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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】撹拌器具
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/80 20220101AFI20240119BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20240119BHJP
   B01F 27/906 20220101ALI20240119BHJP
   B01F 35/00 20220101ALI20240119BHJP
【FI】
B01F27/80
B01F27/90
B01F27/906
B01F35/00
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018232324
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2019104008
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】10 2017 129 836.3
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516384564
【氏名又は名称】エカート リューア- ウント ミッシュテヒニク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EKATO Ruehr- und Mischtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ニーンハウス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュタンギール
(72)【発明者】
【氏名】トルステン グレーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ラスト
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ローン
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0261643(US,A1)
【文献】特開2008-012452(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02893517(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03031519(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/052955(WO,A1)
【文献】スイス国特許発明第00406149(CH,A)
【文献】特開平10-265226(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第20307458(DE,A1)
【文献】独国実用新案第202006007423(DE,U1)
【文献】中国特許出願公開第101757866(CN,A)
【文献】特開2009-220083(JP,A)
【文献】特開2010-058027(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082391(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3206061(JP,U)
【文献】米国特許第04681711(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に配置される攪拌器具(10)であって、
少なくとも1つの撹拌シャフト(12)と、
少なくとも1つの動作状態において、前記容器内で流れを発生させるための少なくとも1つの移送ユニット(20)であって、前記撹拌シャフト(12)上に保持されている少なくとも1つの内側撹拌翼(16)と、長尺状の部分(18)を有している少なくとも1つの外側撹拌翼(14)と、長尺状の部分(92)を有している少なくとも1つの別の外側撹拌翼(40)と、を備えている少なくとも1つの移送ユニット(20)と、
前記外側撹拌翼(14)および前記別の外側撹拌翼(40)を前記撹拌シャフト(12)に接続するための第1のバー(52)および第2のバー(54)であって、前記撹拌シャフト(12)の軸方向において互いに異なる位置に配置されている第1のバー(52)および第2のバー(54)と、を備えており、
前記第1のバー(52)および第2のバー(54)の各々は、前記撹拌シャフト(12)に対して交差するように延びるとともに、前記撹拌シャフト(12)に対して互いに反対側に位置する両端部を有しており、
前記外側撹拌翼(14)は、前記第1のバー(52)の一方の端部に接続されるとともに、前記撹拌シャフト(12)に対して斜めに延びて前記第2のバー(54)の一方の端部に接続されており、
前記別の外側撹拌翼(40)は、前記第1のバー(52)の他方の端部に接続されるとともに、前記撹拌シャフト(12)に対して斜めに延びて前記第2のバー(54)の他方の端部に接続されており、
前記撹拌シャフト(12)と、前記バー(52,54)が延びる方向とに対して直交する方向に見て、前記外側撹拌翼(14)と前記別の外側撹拌翼(40)とが前記撹拌シャフト(12)を挟んでX字形の輪郭を形成しており、
前記撹拌シャフト(12)が攪拌器具(10)の軸線(60)を中心に回転することで、前記移送ユニット(20)が回転して、軸線(60)に対して平行な少なくとも1つの方向と、軸線(60)に対して直交する少なくとも1つの別の方向と、に容器内の媒体を移送する、撹拌器具(10)。
【請求項2】
前記外側撹拌翼(14)が、前記部分(18)に隣接している少なくとも1つの別の部分(22)を有しており、該別の部分(22)が前記部分(18)よりも幅広となるように外側撹拌翼(14)が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌器具(10)。
【請求項3】
前記内側撹拌翼(16)の少なくとも大部分が内側撹拌翼平面(24)内に位置しているとともに、板状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の撹拌器具(10)。
【請求項4】
前記外側撹拌翼(14)の少なくとも大部分が外側撹拌翼平面(26)内に位置していることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項5】
記移送ユニット(20)が、前記外側撹拌翼(14)と内側撹拌翼(16)との間に位置する少なくとも1つの通路間隙(28)を有していることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項6】
前記通路間隙(28)の少なくとも1つの範囲(30)が設定可能であることを特徴とする、請求項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項7】
前記内側撹拌翼(16)が少なくとも1つの内側撹拌翼法線(32)を有しており、前記外側撹拌翼(14)が少なくとも1つの外側撹拌翼法線(34)を有しており、前記内側撹拌翼法線(32)と外側撹拌翼法線(34)とが形成している最小法線角度(36)が0°より大きく90°以下であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項8】
前記最小法線角度(36)が設定可能であることを特徴とする、請求項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項9】
前記内側撹拌翼(16)が、前記外側撹拌翼(14)に対して様々な角度位置において撹拌シャフト(12)に固定可能であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項10】
少なくとも1つの下側撹拌翼(38)を備えており、前記撹拌シャフト(12)に沿う方向から見て、前記下側撹拌翼(38)が外側撹拌翼(14)および内側撹拌翼(16)の少なくともいずれか一方の下方に位置していることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項11】
前記下側撹拌翼(38)が、外側撹拌翼(14)に対して様々な角度位置において撹拌シャフト(12)に固定可能であることを特徴とする、請求項10に記載の撹拌器具(10)。
【請求項12】
少なくとも前記撹拌シャフト(12)に対して直交する方向から見て、前記外側撹拌翼(14)と別の外側撹拌翼(40)とが、湾曲状の閉じられた外側輪郭(42)を形成していることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項13】
少なくとも前記撹拌シャフト(12)に対して直交する方向から見て、前記外側撹拌翼(14)と別の外側撹拌翼(40)とが、非楕円状の穴(44)を有している楕円(84)を形成していることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の撹拌器具(10)を少なくとも1つ備えている撹拌機(46)。
【請求項15】
少なくとも1つの容器(80)を備えており、かつ、該容器(80)内に配置されている請求項14に記載の撹拌機(46)を少なくとも1つ備えている撹拌システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌器具に関し、詳細には、請求項1に記載の、槽壁に対して非近接型の撹拌器具に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも局所的に放射流を発生させる格子状および/またはブレード状の撹拌翼を有する近接型(close-clearance)の撹拌器具が既に知られている。上部領域が開放された形状を有している場合、撹拌機の中心の方向への媒体の逆流によって軸流が生じる。また、特に高粘度の媒体に適している、らせん型およびアンカー型に類似した近接型の撹拌機も多数知られている。
【0003】
特許文献1には、らせん状の撹拌翼と、底部近傍の撹拌翼とを備えた近接型の撹拌機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5736127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された撹拌特性を有している汎用装置を提供することである。この目的は請求項1および2に記載の特徴により本発明によって達成されるが、本発明の好適な設計実施形態および改良例は従属請求項から導き出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、撹拌器具に関し、具体的には槽壁に対して非近接型(non-close-clearance)である撹拌器具に関する。撹拌器具は、好適には重合処理において低粘度から中粘度の媒体の混合に使用される。撹拌器具は、少なくとも1つの撹拌シャフトと、撹拌シャフト上に保持されている少なくとも1つの外側撹拌翼とを備えている。外側撹拌翼の少なくとも1つの部分はアーム状に構成されている。
【0007】
本発明の一態様において、撹拌器具は、少なくとも1つのベーン式移送ユニットを外側撹拌翼と構成している少なくとも1つの内側撹拌翼を備えている。ベーン式移送ユニットは、撹拌シャフトに対して平行な少なくとも1つの方向と、具体的には撹拌シャフトに対して直交する(perpendicular)少なくとも1つの別の方向とに媒体を移送するように少なくとも構成されている。
【0008】
単独または本発明の他の態様と組み合わせて実施可能である本発明の別の態様において、外側撹拌翼は、部分に隣接している少なくとも1つの別の部分を有しており、別の部分が部分よりも幅広となるように外側撹拌翼の少なくとも大部分が構成されている。
【0009】
上記の構成によって、撹拌特性が向上するとともに、撹拌器具の少なくとも1つの動作状態において、媒体の混合が向上する。また、混合時間を短縮できる。さらに、粘度によって混合時間が異なることが抑制される。媒体中の固形分の懸濁や、媒体の乳化や分散等を好適に生じさせることができる。また、懸濁、乳化および/または分散を、所望する状態に制御できる。撹拌シャフトに対して平行な方向および直交する方向への媒体の流動を、良好に達成することができる。直交する方向に動く流れの割合を、好適に操作できる。また、軸方向および/または径方向の撹拌器具として動作可能な、汎用性の高い撹拌器具を提供できる。さらに、媒体と、加熱要素および/または冷却要素との間の熱交換性を向上させることができる。
【0010】
「撹拌器具」は、具体的には、低粘度から中粘度の媒体用の、ミキサーおよび/または撹拌システム等の撹拌機の機能的構成要素、具体的には構造的および/または機能的な構成要素を指す。撹拌器具は、撹拌装置全体を含んでいてもよい。撹拌器具は、撹拌機の構成要素として構成されてもよいし、撹拌機として構成されてもよい。撹拌器具は、好適には、撹拌時および/または混合時に回転軸線を中心に回転するように構成されている。撹拌器具の撹拌シャフトに沿う方向から見て、撹拌器具は、一点を基準として対称であり、具体的には、撹拌シャフトの長手方向を基準として対称である。撹拌シャフトは組み付け状態において鉛直方向と平行に延び、好適には、撹拌装置が通常動作状態にあるときに重力の加わる方向に延びている。好適には、鉛直方向は硬い表面に対して垂直に延びる。
【0011】
構造要素が「アーム状に構成されている」とは、その構造要素が長尺状であり、構造要素の長手方向に延びる範囲が湾曲または傾斜しており、構造要素の長手方向範囲は、長手方向に対して少なくとも実質的に直交する幅方向範囲の少なくとも2倍以上の大きさであることを意味している。
【0012】
本明細書において、「非近接型の撹拌器具」とは、撹拌器具の最大径と、撹拌器具とともに用いられる容器の内径との比率が1.05よりも大きい撹拌器具を意味する。
「低粘度から中粘度の媒体」とは、参照温度20℃における動的粘度が参照値50Pa・s未満である媒体を意味する。
【0013】
「移送ユニット」は、少なくとも1つの動作状態において、少なくとも1つの方向に流体および/または固体等の媒体を移送、移動および/または混合する機械的ユニットを指す。移送ユニットは、少なくとも1つの動作状態において、容器内等で流れを発生させることができる。本明細書における「ベーン式移送ユニット」は、複数の閉じられた個別の領域からなる表面を有する移送ユニットを意味する。これらの閉じられた領域は、互いに角度をなして配置されて、部分的に容積を画定している。この表面は、少なくとも1つの開口および/または間隙を有している。
【0014】
本明細書における「少なくとも大部分」という用語は、少なくとも55%、好適には少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、特に好適には少なくとも95%を意味する。外側撹拌翼の平均幅は、少なくとも撹拌シャフトに沿う方向から見て、好適には撹拌器具の最大径の25%より大きく、特に好適には40%より大きく、50%より小さい。平均幅は、動作可能な組み立て完了状態の撹拌器具が少なくとも1つの機能を実行できる少なくとも1つの動作位置にあるときに、外側撹拌翼のうちで撹拌軸線に対して直交して延びる部分の最大平均寸法である。少なくとも1つの動作位置において、別の部分は、撹拌器具の下側領域に配置されている。好適には、別の部分の平均幅は、部分の平均幅の少なくとも2倍以上である。
【0015】
また、内側撹拌翼は、外側撹拌翼の別の部分とショベル式移送ユニットを構成していてもよい。内側撹拌翼および別の部分は、互いに傾斜して配置され、媒体にエネルギーを入力するための移送ユニットの係合面を形成している。これによって、エネルギー入力が最適化され、媒体の混合が好適に行われる。さらに、ベーン式移送ユニットの構造の設計を単純化することが可能となっている。
【0016】
内側撹拌翼の少なくとも大部分、具体的にはその全体が、内側撹拌翼平面内に位置しているとともに、板状に形成されていてもよい。内側撹拌翼平面は、撹拌シャフトの回転軸線と少なくとも実質的に平行になるように配置することができる。回転軸線は、内側撹拌翼平面内に位置している。上記の「少なくとも実質的に」は、所定の値からの偏差が例えば25%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満である場合を意味する。好適には、内側撹拌翼の平均幅と、内側撹拌翼の平均高さとの間の差は、百分率で50%未満である。内側撹拌翼は、好適には外側撹拌翼から独立して構成されている。内側撹拌翼および/または外側撹拌翼は、板状の加工対象物に対して切断または打ち抜き加工を行い、次いで、機械加工によって内側撹拌翼および/または外側撹拌翼を研磨して、例えば縁部に丸みをつけることによって形成される。その結果、製造工程におけるコストおよび/または時間が短縮される。好適には、撹拌器具は、内側撹拌翼に一体的に接続されている内側撹拌翼ハブを有している。「一体的に」は、少なくとも実質的に一体化されるように接続されることを意味し、例えば、溶接工程、接着剤による接合工程、射出成形工程および/または当業者に周知の任意の工程によって一体的に接続されることを意味する。また、一回の鋳造からの製造や、単一成分または多成分の射出成形による製造や、単一の素材を用いた製造等によって、一体成型物として形成されてもよい。外側撹拌翼ハブは、撹拌シャフトに対して実質的に一体的に固定してもよく、好適には、形状嵌合および/または圧入によって固定される。外側撹拌翼ハブおよび/または内側撹拌翼ハブの少なくとも大部分、具体的にはその全体は、鋼および/またはステンレス鋼や、アルミニウムおよび/またはチタン等の金属や合金等の任意の金属から形成できる。しかしながら、外側撹拌翼ハブおよび/または内側撹拌翼ハブを少なくとも部分的にプラスチック材料から形成してもよい。上記の構成によって、信頼性が高く、堅牢な構造を達成できる。
【0017】
組み立てられた状態の内側撹拌翼平面の法線は、内側撹拌翼が好適には放射流成分をもたらすように撹拌器具の回転軸線に対して直交するように配置される。内側撹拌翼は、台形の内側撹拌翼外側輪郭を有し、少なくとも撹拌シャフトに対して直交する方向に見て、内側撹拌翼の下縁が上縁よりも広いことが好ましい。好適には、下縁と上縁とは互いに平行であり、撹拌シャフトに対して直交するように配置されている。内側撹拌翼外側輪郭は、少なくとも1つの直角な内側撹拌翼角度と、少なくとも1つの鋭角の内側撹拌翼角度とを有している。内側撹拌翼は、好適には一体に形成されている。「一体に」は、例えば一体成型物として形成されていることを意味する。一体成型物は、単一の素材、成分および/または鋳物から、特に好ましくは射出成形法、具体的には単一成分および/または多成分の射出成形法によって製造されることが好ましい。もしくは、内側撹拌翼を分割された状態に形成してもよい。つまり、内側撹拌翼を複数のセグメントから構成してもよく、複数のセグメントは、少なくとも1つの組み付け状態において複数のセグメントが内側撹拌翼を構成するように、セグメントハブによって撹拌シャフトに対して固定されていてもよい。その結果、費用対効果の大きい製造および/または簡単な整備が可能となる。さらに、組み付けを簡単かつ柔軟に達成できる。また、放射流成分を好適に発生させることが可能となる。
【0018】
本発明の好適な一実施形態において、外側撹拌翼の少なくとも大部分、具体的にはその全体が外側撹拌翼平面内に位置している。外側撹拌翼は、好ましくは一体に形成される。または、外側撹拌翼を分割された状態に形成してもよく、これによって組み付けがさらに容易になる。外側撹拌翼平面は、撹拌シャフトに対して傾斜して配置されており、その結果、外側撹拌翼平面と、撹拌シャフトに対して直交する直線との間に最小ピッチ角度が形成される。好適には、ピッチ角度は、少なくとも1つの鋭角の内側撹拌翼角度と少なくとも実質的に等しい。ピッチ角度は、0°より大きく90°より小さい。ピッチ角度は好適には50°~70°である。より好適には、ピッチ角度は60°である。具体的には、外側撹拌翼平面と内側撹拌翼平面とは直角を形成している。外側撹拌翼および内側撹拌翼は、少なくとも1つの動作状態において撹拌軸線を中心に一回転するときに、撹拌シャフトに沿う方向から見て最大の円をそれぞれ描き、これらの円は同心であるとともに、互いに大きさの異なる半径を有している。撹拌器具は、好適には少なくとも1つの外側撹拌翼ハブを有している。外側撹拌翼ハブは、撹拌シャフトに対して実質的に一体的に固定してもよく、好適には、形状嵌合および/または圧入によって固定される。その結果、費用対効果の大きく、かつ方法技術面に関して柔軟性の高い製造の実施や、外側撹拌翼の整備の簡素化が可能となる。
【0019】
撹拌器具、具体的には内側撹拌翼および/または外側撹拌翼の少なくとも大部分、具体的にはその全体は、鋼および/またはステンレス鋼や、アルミニウムおよび/またはチタン等の金属や合金等の任意の金属から形成できる。しかしながら、撹拌器具を少なくとも部分的にプラスチック材料から形成してもよい。また、撹拌器具の個々の構成要素を互いに異なる材料から形成してもよい。
【0020】
ベーン式移送ユニットは、少なくとも1つの通路間隙を有していてもよい。通路間隙は、外側撹拌翼と内側撹拌翼との間に位置し、好適には、通路間隙は互いに対向する2つの平行な境界を有するように、外側撹拌翼と内側撹拌翼とによって少なくとも部分的に境界を定められている。通路間隙は、混合される媒体の一部が径方向に移送されることを阻止し、乱流成分を生成するように構成されている。その結果、混合特性が向上するとともに、撹拌器具の起動トルクを小さくすることができる。
【0021】
通路間隙の少なくとも1つの範囲が設定可能であってもよい。「範囲」とは、通路間隙に沿っている外側撹拌翼と内側撹拌翼との間の最小間隔を意味する。撹拌シャフト上の内側撹拌翼の位置および外側撹拌翼の位置は、相互に可変的に設定可能であり、これによって通路間隙の範囲を変更できる。例えば、撹拌シャフトに沿って外側撹拌翼に対して内側撹拌翼を移動させることや、撹拌軸線を中心に外側撹拌翼に対して内側撹拌翼を回転させること等によって、通路間隙の範囲を設定できる。外側撹拌翼平面と内側撹拌翼平面とが直角に交差するように外側撹拌翼および内側撹拌翼が配置された状態における通路間隙の最小範囲、具体的には微小範囲は、撹拌シャフトに沿って外側撹拌翼に対して内側撹拌翼を移動させることによってもたらすことができる。撹拌シャフトに沿って外側撹拌翼に対して内側撹拌翼を移動させることによって、通路間隙の最小範囲は、最小、具体的には微小な範囲と最大範囲との間で調整可能である。最大範囲は、外側撹拌翼および内側撹拌翼の各構造によって画定される。このため、ショベル式移送ユニットの形状は、密度、粘度、分散相および/または分散媒体の物理的状態等の、媒体の異なる品質および特性に応じて変更できる。その結果、撹拌特性、混合特性および/または分散特性が向上する。さらに、撹拌シャフトに直交する流れに対する撹拌シャフトに平行な流れの比率が設定できるという利点も実現されている。
【0022】
内側撹拌翼が少なくとも1つの内側撹拌翼法線を有し、外側撹拌翼が少なくとも1つの外側撹拌翼法線を有していてもよい。内側撹拌翼法線と外側撹拌翼法線とが形成する最小法線角度(minimum normal angle)は、0°より大きく90°以下であってもよい。内側撹拌翼法線は、内側撹拌翼平面の少なくとも1つの法線ベクトルに対応し、外側撹拌翼法線は、外側撹拌翼平面の少なくとも1つの別の法線ベクトルに対応する。外側撹拌翼平面と、撹拌軸線に対して直交する直線とによって形成されるピッチ角度は、「法線角度=(90°-ピッチ角度)」という相関関係によって法線角度と相関している。その結果、流動技術面において好適な移送ユニットの設計が可能となっている。
【0023】
移送ユニットの形状の可変性を高めるために、最小法線角度を設定可能としてもよい。撹拌シャフトを中心に内側撹拌翼および/または外側撹拌翼を回転させることによって、法線角度を設定できる。内側撹拌翼および外側撹拌翼は、内側撹拌翼ハブおよび/または外側撹拌翼ハブを介して撹拌シャフト上に配置されている。
【0024】
内側撹拌翼は、外側撹拌翼に対して様々な角度位置において撹拌シャフトに固定可能としてもよい。内側撹拌翼は、破壊することなく取り外し可能な結合方法によって、内側撹拌翼ハブを介して撹拌シャフトに固定されていてもよい。結合方法の例としては、ねじ結合、ピン結合、ボルト結合、シャフト・ハブ結合および当業者に周知の他の形状嵌合および/または圧入結合が挙げられる。このようにして、法線角度を自由に調整できる。
【0025】
撹拌器具は、少なくとも1つのバーを備えていてもよく、このバーによって外側撹拌翼が撹拌シャフトに接続されていてもよい。好適には、外側撹拌翼はバーによって外側撹拌翼ハブに接続されており、外側撹拌翼ハブおよび外側撹拌翼が撹拌シャフトに固定可能となっている。好適には、バーの主に延びる方向は、撹拌シャフトに直交する直線に沿って延びている。しかしながら、バーの主に延びる方向は傾斜していてもよい。物体の「主に延びる方向」とは、その物体を包囲する最小直方体形状の最も長い端部と平行に延びる方向を意味する。バーの断面は好適には円形であるが、他の形状を有していてもよい。好適には、撹拌器具は、異なる位置に配置された2本のバーを備えており、2本のバーは、撹拌シャフトに面した外側撹拌翼の上側と、撹拌シャフトに面した外側撹拌翼の下側とにおいて、外側撹拌翼ハブを介して外側撹拌翼を撹拌シャフトに接続している。外側撹拌翼ハブとバーとは、一体的に互いに接続されており、外側撹拌翼とバーとは、一体的に互いに接続されている。外側撹拌翼は、2本以外の本数のバーによって撹拌シャフトに接続されていてもよい。バーの少なくとも大部分、具体的にはその全体は、鋼および/またはステンレス鋼や、アルミニウムおよび/またはチタン等の金属や合金等の任意の金属から形成できる。しかしながら、バーを少なくとも部分的にプラスチック材料から形成してもよい。上記の構成によって、外側撹拌翼を安定した状態で撹拌シャフトに接続することが可能となる。
【0026】
撹拌器具が少なくとも1つの下側撹拌翼を有し、下側撹拌翼が、撹拌シャフトに沿う方向から見て、外側撹拌翼および内側撹拌翼の少なくともいずれか一方の下方に位置している場合、混合をより完全かつ効果的に行うことが可能となる。撹拌器具は、下側撹拌翼ハブを有していてもよく、好適には、溶接等の実質的に一体的な接続手段によって下側撹拌翼ハブが下側撹拌翼に接続されている。具体的には、下側撹拌翼は板状に形成されており、少なくともその大部分が下側撹拌翼平面内に位置している。撹拌軸線は、下側撹拌翼平面内に位置していることが好ましい。下側撹拌翼の法線ベクトルと平行である下側撹拌翼法線と、内側撹拌翼法線とは2つの平行な平面上に位置している。撹拌軸線に対して直交する方向に見て、下側撹拌翼は、少なくとも部分的に凸状の輪郭を有している。下側撹拌翼および/または下側撹拌翼ハブの少なくとも大部分、具体的にはその全体は、鋼および/またはステンレス鋼や、アルミニウムおよび/またはチタン等の金属や合金等の他の任意の金属から形成できる。好適には、外側撹拌翼、内側撹拌翼および下側撹拌翼は互いから離間している。しかしながら、外側撹拌翼、内側撹拌翼および/または下側撹拌翼を一体に形成してもよい。
【0027】
本発明の好適な一実施形態において、下側撹拌翼は、外側撹拌翼および内側撹拌翼に対して様々な角度位置において撹拌シャフトに固定可能としてもよい。
具体的には、下側撹拌翼法線および外側撹拌翼法線は、0°より大きくかつ90°以下である第1の最小角度位置を有している。ピッチ角度は「第1の角度位置=(90°-ピッチ角度)」という相関関係によって第1の角度位置と相関している。下側撹拌翼は、下側撹拌翼法線と内側撹拌翼法線とによって形成される第2の最小角度位置を有しており、第2の最小角度位置は0°~180°である。上記の構成によって、流動技術面において好適な媒体の混合が可能となっている。
【0028】
本発明の好適な一実施形態において、撹拌器具は、外側撹拌翼と同様に構成されている少なくとも1つの別の外側撹拌翼を備えている。好適には、撹拌器具は、撹拌シャフトを基準に鏡映対称をなして互いに対向している2つの外側撹拌翼を有しており、外側撹拌翼は、各バーによって外側撹拌翼ハブに接続されている。具体的には、撹拌軸線に対して直交する各撹拌平面において、一方の外側撹拌翼の各点は、撹拌軸線を中心に180°回転された場合、他方の外側撹拌翼の対応する点に重なる。外側撹拌翼の数を「N」とすると、各撹拌平面における個々の外側撹拌翼同士の角度距離は「360°/N」である。好適には、撹拌器具は、1つの別の内側撹拌翼および/または1つの別の下側撹拌翼も有している。好適には、撹拌器具は、内側撹拌翼ハブに実質的に一体的に接続されている2つの内側撹拌翼と、下側撹拌翼ハブに実質的に一体的に接続されている2つの下側撹拌翼とを備えている。外側撹拌翼、内側撹拌翼および/または下側撹拌翼の数は変更可能であり、2つより多くてもよい。上記の構成によって、効率的で、要求事項を満たす撹拌器具の実施形態が構成可能となる。
【0029】
少なくとも撹拌シャフトに対して直交する方向に見て、具体的にはバーと平行な方向から見て、外側撹拌翼と別の外側撹拌翼とが、湾曲状の閉じられた外側輪郭、具体的には楕円を形成していてもよい。上記の方向から見て、外側撹拌翼と別の外側撹拌翼は、外側輪郭の下側領域および上側領域において少なくとも部分的に重なり合っている。これらの下側領域および上側領域において、各外側撹拌翼はバーに接続されている。外側輪郭は、撹拌シャフトを基準として鏡映対称であることが好ましい。外側輪郭が、楕円の形状とは異なる、閉じていない幾何学的形状を有していてもよい。上記の構成によって、流動技術面において好適な撹拌特性が実現可能となる。
【0030】
少なくとも撹拌シャフトに対して直交する方向に見て、外側撹拌翼と別の外側撹拌翼とが、非楕円状の穴を有している楕円を形成していてもよい。好適には、穴は、少なくとも部分的に楕円状の内側輪郭を有しており、この内側輪郭は、外側撹拌翼および別の外側撹拌翼のアーム状部分によって画定されている。外側輪郭によって囲まれた表面の下側領域は、約3分の1の範囲において閉じられている。その結果、混合特性が向上する。
【0031】
さらに、少なくとも1つの撹拌器具を有する撹拌機が提案されている。撹拌器具の直径は、少なくとも0.2メートル、好適には少なくとも0.5メートル、特に好適には少なくとも1メートルである。
【0032】
また、少なくとも1つの容器を備えており、容器内に配置されている撹拌機を少なくとも1つ備えている撹拌システムも提案されている。撹拌システムは、例えば重合反応器における重合工程等の工業用途に用いられる。容器の容積は、少なくとも10リットル、好適には少なくとも100リットル、特に好適には少なくとも500リットルである。
【0033】
本発明による撹拌器具は、前述した用途および実施形態に限定されるものではない。特に、本明細書に記載されている機能形態を満たすための本発明による撹拌器具は、本明細書に記載されている数量とは異なる数量の個別要素、構成要素およびユニットを有していてもよい。
【0034】
他の利点については、以下の図面の説明からも理解できる。図面には、本発明の例示的な実施形態が示されている。図面、明細書および特許請求の範囲には、多数の特徴の組み合わせが含まれている。当業者であれば、個々の特徴を検討して組み合わせることによって、別の有効な組み合わせを構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】撹拌器具を備えた撹拌機を部分的に示す側面斜視図。
図2】撹拌器具の外側撹拌翼および別の外側撹拌翼が、撹拌器具のバーによって撹拌器具の外側撹拌翼ハブに接続されている状態を示す側面斜視図。
図3】撹拌器具においてバーがハブに接続されている方向に対して交差する方向から見た、外側撹拌翼および別の外側撹拌翼の側面図。
図4】バーがハブに接続されている方向から見た、外側撹拌翼および別の外側撹拌翼の側面図。
図5】撹拌器具の内側撹拌翼および別の内側撹拌翼が、撹拌器具の内側撹拌翼ハブに固定されている状態を示す側面斜視図。
図6】撹拌器具の下側撹拌翼および別の下側撹拌翼が、撹拌器具の下側撹拌翼ハブに固定されている状態を示す側面斜視図。
図7】容器内に配置されている撹拌機を備えた撹拌システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に説明される例示的な実施形態では、様々な機能ユニットおよび/または構成要素が重複している。説明を簡潔にするために、同様に設計されている構成要素および/または機能ユニットには図面において同じ参照符号を付し、後述する図面の説明においては一度のみ記載する。
【0037】
図1は、少なくとも1つの撹拌器具10を有している撹拌機46を部分的に示す側面斜視図である。撹拌器具10は、具体的には槽壁に対して非近接型の撹拌器具10として具体化されている。撹拌器具10は、低粘度から中粘度の媒体等を混合するように構成されている。撹拌器具10は撹拌シャフト12を有している。少なくとも1つの動作状態において、撹拌シャフト12は、撹拌器具10の撹拌軸線60を中心に回転する。撹拌シャフト12は、トルクを伝達して、撹拌シャフト12上に配置されている構成要素の回転動作を発生させる。撹拌シャフト12上には、撹拌器具10の外側撹拌翼14と別の外側撹拌翼40とが配置されている。別の外側撹拌翼40は、外側撹拌翼14と同様に構成されている。
【0038】
撹拌シャフト12上には、撹拌器具10の内側撹拌翼16および別の内側撹拌翼48も配置されている。別の内側撹拌翼48は、内側撹拌翼16と同様に構成されている。
また、撹拌シャフト12上には、撹拌器具の下側撹拌翼38および別の下側撹拌翼50も配置されている。別の下側撹拌翼50は、下側撹拌翼38と同様に構成されている。
【0039】
外側撹拌翼14、内側撹拌翼16および下側撹拌翼38について以下に記載するが、これらについての記載は、別の外側撹拌翼40、別の内側撹拌翼48および別の下側撹拌翼50にも当てはまる。
【0040】
外側撹拌翼14は、アーム状に構成された部分18を有する。外側撹拌翼14は別の部分22も有している。別の部分22は部分18に隣接している。外側撹拌翼14は、部分18よりも別の部分22の方が幅広となるように形成されている。
【0041】
撹拌器具10は、第1の外側撹拌翼ハブ56を有している。撹拌器具10は、別の外側撹拌翼ハブ58も有している。撹拌器具10は、第1バー52および第2バー54を有している。外側撹拌翼14の部分18は、撹拌器具10の第1バー52によって、第1の外側撹拌翼ハブ56に接続されている(図2)。外側撹拌翼14の別の部分22は、第2バー54によって、別の外側撹拌翼ハブ58に接続されている。第1の外側撹拌翼ハブ56および別の外側撹拌翼ハブ58は、ねじ結合によってそれぞれ撹拌シャフト12に固定されている。第1の外側撹拌翼ハブ56および第2の外側撹拌翼ハブ58は、例えばクランプ結合等の他の方法によって接続してもよい。撹拌シャフト12に沿う方向から見て、第1バー52および第2バー54は、撹拌シャフト12から反対方向に延びており、第1バー52および第2バー54は180°の角度を形成している。第1バー52および第2バー54は、それぞれ撹拌シャフト12に対して直交するように配置されている。
【0042】
撹拌器具10は、外側撹拌翼平面26を有している。外側撹拌翼14は、その全体が外側撹拌翼平面26内に位置している(図2)。アーム状に構成されている部分18は、外側撹拌翼平面26内において、均一な最小部分太さ104を有している。部分太さ104は、好適には撹拌器具10の直径102の5%以上かつ50%未満であり、より好適には、直径102の15%である。撹拌シャフト12と、バー52が主に延びる方向とに対して直交する方向に見て、外側撹拌翼14と別の外側撹拌翼40とは、X字形の輪郭を形成している。具体的には、物体の「主に延びる方向」とは、その物体を包囲する最小直方体形状の最も長い縁部と平行に延びる方向を意味する。
【0043】
内側撹拌翼16は、少なくとも1つの内側撹拌翼法線32(図1)を有している。外側撹拌翼14は、少なくとも1つの外側撹拌翼法線34を有している。内側撹拌翼法線32と外側撹拌翼法線34とが形成する最小法線角度36は90°である。法線角度36は、0°よりも大きく90°以下であってもよい。
【0044】
法線角度36は設定可能である。法線角度36は、例えば、撹拌軸線60を中心に内側撹拌翼16を回転させることによって調整できる。法線角度36は、撹拌軸線60に直交する平面に対する外側撹拌翼14の傾斜に応じて決まる。
【0045】
外側撹拌翼14は、外側撹拌翼長さ108を有している(図3)。外側撹拌翼14は、撹拌シャフト12に直交する平面に対してピッチ角度62を有している。ピッチ角度62は好適には60°である。法線角度36は「法線角度36=(90°-ピッチ角度62)」という相関関係から求めることができる。撹拌器具10は直径102を有している(図3)。直径102とピッチ角度62とは「cos(ピッチ角度62)=直径102/外側撹拌翼長さ108」という相関関係を有している。
【0046】
図5に、内側撹拌翼16を示す。撹拌器具10は内側撹拌翼平面24を有している。内側撹拌翼16は、その全体が内側撹拌翼平面24内に位置している。内側撹拌翼16は板状に形成されている。撹拌器具10は内側撹拌翼ハブ66を有している。内側撹拌翼16および別の内側撹拌翼48は、内側撹拌翼ハブ66上に位置している。内側撹拌翼16および別の内側撹拌翼48は、溶接結合によって内側撹拌翼ハブ66上に固定されている。内側撹拌翼ハブ66は、ねじ結合によって撹拌シャフト12に固定されている。内側撹拌翼ハブ66は、クランプ結合等の他の方法によって接続してもよい。内側撹拌翼16と別の内側撹拌翼48との間の角度距離は180°である。内側撹拌翼が複数存在する場合、各内側撹拌翼は等間隔の角度距離に配置される。角度距離は「360°/内側撹拌翼の数」という相関関係から求めることができる。
【0047】
内側撹拌翼法線32に沿う方向から見て、内側撹拌翼16は台形状輪郭68を有している。台形状輪郭68は、互いに直交するように位置する辺96、98を有している。一方の辺96は撹拌シャフト12と平行に延び、他方の辺98は撹拌シャフト12に対して直交する方向延びている。台形状輪郭68は、外側撹拌翼平面26と平行に延びる別の辺70も有している。
【0048】
内側撹拌翼16は、外側撹拌翼14の別の部分22と、撹拌器具10のベーン式移送ユニット20を構成している。移送ユニット20は、撹拌シャフト12に平行な方向と、撹拌シャフト12に直交する別の方向とに媒体を移送するように構成されている。このため、撹拌シャフト12に対して直交する方向等に移動する媒体の放射流と、撹拌シャフト12に対して平行な方向等に移動する媒体の軸流とが形成される。
【0049】
ベーン式移送ユニット20は、通路間隙28(図1)を有している。通路間隙28は、内側撹拌翼16の台形状輪郭68の別の辺70と、外側撹拌翼平面26とによって画定される。
【0050】
通路間隙28の範囲30は設定可能である。例えば、内側撹拌翼16は、撹拌シャフト12に沿って移動可能である。さらに、内側撹拌翼16は、撹拌シャフト12を中心に回転可能としてもよい。内側撹拌翼16は、外側撹拌翼14に対して様々な角度位置において撹拌シャフト12に固定することができる。
【0051】
通路間隙28は、完全に閉じられていてもよいし、最大限に開いていてもよい。通路間隙28は、バー52が主に延びる方向に対して内側撹拌翼16が直交する方向に配置されているときに最大となる。
【0052】
撹拌シャフト12に沿う方向から見て、外側撹拌翼14および/または内側撹拌翼16の下方には下側撹拌翼38が配置されている(図1)。
撹拌器具10は下側撹拌翼平面64を有している。下側撹拌翼38は、その全体が下側撹拌翼平面64内に位置している(図6)。下側撹拌翼38は板状に形成されている。下側撹拌翼38の下側撹拌翼法線74と平行な方向から見て、下側撹拌翼38は、撹拌シャフト12と平行な最大寸法106を有している。この寸法106は、直径102の5%以上50%未満であり、好適には、直径102の15%である。撹拌器具10は下側撹拌翼ハブ72を有している。下側撹拌翼38および別の下側撹拌翼50は、下側撹拌翼ハブ72上に位置している。下側撹拌翼38および別の下側撹拌翼50は、溶接結合によって下側撹拌翼ハブ72上に配置されている。下側撹拌翼ハブ72は、ねじ結合よって撹拌シャフト12に固定されている。下側撹拌翼ハブ72は、クランプ結合等の他の方法によって接続してもよい。下側撹拌翼38と別の下側撹拌翼50との間の角度距離は、180°である。下側撹拌翼が複数存在する場合、各下側撹拌翼は等間隔の角度距離に配置される。角度距離は「360°/下側撹拌翼の数」という相関関係から求めることができる。
【0053】
下側撹拌翼法線74に沿う方向から見て、下側撹拌翼38の輪郭76は凸状縁部78を有している。撹拌機46は容器80内に配置可能である。凸状縁部78は、容器80の底部82に対応するように構成されている。
【0054】
下側撹拌翼38は、外側撹拌翼14に対して様々な角度位置において撹拌シャフト12に固定することができる。下側撹拌翼38は、内側撹拌翼16に対して様々な角度位置においてに固定することができる。角度位置は、撹拌シャフト12を中心として下側撹拌翼ハブ72を回転させることによって調整可能である。
【0055】
移送ユニット20と、別の部分および別の内側撹拌翼によって形成される別の各移送ユニットとは、少なくとも1つの動作状態にある撹拌器具10が撹拌軸線60を中心に回転するときに、常に同一の回転方向に回転する。
【0056】
図4に、撹拌シャフト12に対して直交する方向から見た外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40を示す。外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40は、湾曲状の閉じられた外側輪郭42を形成している。湾曲状外側輪郭42は楕円84である。撹拌シャフト12に対して直交する方向から見て、外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40は、楕円84の上下の頂点領域86、88において互いに重なり合っている。バー52、54が外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40に接続している位置は、撹拌シャフト12に対して垂直に見て、外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40が互いに重なり合っている領域内にある。楕円84によって囲まれた面90の下側3分の1は閉じられている。
【0057】
撹拌シャフト12に対して直交する方向に見て、外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40は、非楕円状の穴44を有する楕円84を形成している。穴44の上側および側方の領域は、外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40のアーム状部分18、92によってそれぞれ画定されている。穴44の下側の領域は、外側撹拌翼14および別の外側撹拌翼40の別の部分22、94によって画定されている。
【0058】
図7は、容器80内に配置されている撹拌機46を備えた撹拌システム100を示す。容器80は、撹拌機46によって加工される媒体を受容するように構成されている。容器80は容器径110を有している。具体的には、容器径110は、撹拌器具10の直径102の少なくとも1.05倍である。撹拌機46は少なくとも1つのモータ112を有しており、モータ112は撹拌シャフト12に接続されている。モータ112は、少なくとも1つの動作状態において撹拌機46にトルクを伝達するように構成されている。少なくとも1つの動作状態において、撹拌機46は、撹拌シャフト12に対して直交する第1流れと、撹拌シャフト12に対して少なくとも実質的に平行な第2流れとを形成する。第1流れは、実質的に内側撹拌翼16によって形成される。第2流れは、実質的に外側撹拌翼14によって形成される。流れ全体に対する第1流れの割合は、通路間隙28の範囲30に応じて決まる。
【符号の説明】
【0059】
10…撹拌器具、12…撹拌シャフト、14…外側撹拌翼、16…内側撹拌翼、18…部分、20…移送ユニット、22…部分、24…内側撹拌翼平面、26…外側撹拌翼平面、28…通路間隙、30…範囲、32…内側撹拌翼法線、34…外側撹拌翼法線、36…法線角度、38…下側撹拌翼、40…外側撹拌翼、42…外側輪郭、44…穴、46…撹拌機、48…内側撹拌翼、50…下側撹拌翼、52…バー、54…バー、56…外側撹拌翼ハブ、58…外側撹拌翼ハブ、60…撹拌軸線、62…ピッチ角度、64…下側撹拌翼平面、66…内側撹拌翼ハブ、68…輪郭、70…辺、72…下側撹拌翼ハブ、74…下側撹拌翼法線、76…輪郭、78…凸状縁部、80…容器、82…底部、84…楕円、86…頂点領域、88…頂点領域、90…面、92…部分、94…部分、96…辺、98…辺、100…撹拌システム、102…直径、104…部分太さ、106…寸法、108…外側撹拌翼長さ、110…容器径、112…モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7