ)の主流は、液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイ(OLED)である。このうちLCDの場合、画素の微細化に伴い、出力される光量はバックライトの光量の10分の1程度である。OLEDも、理論上の電力効率は高いが、実際の製品はLCDと同等の水準に留まっている。
【0003】
LCDおよびOLEDを遥かに凌ぐ高輝度、高効率(低消費電力)のディスプレイとしてマイクロLEDディスプレイが注目されている。直接発光のマイクロLEDディスプレイは高効率であるが、マイクロLEDディスプレイの実現のためには、数μmから数十μmオーダーのサイズのマイクロLEDチップを実装基板上に数千万個配列させる必要がある。
【0004】
マイクロLEDチップとしてはGaN系半導体を用いたものが一般的である。しかしながら、従来のGaN系マイクロLEDチップでは、チップの微細化による発光効率の低下が問題となっている。その理由は、GaN系半導体では、ウェットエッチングが困難であり、チップの分離には反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチングが行われるが、ドライエッチングで生じた側壁の欠陥密度は高く、再成長による被覆を行っても相当数の欠陥が残るためである。
【0005】
マイクロLEDチップの発光効率の向上を図るために、発光層をバンドギャップがより広い層で囲う構造が提案されている(特許文献1~4参照)。しかしながら、この構造によっても、発光効率の低下を十分に防ぐことは難しく、あるいは、結晶成長工程や加工の煩雑さがあったり、リーク電流対策が不十分であったりする。
【0006】
一方、本発明者は、マイクロLEDディスプレイを低コストで実現することが可能なマイクロLEDディスプレイの製造方法を提案した(特許文献5~8参照)。特許文献5~7では、例えばp側電極側がn側電極側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されたマイクロLEDチップを液体に分散させたインクを基板の主面のチップ結合部に吐出し、基板の下方から外部磁場を印加することによりマイクロLEDチップのp側電極側をチップ結合部に結合させることによりマイクロLEDディスプレイを製造する。特許文献8では、上下に複数のp側電極および一つのn側電極を有する縦型のマイクロLEDチップまたは一方の面側に複数のp側電極および一つのn側電極を有する横型のマイクロLEDチップをマルチチップ転写方式でチップ結合部に結合させることによりマイクロLEDディスプレイを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9601659号明細書
【文献】米国特許第9450147号明細書
【文献】米国特許第10923626号明細書
【文献】米国特許出願公開第2021/0367099号明細書
【文献】特許第6694222号公報
【文献】特許第6842783号公報
【文献】特許第6886213号公報
【文献】特許第6803595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来のGaN系マイクロLEDチップでは十分に高い発光効率を容易に得ることができなかった。
【0009】
一方、特許文献5~8に記載のマイクロLEDディスプレイの製造方法によれば、マイクロLEDディスプレイを低コストかつ高歩留まりで実現することが可能である。しかしながら、チップの微細化による発光効率の低下のために、高効率であるはずのマイクロLEDディスプレイの特性を十分生かし切れておらず、改善の余地があった。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、微細化しても高い発光効率を得ることができ、しかも容易に製造することができるAlGaInN系、さらにはAlGaInP系の発光ダイオードチップ、この高性能の発光ダイオードチップを用いた、マイクロLEDディスプレイをはじめとする各種の高性能の発光ダイオードチップ集積装置およびこのような発光ダイオードチップ集積装置を容易に製造することができる発光ダイオードチップ集積装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は、
n型半導体層と、
上記n型半導体層上の多角錐台状の半導体層と、
上記多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層と、
上記発光層を覆うように設けられたp型半導体層と、
上記n型半導体層に接触したn側電極と、
上記p型半導体層に接触したp側電極とを有し、
上記多角錐台状の半導体層の上面の上方の上記p型半導体層の厚さは上記多角錐台状の半導体層の側面の上方の上記p型半導体層の厚さより小さく、
主として上記多角錐台状の半導体層の上面の上記発光層から光が発せられるAlGaInN系またはAlGaInP系の発光ダイオードチップである。
【0012】
多角錐台状の半導体層は、典型的には、六角錐台状であるが、これに限定されるものではない。発光層は、一つの多角錐台状の半導体層毎に設けられ、この半導体層がn型半導体層上に複数あれば発光層も複数ある。この半導体層は、アンドープであってもn型であってもよい。
【0013】
典型的には、n型半導体層上に少なくとも一つの開口を有する絶縁膜が設けられ、多角錐台状の半導体層は、この絶縁膜の開口の部分のn型半導体層上にこの絶縁膜上に延在するように設けられ、あるいは、この絶縁膜の開口の部分のn型半導体層上にのみ設けられる。絶縁膜が有する開口の数は発光ダイオードチップが有する発光層の数と同じである。絶縁膜が複数の開口を有する場合、それらの配列は必要に応じて選択されるが、配列密度の向上の観点から、好適には最密充填配列とされる。絶縁膜の開口の形状は必要に応じて選択され、典型的には、多角錐台状の半導体層と相似な多角形であるが、多角形以外の形状、例えば円形であってもよい。絶縁膜は必要に応じて選択されるが、例えば、酸化膜(SiO2 膜など)、窒化膜(Si3 N4 膜など)、酸窒化膜(SiON膜など)などが用いられる。n型半導体層上に少なくとも一つの開口を有する絶縁膜が設けられる場合、好適には、n型半導体層の一部は横方向成長により形成され、この絶縁膜の開口はその横方向成長により形成された部分のn型半導体層上に形成される。こうすることで、この絶縁膜の開口の部分のn型半導体層上に設けられる多角錐台状の半導体層の貫通転位密度の大幅な低減を図ることができ、それによってこの多角錐台状の半導体層から発光層に伝播する貫通転位部分における非発光再結合による発光効率の低下を抑えることができる。
【0014】
発光ダイオードチップを磁力を利用して基板上に実装する場合、典型的には、p側電極およびn側電極のうちの一方は他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成される。これらのp側電極およびn側電極のうちの一方は、典型的には、軟磁性体を含む。軟磁性体は、保磁力が小さく透磁率が大きい材料であり、磁場の影響下では強く磁化されるが、磁場が存在しない場合は磁力を持たない性質を有する。軟磁性体は、例えば、ニッケル(Ni)などである(特許文献5~7参照)。スタンプを用いたチップ転写技術やレーザービーム照射を用いたマストランスファー技術などにより発光ダイオードチップを基板上に実装する場合は、p側電極およびn側電極のうちの一方を他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成する必要はない。
【0015】
典型的な一つの例では、p側電極およびn側電極のうちの一方は少なくとも一部が透明に構成され、この透明部分を通して発光層からの光が外部に取り出される。具体的には、これらのp側電極およびn側電極のうちの一方が透明電極により構成される。
【0016】
発光ダイオードチップは縦型であっても横型であってもよい。縦型の発光ダイオードチップにおいては、p側電極はp型半導体層の上面に設けられ、n側電極はn型半導体層の多角錐台状の半導体層と反対側の面(裏面)に設けられる。一つの縦型の発光ダイオードチップに多角錐台状の半導体層が複数ある場合、典型的には、この多角錐台状の半導体層はn型半導体層上に互いに分離して複数設けられ、p側電極はそれぞれの多角錐台状の半導体層の上面に対応する部分のp型半導体層の上面に互いに分離して複数設けられる。横型の発光ダイオードチップにおいては、p側電極はp型半導体層の上面に設けられ、n側電極は多角錐台状の半導体層が設けられていない部分のn型半導体層上に設けられる。一つの横型の発光ダイオードチップに多角錐台状の半導体層が複数ある場合も、典型的には、この多角錐台状の半導体層はn型半導体層上に互いに分離して複数設けられ、p側電極はそれぞれの多角錐台状の半導体層の上面に対応する部分のp型半導体層の上面に互いに分離して複数設けられる。
【0017】
AlGaInN系の発光ダイオードチップは、近紫外帯、青紫、青色から緑色の波長帯(波長365nm~550nm)の発光を得る場合に使用される。また、AlGaInP系の発光ダイオードチップは、赤色の波長帯(波長600nm~650nm)の発光を得る場合に使用される。青色、緑色、赤色の波長帯を得るためにはAlGaInN系の発光ダイオードチップと蛍光体とを組み合わせて実現してもよい。
【0018】
発光ダイオードチップのチップサイズは必要に応じて選ばれ、発光ダイオードチップが縦型であるか横型であるかによっても異なるが、一般的には20μm×20μm以下、典型的には10μm×10μm以下、最も典型的には5μm×5μm以下に選ばれ、典型的には0.1μm×0.1μm以上である。また、発光ダイオードチップの厚さも必要に応じて選ばれるが、典型的には1μm以上6μm以下である。発光ダイオードチップは、基板上に発光ダイオードを構成する半導体層の結晶成長を行った後、基板を半導体層から分離したものであることが望ましい。発光ダイオードチップの全体形状は必要に応じて選ばれ、特に限定されないが、典型的には、多角柱や円柱などである。多角柱は、四角柱(正四角柱など)、六角柱(正六角柱など)、八角柱(正八角柱など)などである。発光ダイオードチップの全体形状は、半多角錘(多角錐の上部を切除したもの)や半円錐(円錐の頂部を切除したもの)などであってもよい。発光ダイオードチップの側面は、多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層のうちのこの半導体層の上面の部分がこの側面に露出しないように形成される。こうすることで、基板上に発光ダイオードを構成する半導体層の結晶成長を行った後、この半導体層をRIEなどのドライエッチングで分離してチップ化した場合にこのチップ化により形成される側面に欠陥が存在しても、この欠陥は、主として発光が起きる多角錐台状の半導体層の上面の発光層から十分に離れた位置にあるため、発光に及ぼす影響はほとんどない。一つの発光ダイオードチップに多角錐台状の半導体層が複数ある場合、発光ダイオードチップの側面は、少なくとも一つ以上の多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層のうちのこの半導体層の上面の部分がこの側面に露出しないように形成される。
【0019】
また、この発明は、
一方の主面に下部幹線部電極と当該下部幹線部電極から分岐した単一または複数の下部支線部電極とを有する下部電極を有する基板と、
上記下部電極の上記単一または複数の下部支線部電極の上面により構成されたチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下に一つまたは複数のp側電極および一つのn側電極を有する複数の縦型の発光ダイオードチップと、
上記発光ダイオードチップの上層の上部電極とを有し、
上記発光ダイオードチップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部支線部電極とが互いに電気的に接続され、上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続され、
上記発光ダイオードチップは、
n型半導体層と、
上記n型半導体層上の多角錐台状の半導体層と、
上記多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層と、
上記発光層を覆うように設けられたp型半導体層と、
上記n型半導体層に接触したn側電極と、
上記p型半導体層に接触したp側電極とを有し、
上記多角錐台状の半導体層の上面の上方の上記p型半導体層の厚さは上記多角錐台状の半導体層の側面の上方の上記p型半導体層の厚さより小さく、
主として上記多角錐台状の半導体層の上面の上記発光層から光が発せられるAlGaInN系またはAlGaInP系の縦型の発光ダイオードチップである発光ダイオードチップ集積装置である。
【0020】
この発光ダイオードチップ集積装置において、基板は、典型的には、互いに独立駆動可能な複数の回路ユニットを有し、これらの複数の回路ユニットのそれぞれに対して下部電極および上部電極が設けられる。
【0021】
特に、発光ダイオードチップ集積装置がカラーディスプレイである場合には、典型的には、互いに隣接する3つ以上の回路ユニットを含む領域により1画素が構成される。この1画素の面積は必要に応じて選ばれる。1画素の面積は、典型的には、500μm×500μm程度に選ばれるが、500μm×500μmより大きくても小さくてもよい。この場合、3つ以上の回路ユニットにより、赤色、緑色、青色の3色の発光が行われるようにすることができる。カラーディスプレイは、パッシブマトリクス駆動方式、アクティブマトリクス駆動方式、パルス幅変調(PWM)駆動方式などのいずれであってもよい。PWM駆動方式のカラーディスプレイでは、例えば、PWM駆動回路が内蔵されたIC基板上に発光ダイオードチップを転写してもよい。
【0022】
基板(あるいは実装基板)は、特に限定されないが、例えば、Si基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、樹脂フィルム、プリント基板などである。基板は剛体であってもフレキシブルであってもよく、更に透明、半透明、不透明でもよく適宜選択される。
【0023】
下部電極を構成する単一または複数の下部支線部電極の幅、複数の下部支線部電極の間の隙間の幅などは必要に応じて選択されるが、例えば、下部支線部電極の幅は1~100μm、下部支線部電極の間の隙間の幅は0.1~5μmである。典型的には、これらの複数の下部支線部電極は互いに平行に設けられる。各下部支線部電極の上面によりチップ結合部が構成される。このチップ結合部は発光ダイオードチップを結合させる領域である。単一の下部支線部電極あるいは複数の下部支線部電極のうちの少なくとも一つの下部支線部電極のチップ結合部には少なくとも一つの発光ダイオードチップが結合している。複数の下部支線部電極の場合、一つの発光ダイオードチップも結合していないチップ結合部が含まれることもある。発光ダイオードチップはチップ結合部のどの位置に結合してもよい。発光ダイオードチップとして、p側電極およびn側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されているものを用いる場合、この発光ダイオードチップをチップ結合部に結合させる位置を予め決めておきたいときは、チップ結合部の領域に強磁性体領域を設けてもよい。こうすることで、発光ダイオードチップのp側電極およびn側電極のうちの一方が磁力によりこの強磁性体領域に向かって引き寄せられて結合しやすくなる。例えば、下部支線部電極のチップ結合部の中心線上に一列にかつ等間隔に発光ダイオードチップを結合させる場合は、その結合させたい位置にそれぞれ強磁性体領域が形成される。これらの強磁性体領域は、基板と下部支線部電極との間に設けてもよいし、チップ結合部上に設けてもよい。強磁性体領域の面積は、典型的には、発光ダイオードチップのp側電極およびn側電極のうちの一方の面積以下に選ばれる。また、強磁性体領域の形状は、典型的には、発光ダイオードチップのp側電極およびn側電極のうちの一方の形状と同様に選ばれるが、これに限定されるものではない。強磁性体領域は、典型的には、軟磁性体または硬磁性体からなる。硬磁性体は、磁場を取り去っても保磁力を有する性質を有し、永久磁石として用いられる。硬磁性体は、例えば、ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)磁石などである(特許文献5~7参照)。
【0024】
発光ダイオードチップの上層の上部電極は、上部幹線部電極と当該上部幹線部電極から分岐し、上記の単一または複数の下部支線部電極と交差するようにチップ結合部に跨がる単一または複数の上部支線部電極とを有するようにしてもよい。単一または複数の上部支線部電極の幅、複数の上部支線部電極の間の隙間の幅などは下部電極を構成する単一または複数の下部支線部電極と同様に必要に応じて選択されるが、例えば、各上部支線部電極の幅は1~100μm、複数の上部支線部電極の間の隙間の幅は0.1~5μmである。上部支線部電極が複数の場合、典型的には、これらの上部支線部電極は互いに平行に設けられ、これらの上部支線部電極は下部支線部電極に対して直角に設けられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
典型的には、下部電極を構成する単一または複数の下部支線部電極の数をL、上部電極を構成する単一または複数の上部支線部電極の数をUとしたとき、L、UはL×U≧4を満足するように選ばれる。発光ダイオードチップの微細化により全数検査が著しく困難になるため、代表的な幾つかの発光ダイオードチップの特性を測定し、他の発光ダイオードチップに関しては検査を行わずに工程に導入されることが望ましい。この場合、通常、発光ダイオードチップには約0.5%の割合で電気的不良が含まれる。上部支線部電極および下部支線部電極がそれぞれ単一である場合、例えばマイクロLEDディスプレイでは、転写などの他の工程の歩留まりが100%であっても約0.5%のチップ不良のために画素の修理が必要になる。通常、チップ不良に対してはチップの交換が必要であるが、チップが微細であるほど交換などの修復作業も困難を極める。このように、不良チップを除去するための全数検査工程や、不良チップが存在する場合の画素修復の困難さもマイクロLEDディスプレイの低コスト化を阻害する要因となっている。
【0026】
次に、上部支線部電極および下部支線部電極がそれぞれ複数ある場合を議論する。ただし、発光ダイオードチップ集積装置がマイクロLEDディスプレイである場合を考える。簡単のため、一つの上部支線部電極と一つの下部支線部電極との交差部に一つの発光ダイオードチップが接続されている場合を仮定する。また、チップ転写後の外観検査などによりチップの無い部分への補填は容易であるため、チップ転写の歩留まりは100%と仮定して議論する。一つでも発光ダイオードチップが正常に動作すれば1画素に必要な光量は確保できる。不良チップが接続された上部支線部電極および下部支線部電極は、電流印加やレーザービーム照射などで幹線部電極と切断することで画素の修復が可能であり、チップ交換作業などに比べ遥かに容易である。チップに流れる電流密度の増大に伴う発光効率の低下は~数%以内であり駆動回路側で十分補正可能である。一つのサブピクセルの支線部電極数および発光ダイオードチップ数をともに4とすると、発光ダイオードチップ4つ全てが不良である場合を除いて容易に修復できるため、実質的に一つのサブピクセルの不良率は0.5%の4乗(=6.25×10
-10 ) である。これは4K画素のマイクロLEDディスプレイを一体型で製作した場合でも約94%の歩留まりで製造できる数値である。ただし、この数値が3であると歩留まりは0.01%に低下する。そのため、L×U≧4が望ましい。このように、L×U≧4とすることで、チップの全数検査を省略しても十分な製造歩留まりを確保することが可能であり、マイクロLEDディスプレイを低コストかつ高歩留まりで実現することが可能となる。ちなみに、チップ転写の歩留まりを98%とした場合でも、支線部電極数が6であれば4K画素の一体型マイクロLEDディスプレイに対して96.5%の歩留まりを確保できる。ただし、上記の歩留まりの計算には以下の式を使った。
【数1】
ここでαは支線部電極数であり、支線部電極数4以上とするにはL×U≧4でなければならない。Nはチップ数を示す。チップ歩留まりは99.5%と仮定し、実装歩留まりは100%と98%の2通りで計算を行った。チップ数は一つの支線部電極に一つのチップが結合すると仮定して、支線部電極数が4の場合は、4K画素の場合で、3840×2160×3(RGB)×支線部電極数4=99,532,800となる。支線部電極数が6の場合は、4K画素の場合で、3840×2160×3(RGB)×支線部電極数6=149,229,200となる。
【0027】
必要に応じて、下部支線部電極の少なくとも一部および/または上部支線部電極の少なくとも一部を融点が350℃以下、典型的には150℃以上の低融点金属から構成することができ、この一部をヒューズとして用いることができる。すなわち、この下部支線部電極あるいは上部支線部電極に通電を行った場合、発熱によりこの低融点金属からなる部分が選択的に溶けることにより下部支線部電極あるいは上部支線部電極が切断される。このような金属は、In、InSnなどである(特許文献7参照)。下部支線部電極または上部支線部電極の全体が融点の高い材料からなる場合は、その材料からなる下部支線部電極または上部支線部電極の一部にレーザービームまたは電子線の照射を行うことにより切断することができる。切断箇所は他に支障の生じない限り、下部支線部電極または上部支線部電極のどの位置であってもよく、どの位置でもヒューズとなり得る。
【0028】
発光ダイオードチップ集積装置は、必要に応じて、発光ダイオードチップに加えて、上下にp側電極およびn側電極を有する縦型のツェナーダイオードチップをさらに有し、当該ツェナーダイオードチップは当該発光ダイオードチップに対して逆バイアスになるように接続される。このツェナーダイオードチップを下部電極と上部電極との間に逆バイアスが印加されるように接続することにより、何らかの理由により下部電極と上部電極との間にサージ電圧などが印加されても、このツェナーダイオードチップを通して電流を逃がすことができるため、発光ダイオードチップの静電破壊(ESD)を効果的に防止することができる。典型的には、ツェナーダイオードチップの混合割合は発光ダイオードチップに対して10分の1以下の割合とされる。発光ダイオードチップとして、p側電極およびn側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されているものを用いる場合、このツェナーダイオードチップも、p側電極およびn側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成される。
【0029】
発光ダイオードチップ集積装置は、基本的にはどのようなものであってもよく、発光ダイオードチップの種類に応じて適宜設計される。発光ダイオードチップ集積装置は、一種類の発光ダイオードチップを集積したものだけでなく、二種類以上の発光ダイオードチップを集積したものや蛍光体と組み合わせたものであってもよい。発光ダイオードチップ集積装置は、例えば、発光ダイオード照明装置、発光ダイオードバックライト、発光ダイオードディスプレイなどであるが、これに限定されるものではない。発光ダイオードチップ集積装置の大きさ、平面形状などは、発光ダイオードチップ集積装置の用途、発光ダイオードチップ集積装置に要求される機能などに応じて適宜選択される。
【0030】
また、この発明は、
チップ結合部に強磁性体領域が設けられた基板の当該強磁性体領域に磁場を印加して磁化させる工程と、
上記磁場を取り去った後、上記強磁性体領域の残留磁束が消える前に、上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された複数の縦型の発光ダイオードチップと液体とを含有する液滴状のインクを上記チップ結合部に供給し、上記インク中の上記発光ダイオードチップを、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記強磁性体領域に向けて上記強磁性体領域上に結合させる工程とを有する発光ダイオードチップ集積装置の製造方法である。
【0031】
この発光ダイオードチップ集積装置の製造方法において、縦型の発光ダイオードチップは、基本的にはどのようなものであってもよいが、好適には、
n型半導体層と、
上記n型半導体層上の多角錐台状の半導体層と、
上記多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って設けられた発光層と、
上記発光層を覆うように設けられたp型半導体層と、
上記n型半導体層に接触したn側電極と、
上記p型半導体層に接触したp側電極とを有し、
上記多角錐台状の半導体層の上面の上方の上記p型半導体層の厚さは上記多角錐台状の半導体層の側面の上方の上記p型半導体層の厚さより小さく、
上記p側電極および上記n側電極のうちの一方は他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成され、
主として上記多角錐台状の半導体層の上面の上記発光層から光が発せられるAlGaInN系またはAlGaInP系の縦型の発光ダイオードチップである。
【0032】
発光ダイオードチップを含むインクが含有する液体については、特許文献5~7に詳細に記載されている。
【0033】
インク中の発光ダイオードチップの濃度、インク中の発光ダイオードチップの体積分率およびインクの粘度については、特許文献5~7に詳細に記載されている。
【0034】
基板のチップ結合部にインクを供給する方法および供給後のインクの処理については、特許文献5~7に詳細に記載されている。
【0035】
この発光ダイオードチップ集積装置の製造方法は、上記の発光ダイオードチップ集積装置の製造に適用して好適なものである。
【0036】
この発光ダイオードチップ集積装置の製造方法の発明においては、上記以外のことは、特にその性質に反しない限り、上記の発光ダイオードチップ集積装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、発光ダイオードチップは、多角錐台状の半導体層の上面および側面に沿って発光層が設けられ、主として多角錐台状の半導体層の上面の発光層から光が発せられるため、発光ダイオードチップの側面にドライエッチングなどにより発生した欠陥が存在しても、その影響が発光に及ぶことはほとんどないことから、微細化しても高い発光効率を得ることができ、しかも構造が簡単であるため容易に製造することができる。そして、この高性能の発光ダイオードチップを用いてマイクロLEDディスプレイをはじめとする各種の高性能の発光ダイオードチップ集積装置を実現することができる。また、発光ダイオードチップ集積装置の製造方法では、チップ結合部に複数の強磁性体領域が設けられた基板のこの強磁性体領域に磁場を印加して磁化させ磁場を取り去った後、強磁性体領域の残留磁束が消える前に、複数の発光ダイオードチップと液体とを含有する液滴状のインクをチップ結合部に供給することにより、残留磁束の効果により、インク中の発光ダイオードチップを、p側電極およびn側電極のうちの一方を確実に強磁性体領域に結合させることができるため、発光ダイオードチップ集積装置を容易に製造することができる。そして、例えば、チップ結合部を二次元アレイ状に設けることにより、大面積あるいは高集積密度の発光ダイオードチップ集積装置、例えば、発光ダイオード照明装置、大面積の発光ダイオードバックライト、大画面の発光ダイオードディスプレイなどを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す平面図である。
【
図1B】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す縦断面図である。
【
図1C】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す斜視図である。
【
図2】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの動作を説明するための縦断面図である。
【
図3A】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3B】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3C】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3D】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3E】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3F】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3G】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3H】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3I】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3J】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3K】この発明の第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの製造方法を説明するための断面図である。
【
図4】この発明の第2の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す縦断面図である。
【
図5】この発明の第3の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す縦断面図である。
【
図6】この発明の第4の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す縦断面図である。
【
図7A】この発明の第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す平面図である。
【
図7B】この発明の第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す断面図である。
【
図8】この発明の第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップの動作を説明するための断面図である。
【
図9】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造に用いられるインクを示す略線図である。
【
図10】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造に用いられるインク吐出装置を示す略線図である。
【
図11A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造に用いられる実装基板を示す平面図である。
【
図11B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造に用いられる実装基板を示す断面図である。
【
図12A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図12B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図13A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図13B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図14】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図15A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図15B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図16A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置の修理方法を説明するための平面図である。
【
図16B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置の修理方法を説明するための断面図である。
【
図17A】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置の修理方法を説明するための平面図である。
【
図17B】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置の修理方法を説明するための断面図である。
【
図18A】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図18B】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図19】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図20】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図21】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図22】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図23】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図24】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図25】この発明の第7の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図26】この発明の第8の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図27】この発明の第8の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図28】この発明の第9の実施の形態による横型マイクロLEDチップを示す平面図である。
【
図29】この発明の第9の実施の形態による横型マイクロLEDチップを示す断面図である。
【
図30】この発明の第9の実施の形態による横型マイクロLEDチップを示す斜視図である。
【
図31A】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法において用いられる実装基板を示す平面図である。
【
図31B】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法において用いられる実装基板を示す断面図である。
【
図32A】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図32B】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図33A】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置を示す平面図である。
【
図33B】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置を示す断面図である。
【
図33C】この発明の第10の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置の製造方法により製造されたマイクロLEDチップ集積装置を示す断面図である。
【
図34】この発明の第11の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と言う)について説明する。
【0040】
〈第1の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10を
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示す。
図1Aは平面図、
図1Bは縦断面図、
図1Cは斜視図である。この縦型マイクロLEDチップ10は全体として六角柱状の形状を有する。
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示すように、この縦型マイクロLEDチップ10においては、n型GaN層11上に絶縁膜としてSiO
2 膜12が設けられている。SiO
2 膜12の中心部には六角形の開口12aが設けられている。SiO
2 膜12の厚さは必要に応じて選択されるが、例えば10~30nmである。開口12aの径は必要に応じて選択されるが、典型的には100~1000nmである。この開口12aの部分におけるn型GaN層11上に、島状の六角錐台状のGaN層13がSiO
2 膜12上に延在するように設けられている。このGaN層13はアンドープであってもn型であってもよい。このGaN層13の上面および側面(斜面)に沿って発光層14が島状に設けられている。発光層14は、例えば、障壁層としてのIn
x Ga
1-x N層と井戸層としてのIn
y Ga
1-y N層とが交互に積層されたIn
x Ga
1-x N/In
y Ga
1-y N多重量子井戸(MQW)構造(x<y、0≦x<1、0≦y<1)を有する。この発光層14を覆うようにp型GaN層15が設けられている。このp型GaN層15の表面は平坦となっている。従って、GaN層13の上面の上方のp型GaN層15の厚さは、GaN層13の側面(斜面)の上方のp型GaN層15の厚さより小さくなっている。p型GaN層15上にITOからなるp側電極16が設けられ、n型GaN層11の裏面にn側電極17が設けられている。n側電極17は軟磁性体のNiを含み、例えば、Ti/Al/Ti/Ni/Au膜などの多重積層膜からなる。n型GaN層11、発光層14およびp型GaN層15は典型的にはC面方位を有する。n型GaN層11の抵抗率は例えば0.01Ωcm程度であるが、これに限定されるものではない。GaN層13の抵抗率は例えば0.1~0.3Ωcm程度であるが、これに限定されるものではない。p型GaN層15の抵抗率は例えば1~3Ωcm程度であるが、これに限定されるものではない。n型GaN層11の厚さは例えば1~5μm、GaN層13の厚さは例えば100~1500nm、発光層14の厚さは例えば30~100nm、p型GaN層15のGaN層13の上面の上方の部分の厚さは例えば100~200nmであるが、これに限定されるものではない。n型GaN層11、GaN層13、発光層14およびp型GaN層15の合計の厚さは例えば1.2~6.8μmであるが、これに限定されるものではない。発光層14を構成するIn
x Ga
1-x N/In
y Ga
1-y N MQW構造のIn組成比x、yは、縦型マイクロLEDチップ10の発光波長に応じて選ばれる。六角錐台状のGaN層13に倣って六角錐台状に形成された発光層14のIn組成は、GaN層13の上面にある部分の方がGaN層13の側面にある部分より大きくなる。従って、発光層14のうちGaN層13の側面にある部分のバンドギャップはGaN層13の上面にある部分のバンドギャップより大きい。
【0041】
図2に
図1Bに示す縦型マイクロLEDチップ10の各部のサイズを示す。
図2に示すように、この縦型マイクロLEDチップ10においては、絶縁膜12の開口12aの直径をa、六角錐台状のGaN層13の上面の直径をb、縦型マイクロLEDチップ10の直径をc、GaN層13の直径をd、絶縁膜12の上面からp型GaN層15の上面までの高さをe、GaN層13の上面の上方の部分のp型GaN層15の厚さをfとしたとき、f<eかつa≦b<d<cが成立する。
【0042】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10において、ITOからなるp側電極16とn側電極17との間に順方向バイアスを印加する。この場合、n型GaN層11とp型GaN層15との間は開口12a以外の部分ではSiO
2 膜12により分離されているため、動作時にリーク電流が発生するのを効果的に抑制することができる。また、抵抗率が高いp型GaN層15の厚さはGaN層13の上面の上方の部分の方がGaN層13の側面(斜面)の上方の部分より小さいため、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流は、より抵抗が低い、GaN層13の上面の上方の部分のp型GaN層15を主として通り、GaN層13の側面の上方の部分のp型GaN層15を通る電流は少ない。また、発光層14のMQW構造のIn組成比x、yは、発光層14のうちGaN層13の上面の上方の部分よりGaN層13の側面の上方の部分の方が小さいため、発光層14のバンドギャップはGaN層13の上面の上方の部分の方がGaN層13の側面の上方の部分より小さいが、キャリア(電子、ホール)はバンドギャップが小さいGaN層13の上面の上方の部分の発光層14に集まりやすい。この結果、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流の経路は
図2の縦断面において斜線を施した領域のようになる。そして、こうしてp側電極16とn側電極17との間に電流が流れることにより発光層14で発光が起き、主として、GaN層13の上面の上方の部分の発光層14から発せられる光がp側電極16を透過して外部に取り出される。
【0043】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
図3Aに示すように、C面方位のサファイア基板20上に例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりn型GaN層11をエピタキシャル成長させた後、このn型GaN層11上に化学気相成長(CVD)法やスパッタリング法などによりSiO
2 膜12を形成する。
【0044】
次に、
図3Bに示すように、従来公知の方法によりSiO
2 膜12をパターニングすることにより、最終的に1チップとなる部分に開口12aを形成する。
【0045】
次に、
図3Cに示すように、SiO
2 膜12を成長マスクとして、従来公知のMOCVD法によるELO法により、GaN層13を六角錐台の島状に成長させる。この場合、まず、SiO
2 膜12の開口12aの部分に露出したn型GaN層11の表面にGaNが選択成長し、引き続いてSiO
2 膜12上に横方向成長することによりSiO
2 膜12上にGaN層13が成長する。この成長の際には、島状のGaN層13が隣接する島状のGaN層13と衝突する前に成長を停止させる。
【0046】
次に、
図3Dに示すように、上述のようにして成長させた島状のGaN層13上にIn
x Ga
1-x N/In
y Ga
1-y N MQW構造を有する発光層14をエピタキシャル成長させる。この場合、GaN層13の上面に成長するInGaN層の成長速度に比べて側面に成長するInGaN層の成長速度の方が小さいため、発光層12の厚さは、GaN層13の側面ではGaN層13の上面に比べて小さい。GaN層13の上面に成長するInGaN層のIn組成も側面に成長するInGaN層のIn組成より小さい。
【0047】
次に、
図3Eに示すように、発光層14を覆うように全面にp型GaN層15をエピタキシャル成長させる。GaN層13の上面の上方の部分のp型GaN層15の厚さはGaN層13の側面の上方の部分のp型GaN層15の厚さより小さい。
図3Eにおいては、p型GaN層15の表面が平坦である場合が示されているが、必ずしも平坦でなくてもよい。
【0048】
GaN層13、発光層14およびp型GaN層15の成長はMOCVD炉内で連続的に行われる。
【0049】
次に、
図3Fに示すように、スパッタリング法などによりp型GaN層15の全面にITO膜21を形成し、その上に例えばCr膜などからなるエッチングマスク22をスパッタリング法などにより形成した後、このエッチングマスク22を用いてITO膜21をエッチングしてパターニングする。こうしてパターニングされたITO膜21がp側電極16となる。以下においてはITO膜21の代わりにp側電極16として示す。
【0050】
次に、
図3Gに示すように、エッチングマスク22を用いてサファイア基板20に達するまでRIE法によりサファイア基板10に垂直方向にエッチングする。
【0051】
次に、
図3Hに示すように、基板全面に例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などの被覆材23を塗布した後、その上にフィルムやSi基板などの支持基板24を接合する。
【0052】
次に、サファイア基板20の裏面側からレーザービームを照射することによりn型GaN層11とサファイア基板20との界面で剥離を生じさせる。こうして、
図3Iに示すように、n型GaN層11からサファイア基板20を分離する(レーザーリフトオフ)。
【0053】
次に、こうして露出したn型GaN層11の表面に、被覆材23に対応する部分以外の部分に開口を有するレジストパターン(図示せず)を形成し、続いて基板全面に例えば真空蒸着法によりTi膜、Al膜、Ti膜、Ni膜およびAu膜を順次形成した後、レジストパターンをその上に形成されたTi膜、Al膜、Ti膜、Ni膜およびAu膜からなる積層膜とともに除去する(リフトオフ)。これによって、
図3Jに示すように、n型GaN層11上にn側電極17が形成される。ここで、このn側電極17を構成するTi膜、Al膜、Ti膜、Ni膜およびAu膜の厚さは例えばそれぞれ5nm、100nm、20nm、300nmおよび50nmである。次に、n側電極17をn型GaN層11にオーミック接触させるためのアロイ処理を行う。
【0054】
次に、支持基板24上に被覆材23、p側電極16、p型GaN層15、発光層14、六角錐台状のGaN層13、SiO
2 膜12、n型GaN層11およびn側電極17が形成されたものを溶剤に漬けることにより被覆材23を溶かす。こうして、
図3Kに示すように、縦型マイクロLEDチップ10が複数、同時に得られる。
【0055】
この第1の実施の形態によれば、主として光が取り出される発光層14の上面の部分は縦型マイクロLEDチップ10の側面から十分に離れているため、縦型マイクロLEDチップ10の側面にドライエッチングによる欠陥が存在したとしても、発光層14の上面の部分にはドライエッチングによる欠陥が存在しない。そして、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流は縦型マイクロLEDチップ10の側面から十分に離れた領域を通るため、発光層14の上面の部分での電子-ホール再結合確率を高く維持することができ、それによって高い発光効率を得ることができる。また、この縦型マイクロLEDチップ10は従来公知の技術を用いて容易かつ低コストで製造することができる。
【0056】
〈第2の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
第2の実施の形態による縦型マイクロLEDチップを
図4に示す。
図4は
図2に対応する縦断面図である。平面図および斜視図は
図1Aおよび
図1Cと同様である。
【0057】
図4に示すように、この縦型マイクロLEDチップ10は、
図2に示す第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の各部の寸法a、b、c、d、e、fに関し、f<eかつa≦b<d=cが成立する。すなわち、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10においては、縦型マイクロLEDチップ10の側面近傍のSiO
2 膜12上に発光層13が設けられていない部分があるのに対し、この第2の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の側面は発光層14の末端と一致しており、SiO
2 膜12上に発光層14が設けられていない部分は存在しない。この縦型マイクロLEDチップ10のその他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0058】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10の動作は、基本的には第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様であるが、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流の経路は
図4の縦断面において斜線を施した領域のようになる。
【0059】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
第2の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法は第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0060】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0061】
〈第3の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
第3の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10を
図5に示す。
図5は
図2に対応する縦断面図である。平面図および斜視図は
図1Aおよび
図1Cと同様である。
【0062】
図5に示すように、この縦型マイクロLEDチップ10は、
図2に示す第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の各部の寸法a、b、c、d、e、fに関し、f<eかつb<a<cが成立する。すなわち、この縦型マイクロLEDチップ10においては、六角錐台状のGaN層13およびその上の活性層14はSiO
2 膜12の開口12aの内部にのみ設けられており、SiO
2 膜12上に延在していない。この縦型マイクロLEDチップ10のその他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0063】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10の動作は、基本的には第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様であるが、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流の経路は
図5の縦断面において斜線を施した領域のようになる。
【0064】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
第3の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法は、GaN層13および活性層14の成長をSiO2 膜12上に横方向成長する前に終了することを除いて、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0065】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0066】
〈第4の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
第4の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10を
図6に示す。
図6は
図2に対応する縦断面図である。平面図および斜視図は
図1Aおよび
図1Cと同様である。
【0067】
図6に示すように、この縦型マイクロLEDチップ10においては、第1、第2および第3の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と異なり、n型GaN層11と六角錐台状のGaN層13および発光層14との間にSiO
2 膜12が存在しない。そして、縦型マイクロLEDチップ10の側面には発光層14の側面部が露出している。この縦型マイクロLEDチップ10は、
図2に示す第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の各部の寸法a、b、c、d、e、fに関し、f<eかつb<a=cが成立する。この縦型マイクロLEDチップ10のその他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0068】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10の動作は、基本的には第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様であるが、p側電極16とn側電極17との間に流れる電流の経路は
図6の縦断面において斜線を施した領域のようになる。
【0069】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
第4の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法は、GaN層13および活性層14の成長をSiO2 膜12上に横方向成長する前に終了すること、および、エッチングマスク22を用いてサファイア基板20に達するまでRIE法によりサファイア基板10に垂直方向にエッチングする際に、このエッチングにより露出する側面に発光層14の側面部が含まれるようにエッチングマスク22を形成することを除いて、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0070】
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0071】
〈第5の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
第1~第4の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10は島状の発光層14が一つだけ設けられ、全体形状が六角柱状であるのに対し、第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10は複数の島状の発光層14が蜂の巣状に配列され、全体形状が四角柱状であることが異なる。
【0072】
すなわち、第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10を
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7Aは平面図、
図7Bは
図7Aに示す一点鎖線に沿っての断面図である。
図7Aおよび
図7Bに示すように、n型GaN層11上に、蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO
2 膜12が設けられ、各開口12aの部分に第1の実施の形態と同様に六角錐台状のGaN層13および発光層14が設けられている。p型GaN層15は全ての発光層14を覆うように全面に設けられている。p側電極16はp型GaN層15上に各発光層14に対応する位置に互いに分離して複数設けられている。各p側電極16は各発光層14の平坦な上面を含む大きさを有する。n側電極17はn型GaN層11の裏面全面に設けられている。この縦型マイクロLEDチップ10においては、大半の発光層14はその全体がこの縦型マイクロLEDチップ10の側面から離れた位置にあるが、外周部の一部の発光層14(
図7Bでは一番右側の発光層14)はこの側面に露出している。この縦型マイクロLEDチップ10のその他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0073】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10の動作は、複数の発光層14のそれぞれから発光が生じることを除いて、基本的には第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様である。
図8にこの縦型マイクロLEDチップ10のp側電極16とn側電極17との間に流れる電流の経路を矢印で示す。
【0074】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法は、蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO2 膜12を形成し、各開口12aの部分に六角錐台状のGaN層13および発光層14を形成し、p側電極16を各発光層14に対応して複数形成し、最終的に複数の発光層14を含むようにチップ化することを除いて、基本的には、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0075】
この第5の実施の形態によれば、複数の発光層14を有する縦型マイクロLEDチップ10において、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0076】
〈第6の実施の形態〉
[マイクロLEDチップ集積装置の製造方法]
【0077】
第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置は実装基板上に縦型マイクロLEDチップを多数実装することにより製造する。ここでは、縦型マイクロLEDチップとして第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10を用いる場合を考える。ただし、実装に当たり、縦型マイクロLEDチップ10のn側電極16上にSn膜を形成しておく。この縦型マイクロLEDチップ10を含有するインク、このインクの吐出に用いるインク吐出装置および実装基板について説明すると次の通りである。
【0078】
(1)インク
図9に示すように、容器100中において縦型マイクロLEDチップ10を液体50に分散させてインク200を作製する。インク200には、必要に応じて縦型マイクロLEDチップ10に加えてフィラーや界面活性剤などを含有させる。縦型マイクロLEDチップ10のサイズが上述のように微小であるとインク200中の分散性が十分に高く、インク吐出装置の吐出ノズルからの吐出も容易に行うことができる。
【0079】
(2)インク吐出装置
図10はインク吐出装置300を示す。
【0080】
図10に示すように、インク吐出装置300は、インクジェットプリントヘッド301を有する。インクジェットプリントヘッド301は内部にインク室302を有し、上部にインク供給部303を有する。インクジェットプリントヘッド301の内部にはさらに、インク室302の上部側面とインク供給部303の底面に設けられた管部303aとを連結する流路305と、インク室302の下部側面に連結された流路306とを有する。インク供給部303の管部303aの途中には制御バルブ307が設けられている。インク室302の下方には吐出ノズル308が設けられている。吐出ノズル308の直径は必要に応じて選ばれるが、例えば10~50μmである。インク室302の上には、一対の電極間に圧電体を挟んだ構造のピエゾアクチュエーター309が設けられている。流路306は、インク室302内のインク200を外部に排出したり、インク供給部303にインクを戻して循環させることにより吐出ノズル308の詰まりを防止したり、インク200の攪拌機能を持たせたりするためのものである。
【0081】
このインク吐出装置300においては、制御バルブ307を開いた状態でインク供給部303にインク200が供給される。こうしてインク供給部303に供給されたインク200は、管部303aおよび流路305を通ってインク室302に供給される。インク200は、流路305、インク室302および流路306が満タンになるまで供給され、その後、制御バルブ307が閉められる。
【0082】
このインク吐出装置300はさらに、このインク吐出装置300の吐出ノズル308から水平方向に少しずれた位置に磁場印加装置311を有する。インク200の吐出を行う後述の実装基板400は、インクジェットプリントヘッド301と磁場印加装置311との間の高さの位置を水平方向に移動するようになっている。
【0083】
(3)実装基板
図11Aおよび
図11BはこのマイクロLEDチップ集積装置の製造に用いられる実装基板400を示す。ここで、
図11Aは平面図、
図11Bは下部支線部電極とその近傍の下部幹線部電極とを横断する断面図である。
図11Aおよび
図11Bに示すように、基板410の一方の主面に下部電極420が設けられている。
図11Aおよび
図11Bには、電気的にオン/オフ制御が可能な1回路ユニットに相当する領域を一点鎖線で示す。この場合、下部電極420は、一方向に延在する幅広の下部幹線部電極4201と、この下部幹線部電極4201からこの下部幹線部電極4201と直交する方向に分岐した、この下部幹線部電極4201より幅狭の複数の下部幹線部電極4202と、この下部幹線部電極4202から分岐し、この下部幹線部電極4202と直交する方向、従って下部幹線部電極4201と平行な方向に延在する複数の下部支線部電極4203とからなる。下部支線部電極4203の数LはL≧4に選ばれる。
図11Aにおいては一例としてL=5の場合が示されている。基板410は剛性を有するものであってもフレキシブルなものであってもよく、また透明であっても不透明であってもよく、必要に応じて選ばれる。基板410の具体例および下部電極420の形成方法については特許文献5~7に詳細に記載されている。下部支線部電極4203の上面によりチップ結合部421が構成されている。下部支線部電極4203の幅、間隔などは必要に応じて選択される。
【0084】
(4)マイクロLEDチップ集積装置の製造方法
以上のことを前提としてこのマイクロLEDチップ集積装置の製造方法について説明する。
【0085】
図10に示すように、インク吐出装置300の吐出ノズル308の下方に実装基板400を水平に配置する。この場合、インク吐出装置300を固定し、実装基板400を図示省略した搬送機構により水平面内で
図10中矢印で示す方向に移動させるようにする。ピエゾアクチュエーター309を作動させることにより吐出ノズル308からインク200を実装基板400のチップ結合部421に吐出させる。こうして吐出される一滴のインク200は、一つの回路ユニット内の全ての下部支線部電極4203を含む領域を覆い、かつ十分な個数の縦型マイクロLEDチップ10が含まれるようにする。一滴のインク200に含まれる縦型マイクロLEDチップ10の数は、インク200中の縦型マイクロLEDチップ10の濃度やインク200の吐出回数などによって調整することができる。この状態のインク200の一例を
図12Aおよび
図12Bに示す。ここで、
図12Aは平面図、
図12Bは断面図である。この場合、一滴のインク200の体積は例えば1~10ピコリットルである。縦型マイクロLEDチップ10の体積は一般に0.001~0.5ピコリットルである。
【0086】
次に、
図10中矢印で示すように、実装基板400を図示省略した搬送機構により所定距離移動させ、インク200が吐出されたチップ結合部421を磁場印加装置311の上方に位置させた後、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、インク200に含まれる複数の縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17に含まれるNi膜を磁化させる。このため、各縦型マイクロLEDチップ10はインク200中を磁力により下方に引き寄せられ、最終的に各縦型マイクロLEDチップ10はn側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触する。振動や擾乱などの外的要因などにより縦型マイクロLEDチップ10が倒れたり位置がずれたりするのを防止するため、磁場印加装置310による磁場の印加は、好適には、インク200を吐出させる前あるいは吐出させた時点あるいはその時点からインク200の液体が蒸発する前に行う。
【0087】
次に、磁力により各縦型マイクロLEDチップ10をチップ結合部421に接触させたまま、ランプなどにより加熱を行うことによりインク200の溶媒を蒸発させ、続いてランプやレーザーなどにより加熱を行うことにより各縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17上のSn膜を溶融させる。その後、溶融Snが冷却することにより各縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17が下部支線部電極4203のチップ結合部421に電気的および機械的に結合する。
【0088】
同様にして、各回路ユニット内の下部支線部電極4203のチップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17を電気的および機械的に結合させる。この状態の一例を
図13Aおよび
図13Bに示す。ここで、
図13Aは平面図、
図13Bは断面図である。
図13Aに示すように、チップ結合部421において、縦型マイクロLEDチップ10はランダムに配置している。チップ結合部421の中には、一つの縦型マイクロLEDチップ10も結合していないものが含まれることもあり、
図13Aにはそのような例が示されている。なお、縦型マイクロLEDチップ10の平面形状は六角形状であるが、
図13Aにおいては円形で示されている(以下同様)。
【0089】
次に、
図14に示すように、縦型マイクロLEDチップ10がチップ結合部421に結合した実装基板400の全面に絶縁膜422を表面がほぼ平坦となるように形成した後、この絶縁膜422をはRIE法などによりエッチングすることによりp側電極16(図示せず)を露出させる。
【0090】
次に、
図15Aおよび
図15Bに示すように、絶縁膜422上に、各回路ユニット内の全ての下部支線部電極4203と直交する方向に延在するように、かつ全ての下部支線部電極4203に跨がるように複数の短冊状の細長い透明電極435を形成する。これらの透明電極435の間の隙間は縦型マイクロLEDチップ10のp側電極16の直径より小さくする。こうすることで、チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ10のp側電極16は、いずれかの透明電極435と接触することができる。透明電極435はITOなどの透明電極材料からなる。次に、絶縁膜422上に上部電極430を形成する。上部電極430は、下部幹線部電極4201と直交する方向に互いに平行に延在する複数の上部幹線部電極431とそれぞれの上部幹線部電極431からこの上部幹線部電極431と直交する方向に各回路ユニット当たり当たり1本延びた上部支線部電極432とからなる。各上部支線部電極432は各上部幹線部電極431に平行な方向に、従って下部支線部電極4203に直角な方向に延びるように複数に分岐しており、それらの先端は透明電極435と接続されている。分岐した複数の上部支線部電極432の数UはU≧4に選ばれる。
図15AにおいてはU=4の場合が示されている。透明電極435は上部支線部電極432の一部を構成している。
【0091】
この後、上述のようにして製造されたマイクロLEDチップ集積装置の検査を行う。具体的には、上部電極430と下部電極420との間の通電試験を行う。すなわち、上部電極430が下部電極420より高電位となるように電圧を印加することにより各縦型マイクロLEDチップ10に例えば1μA程度の電流を流して各縦型マイクロLEDチップ10の発光を画像解析し、リーク不良に起因して光量不良のある縦型マイクロLEDチップ10が接続されている透明電極435および上部支線部電極432を特定する。
図16Aにおいて、こうして特定された上部支線部電極432を符号432A、432Bで示す。
【0092】
次に、上述のようにして特定された上部支線部電極432A、432Bの一部(
図16A中、×で示した箇所)にレーザービームまたは電子線を照射することにより切断する。切断後の上部支線部電極432A、432Bの状態を
図17Aに示す。この場合、切断された上部支線部電極432A、432Bが接続された透明電極435と接続された縦型マイクロLEDチップ10は全て使用することができなくなるが、それ以外の上部支線部電極432が接続された透明電極435と接続された縦型マイクロLEDチップ10は全て使用することができる。一つの上部支線部電極432に複数の縦型マイクロLEDチップ10が接続され、不良チップが特定できる場合は、不良チップの近くで上部支線部電極432を切断することで上部支線部電極432の根元に近い側の良品チップは犠牲にならず使用することができる。
【0093】
この後、次のようにして再検査を行う。すなわち、上部電極430と下部電極420との間に例えば1μA程度の電流を流して各縦型マイクロLEDチップ10の発光を画像解析する。その結果、光量不良のある縦型マイクロLEDチップ10が見つからなかった場合に修理を終了する。こうしてマイクロLEDチップ集積装置の修理を行うことができる。
【0094】
(5)マイクロLEDチップ集積装置の構造
図15Aおよび
図15Bに示すように、このマイクロLEDチップ集積装置は、一方の主面に下部幹線部電極4201、4202と下部幹線部電極4202から分岐した複数の下部支線部電極4203とを有する下部電極420を有する基板410と、下部電極420の下部支線部電極4203の上面により構成されたチップ結合部421と、チップ結合部421に結合した、上下にp側電極16およびn側電極17を有し、n側電極17がp側電極16に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型マイクロLEDチップ10と、縦型マイクロLEDチップ10の上層の、上部幹線部電極431とこの上部幹線部電極431から分岐し、複数の下部支線部電極4203と直交する方向に延在し、透明電極435が下部支線部電極4203のチップ結合部421に跨がる複数の上部支線部電極432とを有する上部電極430とを有する。そして、縦型マイクロLEDチップ10は、n側電極17をチップ結合部421に向けてこのチップ結合部421に結合し、n側電極17と下部支線部電極4203とが互いに電気的に接続され、p側電極16と上部電極430の上部支線部電極432とが互いに電気的に接続されている。
【0095】
以上のように、この第6の実施の形態によれば、縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17に軟磁性体であるNi膜を含ませることにより、縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17側がp側電極16側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成し、一つの回路ユニット内の下部支線部電極4203のチップ結合部421にインク200を吐出し、縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17側を磁力により引き付けてチップ結合部421に接触させ、その後、n側電極17上のSn膜を溶融固化させることにより縦型マイクロLEDチップ10とチップ結合部421とを電気的および機械的に結合させることで、縦型マイクロLEDチップ10の集積度によらず、マイクロLEDチップ集積装置、例えばマイクロLEDディスプレイ、マイクロLEDバックライト、マイクロLED照明装置などを低コストで容易に実現することができる。また、縦型マイクロLEDチップ10はチップ結合部421上にランダム配置で結合させれば足りるため、縦型マイクロLEDチップ10の高精度の位置制御が不要であり、マイクロLEDチップ集積装置の製造が容易となる。また、一つの回路ユニット内には、複数の下部支線部電極4203および複数の上部支線部電極432が設けられているので、いずれかの上部支線部電極432が接続された縦型マイクロLEDチップ10に不良があった場合、その上部支線部電極432を切断するだけで、あるいは、この縦型マイクロLEDチップ10がチップ結合部421に結合した下部支線部電極4203だけを切断するだけで修理を容易に行うことができる。このため、修理に伴って無駄になる縦型マイクロLEDチップ10を最小限に留めることができ、無駄になる縦型マイクロLEDチップ40の数の大幅な低減を図ることができる。このマイクロLEDチップ集積装置は、
図15Aおよび
図15Bに示す3つの回路ユニットのそれぞれを青(B)、赤(R)、緑(G)の発光領域としてRGB-1画素を構成すると考えると、パッシブマトリクス駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを実現することができる。この場合、上部電極幹線部431がカラム電極配線を構成する。縦型マイクロLEDチップ10を青色発光とすると、赤の発光領域および緑の発光領域の上方にそれぞれ赤および緑の蛍光体を形成する。縦型マイクロLEDチップ10を紫外領域または青紫色発光とすると、青の発光領域、赤の発光領域および緑の発光領域の上方にそれぞれ青、赤および緑の蛍光体を形成する。具体的には、例えば、
図15Aおよび
図15Bに示す実装基板400の表面にそれぞれの蛍光体を形成した後、その上にフレキシブルフィルムなどからなる透明基板を設け、さらにその上に光拡散用の拡散シートを設ける。
【0096】
〈第7の実施の形態〉
[マイクロLEDチップ集積装置の製造方法]
第7の実施の形態においては、実装基板400として
図11Aおよび
図11Bに示すものの代わりに
図18Aおよび
図18Bに示すものを用いることが第6の実施の形態と異なる。すなわち、
図18Aおよび
図18Bに示すように、この実装基板400においては、下部支線部電極4203のチップ結合部421の下方の部分における基板410上に円形の強磁性体500が下部支線部電極4203の中心線に沿って一列にかつ等間隔に複数(この場合は4個)設けられており、これらの強磁性体500を覆うように下部支線部電極4203が設けられている。強磁性体500の直径は、縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17の直径と同等またはそれ以下に選ばれる。強磁性体500にはNiなどの軟磁性体を用いてもよい。軟磁性体は磁場を取り去ると磁化が急速に消失する性質を有するが、短時間であれば磁性が保持される。Niは半導体プロセスで一般的に使用され、高磁性体を使うよりも低コスト化に有利である。下部支線部電極4203のチップ結合部421のうちの強磁性体500に対応する部分が縦型マイクロLEDチップ10の結合位置となる。この結合位置のチップ結合部421には円形のSn膜47が設けられている。この場合、縦型マイクロLEDチップ10のSn膜は形成する必要がない。この実装基板400のその他のことは第6の実施の形態と同様である。
【0097】
図19は
図18Bに示す実装基板400の一部を模式的に示したものである。
図19に示すように、磁場印加装置(図示せず)により矢印で示すように磁場を印加することにより、強磁性体500を磁化させる。この後、磁場の印加を停止する。この場合、磁場の印加を停止した後も、暫くは、
図20に示すように、強磁性体500から残留磁束501が生じている。
【0098】
そこで、こうして残留磁束501が存在している状態で、インク200を実装基板400の一つの回路ユニット内のチップ結合部421に吐出させる。吐出直後の状態を
図21に示す。
図22に示すように、こうして吐出されたインク200はチップ結合部421の全体に広がると同時に、このインク200においては、強磁性体500から生じている残留磁束501により、その中に含まれている複数の縦型マイクロLEDチップ10のn側電極17に含まれるNi膜が磁化される。このため、各縦型マイクロLEDチップ10はインク200中を磁力により下方に引き寄せられ、最終的に各縦型マイクロLEDチップ10はn側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421のSn膜47に接触する。この状態を
図23に示す。
【0099】
この後、第6の実施の形態と同様にしてインク200の溶媒の蒸発およびSn膜47の溶融固化により各縦型マイクロLEDチップ10をn側電極17側を下にして機械的および電気的に結合する。符号48は溶融固化したSnを示す。
【0100】
こうして、
図24に示すように、各回路ユニット内のチップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ10を結合する。なお、
図24においては、図示の都合上、p側電極16が縦型マイクロLEDチップ10より小さく図示されている(
図25~
図27においても同様)。
【0101】
この後、第6の実施の形態と同様に絶縁膜422の形成以降の工程を進めて、
図25に示すように、目的とするマイクロLEDチップ集積装置を製造する。
【0102】
[マイクロLEDチップ集積装置の構造]
図25に示すように、このマイクロLEDチップ集積装置は、実装基板400の下部支線部電極4203のチップ結合部421の下方の部分の基板410上に強磁性体500が下部支線部電極4203の中心線に沿って複数設けられ、これらの強磁性体500を覆うように下部支線部電極4203が設けられ、チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ10がn側電極17側を下にして結合していることを除いて、第6の実施の形態によるマイクロLEDチップ集積装置と同様な構成を有する。
【0103】
第7の実施の形態によれば、下部支線部電極4203のチップ結合部201の下方の基板410上に強磁性体500を予め設けておくことにより、その上方の部分における下部支線部電極4203のチップ結合部421上に縦型マイクロLEDチップ10を結合させることができるため、各縦型マイクロLEDチップ10の結合位置を下部支線部電極4203と上部電極支線部432との交差部に限定することができる。このため、接続不良となる縦型マイクロLEDチップ10の大幅な低減を図ることができ、ひいてはマイクロLEDチップ集積装置の製造コストの低減を図ることができる。そのほか、第6および第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0104】
このマイクロLEDチップ集積装置によっても、パッシブマトリクス駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを実現することができる。
【0105】
〈第8の実施の形態〉
第8の実施の形態においては、アクティブマトリクス駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイとして用いることができるマイクロLEDチップ集積装置について説明する。
【0106】
[マイクロLEDチップ集積装置の製造方法]
図26は第8の実施の形態における上部電極形成前の実装基板400を示す。
図26に示すように、実装基板400上に下部幹線部電極4202が行方向に互いに平行に複数設けられている。下部幹線部電極4202にはこの下部幹線部電極4202と直交する方向、すなわち列方向に延在して複数の下部支線部電極4203が接続されている。下部支線部電極4203の下方には第2の実施の形態と同様に強磁性体500が設けられている。そして、強磁性体500の上方の下部支線部電極4203のチップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ10が結合している。
図26に示す三つの回路ユニットは左からそれぞれB、R、Gの発光領域を構成しており、これらの発光領域により構成されるRGB-1画素単位が配列しており、実装基板400全体として画素が二次元マトリクス状に配列している。実装基板400上には、列方向に延在した電源線610およびデータ線620に加え、行方向に延在した走査線630も設けられている。各データ線620と各画素の各発光領域との間にはアクティブ駆動回路が設けられ、このアクティブ駆動回路により各画素の各発光領域を選択することができるようになっている。アクティブ駆動回路はトランジスタT
1 、T
2 およびコンデンサCからなる。トランジスタT
1 、T
2 は一般的には多結晶Si薄膜などの半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタにより構成され、コンデンサCは下部電極、絶縁膜および上部電極を積層することにより構成される。トランジスタT
1 のソースはデータ線620に接続され、ドレインはトランジスタT
2 のゲートに接続され、ゲートは走査線630に接続されている。トランジスタT
2 のソースは電源線610に接続され、ドレインは下部電極420に接続されている。コンデンサCはトランジスタT
1 のドレインと電源線610との間に接続されている。走査線630とデータ線620との選択により各画素の各発光領域を選択する。後述のアクティブ駆動回路を介してこの下部幹線部電極4201と接続されて幅狭の下部幹線部電極4202がこの下部幹線部電極4201に平行に設けられている。
【0107】
図27は、
図26に示す実装基板400上に上部電極430を形成した状態を示す。第6の実施の形態と同様に、各回路ユニット内の全ての下部支線部電極4203のチップ結合部421に跨がるように複数の透明電極435が設けられている。これらの透明電極435に上部電極430の上部支線部電極432がそれぞれ接続されている。
【0108】
縦型マイクロLEDチップ10を青色発光とし、赤の発光領域および緑の発光領域の上方にそれぞれ赤および緑の蛍光体を形成することなどは第6の実施例と同様である。
【0109】
この第8の実施の形態によれば、実装基板400上にRGBの各発光用の縦型マイクロLEDチップ10を容易にしかも極めて短時間に能率的に実装することができ、不良の縦型マイクロLEDチップ10の影響も容易に除去することができることにより、高性能のアクティブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを低コストで実現することができる。加えて、第7の実施の形態と同様な利点を得ることもできる。
【0110】
〈第9の実施の形態〉
[横型マイクロLEDチップ]
第1~第5の実施の形態においては縦型マイクロLEDチップ10について説明したが、第9の実施の形態においては横型マイクロLEDチップ40について説明する。
【0111】
図28、
図29および
図30は横型マイクロLEDチップ40を示す。
図28は平面図、
図29は断面図、
図30は斜視図である。
図28、
図29および
図30に示すように、この横型マイクロLEDチップ40は全体として直方体状(あるいは四角柱状)の形状を有する。この横型マイクロLEDチップ40においては、第5の実施の形態と同様に、n型GaN層11上に、蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO
2 膜12が設けられ、各開口12aの部分に六角錐台状のGaN層13および発光層14が設けられている。p型GaN層15は全ての発光層14を覆うように設けられている。p型GaN層15上に、n型GaN層11の短辺方向に延在する細長いp側電極16がn型GaN層11の長辺方向に互いに分離して複数設けられている。各p側電極16は、n型GaN層11の短辺方向に配列した複数の発光層14に対応して設けられている。n型GaN層11の一つの短辺側の端部にはp型GaN層15が設けられておらずn型GaN層11が露出している。この露出した部分のn型GaN層11上にn側電極17が設けられている。n側電極17には、軟磁性体が含まれている必要はない。この縦型マイクロLEDチップ40のその他のことは第5の実施の形態と同様である。
【0112】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ40の動作は、第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様である。
【0113】
[横型マイクロLEDチップの製造方法]
この横型マイクロLEDチップ40の製造方法は、n型GaN層11上に蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO2 膜12を形成し、各開口12aの部分に六角錐台状のGaN層13および発光層14を形成し、全面にp型GaN層15を形成した後、このp型GaN層15の一端部をエッチング除去してその部分にn型GaN層11を露出させ、こうして露出した部分にn側電極17を形成するとともに、p型GaN層15上に複数のp側電極16を形成し、最終的に複数の発光層14を含むようにチップ化することを除いて、基本的に、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0114】
この第9の実施の形態によれば、複数の発光層14を有する横型マイクロLEDチップ40において、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。加えて、横型マイクロLEDチップ40のp型GaN層15上に複数のp側電極16が形成されていることから、たとえいずれかのp側電極16に欠陥が存在しても、他のp側電極16を使うことができるため、横型マイクロLEDチップ40の歩留まりの向上を図ることができる。
【0115】
〈第10の実施の形態〉
[マイクロLEDチップ集積装置の製造方法]
【0116】
この第10の実施の形態においては、
図31Aおよび
図31Bに示すような実装基板400を用いる。ここで、
図31Aは平面図、
図31Bは下部幹線部電極に沿っての断面図である。
図31Aおよび
図31Bに示すように、第6の実施の形態と同様に、基板410の一方の主面に、下部幹線部電極4201、4202および複数の下部支線部電極4203からなる下部電極420が設けられている。この下部電極420を覆うように絶縁膜(図示せず)が設けられ、この絶縁膜上に、下部幹線部電極4202から分岐した複数の下部支線部電極4203から外れた位置を通るように下部幹線部電極4202と平行に上部電極430を形成する。絶縁膜は、下部幹線部電極4201と上部電極430との交差部の付近だけに形成されており、下部幹線部電極4201と上部電極430とはこの絶縁膜により互いに絶縁されている。上部電極430には、1本の下部幹線部電極4202から分岐した複数の下部支線部電極4203に近接した位置に延在するように長方形状の上部支線部電極430aが上部電極430に直交する方向に突出して設けられている。この場合、複数の下部支線部電極4203のそれぞれの上面の少なくとも一部および上部電極430の上部支線部電極430aの上面の一部を含む長方形の領域によりチップ結合部421が形成されている。
【0117】
図32Aに示すように、第1の実施の形態と同様に工程を進めてサファイア基板20上に分離前の多数の横型マイクロLEDチップ40が形成されたものを複数のp側電極16およびn側電極17を実装基板400上のチップ結合部421に向けて結合させる。この際、n側電極17は上部支線部電極430a上に、複数のp側電極16は下部支線部電極4203上に位置するようにする。
【0118】
次に、
図32Bに示すように、サファイア基板20の裏面からレーザービーム照射を行うことにより横型マイクロLEDチップ40のn型GaN層11をサファイア基板20から分離する(レーザーリフトオフ)。こうしてマストランスファーにより、実装基板400上に多数の横型マイクロLEDチップ40を実装することができる。
【0119】
【0120】
この第10の実施の形態によれば、マストランスファーにより横型マイクロLEDチップ40の実装が可能であることにより、マイクロLEDチップ集積装置を容易に製造することができる。また、横型マイクロLEDチップ40のp型GaN層15上に複数のp側電極16が形成され、これらのp側電極16がそれぞれ異なる下部支線部電極4203上に接続されているため、たとえいずれかのp側電極16に欠陥が存在しても、他のp側電極16が下部支線部電極4203と電気的に接続されていることから、マイクロLEDチップ集積装置の歩留まりの向上を図ることができる。
【0121】
〈第11の実施の形態〉
[縦型マイクロLEDチップ]
図34は縦型マイクロLEDチップ10を示す断面図である。
図34に示すように、この縦型マイクロLEDチップ10は第9の実施の形態による横型マイクロLEDチップ40と同様に全体として直方体状(あるいは四角柱状)の形状を有する。この縦型マイクロLEDチップ10においては、第5の実施の形態と同様に、n型GaN層11上に、蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO
2 膜12が設けられ、各開口12aの部分に六角錐台状のGaN層13および発光層14が設けられている。p型GaN層15は全ての発光層14を覆うように全面に設けられている。p型GaN層15上に、n型GaN層11の短辺方向に延在する細長いp側電極16がn型GaN層11の長辺方向に互いに分離して複数設けられている。各p側電極16は、n型GaN層11の短辺方向に配列した複数の発光層14に対応して設けられている。n型GaN層11の裏面にはn側電極17が設けられている。この縦型マイクロLEDチップ10のその他のことは第5の実施の形態と同様である。
【0122】
[縦型マイクロLEDチップの動作]
この縦型マイクロLEDチップ10の動作は、第5の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10と同様である。
【0123】
[縦型マイクロLEDチップの製造方法]
この縦型マイクロLEDチップ10の製造方法は、n型GaN層11上に蜂の巣状に配列された開口12aを有するSiO2 膜12を形成し、各開口12aの部分に六角錐台状のGaN層13および発光層14を形成し、全面にp型GaN層15を形成した後、p型GaN層15上に複数のp側電極16を形成し、n型GaN層11の裏面にn側電極17を形成し、最終的に複数の発光層14を含むようにチップ化することを除いて、基本的に、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ10の製造方法と同様である。
【0124】
この第11の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点を得ることができるほか、次のような利点を有する。すなわち、縦型マイクロLEDチップ10のp型GaN層15上に複数のp側電極16が形成されていることから、たとえいずれかのp側電極16に欠陥が存在しても、他のp側電極16を使うことができるため、縦型マイクロLEDチップ10の歩留まりの向上を図ることができる。
【0125】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0126】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0127】
10 縦型マイクロLEDチップ
11 n型GaN層
12 SiO2 膜
12a 開口
13 GaN層
14 発光層
15 p型GaN層
16 p側電極
17 n側電極
40 横型マイクロLEDチップ
400 実装基板
410 基板
420 下部電極
4201、4202 下部幹線部電極
4203 下部支線部電極
421 チップ結合部
430 上部電極
431 上部幹線部電極
432 上部支線部電極
435 透明電極
500 強磁性体
【要約】
AlGaInN系またはAlGaInP系の発光ダイオードチップ(10)は縦型または横型であり、n型半導体層(11)、その上の多角錐台状の半導体層(13)、その上面および側面に沿って設けられた発光層(14)、その上のp型半導体層(15)、p型半導体層に接触したp側電極(16)およびn型半導体層に接触したn側電極(17)を有する。半導体層の上面の上方のp型半導体層の厚さは半導体層の側面の上方のp型半導体層の厚さより小さい。主として半導体層の上面の発光層から光が発せられる。この発光ダイオードチップを基板上に多数実装することによりマイクロLEDディスプレイなどの発光ダイオードチップ集積装置を製造する。