IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7422524ステージ装置、露光装置、および物品製造方法
<>
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図1
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図2
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図3
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図4
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図5
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図6
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図7
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図8
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図9
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図10
  • 特許-ステージ装置、露光装置、および物品製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ステージ装置、露光装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240119BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/68 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019212528
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085910
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩之
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108983(JP,A)
【文献】特開2012-234108(JP,A)
【文献】特開2017-173140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内面を有するベース部と、
物体を保持して前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って第1方向に移動する第1可動部と、
用力線の一端側を接続して前記第1可動部に固定される第1接続部と、
前記用力線の他端側を接続する第2接続部と、
前記第2接続部を保持して、前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って前記第1方向とは異なる第2方向に移動する第2可動部と、
前記第1可動部および前記第2可動部の駆動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1可動部が前記第1方向に往復駆動する間の前記用力線の変形量が小さくなるように、前記第1可動部による前記往復駆動の駆動条件に応じて、前記第2方向における前記第2接続部の目標位置を決定し、該決定された目標位置に基づき前記第2可動部の駆動を制御する
ことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記用力線の位置を検出するセンサを有し、
前記制御部は、前記センサにより検出された、前記第1可動部が前記第1方向に往復駆動する間の前記用力線の駆動振幅を最小にする前記第2方向における前記第2接続部の位置を前記目標位置として決定することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記第2方向は、前記案内面に沿う前記第1方向と交差する方向であることを特徴とする請求項1または2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記第2方向は、前記案内面と直交する軸周りの回転方向であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記用力線の、前記案内面に沿う前記第1方向と直交する方向の可動範囲を制限する規制部材を更に有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項6】
前記用力線は、可撓性を有するフレキシブルフラットケーブルであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項7】
案内面を有するベース部と、
物体を保持して前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って移動する第1可動部と、
用力線の一端側を接続して前記第1可動部に固定される第1接続部と、
前記用力線の他端側を接続する第2接続部と、
前記第2接続部を保持して前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って移動する第2可動部と、
前記第1可動部および前記第2可動部の駆動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1可動部が前記案内面に沿って往復駆動する間の前記用力線の変形量が小さくなるように、前記第1可動部による前記往復駆動の駆動条件に応じて、前記第2接続部の目標位置を決定し、該決定された目標位置に基づき前記第2可動部の駆動を制御する、ことを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
前記物体は、露光装置に用いられる原版または基板であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項9】
請求項に記載のステージ装置を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を含み、前記現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置、露光装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶パネル等の製造工程であるリソグラフィ工程においては、原版に形成されているパターンを投影光学系を介して基板に転写する露光装置が使用される。露光装置では、原版および基板はそれぞれステージに保持されてステージとともに高速で移動する。移動するステージには、原版や基板の真空吸着に使用される真空配管、各種駆動機構への電源供給ケーブル等、各種の用力線が接続される。一般に、用力線はU字状に折り返されて、その一端はステージの固定部に接続され、他端はステージの可動部に接続される。このように接続された用力線は、ステージの移動に伴って移動する。
【0003】
このとき、用力線のU字状の折り返し部は、ステージの移動によって変形するため、用力線の耐久性が低下しうる。これに対し、特許文献1には、用力ケーブルの直線部において、用力ケーブルの延在する方向と交差する方向に関する断面に湾曲部を設け、これにより曲げに対する抵抗力を大きくする構成が開示されている。また、特許文献2には、フラットチューブを上下にU字状に折り返し、上側を+X方向に移動させる場合、下側を-X方向に同量移動させることにより、U字状の折り返し部の形状を一定にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-134921号公報
【文献】特表2013-509692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、露光装置には、生産性向上を目的として、ますますの高速化が求められており、そのため、露光装置におけるステージの速度や加速度が高められている。そのため、ステージの移動に伴って変形を繰り返す用力線の耐久性を更に向上させることが必要になっている。
【0006】
本発明は、例えば、用力線の耐久性の点で有利なステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、案内面を有するベース部と、物体を保持して前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って第1方向に移動する第1可動部と、用力線の一端側を接続して前記第1可動部に固定される第1接続部と、前記用力線の他端側を接続する第2接続部と、前記第2接続部を保持して、前記ベース部の前記案内面の上で該案内面に沿って前記第1方向とは異なる第2方向に移動する第2可動部と、前記第1可動部および前記第2可動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1可動部が前記第1方向に往復駆動する間の前記用力線の変形量が小さくなるように、前記第1可動部による前記往復駆動の駆動条件に応じて、前記第2方向における前記第2接続部の目標位置を決定し、該決定された目標位置に基づき前記第2可動部の駆動を制御することを特徴とするステージ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、用力線の耐久性の点で有利なステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】露光装置の構成を示す図。
図2】原版ステージ装置の構成を示す図。
図3】原版ステージ可動部の移動に伴う接続部ステージの移動を説明する図。
図4】露光処理のフローチャート。
図5】用力線の位置を計測するための構成を説明する図。
図6図5の変形例を示す図。
図7】用力線の第2接続部の構成例を説明する図。
図8】規制部材の配置の効果を説明する図。
図9】規制部材を有する原版ステージ装置の構成を示す図。
図10】規制部材を有する基板ステージ装置の構成を示す図。
図11】第2接続部の移動タイミングの例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
本発明は、物体を保持して移動可能なステージ装置に関する。対象とする物体は、例えば、露光装置に用いられる原版、基板等でありうる。図1は、本発明のステージ装置が適用される露光装置100の構成を示す図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、被露光基板である基板107はその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ上に置かれる。よって以下では、基板107の表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向という。
【0012】
光源101から不図示の照明光学系を通して導かれる露光光が、原版102(レチクル、マスク)上に照射される。原版102を通った露光光は、鏡筒定盤105によって支持された鏡筒106の中の投影光学系を通って基板107に照射される。原版102は、原版ステージ可動部103によって保持される。原版ステージ可動部103は、ベース部104の上面に形成さた案内面に沿って移動可能である。例えば走査露光時には、ベース部104の案内面上でY方向に往復駆動しうる。原版ステージ可動部103およびベース部104を含む原版ステージ装置の構成については後述する。基板107は、基板ステージ可動部108によって保持される。基板ステージ可動部108は、定盤109の上の平面に沿って移動する。基板ステージ可動部108は、定盤109上をX、Y方向にそれぞれ往復駆動しうる。制御部211は、露光装置の各部と有線または無線で接続され、露光装置の各部を制御する。制御部211は、CPUおよびメモリを含むコンピュータによって実現されうる。また、制御部211には、露光条件等を入力する入力部215が接続されており、制御部211は、入力部215から入力された露光条件に従って露光を制御する。入力部215は、ユーザ操作によって露光条件等を入力するための操作部を含みうる。
【0013】
図2は、実施形態における原版ステージ装置の構成を示す図である。原版102を保持する原版ステージ可動部103(第1可動部)は、ベース部104の案内面Pの上で該案内面に沿ってY方向(第1方向)に移動する。例えば、原版ステージ可動部103は、走査露光時において、案内面Pに沿ってY方向に往復移動(スキャン駆動)しうる。なお、ベース部104における原版102の移動範囲には、原版102を透過した光が通過する開口部Qが形成されている。原版ステージ可動部103の駆動はアクチュエータ212によって行われ、原版ステージ可動部103の位置は位置センサ213を用いて計測される。ステージドライバ214は、制御部211からの指令に従い、位置センサ213からの計測信号に基づいてアクチュエータ212を駆動する。
【0014】
原版ステージ可動部103とベース部104とは、用力線201によって接続されている。本明細書において、用力線とは、用力を供給するための配線または配管の総称である。用力線201は、原版102の真空吸着に使用される真空配管、原版ステージ可動部103を摺動可能にするエアベアリングに使用される圧縮空気配管、各駆動機構への電源供給ケーブル、各種センサの信号線等の少なくともいずれかを含みうる。用力線201は、例えば、可撓性を有するフレキシブルフラットケーブルの形態で提供されうる。
【0015】
原版ステージ可動部103には、用力線201の一端側を接続する第1接続部203が固定されている。用力線201の他端側は、第2接続部202に接続される。このとき、用力線201は、図示の如く、U字状に折り返された状態で第1接続部203と第2接続部202とに接続される。用力線201の第1接続部203から先は、用力線204として複数の用力線に分岐され、原版ステージ可動部103上を引き回される。また、用力線201の第2接続部202から先は、用力線205として、用力供給部210に接続される。用力供給部210は、制御部211からの指令に従い用力を供給する。
【0016】
第2接続部202は、接続部ステージ208(第2可動部)を介してベース部104上に配置されている。接続部ステージ208(すなわち第2接続部202)は、第2接続部202を保持して、ベース部104の案内面P上で案内面Pに沿ってY方向とは異なる第2方向に移動可能である。案内面Pに沿う、Y方向とは異なる第2方向とは、例えば、案内面Pに沿う、Y方向と交差する方向(例えばX方向)でありうる。接続部ステージ208の駆動は、アクチュエータ206によって行われ、第2接続部202の位置は位置センサ207を用いて計測される。接続部ドライバ209は、制御部211からの指令に従い、位置センサ207からの計測信号に基づいてアクチュエータ206を駆動する。
【0017】
露光装置には、生産性向上を目的として、ますますの高速化が求められており、近年、露光装置におけるステージの速度や加速度が高められている。そのため、例えば走査露光時のステージの往復移動の周波数(すなわち用力線の揺れの周波数)が用力線の固有周波数に近い値になりうる。ステージの往復移動の周波数が用力線の固有周波数に近くなると、用力線の揺れ幅が大きくなって用力線の曲げ量が大きくなり、用力線の耐久性が低下しうる。そこで本実施形態では、制御部211は、原版ステージ可動部103をスキャン駆動させる際に、スキャン駆動の周波数と用力線201の固有周波数とが一致しないように接続部ステージ208の第2方向(例えばX方向)における位置を制御する。
【0018】
図3図4を用いて、実施形態における原版ステージ装置の用力線201の制御について説明する。図3は、原版ステージ可動部の移動に伴う接続部ステージの移動を説明する図であり、図4は、露光処理のフローチャートである。
【0019】
図3には、第1接続部203と第2接続部202との間の距離A1が示されている。実施形態において、距離A1は、原版ステージ可動部103を駆動させたときの用力線201の変形量が小さくなる値に設定される。距離A1(すなわち接続部ステージ208の位置)は、露光装置を使用する際の原版ステージ可動部103の駆動条件(以下「ステージ駆動プロファイル」という。)に応じて決定される。例えば、制御部211のメモリには、ステージ駆動プロファイルと距離A1(または距離A1に対応する接続部ステージ208の位置)との間の予め得られた対応関係が記憶されている。この対応関係がテーブルとしてメモリに記憶されていてもよい。ステージ駆動プロファイルは、例えば、スキャン画角、ステージ移動の速度、加速度、ジャーク、セトリング、露光光スリット幅、ウェイト時間、改行等の少なくともいずれかが含まれる。ここで、改行とは、基板ステージの駆動において、行列状のショット領域を順次露光する際に行が変わる場合に、原版ステージの駆動に停止動作が加わる条件をいう。
【0020】
ステップS301で、例えば入力部215を介して、露光ジョブの条件が入力される。
ステップS302で、制御部211は、入力されたジョブ条件に応じたステージ駆動プロファイルをメモリから読み出す。
ステップS303で、制御部211は、メモリ内のテーブルを参照して、ステージ駆動プロファイルに対応する距離A1を決定する。
ステップS304で、制御部211は、第1接続部203の位置からステップS303で決定された距離A1離れた位置を第2接続部202の目標位置を決定し、接続部ドライバ209にこの目標位置を指令値として出力する。
ステップS306で、接続部ドライバ209は、位置センサ207を用いて第2接続部202のX方向における現在位置を計測し、第2接続部202が目標位置に来るように接続部ステージ208をX方向に移動させる。
第2接続部202の移動が完了すると、ステップS307で、制御部211は、ステップS302で読み出したステージ駆動プロファイルに従って露光処理を実行する。露光処理を終え、ジョブが完了すれば(S309でYES)し、本処理は終了する。
【0021】
次に、図5を参照して、ステージ駆動プロファイルに応じた距離A1の決定方法について説明する。図5では、図2に対し、用力線201の位置を検出する位置センサ50が追加されている。原版ステージ可動部103をY方向に駆動させると、位置センサ50によって用力線201の位置の変化が計測される。用力線201は、原版ステージ可動部103のY方向の往復駆動の周期(スキャン周期)と同じ周期で変化する。ここで、第2接続部202をアクチュエータ206によって移動させて距離A1を変化させると、位置センサ50によって検出される値の振幅は変化する。特に、原版ステージ可動部103の往復駆動の周波数(スキャン周波数)と用力線201の固有周波数とが一致するとき、位置センサ50によって検出される値の振幅は最大となる。このときの用力線201の駆動振幅が最も小さくなるときの接続部間の距離が距離A1として決定される。決定された距離A1とそのときのステージ駆動プロファイルとが対応付けられてテーブルに記述される。このようにして、制御部211のメモリに格納されている全てのステージ駆動プロファイルに対して距離A1を決定することにより、ステージ駆動プロファイルと距離A1との対応関係が記述されたテーブルが作成される。
【0022】
次に、図6を参照して、ステージ駆動プロファイルに応じた接続部間の距離A1の他の決定方法について説明する。図6では、図5に対し、位置センサ50の代わりに、加速度計601および加速度計アンプ602が構成されている。加速度計601を用いることでも、ステージ駆動プロファイル距離A1との対応関係を求めることができる。
【0023】
以上の実施形態によれば、露光処理の実行前に、接続部間の距離が、ステージ駆動プロファイルに応じた距離A1に設定されるので、露光処理時における用力線201の変形量を小さくすることができ、用力線201の耐久性の低下を防ぐことができる。
【0024】
なお、上述の図2図3~6に示した例では、接続部ステージ208はベース部104上をX方向に移動可能に構成され、接続部間の距離が距離A1になるように接続部ステージ208をX方向に移動させるようにした。しかし、原版ステージ可動部103のスキャン周波数と用力線201の固有周波数とが一致しないようにするためには、接続部ステージ208をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0025】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態における第2接続部の構成例を示す図である。第1実施形態では、接続部ステージ208(すなわち第2接続部202)は、ベース部104の案内面P上で案内面Pに沿ってY方向と交差する方向(例えばX方向)に移動可能に構成されていた。これに対し図7では、第2接続部202の、案内面Pと直交するZ軸周りの回転方向を調整する。第2接続部202のZ軸周りの回転駆動は、アクチュエータ801によって行われる。なお、アクチュエータ801は第2接続部202を直接駆動するように構成されていてもよいし、接続部ステージ208のZ軸周りの回転方向を調整するように構成されていてもよい。
【0026】
第2接続部202をZ軸周りに回転させることによって用力線201を変形させることができる。これによって、用力線201の固有周波数を変えることが可能である。
【0027】
したがって、本実施形態では、用力線201の固有周波数と原版ステージ可動部103のスキャン周波数とが一致しないように、第2接続部202のZ軸周りの回転角度A3を変化させる。これにより、用力線201の変形量を小さくすることができ、用力線201の耐久性の低下を防ぐことができる。
【0028】
<第3実施形態>
第3実施形態では、用力線201のX方向への動きを規制する規制部材が使用される。図8(a)は、そのような規制部材がない場合の、第1接続部203をY方向に往復駆動させたときの用力線201の挙動の例を示している。図8(a)において、第1接続部203が停止しているときの用力線201は実線で示され、第1接続部203がY方向に往復運動しているときの用力線201は破線で示されている。また、第1接続部203が停止しているときの第1接続部203と第2接続部202との間のX方向における最大幅をL1とする。第1接続部203がY方向に往復駆動しているときの用力線201の第1接続部203と第2接続部202との間のX方向における最大幅をL2とする。
【0029】
これに対し、図8(b)は、規制部材がある場合の、第1接続部203をY方向に往復駆動させたときの用力線201の挙動の例を示している。図8(b)においても、図8(a)と同様、第1接続部203が停止しているときの用力線201は実線で示され、第1接続部203がY方向に往復駆動しているときの用力線201は破線で示されている。第2接続部202には、Y方向に延在する規制部材901が取り付けられており、第1接続部203には、Y方向に延在する規制部材902が取り付けられている。ここで、規制部材901と規制部材902との間の距離はL1とされている。これにより、用力線201のX方向における可動範囲はL1に制限される。
【0030】
規制部材がない場合にはL2>L1となる。すなわち、用力線201のX方向における変形量は、接続部間の距離よりも大きくなる。このため、用力線201を収容するスペースが大型化する。一方、図8(b)に示すように規制部材901,902を配置した場合は、用力線の最大幅がL1より大きくなることはなくなるため、用力線201の収容スペースの大型化を防ぐことができる。
【0031】
図9は、規制部材901,902を有する原版ステージ装置の構成を示す図である。図9では、第1接続部203に規制部材901が配置され、第2接続部202に規制部材902が配置されている。なお、図9では、図2に示されているその他の構成要素の図示は省略されているが、図2と同様に動作しうる。よって規制部材901,902が配置されている場合には、用力線201の収容スペースを抑えつつ、第1接続部203のY方向の移動に伴う用力線201の変形を小さくして、用力線201の耐久性の低下を防ぐことができる。
【0032】
<第4実施形態>
次に、規制部材を有する基板ステージ装置について説明する。基板ステージ装置は、X、Yの2軸駆動の装置であるが、ここでは、第2接続部202をX方向に駆動する部分について説明する。
【0033】
図10において、X-Y平面に沿って延在する案内面Sを有する定盤109には、Y方向に延びる、第1ガイド1108aと、第2ガイド1108bが、少なくとも基板ステージのX方向の駆動ストローク以上の距離を隔てて配置されている。第1ガイド1108aおよび第2ガイド1108bにはそれぞれ、第1スライダ1109aおよび第2スライダ1109bが保持されてる。第1スライダ1109aおよび第2スライダ1109bはそれぞれ、第1ガイド1108aおよび第2ガイド1108bに沿ってY方向に移動可能である。
【0034】
第1スライダ1109aと第2スライダ1109bとの間にはビーム1110が懸架され、ビーム1110の上にはY可動体1103が搭載されている。よって、Y可動体1103は、ビーム1110のY方向への移動に伴ってY方向に移動可能である。
【0035】
Y可動体1103の上にはX可動体1102がX方向に移動可能に配置されている。Y可動体1103およびX可動体1102によって、図1の基板ステージ可動部108が構成されている。X可動体1102は、不図示のアクチュエータと変位計によってX方向の位置制御が可能なものとなっている。X可動体1102の上には、基板107が搭載されうる。
【0036】
X可動体1102には、用力線201を接続する第1接続部203が取り付けられている。Y可動体1103には、アクチュエータ1104を介して用力線201を接続する第2接続部202が取り付けられている。アクチュエータ1104は、第2接続部202をZ方向に駆動する。
【0037】
第1接続部203と第2接続部202は、用力線201をU字形状に折り返された形で保持している。また、第1接続部203には、規制部材902が取り付けられている。規制部材902は、用力線201のZ方向への変形を規制している。Y可動体1103には、変位計1105が取り付けられており、第2接続部202との間のZ方向の距離を計測することができる。
【0038】
また、Y可動体1103には、アクチュエータ1104および変位計1105が接続される接続部ドライバ1107が取り付けられている。接続部ドライバ1107は、図10には不図示の制御部211からの指令により、変位計1105による計測値に基づいてアクチュエータ1104を駆動する。
【0039】
このように、基板ステージ装置についても、用力線201の保持構成を上記の原版ステージ装置と同様に適用できる。したがって、基板ステージ装置についても、図4に示したフローチャートと同様の手順で、用力線201の変形量を抑制することができる。
【0040】
<第5実施形態>
次に、図11を参照して、複数のステージ駆動プロファイルが連続的に切り替えられたときの、第2接続部202の移動タイミングについて説明する。
【0041】
ステージ駆動プロファイルは、同じ基板内であっても、ショット領域の配列における改行前後で随時変更されうる。したがって、図11のように、それぞれのステージ駆動プロファイルの変更時において、第2接続部202が変更後のステージ駆動プロファイルに応じて決定された位置に移動した後、露光処理が開始される。
【0042】
<第6実施形態>
上述の各実施形態では、ステージ駆動プロファイルに対応した接続部間の距離A1をあらかじめ求めておき、露光時にその条件を読み出すことで第2接続部202を移動させるようにした。ただし、用力線201の位置計測部や、用力線201の加速度検出部を露光装置内に組み込むことで、露光中にリアルタイムで距離A1を求め、第2接続部202を移動させるようにしてもよい。
【0043】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0044】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0045】
102:原版、103:原版ステージ可動部、104:ベース部、201:用力線、202:第2接続部、203:第1接続部、206:アクチュエータ、207:位置センサ、208:接続部ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11