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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】改質ポリカーボネート樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/42 20060101AFI20240119BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C08G64/42
C08L69/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019180184
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054965
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】景山 大地
(72)【発明者】
【氏名】田積 皓平
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163768(JP,A)
【文献】特開2012-077265(JP,A)
【文献】特開2014-098094(JP,A)
【文献】特表2009-513776(JP,A)
【文献】特表2013-503921(JP,A)
【文献】特開平06-052799(JP,A)
【文献】特開2008-144084(JP,A)
【文献】特公昭38-015092(JP,B1)
【文献】XI-YUAN WANG, et al.,Modification of poly(propylene carbonate) with chain extender ADR-4368 to improve its thermal, barrier, and mechanical properties,Polymer Testing,2016年,54,301-307,http://dx.doi.org/10.1016/j.polymertesting.2016.07.024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/42
C08L 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に水酸基を有するポリカーボネート樹脂と、
前記水酸基と化学結合可能な官能基としてエポキシ基が備えられているポリマーであり、且つ、1分子中に複数の前記エポキシ基が備えられているポリマーであって、前記ポリマーの主鎖が、アルキル(メタ)アクリレートと芳香族基含有不飽和化合物とを構成単位として含んでおり、前記ポリカーボネート系樹脂1kgに対する前記エポキシ基のモル数が、9.5×10-2モル以上20.0×10-2モル以下である改質剤とを反応させて前記ポリカーボネート樹脂よりも溶融粘度が高い改質ポリカーボネート樹脂を製造し、前記ポリカーボネート樹脂としてエステル交換法によって作製された芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて前記改質ポリカーボネート樹脂を製造し、
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記一般式(X)で表される繰り返し構造を分子中に有し、
前記一般式(X)中の「R 」は、下記一般式(Y)で示される有機基であり、
前記改質ポリカーボネート樹脂は、樹脂発泡成形体の形成材料として利用される改質ポリカーボネート樹脂の製造方法。
-(O-R -O-CO)-・・・(X)
-(Ph-C(CH -Ph)-・・・(Y)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、難燃性に優れ、しかも、高い強度を有することから各種の用途において利用されている。
下記特許文献1には、エポキシ基を有する増粘剤を使ってポリカーボネート樹脂の溶融粘度を向上させることが記載されている。
より具体的には、下記特許文献1には、ポリカーボネート樹脂を増粘剤で変性して元のポリカーボネート樹脂に比べて溶融粘度が高く、良好な発泡性を示す改質ポリカーボネート樹脂を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5182841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法では、十分な改質が行われ難く、本発明は、改質ポリカーボネート樹脂に対して改質効果が顕著に発揮され得る改質ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべく、
分子中に水酸基を有するポリカーボネート樹脂と、前記水酸基と化学結合可能な官能基を有する改質剤とを反応させて前記ポリカーボネート樹脂よりも溶融粘度が高い改質ポリカーボネート樹脂を製造し、前記ポリカーボネート樹脂としてエステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂を用いて前記改質ポリカーボネート樹脂を製造する改質ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、製造される改質ポリカーボネート樹脂に対して改質効果を顕著に発揮させ得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の改質ポリカーボネート樹脂の製造方法では、ポリカーボネート樹脂と改質剤とが出発材料として用いられる。
前記ポリカーボネート樹脂としては、一般には界面重合法(ホスゲン法)によって製造されたポリカーボネート樹脂が多用されているが、本実施形態では、前記ポリカーボネート樹脂として、エステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂を用いる。
【0008】
ポリカーボネート樹脂は、通常、分子末端に水酸基を有しており、本実施形態ではこの水酸基を介して改質剤をポリカーボネート樹脂に化学結合させて改質ポリカーボネート樹脂を作製する。
分子末端に水酸基は、その一部がポリカーボネート樹脂の重合反応において失われることがあるが、エステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂は、通常、界面重合法によって作製されたポリカーボネート樹脂に比べて多くの水酸基が残存している傾向にある。
また、エステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂は、界面重合法によって作製されたポリカーボネート樹脂に比べて分岐構造を多く含む傾向にある。
本実施形態の改質ポリカーボネート樹脂の製造においては、出発材料として用いるポリカーボネート樹脂がエステル交換法によって作製されたものであれば直鎖状の分子構造を有するものであっても、分岐構造を有するものであってもよい。
尚、ポリカーボネート樹脂を改質する際には、分子末端を反応点として利用されることから、分岐構造を多く有しているポリカーボネート樹脂は、改質効果を顕著に発揮させる上において有利であると言える。
【0009】
本実施形態における前記ポリカーボネート樹脂としては、下記一般式(X)で表される繰り返し構造を分子中に有するものを採用することができる。
【0010】
-(O-R-O-CO)- ・・・(X)

ここで式中の「R」は、2価の有機基を表している。
【0011】
本実施形態における前記ポリカーボネート樹脂は、ポリ(プロピレンカーボネート)などの脂肪族ポリカーボネート樹脂よりも芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
即ち、前記「R」は、下記一般式(Y)で示される有機基であることが好ましい。
【0012】
-(Ph-C(CH-Ph)- ・・・(Y)

ここで式中の「Ph」は、フェニレン基を表している。
該フェニレン基は、o-フェニレン基であっても、m-フェニレン基であっても、p-フェニレン基であってもよい。
【0013】
本実施形態における前記改質ポリカーボネート樹脂の製造方法では、1種類の前記ポリカーボネート樹脂のみを用いる必要はなく、2種以上の前記ポリカーボネート樹脂を用いてもよい。
尚、要すれば、エステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂に加えて界面重合法によって作製されたポリカーボネート樹脂を改質ポリカーボネート樹脂の出発材料としてもよい。
但し、界面重合法によって作製されたポリカーボネート樹脂の使用量が過大であると良好な改質が行われ難くなる可能性があるため、改質ポリカーボネート樹脂の製造に用いるポリカーボネート樹脂に占めるエステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂の割合は50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
改質ポリカーボネート樹脂の製造に用いるポリカーボネート樹脂は、実質的にエステル交換法によって作製されたポリカーボネート樹脂のみであることが特に好ましい。
【0014】
該ポリカーボネート樹脂を改質するための改質剤としては、前記水酸基と化学結合可能な官能基としてエポキシ基が備えられているポリマーであり、且つ、1分子中に複数の前記エポキシ基が備えられているポリマーであることが好ましい。
前記改質剤は、アルキル(メタ)アクリレートと芳香族基含有不飽和化合物とが主鎖の構成単位となっているポリマーであることがより好ましい。
即ち、前記改質剤として用いるポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート及び芳香族基含有不飽和化合物の共重合体であっても、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有不飽和単量体、及びこれら単量体と共重合可能なエチレン性不飽和基含有化合物(以下、「その他単量体」という)の共重合体であっても良い。
本実施形態の前記ポリマーは、その他単量体を主鎖のさらなる構成単位として備えている。
【0015】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート及びn-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら化合物の中でも、炭素数1~10のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1~4の低級アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記改質剤として用いるポリマーの主鎖におけるアルキル(メタ)アクリレートの割合としては、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。
主鎖におけるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましい。
【0016】
前記芳香族基含有不飽和化合物としては、芳香族基及びエチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を挙げることができる。
エチレン性不飽和基としては、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
芳香族基含有不飽和化合物の具体例としては、スチレン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
前記改質剤として用いるポリマーの主鎖における芳香族基含有不飽和化合物の割合としては、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。
芳香族基含有不飽和化合物の割合は、50モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましい。
【0017】
前記その他単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体;アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸及びスチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;リン酸基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体、ビニルエステル;酸無水物基含有単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;アミノ基含有単量体;イミド基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン;並びにビニルエーテル等が挙げられる。
【0018】
本実施形態の前記ポリマーは、主鎖の構成単位としてグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体を含むことで分子中に複数のエポキシ基が備えられていることが好ましい。
本実施形態の前記ポリマーは、JIS K7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に基づいて測定されるエポキシ指数(=1000/エポキシ当量)が1meq/g以上であることが好ましく、1.2meq/g以上であることがより好ましく、1.4meq/g以上であることがさらに好ましい。
前記ポリマーのエポキシ指数は、3.0meq/g以下であることが好ましく、2.8meq/g以下であることがより好ましく、2.6meq/g以下であることがさらに好ましい。
【0019】
前記ポリマーは、質量平均分子量(Mw)が、5,000以上20,000以下であることが好ましい。
前記ポリマーの数平均分子量(以下、「Mn」という)に対するMw(質量平均分子量)の割合(Mw/Mn)は、4.50以下であることが好ましい。
尚、本発明において、Mn及びMwとは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0020】
前記ポリマーは、ガラス転移温度が0℃以上150℃以下であることが好ましい。
前記ポリマーのガラス転移温度は、30℃以上100℃以下であることがより好ましい。
尚、前記ガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定した中間点ガラス転移温度を意味する。
【0021】
本実施形態の改質ポリカーボネート樹脂は、上記のようなポリマーを改質剤として用い、ポリカーボネート樹脂が加熱溶融状態となる温度域において当該改質剤と前記ポリカーボネート樹脂とを溶融混練することで作製される。
本実施形態においては、1分子中における反応点が多いポリカーボネート樹脂を改質するため、改質効果が顕著に発揮され得る。
尚、本実施形態においては、1分子中における反応点が多いポリカーボネート樹脂を改質するため、改質ポリカーボネート樹脂の製造に際して改質剤を多量に添加しても余剰の改質剤によって特性等に悪影響が現れにくく、高い改質効果を期待することができる。
【0022】
本実施形態においては、改質前のポリカーボネート系樹脂1kgに対して、前記改質剤のエポキシ基のモル数が5.0×10-2モル以上となるようにポリカーボネート系樹脂と改質剤とを配合して溶融混練を実施することが好ましい。
改質前のポリカーボネート系樹脂1kgに対するエポキシ基のモル数は、8.0×10-2モル以上であることがより好ましく、9.5×10-2モル以上であることがさらに好ましく、10.0×10-2モル以上であることが特に好ましい。
改質前のポリカーボネート系樹脂1kgに対するエポキシ基のモル数は、20.0×10-2モル以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態の改質ポリカーボネート樹脂は、上記のような溶融混練を、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、オープンロールなどの一般的な混練装置を用いて作製することができる。
【0024】
本実施形態では、溶融混練によって得られた改質ポリカーボネート樹脂を、当該改質ポリカーボネート樹脂のみを含む樹脂ペレットや当該改質ポリカーボネート樹脂とともに各種添加剤を含む樹脂ペレットとすることができる。
該樹脂ペレットは、各種の樹脂成形体の形成材料として利用できる。
該樹脂ペレットは、特に樹脂発泡成形体の形成材料として好適に利用できる。
【0025】
前記添加剤としては、例えば、発泡させる際の気泡調整剤として機能するタルクなどの無機フィラーやポリテトラフロロエチレンパウダーなどの有機フィラーが挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤、防鼠剤、防虫剤等が挙げられる。
尚、前記樹脂成形体を作製する際には、改質ポリカーボネート樹脂と改質されていないポリカーボネート樹脂(以下「非改質ポリカーボネート樹脂」ともいう)とをブレンドして用いてもよい。
前記樹脂成形体にポリカーボネート樹脂に由来する特性を顕著に発揮させる上において、前記改質ポリカーボネート樹脂及び前記非改質ポリカーボネート樹脂の合計が樹脂成形体に含まれる全ての樹脂に占める割合は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
前記樹脂成形体に含まれる全ての樹脂に占める改質ポリカーボネート樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
前記改質ポリカーボネート樹脂を使って樹脂発泡体を作製するために用いる発泡剤は、既知の揮発性発泡剤や無機発泡剤を使用できる。
揮発性発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素や、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族アルコール等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、エアー(空気)、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン等)等が挙げられる。
これら発泡剤は2種以上併用してもよい。
本実施形態における発泡剤は、これらの内、無機発泡剤が好ましく、炭酸ガスがより好ましい。
【0028】
本実施形態の改質ポリカーボネート樹脂を使って得られる樹脂成形体の具体的な用途としては、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機などの移動体;テレビ、オーディオ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、ルームエアコン、ヒーター、オーブン、電子レンジ、炊飯器などの家電製品;スマートフォン、タブレット、パソコンなどの電子機器;などが挙げられる。
尚、本実施形態において作製される改質ポリカーボネート樹脂は、このような用途以外にも利用可能である。
また、本実施形態における記載はあくまで例示的なものであり本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例
【0029】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
まず、以下のような7種類のポリカーボネート樹脂と、1種類の改質剤とを用意した。
(ポリカーボネート樹脂)
PC1:
エステル交換法によって製造された分子構造が直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)が10.0g/10min
PC2:
エステル交換法によって製造された分子構造が直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=9.0g/10min
PC3:
エステル交換法によって製造された分子構造が分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=2.4g/10min
PC4:
エステル交換法によって製造された分子構造が分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=5.0g/10min
PC5:
エステル交換法によって製造された分子構造が分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=2.2g/10min
PC6:
界面重合法によって製造された分子構造が分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=1.7g/10min
PC7:
界面重合法によって製造された分子構造が直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂、MFR(300℃、1.2kgf)=8.0g/10min
(改質剤)
AS1:
分子中に複数のエポキシ基を備え、主鎖がアルキル(メタ)アクリレートと芳香族基含有不飽和化合物とを構成単位として含んでいるポリマーである改質剤、エポキシ指数2.1meq/g)
【0031】
(実施例1)
エステル交換法によって作製された直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂(上記の「PC1」)と、分子中に複数のエポキシ基を備え、主鎖がアルキル(メタ)アクリレートと芳香族基含有不飽和化合物とを構成単位として含んでいるポリマーである改質剤(上記の「AS1」)とを用意した。
これらを使った改質ポリカーボネート樹脂の製造には東洋精機社製の試験用ニーダー(商品名「ラボプラストミル」)を使用した。
まず、ポリカーボネート樹脂(PC1)を試験用ニーダーに投入し290℃にて溶融した。
溶融開始から4分経過後、改質剤(AS1)をポリカーボネート樹脂100質量部に対して5質量部となる割合(ポリカーボネート系樹脂1kgに対して、改質剤のエポキシ基のモル数が10.5×10-2モルとなる割合)で投入し、ポリカーボネート樹脂と改質剤とをこの試験用ニーダーで溶融混練し、改質ポリカーボネート樹脂を作製した。
【0032】
(改質ポリカーボネート樹脂の評価)
改質ポリカーボネート樹脂の評価は試験用ニーダーにおけるトルクの経時的な変化(上昇率)にて評価を実施した。
改質ポリカーボネートの製造過程において、ポリカーボネート樹脂を投入し4分後の改質剤投入直前において試験用ニーダーでの溶融混練におけるトルク(投入前トルク:T0)と、改質剤を投入してから6分間経過後の溶融混練におけるトルク(6分後トルク:T6)との関係からトルク上昇率を算出した。
尚、トルク上昇率は、下記のようにして算出した。
改質ポリカーボネート樹脂における改質効果は、該トルク上昇率が高いほど顕著に表れているとみなすことができる。

トルク上昇率(%)=(T6-T0)/T0 ×100%
【0033】
(実施例2~4、比較例1~2)
使用するポリカーボネート樹脂をそれぞれPC1からPC2~PC7へと変更し、実施例1と同じ改質剤を用い、実施例1と同様の方法にて改質ポリカーボネート樹脂を作製して、トルク上昇率の評価を実施した。
以上の評価結果を下記表に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
上記のことからも本発明によれば改質ポリカーボネート樹脂の製造に際して改質効果が顕著に発揮され得ることがわかる。