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特許7422546情報処理装置、その制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、その制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240119BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240119BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G06F3/12 355
G06F3/12 346
G06F3/12 356
G06F3/12 305
B41J29/393 103
B41J29/38 303
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020002431
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021111111
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿武 純
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185790(JP,A)
【文献】特開2017-81032(JP,A)
【文献】特開2016-212698(JP,A)
【文献】特開2006-163660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷データと印刷品質要求とを外部装置から受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した前記印刷データから、印刷品質基準を指定可能なオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づき、前記抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されているか否かを判断する判断手段と、
抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されていないと前記判断手段によって判断された場合に、所定の通知を行う通知手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記通知手段は、前記抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されていないことを警告する警告画面を前記情報処理装置の表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記警告画面では、印データに基づく印刷ジョブの実行を停止するか、又は、継続するかをユーザ入力に従って選択可能であることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記通知手段は、前記警告画面を介して前記印刷ジョブの実行を停止することが選択されると、前記抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されていない印刷ジョブを識別可能にした状態で、受信済みの印刷ジョブの一覧を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記警告画面を介して前記印刷ジョブの実行を継続することが選択されると、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求に含まれる1以上の印刷品質基準のうち、修正する印刷品質基準を選択可能に前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
印刷品質基準を指定可能なオブジェクトとは、特色を有するオブジェクト、及びバーコードの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記受信手段によって受信される印刷品質基準は、PRX(Print Requirement eXchange format)で定義されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抽出手段による抽出結果と、前記解析手段による解析結果とを履歴情報として記憶する記憶手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記通知手段は前記所定の通知を前記外部装置に通知ることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
刷データと印刷品質要求とを外部装置から受信する受信工程と、
記受信工程で受信した前記印刷データから、印刷品質基準を指定可能なオブジェクトを抽出する抽出工程と、
記受信工程で受信した前記印刷品質要求を解析する解析工程と、
記解析工程による解析結果に基づき、前記抽出工程で抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信工程で受信した前記印刷品質要求で指定されているか否かを判断する判断工程と、
抽出工程で抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信工程で受信した前記印刷品質要求で指定されていないと前記判断工程で判断された場合に、所定の通知を行う通知工程と
を含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項11】
情報処理装置の制御方法における各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御方法は、
刷データと印刷品質要求とを外部装置から受信する受信工程と、
記受信工程で受信した前記印刷データから、印刷品質基準を指定可能なオブジェクトを抽出する抽出工程と、
記受信工程で受信した前記印刷品質要求を解析する解析工程と、
記解析工程による解析結果に基づき、前記抽出工程で抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信工程で受信した前記印刷品質要求で指定されているか否かを判断する判断工程と、
抽出工程で抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信工程で受信した前記印刷品質要求で指定されていないと前記判断工程で判断された場合に、所定の通知を行う通知工程と
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷成果物の品質を管理する情報処理装置、その制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリントオンデマンド(POD)、プロダクションプリンティング、及び商業印刷と呼ばれる印刷サービス形態がある。このようなサービス形態では、印刷を注文、依頼する顧客(エンドユーザとも称する。)と、印刷成果物を提供する印刷会社とが存在し、顧客は印刷会社に対して依頼する印刷成果物の仕様と、必要に応じて印刷に用いる画像データの提供を行い印刷物の注文を行う。印刷成果物の仕様とは、例えば使用する用紙種類、製本やステイプルといった仕上げ設定、印刷枚数や部数といった、印刷成果物の内容を決定する要素である。印刷会社は依頼された内容と画像データを用いて印刷成果物を作成して顧客に対して納品する。
【0003】
このような商業印刷サービスにおいて、印刷会社は印刷成果物の受注から納品までを行うために多様な機器やソフトウェアを用いる。用紙への印刷を行う印刷装置や製本・ステイプルを行うフィニッシャ、印刷物の検査・検品を行う検品装置が用いられる他に、顧客から印刷成果物の受注を受け付けるためのWebサーバや、印刷成果物の生産を管理するための端末やソフトウェアも用いられる。また、これらの機器やソフトウェアの使用者も複数存在する。例えば、受注案件の管理や顧客との連絡を行う受注担当者、印刷成果物を完成させるまでの作業工程を設計する工程設計者、印刷装置や検品装置の操作を行うオペレータ、最終印刷成果物の品質確認を行う確認者である。複数の生産拠点を備える印刷会社も存在し、このような場合、印刷会社は受注内容をもとに、どの生産拠点で印刷成果物の生産を行うかを決定する。
【0004】
商業印刷サービスにおいては、印刷会社は顧客から印刷成果物に対して品質条件を指定されることが多い。品質条件とは、印刷成果物の仕様とは異なり、用紙の表裏における画像の位置ずれ量や、複数部数又は複数ページ間での画像の色値の変動量といった、印刷成果物の品質に関する条件を指す。印刷成果物はチラシやパンフレットのような配布物、写真集や書籍、名刺、展示パネルなど多岐にわたり、それらの用途や価格も様々であるため、品質条件もまた、求められる条件や水準は多種多様である。後述するように品質条件に対して、印刷会社ではそれらを満たすための作業工程と、印刷成果物の品質確認工程が必要となるため、品質条件の水準が高いほど印刷成果物のコストも増加することが一般的である。印刷会社は、これらの品質条件を満たすような各種調整作業を行いながら、印刷成果物の作成を行う。例えば、顧客と合意を得たサンプル印刷の結果に基づいて、印刷装置の特定の用紙における特定の色に合わせるための各種調整や、印刷後の検品により品質条件を満たさない印刷成果物を不良品として除外することが行われる。印刷会社はこれらの作業により達成された印刷成果物の品質が顧客の求める品質条件に達しているかを確認する。
【0005】
特に、多くの顧客から様々な仕様・品質条件の印刷成果物を受注する場合、各印刷成果物に対して顧客の品質条件を満たすための作業もまた多種類となり、かかる時間も長時間となる。例えば、印刷成果物Aでは表裏の印刷ずれが、印刷成果物Bでは顧客から提示された色見本との整合性が、それぞれ品質条件として求められているとする。この場合、受注担当者は工程設計者にそれぞれの印刷成果物の品質条件を、印刷会社で用いるデータフォーマットを用いて伝送する必要がある。工程設計者は印刷会社で用いることができる印刷装置及びソフトウェアの種類、状態をもとに、それぞれの印刷成果物の生産において、品質条件を満足するための作業工程を決定する。例えば、印刷成果物Aでは後処理装置の機器調整、印刷成果物Bでは印刷装置の色校正、のように作業を決定し、さらに色校正後の測色作業など、各作業における結果確認作業を決定する。また、例えば表裏の印刷ずれの確認箇所と許容されるずれ量の最大値のように、生産された印刷成果物が品質条件を満足していることをどのように確認すればよいかを示す品質確認手段を決定する。印刷会社では複数の印刷装置が用いられていることが一般的であり、工程設計者は、それら複数の印刷装置から受注した印刷成果物の品質条件を満足するために最適な装置を選ぶ必要がある。このように、品質条件を満たす印刷成果物の生産と、生産された印刷成果物の品質確認をそれぞれ行うためのワークフローの定義が印刷会社においては必要である。オペレータはこのようにして決定された作業工程を受け取り、印刷装置及びソフトウェアの操作を行う。確認者は生産された印刷成果物と、品質確認手段とをもとに印刷成果物が品質条件を満足していることを確認する。このように、印刷会社は品質条件とそれを満足するための作業工程に多くの作業工数を費やしている。
【0006】
従来、顧客と印刷会社とがこれらの品質条件の受け渡しを行う際に、統一された情報フォーマットは定義されておらず、用いられてこなかった。そのため、印刷会社は複数の顧客から異なる情報フォーマットで品質条件を受領することになり、品質条件から、それらを満たすための作業工程を設計する際に不便が生じていた。顧客側から見ても、複数の印刷会社に対して印刷成果物の発注を行う際に、品質条件の受け渡しを異なる情報フォーマットで行う煩雑さが存在していた。
【0007】
そこで、品質条件を伝送するための情報フォーマットを統一すべく、標準化技術として非特許文献1に記載のPRXが検討されている。PRXとは、Print Requirement eXchange formatの略であり、印刷に要求する品質条件の標準データフォーマットを指す。PRXを用いることで、異なる顧客又は異なる受注に対する品質条件を統一的な標準データフォーマットで記述できるようになる。このようにPRXを用いて従来統一されていなかった品質条件を統一された情報フォーマットで伝送できるようになる。
【0008】
顧客が求める品質条件を記述したPRXを用いることで、品質条件を満足するために印刷成果物の生産時に行う作業工程と、印刷成果物の品質確認の作業工程とを作業者を介さずに印刷システムで策定することができる。即ち、印刷装置やソフトウェアの事前設定を自動で行うことができる。
【0009】
また、特許文献1には、コンテンツの閲覧者が閲覧したコンテンツに対して、当該コンテンツの登録者が設定した印刷条件に適応して印刷条件を設定する仕組みが提案されている。この場合、登録者が設定した印刷条件を満たした場合において、印刷ジョブが所定の印刷装置へ投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-215953号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】ISO/AWI 20616-1, Graphic technology -- File format for quality control and metadata -- Part 1: Print requirements exchange (PRX), [online], [令和1年9月2日検索], インターネット<URL:https://www.iso.org/standard/68565.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術には以下に記載する課題がある。前述したような印刷成果物の品質条件は顧客又は印刷成果物によって様々であり、それらを達成するための手法もまた多数ありうる。例えば品質条件として、企業のロゴマークに用いるコーポレートカラーについて、顧客から色の再現性と安定性を高い水準で求められたとする。色の再現性とは、顧客が提供した印刷データにおいてRGBやLab(明度の次元Lと補色次元のa及びbの座標で表現される色空間)といった定義で表現される色が、印刷成果物において同じ色で印刷されているかを示す尺度である。安定性とは、複数ページ又は複数部の印刷において、同じ色の印刷データが印刷成果物においても変わらない色で印刷されているかを示す尺度である。コーポレートカラーは企業・団体を象徴する色であるため、顧客は高い色再現性と安定性、即ち顧客が提供した印刷データと同じ色で印刷され、かつどのページでも結果が変わらないことを品質条件として求めることが多い。また、印刷されたバーコードをハンディースキャナーで読み取るときにエラーが起きないように、バーコード印刷の品質基準がISO標準規格などで定められている。これの規格を満たすことを印刷物の品質条件として求めることが多い。
【0013】
このように、顧客が求める品質条件を満足するための作業工程は印刷成果物の仕様と顧客が求める品質条件によって様々である。前述したPRXのフォーマットを用いて、顧客から受注した印刷成果物に対する品質要求を、デジタルフォーマットで受注した印刷ジョブごとに入力することが可能となる。
【0014】
しかしこのとき、顧客が印刷成果物に対してPRXで品質要求を指定した場合、印刷データのオブジェクトと、それに対する品質要求との間に矛盾が生じる場合がある。例えば、顧客が本印刷の前に本機校正又は簡易校正で出力したプルーフ印刷物を確認した結果、印刷データ内に用いる企業ロゴの特色が要望通りでない場合にその修正を印刷会社に求めることが頻繁にある。印刷会社はその要望を受けて、印刷データのなかの企業ロゴの特色データを修正し、顧客の要望に合致するまで、プルーフ印刷・顧客確認・修正を繰り返す。このような工程を経ると、印刷データの特色データのRGBやLabの値を変更したにも関わらず、PRXにおけるその特色データのRGBやLabの値を変更し忘れことがある。結果、PRXでの特色データのRGBやLab値と、印刷データの特色データのそれれらとが異なってしまう。或いは、単純に顧客からジョブを受注した営業担当が特色やバーコードなどに対する印刷品質基準を設定し忘れることもある。このように、印刷データとPRX間での矛盾が生じる場合、具体的には、印刷データにオブジェクトが存在するのにPRXに対応する印刷品質基準が存在しない場合、顧客の品質要求を適切に反映させることができなくなるため、適切なエラー処理を行う必要がある。
【0015】
本発明は、上述の問題の少なくとも一つに鑑みて成されたものであり、抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、受信した印刷品質要求で指定されていないと判断された場合に、所定の通知を行う仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、例えば、情報処理装置であって、刷データと印刷品質要求とを外部装置から受信する受信手段と、前記受信手段によって受信した前記印刷データから、印刷品質基準を指定可能なオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求を解析する解析手段と、前記解析手段による解析結果に基づき、前記抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されているか否かを判断する判断手段と、抽出手段によって抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、前記受信手段によって受信した前記印刷品質要求で指定されていないと前記判断手段によって判断された場合に、所定の通知を行う通知手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、受信した印刷品質要求で指定されていないと判断された場合に、所定の通知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係るシステムの構成例を示す図。
図2】一実施形態に係るハードウェアの構成例を示す図。
図3】一実施形態に係るソフトウェアの構成例を示す図。
図4】一実施形態に係るPRX解析結果の品質要求パラメータ図。
図5】一実施形態に係るPRX解析結果の品質要求パラメータ図。
図6】一実施形態に係るフローチャート。
図7A】、
図7B】、
図7C】一実施形態に係るワークフロー管理端末の画面表示図。
図8】一実施形態に係るプリプレス処理部の処理結果図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0020】
なお、実施形態に係る画像形成装置として複合機(デジタル複合機/MFP/Multi Function Peripheral)を例に説明する。しかしながら適用範囲は複合機に限定はせず、プリント機能を備える画像形成装置であればよい。特に、印刷ジョブの品質条件を規定するファイルのフォーマットとしてPRXを前提に説明するが、本発明はPRXを限定されるものではなく、印刷ジョブの品質条件を規定するファイルであるならば、その形式は何でもよい。なお、以下で”PRX”と称する場合は、PRXのフォーマットを用いて定義された品質要求を示す。
【0021】
<システムの構成>
以下では、本発明の一実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る商業印刷システムの構成を説明する。本システムは、ワークフロー管理サーバ100、ワークフロー管理端末101、受注システムサーバ110、受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、生産システム120、及び生産オペレータ端末を含んで構成される。
【0022】
ワークフロー管理サーバ100は、印刷ジョブの処理に関してワークフロー全体を管理する装置である。ワークフロー管理端末101は、ワークフロー管理者が操作する端末であって、ワークフロー管理サーバ100にネットワークを介して接続し、各種機能の実行や、ワークフロー管理サーバ100からの情報を受信し、表示する。具体的には、ワークフロー管理機能の設定変更や、生産システム120のデバイスの状態確認や、印刷データとPRXの矛盾に関する情報表示などである。
【0023】
受注システムサーバ110は、商業印刷の商品に関して、エンドユーザから注文を受けるためのシステムを管理する装置である。受注システム管理端末111は、受注システム管理者が操作する端末であって、ネットワークを介して受注システムサーバ110に接続し、受注システムサーバ110の各機能を実行する。エンドユーザ端末112は、エンドユーザが操作する端末であり、この端末から受注システムにジョブを発注する。
【0024】
生産システム120は、商業印刷における商品(成果物)を、生産するためのシステムである。詳細には、印刷装置121、印刷装置121を制御するプリントサーバ122などの装置により構成される。なお、プリントサーバ122は、印刷装置121と一体として設けられてもよい。また、生産システム120は、製本等に関わる機能を有する後処理装置を含んで構成されてもよい。プリントサーバ122は、ワークフロー管理サーバ100からのデータと指示に基づき、印刷処理を行い、印刷装置121に対して印刷指示を行う。印刷装置121は、プリントサーバ122からのデータと指示に基づき、印刷を実行する。印刷方式は特に限定されることはなく、電子写真方式、インクジェット方式、その他の方式のいずれでもよい。
【0025】
生産オペレータ端末125は、生産システム120の各種デバイスを操作するオペレータが操作する端末であって、生産システム120にネットワークを介して接続し、デバイスの稼働状況の確認、異常発生時のエラー情報の確認などの機能を有する。別の形態として、外部の端末ではなく、各デバイスが具備するUI操作部が、これらの機能を担う構成でもよい。
【0026】
ここで、本商業印刷システムが印刷ジョブを受注してから印刷するまでの流れを説明する。
【0027】
初めに、エンドユーザはエンドユーザ端末112からネットワークを介して受注システムサーバ110に接続し、ウェブブラウザなどのUIを介して、印刷物である商品の選択、原稿データの送信、及び発注などを受注システムサーバ110に対して指示する。おれにより、印刷ジョブの発注を行うことができる。1以上のエンドユーザが1つ以上の印刷ジョブの発注を行うので、受注システムサーバ110は1つ以上の印刷ジョブの受注データを保持することになる。
【0028】
次に、受注システム管理者は受注システム管理端末111によって、1つ以上の印刷ジョブの受注データを保持する受注システムサーバ110に接続し、ウェブブラウザなどのUIを介して、受注システムサーバ110が持つ各機能を実行する。具体的には、商品別の要求品質設定、受注ジョブごとのステータス確認、及び受注ジョブごとの成果物の品位情報の閲覧などがある。
【0029】
次に、ワークフロー管理者はワークフロー管理端末101によって、ワークフロー管理サーバ100に接続し、ウェブブラウザなどのUIを介して、ワークフロー管理サーバ100が持つ各機能を実行する。具体的には、ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110に接続し保持されている複数の印刷ジョブから本日実行すべき印刷ジョブを選択して受注データを取得し、メモリ等に保持する。また、ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から、印刷データや品質条件情報であるPRXを受信する。そして、ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から受信したPRXを解釈して、受注ジョブ毎に生産システム120の決定や、印刷データのプリプレス処理などを実行する。なお、本実施形態では、印刷装置121が印刷出力を行う前に印刷データに対し、印刷データに使われているフォントや特色などを検査し印刷を問題なく行うための準備の処理を、プリプレス処理と称する。プリプレス処理では、外部から受信した印刷データに印刷品質基準を指定可能なオブジェクトが存在するか否かを解析する。この処理を行うことで、取得した受注データを解析し、印刷ができる条件が整っているかを判断し、印刷できると判断できたものを生産システム120に対し印刷するように指示することができる。
【0030】
更に、ワークフロー管理サーバ100は生産システム120に対し印刷出力を行うように指示をすると、プリントサーバ122が印刷データを受信し、一般的にRIPと呼ぶ印刷データを印刷機で印刷できるようにデータ処理を行う。その後、プリントサーバ122は、印刷装置121に対して処理したデータを送信する。印刷装置121はデータを受信し印刷出力を行う。
【0031】
以上の処理が、本商業印刷システムが印刷ジョブを受注してから印刷する流れとなる。なお、本実施形態は、ワークフロー管理サーバ100がワークフロー管理を行う拠点に設置されるオンプレミスサーバであるものとして説明するが、その限りではない。別の実施形態として、ワークフロー管理サーバ100をクラウドサーバとして構築し、後述のワークフロー管理端末101からは、インターネットを介して接続する構成としてもよい。後述の受注システムサーバ110も同様である。
【0032】
また、本実施形態は、ワークフロー管理サーバ100がPRX解釈及び印刷データのプリプレス処理を実行するものとして説明するが、その限りではない。別の実施形態として、後述の受注システムサーバ110が実行してもよいし、後述の生産システム120のプリントサーバ122が実行してもよい。また、PRXの解釈と印刷データのプリプレス処理を別のサーバで実行してもよい。例えば、受注システムサーバ110がPRXの解釈を、ワークフロー管理サーバ100がプリプレス処理を実行してもよい。
【0033】
<各装置のハードウェア構成>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る各装置のハードウェア構成を説明する。図2は、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100とワークフロー管理端末101とプリントサーバ122との詳細な構成を含む、商業印刷システムのハードウェア構成を示す。
【0034】
まず、ワークフロー管理サーバ100のハードウェア構成を説明する。ワークフロー管理サーバ100は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、及びネットワークI/F205を備える。CPU201は、ROM202又はハードディスク(HDD)204に記憶された制御プログラムをRAM203に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス206に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM202は、CPU201が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM203は、主としてCPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAM203によりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスクドライブ(HDD)204は、実行可能な制御プログラム、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、及び編集ファイル等を記憶する。なお、本実施形態ではHDD204を用いたが、HDDの他にSDカードや、フラッシュメモリ、SSD、eMMCなどを外部記憶装置として利用してもよい。これは、以降に説明するHDDを有する装置も同様である。ネットワークI/F205は、ネットワークを経由して、外部装置である各種装置とデータ通信を行う。なお、受注システムサーバ110の場合も、そのハードウェア構成はワークフロー管理サーバ100と同様であるため、その説明は省略する。
【0035】
次に、ワークフロー管理端末101のハードウェア構成を説明する。ワークフロー管理端末101は、CPU211、ROM212、RAM213、HDD214、及びネットワークI/F215を備える。CPU211は、ROM212又はハードディスク(HDD)214に記憶された制御プログラムをRAM213に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス216に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM212は、CPU211が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM213は、主としてCPU211の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAM213によりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスクドライブ(HDD)214は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F215は、ネットワークを経由して、その他の装置とデータ通信を行う。なお、受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、そして、生産オペレータ端末125などの、その他の端末装置も、そのハードウェア構成はワークフロー管理端末101と同様であるため、その説明は省略する。
【0036】
次に、プリントサーバ122のハードウェア構成を説明する。プリントサーバ122は、CPU221、ROM222、RAM223、HDD224、及びネットワークI/F225を備える。CPU221は、ROM222又はハードディスク(HDD)324に記憶された制御プログラムをRAM223に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス226に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM222は、主としてCPU221が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM223は、主としてCPU221の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)224は、実行可能な制御プログラム、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F225は、ネットワークを経由して、その他の装置とのデータ通信を行う。プリンタI/F227は、印刷装置121の画像形成部228への画像出力を制御する。
【0037】
次に、印刷装置121のハードウェア構成を説明する。印刷装置121は、少なくとも画像形成部228を備える。画像形成部228は、印刷用データを用紙に出力し、そのハードウェア構成は、一般的な印刷装置と同じである。印刷装置121には画像形成部228以外のハードウェアも含んでいるが、本発明には直接関係なく、また一般的な印刷装置と変わらないので説明を省略する。
【0038】
<ワークフロー管理サーバのソフトウェア構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100のソフトウェア構成を説明する。これらのソフトウェアモジュールは、ROM202又はHDD204に格納されたプログラムをCPU201が読み出しRAM203に展開して実行することにより実現される。ワークフロー管理サーバ100は、ソフトウェア構成として、データ管理部301、統括制御部302、PRX解釈部303、及びプリプレス処理部304を含む。
【0039】
データ管理部301は、受注システムサーバ110から印刷データ及びPRX(品質要求)を受信し、管理する。統括制御部302は、データ管理部301からPRXや印刷データを読み出し、PRXと印刷データを解析し、後述するフローチャートに従ってPRXと印刷データとに矛盾がないかを解析したり、その結果をログファイルに記録したりする。なお、ログファイルはデータ管理部301が管理する。PRX解釈部303は、受注システムサーバ110から受信したPRXを解析し、印刷品質条件を特定する。プリプレス処理部304は、受注システムサーバ110から受信した印刷データを解析する。
【0040】
なお、本実施形態は、ワークフロー管理サーバ100がPRX解釈部303及び印刷データのプリプレスを実行するプリプレス処理部304を有するものとして説明するが、本発明を限定する意図はない。別の実施形態として、受注システムサーバ110が有していてもよいし、生産システム120のプリントサーバ122が有していてもよい。
【0041】
<PRX>
次に、図4及び図5を参照して、PRXの記述例について説明する。図4の400は、「色」に関する一例としてエンドユーザが“SpotColorRed”と定義した特色についての品質要求を、PRXを用いて指定した例を示す。
【0042】
ColorScoreは色に関する品質要求のパラメータを定義するフィールドから構成されている。ScoringInfoはMinimumAcceptableRankとDesiredRankとがあり、どちらも、色の品質レベルを定義する。MinimumAcceptableRankは最低限守るべき品質レベルであり、ここではレベル3であり、DesiredRankは望まれる到達目標の品質レベルであり、ここではレベル4である。
【0043】
ColorParameterは「色」に関する品質要求のパラメータを定義するフィールドから構成されている。ParameterNameは品質要求の名称を表し、ここでは”SpotColorRed”である。SamplingPositionはオブジェクトの印刷データ内における位置情報を表す。SamplingPositionImageIdLinkは印刷データ内の特色オブジェクトへのリンクとしてオブジェクトのID名称を表し、ここでは”CP1a”である。更に、CxFReferenceObjectIdLinkはオブジェクトの目標の色情報を表すデータセットへのリンクをIDにより表し、ここでは”CxF001”である。
【0044】
図5の500は、PRX400のCxFReferenceObjectIdLinkにより紐づけられるデータセットである。CxFReferenceDataでは、cc:Object Nameが”1”であり、idが”CxF001”である色の定義がされている。その色はcc:ColorValuesの中で定義されており、ここでは色空間の一種であるLabを用いて定義されている。ここではL=17.64166、a=1.076666、b=0.3338566である。更に、SamplingPositionImageDataは、SamplingPositionImageIdLinkで定義された色のオブジェクト名を示す。ここではSamplingPositionImageIdLinkのIDが”CP1a”であり、そのリンク先が”ColorPosition1a.jpg”であることを示している。以上により、色のID名とそのリンク名からLab値とオブジェクト名があることがPRXで指定されている。
【0045】
図4の410には「バーコード」の一例として、エンドユーザが二次元バーコードの品質要求を、PRXを用いて指定した場合について説明する。BarcodeSymbologyはバーコード種別を表し、ここでは”JAN”(Japanese Article Number)というバーコードの標準規格に従うことが示される。SamplingPositionImageIdLinkはオブジェクトの画像情報のデータセットへのリンクIDを表し、ここでは”BC2”である。
【0046】
図5の510はSamplingPositionImageDataにより紐づけられるデータセットであり、PositionLocationImageのIDがBC2に紐づけられる画像情報は”barcode.pdf”である。
【0047】
以上により、この例のバーコードは、その種類がJANであり、オブジェクト名はbarcode.pdfであることがPRXで指定されている。
【0048】
なお、ここで説明したPRXのColorParameterなどの用語やフォーマットなどは一例であり、PRXの標準規格が改定されると変更を受ける場合がある。その場合でも、PRXの標準規格のバージョンに応じた用語やフォーマットを用いて、上記で説明した色やバーコードを定義すればよい。
【0049】
<解析結果>
ここで、図8を参照して、ワークフロー管理サーバ100のプリプレス処理部304が印刷データを解析した際の解析結果について説明する。801は解析結果をXML形式で示したものである。
【0050】
print_data_nameは印刷データの名称を示し、ここでは”job001”である。特色データが含まれているとcolorspaceで示される。例えば、802に示すように、CIELab値で示される特色があればColorCIELabで示され、その特色名はここでは”sc01”であり、そのLabの値はL=17.64167、a=1.076669、b=0.3338588である。また、803に示すように、別の特色も検出され、名称が”sc02”、そのRGB値がR=85、G=170、B=119である。そして埋め込まれているフォントが検出されれば、fontで示される。例えば、804に示すように、courierという名称で”courier”というフォントタイプと、805に示すように、barcodeという名称で”JAN”というフォントタイプの2つが印刷データから検出されたことが示されている。
【0051】
<処理手順>
次に、図6を参照して、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100の動作の流れについて説明する。以下で説明する処理は、例えばROM202又はHDD204に格納されたプログラムをCPU201が読み出しRAM203に展開して実行することにより実現される。
【0052】
ワークフロー管理サーバ100がネットワークI/F205を介して受注システムサーバ110からPRX及び印刷データを受信すると、本フローチャートが開始される。S601で、統括制御部302は、受信したPRX及び印刷データから構成される印刷ジョブをデータ管理部301に保存し、そこから印刷データをプリプレス処理部304へ送信し、PRXをPRX解釈部303へ送信する。プリプレス処理部304は印刷データを解析し、その解析結果をデータ管理部301へ送信する。この解析結果は図8で示したものが一例である。次に、S602で、統括制御部302は、データ管理部301へ送信された解析結果を分析し、印刷データに特色又はバーコードが存在するかを判断し、存在する(Yes)場合はS603へ、存在しない(No)場合はS617に進む。ここでは、印刷データを解析して、印刷品質基準が指定可能なオブジェクトが受信した印刷データに存在するか否かを判断している。なお、バーコードに関してはプリプレス処理部304がバーコードオブジェクトそのものを解析できなければ、図8で示すようにフォントにバーコードフォントが埋め込まれているかどうかで代替的に判断してもよい。
【0053】
S603で、PRX解釈部303は、PRXを解析し、その解析結果をデータ管理部301へ送信する。図4及び図5で説明したようなPRXを解析すると、そこで指定されている特色やバーコードを検出することができる。S604で統括制御部302はデータ管理部301へ送信された解析結果を分析し、PRXに特色又はバーコードが存在するかを判断し、存在する(Yes)場合はS605へ、存在しない(No)場合はS606に進む。
【0054】
S606で、統括制御部302は、PRX及び印刷データの解析結果を比較し、特色とバーコードのそれぞれでPRXで指定されている対象の印刷品質基準が印刷データで指定されている特色とバーコードの対象に対応したものかを判断する。ここでの判断について図8の具体例を用いて説明する。印刷データの解析結果から特色に関しては、名称が”sc01”であって、そのLabの値がL=17.64167、a=1.076669、b=0.3338588である特色802が存在する。また、名称が”sc02”であって、そのRGBの値がR=85、G=170、B=119である特色803が存在する。バーコードに関しては、規格がJANであるバーコードフォントが存在することが分かる。
【0055】
一方、PRXの解析結果から特色に関しては、名称が”sc01”であって、Labの値がL=17.64166、a=1.076666、b=0.3338566である特色の印刷品質基準が存在する。バーコードに関しては、画像データの名称が”barcode.pdf”であって、その規格が”JAN”であるバーコードの印刷品質基準が存在することが分かる。
【0056】
これらを比較すると、名称”sc02”の特色がPRXに定義されていないと判断することができる。このように印刷データに存在する特色やバーコードの印刷品質基準がPRXに定義されていない場合、S605でNoと判断する。このように、プリプレス処理部304の解析結果が特色又はバーコードを含んでいることを示すと、PRX解釈部303の解析結果に基づき、対応する印刷品質基準そのものが無いと判断しS606に進む。或いは、存在しても印刷データに存在する特色又はバーコードに対応したものでは無いと判断した場合も、S606に進む。一方、対応したものであると判断された場合(Yes)は、S617に進む。
【0057】
S606で、統括制御部302は、印刷データとPRXに矛盾が存在することを通知するために、ワークフロー管理端末101の表示装置等の表示部に所定の通知を表示する。この通知は、印刷データに含まれるオブジェクトとPRXが整合しないことを通知するものであってもよい。あるいは、PRXの確認を促す通知や、単にエラーがあることを通知するような形態であってもよい。本実施形態における警告画面(通知画面)においては、印刷ジョブの実行を停止するか、又は、継続するかをユーザ入力に従って選択可能である。具体的な画面表示を図7Aの700に示す。画面700の詳細については後述する。続いて、S607で、統括制御部302は、ワークフロー管理者の指示入力を受け付け、その入力を判断する。入力が停止(Yes)の場合はS608へ進み、停止でない(No)場合はS609に進む。ここで、ワークフロー管理者は印刷ジョブを停止にせず、PRXにおける印刷品質基準の記述内容を修正して印刷を継続すると判断すると、Noと入力する。或いは、ワークフロー管理者はPRXの修正をエンドユーザの判断を仰いで行った方がよいと判断すると、Yesと入力する。
【0058】
S608で、統括制御部302は印刷ジョブを保存しているデータ管理部301に対し、該当印刷ジョブはPRXを修正する必要があるとの属性を持たせ、印刷ジョブの処理を一旦停止する。更に、統括制御部302はワークフロー管理端末101の表示装置に該当印刷ジョブはPRXを修正する必要があるとの表示を行う。具体的な画面表示を図7Aの画面710に示す。画面710の詳細については後述する。対し、該当印刷ジョブはPRXを修正する必要があるとの表示を行う。表示後、S618に進む。
【0059】
S609以降のステップは、ワークフロー管理者がPRXの印刷品質基準の記述内容を修正するために、ワークフロー管理サーバ100が修正内容の候補を提案する処理となる。
【0060】
S609で、統括制御部302は、S603でPRX解釈部303がPRXを解析した解析結果が保管されているデータ管理部301から上記解析結果を取得する。さらに、統括制御部302は、取得した解析結果の中から特色又はバーコードの印刷品質基準を全て抽出し、それらを選択肢としてワークフロー管理端末101の表示装置に表示する。具体的には、上述したように、本印刷前の校正で顧客からの特色修正要望により印刷データの特色データのRGBやLabの値とPRXのそれとが異なる場合を考える。図8のプリプレス処理結果のL=17.64167、a=1.076669、b=0.3338588の特色は、校正結果により修正した特色値である。一方、図5のPRXに定義されたLab値のL=17.64166、a=1.076666、b=0.3338566は構成前の修正していない特色値であり、それらは異なる。この場合、印刷データの特色データのLab値とは異なるL=17.64166、a=1.076666、b=0.3338566の値が定義されている特色のMinimumAcceptableRankとDesiredRankの値を取得し、それを選択肢として示す。具体的な画面表示を図7Bの720に示す。
【0061】
次に、S610で、統括制御部302は、ワークフロー管理者の指示入力を受け付け、その入力を判断する。入力が選択肢の中から1つ以上を選択している(Yes)場合はS616へ、何も選択せずキャンセル(No)の場合はS611に進む。S611で、統括制御部302は、S603においてPRX解釈部303がPRXを解析した解析結果が保管されているデータ管理部301から上記解析結果を取得する。さらに、統括制御部302は、取得した解析結果から特色又はバーコード以外の印刷品質基準を全て抽出し、それらを選択肢としてワークフロー管理端末101の表示装置に表示する。具体的な画面表示を図7Bの730に示す。続いて、S612で、統括制御部302は、ワークフロー管理者の指示入力を受け付け、その入力を判断する。入力が選択肢の中から1つ以上を選択している(Yes)場合はS616へ進み、何も選択せずキャンセル(No)の場合はS613に進む。
【0062】
S613で、統括制御部302は、データ管理部301に保管されているPRXを解析した解析結果とは別の印刷品質基準を取り出し、それらを選択肢としてワークフロー管理端末101の表示装置に表示する。具体的な画面表示を図7Cの750に示す。別の印刷品質基準とは、例えば本商業印刷システムを運用する印刷会社が社内標準規格として持つ印刷品質基準であったり、印刷業界の標準規格であるJapanColorを満たすための印刷品質基準であったりする。また、印刷品質基準は複数ある場合もある。例えば、バーコードの基準であるANSIにはグレードがAからFまであるが、これらのグレードの中から適切な基準を選択できるように別の印刷品質基準として保持しておく。続いて、S614で、統括制御部302は、ワークフロー管理者の指示入力を受け付け、その入力を判断する。入力が選択肢の中から1つ以上を選択している(Yes)場合はS616へ進み、何も選択せずキャンセル(No)の場合はS615に進む。
【0063】
上記S610、S612、及びS614において代わりの印刷品質基準が1つも選択されていない状態であるため、S606で統括制御部302が判断した印刷データとPRXとの間の矛盾が解消されていないことになる。従って、S615で、統括制御部302は、改めて印刷データとPRXに矛盾が存在するエラー状態と判断する。そして、処理をS606に戻し、上述した警告表示を行い、S607でワークフロー管理者の指示入力を受け付けることで、再度ワークフロー管理者の判断を仰ぐ。
【0064】
上記S610、S612、及びS614において代わりの印刷品質基準が1つ以上選択された場合、S616で、統括制御部302はPRXに対して選択された印刷品質基準を書き換える。さらに、統括制御部302は、書き換えたPRXをデータ管理部301に保存し以前のPRXを置き換える。これで、書き換えたPRXは印刷データと整合性が取れることになる。
【0065】
次に、S617で、統括制御部302は、これまで説明した一連の処理を、検知した矛盾やエラー内容、それに対する解決方法などを履歴情報としてログに記録し、データ管理部301に保存し、処理を終了する。これらの履歴情報は、後にエラーを詳細に解析するために利用されてもよいし、ユーザに印刷品質基準を提示する際の(図7B及び図7C)学習データとして利用されてもよい。
【0066】
なお、図6のフローチャートは、ワークフロー管理サーバ100が処理するとして説明したが、受注システムサーバ110や生産システム120がPRX解釈部303及びプリプレス処理部304を有し、上記フローチャートを実行してもよい。また、ワークフロー管理サーバ100が行うと説明した上記S601やS603の処理は、PRX解釈部303及びプリプレス処理部304を有している受注システムサーバ110や生産システム120に対し処理を依頼しその結果を受け取る制御としてもよい。このように柔軟に処理を分散することが可能である。また、統括制御部302は、警告画面等の警告情報を外部装置に送信し、当該外部装置で警告を行うようにしてもよい。
【0067】
<画面例>
図7A乃至図7Cを参照して、図6のフローチャートで説明したワークフロー管理端末101に表示される画面及び指示入力画面の一例について説明する。
【0068】
図7Aの700は、S606で表示される画面表示の一例である。画面700では、矛盾が検出されたことの警告と、印刷ジョブを停止するか、又は、継続するかをワークフロー管理者に入力させる入力ボタンとが表示される。入力ボタンとしては、停止ボタン701と継続ボタン702と選択可能に表示される。
【0069】
図7Aの710は、S608で表示される画面表示の一例である。画面710では、印刷ジョブを一覧表示し、それらのジョブのPRXに矛盾があるかどうかが識別可能に表示される。例えば、711に示すように、ジョブ名が”job001”のPRXの列に”NG!”と表示することで、PRXに矛盾があることが一目で分かるようになっている。矛盾が無い場合には、他のジョブのように”OK”が表示される。また、ジョブ名”Jpb004”については、”OK”も”NG!”も表示されていないが、これは特色やバーコードが印刷データやPRXに存在しないためである。
【0070】
図7Bの720は、S609で表示される画面表示の一例である。画面720では、S609でPRXを解析して抽出した特色の印刷品質基準を全て表示し、更に、選択可能にチェックボックス723が表示される。図7Bに示すように、最低ランク3(目標ランク4)が選択肢として表示され、それのチェックボックス723にチェックが入っていることを示している。ワークフロー管理者は、チェックを入れて選択(Yes)ボタン721を押下すると置き換えを指示することができる。一方、キャンセル(No)ボタン722を押下すると、置き換えないことを指示することができる。
【0071】
また、図7Bの730は、S609で表示される画面表示の一例である。画面730では、S609でPRXを解析して抽出したバーコードの印刷品質基準を全て表示し、それらから選択できるようにチェックボックス733がある。図7Bでは、バーコードの基準の1つであるJANが選択肢として表示され、JANのチェックボックス733にチェックが入っていないことを示している。ワークフロー管理者は、チェックを入れて選択(Yes)ボタン731を押下すると置き換えを指示することができる。一方、キャンセル(No)ボタン732を押下すると、置き換えないことを指示することができる。
【0072】
図7Cの740は、S611で表示される画面表示の一例である。画面740では、S609でPRXを解析した結果、PRXに含まれる全ての印刷品質基準を表示し、それらから選択できるようにチェックボックス743、744がある。図7Cでは、Japan Color2012とG7が選択肢として表示され、G7のチェックボックス744にチェックが入っていることを示している。ワークフロー管理者は、チェックを入れて選択(Yes)ボタン741を押下すると、置き換えを指示することができる。一方、キャンセル(No)ボタン742を押下すると、置き換えないことを指示することができる。
【0073】
図7Cの750は、S613で表示される画面表示の一例である。画面750では、S613で統括制御部302がデータ管理部301に保管されている別の印刷品質基準を取り出し、それらを表示し、それらから選択できるようにチェックボックス753~757がある。図7Cでは、社内基準High、社内基準Low、Japan Color2012、ANSIグレードA、ANSIグレードFが選択肢として表示される。社内基準HighとANSIグレードAのチェックボックス753、756にチェックが入っていることを示している。ワークフロー管理者は、チェックを入れて選択(Yes)ボタン751を押下すると、置き換えを指示することができる。一方、キャンセル(No)ボタン752を押下すると、置き換えないことを指示することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置は、印刷ジョブとして、印刷データと印刷品質基準とを外部から受信し、受信した印刷データを解析して、印刷品質基準を指定可能なオブジェクトを抽出する。また、情報処理装置は、受信した印刷品質基準を解析し、当該解析結果に基づき、抽出されたオブジェクトに対応する印刷品質基準が、受信した印刷品質基準に指定されているか否かを判断する。また、情報処理装置は、当該判断の結果、抽出された少なくとも1つのオブジェクトに対応する印刷品質基準が、受信した前記印刷品質基準に指定されていなければ、所定の通知を行う。本発明は、印刷品質基準が設定されるべきオブジェクトが印刷データに存在するにも関わらず、対応する要求基準が印刷要求に存在しない場合、その矛盾を検知し、警告を出力する仕組みを提供する。このように、本実施形態によれば、印刷品質基準が設定されるべきオブジェクトが印刷データに存在するにも関わらず、対応する要求基準が印刷要求に存在しない場合、その矛盾を検知し、警告を出力することができる。これにより、印刷品質基準が指定可能な特色やバーコードなどのオブジェクトに対し適切な印刷品質基準が設定されないまま印刷されることを防ぐことができる。
【0075】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0076】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0077】
100:ワークフロー管理サーバ、101:ワークフロー管理端末、110:受注システムサーバ、111:受注システム管理端末、112:エンドユーザ端末、120:生産システム、121:印刷装置、122:プリントサーバ、301:データ管理部、302:統括制御部、303:PRX解釈部、304:プリプレス処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8