(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20240119BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240119BHJP
H04W 40/06 20090101ALI20240119BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W16/28
H04W40/06
H04B7/06 950
(21)【出願番号】P 2022119890
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2017203004の分割
【原出願日】2017-10-19
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】宇井 裕
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055536(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145493(WO,A1)
【文献】特開2016-046657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信経路と第2の通信経路を介して無線通信を行うことが可能な通信装置であって、
アンテナの指向性を、前記第1の通信経路を介した無線通信が可能であるが、前記第2の通信経路を介した無線通信が可能でない第1の指向性に設定する設定手段と、
前記第1の通信経路を介して外部に信号を送信する送信手段と、
を有し、
前記設定手段は、前記信号を前記第1の通信経路を介して外部に送信した後に、前記アンテナの指向性を前記第1の通信経路と前記第2の通信経路による無線通信が可能な第2の指向性に設定し、
前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定している状態における外部からのデータ受信状況に基づき、前記設定手段は、新たな通信経路の探索を行うことなしに前記アンテナの指向性として、前記第1の指向性及び前記第2の通信経路を介した無線通信が可能であるが前記第1の通信経路を介した無線通信が可能でない第3の指向性のいずれか一方を設定することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記信号は応答信号であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記設定手段によって前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定した状態で前記信号の宛先装置からの信号を所定の期間内に受信しなかった場合に、前記アンテナの指向性を前記第1の指向性に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記設定手段によって前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定した状態で前記第2の通信経路に切り替えるための信号を外部から受信した場合に、前記アンテナの指向性を前記第
3の指向性に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1の指向性は、前記アンテナのビームが前記第1の通信経路に対応する方向に形成される指向性であり、前記第3の指向性は、前記アンテナのビームが前記第2の通信経路に対応する方向に形成される指向性であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第2の指向性は、オムニ指向性であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の通信経路はメインパスとしての通信経路であり、前記第2の通信経路は前記メインパスとしての第1通信経路の通信に問題が発生した場合に使用する予備パスとしての通信経路であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
外部装置と通信するための通信経路を探索する探索処理を実行し、探索処理で見つかった複数の通信経路のうち前記メインパスとしての前記第1の通信経路と、前記予備パスとしての第2の通信経路を決定する決定手段をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記信号を前記第1の通信経路を介して外部に送信した後に、前記設定手段により、前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定する処理を行ってから、前記第1の指向性又は第3の指向性のいずれか一方を設定する処理を行うまでの間には前記探索処理は実行されないことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記信号を前記第1の通信経路を介して外部に送信した後に、前記設定手段により、前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定する処理を行った後であり尚且つ前記第1の指向性又は第3の指向性のいずれか一方を設定する処理が行われる前に外部から経路探索の開始を引き起こす信号を受信した場合には前記決定手段による前記探索処理が実行されることを特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記無線通信は、ミリ波の周波数帯を用いる無線通信であることを特徴とする請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第1の通信経路又は前記第2の通信経路を介して通信されたデータに基づき投影処理を行う投影手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至1
1のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項13】
アンテナを有し、第1の通信経路と第2の通信経路を介して無線通信を行うことが可能な通信装置の制御方法であって、
前記アンテナの指向性を、前記第1の通信経路を介した無線通信が可能であるが、前記第2の通信経路を介した無線通信が可能でない第1の指向性に設定する第1の設定工程と、
前記第1の通信経路を介して外部に信号を送信する送信工程と、
前記信号を前記第1の通信経路を介して外部に送信した後に、前記アンテナの指向性を前記第1の通信経路と前記第2の通信経路による無線通信が可能な第2の指向性に設定する第2の設定工程と、
前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定している状態における外部からのデータ受信状況に基づき、前記アンテナの指向性を、前記第1の指向性及び前記第2の通信経路を介した無線通信が可能であるが前記第1の通信経路を介した無線通信が可能でない第3の指向性のいずれか一方に設定する第3の設定工程と、
を有することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項14】
請求項1乃至1
2のいずれか1項に記載の通信装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の映像画質の高品位化に伴い、高速の伝送レートで大容量データを無線伝送する技術に対する要求が高まっている。高速な無線伝送レートを実現する技術として、ミリ波とよばれる60GHz帯を用いた無線通信技術が知られており、ミリ波無線通信規格であるIEEE802.11adにおいては、最大で約6.8Gbpsの高速な伝送レートを実現することができる。ミリ波無線通信においては、通信用アンテナとしてビームステアリング可能なビーム指向性アンテナを用いることで、特定の方向にエネルギーを集中させて通信範囲を拡大する技術がある。高速な無線伝送速度が実現できるミリ波無線通信であるが、ミリ波の持つ直進性により、人体などの障害物に通信経路が遮断され、通信エラーが生じる課題がある。
【0003】
以上の観点からミリ波無線通信では、通信経路遮断による通信の途絶を防ぐために、予備の通信経路を備えるシステム構成が有用となる。予備の通信経路を備えるシステムにおいては、システムのスループット、遅延時間への影響を抑えるために、通信経路遮断時に主経路から予備経路への高速な切替処理が必要となる。特にビーム指向性アンテナを用いてデータ通信を実行する際、アンテナ指向性のビーム指向性/オムニ指向性の切替タイミングや切替条件を適切に決める必要がある。
【0004】
特許文献1には、装置間に複数の通信経路を設け、所定の時刻毎に各経路を通じてデータを伝送した後、それぞれの経路でACKフレームを受信し、ACKフレームの受信結果に基づいて、データ送信を実行する通信経路を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、最適な通信経路とは異なる通信経路を用いた通信を定期的に行う必要があり、必要以上の無駄な通信が発生してしまうことになる。
【0007】
一方、定期的な通信経路のチェックを省略し、主経路が遮断された時にのみ予備経路へ切り替えると、遮断に気付いた一方の通信装置のみがビーム方向を予備経路側へ切換え、他方の通信装置はビーム方向を予備経路側へ切換えていない可能性がある。その場合には予備経路での通信を行うことができない。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑み、複数の通信経路を備える無線通信システムにおいて、一つの通信経路が遮断した際に、より確実、且つ高速に他の通信経路へ切り替えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的のために本発明の1つの側面としての通信装置は、第1の通信経路と第2の通信経路を介して無線通信を行うことが可能な通信装置であって、アンテナの指向性を、前記第1の通信経路を介した無線通信が可能であるが、前記第2の通信経路を介した無線通信が可能でない第1の指向性に設定する設定手段と、前記第1の通信経路を介して外部に信号を送信する送信手段と、を有し、前記設定手段は、前記信号を前記第1の通信経路を介して外部に送信した後に、前記アンテナの指向性を前記第1の通信経路と前記第2の通信経路による無線通信が可能な第2の指向性に設定し、前記アンテナの指向性を前記第2の指向性に設定している状態における外部からのデータ受信状況に基づき、前記設定手段は、新たな通信経路の探索を行うことなしに前記アンテナの指向性として、前記第1の指向性及び前記第2の通信経路を介した無線通信が可能であるが前記第1の通信経路を介した無線通信が可能でない第3の指向性のいずれか一方を設定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の1つの側面としての通信装置は、第1の通信経路と第2の通信経路を介して無線通信を行うことが可能な通信装置であって、アンテナの指向性を前記第1の通信経路を介した無線通信が可能な第1の指向性、又は第1の指向性とは異なる第2の指向性であり前記第2の通信経路を介した無線通信が可能な前記第2の指向性に設定する設定手段と、前記設定手段により前記第1の指向性又は前記第2の指向性が設定された前記アンテナを用いて外部に信号を送信する送信手段と、を有し、前記第1の指向性又は前記第2の指向性が設定された前記アンテナを用いて外部に信号を送信したことに少なくとも従って、前記信号を送信してから前記第1の指向性又は前記第2の指向性が設定された前記アンテナを用いる通信に問題が発生したかどうかの判定に用いられる所定の時間が経過するより前に、前記設定手段は、前記アンテナの指向性を、第3の指向性であって、前記第1の通信経路による無線通信に加えて前記第2の通信経路による無線通信が可能な前記第3の指向性に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の通信経路を備える無線通信システムにおいて、一つの通信経路が遮断した際に、より確実、且つ高速に他の通信経路へ切り替えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に関わる無線システム構成図
【
図2】本発明の実施形態1に関わる無線データ送信機の構成図
【
図3】本発明の実施形態1に関わる無線データ受信機の構成図
【
図4】本発明の実施形態1に関わる経路探索手順を示す図
【
図5】本発明の実施形態1に関わる経路遮断発生状況と経路切替手順を示す図
【
図6】本発明の実施形態1に関わる無線データ送信機の動作説明図
【
図7】本発明の実施形態1に関わる無線データ受信機の動作説明図
【
図8】本発明の実施形態2に関わる無線データ送信機の構成図
【
図9】本発明の実施形態2に関わる無線データ受信機の構成図
【
図10】本発明の実施形態2に関わる通信モード選択手順を示す図
【
図11】本発明の実施形態2に関わる無線データ送信機の動作説明図
【
図12】本発明の実施形態2に関わる無線データ受信機の動作説明図
【
図13】無線データ送信機及び受信機のハードウェア構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施の形態に関わる無線通信システムの構成例を示す図である。
【0014】
本無線通信システムは、ビーム形成可能な指向性アンテナを備える無線データ送信機101と、ビーム形成可能な指向性アンテナを備える無線データ受信機102を含む。無線データ送信機101と無線データ受信機102は指向性アンテナを用いた無線通信方式により通信する通信装置であり、無線データ送信機101が無線データ受信機102に対して高精細映像データなどの高速データレートの信号を送信する。無線通信方式として例えばIEEE802.11ad規格に準拠した通信方式が挙げられるが、指向性アンテナを用いる無線通信方式であればIEEE802.11ad規格に限らない。
【0015】
無線データ送信機101は高指向性(指向性)アンテナとしてビーム105とビーム108を含む互いに最大放射方向の異なる複数のビーム形成が可能である。さらに、オム二指向性(無指向性)アンテナとしてオムニ指向性110の形成と、オムニ指向性よりも半値幅が狭く、ビーム指向性よりも半値幅が広いセクター指向性がそれぞれ可能である。無線データ受信機102も同様に、高指向性アンテナとしてビーム106とビーム109を含む互いに最大放射方向の異なる複数のビーム形成と、オムニ指向性アンテナとしてオムニ指向性111の形成と、セクター指向性がそれぞれ形成可能である。
【0016】
無線データ送信機101と無線データ受信機102は主経路104または予備経路107を介して高速データ伝送を行うことが出来る。なお、主経路および予備経路の決定方法として、無線信号のSNRが高い経路を主経路とし、低い経路を予備経路とする。主経路104を使用するためには無線データ送信機101はビーム105を形成し、無線データ受信機102はビーム106を形成し、受信信号電力を高めるために互いにビームを向い合わせる必要がある。同様に、反射物103を経由する予備経路107を使用するためには無線データ送信機101はビーム108を形成し、無線データ受信機102はビーム109を形成する必要がある。さらに、無線データ送信機101と無線データ受信機102はともにオムニ指向性アンテナを使用することで主経路104、予備経路107または天井・床面・反射物による通信経路のいずれかを介して低速データ伝送を行うことが出来る。オムニ指向性アンテナを使用していることでビーム指向性アンテナを使用した場合に比べて受信信号電力が低下するため、高精細映像データ伝送などを行うことはできないが、制御信号などの低ビットレートの信号を低速信号伝送として実行することが出来る。以上のように、本実施形態における無線データ送信機101と無線データ受信機102は、共に、アンテナの指向性を通信経路104を介した無線通信が可能な指向性(105や106)に設定可能である。同じく、無線データ送信機101と無線データ受信機102は、共に、アンテナの指向性を通信経路107を介した無線通信が可能な指向性(107や109)に設定可能である。また、無線データ送信機101と無線データ受信機102は、共に、アンテナの指向性を通信経路104と107の何れの通信経路を介した無線通信も可能な指向性(110や111)に設定可能である。尚、通信経路104と107の何れの通信経路を介した無線通信も可能な指向性とは、少なくともうつ新経路104と107の両方の経路で無線通信が可能な指向性であればよく、オムニ指向性(無指向性)に限るものではない。
【0017】
本実施形態では無線データ送信機101と無線データ受信機102は主経路104に障害物112が侵入し通信経路が遮断された場合、予備経路107に切り替えてデータ通信を実行する。さらに主経路104と予備経路107が同時に遮断された場合は、オムニ指向性アンテナを使用して低速信号伝送を介して新規経路探索を実行する。さらにこれら動作を実現するためにデータ受信後のACKフレーム送信後に、一定期間、オムニ指向性アンテナを使用して経路遮断を通知するフレームの受信動作を実行する。そして、受信したフレームの有無および内容に基づき、主経路の継続利用、または予備経路への切替、または新規経路探索の実行のいずれかを選択する。これにより障害発生の有無および内容に応じて所定の期間内に通信経路を切り替えることが出来るため、通信遮断による経路切替を高速に実現することが出来る。
【0018】
以下、無線データ送信機101について説明する。
図2は、無線データ送信機101の機能構成を示す図である。
【0019】
無線データ送信機101の無線I/F部201は、オムニ指向性および任意の方向にビーム指向性を設定可能なアレイアンテナを備える。また、無線I/F部201は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器を備える。また、無線I/F部201は、切替要求信号生成部204と切替応答信号生成部205と経路探索起動信号206がそれぞれ生成したデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ信号変換器を備える。更には、無線データ受信機102と無線通信を実行するのに必要な無線信号の生成および取得を行う無線信号処理回路を備える。
【0020】
以下、無線通信を実行するのに必要な無線信号を、無線通信を開始する手順と無線通信の実行手順とともに説明する。以下、無線データ送信機101を制御局、無線データ受信機102を子機として説明するが、逆の役割をそれぞれ割り当ててもよい。
【0021】
無線データ送信機101は周期的にビーコンフレームを送信し、無線データ受信機102をネットワークに参加させる。無線データ受信機102がネットワークに参加した後、無線データ送信機101と無線データ受信機102は経路探索を実行する。
図4は無線データ送信機101と無線データ受信機102との間で実行される経路探索手順を示すフローチャートである。
【0022】
S401において無線データ送信機101は、自局が制御局であるかを判断し、その結果、自局が制御局であるためS402に進む。S401において無線データ受信機102は、自局が制御局であるかを判断し、その結果、自局が制御局でないためS403に進む。S402において、無線データ送信機101は、セクター指向性を切り替えながらテスト信号を送信する。テスト信号には無線データ送信機101のMACアドレスと無線データ受信機102のMACアドレスと、テスト信号の残り送信回数と、セクター指向性アンテナの識別情報が含まれる。S403において、無線データ受信機102は、受信アンテナの指向性をオムニ指向性に設定してテスト信号を受信する。
【0023】
S404において、無線データ受信機102は、受信したテスト信号の中で受信品質が閾値以上であった受信時のセクター指向性の識別情報と受信信号電力とを記載したフィードバック信号を生成し、無線データ送信機101へ送信する。ここで、受信品質の判定に用いられる閾値は、オムニ指向性のアンテナ利得と、セクター指向性のアンテナ利得と、ビーム指向性のアンテナ利得と、データ通信に使用する変調方式に必要なSNRに基づいて決定する。例えばデータ通信時に必要なSNRを40dB,オムニ指向性のアンテナ利得を5dBi、セクター指向性のアンテナ利得を8dBi、ビーム指向性のアンテナ利得を20dBiとした場合、閾値は13dBとなる。つまり、セクター指向性アンテナでテスト信号を送信し、オムニ指向性アンテナで受信した場合のSNRが13dBであれば、ビーム指向性で送受信した場合のSNRが40dBとなる。このように、送信はセクター指向性、受信はオムニ指向性でのテスト信号の受信結果から、ビーム指向性で送受信した結果を推定する。これにより、ビーム指向性での通信品質が要求仕様を満たさないアンテナ設定でテスト信号を送受信することが無くなるため、テスト信号の送信回数を抑制することが出来る。
【0024】
S405において、無線データ送信機101はフィードバック信号を受信する。S407において、無線データ送信機101は、テスト信号の受信品質が閾値以上のセクター指向性に属するビームを使用してテスト信号を送信する。テスト信号には無線データ送信機101のMACアドレスと無線データ受信機102のMACアドレスと、テスト信号の残り送信回数と、セクター指向性アンテナの識別情報とビーム指向性の識別情報を記載する。S406において、無線データ受信機102は受信アンテナをオムニ指向性に設定してテスト信号を受信する。S408において、無線データ受信機102は、受信したテスト信号の中で受信品質が閾値以上であった受信時のセクター指向性の識別情報とビーム指向性の識別情報と受信信号電力を記載したフィードバック信号を生成し、無線データ送信機101へ送信する。ここで、受信品質の判定に用いられる閾値は、オムニ指向性のアンテナ利得と、ビーム指向性のアンテナ利得と、データ通信に使用する変調方式に必要なSNRに基づいて決定する。
【0025】
S409において、無線データ送信機101はフィードバック信号を受信する。S410において、無線データ送信機101は、フィードバック信号を受信し主経路および予備経路に使用するビーム指向性を決定する。フィードバック信号の中で受信結果が最も良好であったものと次に良好であったものを主経路、予備経路としてそれぞれ選択するが、ここで2つのビームは互いに異なるセクター指向性に属するものから選択する。異なるセクター指向性に属するビームを選択することで、主経路と予備経路を空間的に離散させることができる。尚、本実施形態においては、予備経路を一つだけ選択するものとするが、二つ以上の予備経路を選択するようにしても構わない。
【0026】
S411において、無線データ送信機101は、主経路を介してテスト信号を送信する。送信回数は無線データ受信機102が主経路に対応する最善のビーム指向性を決定するのに十分な回数であって、無線データ受信機102のセクター指向性個数+セクター指向性内のビーム数が最低限必要な回数である。S412において、無線データ受信機102は、セクター指向性およびビーム指向性を切り替えながらテスト信号を受信し、主経路に使用するビーム指向性を決定する。S413において、無線データ送信機101は、予備経路でテスト信号を送信する。送信回数は無線データ受信機102が予備経路に対応する最善のビーム指向性を決定するのに十分な回数であって、無線データ受信機102のセクター指向性個数+セクター指向性内のビーム数が最低限必要な回数である。S413におけるテスト信号の送信が完了したら、無線データ送信機101は経路探索手順を終了する。S414において、無線データ受信機は、セクター指向性およびビーム指向性を切り替えながらテスト信号を受信し、予備経路に使用するビーム指向性を決定する。S414における予備経路に使用するビームを決定したら、無線データ受信機102は経路探索手順を終了する。
【0027】
次に無線通信の実行手順について説明する。無線データ送信機101は、無線データ送信機101が送信権を持ち無線データ受信機102が受信局となる期間を指定した情報をビーコン信号に記載して同報送信する。無線データ受信機102は、指定された期間になったら、アンテナ指向性を主経路に向けたビーム指向性に設定し、データ信号の受信動作を行う。無線データ送信機101は指定した期間になったらアンテナ指向性を主経路に向けたビーム指向性に設定し、データ信号を送信する。データ信号送信を完了した無線データ送信機101は、アンテナ指向性をオムニ指向性に変更し、ACKフレームの受信動作を所定期間行う。データ信号を正常に受信した無線データ受信機102は、主経路を介してACKフレーム送信を行う。また無線データ受信機102は無線データを、無線データ送信機101はACKフレームを、それぞれ予期される期間に受信しなかった場合、切替要求信号を予備経路を介して送信する。送信機と受信機はそれぞれ、切替要求信号を正常に受信した場合には、切替応答信号を予備経路を介して送信する。無線データ送信機101は、切替要求信号を送信後、切替応答信号を所定の期間受信しなかった場合、経路探索起動信号をオムニ指向性で送信する。無線データ受信機102は、切替要求信号を送信後、切替応答信号を所定の期間受信しなかった場合、経路探索起動信号の受信動作をオムニ指向性で維持する。無線データ受信機102は、経路探索起動信号を受信した場合、経路探索応答信号を送信する。経路探索応答信号を受信した無線データ送信機101、および経路探索応答信号を送信した無線データ受信機102は、
図4に示す経路探索手順を共に実行し、新たな主経路および予備経路を探索する。
【0028】
上述の処理を、
図5を用いて詳細に説明する。
図5は経路遮断が発生した状況と、それに伴う経路切替手順を示した図である。状況501は主経路に通信遮断が発生していない状況を示す。無線データ送信機101は、主経路にビーム506を形成してデータ信号を送信する。無線データ受信機102は主経路にビーム507を形成してデータ信号を受信する。無線データ送信機101はデータ送信後の所定の期間(T4期間)にオムニ指向性508を形成してACKフレームの受信動作を実行する。無線データ受信機102はACKフレーム送信後にオムニ指向性を形成して所定の期間(T3期間)、無線信号の受信動作を実行する。所定の期間(T3期間)いずれのフレーム受信も発生しなかった場合は、残りの期間(T2期間-T3期間)受信動作を中断し、消費電力を抑制する。
【0029】
状況502はACKフレーム通信時から主経路に通信遮断が発生した状況を示す。無線データ送信機101はデータフレーム送信後にオムニ指向性を形成して受信動作を開始する。その後、経路遮断509が発生し所定の期間(T4期間)にACKフレームが受信できなかった無線データ送信機101は、予備経路にビーム指向性510を形成して切替要求信号を送信する。切替要求信号をオムニ指向性で受信した無線データ受信機102は、予備経路にビームを形成して切替応答信号を送信する。切替応答信号をオムニ指向性で受信した無線データ送信機101は、予備経路にビームを形成してデータを送信する。切替応答信号を予備経路で送信した無線データ受信機102は、予備経路にビーム511を形成してデータ信号を受信する。
【0030】
状況503はデータフレーム通信時に主経路において通信遮断が発生した状況を示す。無線データ受信機102は所定の期間(T1期間)に経路遮断512により無線データを受信しなかったため、予備経路にビームを形成して切替要求信号を送信する。無線データ送信機101はオムニ指向性で切替要求信号を受信した後、切替応答信号を予備経路で送信する。さらに無線データ送信機101は次のデータ送信期間に再送データを送信することで、無線データ受信機102が前のデータ通信期間で正常に受信できなかった無線データを正しく受信できるようになる。
【0031】
状況504はACKフレーム通信時に主経路と予備経路の両方に通信遮断が発生した状況を示す。無線データ送信機101は主経路にビームを形成してデータ信号を送信する。無線データ受信機102は正常に受信できたため、ACKフレームを送信するがACKフレーム通信時から経路遮断が発生しており、無線データ送信機101は所定の期間(T4期間)に経路遮断513によりACKフレームを受信することが出来ない。ACKフレームを受信できなかった無線データ送信機101は予備経路にビームを形成して切替要求信号を送信するが、予備経路も通信遮断が発生しているため、無線データ受信機102は経路遮断514により切替要求信号を受信することが出来ない。切替要求信号を受信できない無線データ受信機102は、切替応答信号を送信できず、受信動作を所定期間(T3期間)が経過するまで続行する。無線データ送信機101は切替要求信号送信後の所定期間(T5期間)、切替応答信号を受信できなかった場合、主経路、予備経路ともに通信遮断が発生していることを検出でき、経路探索起動信号をオムニ指向性で送信する。無線データ受信機102は経路探索起動信号を所定期間(T3期間)内にオムニ指向性で受信できるため、経路探索応答信号をオムニ指向性で送信する。その後、無線データ送信機101は、テスト信号をセクター指向性515を切り替えながら送信し、新しい主経路、予備経路の探索を実行する。経路探索が完了次第、無線データ送信機101と無線データ受信機102が新しい主経路を用いて無線データ通信を実行する。
【0032】
状況505はデータフレーム通信時から主経路、予備経路の両方に経路遮断が発生した状況を示す。無線データ送信機101は主経路にビームを形成してデータ信号を送信するが、データフレーム通信時から経路遮断が発生しており、無線データ受信機102は所定の期間(T1期間)に経路遮断516によりデータフレームを受信することが出来ない。データフレームを受信できなかった無線データ受信機102は、予備経路にビームを形成して切替要求信号を送信するが、予備経路も経路遮断が発生しており、無線データ送信機101は経路遮断517により切替要求信号を受信することが出来ない。無線データ送信機101はデータ信号送信後の所定期間(T4期間)内にACKフレームおよび切替要求信号を受信できなかったため、予備経路にビームを形成して切替要求信号を送信する。しかし、無線データ受信機102は経路遮断518により切替要求信号を受信できず、切替応答信号を送信することが出来ない。切替要求信号送信後の所定期間(T5期間)、切替応答信号を受信できなかった場合、主経路・予備経路ともに通信遮断が発生していることを検出でき、経路探索起動信号をオムニ指向性で送信する。経路探索起動信号の送信後の動作は状況504と同一であるため説明を省略する。
【0033】
以上が、無線データ送信機101が無線データ受信機102と無線通信を実行する通信手順と、通信に必要な無線信号である。これにより、データ信号通信とACKフレーム通信のいずれのタイミングで、主経路、予備経路のいずれかまたは両方に経路遮断が発生しても、所定期間(T3期間)内に無線データ送信機と受信機の両方が経路遮断の発生タイミングを検出することが出来る。
【0034】
図2を用いて、無線データ送信機101の各機能構成について詳細に説明する。無線データ送信機101の無線I/F部201は、データ信号生成部202が出力したデータ信号を取得し、無線データ受信機102に送信する。なお、データ信号が正しく無線データ受信機102で受信できなかった場合に再送の必要があるため、ACKフレームが所定の期間内に受信されるまでの間、または経路探索を新規に起動するまでの間、データ信号を保持しておく。また、無線データ送信機101の無線I/F部201はACKフレームを受信した場合、ACKフレーム受信部203にACKフレームを出力する。さらにACKフレーム受信部203から主経路で適切にデータ通信が完了したかを示す判定結果を取得する。判定結果が主経路でデータ通信が完了したことを示している場合は、再送用に保持していたデータ信号を破棄する。また、無線データ送信機101の無線I/F部201は、データ送信後の所定の期間内にACKフレームを無線データ受信機102から受信しない場合、切替要求信号生成を指示するコマンドを切替要求信号生成部204に出力する。さらに切替要求信号を切替要求信号生成部204から取得し、予備経路に向けてビームを形成して切替要求信号を送信する。切替要求信号の送信が完了した後は受信アンテナをオムニ指向性に設定して切替応答信号の受信動作を所定の期間行う。また、無線データ送信機101の無線I/F部201は無線データ受信機102から切替要求信号を受信した場合、切替応答信号生成を指示するコマンドを切替応答信号生成部205に出力する。さらに切替応答信号を切替応答信号生成部205から取得し、予備経路に向けてビームを形成して切替応答信号を送信する。切替応答信号の送信が完了した後は次のデータ送信期間以降は予備経路を主経路としてビームを形成して、データ信号の送信動作を行う。さらに、無線データ送信機101の無線I/F部201は、切替要求信号に対する切替応答信号を所定の期間受信しなかった場合、経路探索起動信号の生成を指示するコマンドを経路探索起動信号生成部206に出力する。さらに経路探索起動信号を経路探索起動信号生成部206から取得し、送信アンテナをオムニ指向性に設定して経路探索起動信号を送信する。経路探索起動信号の送信が完了した後は受信アンテナをオムニ指向性に設定して経路探索応答信号を無線データ受信機から受信し、経路探索を起動する。また、経路探索起動信号を取得したタイミングで無線I/F部201が再送用に保持していたデータを破棄する。
【0035】
無線データ送信機101のデータ信号生成部202は、ビデオカメラなどの撮像装置と画像処理を行うDSPなどによる信号処理回路を含み、撮像データにCRC等のエラー検出符号を付け加えて無線I/F部201に出力する。
【0036】
無線データ送信機101のACKフレーム受信部203は、無線I/F部201からACKフレームを取得する。データフレームが主経路を介して所定の期間内に受信できたか否かをACKフレームに基づき判定し、無線I/F部201に判定結果を出力する。
【0037】
無線データ送信機101の切替要求信号生成部204は、無線I/F部201から切替要求信号生成を指示するコマンドを取得した場合、切替要求信号を生成して無線I/F部201に出力する。
【0038】
無線データ送信機101の切替応答信号生成部205は、無線I/F部201から切替応答信号生成を指示するコマンドを取得した場合、切替応答信号を生成して無線I/F部201に出力する。
【0039】
無線データ送信機101の経路探索起動信号生成部206は、無線I/F部201から経路探索起動信号生成を指示するコマンドを取得した場合、経路探索起動信号を生成して無線I/F部201に出力する。
【0040】
以下、無線データ受信機102について説明する。
図3は、無線データ受信機102の機能構成を示す図である。
【0041】
無線データ受信機102の無線I/F部301は、オムニ指向性および任意の方向にビーム指向性が形成可能なアレイアンテナを備える。また、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器を備える。また、ACKフレーム生成部304と切替要求信号生成部306が生成したデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ信号変換器を備える。更には、無線データ送信機101と無線通信を実行するのに必要な無線信号の生成および取得を行う無線信号処理回路を備える。
【0042】
無線データ受信機102の無線I/F部301は、無線データ信号送信機101から受信した無線データ信号をデータ信号受信部302に出力する。また、無線データ受信機102の無線I/F部301は、無線データ信号を受信した受信品質をACKフレーム生成部304に出力する。さらにACKフレーム生成部304が生成したACKフレームを取得し無線データ送信機101に送信する。また、無線I/F部301は、ACKフレームを送信した場合、ACKフレームの送信を完了した時刻の時刻情報と、ACKフレーム送信後に切替要求信号または経路探索信号の受信が発生する時刻の時刻情報と、当該時刻に受信した無線信号を出力する。さらに判定部305が生成した主経路に対する経路状況の判定結果を取得し、「主経路に経路遮断が発生していない」という判定結果を取得した場合は、次のデータ受信期間以降も同じ主経路に向けてビームを形成してデータ信号の受信動作を行う。また、無線データ受信機102の無線I/F部301は、データ受信が発生する時刻に無線データ送信機101からデータ信号を受信しなかった場合、切替要求信号生成部306に切替要求信号生成を指示するコマンドを出力する。さらに切替要求信号生成部306が生成した切替要求信号を取得し、予備経路に向けてビームを形成して切替要求信号を送信する。切替要求信号の送信が完了した後、受信アンテナをオムニ指向性に設定し切替応答信号または経路探索起動信号の受信動作を所定の期間行う。切替応答信号を受信した場合は、次のデータ受信期間以降は予備経路を主経路として、ビームを形成してデータ信号の受信動作を行う。また、無線データ受信機102の無線I/F部301は、受信した切替要求信号を切替応答信号生成部307に出力する。さらに切替応答信号生成部307が生成した切替応答信号を取得し、予備経路に向けてビームを形成して切替応答信号を送信する。切替応答信号の送信が完了した後、次のデータ受信期間以降は予備経路を主経路として、ビームを形成してデータ信号の受信動作を行う。また、無線データ受信機102の無線I/F部301は、受信した経路探索起動信号を経路探索応答信号生成部307に出力する。さらに経路探索応答生成部307が生成した経路探索応答信号を取得し、送信アンテナをオムニ指向性に設定して経路探索応答信号を送信する。経路探索応答信号の送信が完了した後、受信アンテナをオムニ指向性に設定して経路探索のためのテスト信号の受信動作および応答信号の送信動作を、アンテナ指向性を切り替えながら実行する。
【0043】
無線データ受信機102のデータ信号受信部302は、無線I/F部301が出力した無線データ信号を取得し、メモリ303に出力する。
【0044】
無線データ受信機102のメモリ303は、データ信号受信部302が出力した無線データ信号を取得し、記憶装置に格納する。記憶装置は取得したデータ信号を保存できる容量が十分にあればよく、記憶装置の容量に対してデータ信号の伝送量が大きい場合にはデータ信号を圧縮するなどしてデータ信号の容量を削減するなどしてもよい。
【0045】
ACKフレーム生成部304は、無線I/F部301が出力した無線データ信号の受信品質を取得し、受信した無線データに誤りが無いと判定した場合はACKフレームを生成し、無線I/F部301に出力する。
【0046】
無線データ受信機102の判定部305は、無線I/F部301がACKフレームを送信した場合、ACKフレームの送信を完了した時刻の時刻情報と、ACKフレーム送信後に切替要求信号または経路探索信号の受信が発生する時刻の時刻情報を取得する。更に、ACKフレーム送信後に切替要求信号または経路探索信号の受信が発生する時刻に受信した無線信号を取得する。当該時刻にいかなる無線信号も取得しなかった場合、判定部305は「主経路に経路遮断が発生していない」という判定結果を無線I/F部301に出力する。当該時刻に切替要求信号を受信した場合は、「主経路に経路遮断が発生したが、予備経路は生存している」と判定し、切替応答信号生成部307に切替応答信号生成を指示するコマンドを出力する。当該時刻に経路探索起動信号を受信した場合は、「主経路および予備経路ともに経路遮断が発生した」と判定し、経路探索応答信号生成部308に経路探索応答信号の生成を指示するコマンドを出力する。
【0047】
無線データ受信機102の切替要求信号生成部306は、無線I/F部301から切替要求信号生成を指示するコマンドを取得した場合、切替要求信号を生成して無線I/F部301に出力する。
【0048】
無線データ受信機102の切替応答信号生成部307は、無線I/F部301または判定部305が生成した切替応答信号生成を指示するコマンドを取得した場合、切替応答信号を生成して無線I/F部301に出力する。
【0049】
無線データ受信機102の経路探索応答信号生成部308は、無線I/F部301または判定部305が生成した経路探索応答信号生成を指示するコマンドを取得した場合、経路探索応答信号を生成して無線I/F部301に出力する。
【0050】
次に、
図6および
図7のフローチャートを用いて、本実施の形態の無線データ送信機および無線データ受信機の動作を説明する。
図6は無線データ送信器101において実行される処理のフローチャートであり、
図7は無線データ受信機102において実行される処理のフローチャートである。
【0051】
S601において、無線データ送信機101は、データフレームを主経路で送信する。S602において、無線データ送信機101は、受信アンテナの指向性をオムニ指向性に設定する。無線データ受信機102は、データフレームを正常に受信できた場合にはACKフレームを主経路で送信し、データフレームを正常に受信できなかった場合には切替要求信号を予備経路で送信する。無線データ送信機が受信アンテナをオムニ指向性に設定することで、ACKフレームと切替要求信号のどちらも受信することが出来る。
【0052】
S701において、無線データ受信機102は、データフレームを主経路で受信するために、主経路に向けてビームを形成する。S702において、無線データ受信機102は、所定の期間(T1期間)にデータフレームを受信したか否かを判定する。所定の期間(T1期間)内にデータフレームを受信した場合はS703に進み、所定の期間(T1期間)内にデータフレームを受信しなかった場合はS704に進む。
【0053】
S703において、無線データ受信機102は、ACKフレームを通信用経路である主経路で送信する。S705において、無線データ受信機102は、受信アンテナをオムニ指向性に設定する。受信アンテナをオムニ指向性に設定することで、無線データ送信機101が予備経路を介して送信する切替要求信号とオムニ指向性を使用して送信する経路探索起動信号のいずれの信号も受信することが出来る。
【0054】
S704において、無線データ受信機102は、予備経路を使用して切替要求信号を送信する。S702で所定の期間(T1期間)内にデータフレームを受信しなかったことは主経路で通信遮断が発生していることを示しているので、主経路の使用を中断し予備経路を使用する為に予備経路を使用して切替要求フレームを送信する。
【0055】
S706において、無線データ受信機102は、受信アンテナをオムニ指向性に設定する。受信アンテナをオムニ指向性に設定することで、無線データ送信機101が予備経路を介して送信する切替応答信号、およびオムニ指向性を使用して送信する経路探索起動信号のいずれの信号も受信することが出来る。
【0056】
S603において、無線データ送信機101は、所定の期間(T4期間)にフレーム受信が発生したか否かを判定する。この期間(T4期間)に受信する可能性があるフレームは、無線データ受信機102が正常にデータを受信できた場合に送信したACKフレームか、無線データ受信機102が正常にデータを受信できなかった場合に送信した切替要求信号のいずれかである。無線データ送信機101は、ACKフレームを受信した場合にはS604に進み、切替要求信号を受信した場合にはS605に進む。また、所定の期間(T4期間)にいずれのフレームも受信しなかった場合にはS606に進む。
【0057】
S604において、無線データ送信機101は、経路を維持して通信を継続するようにアンテナの設定を行う。S603で所定の期間(T4期間)にACKフレームを受信したことは、主経路に経路遮断が発生していないことを示す。S605において、無線データ送信機101は、予備経路を使用して切替応答フレームを送信する。S603で所定の期間(T4期間)に切替要求フレームを受信したことは、主経路に経路遮断がデータフレーム通信時に発生したが予備経路には経路遮断が発生していないことを示す。
【0058】
S607において、無線データ送信機101は、予備経路を使用してデータフレームの再送を行う。S606において、無線データ送信機101は、予備経路を使用して切替要求フレームを送信する。S603で所定期間(T4期間)にフレーム受信が発生しなかったことは、「無線データ受信機102がデータフレームを正常に受信した後にACKフレームを送信したが、ACKフレームを送信したタイミングから経路遮断が発生した」場合である。または、「無線データ受信機102がデータフレームを受信できず予備経路で切替要求信号を送信したが、予備経路も経路遮断が発生した」場合である。無線データ送信機101は、障害が発生した箇所とタイミングを特定するために予備経路を使用して切替要求フレームを送信する。
【0059】
S608において、無線データ送信機101は、所定期間(T5期間)に切替応答信号の受信が発生したか否かを判定する。切替応答信号を受信した場合にはS609に進み、切替応答信号を所定期間(T5期間)受信しなかった場合にはS610に進む。S609において、無線データ送信機101は、予備経路を通信用経路に設定する。切替応答信号を受信したことにより、無線データ送信機101は、「主経路は経路遮断が発生しているが、予備経路は経路遮断が発生していない」ことを検出できる。以後のデータ通信では予備経路を使用してデータ通信を実行するようにアンテナの指向性を設定する。S610において、無線データ送信機101は、オムニ指向性を使用して経路探索起動信号を送信する。S608において、所定期間(T5期間)、切替応答信号を受信しなかったことにより、無線データ送信機101は主経路と予備経路の両方が経路遮断されていることを検出できる。
【0060】
S611において、無線データ送信機101は、無線データ受信機102とともに経路探索手順を実行する。経路探索手順が完了し、新たな主経路、予備経路の探索が完了したらS612に進む。S612において、無線データ送信機101は、通信期間が継続しているか否かを判定する。アプリケーションの終了によりデータ送信が無い場合は通信期間満了として終了する。アプリケーションが終了していない場合はS601に進む。なお、S601に戻る前に任意のタイミングで経路探索手順を起動して、新たに経路を探索してもよい。定期的に経路を探索することで通信環境が変化した場合でも良好な通信経路を確保することが出来る。通信期間の有無および経路探索手順実行の有無はビーコンフレームに記載して無線データ受信機102に通知する。
【0061】
S707において、無線データ受信機102は、所定期間(T3期間)にフレーム受信が発生したか否かを判定する。この期間に受信する可能性があるフレームは、無線データ送信機101がACKフレームを受信できなかった場合に送信した切替要求信号か、無線データ送信機101が切替応答信号を受信できなかった場合に送信した経路探索起動信号の何れかである。無線データ受信機102は、いずれのフレームも受信しなかった場合にはS709に進み、切替要求信号を受信した場合にはS710に進み、経路探索起動信号を受信した場合にはS711に進む。
【0062】
S709において、無線データ受信機102は、経路を維持して通信を継続するようにアンテナの設定を行う。S707で所定の期間(T3期間)にACKフレームを受信したことは、主経路に経路遮断が発生していないことを示す。無線データ受信機102は設定を完了したらS712に進む。
【0063】
S712において、無線データ受信機102は、次のデータ受信時刻まで受信動作を中止して待機動作を行う。データ通信を実行しない期間(T2期間)の中で、経路遮断発生時に信号を受信する期間(T3期間)以外は信号の受信が無い。そのため、無線データ受信局は次のデータ通信が始まるまでの期間(T2期間-T3期間)、無線通信機の受信動作を中断することができ、消費電力を低下させることが出来る。次のデータ通信期間が始まるまでの期間(T2期間-T3期間)が経過したらS718に進む。
【0064】
S710において、無線データ受信機102は、予備経路を使用して切替応答信号を送信する。S707で切替要求信号を受信したことにより、無線データ受信機102は「ACKフレーム通信時から主経路に経路遮断が発生しているが、予備経路は経路遮断が発生していないこと」を検出できる。通信経路を予備経路に切り替えるため切替応答信号を送信した後、S713に進む。S713において、無線データ受信機102は、予備経路を通信経路に設定する。予備経路で無線通信を実行するために、以降の無線データ通信期間では予備経路に向けてビームを形成してデータ通信動作を実行する。
【0065】
S711において、無線データ受信機102は、オムニ指向性で経路探索応答信号を送信する。S707で経路探索起動信号を受信したことにより、無線データ受信機102は「主経路と予備経路の両方に経路遮断が発生していること」を検出できる。無線データ受信機102は、無線データ送信機101と新規経路探索を実行するためにオムニ指向性で経路探索応答信号を送信する。S714において、無線データ受信機102は、無線データ送信機101とともに経路探索を実行する。経路探索手順が完了し、新たな主経路・予備経路の探索が完了したらS718に進む。
【0066】
S708において、無線データ受信機102は、フレーム受信が発生したか否かを判定する。この期間に受信する可能性があるフレームは、無線データ送信機101が切替要求信号を受信した場合に送信した切替応答信号か、無線データ送信機101が切替要求信号を受信できなかった場合に送信した経路探索起動信号のいずれかである。無線データ受信機102は、切替応答信号を受信した場合にはS715に進み、経路探索起動信号を受信した場合にはS716に進む。
【0067】
S715において、無線データ受信機102は、予備経路を通信用経路に決定する。S708で切替応答信号を受信したことにより、無線データ受信機102は「データフレーム通信時から主経路に経路遮断が発生しているが、予備経路は経路遮断が発生していないこと」を検出できる。無線データ受信機102は予備経路で無線通信を実行するために、以降の無線データ通信期間では予備経路に向けてビームを形成してデータ通信動作を実行する。予備経路を通信用経路に設定し終えたらS718に進む。
【0068】
S716において、無線データ受信機102は、オムニ指向性を使用して経路探索応答信号を送信する。S708において、経路探索起動信号を受信することにより、無線データ受信機102は「データフレーム通信時から主経路・予備経路の両方に経路遮断が発生していること」を検出できる。S717において、無線データ受信機102は、無線データ送信機101とともに経路探索を実行する。S718において、無線データ受信機102は、無線データ送信機が直近に送信したビーコンフレームに基づいて通信期間の継続を判定する。通信期間が継続している場合は、S701に進み、通信期間が満了している場合は処理を終了する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、無線データ送信機と受信機間の通信経路遮断の発生の有無および内容に応じて所定の期間内に通信経路を切り替えることが出来るため、通信経路遮断による経路切替を高速に実現することが出来る。
【0070】
〔実施形態2〕
実施形態1では、無線データ送信機と無線データ受信機は、主経路に通信遮断が発生した場合には予備経路に切り替え、さらに主経路と予備経路が同時に遮断された場合には新規経路探索を実行する。これら動作を実現するために、データ受信後のACKフレーム送信後に所定の期間、アンテナの指向性をオムニ指向性に設定し、経路遮断を通知するフレームの受信動作を実行する。そして、受信したフレームの有無および内容に基づき、主経路の継続利用、または予備経路への切替、または新規経路探索の実行のいずれかを選択する。
【0071】
これに対して本実施形態では、ACKフレーム送信後に経路遮断を通知するフレームの受信動作を行い、無線データ信号のフレームサイズに基づいて、複数のモードのうちの何れかのモードを選択する。複数のモードは、受信したフレームの有無および内容に基づき経路の切替動作を行うモードと、経路遮断が発生した場合は無線局が自律的に経路の切替を行うモードとを含む。無線データ信号のフレームサイズが大きい場合はデータフレームのエラー受信動作や再送処理に多大な時間を要することになる。しかし、フレームサイズが小さい場合はデータフレームのエラー受信動作や再送処理に要する時間も比較的短い。フレームサイズに応じて動作を変えることでエラー発生時に、経路切替を指示するフレームを送受信することなく経路を切り替えられ、より短い時間で経路遮断発生時に予備経路に切り替えることが出来る。
【0072】
以下、図面を参照して本実施形態における無線データ送信機101と無線データ受信機102の構成及び動作を説明するが、図中、実施形態1の構成及び動作が同様のブロックについては実施形態1と同様の符号を付与し、その説明は省略する。
【0073】
図8は、本実施形態における無線データ送信機101の機能ブロックの構成例を示す図である。実施形態1と比較し、本実施形態における無線データ送信機101の無線I/F部801はさらに、通信モードを示す通信モード信号を無線データ受信機102から受信する。無線データ送信機101の無線I/F部801は通信モード信号をモード取得部802に出力し、モード取得部802から通信モード指示コマンドを取得する。
【0074】
通信モードが、フレームサイズが閾値以上である“ラージ”の場合、無線I/F部801がACKフレーム受信部、切替要求信号生成部、切替応答信号生成部、経路探索起動信号生成部にそれぞれ取得、出力する条件および信号の種類は同一である。通信モードが、フレームサイズが閾値未満である“スモール”の場合、無線I/F部801は切替要求信号生成部204、切替応答信号生成部205から信号を取得することも、コマンドを出力することもない。無線I/F部801は、所定の期間、ACKフレームを受信しなかった場合は通信経路を予備経路に切り替え、さらに所定の期間ACKフレームを受信しなかった場合は経路探索起動信号206に経路探索起動信号の生成を指示するコマンドを出力する。そして、無線I/F部801は、経路探索起動信号生成部206から経路探索起動信号を取得し、オムニ指向性で無線データ受信機102に送信する。
【0075】
モード取得部802は無線I/F部801から通信モード信号を取得し、通信モード信号に記載されている内容に基づき、無線I/F部801に通信モード指示コマンドを出力する。データ信号送信部202に関する動作は通信モードに依らず実施形態1と同一である。
【0076】
図9は、本実施形態における無線データ送信機102の機能ブロックの構成例を示す図である。実施形態1と比較し、本実施形態における無線データ送信機102の無線I/F部901はさらに、無線データ送信機101が送信する無線データのフレーム長をフレーム長推定部902に出力する。さらにモード選択部903から通信モード信号を取得し、無線データ送信機101に送信する。
【0077】
通信モードが、フレームサイズが閾値以上である“ラージ”の場合、無線I/F部901がACKフレーム生成部、判定部、切替要求信号生成部、切替応答信号生成部、経路探索応答信号生成部にそれぞれ取得・出力する条件および信号の種類は同一である。通信モードが、フレームサイズが閾値未満である“スモール”の場合、無線I/F部901は判定部305、切替要求信号生成部306、切替応答信号生成部307から信号を取得することも、コマンドを出力することもない。無線I/F部901は所定の期間、データフレームを受信しなかった場合は通信経路を予備経路に切り替え、さらに所定の期間データフレームを受信しなかった場合は受信アンテナの指向性をオムニ指向性に設定して経路探索要求信号の受信動作を続ける。経路探索要求信号を受信した場合は、経路探索応答信号生成部308に経路探索応答信号生成を指示するコマンドを出力し、経路探索応答信号を取得する。
【0078】
フレーム長推定部902は無線I/F部901から無線データのフレーム長を取得し、フレーム長を記載したコマンドをモード選択部903に出力する。モード取得部903はフレーム長推定部902からフレーム長を記載したコマンドを取得し、閾値と比較して通信モードを“スモール”または“ラージ”のいずれかに決定する。さらに通信モードを記載した通信モード信号を無線I/F部901に出力する。
【0079】
次に、
図10、
図11、
図12のフローチャートを用いて、本実施形態の無線データ送信機および無線データ受信機において実行される処理について説明する。なお、本実施形態では無線データ送信機を制御局、無線データ受信機を子機として説明するが、逆の役割をそれぞれ割り当てる構成でもよい。
【0080】
図10は、システム起動時に無線データ送信機101と無線データ受信機102が実行する通信モード選択処理を示している。S1001において、無線データ送信機101と無線データ受信機102は、経路探索手順を実行し、主経路と予備経路をそれぞれ探索する。S1002において、無線データ送信機101は、自局が無線データ受信機か否か判断し、自局は無線データ受信機ではないと判断する。逆に、無線データ受信機102は、S1002において自局は無線データ受信機であると判断する。
【0081】
S1003において、無線データ受信機102は、経路探索手順で探索した主経路、予備経路の通信品質と、無線データ送信機101が送信するアプリケーションデータのフレームサイズに基づき、通信モードを選択する。通信モードが“ラージ”の場合、ACKフレーム送信後に所定の期間アンテナの指向性をオムニ指向性に設定してフレーム受信を実行する必要がある。通信モードが“スモール”の場合、ACKフレーム送信後に所定の期間受信動作を実行する必要はないが、経路遮断が発生した場合に不要な再送フレームが発生する必要がある。再送処理に要する期間がACKフレーム送信後の所定の期間よりも短ければ通信モードに“スモール”を選択し、逆の場合は通信モードに“ラージ”を選択する。所定の期間は、無線データ送信局がACKフレームのエラー検出に要する期間と、経路探索応答信号のエラー検出に要する期間の合計の値にマージンを持った値である。そのため、ACKフレームおよび経路探索応答信号の送信時に使用する変調方式やフレーム間隔およびエラー検出に要する期間に応じて決定する。通信モードの選択が完了したらS1004に進む。
【0082】
S1004において、無線データ受信機102は、通信モードを記載した無線パケットを生成し、無線データ送信機101に無線で送信する。送信が完了したら通信モード選択手順を終了する。S1005において、無線データ送信機101は、通信モードを記載した無線パケットを受信し、通信モードを取得したら通信モード選択手順を終了する。
【0083】
次に
図11および
図12のフローチャートを用いて、本実施の形態の通信モードで“スモール”が選択された場合の、無線データ送信機101および無線データ受信機102の動作を説明する。
図11は無線データ送信器101において実行される処理のフローチャートであり、
図12は無線データ受信機102において実行される処理のフローチャートである。なお、通信モードで“ラージ”が選択された場合の無線データ送信機101および無線データ受信機102の動作は実施形態1と同一である。
【0084】
S1101において、無線データ送信機101は、送信指向性アンテナと受信指向性アンテナを通信用経路に設定する。アンテナの設定が完了したらS1102に進む。S1102において、無線データ送信機101は、主経路を使用してデータフレームを送信する。
【0085】
S1103において、無線データ送信機101は、主経路に向けてビームを形成し、ACKフレームの受信動作を行う。所定期間(T1期間)内にフレームを受信した場合はS1111に進み、フレームを受信しなかった場合はS1104に進む。なお、所定期間(T1期間)は、無線データ受信機102がデータフレームを受信後にACKフレームを送信した場合にそのACKフレームを無線データ送信機101が受信するのに十分な時間とする。
【0086】
S1104において、無線データ送信機101は、予備経路に向けてビームを形成する。S1103で所定期間(T1期間)ACKフレームを受信しなかったことは主経路に経路遮断が発生したことを示している。経路遮断が発生した主経路から予備経路に通信経路を切り替え、完了したらS1105に進む。S1105において、無線データ送信機101は、予備経路でデータフレームを送信する。
【0087】
S1106において、無線データ送信機101は、予備経路に向けてビームを形成し、ACKフレームの受信動作を行う。所定期間(T1期間)内にフレームを受信した場合はS1111に進み、フレームを受信しなかった場合はS1107に進む。S1107において、無線データ送信機101は、送信アンテナ指向性と受信アンテナ指向性をオムニ指向性に設定する。S1106でACKフレームを受信しなかったことは、主経路と予備経路の両方で経路遮断が発生したことを示しており、新たに経路を探索する必要がある。
【0088】
S1108において、無線データ送信機101は、経路探索起動信号をオムニ指向性で送信する。S1109において、無線データ送信機101は、経路探索応答信号をオムニ指向性で受信する。S1110において、無線データ送信機101は、無線データ受信機102と経路探索を実行する。S1111において、無線データ送信機101は、通信期間が継続しているか否かを判定する。アプリケーションの終了によりデータ送信が無い場合は通信期間満了として終了する。アプリケーションが終了していない場合はS1101に進む。なお、S1101に戻る前に任意のタイミングで経路探索手順を起動して、新たに経路を探索してもよい。定期的に経路を探索することで通信環境が変化した場合でも良好な通信経路を確保することが出来る。通信期間の有無および経路探索手順実行の有無はビーコンフレームに記載して無線データ受信機102に通知する。
【0089】
S1201において、無線データ受信機102は、送信アンテナ指向性と受信アンテナ指向性を通信用経路に設定する。S1202において、無線データ受信機102は、データフレームを所定期間(T1期間)に受信したか否かを判定する。データフレームを受信した場合はS1203に進む。所定期間(T1期間)データフレームの受信が無い場合はS1204に進む。
【0090】
S1204において、無線データ受信機102は、通信経路を予備経路に切り替える。S1202でデータフレームを受信しなかったことは主経路で経路遮断が発生していることを示しているため通信経路を予備経路に切り替える。通信経路を予備経路に切り替えるために、予備経路に向けて送信アンテナ指向性と受信アンテナ指向性を設定し、アンテナの設定が完了したらS1205に進む。S1205において、無線データ受信機102は、データフレームを所定期間(T1期間)に受信したか否かを判定する。データフレームを受信した場合はS1203に進む。データフレームを所定期間(T1期間)に受信しなかった場合はS1206に進む。
【0091】
S1206において、無線データ受信機102は、受信アンテナ指向性をオムニ指向性に設定する。S1205で所定期間(T1期間)データフレームを受信しなかったことは主経路と予備経路の両方で経路遮断が発生していることを示しており、新たに経路を探索する必要がある。S1207において、無線データ受信機102は、経路探索起動信号を受信する。S1208において、無線データ受信機102は、経路探索応答信号をオムニ指向性で送信する。S1209において、無線データ受信機102は、無線データ送信機101と経路探索手順を実行する。S1210において、無線データ受信機102は、無線データ送信機101が直近に送信したビーコンフレームに基づいて通信期間の継続を判定する。通信期間が継続している場合は、S1201に進み、通信期間が満了している場合は処理を終了する。
【0092】
次に、無線データ送信機101と無線データ受信機102のハードウェア構成について説明する。
図13は、無線データ送信機101と無線データ受信機102のハードウェア構成を示すブロック図である。尚、
図13に示す構成は、実施形態1、実施形態2で同様である。
【0093】
図13において、記憶部1301は、一つ又は複数のROM、RAMにより構成され、前述した各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部1301として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。
【0094】
制御部1302は、一つ又は複数のCPU、MPU等により構成され、記憶部1301に記憶されたプログラムを実行することにより無線データ送信機/受信機全体を制御する。なお、制御部1302が実行しているOS(Operating System)との協働により無線データ送信機/受信機全体を制御するようにしてもよい。また、制御部1302は、機能部1303を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部1303は、無線データ送信機/受信機が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、無線データ送信機/受信機がカメラである場合、機能部1303は、撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば無線データ送信機/受信機がプリンタである場合、機能部1303は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、無線データ送信機/受信機がプロジェクタである場合、機能部1303は投影部であり、投影処理を行う。機能部1303が処理するデータは、記憶部1301に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部1306を介して他の通信装置と通信したデータであってもよい。入力部1304は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部1305は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部1304と出力部1305両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。通信部1306は、IEEE802.11シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。また、通信部1306はアンテナ1307を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。アンテナ1307は、通信部1306による送受信に対して電磁波を放射・吸収する。
【0095】
尚、上述の
図2、
図3、
図8及び
図9に示す各機能ブロックは、ソフトウェアによって提供されてもよいし、ハードウェアによって提供されてもよい。ソフトウェアによって提供される場合は、それらの機能ブロックを、例えば無線データ送信機101又は無線データ受信機102の制御部1302が実行することにより、その機能が実行される。一方、ハードウェアによって提供される場合には、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)により、各機能ブロックが構成される。
【0096】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0097】
1301 記憶部
1302 制御部
1303 機能部
1304 入力部
1305 出力部
1306 通信部