IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7422555撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
<>
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図1
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図2
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図3
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図4
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図5
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図6
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図7
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図8
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G03B 7/16 20210101AFI20240119BHJP
   G03B 7/095 20210101ALI20240119BHJP
   G03B 7/097 20210101ALI20240119BHJP
   G03B 7/0997 20210101ALI20240119BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20240119BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20240119BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240119BHJP
【FI】
G03B7/16
G03B7/095
G03B7/097
G03B7/0997
G03B15/03 X
G03B15/05
H04N23/56
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020021880
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2020177220
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019081313
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三枝 紘貴
(72)【発明者】
【氏名】影山 貴史
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-114465(JP,A)
【文献】特開2002-300470(JP,A)
【文献】特開2005-045544(JP,A)
【文献】特開2002-064728(JP,A)
【文献】特開2019-028281(JP,A)
【文献】特開2014-057256(JP,A)
【文献】特開2002-072302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 7/00-7/30
G03B 15/04-15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影準備動作の指示と撮影動作の指示とを行うことが可能な指示手段と、
被写体の明るさを測光する測光手段と、
前記測光手段の測光結果に基づいて、撮影時の露出パラメータの値を算出する算出手段と、
撮影レンズと通信して、該撮影レンズに関する情報を取得する取得手段と、
被写体を照明する発光部を発光させて撮影を行う場合に、前記撮影レンズに関する情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出手段を制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記撮影レンズに関する情報に含まれる被写体までの距離情報の正確性の情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出手段を制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記距離情報の正確性の情報により、前記距離情報が正確でないと判断された場合には、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点で、発光部を発光させる撮影を行う発光撮影の場合のプログラム線図に基づいて、前記露出パラメータの値を算出するように前記算出手段を制御することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記算出手段により算出された前記発光撮影の場合の前記露出パラメータの値に撮像装置を設定した場合、前記発光部の最小発光量でも露出オーバーとなる場合に、前記指示手段により前記撮影動作の指示がなされたときの前記露出パラメータを、露出オーバーとならない値に変更することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記指示手段により前記撮影動作の指示がなされたときの前記露出パラメータを、露出オーバーとならない値に変更することにより背景の露出が暗くなる場合に、前記発光部の発光による主被写体の露出に影響しない露出パラメータを変更することにより前記背景の露出が暗くならないように補償することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、背景の露出が暗くならないように補償を行っても、背景の露出が適正にならない場合に、前記発光部の最小発光量よりも小さい発光量を用いて、前記露出パラメータを変更することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮像装置のレンズとしてマクロレンズを使用する場合には、背景の露出が暗くならないようにする補償を行わないことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、夜景シーンの場合に、前記発光部の最小発光量よりも小さい発光量を用いて、前記露出パラメータを変更することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記距離情報の正確性の情報により、前記距離情報が正確であると判断された場合には、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点で、前記距離情報と、前記発光部の最小発光量とに基づいて、露出オーバーにならない露出パラメータを算出するように前記算出手段を制御し、算出された露出パラメータを前記撮影動作の指示がなされたときの露出パラメータとして使用することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記算出された露出パラメータを用いて撮影を行うと、背景の露出が暗くなる場合に、前記発光部の発光による主被写体の露出に影響しない露出パラメータを変更することにより前記背景の露出が暗くならないように補償することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、背景の露出が暗くならないように補償を行っても、背景の露出が適正にならない場合に、前記発光部の最小発光量よりも小さい発光量を用いて、前記露出パラメータを変更することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記撮像装置のレンズとしてマクロレンズを使用する場合には、背景の露出が暗くならないようにする補償を行わないことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記制御手段は、夜景シーンの場合に、前記発光部の最小発光量よりも小さい発光量を用いて、前記露出パラメータを変更することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記露出パラメータは、ISO感度および絞り値の少なくともどちらかであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記算出手段により算出された前記露出パラメータの値を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記表示手段は、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点の前記露出パラメータのうち、前記指示手段により撮影動作の指示がなされた時点で前記露出パラメータと異なる値が算出される可能性があるパラメータについては、該パラメータの値を示す数値を表示しないことを特徴とする請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記撮影レンズの焦点を合わせる自動焦点調節手段をさらに備え、前記指示手段により前記撮影準備動作が指示されたことに応じて、前記自動焦点調節手段の動作により合焦位置までの距離情報が変化した場合に、前記表示手段は、前記露出パラメータの表示を更新しないことを特徴とする請求項14または15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記指示手段により前記撮影準備動作が指示された後の、前記自動焦点調節手段の動作による合焦位置までの距離情報の更新の周期に対して、前記表示手段における前記露出パラメータの表示の更新の周期の方が遅いことを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記発光部の向きを検出する検出手段をさらに備え、該検出手段により、前記発光部の向きが前記撮影レンズの光軸の方向と異なることが検出された場合に、前記制御手段は、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせる動作を行わないように前記算出手段を制御することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記発光部を発光させずに撮像を行って得られた画像データと、前記発光部を発光させて撮像を行って得られた画像データを合成する合成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項20】
撮影準備動作の指示と撮影動作の指示とを行うことが可能な指示手段を備える撮像装置を制御する方法であって、
被写体の明るさを測光する測光工程と、
前記測光工程の測光結果に基づいて、撮影時の露出パラメータの値を算出する算出工程と、
撮影レンズと通信して、該撮影レンズに関する情報を取得する取得工程と、
被写体を照明する発光部を発光させて撮影を行う場合に、前記撮影レンズに関する情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出工程を制御する制御工程と、
を有し、
前記制御工程において、前記撮影レンズに関する情報に含まれる被写体までの距離情報の正確性の情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出工程を制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項21】
請求項20に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
請求項20に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置においてストロボ撮影を行う場合の露出制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くのデジタルカメラは、ストロボを同調発光させて撮影するストロボ撮影機能を備えている。ストロボには、発光制御が可能な最小の光量があり、この最小光量より少ない光量で発光させることはできない。そのため、明るいF値で感度が高ISO感度に設定された状態でストロボ撮影を行うと、適正輝度よりも明るい露出オーバーの画像となってしまうことがある。この現象を防ぐため、ストロボの本発光を行う前に本発光量を調光するためのプレ発光を行い、プレ発光での被写体の明るさに基づいて、最小発光で露出オーバーとなる分ISO感度を下げたり、絞りを絞ったりして露出オーバーを防ぐようにしている。この方法は、「セイフティFE」などと呼ばれている。
【0003】
このセイフティFEには、シャッターボタンの半押し時点(撮影準備動作の指示時点)でユーザーに提示される露出パラメータ(絞り値、ISO感度、シャッター速度)と実際の撮影で使用される露出パラメータが異なるという課題がある。
【0004】
レンズの焦点距離とフォーカスレンズの位置から求まる合焦距離情報を使用して露出パラメータのリミット制限(ISO感度の上限値またはF値の最小値を制限する)を行えば、シャッターボタンの半押し時点で露出オーバーとならないストロボ撮影露出パラメータをユーザーに提示できる。特許文献1では、ズーム・合焦位置により感度を設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-243714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、合焦距離情報に基づいて露出パラメータを決めるためには、合焦距離情報が信頼できる値である必要がある。合焦距離は、デジタルカメラから着脱可能なレンズ内で、焦点距離とフォーカスレンズの位置から、設計値として保持している距離換算データを参照して求めている。この距離換算データが正確であれば問題はないが、距離情報の分解能が粗い場合や、設計上の精度が十分に高くない場合には、デジタルカメラシステムとして、合焦距離情報に基づいて露出パラメータを決定することが不適切となる。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ストロボ撮影を行う場合に、被写体が適正となる露出パラメータをユーザーに報知することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる撮像装置は、撮影準備動作の指示と撮影動作の指示とを行うことが可能な指示手段と、被写体の明るさを測光する測光手段と、前記測光手段の測光結果に基づいて、撮影時の露出パラメータの値を算出する算出手段と、撮影レンズと通信して、該撮影レンズに関する情報を取得する取得手段と、被写体を照明する発光部を発光させて撮影を行う場合に、前記撮影レンズに関する情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記撮影レンズに関する情報に含まれる被写体までの距離情報の正確性の情報に基づいて、前記指示手段により前記撮影準備動作の指示がなされた時点での前記露出パラメータの値の算出方法を異ならせるように前記算出手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ストロボ撮影を行う場合に、被写体が適正となる露出パラメータをユーザーに報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタルカメラの構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態におけるデジタルカメラでの静止画撮影時の露出パラメータの決定動作を示すフローチャート。
図3図2のS213の撮影露出パラメータの決定動作を示すフローチャート。
図4】レンズ情報に基づき、露出パラメータだけでなく撮影方法を切り替える動作を示すフローチャート。
図5】第2の実施形態における撮影露出パラメータの決定動作を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態におけるS211の動作を説明するフローチャート。
図7】第2の実施形態におけるS212の動作を説明するフローチャート。
図8】第3の実施形態におけるS211の動作を説明するフローチャート。
図9】第3の実施形態におけるS212の動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタルカメラ100(以下、カメラ100とする)の構成を示すブロック図である。
【0013】
カメラMPU101は、カメラ100全体の動作を制御するためのマイクロコンピュータである。カメラMPU101は、ROM130に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、カメラ100全体を制御する。ROM130は、既知の設計パラメータ等の情報も予め保持している。RAM131は、ROM130に記憶されている制御プログラムを展開するため、および制御プログラムの実行にあたって必要な種々のデータやパラメータを一時記憶するために用いられる。
【0014】
レンズユニット(撮影レンズ)300は、入射した光束を撮像素子102に結像させるための光学系を備え、絞り調節機構と焦点調節機構を備えている。撮像素子102は、被写体からの反射光を電気信号に変換するCCDやCMOSセンサ等の撮像素子である。タイミング信号発生回路103は、撮像素子102を動作させるために必要なタイミング信号を発生する。A/D変換器104は、撮像素子102から読み出されたアナログ画像信号をデジタル画像データに変換する。メモリコントローラ105は、メモリ132の読み書きやバッファメモリ106のリフレッシュ動作などを制御する。画像表示部107は、バッファメモリ106に格納された画像データを表示するとともに、現在の撮影モードや露出パラメータの数値及び各種設定状態を示すアイコンなどを画像データに重畳して表示する。
【0015】
インターフェース108は、メモリカードやハードディスクなどの記録媒体109および不図示の無線通信部との接続のためのインターフェースである。モーター制御部110は、カメラMPU101からの信号に従って不図示のモーターを制御することにより、レンズユニット300を介して入射した光束の光路を変更するために不図示のミラーをアップ・ダウンさせる。ミラーがアップしている場合、レンズユニット300を介して入射した光束は撮像素子102等に導かれ、ミラーがダウンしている場合、レンズユニット300を介して入射した光束は測光センサー113等に導かれる。
シャッター制御部111は、カメラMPU101からの信号に従って、撮像素子102の前方に配置され撮像素子102を遮光状態と露光状態とに切り換える不図示のシャッターを制御する。
測光部112は、撮影画面内を複数のエリアに分割した測光センサー113の出力に基づいて各エリアの測光結果である測光値をカメラMPU101に出力する。カメラMPU101は各エリアの測光値に基づいて、撮影時の露出パラメータであるAV(絞り値)、TV(シャッタースピード)、ISO(撮影感度)などを決定するための露出演算を行う。また、カメラMPU101は、被写体を照明する内蔵ストロボ(発光部)119あるいは外部ストロボ(発光部)120により被写体へ向けて予備発光(プリ発光)したときに測光部112から出力される測光値に基づいて、発光撮影時の内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120の発光量の演算も行う。
レンズ制御部114は、カメラMPU101からの信号に従って不図示のレンズ駆動モーター及び絞り駆動モーターを制御することにより、レンズユニット300の焦点調節と絞り調節を行う。 またレンズ制御部114は、カメラMPU101からの信号に従って、レンズユニット300からレンズ情報を取得する。
【0016】
焦点検出部115は、撮影画面内に複数の焦点検出領域を備えた焦点検出センサーの出力に基づいて各焦点検出領域のデフォーカス量をカメラMPU101に出力する。カメラMPU101は、焦点検出部115から出力されたデフォーカス量に基づいて、レンズ制御部114に指示して焦点調節動作を実行させる。
姿勢検出部116は、加速度センサーなどからなり、重力方向を基準としたカメラ100の姿勢を検知する。
【0017】
操作部117は、撮影準備動作や撮影動作の開始指示を受け付けるレリーズボタンを含んでいる。レリーズボタンの第1ストローク(半押し)でスイッチSW1がONになると、カメラMPU101は焦点検出動作や測光動作などの撮影準備動作を開始させる。また、レリーズボタンの第2ストローク(全押し)でスイッチSW2がONになると、カメラMPU101は撮影動作を開始させる。なお、スイッチSW1がONの状態からOFFの状態になると、カメラMPU101は内部に有するタイマーでスイッチSW1がOFFの状態になってからの経過時間を計測する。また、操作部117は、バウンス発光撮影における最適な照射方向を自動的に決定する機能を実行するか否かを切り換える自動照射角決定スイッチを含んでいる。
【0018】
発光制御部118は、内蔵ストロボ119を使用する際に、カメラMPU101からの信号に従ってプリ発光(予備発光)や本発光などの発光パターンの制御や発光量の制御を行う。また、発光制御部118は、カメラMPU101からの信号に応じた制御を内蔵ストロボ119と外部ストロボ120のどちらに適用するかの切り換え制御も行っている。また発光制御部118は、外部ストロボ120と、通信による情報授受も行っている。
【0019】
次に、図2は、本実施形態におけるカメラ100での静止画撮影時の露出パラメータの決定動作を示すフローチャートである。
【0020】
S201では、カメラMPU101がユーザーの操作部117の操作によるスイッチSW1のONの入力を受けた際に、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用して撮影する設定であるか否かを判断する。さらにそれらが発光可能状態にあるかも判断する。
【0021】
S201で、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用しない非発光撮影の設定であった場合、S202に進む。S202では、カメラMPU101は、測光部112により測光した結果に基づき、撮影露出パラメータ(AV,TV,ISOなど)を決定する。このとき、測光部112により測光した結果を入力とし、撮影露出パラメータを出力とする所謂プログラム線図を使用する。S202では、ストロボ非発光用のプログラム線図を使用することとなる。S203では、ユーザーにより操作部117のスイッチSW1のONの入力が保持状態にあるとき、カメラMPU101は画像表示部107に、S202で決定した撮影露出パラメータを表示する。ユーザーによる操作部117のスイッチSW2をONする操作があったとき、S204へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S203の表示は省略することもある。S204では、静止画撮影動作を行い、カメラMPU101は撮像素子102から読み出した画像データを不図示の現像処理系の各部に転送して現像し、インターフェース108を介して記録媒体109または無線通信部へと転送する。
【0022】
S201で、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用する発光撮影であった場合、S205へ進む。ここで、この撮影において使用するストロボを「発光ストロボ」と呼ぶこととする。S205では、カメラMPU101はレンズ制御部114を介してレンズユニット300からのレンズ情報の取得を行う。
【0023】
S206では、カメラMPU101は、S205で取得したレンズ情報に含まれる「合焦位置までの距離情報」(被写体までの距離情報)が正確であるか否かを判断する。「合焦位置までの距離情報」が正確であるか否かの判断は、S205で取得したレンズ情報に含まれる「距離情報正確性情報」を用いるか、カメラMPU101が参照するROM130にあるレンズID群と、レンズ情報に含まれるレンズIDの一致を用いて行う。
【0024】
なお、被写体までの距離情報としては、合焦位置までの距離情報とは異なる基準で求めた距離情報であってもよい。例えば、位相差画素を備えた位相差センサ(撮像面に位相差画素を備えた撮像素子を含む)に基づいて、当該位相差センサによって得られた被写体のデフォーカス量を被写体までの距離情報に換算する構成であってもよい。その他、カメラシステム全体で統一した基準を設けた情報であれば、どのような方法で被写体までの距離情報を求めてもよい。
【0025】
S206で「距離情報不正確」と判断した場合、S207へ進む。S207では、S202と同様に撮影露出パラメータ(AV,TV,ISOなど)を決定する。このとき、ストロボ発光用のプログラム線図を使用することとなる。S208ではS203と同様、画像表示部107にS207で決定した露出パラメータを表示する。ユーザーによる操作部117のスイッチSW2のON操作があったとき、S209へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S208の表示は省略することもある。
【0026】
S209では、MPU101は、発光ストロボを所定のプリ発光量で発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、測光部112で測光することによりプリ発光の被写体への影響度を測定する。S210では、S209での測定結果に基づき、静止画撮影時の本発光量をどの程度の発光量にすべきかを算出する。S210で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さい場合、このままの露出パラメータで静止画撮影を行えば、発光ストロボを最小発光量で発光させたとしても、得られる画像はMPU101で求めた所望の明るさよりも明るく(露出オーバー)なる。
【0027】
S211では、S210で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さいか否かを判断する。発光ストロボの最小発光量に関して、内蔵ストロボ119の最小発光量はMPU101が参照するROM130に保持されており、外部ストロボ120の最小発光量は発光制御部118を介した通信により取得可能である。
【0028】
S211で、S210で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さいと判断された場合、S212へ進む。S212では、S210で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量を下回った分が露出オーバーになるため、露出パラメータに反映することにより露出オーバーの撮影を防ぐ演算を行う。MPU101は、絞りを絞る、またはISO感度(アナログゲイン、デジタルゲイン、ガンマカーブ調節を含む)を下げることにより露出オーバーを防ぐ。
【0029】
このとき、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量も減光されることを加味して、適正調光を狙う領域(主被写体領域)が発光ストロボの最小発光量で適正輝度が得られるよう、絞りまたはISO感度の変動量を調節する。主被写体領域を除く背景領域が、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量が減光され暗くなってしまうことを防ぐためにシャッター速度を長くすることによる露出補償を行うことが考えられる。しかしスイッチSW1のON時点でS208で表示された露出パラメータ表示よりも長いシャッター速度で撮影されることは、ユーザーにとってデメリットとなることもあるため、撮影モードの設定やユーザーの設定に基づいて実施する。
【0030】
そしてS204では、発光ストロボを発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、静止画の撮影を行う。S212での動作により、S204で撮影した画像に付加する撮影露出パラメータ情報はS208で表示した撮影露出パラメータと異なる場合がある。そのため、S208での撮影露出パラメータの表示時に、S204までに変化する可能性のある露出パラメータに関して「Auto」など不確定値を表現する表示にしてもよい。
【0031】
S206で「距離情報正確」と判断された場合、S213へ進む。S213では、撮影露出パラメータ(AV,TV,ISOなど)を決定するが、この撮影露出パラメータの決定動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
図3は、図2のS213の撮影露出パラメータの決定動作を示すフローチャートである。
【0033】
まずS301で、S202、S207と同様に撮影露出パラメータ(AV,TV,ISOなど)を決定する。このとき、ストロボ発光用のプログラム線図を使用するが、ISOAuto設定である場合のISO感度上限値はS207で使用したプログラム線図よりも高い設定としている。次にS302では、S205で取得したレンズ情報に含まれる「合焦位置までの距離情報」(被写体までの距離情報)と、発光ストロボの最小発光量(最小発光量をガイドナンバーで表した値)から、ISO感度リミット値を算出する。
【0034】
ガイドナンバー=F値×距離(m)(ただし、ISO100の場合) …(1)
式(1)はガイドナンバーと撮影露出パラメータと距離の関係を表す基本式である。この式に、最小発光量に対応する「ガイドナンバー」と「合焦位置までの距離情報」を用いることにより、最小発光量に対応するガイドナンバーで露出オーバーとならないF値とISO感度のリミット値を求めることができる。
【0035】
S302では、ISOAuto設定の場合、式(1)にS301で求めたAV値に基づくF値を代入することにより、ISO感度リミット値を求める。S303では、S301で求めた撮影露出パラメータをS302で求めたリミット値に制限し、制限したことによる背景の露出不足分をシャッター速度で補償して最終撮影露出パラメータを決定する。
【0036】
例えばISOAuto設定の場合、S301で求めた撮影露出パラメータがF2.0、ISO6400、シャッター速度1/60秒だったとする。この場合、S302で求めたISO感度リミット値がISO3200だったなら、最終撮影パラメータはF2.0、ISO3200、シャッター速度1/30秒となる。
【0037】
なお、上記の説明では、説明を分かりやすくするため、ISOAutoを想定して、固定F値で一度撮影露出パラメータを決めてからISO感度を制限するフローについて説明した。しかし、式(1)式の変形から、リミットとなるF値とISO感度の関係(AV値-SV値)を求めることができる。従って、リミットとなるF値とISO感度の関係をS301で使用するプログラム線図に適用することにより、最終撮影露出パラメータを算出することもできる。
【0038】
S304では、S203、S208、S214と同様に、画像表示部107にS213で決定した露出パラメータを表示する。ここで、撮影露出パラメータの表示中に、カメラMPU101は、焦点検出部115から出力されたデフォーカス量に基づいて、レンズ制御部114に指示して自動焦点調節動作を行うことがある。この場合、撮影露出パラメータは「合焦位置までの距離情報」に応じて変動させることとなるが、焦点調節動作中に逐一露出パラメータが変動する表示を行うのが好ましくないと感じるユーザーもいると考えられる。そのため、ユーザーによる操作部117のスイッチSW1のON操作に伴うワンショットAF追従動作中は、露出パラメータの表示を更新しないようにしてもよい。または、リミット値を算出する周期を、露出パラメータの演算周期よりも遅くする、あるいは、リミット値を算出するために用いる「合焦位置までの距離情報」の更新周期を、露出パラメータ演算周期よりも遅くしてもよい。
【0039】
図2の説明に戻って、ユーザーによる操作部117のスイッチSW2をONする操作があった場合、S215へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S214の表示は省略することもある。
【0040】
S215では、MPU101は、発光ストロボを所定のプリ発光量で発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、測光部112で測光することによりプリ発光の被写体への影響度を測定する。S216では、S215での測定結果に基づき、静止画撮影時の本発光量をどの程度の発光量にすべきかを演算する。そしてS204では、発光ストロボを発光させると同時に撮像素子102での露光を行う静止画撮影を行う。
【0041】
なお、ストロボをバウンスさせて使用する場合(ストロボの向きが撮影レンズの光軸と異なる方向を向いている場合)は、「ガイドナンバー」と「合焦位置までの距離情報」の関係が成り立たない。そのため、S206で「距離情報正確」と判断した場合であってもS207に進む。
【0042】
続いて、図4は、レンズ情報に基づき、露出パラメータだけでなく撮影方法を切り替える動作を示すフローチャートである。S401、S402、S403、S404は、図2のS201、S202、S203、S204と同じストロボ非発光撮影動作を示している。またS405は図2のS205と同じであり、S406は図2のS206と同じである。S407、S408、S409、S410、S411を経て、S416へと進む流れは、図2のS207、S208、S209、S210、S204と進む流れと同じである。さらに、S406からS417、S418、S419、S420、S421と進む流れは、図2のS206からS213、S214、S215、S216、S204と進む流れと同じである。その他、図2の説明で用いた「発光ストロボ」等の呼称を継承する。
【0043】
S411で、S410で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さいと判断された場合、S412に進み、S407で求めた露出パラメータで発光ストロボを光らせずに撮像を行う。ここで「撮像」とは、撮像素子102により画像データを取得することを示している。この「撮像」は、撮像素子102から読み出した画像データを不図示の現像処理系の各部を通して現像し、インターフェース108を介して記録媒体109または無線通信部へと転送する「撮影動作」とは異なる動作である。「撮像」の動作では、画像はメモリに記憶されるだけで、現像処理、記録媒体109への記録は行わない。
【0044】
続いてS413に進むが、S413は図2のS212と同じで、被写体が露出オーバーとならないような露出パラメータを求め設定する。但し、ここでは主被写体領域を除く背景領域が、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量が減光され暗くなってしまうことを防ぐためにシャッター速度を長くすることによる露出補償は行わない。
【0045】
続いてS414に進み、発光ストロボを発光させると同時にS413で設定した露出パラメータで撮像素子102での露光を行う撮像を行う。S415に進み、S412で撮像した画像データの背景領域と、S414で撮像した画像データのストロボ発光が当たっている主被写体領域を現像するとともに合成して、インターフェース108を介して記録媒体109または無線通信部へと転送する。
【0046】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、算出される被写体距離が正しい場合には、スイッチSW1のONの時点で、実際のストロボ撮影で採用される撮影パラメータを表示することが可能となる。
【0047】
(第2の実施形態)
上記の第1の実施形態では、本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さいと判断された場合、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより、発光ストロボの最小発光量で適正輝度が得られるように露出を調節した。この露出の調節において、絞りを絞る、またはISO感度を下げると、主被写体領域を除く背景領域が暗くなってしまうため、それを防ぐためにシャッター速度を長くすることによる露出補償を行うように説明した。
【0048】
しかしながら、露出補償を行うと、実際のシャッター速度がユーザーの指定したシャッター速度とずれてしまうため、露出補償を行わないことがある。その場合、露出補償以外の方法で背景を適正露光量にする方法が必要となる。
【0049】
この場合、最小発光量以下の制御可能範囲外の発光指示値を使用することで、主被写体と背景の双方を適正露光量にすることも考えられるが、制御可能範囲外の発光量を使用すると、発光性能が悪くなり、主被写体の露出がバラつくことがある。
【0050】
すなわち、常に制御可能範囲内の発光量のみを使用すると、背景が暗くなり、常に制御可能範囲外の発光量のみを使用すると、主被写体の露出がバラつく。
【0051】
そこで、本実施形態では、必要とする本発光量がストロボの最小発光量未満の場合に、主被写体と背景の双方の露出が適切になる確率を高める方法について説明する。
【0052】
なお、本実施形態では、デジタルカメラのブロック構成は、図1に示した第1の実施形態の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
図5は、本実施形態におけるカメラ100での静止画撮影時の露出パラメータの決定動作を示すフローチャートである。
【0054】
S501では、カメラMPU101がユーザーの操作部117の操作によるスイッチSW1のONの入力を受けた際に、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用して撮影する設定であるか否かを判断する。さらにそれらが発光可能状態にあるかも判断する。
【0055】
S501で、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用しない非発光撮影の設定であった場合、S502に進む。S502では、カメラMPU101は、測光部112により測光した結果に基づき、撮影露出パラメータ(AV値,TV値,ISO感度など)を決定する。このとき、測光部112により測光した結果を入力とし、撮影露出パラメータを出力とする所謂プログラム線図を使用する。S502では、ストロボ非発光用のプログラム線図を使用することとなる。
【0056】
S503では、ユーザーにより操作部117のスイッチSW1のONの入力が保持状態にあるとき、カメラMPU101は画像表示部107に、S502で決定した撮影露出パラメータを表示する。ユーザーによる操作部117のスイッチSW2をONする操作があったとき、S504へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S503の表示は省略することもある。
【0057】
S504では、静止画撮影動作を行い、カメラMPU101は撮像素子102から読み出した画像データを不図示の現像処理系の各部に転送して現像し、インターフェース108を介して記録媒体109または無線通信部へと転送する。
【0058】
S501で、内蔵ストロボ119あるいは外部ストロボ120を使用する発光撮影であった場合、S505へ進む。ここで、この撮影において使用するストロボを「発光ストロボ」と呼ぶこととする。S505では、カメラMPU101はレンズ制御部114を介してレンズユニット300からのレンズ情報の取得を行う。
【0059】
S506では、カメラMPU101は、S505で取得したレンズ情報に含まれる合焦位置までの距離情報(被写体までの距離情報)が正確であるか否かを判断する。合焦位置までの距離情報が正確であるか否かの判断は、S505で取得したレンズ情報に含まれる距離情報正確性情報を用いるか、カメラMPU101が参照するROM130にあるレンズID群と、レンズ情報に含まれるレンズIDの一致を用いて行う。
【0060】
なお、被写体までの距離情報としては、合焦位置までの距離情報とは異なる基準で求めた距離情報であってもよい。例えば、位相差画素を備えた位相差センサ(撮像面に位相差画素を備えた撮像素子を含む)に基づいて、当該位相差センサによって得られた被写体のデフォーカス量を被写体までの距離情報に換算する構成であってもよい。その他、カメラシステム全体で統一した基準を設けた情報であれば、どのような方法で被写体までの距離情報を求めてもよい。
【0061】
S506で距離情報が不正確と判断した場合、S507へ進む。S507では、S502と同様に撮影露出パラメータ(AV値,TV値,ISO感度など)を決定する。このとき、ストロボ発光用のプログラム線図を使用することとなる。
【0062】
S508では、S503と同様に、画像表示部107にS507で決定した露出パラメータを表示する。ユーザーによる操作部117のスイッチSW2のON操作があったとき、S509へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S508の表示は省略することもある。
【0063】
S509では、MPU101は、発光ストロボを所定のプリ発光量で発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、測光部112で測光することによりプリ発光の被写体への影響度を測定する。S510では、S509での測定結果に基づき、静止画撮影時の本発光量をどの程度の発光量にすべきかを算出する。S510で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量よりも小さい場合、このままの露出パラメータで静止画撮影を行えば、発光ストロボを最小発光量で発光させたとしても、得られる画像はMPU101で求めた所望の明るさよりも明るく(露出オーバー)なる。
【0064】
S511では、露出オーバーの画像を防ぐために、S510において求めた調光演算の結果と最小発光量とから、撮影露出パラメータを変更する。図6を用いてS511における撮影露出パラメータの変更方法について説明する。
【0065】
まず、S601では、S507において求めた撮影露出パラメータを取得する。S602では、S510で求められた本発光量がGNo(ガイドナンバー)Aより小さいか否かを判定する。GNoAは、内蔵ストロボ119または、外部ストロボ120の制御可能範囲の最小のGNoである。GNoAの情報として、内蔵ストロボ119の最小発光量はMPU101が参照するROM130に保持されており、外部ストロボ120の最小発光量は発光制御部118を介した通信により取得可能である。
【0066】
S602で、S510で求められた本発光量がGNoA以上の場合は、制御可能発光量となり、主被写体領域が適正な明るさで撮影できるため、撮影露出パラメータを変更しないでS603に進み、最終撮影露出パラメータを設定する。この時の本発光量はS510で求められた本発光量に設定する。
【0067】
一方、S602で、S510で求められた本発光量がGNoAより小さい場合は、S604に進む。S604では、S510で求めた本発光量が発光ストロボの最小発光量(GNoA)を下回った分が露出オーバーになるため、露出パラメータを変更することにより露出オーバーを防ぐ演算を行う。また、変更した露出パラメータに基づいて本発光量を再度算出する。
【0068】
具体的には、MPU101は、絞りを絞る、またはISO感度(アナログゲイン、デジタルゲイン、ガンマカーブ調節を含む)を下げることにより露出オーバーを防ぐ。このとき、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量も減光されることを加味して、適正調光を狙う領域(主被写体領域)が発光ストロボの最小発光量以上で適正露出となるよう、絞りまたはISO感度の変更量を調節する。ここでの処理は、最小発光量で適正露出となるよう絞りまたはISO感度の変更量を調節するのが理想的であるが、S510で求めた本発光量による露出オーバー段数を絞りやISO感度を変更して完全に補償できない場合もある。その場合は、できるだけ最小発光量に近い発光量となるように絞りまたはISO感度の変更量を調節することになる。
【0069】
また、主被写体領域を除く背景領域が、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量が減光され暗くなってしまうことを防ぐために、シャッター速度を長くすることによる露出補償を行う。ただし、シャッター速度を長くすると、手振れが起きやすくなるため、手振れが起きない程度の長秒限界を設けることが考えられる。
【0070】
また、スイッチSW1のON時点で、S508で表示された露出パラメータ表示よりも長いシャッター速度で撮影されることはユーザーにとってデメリットとなることもある。そのため、撮影モードの設定やユーザーの設定に基づいて撮影露出パラメータを決定する。
【0071】
S605では、S604で決定した撮影露出パラメータを、S601で取得した撮影露出パラメータより絞りを絞る、またはISO感度を下げる等により変更した分の露出不足を、シャッター速度を長くすることにより補償できる値になっているか否かを判定する。
【0072】
S605で露出補償ができている場合、本発光量をS604で算出した発光量に設定しても、主被写体領域、主被写体領域を除く背景領域をともに適正露出にできるため、S603に進み、S604で決めた撮影露出パラメータを最終露出パラメータとして設定する。この時の本発光量はS604で求められた本発光量に設定する。
【0073】
S605で露出補償ができていない場合、主被写体領域、背景領域をともに適正露出で撮影することができないため、背景領域の露出を優先した撮影を行う。S606では、S601と同様に、S507において求めた撮影露出パラメータを取得する。
【0074】
次にS607では、S510で求められた本発光量が、GNoBより小さいか否かを判定する。GNoBは、S602で使用したGNoAよりも少し小さい発光量で、発光可能であるが制御可能範囲外のガイドナンバーである。
【0075】
S607で、S510で求められた本発光量がGNoB以上の場合は、S606で取得した撮影露出パラメータを変更することなくS603に進み、最終撮影露出パラメータを設定する。また、この時の本発光量はS510で求められた本発光量に設定する。必要とする本発光量がGNoB以上でありGNoA未満の場合、主被写体の露出がオーバーまたはアンダーになるおそれはあるものの、絞り、ISO感度、シャッター速度をスイッチSW1のON時点から変更することなく背景領域を適正露出にすることを優先させる。
【0076】
S607で、S510で求められた本発光量がGNoBより小さい場合は、S608に進む。S608では、S604と同様に、S510で求められた本発光量がGNoBを下回った分、絞りを絞る、またはISO感度を下げる。このとき絞りの口径、ISO感度の値はS604で決めた値以上になる。また、変更した露出パラメータに基づいて本発光量を再度算出する。以上のように、絞りを絞る、またはISO感度を下げることにより外光受光量も減光されることを加味して、主被写体領域が発光ストロボの発光可能であるが制御可能範囲外の発光量以上で適正露出となるよう、絞りまたはISO感度の変更量を調節する。この時の本発光量はS608で求めた本発光量に設定する。これにより、主被写体の露出がオーバーまたはアンダーになるおそれはあるものの背景の露出は補償されることとなる。図6に示す処理を行うことで、背景領域を適正露出にすることを優先しつつ、スイッチSW1のON時点からの露出パラメータの変更や主被写体の露出がオーバーまたはアンダーになることを軽減することができる。
【0077】
以上のように図5のS511では、S601、S604、S606、S608で設定された撮影露出パラメータを条件によって変更し、最終撮影露出パラメータを決定する。
【0078】
そして、図5のS504において発光ストロボを発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、静止画撮影を行う。
【0079】
図5の説明に戻り、S506で距離情報が正確と判断した場合は、S512へ進む。S512では、撮影露出パラメータ(AV値,TV値,ISO感度など)を決定するが、この撮影露出パラメータの決定動作について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7は、図5のS512での撮影露出パラメータを決定する動作のサブルーチンを示している。
【0080】
S701では、S507と同様に、撮影露出パラメータ(AV値,TV値,ISO感度など)を決定する。このとき、ストロボ発光用のプログラム線図を使用する。なお、S702、S703のステップの処理は、図6のS602、S603のステップの処理と同様である。
【0081】
S704では、S604と同様に、S510で求められた本発光量が発光ストロボの最小発光量(GNoA)を下回った分が露出オーバーになるため、露出パラメータに変更することにより露出オーバーを防ぐ演算を行う。また、変更した露出パラメータに基づいて本発光量を再度算出する。ただし、S704では、実際のPre発光による演算結果から本発光量を求めるのではなく、S505で取得したレンズ情報に含まれる合焦位置までの距離情報と、発光ストロボの最小発光量(GNoA)とから、ISO感度リミット値を算出する。GNoAはS602で使用したガイドナンバーと同じである。
【0082】
ガイドナンバー=F値×距離(m) (ISO100のとき) …(1)
式(1)がガイドナンバーと撮影露出パラメータと距離の関係を表す基本式であり、最小発光ガイドナンバーと合焦位置までの距離情報とを用いることにより、最小発光ガイドナンバーで露出オーバーとならないF値とISO感度のリミット値を求めることができる。
【0083】
S704では、ISOAuto設定の場合、式(1)にS701で求めたAV値に基づくF値を代入することにより、ISO感度リミット値を求める。また、S701で求めた撮影露出パラメータのうちのISO感度を、求めたリミット値でクリップする。そして露出パラメータを変化させた分をシャッター速度で補償して、最終撮影露出パラメータを決定する。
【0084】
なお、説明を分かりやすくするため、ISOAutoを想定して、固定F値で一旦撮影露出パラメータを決めてから、ISO感度をリミットするように説明した。しかし、式(1)の変形から、リミット限界となるF値とISO感度の関係(AV値-SV値)を求めることができる。従って、リミット限界となるF値とISO感度の関係をS701で使用するプログラム線図に適用することにより、最終撮影露出パラメータを算出することもできる。
【0085】
その後のS705の処理は、S605の処理と同様である。露出補正限界でない場合、本発光量はS704で求められた本発光量に設定する。露出補正限界である場合、S706に進み、S706ではS701で求めた撮影露出パラメータを取得し、S707に進む。S707の処理はS607の処理と同様である。S510で求めた本発光量がGNoB以上の場合、本発光量はS510で求められた本発光量に設定する。
【0086】
そして、S708では、S704と同様に、式(1)からISO感度のリミット値を求める。また、変更した露出パラメータに基づいて本発光量を再度算出する。この時の本発光量はS708で求めた本発光量に設定する。
【0087】
以上のように図5のS512では、S701、S704、S706、S708で設定された撮影露出パラメータを条件によって変更し、最終撮影露出パラメータを決定する。
【0088】
図5の説明に戻り、S513では、S503、S508と同様に、画像表示部107にS512で決定した露出パラメータを表示する。そして、ユーザーによる操作部117のスイッチSW2のON操作があった場合に、S514へ進む。ユーザーによる操作部117の操作がスイッチSW1とスイッチSW2を一度に押す操作であった場合、S213の表示は省略することもある。
【0089】
S514では、MPU101は、発光ストロボを所定のプリ発光量で発光させると同時に撮像素子102での露光を行い、測光部112で測光することにより、プリ発光の被写体への影響度を測定する。
【0090】
S515では、S514での測定結果に基づき、静止画撮影時の本発光量をどの程度の発光量にすべきかを演算する。そしてS504では、発光ストロボを発光させると同時に撮像素子102を露光させて静止画撮影動作を行う。
【0091】
なお、バウンス時はガイドナンバーと合焦位置までの距離情報の関係が成り立たないので、S506で距離情報が正確と判断した場合であってもS507に進む。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、制御可能範囲内の最小発光量(GNoA)と発光可能だが制御範囲外の発光量(GNoB)の2つの発光量を用いて露出パラメータを求める。これにより、背景領域を適正露出にすることを優先しつつ、スイッチSW1のON時点からの露出パラメータの変更や主被写体の露出がオーバーまたはアンダーになることを軽減することができる 。
【0093】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、以下のような制御を行った。
【0094】
つまり、制御可能範囲内の最小発光量(GNoA)を用いて露出パラメータの上限を決め、絞りを絞ったりISO感度を下げたりした分をシャッター速度で露出補償する。この露出補償が行えなかった場合は、発光が届かないような背景領域などは暗く撮影されてしまう。それを回避するために、制御範囲外の発光量(GNoB)を用いて露出パラメータの上限を決め、再度露出パラメータを決める。発光量GNoBを用いて求めた露出パラメータの上限は発光量GNoAを用いて求めた露出パラメータの上限より大きい値になるので、GNoBを使用した際は、背景の明るさを優先した撮影パラメータとなる。
【0095】
この場合、第2の実施形態では、露出補償を行えたか否かを見てGNoA、GNoBを切り変えたが、撮影シーンによって切り替えることも考えられる。本実施形態では、撮影シーンによって発光量としてGNoA、GNoBのどちらを使うかを決める。
【0096】
なお、本実施形態では、デジタルカメラのブロック構成は、図1に示した第1の実施形態の構成と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態での静止画撮影時の露出パラメータの決定動作は、図5に示す第2の実施形態のフローチャートと同じである。ただし、S511、S512の処理内容が第2の実施形態と異なるので、この異なる部分について説明する。
【0097】
第3の実施形態においてS511で行う処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0098】
S801では、S601と同様の処理を行う。S802では、S505で行ったレンズ通信の結果レンズからマクロレンズを使用しているか否かを判断する。S802でマクロレンズを使用している場合はS803に進む。マクロレンズを使用している場合は、至近距離で被写体を主体に撮影するため、被写体を適正露出にすることを優先する。そのため、S803では、S604と同様に制御可能範囲内の最小発光量(GNoA)を用いて撮影露出パラメータの上限値を決め、S804において最終撮影露出パラメータを設定する。また、決められた撮影露出パラメータの上限値に基づいて本発光量を再度算出する。この時の本発光量はS804で求められた発光量に設定する。
【0099】
S802でマクロレンズを使用していない場合は、S805に進みシーン判定を行う。S805のシーン判定では、測光部112により測光した結果とヒストグラムとから夜景シーンか否かを検出する処理を行う。S806では、S805での処理結果を用いて、夜景シーンか否かを判定する。S806で夜景と判定されなかった場合は、S803に進む。また、S806で夜景と判定された場合は、背景を明るく撮影することを優先してS807に進む。
【0100】
S807では、S608と同様に、制御範囲外の発光量(GNoB)を用いて撮影露出パラメータの上限を決める。S807で求めた撮影露出パラメータの上限は、S803で求めた撮影露出パラメータの上限より明るく写せる露出制御値となる。また、決められた撮影露出パラメータの上限値に基づいて本発光量を再度算出する。この時の本発光量はS807で求められた発光量に設定する。その後S804に進み、最終撮影露出パラメータを決める。
【0101】
上記のように、S511では、シーン判定に応じてS803、S807の処理により撮影露出パラメータを決める。
【0102】
続いて、S512の処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0103】
S901、S902では、S801、S802と同様の処理を行う。S903では、S704と同様に、レンズ距離情報とGNoAから撮影露出パラメータの上限を決める。S904、S905、S906では、S804、S805、S806と同様の処理を行う。S907では、S708と同様に、レンズ距離情報とGNoBから撮影露出パラメータの上限を決める。
【0104】
以上説明したように、本実施形態では、使用レンズがマクロレンズの場合は被写体輝度を優先して制御可能範囲内の最小発光量(GNoA)を用いて撮影露出パラメータを決める。そして、夜景シーンと判定された場合は、背景輝度を優先して制御範囲外の発光量(GNoB)を用いて撮影露出パラメータを決める。これらの処理により、シーンに応じて、適切なストロボ照明と背景の明るさを実現することができる。
【0105】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0106】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0107】
100:デジタルカメラ、101:カメラMPU、102撮像素子、107:画像表示部、118:発光制御部、119:内部ストロボ、120:外部ストロボ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9