(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/046 20060101AFI20240119BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
F04D29/046 D
F16C37/00 A
(21)【出願番号】P 2019035431
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三橋 佑規
(72)【発明者】
【氏名】野部 渡
(72)【発明者】
【氏名】沖原 崇
(72)【発明者】
【氏名】秋庭 秀樹
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155652(JP,A)
【文献】特表2002-501592(JP,A)
【文献】特開2004-011538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/046
F16C 17/02
F16C 37/00
F16C 3/02
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に羽根車が設けられ、他端に駆動モータが設けられた回転軸と、前記回転軸をポンプケーシングに回転可能に支持するすべり軸受と、を有し、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプであって、
前記回転軸の外周を覆うスリーブと、
前記スリーブから所定の間隔を隔てて対向して配置される軸受と、を備え、
前記回転軸または前記スリーブは、前記回転軸と前記スリーブの間に空間を形成する1つの凹部を有し、
前記凹部
のすべての部分はスリーブの内周側全周に渡って設けられており、前記空間は前記回転軸の周方向に連通して形成されており、
前記回転軸の軸方向における前記凹部の長さは、前記回転軸の軸方向における前記軸受の長さよりも長いことを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の立軸ポンプであって、
前記空間内に断熱材が配置されることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の立軸ポンプであって、
前記回転軸の軸方向における前記凹部の長さは、前記回転軸の軸方向における前記軸受の長さの1.0倍以上、2倍以下であることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の立軸ポンプであって、
前記回転軸の軸方向における前記凹部の両端の位置は、前記回転軸の軸方向における前記軸受の両端の位置よりそれぞれ1mm~9mm外側であることを特徴とする立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプの構造に係り、特に、無潤滑状態で待機運転を行う先行待機型ポンプに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年急速な都市化に伴い、集中豪雨時の都市排水機場への雨水流入は、大量かつ急激なものとなっており、都市型洪水発生の危険性が高くなっている。このような問題を回避するためには、緊急時でも速やかに排水する立軸ポンプが必要である。そこで、雨水が排水機場に流入する以前に、ポンプを先行して空転運転させ、雨水が流入してきたら即座に排水運転を行う、先行待機型ポンプの需要が高まっている。
【0003】
この先行待機型ポンプにおける軸受は、空転運転時における無潤滑摺動、排水運転時における異物等を含む水潤滑摺動が、繰り返し行われるような環境下において、回転軸を支持する。従来では、空転運転時においても外部注水装置を用いて水潤滑状態を維持し、軸受が焼損するのを防止していた。しかしながら、コストやメンテナンス性の観点から、空転運転時においても外部注水装置を使用せず、無注水軸受を用いるのが現在の主流となっている。
【0004】
無注水軸受は、回転軸及び回転軸を覆うように設置されたスリーブと、一定の間隔を隔てて回転軸及びスリーブを支持する円筒状の軸受と、軸受を支持する軸受ハウジングにより構成されている。また、スリーブには高強度材料(超硬合金等)が主に用いられ、軸受には摺動性の良い材料(樹脂等)が主に用いられており、無潤滑摺動及び異物摩耗に長時間耐え得ることができる。
【0005】
しかしながら、無潤滑摺動では、発熱量の過大による軸受の焼損や、スリーブ及び軸受の熱膨張によってクリアランスが消失しスリーブと軸受が接触すること、回転軸のアンバランスや組立時のミスアライメントによってスリーブと軸受が部分的に摺動(片当たり)し、周方向において回転軸が局所的に温度上昇し、それに伴い回転軸が曲がり、振動増加や軸受荷重が増加するなどの問題が挙げられる。
【0006】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「回転流体機械の回転軸の支持に使用され、軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で使用されるすべり軸受装置であって、前記回転軸の外周に固定されたスリーブと、前記スリーブが摺接する軸受すべり面を有したすべり軸受とを備え、前記スリーブは、回転軸側から断熱層、伝熱層、摺動層の順序で積層した三層構造からなるすべり軸受装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1には、
図10や
図11に示されているように、回転軸とすべり軸受間の断熱層に空隙を設けることで、構造的に回転軸と摺動層の間の熱伝達率を小さくすることが記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1では、スリーブは断熱層、伝熱層、摺動層の三層構造で構成されており、回転軸の回転(摺動)による振動や発熱に起因する各層界面での剥離や亀裂などの問題が懸念される。
【0010】
また、摺動面に対して空隙が比較的小さいため、つまり、回転軸の軸方向における空隙の長さがすべり軸受の長さよりも短いため、回転軸とすべり軸受間の伝熱が十分に低減されない可能性がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプにおいて、待機運転時(空転運転時)でも安定して回転軸(主軸)を支持可能なすべり軸受装置とそれを用いた立軸ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、一端に羽根車が設けられ、他端に駆動モータが設けられた回転軸と、前記回転軸をポンプケーシングに回転可能に支持するすべり軸受と、を有し、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプであって、前記回転軸の外周を覆うスリーブと、前記スリーブから所定の間隔を隔てて対向して配置される軸受と、を備え、前記回転軸または前記スリーブは、前記回転軸と前記スリーブの間に空間を形成する1つの凹部を有し、前記凹部のすべての部分はスリーブの内周側全周に渡って設けられており、前記空間は前記回転軸の周方向に連通して形成されており、前記回転軸の軸方向における前記凹部の長さは、前記回転軸の軸方向における前記軸受の長さよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプにおいて、待機運転時(空転運転時)でも安定して回転軸(主軸)を支持可能なすべり軸受装置とそれを用いた立軸ポンプを実現することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の適用対象となる立軸ポンプの全体概要を示す図である。
【
図2A】実施例1に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図2C】実施例1に係る立軸ポンプの軸受部を示す斜視図である。
【
図3A】実施例2に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図4A】実施例3に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図5A】実施例4に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図6A】実施例5に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図7】実施例6に係る立軸ポンプの軸受部を示す縦断面図である。
【
図8A】従来の立軸ポンプの軸受部を示す斜視図である。
【
図8B】従来の立軸ポンプの軸受部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
図1から
図2D及び
図8Aから
図8Cを参照して、実施例1のすべり軸受装置とそれを用いた立軸ポンプについて説明する。
図1は本発明の適用対象となる立軸ポンプの全体概要を示している。
図2Aは本実施例の軸受構造を示す縦断面図である。
図2Bは
図2AにおけるA-A’部の水平断面図である。
図2C及び
図2Dは本実施例の効果を説明するための図である。また、
図8Aから
図8Cは本発明の作用効果を分かり易くするために示す、従来の立軸ポンプの軸受部での問題点を説明するための図である。
【0019】
先ず、
図1を用いて本発明の適用対象となる立軸ポンプについて説明する。
図1に示すように、立軸ポンプ1は、鉛直方向に延伸し回転する回転軸(主軸)2の下端部に、羽根車3が固定されており、羽根車3の下方から羽根車3の外周部を覆い、さらに上方にまでポンプケーシング4が延びている。ポンプケーシング4は、羽根車3の部分を除いてほぼ円筒形に形成されており、中心部を回転軸(主軸)2が貫通している。ポンプケーシング4の内部は、揚水の流路を形成する。
【0020】
ポンプケーシング4の内部を貫通する回転軸(主軸)2は、上下方向の複数個所(
図1では5a,5bの2ヶ所)において、無注水軸受5(5a,5b)によって回転可能に支持されている。
図1の立軸ポンプ1では、羽根車3の近傍において、一方の無注水軸受5aが設けられており、立軸ポンプ1の設置面である床面(
図1のハッチング部分)よりも下方であって、この立軸ポンプ1を駆動する駆動モータ6にカップリング7を介して接続される回転軸(主軸)2の途中に、無注水軸受5bが設置されている。
【0021】
すなわち、立軸ポンプ1は、一端に羽根車3が設けられ、他端に駆動モータ6が設けられた回転軸(主軸)2と、羽根車3および回転軸(主軸)2を内包し、立軸ポンプ1の駆動時に流体(水)の流路となるポンプケーシング4と、回転軸(主軸)2をポンプケーシング4に回転可能に支持する軸受(無注水軸受5a,5b)を有している。
【0022】
次に、
図8Aから
図8Cを用いて、本実施例の比較例である従来の立軸ポンプの軸受部の問題点について説明する。
図8Aは従来の立軸ポンプ1が備える無注水軸受5(5a,5b)の斜視図である。無注水軸受は、
図8Aに示すように、回転軸(主軸)2と、回転軸(主軸)2の外周面を覆うように設置されたスリーブ(摺動層)8と、スリーブ(摺動層)8と一定の間隔を隔てて回転軸(主軸)2及びスリーブ(摺動層)8を支持する円筒状の軸受9と、軸受9を保持する円筒状の軸受ハウジング(図示せず)とを有している。スリーブ(摺動層)8の軸受摺動面11と、摺動部材である軸受9が摺動しながら、回転軸(主軸)2が回転する。
【0023】
上記のように、スリーブ(摺動層)8と軸受9の間には、一定の間隔(間隙)があるため、スリーブ(摺動層)8が軸受9と片当り状態となる場合があり、片当り状態が継続すると、
図8Bのように、片当たり部12を中心にスリーブ(摺動層)8が局所的に発熱する。
【0024】
そして、
図8Cに示すように、片当たり部12を中心に発熱した局所熱が回転軸(主軸)2に伝わり、スリーブ(摺動層)8と回転軸(主軸)2に周方向温度分布が付くと、
図8Bに示すように、熱膨張差により回転軸(主軸)2が曲がる。これは回転軸(主軸)2を含む回転体の過大振動の要因となり問題となる。
【0025】
そこで、本実施例のすべり軸受装置では、
図2Aに示すように、スリーブ(摺動層)8の回転軸(主軸)2と接する側、つまりスリーブ(摺動層)8の内周側に回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間にスペース(空間)10を形成するための凹部が設けられている。この凹部は、
図2Bに示すように、スリーブ(摺動層)8の内周側全周に渡って設けられており、スペース(空間)10は回転軸(主軸)2の周方向に連通して形成される。
【0026】
図2A及び
図2Bに示すように、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間にスペース(空間)10を設けることで、
図2Cに示すように、スリーブ(摺動層)8が軸受9に片当たりした場合であっても、スリーブ(摺動層)8に発生する局所熱が回転軸(主軸)2に直接伝播しない。スペース(空間)10にある空気へ熱は伝播するが、空気の流動性によって、スペース(空間)10の温度分布が局所化せず、回転軸(主軸)2への局所的な伝熱とならない。
【0027】
この効果によって、
図2Dに示すように、回転軸(主軸)2に周方向温度分布が付かず、回転軸(主軸)2が曲らない。これにより、回転軸(主軸)2の過大振動を抑制することができる。
【0028】
なお、スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱を効果的に抑制するためには、スペース(空間)10を十分な幅を有して形成する必要がある。そこで、本実施例では、
図2Aに示すように、回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の長さbを、回転軸(主軸)2の軸方向おける軸受9の長さaよりも長く設けている。(b>a)
また、スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱を効果的に抑制するためには、回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の長さbは、回転軸(主軸)2の軸方向おける軸受9の長さaの1.0倍以上、2倍以下であることが望ましい。回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の長さbが短い場合、スペース(空間)10が小さく(狭く)なり、伝熱を十分に抑制することができない。一方、回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の長さbを大きく取り過ぎると、スリーブ(摺動層)8と回転軸(主軸)2の接触面が小さくなるため、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の接合強度が低下してしまう。
【0029】
さらに、回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の両端の位置は、回転軸(主軸)2の軸方向における軸受9の両端の位置よりそれぞれ1mm~9mm外側であるのがより好適である。スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱を、回転軸(主軸)2の軸方向(
図2Aの上下)において、バランス良く低減することができる。
【0030】
なお、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間にスペース(空間)10を形成するために設けられるスリーブ(摺動層)8の内周側の凹部は、強度上の問題が無ければ、回転軸(主軸)2の外周側に設けてもよい。或いは、スリーブ(摺動層)8の内周側および回転軸(主軸)2の外周側の両方に設けることも可能である。
【0031】
以上説明したように、本実施例のすべり軸受装置は、回転軸(主軸)2の外周を覆うスリーブ(摺動層)8と、スリーブ(摺動層)8から所定の間隔を隔てて対向して配置される軸受9を備えており、回転軸(主軸)2またはスリーブ(摺動層)8は、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間にスペース(空間)10を形成する凹部を有し、回転軸(主軸)2の軸方向おける凹部の長さbは、回転軸(主軸)2の軸方向における軸受9の長さaよりも長い。
【0032】
また、本実施例では、特許文献1の三層構造(断熱層、伝熱層、摺動層)とは異なり、回転軸(主軸)2と軸受9の間には単層のスリーブ(摺動層)8のみが配置されており、スリーブの剥離や亀裂などの問題が発生する可能性は極めて低い。
【0033】
これにより、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプにおいて、待機運転時(空転運転時)でも安定して回転軸(主軸)を支持可能なすべり軸受装置とそれを用いた立軸ポンプを実現することができる。
【実施例2】
【0034】
図3A及び
図3Bを参照して、実施例2のすべり軸受装置について説明する。
図3Aは本実施例の軸受構造を示す縦断面図であり、実施例1の
図2Aに相当する。
図3Bは
図3AにおけるC-C’部の水平断面図である。
【0035】
本実施例では、
図3A,
図3Bに示すように、スリーブ(摺動層)8に、回転軸(主軸)2の軸方向おけるスリーブ(摺動層)8の上面とスペース(空間)10を形成するための凹部とを連通するスリット13が設けられている。
【0036】
図3A及び
図3Bに示すように、スリーブ(摺動層)8にスリーブ13を設けることで、スペース(空間)10内に発生した熱(温度上昇した空気)がスリット13を介してスリーブ(摺動層)8の外側に放出されるため、スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱をより効果的に抑制することができる。
【0037】
なお、スリット13は、スリーブ(摺動層)8の下面に設けても、スリーブ(摺動層)8の上面に設けた場合と同様の効果を得ることができる。もちろん、スリーブ(摺動層)8の上下両面にスリット13を設けても良いことは言うまでもない。
【実施例3】
【0038】
図4A及び
図4Bを参照して、実施例3のすべり軸受装置について説明する。
図4Aは本実施例の軸受構造を示す縦断面図であり、実施例1の
図2Aに相当する。
図4Bは
図4AにおけるD-D’部の水平断面図である。
【0039】
本実施例では、
図4A,
図4Bに示すように、スリーブ(摺動層)8に、スリーブ(摺動層)8の軸受9と対向する側面とスペース(空間)10を形成するための凹部とを連通するスリット13が設けられている。
【0040】
図4A及び
図4Bに示すように、スリーブ(摺動層)8にスリーブ13を設けることで、スペース(空間)10内に発生した熱(温度上昇した空気)がスリット13を介してスリーブ(摺動層)8の外側に放出されるため、スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱をより効果的に抑制することができる。
【実施例4】
【0041】
【0042】
本実施例では、
図5A,
図5Bに示すように、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間に形成されるスペース(空間)10内に複数の補強リブ14が設けられている。この補強リブ14により、スペース(空間)10は複数の凹部に分割されている。
【0043】
スペース(空間)10内に補強リブ14を設けることで、凹部を設けた場合であっても、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の接合強度を向上することができる。
【0044】
なお、
図5Cに示すように、補強リブ14をスペース(空間)10内にらせん状に設けることで、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間にらせん状のスペース(空間)10が形成され、スペース(空間)10内に発生した熱をらせん状のスペース(空間)10に沿って上部まで移動させることができ、スリーブ(摺動層)8に設けたスリット等(図示せず)を介してスリーブ(摺動層)8の外部に放出することができる。
【実施例5】
【0045】
図6A及び
図6Bを参照して、実施例5のすべり軸受装置について説明する。
図6Aは本実施例の軸受構造を示す縦断面図であり、実施例1の
図2Aに相当する。
図6Bは
図6AにおけるF-F’部の水平断面図である。
【0046】
本実施例では、
図6Bに示すように、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間に形成されるスペース(空間)10内に複数の補強リブ14が設けられている。
図6Bでは、補強リブ14が回転軸(主軸)2の径方向に4本設けられている例を示している。
【0047】
実施例4と同様に、スペース(空間)10内に1つ以上の補強リブ14を設けることで、凹部を設けた場合であっても、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の接合強度を向上することができる。
【実施例6】
【0048】
図7を参照して、実施例6のすべり軸受装置について説明する。
図7は本実施例の軸受構造を示す縦断面図であり、実施例1の
図2Aに相当する。
【0049】
本実施例では、
図7に示すように、回転軸(主軸)2とスリーブ(摺動層)8の間に形成されるスペース(空間)10内に断熱材15が配置されている。
【0050】
スペース(空間)10内に断熱材15を挿入することで、スペース(空間)10内の空気と断熱材15により断熱層を多層化し、スリーブ(摺動層)8から回転軸(主軸)2への伝熱をより効果的に抑制することができる。
【0051】
なお、この断熱材15は、スリーブ(摺動層)8に接着させて配置してもよく、スリーブ(摺動層)8に接着させずにスペース(空間)10内に配置してもよい。
【0052】
以上説明した各実施例によれば、無潤滑状態で待機運転を行う立軸ポンプにおいて、待機運転時(空転運転時)でも安定して回転軸(立軸)を支持可能なすべり軸受装置とそれを用いた立軸ポンプを実現することができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…立軸ポンプ、2…回転軸(主軸)、3…羽根車、4…ポンプケーシング、5,5a,5b…無注水軸受、6…駆動モータ、7…カップリング、8…スリーブ(摺動層)、9…軸受、10…スペース(空間)、11…軸受摺動面、12…片当たり部、13…スリット、14…補強リブ、15…断熱材。