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特許7422497柱状基礎構造体成型部材、建築基礎の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】柱状基礎構造体成型部材、建築基礎の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20240119BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
E02D27/01 101A
E02D27/01 Z
E02D27/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019126274
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021011733
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593053977
【氏名又は名称】ジェイ建築システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】手塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】北構 勝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 意法
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴志
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-043951(JP,A)
【文献】特開2016-125220(JP,A)
【文献】特開2001-090090(JP,A)
【文献】特開2017-066804(JP,A)
【文献】特開2017-160667(JP,A)
【文献】登録実用新案第3072799(JP,U)
【文献】特開2016-104965(JP,A)
【文献】特開平07-300862(JP,A)
【文献】特開2000-336658(JP,A)
【文献】実公昭63-040570(JP,Y2)
【文献】特開平06-193078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0006540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸建建築物のべた基礎に立設される柱状基礎構造体を形成するための柱状基礎構造体成型部材であって、
上下が開放面を成す円筒形の被覆部材と、前記被覆部材を支持する3つの支持体とを有し、
前記被覆部材は、一方の開放面側に前記支持体を係合させる切欠部が形成され、
前記支持体は、全長に渡って周面に雄ネジが形成された丸棒状の柱脚ボルトと、前記切欠部に挿入される係合部、および前記柱脚ボルトと螺合する雌ネジが形成された螺合部が一体に形成されている支持部材と、を有し、
前記支持部材を構成する螺合部は、前記被覆部材の内周面よりも内側になる位置に配され、前記柱脚ボルトは、前記被覆部材の内部空間内を内周面と平行に延び、一方の開放面から下方に突出するように配され、
前記被覆部材は、前記柱脚ボルトによって、前記ベタ基礎に形成される、互いに交差する複数の主筋を有するべた基礎主筋構造部よりも上方に離間するように支持されることを特徴とする柱状基礎構造体成型部材。
【請求項2】
前記支持部材を構成する係合部は、縁部分に鋸状の逆止刃が形成され、該逆止刃が前記切欠部において前記被覆部材に食い込んだ状態にされることを特徴とする請求項1に記載の柱状基礎構造体成型部材。
【請求項3】
前記柱脚ボルトは、少なくとも一方の端面にドライバー工具を係合可能なネジ頭が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の柱状基礎構造体成型部材。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の柱状基礎構造体成型部材を用いた建築基礎の施工方法であって、
互いに交差する複数の主筋を有するべた基礎主筋構造部から立ち上がるようにスパイラル帯筋を取り付ける工程と、
前記被覆部材の内部に前記スパイラル帯筋が入るように前記柱状基礎構造体成型部材を設置する工程と、
前記柱脚ボルトを回転させて、前記被覆部材の開放面が水平になり、かつ、前記柱脚ボルトの前記被覆部材の前記内部空間内で延びる長さによりも前記一方の開放面よりも下方に延びる長さのほうが長くなるように調整する工程と、
前記べた基礎主筋構造部または地中梁と、前記被覆部材の一方の開放面から突出した前記柱脚ボルトとを、結束具によって結束する工程と、
前記被覆部材の一方の開放面よりも下側で、前記べた基礎主筋構造部と前記柱脚ボルトとが埋まるように、前記柱状基礎構造体成型部材の設置位置とその周辺にコンクリートを打設する工程と、
前記べた基礎主筋構造部の全体が埋まるようにコンクリートを打設して、べた基礎コンクリート部を形成し、同時に 前記被覆部材の内部に、前記スパイラル帯筋が埋まるようにコンクリートを打設して、柱状基礎構造体を形成する工程と、を備えたことを特徴とする建築基礎の施工方法。
【請求項5】
前記被覆部材の他方の開放面側に桟部材を架け渡し、前記桟部材と前記べた基礎主筋構造部または前記地中梁とを線材によって結び付ける工程を更に備えたことを特徴とする請求項に記載の建築基礎の施工方法。
【請求項6】
前記被覆部材の一方の開放面から突出した側の前記柱脚ボルトの端部を受け止めるプレート部材を、前記べた基礎主筋構造部よりも下側に設置する工程を更に備えたことを特徴とする請求項またはに記載の建築基礎の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建建築物の建築基礎である柱状基礎構造体を成形するための柱状基礎構造体成型部材、およびこれを用いた建築基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造をはじめとする戸建建築物の土台を支持する建築基礎として、例えば、立上り壁部と布基礎と、立上り壁部と布基礎の間を形成するべた基礎とを備えた建築基礎が広く用いられている。
このような戸建建築物では、床下に湿気が滞留しやすいことから、床下のエアサイクル効率を向上する技術への要請が大きい。
一方、戸建建築物のエアサイクル効率を向上するための技術として、種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、戸建建築物における床下と屋根裏とのエアサイクルを向上することが向上したとしても、湿気等が滞留しやすい床下は、布基礎に開口部が形成されているのみであり、エアサイクル効率を向上することは限定的であり、床下におけるエアサイクル効率を大きく向上することは困難である。
【0004】
そこで、床下に立設される布基礎等の壁部を小さくして、エアサイクル効率の向上に適用可能な技術として、例えば、円筒形の独立基礎であるコラム基礎(柱状基礎構造体)が開示されている(例えば、特許文献2参照)。コラム基礎は、線状に延びる地中梁に重ねて配置され、例えば垂直に立ち上がるコラムの主筋と、この主筋を覆う円柱形のコンクリート部と、を備えている。
【0005】
従来、コラム基礎を形成する際には、円柱形のコンクリート部の型枠となる中空円筒形の樹脂などからなる被覆部材をコラム基礎の形成位置に予め配置してから、地中梁のコンクリート部分(スラブ)を覆うようにしてコンクリートを打設して、スラブ床を形成する。次に、このスラブ床となるコンクリートが硬化した後、コラムの主筋を埋めるように被覆部材の内側にコンクリートを打設してコラム基礎を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭63-040570号公報
【文献】特開平11-043951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した手順でコラム基礎を形成する場合、既に硬化しているスラブ床に設けられている被覆部材の内側に未硬化のコンクリートを打設するため、スラブ床とコラム基礎との接合が不十分になる懸念がある。また、スラブ床となるコンクリートの打設と、コラム基礎となるコンクリートの打設との間に相当の日数が必要なため、コンクリートの打設が2度手間となり、作業性が悪いという課題もあった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、スラブ床とコラム基礎との接合性を高め、かつ、スラブ床の形成工程とコラム基礎の形成工程とを効率的に行うことを可能にする柱状基礎構造体成型部材、およびこれを用いた建築基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の柱状基礎構造体成型部材は、戸建建築物のべた基礎に立設される柱状基礎構造体を形成するための柱状基礎構造体成型部材であって、上下が開放面を成す円筒形の被覆部材と、前記被覆部材を支持する3つの支持体とを有し、前記被覆部材は、一方の開放面側に前記支持体を係合させる切欠部が形成され、前記支持体は、全長に渡って周面に雄ネジが形成された丸棒状の柱脚ボルトと、前記切欠部に挿入される係合部、および前記柱脚ボルトと螺合する雌ネジが形成された螺合部が一体に形成されている支持部材と、を有し、前記支持部材を構成する螺合部は、前記被覆部材の内周面よりも内側になる位置に配され、前記柱脚ボルトは、前記被覆部材の内部空間内を内周面と平行に延び、一方の開放面から下方に突出するように配され、前記被覆部材は、前記柱脚ボルトによって、前記ベタ基礎に形成される、互いに交差する複数の主筋を有するべた基礎主筋構造部よりも上方に離間するように支持されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記支持部材を構成する係合部は、縁部分に鋸状の逆止刃が形成され、該逆止刃が前記切欠部において前記被覆部材に食い込んだ状態にされていてもよい。
【0012】
また、本発明では、前記柱脚ボルトは、少なくとも一方の端面にドライバー工具を係合可能なネジ頭が形成されていてもよい。
【0013】
本発明の建築基礎の施工方法は、前記各項に記載の柱状基礎構造体成型部材を用いた建築基礎の施工方法であって、互いに交差する複数の主筋を有するべた基礎主筋構造部から立ち上がるようにスパイラル帯筋を取り付ける工程と、前記被覆部材の内部に前記スパイラル帯筋が入るように前記柱状基礎構造体成型部材を設置する工程と、前記柱脚ボルトを回転させて、前記被覆部材の開放面が水平になり、かつ、前記柱脚ボルトの前記被覆部材の前記内部空間内で延びる長さによりも前記一方の開放面よりも下方に延びる長さのほうが長くなるように調整する工程と、前記べた基礎主筋構造部または地中梁と、前記被覆部材の一方の開放面から突出した前記柱脚ボルトとを、結束具によって結束する工程と、前記被覆部材の一方の開放面よりも下側で、前記べた基礎主筋構造部と前記柱脚ボルトとが埋まるように、前記柱状基礎構造体成型部材の設置位置とその周辺にコンクリートを打設する工程と、前記べた基礎主筋構造部の全体が埋まるようにコンクリートを打設して、べた基礎コンクリート部を形成し、同時に 前記被覆部材の内部に、前記スパイラル帯筋が埋まるようにコンクリートを打設して、柱状基礎構造体を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、前記被覆部材の他方の開放面側に桟部材を架け渡し、前記桟部材と前記べた基礎主筋構造部または前記地中梁とを線材によって結び付ける工程を更に備えていてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記被覆部材の一方の開放面から突出した側の前記柱脚ボルトの端部を受け止めるプレート部材を、前記べた基礎主筋構造部よりも下側に設置する工程を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スラブ床とコラム基礎との接合性を高め、かつ、スラブ床の形成工程とコラム基礎の形成工程とを効率的に行うことを可能にする柱状基礎構造体成型部材、およびこれを用いた建築基礎の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】建築基礎に土台を設置した状態を説明する斜視図である。
図2】建築基礎に土台を設置の概略構成を説明する斜視図である。
図3】建築基礎の概略を説明するための平面図である。
図4】建築基礎の概略構成を説明する図であり、図3において矢視IV-IVで示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る柱状基礎構造体成型部材を含むコラムベースを説明する斜視図である。
図6】コラムベースを説明する図であり、コラムベースに土台及び柱を固定した状態の概略を示す図5において矢視VIで示す図である。
図7】コラムベースを説明する図であり、コラムベースに土台及び柱を固定した状態の概略を示す図6において矢視VII-VIIで示す図である。
図8】コラムベースを説明する図であり、柱状基礎コンクリート部を含まない状態の概略構成を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る柱状基礎構造体成型部材を含むコラムベースを説明する図であり、柱状基礎コンクリート部を含まない状態の概略構成を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る柱状基礎構造体成型部材を示す斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る柱状基礎構造体成型部材を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係る柱状基礎構造体成型部材を示す斜視図である。
図13】本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を示した斜視図である。
図14】本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を示した断面図である。
図15】本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を示した断面図である。
図16】本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を示した斜視図である。
図17】本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を示した断面図である。
図18】コンクリートを打設する手順を示す断面図である。
図19】コンクリートを打設する手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の支持部材について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
まず最初に、本発明の柱状基礎構造体成型部材によって形成される柱状基礎構造体を含む建築基礎の概略構成について説明する。
図1は、建築基礎に土台を設置した状態を説明する斜視図であり、図2は、建築基礎の概略構成を説明する斜視図である。
建築基礎1は、例えば2階建て住宅などの戸建建築物(図示せず)の周囲に立設される立上り壁部10と、べた基礎部20と、地中梁30と、コラムベース(柱状基礎構造体)40と、床束55とを備えている。
また、立上り壁部10、べた基礎部20、地中梁30、コラムベース40を構成するコンクリート部分は一体に形成されている。
【0020】
そして、立上り壁部10の上には戸建建築物(不図示)の土台2を配置するとともに戸建建築物の柱(図示せず)を立設するようになっている。また、地中梁30上に形成されたコラムベース40どうしの間には、適宜、土台2及び柱(図示せず)が立設されるようになっている。
なお、土台2の下方や大引き6の下方には、必要に応じて床束55が設けられている。
【0021】
図3は、建築基礎の概略構成を示す平面図であり、図4は、図3において矢視IV-IVで示す概略構成を説明する断面図である。なお、図3図4は、便宜的に図1図2の一部を簡略化して図示している。
【0022】
立上り壁部10は、例えば、戸建建築物の外壁回り(外周)に対応して立設されていて、べた基礎部20の周囲に形成されている。立上り壁部10は、立上り壁部主筋11と、立上り壁部コンクリート部15とを備えている。
【0023】
立上り壁部主筋11は、立上り部11Aと、定着部11Bとを備えていて、定着部11Bは、べた基礎部20内に埋設されている。
そして、立上り壁部コンクリート部15は、立上り部11Aを覆うように形成されている。
【0024】
べた基礎部(スラブ床)20は、例えば、立上り壁部10によって囲まれた内側のエリアに形成され、べた基礎主筋構造部22と、べた基礎コンクリート部25とを備えている。
【0025】
べた基礎主筋構造部22は、立上り壁部10の長辺(第1の方向:X方向)に沿って水平に配置された複数の主筋22Xと、主筋22Xの配置される方向と直交する短辺(第2の方向:Y方向)に沿って形成された複数の主筋22Yとを備えている。
べた基礎コンクリート部25は、例えば、200mm程度の厚さとされていて、べた基礎主筋構造部22を覆うように形成されている。
【0026】
地中梁30は、例えば、立上り壁部10によって囲まれた内側のエリアにべた基礎部20と重なって形成されていて、べた基礎部20よりも大きな剛性を有している。
また、地中梁30は立上り壁部10の長辺(第1の方向:X方向)、又は短辺(第2の方向:Y方向)に沿って形成されている。
【0027】
この実施形態において、地中梁30は、地中梁主筋構造部31と、ダイヤ筋補強部(補強筋構造部)34と、地中梁コンクリート部35とを備えている。
地中梁主筋構造部31は、例えば、複数の地中梁主筋32と、複数のスターラップ(帯筋)33とを備えている。
【0028】
複数の地中梁主筋32は、例えば、立上り壁部10の長辺又は短辺に沿って形成されていて、平行に伸び水平に配置された二本(複数)の地中梁主筋32が、上下方向に二組(複数)配置された構成とされている。
【0029】
また、上下に配された地中梁主筋32は、例えば、スターラップ(帯筋)33によって囲むことにより地中梁主筋32を上下方向に繋ぐように構成されている。
なお、上下に配された地中梁主筋32を、左右及び下側の三方で連結して、地中梁主筋32を上下方向に繋ぐ構成としてもよい。
【0030】
また、ダイヤ筋補強部34は、この実施形態において、地中梁30においてコラムベース40を設置する位置の下方に形成されている。
ダイヤ筋補強部34は、例えば、地中梁主筋構造部31を挟んで地中梁主筋32と交差角45°で交差する方向に平行に伸びる二本(複数)の第1補強筋34Aと、地中梁主筋構造部31を挟んで第1補強筋27Aと地中梁主筋構造部31に対して対称な方向、すなわち第1補強筋27Aと直交する方向に平行に伸びる二本(複数)の第2補強筋34Bとを備えている。
【0031】
地中梁コンクリート部35は、地中梁主筋構造部31を覆うように形成されていて、例えば、上下方向の厚さが300mmとされ、べた基礎コンクリート部25よりも上下方向厚さが厚く形成されている。
【0032】
(柱状基礎構造体成型部材)
図5は、コラムベース(柱状基礎構造体)に土台及び柱を固定した状態の概略を示す斜視図であり、図6図7はその構成を説明する正面図及び側面図である。
また、図8図12は本発明の一実施形態である柱状基礎構造体成型部材を説明する平面図、側面図および斜視図である。
【0033】
コラムベース(柱状基礎構造体)40は、図5に示すように、地中梁30の上に形成されている。また、コラムベース40は、図5図7に示すように、土台2を配置するとともに柱3を立設することが可能とされている。
【0034】
土台2は、例えば、土台2Aの側面に土台2Bの端面を当接させて構成されていて、基部をコラムベース40に埋設したアンカボルト53によって固定されている。
また、柱3は、例えば、柱3にホールダウン金具51を取付けて、基部をコラムベース40に埋設したホールダウン固定アンカボルト52にホールダウン金具51を固定することにより固定されている。このとき、ホールダウン固定アンカボルト52は土台2を貫通するようになっている。
【0035】
コラムベース(柱状基礎構造体)40の柱状基礎コンクリート部45が土台2、柱3の外形寸法よりも大きく形成されているので、ホールダウン固定アンカボルト52やアンカボルトを容易に埋設することが可能とされている。
【0036】
コラムベース40は、例えば、柱状基礎主筋集合体41と、スパイラル帯筋(柱状基礎帯筋)43と、柱状基礎コンクリート部45とを備えて構成されている。
【0037】
柱状基礎主筋集合体41は、例えば、4本の柱状基礎主筋42を備えて構成されている。そして、それぞれの柱状基礎主筋42はL字形に形成されていて、柱状基礎主筋部42Aと主筋定着部42Bとを備えている。
柱状基礎主筋部42Aは、設置されたときに上方に向かって伸び、主筋定着部42Bは柱状基礎コンクリート部45に埋設されるようになっている。
【0038】
また、それぞれの柱状基礎主筋42は、例えば、図8に示すように、平面視して主筋定着部42Bが互いに略放射状に離間するように配置されるとともに、主筋定着部42Bの先端部が地中梁主筋構造部31を構成する両側の地中梁主筋構造部31と概ね重なる位置まで伸びるように配置されている。
【0039】
スパイラル帯筋43は、例えば、金属(例えば、鋼線)により構成されていて、スパイラル帯筋43の内周は、柱状基礎主筋集合体41を構成する4本の柱状基礎主筋部42Aに外接するらせん形状に形成されている。
【0040】
スパイラル帯筋43が、らせん形状に形成され上下方向に一体に連結されているので、設置した状態における水平方向耐荷重が増大し、コラムベース40の剛性を向上することができるようになっている。
また、スパイラル帯筋43は、工場で予め機械により成形することが可能であるので、建築現場での作業効率の向上及び工期の短縮に寄与することが容易である。
【0041】
柱状基礎コンクリート部45は、地中梁コンクリート部35と一体に形成され、柱状基礎主筋集合体41を覆うようになっている。
【0042】
コラムベース(柱状基礎構造体)40の柱状基礎コンクリート部45を形成するための型枠を成す、本発明の成型部材(柱状基礎構造体成型部材)60は、上下が開放面を成す円筒形の被覆部材61と、この被覆部材61を支持する複数(本実施形態では3つ)の支持体64,64…とを有する。
【0043】
被覆部材61は、例えばビーズ法ポリスチレンフォーム(樹脂材料)などの軽量樹脂によって形成される。本実施形態では、被覆部材61は、例えば、内径約350mm、外径約400mm、厚み50mm程度に形成されている。
【0044】
被覆部材61は、柱状基礎コンクリート部45の外周を取り巻くように配置される。また、被覆部材61は、複数の分割体に分割可能なように、端面に係止溝などが形成されていても良い。これにより、任意の個数の被覆部材61の分割体を重ねることにより、形成する柱状基礎コンクリート部45の高さを変更することができる。
【0045】
なお、被覆部材61は、後述する建築基礎の施工方法において、柱状基礎コンクリート部45の形成後に除去されても、あるいはそのまま残されても良い。被覆部材61を柱状基礎コンクリート部45の形成後に残せば、被覆部材61によって、柱状基礎コンクリート部45を囲むことにより、柱状基礎コンクリート部45が大気中の水分の影響を受けて劣化することを抑制できる。
【0046】
被覆部材61の一方の開放面61a側、本実施形態では使用時に下側となる面側には、開放面61aの周縁から高さ方向に向かって凹状に切り欠かれた切欠部63が3か所、互いに均等な間隔で形成されている。こうしたそれぞれの切欠部63には、支持体64が係合される。
【0047】
図10に示すように、支持体64,64…は、全長に渡って周面に雄ネジ65aが形成された丸棒状の柱脚ボルト65と、断面略L字状の支持部材66とを有している。
柱脚ボルト65は、一方の端面にドライバー工具を係合可能なネジ頭65bが形成されている。本実施形態では、ネジ頭65bとして、プラス型ドライバー工具を差し込むことが可能なプラス型(十字型)の溝が形成されている。なお、ネジ頭65bは、マイナス型ドライバー工具を差し込むことが可能なマイナス型の溝など、用いるドライバー工具の先端形状に合わせた溝を形成すればよい。
【0048】
また、柱脚ボルト65の他方の端面には、柱脚ボルト65の直径を拡径した接地部65cが形成されていることも好ましい。柱脚ボルト65は、こうした接地部65cが下側になるように、支持部材66を介して被覆部材61に取り付けられる。これにより、成型部材60の設置時に、柱脚ボルト65の他方の端面側が接地面にめり込んでしまうことを抑制する。
【0049】
支持部材66は、被覆部材61の切欠部63に挿入される係合部66Aと、柱脚ボルト65と螺合する雌ネジ67が形成された螺合部66Bとが一体に形成されている、本実施形態では、係合部66Aと螺合部66Bとは、互いに直角を成すように形成されている。
【0050】
図11に示すように、係合部66Aは、両側辺に鋸状の逆止刃68が一体に形成されている。この係合部66Aの最大幅は、被覆部材61の切欠部63の切欠き幅よりも大きくなるように形成されており、支持部材66を被覆部材61の切欠部63に挿入する際に、この切欠部63の側壁部分に逆止刃68の一部が食い込むように強固に係合する。
【0051】
螺合部66Bに形成される雌ネジ67は、柱脚ボルト65の雌ネジ67との螺合部分を長くするために、筒状に突出したネジ筒部75の内部に形成されている。こうした螺合部66Bは、支持部材66を被覆部材61の切欠部63に係合させた状態において、被覆部材61の内周面61cよりも内側に延びるように配される。
【0052】
これによって、図12に示すように、螺合部66Bに螺合された柱脚ボルト65は、被覆部材61の内部空間S内を内周面61cと平行に延び、一方の開放面61aから下方に突出するように配される。即ち、3本の柱脚ボルト65,65…は、成型部材60の設置状態において、被覆部材61を高さ方向に持ち上げるように下方に突出して、成型部材60を起立させる。
【0053】
なお、図10に示すように、係合部66Aと螺合部66Bとの間には、互いに直角に屈曲した状態を維持するために、リブ69が形成されている。こうしたリブ69によって、係合部66Aを被覆部材61の切欠部63に挿入する際などに、螺合部66Bに応力が加わっても、螺合部66Bが係合部66Aに向かって直角以上に折れ曲がってしまうことを防止する。
【0054】
(建築基礎の施工方法)
次に、本発明の建築基礎の施工方法、特にコラムベース(柱状基礎構造体)の施工を中心に説明する。
図13図17は、本発明の一実施形態の建築基礎の施工方法を段階的に示した斜視図、断面図である。
まず、図13(A)に示すように、工場等、建築現場以外の場所においてスパイラル帯筋43を形成する。次に、図13(B)に示すように、戸建建築物の建築現場において、柱状基礎主筋42により柱状基礎主筋集合体41を形成し、スパイラル帯筋43によって柱状基礎主筋集合体41を連結する。これにより、べた基礎主筋構造部22(図8参照)から立ち上がるようにスパイラル帯筋43が取り付けられる。
【0055】
次に、図14に示すように、被覆部材61の内部空間Sにスパイラル帯筋43が入るように成型部材60を設置する。この時、被覆部材61の一方の開放面61aから下方に突出した柱脚ボルト65,65…の他方の端面に形成された接地部65cが、べた基礎主筋構造部22の下部にある捨てコンクリート層R1に接するように、成型部材60を立設する。これにより、被覆部材61は、べた基礎主筋構造部22および地中梁30の上部に浮いた状態で支持される。
【0056】
なお、地中梁30が無い部分にコラムベース40を形成する場合には、図15に示すように、被覆部材61の一方の開放面61aから突出した側の柱脚ボルト65,65…の他方の端面に形成された接地部65cを受け止めるプレート部材71を、べた基礎主筋構造部22よりも下側、例えば地面Eの上に予め設けておき、このプレート部材71上に柱脚ボルト65,65…を置くことが好ましい。これにより、柱脚ボルト65,65…が地面Eに食い込んで成型部材60全体が沈み込むことを防止できる。
【0057】
次に、図16に示すように、それぞれの柱脚ボルト65,65…のネジ頭65bにドライバー工具Tを差し込んで、柱脚ボルト65,65…を回転させる。これにより、被覆部材61の高さ位置を調整し、被覆部材61を所定の高さ位置にする。
【0058】
また、図14に示すように、被覆部材61の他方の開放面61bに水平器Hoを設置して、被覆部材61が水平状態を保つように、水平器Hoを確認しつつ、3つの柱脚ボルト65,65…適宜回転させて、被覆部材61の傾きを微調整する。
【0059】
次に、図14に示すように、地中梁30と、被覆部材61の一方の開放面61aから突出した柱脚ボルト65,65とを番線(結束具)72を用いて結束させる。これにより、成型部材60が設置位置で固定され、後工程でコンクリートを注入する際に、成型部材60が揺れ動いて設置位置が変わってしまうことを防止する。
【0060】
なお、図15に示すように、地中梁30が無い部分にコラムベース40を形成する場合には、べた基礎主筋構造部22と、被覆部材61の一方の開放面61aから突出した柱脚ボルト65,65とを番線(結束具)72を用いて結束させる。これにより、地中梁30が無い部分であっても、成型部材60が設置位置で固定され、後工程でコンクリートを注入する際に、成型部材60が揺れ動いて設置位置が変わってしまうことを防止する。
【0061】
次に、図17に示すように、被覆部材61の他方の開放面61b側に桟部材73を架け渡し、この桟部材73と地中梁30とを線材74によって結び付ける。桟部材73としては、例えば、被覆部材61の外径よりも大きな長さの角材などを用いればよい。これにより、後工程で被覆部材61の内部空間Sにコンクリートを注入した際に、コンクリートより軽量の被覆部材61が浮き上がってしまうことを防止できる。
なお、地中梁30が無い部分にコラムベース40を形成する場合には、桟部材73とべた基礎主筋構造部22とを線材74によって結び付ければよい(図示せず)。
【0062】
以上のような手順で成型部材(柱状基礎構造体成型部材)60を設置した後、コンクリートを打設する。
図18図19は、コンクリートを打設する手順を示す断面図である。なお、図面が煩雑にならないように、べた基礎主筋構造部や地中梁の図示は省略する。
まず、図18に示すように、成型部材(柱状基礎構造体成型部材)60を構成する被覆部材61の一方の開放面61aよりも下側で、べた基礎主筋構造部22や地中梁30(図14を参照)と柱脚ボルト65とが埋まるように、成型部材60の設置位置とその周辺にコンクリートC1を打設する。また、同時に、立上り壁部10の下部、例えば立上り壁部主筋11(図3を参照)を埋めるように、コンクリートC2を打設する。コンクリートC1が硬化すると、成型部材(柱状基礎構造体成型部材)60は設置位置で固定される。
【0063】
次に、図19に示すように、被覆部材61の内部空間S内にスパイラル帯筋43(図5を参照)が埋まるようにコンクリートを打設して、コラムベース(柱状基礎構造体)40を構成する柱状基礎コンクリート部45を形成する。また、同時に、べた基礎主筋構造部22(図14を参照)の全体が埋まるようにコンクリートを打設して、べた基礎コンクリート部25を形成する。なお、立上り壁部主筋11(図3を参照)を埋めるコンクリートC2の上部にもコンクリートC2を打設して、立上り壁部10を形成する。
【0064】
こうした工程では、被覆部材61の内部空間S内にコンクリートを打設する際に、前工程で成型部材60の設置位置とその周辺だけにコンクリートC1が形成されているだけで、べた基礎コンクリート部25はまだ形成されていないので、コンクリート供給手段(図示せず)を容易に被覆部材61にアクセスさせることができる。
【0065】
なお、柱状基礎コンクリート部45の形成と、べた基礎コンクリート部25の形成は、双方が完全に硬化しない程度の時間差の範囲で同時に行えばよい。これにより、柱状基礎コンクリート部45とべた基礎コンクリート部25とは、互いに強固に接続され、柱状基礎コンクリート部45の強度向上を図ることができる。
【0066】
また、被覆部材61の他方の開放面61b側に架け渡されている桟部材73(図17を参照)は、柱状基礎コンクリート部45の硬化後に、柱状基礎コンクリート部45の上端から出ている部分の線材74とともに除去すればよい。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 建築基礎
2 土台
3 柱
6 大引き
7 根太
10 立上り壁部
11 立上り壁部主筋
11A 立上り部
11B 定着部
15 立上り壁部コンクリート部
20 べた基礎部(スラブ床)
22 べた基礎主筋構造部
22X 主筋(第1の方向)
22Y 主筋(第2の方向)
25 べた基礎コンクリート部
26 束石
30 地中梁
31 地中梁主筋構造部
32 地中梁主筋
33 スターラップ(帯筋)
34 ダイヤ筋補強部(補強筋構造部)
34A 第1補強筋
34B 第2補強筋
35 地中梁コンクリート部
40 コラムベース(柱状基礎構造体)
41 柱状基礎主筋集合体
42 柱状基礎主筋
42A 柱状基礎主筋部
42B 主筋定着部
43 スパイラル帯筋(柱状基礎帯筋)
45 柱状基礎コンクリート部
60 成型部材(柱状基礎構造体成型部材)
61 被覆部材
63 切欠部
64 支持体
65 柱脚ボルト
65a 雄ネジ
65b ネジ頭
65c 接地部
66 支持部材
66A 係合部
66B 螺合部
67 雌ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19