(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】電流検出装置、及び電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2020006016
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】新田 甲之輔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 圭一郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/079572(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168328(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0226891(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287479(US,A1)
【文献】国際公開第2009/050943(WO,A1)
【文献】特開2013-150394(JP,A)
【文献】特開昭61-109469(JP,A)
【文献】特開2009-254047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源線と第2の電源線との間に接続された複数のスイッチ素子を有し、前記複数のスイッチ素子のスイッチングにより負荷部に流れる電流の向きを変更するスイッチング回路から前記負荷部に電流が流れる経路に配置され、前記経路に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、
前記電流電圧変換部が変換した電圧を、出力電流として検出する電圧検出部と、
前記スイッチング回路の前記複数のスイッチ素子のうちの、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に前記負荷部を導通させるスイッチ素子がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、前記電圧検出部が前記電圧を検出するように、前記電圧検出部の検出タイミングを調整する検出制御部と
を備え
、
前記スイッチング回路は、4つのスイッチ素子を有するフルブリッジ回路であり、
前記検出制御部は、前記フルブリッジ回路の前記4つのスイッチ素子のうちの、前記第1の電源線に接続された第1のスイッチ素子と、前記第2の電源線に接続された第2のスイッチ素子との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、前記電圧検出部が前記電圧を検出するように、前記電圧検出部の検出タイミングを調整する
ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記検出制御部は、前記スイッチ素子がオン状態になる期間のうち、前記複数のスイッチ素子による影響を受けない所定の範囲内に前記検出タイミングが収まるように調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記フルブリッジ回路は、前記4つのスイッチ素子が位相シフト制御されており、
前記検出制御部は、前記位相シフト制御による前記両方がオン状態になる期間の変化に応じて、前記検出タイミングを変更する
ことを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記検出タイミングの調整値を、前記複数のスイッチ素子のスイッチングにおける所定の基準タイミングからの遅延時間情報として記憶する不揮発性記憶部を備え、
前記検出制御部は、前記不揮発性記憶部が記憶する前記遅延時間情報に基づいて、前記検出タイミングを調整する
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の電流検出装置と、
一次側コイルと二次側コイルとを有し、前記負荷部としてのトランスと、
前記トランスの前記一次側コイルに接続され、前記一次側コイルに交流信号を供給する前記スイッチング回路と、
前記トランスの前記二次側コイルから出力される交流信号を整流する整流部と、
前記電流検出装置が検出した前記出力電流に基づいて、前記スイッチング回路のスイッチングを制御する電源制御部と
を備えることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置、及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置などの電流を検出する電流検出装置において、CT(Current Transformer)により電流を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような従来の電流検出装置では、CTにより電流を電圧に変換して、ピークホールド回路などで平滑化した電圧をADC(Analog to Digital Converter)で検出することで電流を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電流検出装置では、例えば、スイッチングによるスパイク電流の影響や、ピークホールド回路に使用するダイオードの温度特性の影響などにより、バラツキが大きく、検出精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、電流の検出精度を向上させることができる電流検出装置、及び電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、第1の電源線と第2の電源線との間に接続された複数のスイッチ素子を有し、前記複数のスイッチ素子のスイッチングにより負荷部に流れる電流の向きを変更するスイッチング回路から前記負荷部に電流が流れる経路に配置され、前記経路に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、前記電流電圧変換部が変換した電圧を、出力電流として検出する電圧検出部と、前記スイッチング回路の前記複数のスイッチ素子のうちの、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に前記負荷部を導通させるスイッチ素子がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、前記電圧検出部が前記電圧を検出するように、前記電圧検出部の検出タイミングを調整する検出制御部とを備え、前記スイッチング回路は、4つのスイッチ素子を有するフルブリッジ回路であり、前記検出制御部は、前記フルブリッジ回路の前記4つのスイッチ素子のうちの、前記第1の電源線に接続された第1のスイッチ素子と、前記第2の電源線に接続された第2のスイッチ素子との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、前記電圧検出部が前記電圧を検出するように、前記電圧検出部の検出タイミングを調整することを特徴とする電流検出装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出制御部は、前記スイッチ素子がオン状態になる期間のうち、前記複数のスイッチ素子による影響を受けない所定の範囲内に前記検出タイミングが収まるように調整することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記フルブリッジ回路は、前記4つのスイッチ素子が位相シフト制御されており、前記検出制御部は、前記位相シフト制御による前記両方がオン状態になる期間の変化に応じて、前記検出タイミングを変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出タイミングの調整値を、前記複数のスイッチ素子のスイッチングにおける所定の基準タイミングからの遅延時間情報として記憶する不揮発性記憶部を備え、前記検出制御部は、前記不揮発性記憶部が記憶する前記遅延時間情報に基づいて、前記検出タイミングを調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置と、一次側コイルと二次側コイルとを有し、前記負荷部としてのトランスと、前記トランスの前記一次側コイルに接続され、前記一次側コイルに交流信号を供給する前記スイッチング回路と、前記トランスの前記二次側コイルから出力される交流信号を整流する整流部と、前記電流検出装置が検出した前記出力電流に基づいて、前記スイッチング回路のスイッチングを制御する電源制御部とを備えることを特徴とする電源装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出制御部が、第1の電源線と第2の電源線との間に一次側コイルを導通させるスイッチ素子がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、電圧検出部が電圧を検出するように、電圧検出部の検出タイミングを調整する。これにより、電流検出装置は、スイッチングの際のスパイク電流の影響を低減させつつ、安定した電流の検出が可能になる。また、電流検出装置は、従来技術のようなピークホールド回路を必要としないため、ダイオードの温度特性の影響により検出結果にバラツキが生じることがない。よって、電流検出装置は、電流の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による電源装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における電流電圧変換部の一例を示す回路図である。
【
図3】本実施形態における電流電圧変換部の検出波形の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態における電源装置の動作の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による電流検出装置、及び電源装置について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態による電源装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、電源装置1は、直流電源2と、チョークコイル3と、平滑コンデンサ4と、電流検出装置10と、スイッチング回路20と、トランス30と、整流部40と、制御部50とを備える。
【0016】
直流電源2は、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池などのバッテリであり、電源装置1に直流電力を供給する。直流電源2は、例えば、電源線L1(第1の電源線)と電源線L2(第2の電源線)との間に所定の電圧の直流電力を供給する。
【0017】
スイッチング回路20は、例えば、4つのスイッチ素子(Q1~Q4)を有するフルブリッジ回路であり、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングにより負荷部(トランス30)に流れる電流の向きを変更する。スイッチング回路20は、直流電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して、後述するトランス30(の一次側コイル31)に供給する。
また、スイッチング回路20は、第1のスイッチ素子21と、第2のスイッチ素子22とを備える。
【0018】
4つのスイッチ素子(Q1~Q4)のそれぞれは、例えば、N型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、電源線L1と電源線L2との間に、中間のノードN1を介して、直列に接続されている。
また、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4とは、電源線L1と電源線L2との間に、中間のノードN2を介して、直列に接続されている。
【0019】
スイッチ素子Q1は、ドレイン端子が電源線L1に、ソース端子がノードN1に、ゲート端子が制御部50から出力される制御信号線に、それぞれ接続されている。
スイッチ素子Q2は、ドレイン端子がノードN1に、ソース端子が電源線L2に、ゲート端子が制御部50から出力される制御信号線に、それぞれ接続されている。
【0020】
スイッチ素子Q3は、ドレイン端子が電源線L1に、ソース端子がノードN2に、ゲート端子が制御部50から出力される制御信号線に、それぞれ接続されている。
スイッチ素子Q4は、ドレイン端子がノードN2に、ソース端子が電源線L2に、ゲート端子が制御部50から出力される制御信号線に、それぞれ接続されている。
【0021】
ここで、スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q3は、電源線L1に接続された第1のスイッチ素子21に含まれる。また、スイッチ素子Q2及びスイッチ素子Q4は、電源線L2に接続された第2のスイッチ素子22に含まれる。スイッチング回路20は、トランス30の一次側コイル31に接続され、一次側コイル31に交流信号を供給する。
また、4つのスイッチ素子(Q1~Q4)は、後述する制御部50によって、位相シフト制御される。
【0022】
トランス30は、一次側コイル31と二次側コイル32とを有し、一次側コイル31に供給された交流電力を変換して二次側コイル32から出力する。なお、本実施形態において、トランス30は、負荷部の一例である。
【0023】
一次側コイル31は、ノードN1とノードN2との間に接続され、スイッチング回路20によって生成された交流信号が供給される。
二次側コイル32は、中間点(センタータップ)のノードN3を介して、直列に接続された二次側コイル32Aと二次側コイル32Bとを有している。
なお、トランス30の二次側コイル32から出力される交流信号は、整流部40に出力される。
【0024】
二次側コイル32Aは、第1端が後述する整流部40のダイオード41のアノード端子に、第2端がノードN3(センタータップ)を介してグランド端子に接続されている。
また、二次側コイル32Bは、第1端がノードN3(センタータップ)を介してグランド端子に、第2端が後述する整流部40のダイオード42のアノード端子に接続されている。
【0025】
整流部40は、トランス30の二次側コイル32から出力される交流信号を整流する。整流部40は、ダイオード41とダイオード42とを備える。
【0026】
ダイオード41は、アノード端子が二次側コイル32Aの第1端に、カソード端子がノードN4に、それぞれ接続されている。
ダイオード42は、アノード端子が二次側コイル32Bの第2端に、カソード端子がノードN4に、それぞれ接続されている。
【0027】
チョークコイル3は、ノードN4とノードN5との間に接続され、目的の周波数より高い電流を阻止して、ノードN5の出力電圧を平滑化する。
平滑コンデンサ4は、ノードN5(出力端子)と、ノードN3(グランド端子)との間に接続され、ノードN5の出力電圧を平滑化する。
チョークコイル3及び平滑コンデンサ4は、出力電圧のノイズを除去し平滑化するために用いられる。
【0028】
電流検出装置10は、検出コイル11と、電流電圧変換部12と、ADC(Analog to Digital Converter)13と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)14と、制御部50の検出制御部52とを備える。
【0029】
検出コイル11は、スイッチング回路20のスイッチング回路20から負荷部(トランス30)に流れる電流を検出するためのコイルである。検出コイル11は、スイッチング回路20から負荷部(トランス30)に電流が流れる経路に配置される。
【0030】
電流電圧変換部12は、検出コイル11を用いて、スイッチング回路20から負荷部(トランス30)への経路に流れる電流を電圧に変換する。電流電圧変換部12の詳細な構成については、
図2を参照して後述する。
【0031】
ADC13(電圧検出部の一例)は、電流電圧変換部12が変換した電圧を、出力電流として検出する。ADC13は、後述する検出制御部52の制御に基づいて、電流電圧変換部12が変換した電圧を検出するタイミングを制御され、検出した当該電圧値を、上述したトランス30に流れ込み電流(出力電流)として検出する。ADC13は、検出値を制御部50に出力する。
【0032】
EEPROM14(不揮発性記憶部の一例)は、後述する検出制御部52の検出タイミングの調整値を、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングにおける所定の基準タイミングからの遅延時間情報として記憶する。EEPROM14は、遅延時間情報を、例えば、電源装置1の出荷検査時のキャリブレーション(校正)によって記憶される。
【0033】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、電源装置1を統括的に制御する。制御部50は、電源制御部51と、検出制御部52とを備える。
【0034】
検出制御部52は、出力電流を検出するための制御を行う。検出制御部52は、スイッチング回路20の複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のうちの、電源線L1と電源線L2との間に負荷部(トランス30)を導通させるスイッチ素子がオン状態(導通状態)になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように、ADC13の検出タイミングを調整する。
【0035】
検出制御部52は、上述したトランス30を導通させるスイッチ素子がオン状態になる期間のうち、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)による影響を受けない所定の範囲内に検出タイミングが収まるように調整する。具体的に、検出制御部52は、フルブリッジ回路の4つのスイッチ素子(Q1~Q4)のうちの、電源線L1に接続された第1のスイッチ素子21と、電源線L2に接続された第2のスイッチ素子22との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように、ADC13の検出タイミングを調整する。検出制御部52は、例えば、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q4との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように、ADC13の検出タイミングを調整する。
【0036】
なお、EEPROM14には、例えば、スイッチ素子Q1がオフ状態(非導通状態)になるタイミングを基準にした遅延時間情報が予め記憶されている。検出制御部52は、EEPROM14(不揮発性記憶部)が記憶する遅延時間情報に基づいて、検出タイミングを調整する。また、検出制御部52は、位相シフト制御による両方がオン状態になる期間の変化に応じて、検出タイミングを変更する。検出タイミングの調整の詳細については、後述する。
【0037】
電源制御部51は、電流検出装置10(検出制御部52)が検出した出力電流に基づいて、スイッチング回路20のスイッチングを制御する。電源制御部51は、例えば、位相シフト制御により、4つのスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングを制御する。
【0038】
次に、
図2を参照して、電流電圧変換部12の構成について説明する。
図2は、本実施形態における電流電圧変換部12の一例を示す回路図である。
図2に示すように、電流電圧変換部12は、検出コイル11に接続され、ダイオード(121~124)と、抵抗(125~127)と、コンデンサ128とを備えている。
【0039】
検出コイル11は、ノードN5とノードN6との間に接続されている。
ダイオード121とダイオード122とは、ノードN7とノードN8との間に、中間のノードN5を介して、直列に接続されている。ダイオード121は、アノード端子がノードN5に、カソード端子がノードN7に、それぞれ接続されている。また、ダイオード122は、アノード端子がノードN8に、カソード端子がノードN5に、それぞれ接続されている。このように、ダイオード121とダイオード122とは、ノードN8からノードN7の方向が順方向になるように、直列に接続される。
【0040】
ダイオード123とダイオード124とは、ノードN7とノードN8との間に、中間のノードN6を介して、直列に接続されている。ダイオード123は、アノード端子がノードN6に、カソード端子がノードN7に、それぞれ接続されている。また、ダイオード124は、アノード端子がノードN8に、カソード端子がノードN6に、それぞれ接続されている。このように、ダイオード123とダイオード124とは、ノードN8からノードN7の方向が順方向になるように、直列に接続される。
【0041】
このように、ダイオード121及びダイオード122と、ダイオード123及びダイオード124とは、ダイオードブリッジを構成しており、検出コイル11が検出したトランス30に流れる出力電流に対応した交流信号を整流して、電流値に応じた電圧に変換する。
【0042】
抵抗125と抵抗126とは、ノードN7とノードN8との間に、中間のノードN9を介して、直列に接続されている。抵抗125と抵抗126とは、検出コイル11が検出した出力電流に応じた電圧を抵抗分圧して、ノードN9から出力する。ノードN9は、瞬時の過電流検出用の出力端子fであり、例えば、コンパレータ(不図示)に接続されて、所定の閾値以上になるか否かを検出することで、瞬時の過電流による異常を検出することが可能になる。
【0043】
抵抗127は、ノードN7とノードN10の出力端子との間に接続される。また、コンデンサ128は、ノードN10と、ノードN8との間に接続されている。抵抗127とコンデンサ128とは、積分回路を構成しており、出力電流に応じた電圧の検出信号の高周波成分のノイズを除去する。ノードN10の出力端子は、ADC13の入力端子に接続されている。
【0044】
次に、図面を参照して、本実施形態による電流検出装置10及び電源装置1の動作について説明する。
図3は、本実施形態における電流電圧変換部12の検出波形の一例を示す図である。
【0045】
図3において、波形W0は、上述した
図2に示すノードN10の検出信号の波形である。また、グラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、検出信号の電圧を示している。
図3に示すように、波形W0は、トランス30の一次側コイル31に電流が流れるタイミング(例えば、スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q4がオン状態、又は、スイッチ素子Q2及びスイッチ素子Q3がオン状態)に、検出信号の電圧が上昇する。
【0046】
なお、波形W0のうちで、検出信号の電圧が急峻に変化している箇所P1は、スイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングのタイミング周辺に相当する。そのため、ADC13では、このような箇所P1での検出を避けて、時刻T1のようなタイミングで電圧を検出する。すなわち、検出制御部52は、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)による影響を受けない所定の範囲内に検出タイミングが収まるように調整する。
【0047】
次に、
図4を参照して、電流検出装置10及び電源装置1の全体の動作について説明する。
図4は、本実施形態における電源装置1の動作の一例を示すタイムチャートである。
【0048】
図4において、波形W1~波形W4は、上から順に、スイッチ素子Q1~スイッチ素子Q4のスイッチングの状態を示している。また、波形W5は、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q4との両方がオン状態、及びスイッチ素子Q2とスイッチ素子Q3との両方がオン状態になるタイミングを示すタイミング信号である。なお、波形W5において、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q4との両方がオン状態を正極性とし、スイッチ素子Q2とスイッチ素子Q3との両方がオン状態を負極性として表している。
【0049】
また、波形W6は、上述した電流電圧変換部12から出力される検出信号であって、出力電流に対応した電圧を示す信号を示している。また、波形W7は、電源制御部51によるフィードバック(F/B)制御の周期割り込みを示している。
また、波形W8は、ADC13の変換タイミングを示している。
なお、
図4に示す波形W1~波形W8の横軸は、時間である。
【0050】
図4において、制御部50の電源制御部51は、制御の1周期の期間TR1として、位相シフト制御により、波形W1~波形W4に示すように、スイッチ素子Q1~スイッチ素子Q4のスイッチングを制御する。電源制御部51は、電流検出装置10(検出制御部52)により検出された出力電流に基づいて、位相シフト制御を行う。なお、位相差の期間TΔθは、例えば、スイッチ素子Q3をオフ状態にしてから、スイッチ素子Q1をオフ状態にするまでの期間である。
【0051】
また、検出制御部52は、波形W5におけるスイッチ素子Q1とスイッチ素子Q4との両方がオン状態になる期間T14ONの中央部分のタイミング(波形W8の黒色塗りつぶし部分)で、ADC13の検出を行うように制御する。検出制御部52は、ADC13が検出した電圧値を、対応する出力電流として取得し、当該出力電流を電源制御部51に出力する。
【0052】
電源制御部51は、電流検出装置10(検出制御部52)により検出された出力電流に基づいて、位相差の期間TΔθの算出及び更新を行い(波形W7を参照)、更新した位相差の期間TΔθに基づいて、スイッチング回路20の4つのスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングを制御する。
【0053】
なお、
図4において、拡大波形G1は、領域A1を拡大した波形W1~波形W6、及び波形W8の各波形を示している。ここで、遅延値DT34は、位相差の期間TΔθの起点であるスイッチ素子Q3がオフ状態になる時刻から、スイッチ素子Q4がオン状態になるまでの遅延値である。また、期間T14ONは、上述したように、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q4との両方がオン状態になる期間である。また、遅延値DTCKは、スイッチ素子Q3がオフ状態になる時刻から、ADC13の検出タイミングまでの遅延値である。
このような状況において、遅延値DTCKは、下記の(1)式により表される。
【0054】
遅延値DTCK = 遅延値DT34+(位相差の期間TΔθ-遅延値DT34)/2
= 遅延値DT34+期間T14ON/2 ・・・ (1)
【0055】
式(1)に基づいて算出された遅延値DTCKは、EEPROM14に記憶されている。
【0056】
また、本実施形態では、電源制御部51は、電流検出装置10(検出制御部52)により検出された出力電流に基づいて、位相シフト制御を行うため、出力電流に応じて、位相差の期間TΔθが変更される。そのため、EEPROM14には、例えば、位相差の期間TΔθの値と、遅延値DTCKとを対応付けて予め記憶されている。
【0057】
検出制御部52は、例えば、位相差の期間TΔθの値に対応付けられた遅延値DTCKをEEPROM14から取得し、取得した遅延値DTCKにより、ADC13の検出タイミングを調整する。なお、ADC13の検出期間(波形W8の黒色塗りつぶし期間を参照)には、ADC13のサンプルホールド期間及びアナログ-デジタル変換期間が含まれる。
検出制御部52は、調整した検出タイミングによりADC13が検出した検出値を出力電流として、電源制御部51に出力する。
【0058】
次に、本実施形態による電源装置1及び電流検出装置10の電流検出に関するキャリブレーション処理(校正処理)について説明する。電源装置1及び電流検出装置10は、出荷前に、以下のようなキャリブレーション処理が実行される。
【0059】
電源装置1の制御部50は、電源装置1の出力電流を所定の一定値にした状態において、直流電源2からの入力電圧を最大値(Max値)にした場合の検出電流値と、直流電源2からの入力電圧を標準値(Typ値)にした場合の検出電流値とが同一になるように、検出タイミングの遅延値DTCKを調整する。例えば、入力電圧を最大値(Max値)にした場合が、入力電圧を標準値(Typ値)にした場合に比べて、低い値である場合には、制御部50は、遅延値DTCKを増やす処理を実行する。制御部50は、このようにキャリブレーション処理した結果の遅延値DTCKを、EEPROMに記憶させる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態による電流検出装置10は、電流電圧変換部12と、ADC13(電圧検出部)と、検出制御部52とを備える。電流電圧変換部12は、スイッチング回路20から負荷部(例えば、トランス30)に電流が流れる経路に配置され、経路に流れる電流を電圧に変換する。スイッチング回路20は、電源線L1(第1の電源線)と電源線L2(第2の電源線)との間に接続された複数のスイッチ素子(Q1~Q4)を有し、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングにより負荷部(例えば、トランス30)に流れる電流の向きを変更する。ADC13は、電流電圧変換部12が変換した電圧を、出力電流として検出する。検出制御部52は、スイッチング回路20の複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のうちの、電源線L1と電源線L2との間に負荷部(例えば、トランス30)を導通させるスイッチ素子がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように、ADC13の検出タイミングを調整する。
【0061】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、スイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングの際のスパイク電流の影響を低減させつつ、安定した電流の検出が可能になる。また、本実施形態による電流検出装置10は、従来技術のようなピークホールド回路を必要としないため、ダイオードの温度特性の影響により検出結果にバラツキが生じることがない。よって、本実施形態による電流検出装置10は、電流の検出精度を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、検出制御部52は、スイッチ素子(Q1、Q2)がオン状態になる期間(期間T14ON)のうち、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)による影響を受けない所定の範囲内に検出タイミングが収まるように調整する。
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングによる影響を低減することができるため、さらに電流の検出精度を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、スイッチング回路20は、4つのスイッチ素子(Q1~Q4)を有するフルブリッジ回路である。検出制御部52は、フルブリッジ回路の4つのスイッチ素子(Q1~Q4)のうちの、電源線L1に接続された第1のスイッチ素子21と、電源線L2に接続された第2のスイッチ素子22との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように、ADC13の検出タイミングを調整する。
【0064】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、第1のスイッチ素子21と第2のスイッチ素子22との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングでADC13が電圧を検出するようにしたので、スイッチング回路20がフルブリッジ回路である場合であっても、適切に出力電流を検出することができる。
【0065】
また、本実施形態では、スイッチング回路20であるフルブリッジ回路は、4つのスイッチ素子(Q1~Q4)が位相シフト制御されている。検出制御部52は、位相シフト制御による両方がオン状態になる期間の変化に応じて、検出タイミングを変更する。
【0066】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、位相シフト制御による両方がオン状態になる期間の変化に応じて、ADC13の検出タイミングを適切に調整することができる。よって、本実施形態による電流検出装置10は、位相シフト制御を行う場合であっても、適切に出力電流を検出することができる。
【0067】
また、本実施形態による電流検出装置10は、検出タイミングの調整値を、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)のスイッチングにおける所定の基準タイミングからの遅延時間情報(例えば、遅延値DTCK)として記憶するEEPROM14(不揮発性記憶部)を備る。検出制御部52は、EEPROM14(不揮発性記憶部)が記憶する遅延時間情報に基づいて、検出タイミングを調整する。
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、EEPROM14(不揮発性記憶部)を備るという簡易な構成により、適切に出力電流を検出することができる。
【0068】
また、本実施形態による電源装置1は、上記に記載の電流検出装置10と、負荷部としてのトランス30と、スイッチング回路20と、整流部40と、電源制御部51とを備える。トランス30は、一次側コイル31と二次側コイル32とを有する。スイッチング回路20は、トランスの一次側コイル31に接続され、一次側コイル31に交流信号を供給する。整流部40は、トランス30の二次側コイル32から出力される交流信号を整流する。電源制御部51は、電流検出装置10が検出した出力電流に基づいて、スイッチング回路20のスイッチングを制御する。
【0069】
これにより、本実施形態による電源装置1は、上記に記載の電流検出装置10と同様の効果を奏し、電流の検出精度を向上させることができる。また、電流の検出精度を向上させることができるため、本実施形態による電源装置1は、出力電圧を精度良く制御することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、電圧検出部の一例として、ADC13を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、他の方式の電圧検出部を用いてもよい。例えば、ADC13の代わりに、検出タイミングにより所定の閾値電圧と比較するコンパレータを用いるようにしてもよい。
【0071】
また、上記の実施形態において、電源装置1は、整流部40として、ダイオード(41、42)を備えた非同期整流回路を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、整流部40として、同期整流回路を用いるようにしてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態において、負荷部の一例として、トランス30を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、負荷部は、トランス以外の構成(例えば、モータやコイルなど)であってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態において、トランス30の一例として、センタータップ形式のトランスを用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、他の形式のトランスであってもよい。
【0074】
また、上記の実施形態において、電流検出装置10を電源装置1に適用する例を説明dしたが、これに限定されるものではなく、例えば、モータ制御装置などの他の装置に適用するようにしてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態において、制御部50は、電源回路としての制御を行う電源制御部51と、電流検出を制御する検出制御部52との両方を備える例を説明したが、これに限定されるものではない、例えば、電源制御部51と、検出制御部52とのいずれか一方を、制御部50の外部に備えるようにしてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態において、検出制御部52は、第1のスイッチ素子21と第2のスイッチ素子22との両方がオン状態になる期間の中間点のタイミングで、ADC13が電圧を検出するように検出タイミングを調整する例を説明したが、これに限定されるものではない。検出制御部52は、例えば、複数のスイッチ素子(Q1~Q4)による影響を受けない所定の範囲内であれば、中間点のタイミングからずれた検出タイミングに調整するようにしてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態において、スイッチング回路20がフルブリッジ回路である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハーフブリッジ回路や他の方式のスイッチング回路であってもよい。
また、上記の実施形態において、電源装置1は、フルブリッジ回路及びトランス30を用いた電源回路として説明したが、これに限定されうものではなく、他の方式の電源回路に適用してもよい。例えば、電源回路は、絶縁方式・非絶縁方式に限定されるものでなく、他の方式であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 電源装置
2 直流電源
3 チョークコイル
4 平滑コンデンサ
10 電流検出装置
11 検出コイル
12 電流電圧変換部
13 ADC
14 EEPROM
20 スイッチング回路
21 第1のスイッチ素子
22 第2のスイッチ素子
30 トランス
31 一次側コイル
32、32A、32B 二次側コイル
40 整流部
41、42、121、122、123、124 ダイオード
50 制御部
51 電源制御部
52 検出制御部
125、126、127 抵抗
128 コンデンサ
Q1、Q2、Q3、Q4 スイッチ素子