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特許7422482加工システムの制御装置、加工システム及び加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】加工システムの制御装置、加工システム及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240119BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G05B19/404 H
B25J9/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018095836
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019200677
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浮田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】小梁川 靖
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127933(JP,A)
【文献】特開2009-039787(JP,A)
【文献】特開平04-167600(JP,A)
【文献】特開平06-142996(JP,A)
【文献】特開2012-028655(JP,A)
【文献】特開平08-204397(JP,A)
【文献】特開平02-198723(JP,A)
【文献】特開平10-303597(JP,A)
【文献】特開2000-124676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18ー19/416
B25J 9/10
B23Q 17/00
B23P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部に加工対象物が保持されているときに前記加工対象物に付されているマークを検出する第1検出部と、
前記保持部との相対位置が定められた基準点と、前記第1検出部により検出された前記マークの位置と、の差を示す差分情報を求める差分計算部と、
前記保持部から搬送された前記加工対象物に対して加工処理を行う加工部において、前記マークを検出する第2検出部と、
前記第2検出部が検出した前記マークの位置及び前記差分情報を用いて加工位置を特定する加工位置特定部と、
を備え、
前記第1検出部と前記第2検出部は、前記加工対象物より上方から前記マークを検出し、
前記保持部は前記加工対象物を予め決められた姿勢及び予め決められた相対位置で保持することを特徴とする加工システムの制御装置。
【請求項2】
前記保持部は、金型またはエアシリンダにより前記加工対象物を保持することを特徴とする、請求項1に記載の加工システムの制御装置。
【請求項3】
前記保持部では、前記マークが付された前記加工対象物を成形し、
前記第1検出部では、前記保持部で成形された前記加工対象物に付されているマークを検出することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の加工システムの制御装置。
【請求項4】
前記保持部との相対位置が予め定められた第1撮影部を備え、
前記基準点は、前記第1撮影部により撮影された画像上の所定の画素位置である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工システムの制御装置。
【請求項5】
前記基準点は、前記保持部が有する特徴点である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工システムの制御装置。
【請求項6】
前記基準点は、前記保持部との相対位置が予め定められた位置に配置される参照マークである、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工システムの制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の加工システムの制御装置と、
前記保持部と、
前記加工対象物を前記保持部から搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記加工対象物に加工処理を行う加工装置と、
を備え、
前記加工装置は、前記加工位置特定部により特定された加工位置へ加工処理を行う加工システム。
【請求項8】
保持部に保持された加工対象物に付されたマークを前記加工対象物より上方から検出する第1検出ステップと、
前記保持部との相対位置が定められた基準点と前記第1検出ステップで検出された前記マークの位置との差を示す差分情報を求める計算ステップと、
前記加工対象物を前記保持部から搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップで搬送された加工対象物を対象として前記マークを前記加工対象物より上方から検出する第2検出ステップと、
前記第2検出ステップで検出された前記マークの位置と前記差分情報とに用いて加工位置を特定し、特定された加工位置に加工処理を行う加工ステップと、
を含み、
前記保持部は前記加工対象物を予め決められた姿勢及び予め決められた相対位置で保持することを特徴とする加工方法。
【請求項9】
前記第1検出ステップよりも前に金型を用いて前記加工対象物を成形する成形ステップと、
前記成形ステップよりも前に前記加工対象物に前記マークを設けるステップと、
を更に含み、
前記保持部は、前記金型により前記加工対象物を保持することを特徴とする請求項8に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工システムの制御装置、加工システム及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正確な位置に加工を行うため、加工対象物の所定位置にアライメントマークを設け、アライメントマークに従って加工対象物の位置合わせを行った後、位置合わせの誤差を計測して加工位置を補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5798026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、アライメントマークは、加工対象物の正確な位置に付けられることが必要である。しかしながら、アライメントマークを高い位置精度で加工対象物に設けることは、時間と手間とを要し、非常に煩雑な作業になることがあった。
【0005】
本発明は、加工対象物にマークを設ける際に高い位置精度が要求されず、このマークを用いて高い位置精度の加工を行うことができる加工システムの制御装置、加工システム及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加工システムの制御装置は、
保持部に加工対象物が保持されているときに前記加工対象物に付されているマークを検出する第1検出部と、
前記保持部との相対位置が定められた基準点と前記第1検出部により検出された前記マークの位置との差を示す差分情報を求める差分計算部と、
前記保持部から搬送された前記加工対象物に対して加工処理を行う加工部において、前記マークを検出する第2検出部と、
前記第2検出部が検出した前記マークの位置及び前記差分情報を用いて加工位置を特定する加工位置特定部と、
を備え、
前記第1検出部と前記第2検出部は、前記加工対象物より上方から前記マークを検出し、
前記保持部は前記加工対象物を予め決められた姿勢及び予め決められた相対位置で保持する構成とした。
【0007】
本発明に係る加工システムは、
上記の加工システムの制御装置に、
前記加工対象物の加工処理の際に前記マークを検出する第2検出部と、
前記第2検出部が検出した前記マークの位置と前記差分情報とに用いて加工位置を特定する加工位置特定部と、
を加え、
更に、
前記保持部と、
前記加工対象物を前記保持部から搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記加工対象物に加工処理を行う加工装置と、
を備え、
前記加工装置は、前記加工位置特定部により特定された加工位置へ加工処理を行う構成とした。
【0008】
本発明に係る加工方法は、
保持部に保持された加工対象物に付されたマークを前記加工対象物より上方から検出する第1検出ステップと、
前記保持部との相対位置が定められた基準点と前記第1検出ステップで検出された前記マークの位置との差を示す差分情報を求める計算ステップと、
前記加工対象物を前記保持部から搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップで搬送された加工対象物を対象として前記マークを前記加工対象物より上方から検出する第2検出ステップと、
前記第2検出ステップで検出された前記マークの位置と前記差分情報とに用いて加工位置を特定し、特定された加工位置に加工処理を行う加工ステップと、
を含み、
前記保持部は前記加工対象物を予め決められた姿勢及び予め決められた相対位置で保持する方法とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工対象物にマークを設ける際に高い位置精度が要求されず、このマークを用いて高い位置精度の加工を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の加工システムを示すブロック図である。
図2】加工システムによって実施される部品製造工程の第1例を示すフローチャートである。
図3図2のステップS2で実行されるマーク貼付処理を説明する図である。
図4図2のステップS4で実行される差分情報の計算処理を説明する図であり、(A)はその第1例、(B)は第2例、(C)は第3例である。
図5図2のステップS6で実行される搬送処理を説明する図である。
図6図2のステップS8で実行される加工座標の構築処理の第1部を説明する図である。
図7図2のステップS8で実行される加工座標の構築処理の第2部を説明する図である。
図8図2のステップS9で実行される加工位置特定処理を説明する図である。
図9図2のステップS10で実行される加工処理を説明する図である。
図10】加工システムによって実施される部品製造工程の第2例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態の加工システムを示すブロック図である。
【0012】
本実施形態の加工システム1は、鍛造成形された加工対象物に所定の加工を施して機械部品を製造するシステムである。加工システム1は、金型12を用いて鍛造等の成形を行うプレス装置11、第1撮影部14、マーク貼付ロボット16、金型12から加工台21まで加工対象物Hを搬送する搬送装置18、加工台21、加工ロボット24及び第2撮影部27を備える。さらに、加工システム1は、加工ロボット24の加工位置を制御する制御部40を備える。これらのうち、第1撮影部14、第2撮影部27及び制御部40の組み合わせが、本発明に係る制御装置の一例に相当する。金型12は、本発明に係る保持部の一例に相当する。加工ロボット24は、本発明に係る加工装置の一例に相当する。
【0013】
マーク貼付ロボット16は、加工対象物Hが金型12に嵌っているときに、加工対象物Hにマークを貼り付けるロボットである。なお、マーク貼付ロボット16は省略し、作業員が加工対象物Hにマークを貼り付けるようにしてもよい。マークを貼付する位置には高い精度が求められない。
【0014】
第1撮影部14は、金型12に嵌っている加工対象物H及びそこに貼り付けられたマークを撮影し、撮影結果の画像データを制御部40へ送る。第1撮影部14は、制御部40の制御により撮影処理を実行する。第1撮影部14としては、CCD(Charged-coupled devices)センサ又はCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサを撮像素子に用いたカメラ等を適用できる。
【0015】
第2撮影部27は、加工台21上に搬送された加工対象物H及びそこに貼り付けられたマークを撮影し、撮影結果の画像データを制御部40へ送る。第2撮影部27は、制御部40の制御で撮影処理を実行する。第2撮影部27としては、CCDセンサ又はCMOSセンサを撮像素子に用いたカメラ等を適用できる。
【0016】
加工ロボット24は、加工台21上で加工対象物Hに所定の加工を行うロボットである。所定の加工としては、例えば穿孔加工、切削加工、溶接加工、肉盛溶接加工などが適用できる。加工ロボット24は、多関節アーム24aと加工ヘッド24bとを有し、多関節アーム24aを駆動することで、加工台21上の様々な位置に加工ヘッド24bを移動しかつ様々な角度に加工ヘッド24bの向きを変えることができる。これにより、加工ロボット24は、加工台21上の加工対象物Hの様々な位置に様々な角度から加工を行うことができる。
【0017】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUがデータを展開するメモリと、CPUが実行する制御プログラム及び制御データが記憶される記憶部42と、外部機器との間で信号を入出力するインターフェース43とを備えたコンピュータである。制御部40の演算部(CPU及びメモリ)41には、CPUが制御プログラムを実行することで実現される複数の機能モジュールが構築される。これらの機能モジュールには、第1マーク検出処理部411、差分計算部412、第2マーク検出処理部413及び加工位置特定部414が含まれる。第1撮影部14及び第1マーク検出処理部411が、本発明に係る第1検出部の一例に相当する。第2撮影部27及び第2マーク検出処理部413が、本発明に係る第2検出部の一例に相当する。
【0018】
第1マーク検出処理部411は、第1撮影部14の撮影により得られた画像データから、加工対象物Hに付けられたマークを検出する。
【0019】
差分計算部412は、金型12との相対位置が定められた基準点と、第1マーク検出処理部411が検出したマークの位置との差を計算し、これを差分情報として記憶部42に記憶させる。
【0020】
第2マーク検出処理部413は、第2撮影部27の撮影により得られた画像データから、加工対象物Hに付けられたマークを検出する。
【0021】
加工位置特定部414は、第2マーク検出処理部413が検出したマークの位置と、差分計算部412が計算した差分情報とに基づいて、加工台21上の加工対象物Hにおいて加工位置を特定する。
【0022】
<部品製造工程>
続いて、本実施形態の加工システム1によって実施される部品製造工程について説明する。図2は、部品製造工程の第1例を示すフローチャートである。
【0023】
部品製造工程では、先ず、プレス装置11が金型12を用いて加工対象物Hをプレス成形する(ステップS1)。プレス成形後、加工対象物Hは、金型12に嵌って、金型12との相対位置が高い精度で固定された状態にある。ただし、加工対象物Hにはバリ等が生じることで、第1撮影部14から見た外形は一定でないことがある。
【0024】
プレス成形が完了すると、次に、加工対象物Hが金型12に嵌っている状態で、マーク貼付ロボット16が、加工対象物Hにマークm1、m2を設ける(ステップS2)。図3は、このマーク貼付処理を説明する図である。マークm1、m2を設ける位置には、高い精度が要求されず、ライン生産により順次処理にかけられる複数の加工対象物Hに対して毎回同じ位置にマークm1、m2が設けられる必要はない。ここで、マーク貼付ロボット16は、複数のマークm1、m2を貼り付けてもよいし、向き及び大きさが識別可能なマークであれば1つのマークを貼り付けてもよい。また、マークm1、m2は、取外し及び再利用可能なものが適用されてもよい。例えば、加工対象物Hが磁性体であれば、マークm1、m2は磁力により加工対象物Hに貼り付く構成としてもよい。これにより、マークm1、m2の取り付け及び取外しが用意となり、マークm1、m2の再利用性が向上する。
【0025】
続いて、制御部40が、第1撮影部14を用いて金型12上の加工対象物Hを撮影し、第1マーク検出処理部411が、画像認識を行って撮影画像からマークm1、m2を識別する(ステップS3:本発明に係る第1検出ステップの一例に相当)。
【0026】
マークm1、m2が識別されると、次に、差分計算部412が、金型12との相対位置が定められた基準点と、マークm1、m2との位置の差を計算して差分情報を得る(ステップS4:本発明に係る計算ステップの一例に相当)。図4は、図2のステップS4で実行される差分情報の計算処理を説明する図であり、(A)はその第1例、(B)は第2例、(C)は第3例である。続いて、第1例から第3例の差分情報の計算処理について説明する。
【0027】
第1例の計算処理では、図4(A)に示すように、差分計算部412は、第1撮影部14の撮影画像W1の所定の画素位置(例えば原点0)を基準点pr1として設定する。第1例の計算処理では、第1撮影部14が金型12に対して所定の位置に高い精度で配置されていることが前提条件となる。この前提条件が満たされていることで、基準点pr1は金型12との相対位置が高い精度で定められた位置となる。
【0028】
差分計算部412は、さらに、撮影画像W1に座標(x1、y1)を設定する。座標(x1、y1)は、任意に設定可能であるが、例えば、撮影画像W1の縦軸と横軸を2つの座標軸とする座標を適用できる。
【0029】
そして、差分計算部412は、図4(A)に示すように、検出された画像中のマークm1、m2の位置と基準点pr1との差を(x1、y1)座標を用いて表わし、差分情報(a1、b1)、(a2、b2)を得る。
【0030】
第1例の基準点pr1を採用した場合、第1撮影部14の撮影画像W1は、後述の第2例及び第3例よりも小さい面積に抑えることができる。このため、第1例から第3例において第1撮影部14の画素数が同じであれば、第1例では高い分解能でマークm1、m2の画像を得ることができる。したがって、第1例では、基準点pr1とマークm1、m2の位置との差分情報をより高い分解能で表わすことができるという利点がある。
【0031】
第2例の計算処理では、図4(B)に示すように、差分計算部412は、金型12の特徴点(例えば特定の角部など)を基準点pr2として設定する。基準点pr2は、金型12自体の所定点なので、必然的に金型12との相対位置が定まった位置となる。差分計算部412は、さらに、撮影画像W2に任意の直交座標(x2、y2)を設定する。座標(x2、y2)としては、例えば、撮影画像W2の縦軸と横軸を2つの座標軸とする座標を適用できる。そして、差分計算部412は、検出された画像中のマークm1、m2の位置と基準点pr2との差を(x2、y2)座標を用いて表わし、差分情報(c1-c0、d1-d0)、(c2-c0、d2-d0)を得る。
【0032】
第2例の基準点pr2を採用した場合、第1撮影部14は、金型12上の基準点pr2と加工対象物Hのマークm1、m2とを含む広い範囲を撮影する必要がある。しかし、第2例では、第1例と異なり、第1撮影部14と金型12との相対配置に高い位置精度が要求されないという利点がある。
【0033】
第3例の計算処理では、図4(C)に示すように、差分計算部412は、所定の参照マーク15a(その中心等)を基準点pr3として設定する。参照マーク15aは、例えば、任意の部材15に設けられ、第1撮影部14の撮影時に、高い精度で金型12との相対位置が予め定められた位置に来るようにされる。あるいは、参照マーク15aは、金型12自体に設けられていてもよい。差分計算部412は、さらに、撮影画像W3に任意の直交座標(x3、y3)を設定する。座標(x3、y3)としては、例えば、撮影画像W3の縦軸と横軸を2つの座標軸とする座標を適用できる。そして、差分計算部412は、検出された画像中のマークm1、m2の位置と基準点pr3との差を(x3、y3)座標を用いて表わし、差分情報(e1-e0、f1-f0)、(e2-e0、f2-f0)を得る。
【0034】
上記の第1例から第3例の計算処理のいずれかにより、差分情報が求められたら、続いて、差分計算部412は、これを記憶部42に記憶させる(ステップS5)。
【0035】
次に、加工システム1では、図5に示すように、搬送装置18が、加工対象物Hを金型12から加工台21まで搬送する(ステップS6:本発明に係る搬送ステップの一例に相当)。図5は、この搬送処理を説明する図である。ライン生産により加工台21上に移動される個々の加工対象物Hは、その都度、位置及び向きに差異が生じる。
【0036】
加工台21に加工対象物Hが移されたら、次に、制御部40は、第2撮影部27を用いて加工対象物Hを撮影し、第2マーク検出処理部413が、画像認識を行って撮影画像からマークm1、m2を識別する(ステップS7)。ステップS7は、本発明に係る第2検出ステップの一例に相当する。
【0037】
図6及び図7は、図2のステップS8で実行される加工座標の構築処理の第1部と第2部を説明する図である。
【0038】
ユーザは、便宜上、加工ロボット24の加工位置を表わし易いように、加工対象物Hに対して加工座標を設定し、加工対象物Hの加工位置を加工座標上の値を用いて表わす。これにより、加工対象物Hの向き又は位置が変化しても、加工座標が加工対象物Hに追従して同様に向き及び位置を変化させることで、加工位置を示すデータ値を変換する必要なく、加工位置を特定することができる。加工対象物Hと加工座標との関係を示す情報(すなわち、加工座標中のどこに加工対象物Hが配置されているかの情報)は、制御部40に予め登録され、ユーザが指定する加工位置の情報は、加工座標により表わされたデータとして記憶されている。一方、第2撮影部27により得られた加工台21上の撮影画像W11からは、加工対象物Hの位置及び向きが一定とは限らないため、そのままでは、加工座標は不明である。
【0039】
このため、ステップS7でマークm1、m2が識別されたら、続いて、加工位置特定部414は、加工台21上の撮影画像W11(図7の右欄を参照)に加工座標(X、Y)を構築する(ステップS8)。加工位置特定部414は、マークm1、m2の位置と、記憶部42に記憶された差分情報とに基づいて、加工座標(X、Y)を、次のように構築する。以下では、ステップS4で第1例の計算処理が採用された場合について説明するが、第2例又は第3例の計算方法が採用された場合にも同様の処理で加工座標(X、Y)を構築できる。
【0040】
図6に示すように、先ず、加工位置特定部414は、ステップS4の撮影画像W1におけるマークm1、m2間の線分L1の画像上の長さと、加工台21上の撮影画像W11におけるマークm1、m2間の線分L1bの画像上の長さと、を比較する。撮影画像W1における線分L1の長さは、マークm1の差分情報(a1、b1)とマークm2の差分情報(a2、b2)とから計算できる。そして、加工位置特定部414は、上記の画像上の線分L1、L1bの長さの比較により、2つの撮影画像W11、W1の間の縮尺の比Rを求める。縮尺の比Rは、仮に撮影画像W1の横軸x1及び縦軸y1を加工対象物Hと同様に撮影画像W11上に移したときの、撮影画像W11上での横軸x1及び縦軸y1の長さの拡縮率に等しい。
【0041】
次に、加工位置特定部414は、図6に示すように、ステップS4の撮影画像W1におけるマークm1、m2間の線分L1の画像上の角度θ1と、撮影画像W11におけるマークm1、m2間の線分L1bの画像上の角度θ2と、を比較する。撮影画像W1における画像上の角度θ1は、マークm1の差分情報(a1、b1)とマークm2の差分情報(a2、b2)とから計算できる。そして、加工位置特定部414は、上記の角度θ1、θ2の比較により、2つの撮影画像W11、W1における線分L1、L1bの角度の差φを求める。角度差φは、仮に撮影画像W1の横軸x1と縦軸y1を加工対象物Hと同様に撮影画像W11上に移したときの、撮影画像W11の横軸x1b及び縦軸y1bを基準とする、横軸x1及び縦軸y1の回転角φに等しい。また、角度差φは、2つの撮影画像W11、W1における加工対象物Hの配置角度の差に等しい。
【0042】
なお、上記の説明では、2つのマークm1、m2を用いて、撮影画像W1、W11間の縮尺の比Rと角度差φとを求める例を示した。しかし、1つのマークが大きさ及び向きを識別できる構成であれば、加工位置特定部414は、1つのマークを用いて撮影画像W1、W11上の各大きさ及び各向きを認識し、これらを比較して、縮尺の比Rと角度差φとを求めればよい。
【0043】
図7に示すように、続いて、加工位置特定部414は、金型12に対して相対位置が決められた基準点pr1に対応する撮影画像W11上の位置pr1bを求める。具体的には、位置pr1bは、撮影画像W1上に示される基準点pr1を、仮に、加工対象物Hと同様に撮影画像W11上に移したときの位置に相当する。図7の左欄に示すように、先ず、加工位置特定部414は、記憶部42に記憶された差分情報(a1、b1)、(a2、b2)に基づき、撮影画像W1におけるマークm1、m2から基準点pr1をそれぞれ指し示すベクトルv1、v2を計算する。次に、加工位置特定部414は、ベクトルv1、v2を、縮尺の比Rと角度差φとを適用して、撮影画像W11上のベクトルv1b、v2bに変換する。そして、加工位置特定部414は、撮影画像W11のマークm1、m2の位置からベクトルv1b、v2bにより指し示される位置を、基準点pr1に対応する位置pr1bとして求める。
【0044】
続いて、加工座標(X、Y)の原点P0の求め方を説明する。前述した加工座標は、上記したように、加工対象物Hに対して配置関係が予め定められている。同様に、金型12上の撮影画像W1に示された基準点pr1は、加工対象物Hが厳密な位置で保持された金型12に対して相対位置が固定されている。よって、基準点pr1と加工座標の原点とは予め定められた配置関係にある。加工座標を金型12上の撮影画像W1の座標軸x1、y1上に表わしたのが、図7の左欄に示す加工座標(x0、y0)である。加工座標(x0、y0)の原点を加工座標原点pr0と記す。この例では、加工座標(x0、y0)の第1象限に加工対象物Hが配置されるように加工座標(x0、y0)が設定されているが、加工座標(x0、y0)の設定は任意である。
【0045】
さらに、加工座標と加工対象物Hとの配置関係を示すデータと、加工対象物Hと基準点pr1との相対位置を示すデータとは、予め制御部40に登録されている。そこで、加工位置特定部414は、これらのデータを用いて、撮影画像W1の座標(x1、y1)上における基準点pr1と加工座標の原点pr0とを結ぶベクトルv3(図7の左欄を参照)を求める。次いで、加工位置特定部414は、ベクトルv3を縮尺の比Rと回転角φとを適用して、撮影画像W11上でのベクトルv3bに変換し、撮影画像W11上の基準点に相当する位置pr1bからベクトルv3bだけ変位した位置を、加工座標原点P0として求める。
【0046】
次に、加工座標軸X、Yの求め方を説明する。前述したように、加工座標は、加工対象物Hに対して配置関係が予め固定されている一方、撮影画像W1の座標軸x1、y1(図7の左欄を参照)は、金型12に対して予め定められた配置関係にある。また、座標軸x1、y1の目盛の大きさと被写体(金型12等)の実際の長さとの関係も予め定められた関係にある。よって、座標軸x1、y1と加工座標軸x0、y0との角度差は予め定められた値となり、座標軸x1、y1の目盛の大きさと座標軸x0、y0の目盛の大きさとの比も予め定められた比となる。したがって、加工位置特定部414は、加工座標と加工対象物Hとの配置関係を示すデータと、撮影画像W1の座標軸x1、y1とに基づいて、撮影画像W1の座標(x1、y1)上における加工座標軸x0、y0を求める。そして、加工位置特定部414は、これらに、縮尺の比Rと回転角φとを適用して変換することで、撮影画像W11上での加工座標軸X、Yを求める。このような一連の計算によって、加工位置特定部414は、撮影画像W11上に加工座標(X、Y)を構築することができる。
【0047】
なお、上記の説明では、金型12上で撮影された撮影画像W1の座標軸x1、y1と金型12との配置関係、並びに、座標軸x1、y1の目盛の大きさと被写体の実際の長さとの関係が、予め定められているという前提条件を示した。そして、この前提条件に基づいて、加工座標軸X、Yの角度と目盛の大きさとが求められた。しかし、第1撮影部14の配置が可変であるなど、撮影画像W1の座標軸x1、y1と金型12との配置関係、並びに、座標軸x1、y1の目盛の大きさと被写体の実際の長さとの関係が可変になる場合もある。このような場合には、金型12との相対位置が固定となる基準点を、基準点pr1の1点ではなく、複数点用意し、複数の基準点間の線分の長さ及び角度を基準にして、同様に計算することで、加工座標軸X、Yの角度と目盛の大きさとを決定することができる。あるいは、基準点pr1に向きと長さが分かる指標を設けておき、この指標の向きと長さを基準にして同様に計算することで、加工座標軸X、Yの角度と目盛の大きさとを決定してもよい。
【0048】
図8は、図2のステップS9で実行される加工位置特定処理を説明する図である。加工座標(X,Y)が構築されたら、続いて、加工位置特定部414は、加工台21上の加工対象物Hに対して加工位置C1~C3を特定する(ステップS9)。ユーザが指定した加工位置のデータ値(A1、B1)、(A2、B2)、(A3、B3)は、加工座標(X、Y)で示した値である。したがって、加工位置特定部414は、ステップS9において、図8(A)に示すように、加工座標(X、Y)上の点(A1、B1)、(A2、B2)、(A3、B3)を加工位置C1~C3として特定する。
【0049】
ライン生産では、複数の加工対象物Hが、順次処理にかけられる。本実施形態では、図8(A)と図8(B)に示すように、順次処理にかけられる複数の加工対象物Hに対して異なる位置にマークm1、m2が貼付されていてもよい。このような場合でも、上述した方法により、毎回、高い位置精度で加工対象物Hとの配置関係が固定された加工座標(X、Y)が構築される。なぜならば、図7に示したように、マークm1、m2は、金型12に対して高い位置精度で定められた基準点pr1を、撮影画像W11上の位置pr1bに変換する際に使用されるからである。そして、変換された位置pr1bは加工対象物Hとの配置関係が高い位置精度で定められた位置になり、位置pr1bに基づいて加工座標(X、Y)が構築されるからである。したがって、図8(A)、図8(B)に示すように、マークm1、m2の位置精度に拘らず、順次処理にかけられる複数の加工対象物Hに対して、加工位置特定部414は、高い位置精度で加工位置C1~C3を特定していくことができる。
【0050】
図9は、図2のステップS10で実行される加工処理を説明する図である。加工位置が特定されたら、図9に示すように、制御部40は、第2撮影部27の撮影画像上に特定された加工位置C1~C3を頼りに、加工ロボット24の多関節アーム24aを駆動制御し、加工ヘッド24bを加工位置C1~C3に合わせる。そして、制御部40は、加工ロボット24に加工処理を実行させる(ステップS10:本発明に係る加工ステップの一例に相当)。これにより、加工位置C1~C3に加工処理が施される。
【0051】
加工工程が完了したら、ロボットを用いてあるいは手動により、加工対象物Hからマークm1、m2を回収し(ステップS11)、1サイクルの部品製造工程が終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態の加工システム1及びその制御装置によれば、金型12に保持された加工対象物H上のマークm1、m2を検出する第1撮影部14及び第1マーク検出処理部411を備える。さらに、加工システム1及びその制御装置は、第1マーク検出処理部411が検出したマークm1、m2との位置と、金型12との相対位置が定められた基準点pr1との差を示す差分情報を求める差分計算部412を備える。したがって、加工対象物Hが金型12から外されて、位置又は向きが変わっても、その後、制御部40が、マークm1、m2を検出することで、これらの位置と上記の差分情報とから、基準点pr1に対応する位置pr1bを特定することができる。ここで、マークm1、m2が設けられる位置にバラツキがあっても、基準点pr1及び位置pr1bは加工対象物Hに対して予め定められた位置を高い位置精度で表わす。そして、制御部40は、位置pr1bに基づいて加工対象物Hの加工位置を高い精度で特定することで、高い位置精度の加工処理を実現できる。要約すれば、マークm1、m2を設ける位置に高い位置精度が要求されずに、マークm1、m2に基づいて加工対象物Hの加工位置を高い精度で特定することができる。このような効果は、加工対象物Hにマークm1、m2を設ける処理が煩雑な作業となる場合に、特に有効である。
【0053】
さらに、本実施形態の加工システム1及びその制御装置によれば、加工ロボット24の加工処理の際にマークm1、m2を検出する第2撮影部27及び第2マーク検出処理部413を備える。さらに、加工システム1及びその制御装置は、マークm1、m2の位置と差分情報とから加工位置を特定する加工位置特定部414を備える。そして、これらが、マークm1、m2の検出と、加工位置の特定とを行うことで、加工ロボット24は、高い位置精度で加工対象物Hに加工を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態の加工システム1及びその制御装置によれば、差分情報の計算処理として図4(A)の第1例が採用された場合、金型12に対して相対位置が定められた基準点pr1として、第1撮影部14の撮影画像上の所定点が適用される。ただし、第1撮影部14と金型12との相対位置が高い位置精度で定められている必要がある。このような構成によれば、第1撮影部14は、マークm1、m2が設けられる予定の狭い範囲を撮影すれば済み、その分、マークm1、m2の画像の解像度が向上する。したがって、基準点pr1とマークm1、m2との位置の差を示す差分情報を高い分解能で求めることができる。
【0055】
また、本実施形態の加工システム1及びその制御装置によれば、差分情報の計算処理として図4(B)の第2例が採用された場合、金型12に対して相対位置が定められた基準点pr2として、金型12の特徴点(角部)が適用される。このような構成によれば、第1撮影部14は、金型12の特徴点と、マークm1、m2とを含む、広い範囲を撮影する必要が生じるが、第1撮影部14の配置精度に高い要求が生じないという効果が得られる。
【0056】
また、本実施形態の加工システム1及びその制御装置によれば、差分情報の計算処理として図4(C)の第3例が採用された場合、金型12に対して相対位置が定められた基準点pr3として、任意の部材15に設けられた参照マーク15aが適用される。あるいは、基準点pr3として、金型12に設けられた参照マーク15aが適用される。この構成によれば、基準点を設ける位置の自由度が増し、また、参照マーク15aの模様及び明度等の最適化を行い易く、基準点を明確に検出できるという効果が得られる。また、任意の部材15に参照マーク15aを設ける場合には、プレス成形処理の際に、部材15の配置を変えることができる。これにより、参照マーク15aと第1撮影部14とを金型12から離して配置することができ、基準点を設ける構成と、プレス成形処理との干渉を防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態の加工システム1によれば、さらに、金型12、プレス装置11、搬送装置18及び加工ロボット24を備える。そして、本実施形態の加工方法によれば、搬送装置18により加工台21に移動された加工対象物Hに対して、上述のように加工位置を特定し、特定された加工位置に加工ロボット24が加工処理を施す。したがって、プレス成形から加工ロボット24の加工処理までを高い位置精度で連続的に実施できるという効果が得られる。さらに、加工対象物Hが金型12に嵌っている状態では、加工対象物H上に確保できる空間が狭くなるため、マークm1、m2を高い位置精度で設けることが困難となる。しかし、本実施形態の加工システム1によれば、マークm1、m2に高い位置精度が要求されないので、このような環境でも、マークm1、m2の貼付処理を簡易に行うことができる。
【0058】
<部品製造工程の第2例>
図10は、加工システムによって実施される部品製造工程の第2例を示すフローチャートである。
【0059】
第2例の部品製造工程では、図1のマーク貼付ロボット16は不要となる。第2例の部品製造工程では、先ず、プレス成形前の加工対象物に、マークm1、m2となる顔料を設ける(ステップS21:本発明に係る「マークを設けるステップ」の一例に相当)。加工対象物への顔料の貼付は、金型12及びプレス装置11から離れた比較的に広い空間で行うことができる。このため、この処理は、装置が行っても良いし、手動により行っても良い。
【0060】
顔料が設けられたら、次に、加工対象物が金型12に搬送され(ステップS22)、プレス装置11が駆動して加工対象物をプレス成形する(ステップS23:本発明に係る成形ステップの一例に相当)。プレス成形により、加工対象物の形状が変化し、顔料が貼付された位置も流動するが、加工対象物の表面には顔料により識別可能なマークm1、m2が残る。
【0061】
続くステップS24~S31の処理は、第1例の部品製造工程で説明したステップS3~S10の処理と同様である。そして、ステップS31の加工処理の後、1サイクルの部品製造工程が終了する。
【0062】
以上のように、この実施形態の加工方法によれば、プレス成形処理から溶接等の加工処理まで連続的に実施することができる。このような連続的な処理の際には、加工対象物の温度管理の面あるいは製造サイクルの短縮化の面などから、連続的な処理の間に、加工対象物にマークm1、m2を貼付する処理を挿むことが困難になる場合がある。しかしながら、この実施形態の加工方法では、プレス加工の前に加工対象物にマークとなる顔料を設けておくことができるので、マークを設ける処理が、連続的な加工処理に干渉しないという効果が得られる。さらに、プレス加工では、加工対象物が変形することで、マークm1、m2の位置は、顔料を設けた位置から流動してばらつくことになる。しかしながら、本実施形態では、マークm1、m2の位置に高い位置精度が要求されずに、マークm1、m2に基づいて加工対象物Hの加工位置を高い精度で特定することができる。よって、顔料の位置が流動してマークm1、m2の位置がばらつくという現象が、問題にならないという効果が得られる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、本発明に係る保持部として、金型12を一例として示したが、本発明の保持部は、加工対象物を高い位置精度で保持する構成であれば、どのような構成が採用されてもよい。例えば、エアシリンダ等により加工対象物を所定の位置で所定の向きに把持してベルト上を搬送するベルトコンベアがある場合には、このエアシリンダの把持部を、本発明の保持部として適用してもよい。また、上記実施形態では、第2撮影部27の撮影画像W11上において、マークm1、m2の位置と差分情報とに基づいて、先ず、加工座標(X、Y)を構築して、加工位置を特定する方法を示したが、加工座標の構築は省略してもよい。例えば、金型12上の撮影画像W1の座標(x1、y1)で加工位置が指定されれば、撮影画像W1上に指定された加工位置を、図7に示した変換処理で、直接に撮影画像W11上に移すことで、加工位置を特定することができる。
【0064】
また、上記の実施形態では、搬送処理の際、ほぼ二次元方向に加工対象物Hの位置及び向きが変化することを想定した例を示した。しかし、加工対象物Hの位置及び向きが三次元方向に変化するような場合でも、本発明は有用に適用可能である。三次元方向に変化する場合には、例えば、第1撮影部及び第2撮影部を、複数の視点から加工対象物Hを撮影する構成とし、これらの撮影画像から、第1マーク検出処理部411及び第2マーク検出処理部413が、加工対象物Hを立体的に認識するように構成すればよい。さらに、第1マーク検出処理部411及び第2マーク検出処理部413が、三次元位置としてマークの位置を検出するように構成すればよい。加えて、マークの数を3次元方向に分散配置された3点以上設け、基準点の数を3次元方向に分散配置された3点以上設けることで、マークの位置と基準点との差分情報により、加工対象物上に立体的に指定された加工位置を特定することが可能となる。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 加工システム
11 プレス装置
12 金型(保持部)
14 第1撮影部
18 搬送装置
21 加工台
24 加工ロボット
27 第2撮影部
40 制御部
42 記憶部
411 第1マーク検出処理部
412 差分計算部
413 第2マーク検出処理部
414 加工位置特定部
pr1、pr2、pr3 基準点
m1、m2 マーク
C1~C3 加工位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10