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特許7422517積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K15/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019199822
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072746
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 裕介
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/127983(WO,A1)
【文献】特開2018-038119(JP,A)
【文献】特開2009-072794(JP,A)
【文献】特開2003-200296(JP,A)
【文献】特開2001-025218(JP,A)
【文献】特開2018-129981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置であって、
前記板状部材を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部と、
前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部と、
前記搬送手段により搬送される前記板状部材において前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である当接領域と当接して前記板状部材を支持するリフタとを有し、
前記液状材料供給部は、前記板状部材において前記ヨーク部となる領域のうち、前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記当接領域を避けて、円弧状に並ぶように、前記板状部材に対してスポット状に複数の液状材料を付着させる、積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記打抜加工部によって形成された前記打抜部材同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材を積層する転積手段をさらに有する、請求項1記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項3】
前記リフタは、前記搬送手段による前記板状部材の搬送方向に沿って延びる凹部を有し、
前記液状材料供給部は、前記板状部材のうち前記凹部と対向する領域にも前記液状材料を付着させる、請求項1または2に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記リフタは、前記搬送手段による前記板状部材の搬送方向に沿って並んでいる、請求項1~のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項5】
板状部材を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、
隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の一対の未塗布領域を有し、
前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びており、
隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む、積層鉄心。
【請求項6】
板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造方法であって、
前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させることと、
前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成することと、
搬送される前記板状部材において前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である当接領域とリフタとが当接することによって前記リフタで前記板状部材を支持することとを含み、
前記液状材料を付着させることは、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料を付着させることよりも下流側であって前記打抜部材を形成することよりも上流側の前記当接領域を避けて、円弧状に並ぶように、前記板状部材に対してスポット状に複数の前記液状材料を付着させることを含む、積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、帯状の鋼板から所定の形状に金型によって打抜き形成された鉄心薄板を積層接着する積層鉄心の製造装置が開示されている。このような製造装置では、鋼板の所定の位置に対して接着剤を塗布した後に、鉄心薄板を打ち抜くことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5160862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層鉄心に利用される板状部材は、モータの高効率化に対するニーズに応じて薄板化が進んでいる。そのため、打抜き途中の板状部材の一部が搬送中に垂れ下がり、金型と干渉することを防ぐため、リフタを用いて板状部材を金型から持ち上げて搬送すること構成が知られている。
【0005】
しかしながら、鉄心薄板を打ち抜く前に接着剤を塗布する製造装置においてリフタを設けた場合、鉄心鋼板に塗布された接着剤がリフタに付着してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、板状部材に塗布した液状材料がリフタに付着することが防がれた積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る積層鉄心の製造装置は、板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置であって、前記板状部材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記板状部材を支持するリフタと、前記搬送手段により搬送される前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部と、前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部と、を有し、前記液状材料供給部は、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記リフタと前記板状部材とが当接する当接領域を避けて、前記板状部材に対して液状材料を付着させる。
【0008】
本開示の一形態に係る積層鉄心は、板状部材を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の未塗布領域を有し、隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む。
【0009】
本開示の一形態に係る積層鉄心の製造方法は、板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造方法であって、前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させることと、搬送される前記板状部材をリフタによって支持することと、前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成することと、を含み、前記液状材料を付着させることは、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料を付着させることよりも下流側であって前記打抜部材を形成することよりも上流側の前記リフタと前記板状部材とが当接する当接領域を避けて、前記板状部材に対して前記液状材料を付着させることを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、板状部材に塗布した液状材料がリフタに付着することが防がれた積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、プレス加工装置に含まれるダイ部材の一部及び接着剤供給部の一例を概略的に示す上面図である。
図5図5は、固定子積層鉄心の加工レイアウトの一例を示す図である。
図6図6は、固定子積層鉄心の加工レイアウトの変形例を示す図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、リフタの形状の変形例を示す図であり、図7(c)は、接着剤を塗布する領域の変形例を示す図である。
図8図8は、固定子積層鉄心の加工レイアウトの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
[固定子積層鉄心の構成]
【0014】
まず、図1を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0015】
固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材W(鉄心部材)が積み重ねられて構成される。固定子積層鉄心1は円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔1aが設けられている。貫通孔1a内には、回転子を配置可能である。
【0016】
固定子積層鉄心1は、ヨーク部2と、複数のティース部3とを有する。ヨーク部2は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部2の径方向(以下、単に「径方向」という。)における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
【0017】
ヨーク部2の外周面には、径方向外側に向けて突出する複数の耳金部(図示せず)が一体的に設けられていてもよい。当該耳金部には、固定子積層鉄心1の積層方向において耳金部を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔は、例えば、固定子積層鉄心1を電動機のハウジング(図示せず)に固定するためのボルトの挿通孔として機能する。耳金部の数(貫通孔の数)は、固定子積層鉄心1の種類等に応じて適宜設定してもよい。
【0018】
各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向かうように径方向(ヨーク部2に対して交差する方向)に沿って延びている。すなわち、各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。固定子積層鉄心1においては、48個のティース部3がヨーク部2に一体的に形成されている。各ティース部3は、周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部3の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット4が画定されている。
【0019】
固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材W(鉄心部材)が積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、電磁鋼板MS(板状部材)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、固定子積層鉄心1に対応する形状を呈している。したがって、図5に示すように打抜部材Wには固定子積層鉄心1の貫通孔1aに対応する貫通孔Waがそれぞれ形成されている。また、打抜部材Wには、ヨーク部2に対応する円環部Wb、ティース部3に対応するティース片Wc、及び、スロット4に対応する凹部Wdが設けられる。なお、以下の実施形態では、電磁鋼板MSを打ち抜くことで積層鉄心を製造する場合について説明するが、積層鉄心に使用する板状部材は電磁鋼板に限定されない。板状部材としては、電磁鋼板のほか、アモルファス金属板、合金板等の一般的な鉄心材料からなる部材を用いることができる。また、板状部材の厚さは、例えば、0.1mm~0.5mm程度とすることができるが、この範囲に限定されない。
【0020】
複数の打抜部材W同士はそれぞれ接着剤によって固定される。後述の積層鉄心製造装置では、電磁鋼板MSの一方の面に接着剤が塗布された後に打ち抜かれることで打抜部材Wが形成される。このようにして形成された片面に接着剤が塗布された打抜部材Wを複数積層することによって固定子積層鉄心1が製造される。なお、詳細は後述するが、積層鉄心製造装置では、打抜部材Wの接着剤塗布面の一部に接着剤が塗布されない領域が形成される。
【0021】
固定子積層鉄心1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、固定子積層鉄心1の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定されていてもよい。
【0022】
固定子積層鉄心1では、数枚の打抜部材Wを同一方向に重ねた後、転積によって打抜部材Wの角度を変更するという工程を繰り返している。これにより、接着剤の未塗布箇所(未塗布領域N)が固定子積層鉄心1の特定の方向に偏らないようにしている。この点については後述する。
【0023】
[積層鉄心の製造装置の構成]
続いて、図2を参照して、積層鉄心の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の電磁鋼板MSから積層体10を製造するように構成されている。製造装置100は、図2に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0024】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、電磁鋼板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、電磁鋼板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。すなわち、一対のローラ121,122は、電磁鋼板MSを搬送するための搬送手段としての機能を有する。
【0025】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される電磁鋼板MSを複数のパンチにより順次打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130の構成については、後述する。
【0026】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及びプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120及びプレス加工装置130に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0027】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、図3及び図4を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、図3に示されるように、下型140と、上型150と、プレス機160とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイ部材D1~D4と、接着剤供給部143(液状材料供給部)と、複数のガイドポスト144と、搬送機構145とを含む。
【0028】
ベース141は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として機能する。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C4が形成されている。ダイホルダ142は、例えば、焼き入れ等の熱処理が施されていない鋼材(生材)で構成されていてもよい。
【0029】
複数の排出孔C1~C4は、ダイホルダ142の内部を上下方向(図3の矢印Z参照)に延びていてもよい。複数の排出孔C1~C4には、電磁鋼板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される。
【0030】
ダイ部材D1~D4は、電磁鋼板MSの搬送方向において互いに隣接するように、ダイホルダ142の上部に取り付けられている。複数のダイ部材D1~D4は、電磁鋼板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。また、ダイ部材D3とダイ部材D4との間に、接着剤供給部143が設けられる。
【0031】
ダイ部材D1~D3は概略共通の構成とされている。
【0032】
ダイ部材D1は、ダイプレートD11と、ダイD12とを含む。ダイプレートD11は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD12を保持するように構成されている。ダイプレートD11は、例えば、焼き入れ等の熱処理が施された鋼材で構成されていてもよい。ダイD12は、例えば、炭化タングステンを含む超硬合金で構成されていてもよい。ダイD12には、上下方向に貫通するダイ孔D13が形成されている。ダイ孔D13は、パンチP1と共に、電磁鋼板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。また、ダイ孔D13は、排出孔C1と連通している。ダイ孔D13内にパンチP1が挿抜されることにより、ダイ孔D13の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打抜加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0033】
ダイ部材D2は、ダイプレートD21と、ダイD22とを含む。ダイプレートD21は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD22を保持するように構成されている。ダイプレートD21及びダイD22の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。ダイD22には、上下方向に貫通するダイ孔D23が形成されている。ダイ孔D23は、パンチP2と共に、電磁鋼板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。また、ダイ孔D23は、排出孔C2と連通している。ダイ孔D23内にパンチP2が挿抜されることにより、ダイ孔D23の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打抜加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0034】
ダイ部材D3は、ダイプレートD31と、ダイD32とを含む。ダイプレートD31は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD32を保持するように構成されている。ダイプレートD31及びダイD32の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。ダイD32には、上下方向に貫通するダイ孔D33が形成されている。ダイ孔D33は、後述するパンチP3と共に、電磁鋼板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。ダイ孔D33は、排出孔C3と連通している。ダイ孔D33内にパンチP3が挿抜されることにより、ダイ孔D33の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打抜加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0035】
本実施形態では、図4に示すように、ダイ部材D3による打抜加工によって、貫通孔1aに対応する打抜部材Wの貫通孔Waが電磁鋼板MSに形成されてもよい。また、ダイ部材D1またはダイ部材D2による打抜加工によって、固定子積層鉄心1のスロット4に対応する打抜部材Wの凹部Wdが電磁鋼板MSに形成されてもよい。
【0036】
接着剤供給部143は、電磁鋼板MSに対して接着剤を供給する機能を有する。接着剤供給部143は、図4に示すように、矩形状を呈する板状体であり、ダイ部材D1~D4と同様にダイホルダ142上に配置することができる。また、接着剤供給部143の表面には接着剤を吐出する複数の吐出口147が設けられる。また、接着剤供給部143の内部には、吐出口147に接続されて吐出口147まで接着剤を供給する供給路L1が設けられる。
【0037】
吐出口147は、図4に示すように略円環状に配置される。これは、打抜部材Wの円環部Wb及びティース片Wcの下面に対して接着剤が塗布されるような配置となっている。ただし、円環部Wbの一部に接着剤が塗布されない領域が形成されるように、吐出口147の配置が設定されている。
【0038】
具体的には、搬送方向Xに沿って電磁鋼板MSが移動した場合に、電磁鋼板MSの下面のうちリフタ146と接触することが想定される領域には、吐出口147が設けられていない。図4に示すように、リフタ146が搬送方向Xに沿って並んでいる場合、接着剤供給部143における吐出口147よりも下流側のリフタ146は接着剤が塗布された後の電磁鋼板MSを支持することになる。具体的には、複数のリフタ146のうち接着剤が塗布された後の電磁鋼板MSを支持するのは、搬送方向Xに沿って接着剤供給部143の吐出口147より下流側であってダイ孔D43よりも上流側のリフタ146a,146b,146c,146dである。また、リフタ146a及びリフタ146cと、リフタ146b及びリフタ146dとは、それぞれ搬送方向に沿って一列に並んでいる。このような条件では、リフタ146a及びリフタ146cは、電磁鋼板MSの下面のうち、破線で示す当接領域S1と当接し得る。また、リフタ146cは、電磁鋼板MSの下面のうち、破線で示す当接領域S3と当接し得る。同様に、リフタ146b及びリフタ146dは、電磁鋼板MSの下面のうち、破線で示す当接領域S2と当接し得る。リフタ146dは、電磁鋼板MSの下面のうち、破線で示す当接領域S4と当接し得る。したがって、吐出口147は、当接領域S1~S4に対して接着剤が付着しないように配置される。図4に示す例では、当接領域S1~S4よりも電磁鋼板MSの中央側に吐出口147が配置されている。電磁鋼板MSの中央側とは、打ち抜き後の打抜部材Wにおける中央側に相当する。
【0039】
吐出口147から接着剤供給部143の表面に接着剤が所定量吐出可能となるように、供給路L1が形成されている。供給路L1の吐出口147側と逆側の端部148は、外部に設けられた液タンク149に対して配管L2を介して接続されている。液タンク149と端部148との間の配管L2には、送液ポンプPが設けられる。送液ポンプPは、例えばコントローラCtrの指示に基づいて駆動することで、液タンク149から接着剤供給部143へ向けて接着剤を供給する。供給された接着剤は、供給路L1を経て複数の吐出口147から接着剤供給部143の表面へ供給される。
【0040】
ダイ部材D4は、ダイプレートD41と、ダイD42と、回転体D44と、駆動機構D45とを含む。ダイ部材D4のダイプレートD41は、中央部に設けられた貫通孔内で回転体D44に支持されたダイD42を保持するように構成されている。回転体D44は、ダイプレートD41とダイD42との間に設けられる。回転体D44は、ダイプレートD41に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるように保持されていてもよい。ダイD42は、回転体D44に支持される。この結果、ダイD42は、回転体D44に支持された状態でダイプレートD41に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となる。ダイプレートD41、ダイD42、回転体D44の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0041】
ダイD42には、上下方向に貫通するダイ孔D43が形成されている。ダイ孔D43は、パンチP4と共に、電磁鋼板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが電磁鋼板MSを打抜加工することにより、電磁鋼板MSから打抜部材Wが形成されてもよい。すなわち、ダイD42及び、パンチP4は、電磁鋼板MSを打抜加工して打抜部材Wを形成するための打抜加工部としての機能を有する。ダイ孔D43は、例えば、全体として円形状を呈していてもよい。
【0042】
ダイ孔D43は、排出孔C4と連通している。ダイ孔D43内にパンチP4が挿抜されることにより、ダイ孔D43の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打抜加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D43内において積層される。このとき、電磁鋼板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、その下面に塗布された接着剤により、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対して接着される。所定枚数の打抜部材Wがダイ孔D43内において積層されると、得られた積層体10が排出孔C4を通じて搬送機構145に載置される。
【0043】
駆動機構D45は、回転体D44に接続されている。駆動機構D45は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、回転体D44及びダイD42の中心軸周りに回転体D44を回転させる。そのため、電磁鋼板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが、先行して打ち抜かれた打抜部材W上に積み重ねられた後に、ダイD42が所定角度回転することで、後続の打抜部材Wが先行する打抜部材Wに対して転積される。駆動機構D45は、例えば、回転モータ、歯車、タイミングベルト等の組み合わせによって構成されていてもよい。このように、回転体D44及び駆動機構D45は、打抜部材Wの転積を行う転積手段として機能する。
【0044】
複数のガイドポスト144は、図3に示されるように、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト144は、ガイドブッシュ151a(後述する)と共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト144は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0045】
搬送機構145は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、ダイD42から落下した積層体10を後続の装置(例えば、磁石取付装置、樹脂注入装置、溶接装置、シャフト取付装置など)に送り出すように構成されている。搬送機構145は、搬送機構145の一端は排出孔C4内に位置しており、搬送機構145の他端はプレス加工装置130の外部に位置している。搬送機構145は、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0046】
図3に示すように、ダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面は平坦とされている。また、ダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143には、その表面から上方へ突出するリフタ146が設けられている。
【0047】
リフタ146は、ダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143上を搬送される電磁鋼板MSをダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面から離間した状態で支持するように設けられる。リフタ146の配置は特に限定されない。図4では、ダイ部材上を搬送される電磁鋼板MSを破線として示しているが、一例として、ダイプレートD31,D41上を搬送される電磁鋼板MSの両端の近傍にリフタ146を設けることができる。図4に示すように、リフタ146は、電磁鋼板MSの搬送方向Xに沿って複数並べられている。
【0048】
リフタ146は、後述の上型150の上下動によって電磁鋼板MSに対する打抜加工が行われる際には、リフタ146の上端がダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面と同一高さになることができる。一例として、リフタ146は、例えば上下方向に延びるピンをその下方に設けられた弾性部材により支持することで上下動が可能な構成とすることができる。このような構成とすることにより、電磁鋼板MSが搬送されている状態では、リフタ146が上方に延びて電磁鋼板MSをダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面から離間した状態で支持することができる。一方、電磁鋼板MSに対する打抜加工が行われる際には、リフタ146が下方に下がることで、電磁鋼板MSをダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面に対して押し当てることを可能としている。なお、リフタ146は上記の構成に限定されるものではない。
【0049】
図3に戻り、上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152と、複数のパンチP1~P4とを含む。パンチホルダ151は、ダイホルダ142と対向するようにダイホルダ142の上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P4を保持するように構成されている。
【0050】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト144に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは円筒状を呈しており、ガイドポスト144がガイドブッシュ151aの内部空間を挿通可能である。なお、ガイドポスト144が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0051】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0052】
ストリッパ152は、パンチP1~P4で電磁鋼板MSを打ち抜く際にパンチP1~P4に食いついた電磁鋼板MSをパンチP1~P4から取り除くように構成されている。同時に、ストリッパ152は、接着剤供給部143に対して電磁鋼板MSを押し当てるように構成されている。ストリッパ152が電磁鋼板MSを接着剤供給部143に対して押し当てることで、吐出口147から吐出された接着剤が電磁鋼板MSの裏面の所定位置に付着する。ストリッパ152は、ダイ部材D1~D4及び接着剤供給部143とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0053】
ストリッパ152は、接続部材152aを介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材152aは、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材152aの本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材152aの本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材152aの本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152との間に位置するように、例えば圧縮コイルばね等の付勢部材152bが取り付けられていてもよい。
【0054】
接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材152aの頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材152aの本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部に移動できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、パンチホルダ151に吊り下げ保持されている。
【0055】
ストリッパ152には、パンチP1~P4に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びている。各貫通孔はそれぞれ、上方から見たときに、対応するダイ孔D13~D43と連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチP1~P4の下部が挿通されている。パンチP1~P4の当該下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0056】
パンチP1~P4は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1~P4の下端部は、それぞれダイ孔D13~D43に対応する形状を呈している。また、ダイ孔の数等に応じてパンチP1が複数設けられる構成であってもよい。
【0057】
プレス機160は、上型150の上方に位置している。プレス機160のピストンは、パンチホルダ151に接続されており、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機160が動作すると、そのピストンが伸縮して、上型150が全体的に上下動する。
【0058】
[積層鉄心の製造方法]
続いて、図4及び図5を参照して、積層体10の製造方法について説明する。なお、パンチP1,P2及びダイ部材D1,D2の動作による打ち抜き加工ついては概略のみ説明する。
【0059】
電磁鋼板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、搬送方向Xに沿って移動する。電磁鋼板MSの所定部位がダイ部材D1に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が電磁鋼板MSに到達すると、リフタ146上に保持された電磁鋼板MSを下方に押し込む。ストリッパ152の押し込みによってリフタ146が下降することで、リフタ146上の電磁鋼板MSがダイ部材D1の表面上に当接する。ストリッパ152とダイ部材D1とで電磁鋼板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0060】
このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P4は引き続き降下する。そのため、パンチP1~P4の先端部はそれぞれ、ストリッパ152の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイ孔D13~D43に到達する。この過程で、パンチP1が電磁鋼板MSをダイ孔D13に沿って打ち抜く。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機160が動作して、上型150を上昇させる。
【0061】
次に、電磁鋼板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、電磁鋼板MSの所定部位がダイ部材D2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP2による電磁鋼板MSの打抜加工が行われる。これにより、次の貫通孔が電磁鋼板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0062】
次に、電磁鋼板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、電磁鋼板MSの所定部位(図5の加工部位A1参照)がダイ部材D3に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3による電磁鋼板MSの打抜加工が行われる。これにより、次の貫通孔Wa(図5の加工部位A1参照)が電磁鋼板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0063】
次に、電磁鋼板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、電磁鋼板MSの所定部位(図5の加工部位A2を参照)が接着剤供給部143に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。このとき、ストリッパ152が電磁鋼板MSに到達すると、リフタ146上に保持された電磁鋼板MSを下方に押し込む。ストリッパ152の押し込みによってリフタ146が下降することで、リフタ146上の電磁鋼板MSが接着剤供給部143の表面上に当接する。ストリッパ152と接着剤供給部143とで電磁鋼板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0064】
接着剤供給部143の複数の吐出口147には、送液ポンプPの駆動によって、液タンク149から配管L2、供給路L1を経た接着剤が供給される。したがって、接着剤供給部143の表面の吐出口147に対応する位置には液状の接着剤が供給されている。この状態で、ストリッパ152と接着剤供給部143とで電磁鋼板MSを挟持すると、電磁鋼板MSの下面(下型140側の主面)の所定位置に接着剤が付着する。図5の加工部位A2では、電磁鋼板MSの下面の吐出口147に対応する位置に接着剤Bが塗布されている状態を示している。また、図4に示すように、吐出口147は、電磁鋼板MSにおけるリフタ146(リフタ146a,146b,146c,146d)との当接領域S1~S4に相当する領域には接着剤が塗布されないような配置とされている。したがって、接着剤の未塗布領域N(図5の加工部位A2参照)が打抜部材Wに設けられるように接着剤が塗布される。図4に示すような吐出口147の配置とした場合、接着剤の未塗布領域Nは、打抜部材Wにおいて円環部Wbの周縁のうち対向する2か所に設けられる。
【0065】
次に、電磁鋼板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、電磁鋼板MSの所定部位(図5の加工部位A3参照)がダイ部材D4に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP4による電磁鋼板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われる。これにより、打抜部材Wが形成される。打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D43内において積層される。
【0066】
以上のようにして打ち抜かれた複数の打抜部材Wは、高さ方向においてティース片Wc同士が重なり合うようにダイ孔D43内において転積される。その後、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、積層体10が完成する。
【0067】
上記のように接着剤の未塗布領域Nが存在する打抜部材Wを転積しながら積層体10を形成した場合、図1に示すように、固定子積層鉄心1の周縁に沿って未塗布領域Nが分散した配置となる。換言すると、打抜部材W毎に設けられる接着剤の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む。図1に示す例では、打抜部材Wが8枚積層される毎に転積された状態を示している。転積のタイミングは特に限定されず、例えば打抜部材Wを1枚積層する毎に転積してもよいし、図1に示すように複数枚積層する毎に転積してもよい。
【0068】
[変形例]
次に、上記の固定子積層鉄心1の製造装置及び製造方法の変形例について説明する。図6は、吐出口147の配置を変更することで、電磁鋼板MSに形成される未塗布領域Nの形状を変更した例である。
【0069】
図6に示す例では、リフタ146(リフタ146a,146b,146c,146d)の配置は図4及び図5と同じである。したがって、当接領域S1~S4の形状も図5に示す電磁鋼板MSと同じとなる。一方、図6に示す例では、接着剤供給部143における吐出口147の配置を変更し電磁鋼板MSにおける当接領域S1~S4に対応する領域よりも外側にも吐出口147を設けている。この結果、打抜部材Wにおける未塗布領域Nは当接領域S1~S4に対応する領域と概ね同一形状となっている。このような構成とした場合、図5に示す例と比較して接着剤の未塗布領域Nを小さくすることができる。
【0070】
次に、リフタ146の形状を変形する例について説明する。上記で説明したリフタ146では、電磁鋼板MSに対するリフタ146の当接面は、長方形の長手方向両端が丸形となっている。しかしながら、リフタ146の形状を変更することで、電磁鋼板MSに対するリフタ146の当接面の形状を変更することができる。
【0071】
図7は、リフタ146の形状の変更について例示する図である。図7(a)は変形例に係るリフタ146Xの上面図であり、図7(b)は電磁鋼板MSの搬送方向Xからリフタ146Xを見た図である。リフタ146Xは上方の中央に搬送方向Xに沿って延びる凹部146pを有している。そのため、リフタ146Xのうち電磁鋼板MSと当接し得る上面146sは凹部146pにより2つに分かれていて、凹部146pを挟んで離間した状態となる。このような接着剤供給部143の吐出口147よりも下流側のリフタ146Xがこのような形状とされている場合、電磁鋼板MSにおけるリフタ146Xとの当接領域は、リフタ146Xの上面146sに対応した領域となる。したがって、電磁鋼板MSにおけるリフタ146Xとの当接領域には、凹部146pと対向し得る領域は含まれない。したがって、図7(c)に示すように、搬送方向Xに沿って移動する電磁鋼板MSのうち凹部146pと対向する領域にも接着剤Bを塗布する構成とすることもできる。
【0072】
このように、リフタ146の形状は適宜変更することができる。また、接着剤供給部143の接着剤の吐出口147よりも下流であってダイD42よりも上流のリフタ146が電磁鋼板MSと当接し得る当接領域を避けて接着剤を塗布する構成が可能な範囲で、その領域は適宜変更することができる。
【0073】
上記の観点から、電磁鋼板MSに対するリフタ146の配置を考慮して接着剤供給部143による接着剤の未塗布領域を設計すればよい。したがって、電磁鋼板MSから打抜部材Wをどのように形成するかについては特に限定されない。例えば、上記実施形態では、プレス加工装置130では、電磁鋼板MSの搬送方向Xに沿って、打抜部材Wの形成に必要なダイ部材D1~D4及び接着剤供給部143を1列に配置する場合について説明した。これに対して、電磁鋼板MSの搬送方向Xに沿って、打抜部材Wの形成に必要なダイ部材D1~D4及び接着剤供給部143を2列に配置したプレス加工装置を用いてもよい。このような場合でも、上記実施形態で説明したリフタ146と接着剤を塗布する領域との関係を適用することができる。
【0074】
図8は、一連の加工機構、すなわち打抜部材Wの形成に必要なダイ部材D1~D4及び接着剤供給部143を搬送方向Xに沿って2列配置とした場合の固定子積層鉄心の加工レイアウトの例を示す図である。図8に示す例では、電磁鋼板MSの幅方向(搬送方向Xに対して直交する方向)に沿って2つの打抜部材Wを打ち抜くことが可能とされている。2列配置の装置では、2つの加工部位A11,A12において打抜加工が行われる。同様に加工部位A21,22において接着剤が塗布され、加工部位A31,32において打抜部材Wの形成に係る打抜加工が行われる。電磁鋼板MSのうち加工部位A11において打抜加工された領域は、加工部位A21において接着剤Bが塗布され、加工部位A31においてダイ部材D4及びパンチP4に対応する装置によって打抜部材Wが形成される。一方、電磁鋼板MSのうち加工部位A12において打抜加工された領域は、加工部位A22において接着剤Bが塗布され、加工部位A32においてダイ部材D4及びパンチP4に対応する装置によって打抜部材Wが形成される。図8に示す例では、打抜部材Wを打ち抜く加工部位A31,A32の配置は搬送方向Xに沿って互いにずれた位置となっているが、この点は装置の各部の構造等によって適宜変更することができる。
【0075】
このような2列配置の装置においても、リフタ146による支持は行われる。図8では加工部位A21から加工部位A31の間、及び、加工部位A22から加工部位A32の間に設けられるリフタ14611~14615、リフタ14621~14629、リフタ14631~14635が示されている。リフタ14611~14615、リフタ14621~14629、及び、リフタ14631~14635は、それぞれ搬送方向Xに沿って一列に並んでいる。このような場合、電磁鋼板MSには、リフタ14611~14615、リフタ14621~14629、及び、リフタ14631~14635の配置に応じて、リフタとの当接領域が設けられる。したがって、このリフタ14611~14615、リフタ14621~14629、及び、リフタ14631~14635の配置に基づいて、加工部位A21,A22における接着剤の塗布領域を設計することで、接着剤の未塗布領域Nを電磁鋼板MSに形成することができる。
【0076】
なお、図8に示す例のようにリフタの数が増える場合、リフタに対して接着剤が付着することを防ぐための未塗布領域Nを増やすことが必要となる。図8に示す例では、リフタ14611~14615、リフタ14621~14629、及び、リフタ14631~14635がそれぞれ一列に並んでいるため、未塗布領域Nの面積を小さくすることができる。一方、例えば、リフタ146の上面の面積を大きくし、電磁鋼板MSとの当接領域を大きくすると、未塗布領域Nを大きくすることが必要となる。このようにリフタ146の形状・数・配置は特に限定されないが、リフタ146の配置に応じて未塗布領域Nの形状を適宜変更することが必要となる。
【0077】
[作用]
上記実施形態で説明したプレス加工装置130を含む積層鉄心の製造装置及び製造方法では、電磁鋼板MSが搬送方向X(図4及び図5参照)に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。電磁鋼板MSは、リフタ146によってダイプレートD11、D21、D31、D41及び接着剤供給部143の表面から離間した状態で支持される。このとき、接着剤供給部143では、打抜部材Wとなる領域のうち、接着剤供給部143における液状材料の付着箇所よりも下流側であって打抜加工部として機能するダイD42及びパンチP4よりも上流側のリフタ146と電磁鋼板MSとが当接する当接領域を避けて、電磁鋼板MSに対して液状材料を付着させている。具体的には、電磁鋼板MSのうちリフタ146a,146b,146c,146dのいずれか当接する当接領域S1~S4を避けて接着剤の吐出口147が設けられる。これにより、当接領域S1~S4を含む未塗布領域Nが電磁鋼板MS(から形成される打抜部材W)に設けられる。
【0078】
上記のような構成を有することで、リフタ146a,146b,146c,146dの上面に接着剤が付着することを防ぐことができ、リフタに付着した接着剤が電磁鋼板MSの他の領域等にさらに付着することを防ぐことができる。また、リフタに接着剤が付着した場合に発生するメンテナンス作業等を減らすことができる。
【0079】
積層鉄心に用いられる電磁鋼板が薄型化していることによって、プレス加工装置130において、ティース片Wc等が下方に垂れ下がってダイ部材等と干渉する可能性がある。そこで、プレス加工装置130では、リフタ146によって電磁鋼板MSを支持する構成が検討されている。一方、電磁鋼板MSに対して接着剤を塗布した後に打ち抜くことで打抜部材Wを形成して積層鉄心とする場合、接着剤を塗布した後の電磁鋼板MSをリフタ146で支持することでリフタ146に接着剤が付着する可能性がある。
【0080】
上記の問題を回避するために、電磁鋼板MSのうち通常接着剤が塗布されない領域、すなわち、打抜部材Wとして打ち抜かれる領域よりも外側をリフタによって支持することも検討される。しかしながら、リフタによって支持するための領域を確保するために電磁鋼板MSを幅広とすることは材料費の増加につながる。したがって、材料費の増加を防ぎつつ、且つ、接着剤がリフタへ付着することを防ぐことが求められる。
【0081】
これに対して本実施形態で説明した積層鉄心の製造装置では、打抜部材Wとなる領域のうち、リフタ146と当接する当接領域S1~S4には接着剤の未塗布領域Nが設けられる。このような構成とすることで、接着剤が塗布された後の電磁鋼板MSを支持するリフタ146(リフタ146a,146b,146c,146d)についても、接着剤の付着を防ぐことが可能となる。特に、電磁鋼板MSを幅広とすること等を防ぎながら、リフタに対する接着剤の付着を防止することができるため、材料費の増加も防ぐことができる。
【0082】
また、上記の積層鉄心の製造装置では、加工後の打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層する転積を行っている。このような構成とすることで、上記のような未塗布領域Nを有する打抜部材Wを積層して形成した積層鉄心であっても、一方向のみ剛性が低下すること等を防ぐことができる。また、接着剤の有無に応じた厚さの偏り等の発生も防ぐことができる。
【0083】
また、上記のように転積によって製造された、電磁鋼板MSを打抜加工された3枚以上の打抜部材Wが積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、隣接する打抜部材Wの間には、それぞれ接着剤の未塗布領域を有し、隣接する前記打抜部材毎に設けられる接着剤の未塗布領域Nは、平面視において重ならない領域を含む。このような構成とすることで、上記のような未塗布領域Nを有する打抜部材Wを積層して形成した積層鉄心であっても、一方向のみ剛性が低下すること等を防ぐことができる。また、接着剤の有無に応じた厚さの偏り等の発生も防ぐことができる。
【0084】
また、上記の変形例で説明したリフタ146Xのように、搬送手段による電磁鋼板MSの搬送方向Xに沿って延びる凹部146pを有し、接着剤供給部143は、電磁鋼板MSのうち凹部146pと対向する領域にも接着剤を塗布する構成としてもよい。このような構成とすることで、接着剤の未塗布領域Nが広範囲に大きく拡がることを防ぐことができるため、未塗布領域Nが設けられることによる接着力の低下等を防ぐことができる。
【0085】
リフタ146は、打抜部材Wにおいてティース片Wcとなる領域とは異なる領域が当接領域S1~S4となるように設けられている。このような構成とすることで、接着剤の未塗布領域Nが特定のティース片Wcに設けられ、ティース片Wcの接着が適切に行われず剛性が低下することを防ぐことができる。また、モータの動作時には、固定子積層鉄心1のティース部3の先端の磁界強度が高められる。そのため、ティース片Wc同士の接着が適切に行われない場合には、積層された打抜部材Wのティース片Wc同士が磁力によって反発して剥がれやすくなる可能性がある。上記のように、打抜部材Wにおいてティース片Wcとなる領域とは異なる領域が当接領域S1~S4となるようにした場合、上記のように磁力の発生による固定子積層鉄心1の破損の可能性を抑制することも可能となる。なお、上記実施形態で説明したような固定子積層鉄心1の場合、ヨーク部2に相当する円環部Wbに未塗布領域Nを設けることで、積層鉄心としての剛性の低下を防ぐことができる。
【0086】
接着剤供給部143における接着剤の付着箇所よりも下流側であってダイD42及びパンチP4よりも上流側のリフタは、電磁鋼板MSの搬送方向Xに沿って並んでいる。リフタ146a,146b,146c,146dの場合には、二列となるように並んでいる。このような構成とすることで、リフタ146a,146b,146c,146dへの接着剤の付着を防ぐための未塗布領域Nを小さくすることができるため、接着後の積層鉄心の剛性の低下等を防ぐことができる。
【0087】
本開示は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【0088】
例えば、上記実施形態では、固定子積層鉄心を製造する製造装置100について説明したが、金型装置は回転子積層鉄心を製造する装置であってもよい。製造装置100による製造の対象となる積層鉄心は特に限定されない。また、積層鉄心の形状等に応じて、すなわち電磁鋼板MSから打ち抜かれる打抜部材Wの形状に応じて、すなわち、接着剤の未塗布領域Nとなる場所(すなわち、リフタ146を設ける場所)を適宜変更してもよい。
【0089】
また、リフタ146の構成及び配置は適宜変更することができる。また、リフタ146の形状・数等についても適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では、リフタ146が電磁鋼板MSの幅方向両端を支持する、または電磁鋼板MSの中央を支持する構成について説明したが、リフタ146の配置は適宜変更することができる。また、上記実施形態ではリフタ146の長手方向が電磁鋼板の搬送方向Xに対応するような場合について説明したが、搬送方向Xに対して傾いていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では接着剤を電磁鋼板MSに対して塗布する場合について説明したが、上記で説明したように電磁鋼板MSに未塗布領域を設ける構成は接着剤以外の液状材料を電磁鋼板MSに対して塗布する場合にも適用可能である。具体的には、液状材料としては、プライマ等が挙げられる。上記実施形態で説明した構成は、リフタ146に対して付着する可能性、及びリフタ146に付着した場合に問題がある可能性がある液状材料を電磁鋼板MSに付着させる場合全般に適用することができる。
【0091】
また、プレス加工装置130中に接着剤供給部143が設けられた構成について説明したが、電磁鋼板MSに対して接着剤を塗布するための構成(液状材料を付着するための構成)は、プレス加工装置130と一体的に構成されていなくてもよく、別装置によって構成されていてもよい。
【0092】
[付記]
なお、上述した具体例は、以下の構成を含んでいる。
【0093】
本開示の一形態に係る積層鉄心の製造装置は、電磁鋼板を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置であって、前記電磁鋼板を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記電磁鋼板を支持するリフタと、前記搬送手段により搬送される前記電磁鋼板の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部と、前記液状材料を付着させた後の前記電磁鋼板を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部と、を有し、前記液状材料供給部は、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記リフタと前記電磁鋼板とが当接する当接領域を避けて、前記電磁鋼板に対して液状材料を付着させる。
【0094】
前記打抜加工部によって形成された前記打抜部材同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材を積層する転積手段をさらに有する態様とすることができる。
【0095】
前記リフタは、前記搬送手段による前記電磁鋼板の搬送方向に沿って延びる凹部を有し、前記液状材料供給部は、前記電磁鋼板のうち前記凹部と対向する領域にも前記液状材料を付着させる態様とすることができる。
【0096】
前記リフタは、前記打抜部材においてティース部となる領域とは異なる領域が前記当接領域となるように設けられる態様とすることができる。
【0097】
前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記リフタは、前記搬送手段による前記電磁鋼板の搬送方向に沿って並んでいる態様とすることができる。
【0098】
本開示の一形態に係る積層鉄心は、電磁鋼板を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の未塗布領域を有し、隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む。
【0099】
本開示の一形態に係る積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造方法であって、搬送手段により搬送される電磁鋼板をリフタによって支持することと、前記電磁鋼板の一の主面のうち、液状材料供給部によって前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させることと、前記液状材料を付着させた後の前記電磁鋼板を打抜加工部において打抜加工し、前記打抜部材を形成することと、を含み、前記液状材料を付着させることは、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料供給部よりも下流側であって前記打抜加工部における液状材料の付着箇所よりも上流側の前記リフタと前記電磁鋼板とが当接する当接領域を避けて、前記電磁鋼板に対して液状材料を付着させることを含む。
【符号の説明】
【0100】
1…固定子積層鉄心、1a…貫通孔、2…ヨーク部、3…ティース部、4…スロット、110…アンコイラー、120…送出装置、121,122…ローラ、130…プレス加工装置、140…下型、141…ベース、142…ダイホルダ、143…接着剤供給部、146…リフタ、147…吐出口、149…液タンク、C1,C2,C3,C4…排出孔、Ctr…コントローラ(制御部)、D1,D2,D3,D4…ダイ部材、D11,D21,D31,D41…ダイプレート、D12,D22,D32,D42…ダイ、D13,D23,D33,D43…ダイ孔、D44…回転体、D45…駆動機構、L1…供給路、L2…配管、P…送液ポンプ、P1,P2,P3,P4…パンチ。
図1
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図8