(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/58 20060101AFI20240119BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240119BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240119BHJP
B65H 7/06 20060101ALI20240119BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B65H29/58 B
B41J29/38
B65H5/06 M
B65H7/06
G03G15/00 480
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2020032188
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平島 希彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】関山 淳一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-43473(JP,A)
【文献】特開2015-16931(JP,A)
【文献】特開2016-137961(JP,A)
【文献】特開2010-262085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0276870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/58
B41J 29/38
B65H 5/06
B65H 7/06
G03G 15/00
G03G 15/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する主搬送路と、
前記主搬送路を搬送されるシートの第一面と第二面とに画像を形成する画像形成手段と、
前記主搬送路の終端に設けられ、前記第一面に画像が形成されたシートをローラによりスイッチバックさせるスイッチバック手段と、
前記シートの前記第二面に画像を形成するために、前記スイッチバックされたシートを前記主搬送路まで搬送する副搬送路と、
前記スイッチバック手段に設けられた前記ローラを駆動し、一定の方向にのみ回転するように制御されるモータと、
前記モータから供給される駆動力を前記ローラに伝達する伝達手段と、
前記伝達手段に作用して前記駆動力による前記ローラの回転方向を正転と逆転との間で切り替える切替手段と、
前記画像形成手段により第一面に画像が形成されたシートが前記ローラにより第一方向に搬送される第一期間と前記ローラにより前記第一方向とは異なる第二方向に当該シートが搬送される第二期間とのうち、少なくとも前記第一期間において、前記シートが前記画像形成手段を搬送される際の搬送速度である第一搬送速度から、当該第一搬送速度よりも低速の第二搬送速度で搬送されるよう、前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二搬送速度は、前記ローラにより前記シートが挟持されたまま前記シートの後端が前記副搬送路へ侵入可能となる搬送位置を搬送されているときに、前記切替手段および前記伝達手段による前記ローラの回転方向の切り替えが完了するように、決定された搬送速度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二搬送速度は、前記シートの後端が前記ローラを抜け切るまでに、前記切替手段および前記伝達手段による前記ローラの回転方向の切り替えが完了するように、決定された搬送速度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記シートの搬送方向が前記第一方向から前記第二方向に変更された後に、前記シートの搬送速度を前記第二搬送速度から前記第一搬送速度に戻すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記シートの搬送方向において、前記ローラよりも上流側に設けられ、前記主搬送路を搬送されるシートを検知するセンサをさらに有し、
前記制御手段は、前記センサが前記シートの先端または後端を検知したタイミングを基準として前記シートの搬送速度を前記第一搬送速度から前記第二搬送速度へ低下させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記センサは、前記画像形成手段と前記ローラとの間に設けられており、
前記制御手段は、前記シートの後端が前記センサを通過すると、前記モータを制御して、前記シートの搬送速度を前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記センサは、前記画像形成手段でシートがジャムを起こしていないことを確認するためのシートセンサであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段は、前記シートにトナー画像を定着させる定着手段を有し、
前記センサは、前記定着手段でシートがジャムを起こしていないことを確認するためのシートセンサであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記センサは、前記主搬送路における前記シートの搬送方向において前記画像形成手段よりも上流側に設けられており、
前記制御手段は、前記シートの後端が前記センサを通過したタイミングから第一所定時間が経過したタイミングに、前記モータを制御して、前記シートの搬送速度を前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記センサは、前記画像形成手段における画像の形成を開始するタイミングを決定するために設けられたシートセンサであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第一所定時間は、前記センサの検知位置から前記画像形成手段の定着手段のニップ部の中心位置までの距離を前記第一搬送速度で除算することで得られる時間であることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記センサが前記シートの後端を検知したタイミングを基準として、前記ローラの回転方向を切り替えることで前記シートの搬送方向を前記第一方向から前記第二方向へ切り替えることを特徴とする請求項5ないし11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記センサが前記シートの後端を検知したタイミングから第二所定時間が経過したことをトリガーとして、前記ローラの回転方向を切り替えることで前記シートの搬送方向を前記第一方向から前記第二方向へ切り替えることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記副搬送路に設けられ、前記シートの前記副搬送路への搬送に成功したことを確認するために設けられた検知手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記検知手段が前記シートの先端を検知すると、前記シートの搬送速度を前記第二搬送速度から前記第一搬送速度に戻すことを特徴する請求項1ないし13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
両面印刷可能な画像形成装置は、シートの表面に画像を形成し、反転機構によりシートの表裏を反転させ、シートの裏面に画像を形成する。特許文献1は、画像形成装置の内部でシートの表裏を反転するために、シートの搬送方向と平行な回転軸に沿ってシートを回転させる反転機構を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなシート回転による反転機構とは異なり、シートをスイッチバックすることで、シートの表裏を反転する反転機構が知られている。スイッチバックを実現するためには、搬送ローラの回転方向を正転と逆転とに切り替えるギア機構とソレノイドが必要となる。画像形成装置の小型化を図るために、シートの先端を排出口からはみ出させつつ、シートの後端を主搬送路から副搬送路に引き込むことでシートのスイッチバックが実現されることもある。ここで、シートの搬送速度が速い場合、搬送ローラの正転から逆転への切り替えが間に合わず、シートが排出口から排出されてしまい、スイッチバックが失敗することがあった。とりわけ、ギアやソレノイドが用いられる反転機構では切り替え時間が必要となるため、この問題が生じうる。このような反転ミスを防ぐために、スイッチバックを行う搬送路の距離を長くすることが考えられる。しかし、この場合は、画像形成装置のサイズが大きくなってしまう。そこで、本発明は、画像形成装置の小型化を実現しつつ、シートの反転を良好に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
シートを搬送する主搬送路と、
前記主搬送路を搬送されるシートの第一面と第二面とに画像を形成する画像形成手段と、
前記主搬送路の終端に設けられ、前記第一面に画像が形成されたシートをローラによりスイッチバックさせるスイッチバック手段と、
前記シートの前記第二面に画像を形成するために、前記スイッチバックされたシートを前記主搬送路まで搬送する副搬送路と、
前記スイッチバック手段に設けられた前記ローラを駆動し、一定の方向にのみ回転するように制御されるモータと、
前記モータから供給される駆動力を前記ローラに伝達する伝達手段と、
前記伝達手段に作用して前記駆動力による前記ローラの回転方向を正転と逆転との間で切り替える切替手段と、
前記画像形成手段により第一面に画像が形成されたシートが前記ローラにより第一方向に搬送される第一期間と前記ローラにより前記第一方向とは異なる第二方向に当該シートが搬送される第二期間とのうち、少なくとも前記第一期間において、前記シートが前記画像形成手段を搬送される際の搬送速度である第一搬送速度から、当該第一搬送速度よりも低速の第二搬送速度で搬送されるよう、前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像形成装置の小型化を実現しつつ、シートの反転を良好に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】実施例2の画像形成方法を示すフローチャート。
【
図7】実施例2の制御タイミングを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
<実施例1>
[画像形成装置]
図1が示すように画像形成装置100は電子写真方式のプリンタである。ここでは、画像形成方式として電子写真方式が例示されるが、本発明は画像形成方式に左右されずに適用可能である。たとえば、本発明はインクジェット記録方式および熱転写方式など様々な方式に適用可能である。
【0010】
交換可能なカートリッジ120は、感光ドラム122、帯電ローラ123、現像ローラ121を有している。感光ドラム122は、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転する。帯電ローラ123は感光ドラム122の周面を一様に帯電させる。露光装置108は画像信号に応じた光を感光ドラム122に照射して静電潜像を形成する。現像ローラ121はトナーを用いて静電潜像を現像してトナー画像を形成する。
【0011】
給送ローラ102はシートカセット140に収容されているシートを一枚ずつ搬送路へ給装する。搬送ローラ103およびレジストレーションローラ104はシートを転写部に搬送する搬送ローラである。転写部は感光ドラム122と転写ローラ106を有している。転写部をシートが通過する際にトナー画像が感光ドラム122からシートに転写される。定着装置130はシートおよびトナー画像に熱と圧力を加えることでトナー画像をシート上に定着させる。排出ローラ110は、定着装置130を通過してきたシートをFDローラ111へ搬送する。FDはフェイスダウンの略称である。FDは、トナー画像が形成されたシートの第一面が下を向くように排出されることを由来とする名称である。
【0012】
FDローラ111は、画像形成が完了したシートをFDトレイ112へ排出する。両面画像形成で、FDローラ111は、第一面に画像が形成されたシートの表裏をスイッチバック方式により反転させる。具体的には、FDローラ111は、主搬送路P1を搬送されてきたシートの先端からシートの途中までを画像形成装置100の外部に排出する。このときFDローラ111は正転している。シートの後端が副搬送路P2に送り込み可能となる位置にシートの後端が到着すると、FDローラ111の回転方向が正転から逆転に切り替わり、シートが副搬送路へ送り込まれる。FDローラ111でシートがスイッチバックすることから、このような反転方式はスイッチバック方式と呼ばれている。このように、FDローラ111は排出ローラとして機能するとともに反転ローラとしても機能する搬送ローラである。
【0013】
副搬送路P2はFDローラ111からレジストレーションローラ104まで延在する搬送区間である。副搬送路P2には複数の搬送ローラ114が配置されている。これらの搬送ローラ114がシートをレジストレーションローラ104に向けて搬送する。レジストレーションローラ104は、再びシートを転写部に搬送する。転写部はシートの第二面にトナー画像を転写する。定着装置130は、シートの第二面にトナー画像を定着させる。排出ローラ110はシートをFDローラ111に渡す。FDローラ111は、正転を継続することで、両面に画像が形成されたシートをFDトレイ112へ排出する。
【0014】
主搬送路P1には複数のシートセンサ(例:レジストレーションセンサ105、定着排出センサ109)が設けられている。副搬送路P2に一つ以上のシートセンサ(反転センサ113)が設けられている。これらのシートセンサは、一般に、シートの搬送が正常であるかどうかを判定したり、画像の形成タイミングなどを決定したりするために、利用される。
【0015】
[コントローラ]
図2(A)は画像形成装置100を制御するコントローラ200を示している。CPU201は、記憶装置210のROM領域に記憶されている制御プログラムを実行することで画像形成装置100の各部を制御する。入力回路202はレジストレーションセンサ105、定着排出センサ109および反転センサ113から出力される検知信号を受信してCPU201に渡す。駆動回路203はモータ204を駆動するための駆動電流を生成したり、ソレノイド205を駆動するための駆動電流を生成したりする。本実施例では、モータ204は一方向にのみ回転するモータである。また、モータ204は、給送ローラ102、搬送ローラ103、レジストレーションローラ104、感光ドラム122、転写ローラ106、定着装置130、排出ローラ110、FDローラ111を駆動して回転させる。このうちFDローラ111は、シートをスイッチバックするために、正転と逆転とを実行する。ソレノイド205は、モータ204から供給される駆動力をFDローラ111に伝達するギア機構を駆動して、FDローラ111の回転方向を切り替える。表示装置215は、たとえば、シートのジャムをユーザに通知する。
【0016】
図2(B)はCPU201が制御プログラムを実行することで実現する機能を示している。複数の機能のうちの一部またはすべてがASIC(特定用途集積回路)またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などのハードウエアにより実現されてもよい。
【0017】
画像形成制御部220は、画像形成装置100が実行する画像形成を制御する。画像形成制御部220は、帯電電圧、現像電圧および定着電圧の制御、露光装置3の発光強度の制御、露光装置3における回転多面鏡の回転速度の制御、および、定着装置130の定着温度の制御などを担当している。たとえば、画像形成制御部220は、レジストレーションセンサ105の検知結果に基づき、露光装置3による露光開始タイミングを制御する。
【0018】
搬送制御部230は、シートの搬送処理を制御する。速度条件判定部231は、シートの搬送速度を変更するための条件(速度変更条件)が満たされたかどうかを判定する。速度条件判定部231は、速度変更条件が満たされると速度変更部232に搬送速度(モータ204の回転速度)の変更を指示する。速度変更部232は、速度変更指示に従ってモータ204の回転速度を制御する。速度変更条件の具体例は後述される。
【0019】
方向条件判定部233は、シートの搬送方向(FDローラ111の回転方向)を変更する条件(方向変更条件)が満たされたかどうかを判定する。方向条件判定部233は、方向変更条件が満たされると、方向変更部234に搬送方向の変更を指示する。方向変更部234は指示に従ってソレノイド205を制御する。方向変更条件の具体例は後述される。ジャム検知部235は、定着排出センサ109または反転センサ113の検知結果に基づきシートのジャムを検知する。
【0020】
[表裏反転機構]
図3はソレノイド205を用いた反転機構300の一例を示している。FDローラ111はアイドラギア311に接続している。この例では、FDローラ111の回転軸の端部にギアが設けられており、このギアにアイドラギア311が噛合している。アイドラギア311は複数のギアにより構成されていてもよい。このようにFDローラ111はアイドラギア311から駆動力を伝達されて回転する。
【0021】
アイドラギア311は遊星ギア312と遊星ギア313に接続している。遊星ギア312には入力ギア315を介してモータ204から供給される駆動力が接続されている。CPU201が駆動回路203を介してソレノイド205をオフにすると、切り替えレバー314が遊星ギア312に噛みあう。そのため、FDローラ111は正転方向(シートを画像形成装置100の外部に排出する方向)に回転する。一方、CPU201が駆動回路203を介してソレノイド205をオンにすると、切り替えレバー314が遊星ギア313に噛みあう。そのため、FDローラ111は逆転方向(シートを画像形成装置100の内部に戻す方向)に回転する。切り替えレバー314によって正転/逆転を切り替える機構では、ソレノイド205の応答ばらつきや、切り替えレバー314の動作ばらつきが存在する。ソレノイド205がオンしてから切り替えレバー314が切り替え動作を完了するまでの時間は、数十ミリ秒程度のばらつきを有する。これに連動して、シートの搬送方向が反転するときのシートの後端の位置(反転位置)もばらつく。画像形成装置100の市場からの要求により、シートの搬送速度は増加している。搬送速度が増加すればするほど、反転位置のばらつきも大きくなる。反転位置が、シートの搬送方向において、FDローラ111よりも下流側になると、FDローラ111は、シートを反転させることができなくなる。第二面に画像が形成されていないにもかかわらず、シートがFDトレイ112に排出されてしまう。したがって、CPU201は、適切なタイミングで、ソレノイド205を駆動する必要がある。
【0022】
[フローチャート]
図4はCPU201が制御プログラムにしたがって実行する画像形成装置100の制御方法を示している。ここでは、両面印刷ジョブが投入されたことが前提とされている。
【0023】
S401でCPU201(搬送制御部230)はモータ204を起動してモータ204を第一回転速度で回転させる。第一回転速度は、いわゆる画像形成速度(プロセススピード)に相当する回転速度である。これにより、モータ204により駆動される様々なローラの周速度が第一搬送速度(プロセススピード)に維持される。
【0024】
S402でCPU201(画像形成制御部220)はシートの第一面に画像が形成されるよう画像形成装置100を制御する。CPU201は、帯電ローラ123により感光ドラム122を帯電させ、露光装置108に画像信号を供給して静電潜像を形成される。さらに、CPU201は現像ローラ121を制御して静電潜像を現像してトナー画像を形成させる。また、CPU201は、給送ローラ102を制御してシートを給送する。たとえば、CPU201は不図示のソレノイドにより給送ローラ102を下降させて給送ローラ102をシートに接触させる。これによりシートが搬送路へ送り出される。CPU201はレジストレーションセンサ105がシートの先端を検知したタイミングを基準として、露光装置108の露光開始タイミングを制御する。これにより、シート上の適切な位置にトナー画像が転写される。CPU201は定着装置130を制御し、トナー画像を第一面に定着させる。
【0025】
S403でCPU201(速度条件判定部231)は定着排出センサ109の検知結果に基づきシートの後端が所定位置を通過したかどうかを判定する。たとえば、CPU201は、検知結果がONからOFFに切り替わると、シートの後端が定着排出センサ109の検知位置を通過したと判定する。ここで、ONはシートが通過中であることを意味し、OFFはシートが通過中でないことを意味する。定着排出センサ109は、シートの搬送方向において定着装置130の下流側に配置されている。つまり、定着排出センサ109は、排出ローラ110と定着装置130との間に配置されている。定着排出センサ109は、シートの後端が定着装置130を通過したことを確認するためのシートセンサである。そのため、定着排出センサ109は、主搬送路P1において、定着装置130とFDローラ111との間に配置されていればよい。シートの後端が所定位置を通過すると、CPU201はS404に進む。
【0026】
S404でCPU201(速度変更部232)はモータ204の回転速度を第一回転速度から第二回転速度へと低下させる。第二回転速度は、たとえば、第一回転速度の50%である。シートは、第二回転速度に対応した第二搬送速度(第一搬送速度の50%)で搬送される。
【0027】
S405でCPU201(方向条件判定部233)はタイマー211をスタートさせる。S404とS405とは入れ替えられてもよい。タイマー211は、カウントアップタイプのカウンタ回路やカウントダウンタイプのカウンタ回路により実現されてもよい。
【0028】
S406でCPU201(方向条件判定部233)はタイマー211の計測結果に基づき、回転速度を変更したタイミングから所定時間Tbが経過したかどうかを判定する。タイマー211により計測された経過時間が所定時間Tb以上になると、CPU201は、S407に進む。ここで、所定時間Tbは、シートの後端が主搬送路P1から副搬送路P2へ引き込み可能となる反転位置にシートの後端が到着するのに要する時間である。
【0029】
S407でCPU201(方向変更部234)は駆動回路203を介してソレノイド205をONにする。これにより、反転機構300が作動して、FDローラ111の回転方向が正転から逆転に変更される。これにより、シートは副搬送路P2に誘導されて、副搬送路P2を搬送される。
【0030】
S408でCPU201(速度条件判定部231)は反転センサ113がONになったかどうかを判定する。つまり、CPU201は反転センサ113の検知結果に基づきシートの先端が反転センサ113の検知位置に到着したかどうかを判定する。反転センサ113がONになると、CPU201はS409に進む。
【0031】
S409でCPU201(速度変更部232)は駆動回路203を介してモータ204の回転速度を第二回転速度から第一回転速度に戻す(増加させる)。これによりシートの搬送速度は第一搬送速度に戻る。なお、反転センサ113がOFFになると(シートの後端が反転センサ113を通過すると)、CPU201はソレノイド205をOFFに切り替える。これにより、反転機構300が作動して、FDローラ111の回転方向が逆転から正転に切り替わる。シートは再びレジストレーションローラ104に渡され、さらに転写部へ搬送される。
【0032】
S410でCPU201(画像形成制御部220)は画像形成装置100を制御してシートの第二面にトナー画像を形成する。S411でCPU201(搬送制御部230)は画像形成装置100を制御して、両面に画像が形成されたシートをFDトレイ112へ排出する。S411ではソレノイド205がOFFに維持されるため、FDローラ111は正転を継続する。
【0033】
図5は反転タイミングを説明するタイミングチャートである。時刻t1はS403で後端が所定位置を通過したタイミングであり、定着排出センサ109がオンからオフに切り替わったタイミングである。時刻t1でモータ204の回転速度が第一回転速度(通常速度)から第二回転速度(低速度)に変更される。なお、時刻t1ではソレノイド205はOFFである。レジストレーション105もOFFである。反転センサ113もOFFである。
【0034】
時刻t2は時刻t1から所定時間Tbが経過した時刻である。時刻t2はS406で所定時間Tbに関する条件が満たされた時刻である。時刻t2でソレノイド205がONになり、シートの搬送方向が反転する。時刻t2でモータ204の回転速度は第二回転速度である。
【0035】
時刻t3はS408でシートの先端が反転センサ113により検知される時刻である。時刻t3でモータ204の回転速度は第二回転速度から第一回転速度に変更される。
【0036】
実施例1では反転センサ113がオンしたことを条件として、モータ204の回転速度が第二回転速度から第一回転速度に復帰している。しかし、CPU201は、ソレノイド205をONにしたタイミングである時刻t2から所定時間Tcが経過したときに、モータ204の回転速度を変更してもよい。
図5が示すように、所定時間Tcは時刻t2から時刻t3までの時間である。所定時間Tb、Tcはあらかじめ実験またはシミュレーションにより決定され、記憶装置210のROM領域に保持されており、CPU201により読み出されて使用される。
【0037】
実施例1では第二回転速度は第一回転速度の半分と定義されているが、これは一例に過ぎない。FDローラ111を含むシート反転部の距離や画像形成速度に応じて、第二回転速度は決定されればよい。つまり、第二回転速度は、シートが誤ってFDトレイ112に排出されてしまうことなく、主搬送路P1から副搬送路P2へ確実に引き込み可能となる搬送速度であればよい。このように、モータ204の回転速度を低速に切り替えることで、シートが反転するまでに搬送される距離が短縮される。その結果、良好な表裏反転動作を維持したまま、画像形成装置100の反転部を小型化することが可能となる。つまり、シートの一部を画像形成装置100の外部に排出してシートの搬送方向を反転させるスイッチバック方式を採用しても、シートの表裏が良好に反転可能となる。また、シートの反転が完了すると、シート搬送速度が増速されるため、シートの両面に画像を形成するために必要となる時間もそれほど長くならない。つまり、画像形成装置100の生産性とユーザビリティが維持される。
【0038】
<実施例2>
実施例1では、定着排出センサ109のオフになったことをトリガーとしてモータ204が減速されている。しかし、実施例1と同様の効果を奏すことができるトリガーであれば、本発明に採用可能である。そこで、実施例2は、レジストレーションセンサ105がオフになってから所定時間Tdが経過したことをトリガーとしてモータ204を減速させる。実施例2において実施例1と共通する事項には同一の参照符号が付与されており、その説明は省略される。
【0039】
図6は実施例2の画像形成処理を示すフローチャートである。上述されたように、S401でモータ204が起動され、S402で第一面への画像形成が開始される。その後、CPU201はS601に進む。
【0040】
S601でCPU201(速度条件判定部231)はレジストレーションセンサ105の検知信号がOFFになったかどうかを判定する。つまり、CPU201は、レジストレーションセンサ105の検知位置をシートの後端が通過したかどうかを判定する。レジストレーションセンサ105の検知位置をシートの後端が通過すると、CPU201はS602に進む。
【0041】
S602でCPU201(速度条件判定部231)はタイマー211をスタートさせる。S603でCPU201(速度条件判定部231)は、レジストレーションセンサ105の検知位置をシートの後端が通過したタイミングから所定時間Tdが経過したかどうかを判定する。所定時間Tdは、シートの後端がレジストレーションセンサ105の検知位置から定着装置130のニップ部まで搬送されるのに必要となる時間である。つまり、S603はシートの後端が定着装置130のニップ部に到着したかどうかを判定する処理である。所定時間Tdが経過すると、CPU201はS604に進む。S604でCPU201(速度変更部232)はモータ204の回転速度を第一回転速度から第二回転速度へ低下させる。
【0042】
S605でCPU201(方向条件判定部233)は定着排出センサ109がOFFになったかどうかを判定する。つまり、CPU201は、シートの後端が定着排出センサ109の検知位置を通過したかどうかを判定する。定着排出センサ109の検知信号がONからOFFになると、CPU201はS605に進む。
【0043】
S606でCPU201(方向条件判定部233)は、所定時間Tbを計測するために、タイマー211をスタートさせる。その後、CPU201は、S406ないしS411を実行する。
【0044】
図7は反転タイミングを説明するタイミングチャートである。この例では、時刻t0はレジストレーションセンサ105の検知信号がONからOFFに切り替わる時刻である。時刻t1は時刻t0から所定時間Tdが経過した時刻である。時刻t1にモータ204の回転速度が第一回転速度から第二回転速度に変更される。
【0045】
時刻t2は定着排出センサ109の検知信号がONからOFFに切り替わるタイミングである。時刻t2で、所定時間Tbを計測するためにタイマー211が再スタートする。時刻t3は時刻t2から所定時刻Tbが経過したタイミングである。時刻t3でソレノイド205がONになる。時刻t4は反転センサ113の検知信号がOFFからONに切り替わるタイミングである。時刻t4でモータ204の回転速度が第二回転速度から第一回転速度に変更される。
【0046】
所定時間Tdは以下の式から算出されてもよい。
【0047】
Td = ( Lrf ) / Vp (秒) ・・・(1)
ここでLrfはレジストレーションセンサ105の検知位置から定着装置130のニップ部の中心までの距離(mm)である。Vpは第一回転速度に対応した第一搬送速度(mm/sec)である。
【0048】
実施例2で説明されたようにレジストレーションセンサ105がオフになったタイミングから所定時間Tdが経過したことをトリガーとして、モータ204の回転速度が変更されてもよい。これにより、実施例2は、実施例1と比較して、シートの反転までにシートが搬送される距離が短縮されよう。実施例2のその他の効果と変形例については実施例1で説明された通りである。
【0049】
<実施例から導き出される技術思想>
[観点1]
主搬送路P1はシートを搬送する搬送路の一例である。感光ドラム122および転写ローラ106は、主搬送路P1を搬送されるシートの第一面と第二面とに画像を形成する画像形成手段の一例である。FDローラ111は、主搬送路P1の終端に設けられ、第一面に画像が形成されたシートをローラによりスイッチバックさせるスイッチバック手段として機能する。副搬送路P2は、シートの第二面に画像を形成するために、スイッチバックされたシートを主搬送路まで搬送する副搬送路として機能する。なお、主搬送路P1と副搬送路P2との間には、逆回転したFDローラ111により搬送されるシートを副搬送路P2へ誘導するフラッパが採用されてもよい。なお、副搬送路P2の入口が主搬送路P1よりも上方に設けられている場合、フラッパが省略されてもよい。これは、シートの後端近くがFDローラ111によりニップされている場合、FDローラ111に対してシートの先端側が重くなってシートの後端側が上方を向こうとするからである(シーソー現象)。モータ204は、スイッチバック手段に設けられたローラを駆動し、一定の方向にのみ回転するように制御されるモータの一例である。モータ204のように、主搬送路P1に設けられた複数のローラを駆動するモータは基本的に一方向にのみ回転するように駆動される。反転機構300は、モータ204から供給される駆動力をローラに伝達する伝達手段の一例である。ソレノイド205は、伝達手段に作用して駆動力によるローラの回転方向を正転と逆転との間で切り替える切替手段として機能する。CPU201は制御手段の一例である。
図5が示す時刻t2または
図7が示す時刻t3よりも前の期間は、画像形成手段により第一面に画像が形成されたシートがローラにより第一方向に搬送される第一期間の一例である。
図5が示す時刻t2から時刻t3までの期間または
図7が示す時刻t3から時刻t4までの期間は、ローラにより第一方向とは異なる第二方向に当該シートが搬送される第二期間の一例である。CPU201は、少なくとも第一期間において、シートが画像形成手段を搬送される際の搬送速度である第一搬送速度から、当該第一搬送速度よりも低速の第二搬送速度で搬送されるよう、モータ204の回転速度を制御する。これにより、画像形成装置100の小型化を実現しつつ、シートの反転を良好に実現することが可能となる。
【0050】
[観点2、3]
第二搬送速度は、ローラによりシートが挟持されたままシートの後端が副搬送路P2へ侵入可能となる搬送位置を搬送されているときに、切替手段および伝達手段によるローラの回転方向の切り替えが完了するように、決定された搬送速度であってもよい。つまり、第二搬送速度は、シートの後端がローラを抜け切るまでに、切替手段および伝達手段によるローラの回転方向の切り替えが完了するように、決定された搬送速度であってもよい。これにより、第二面に画像が形成される予定のシートが誤ってFDトレイ112に排出されにくくなろう。
【0051】
[観点4]
CPU201は、シートの搬送方向が第一方向から第二方向に変更された後に、シートの搬送速度を第二搬送速度から第一搬送速度に戻す。つまり、シートの反転が成功した後に、シートの搬送速度が高速化される。これにより、シートの反転が成功しやすくなろう。
【0052】
[観点5]
レジストレーションセンサ105や定着排出センサ109は、シートの搬送方向において、ローラよりも上流側に設けられ、主搬送路を搬送されるシートを検知するセンサの一例である。CPU201は、センサがシートの先端または後端を検知したタイミングを基準としてシートの搬送速度を第一搬送速度から第二搬送速度へ低下させてもよい。
【0053】
[観点6]
実施例1で説明されたように、センサ(例:定着排出センサ109)は、画像形成手段とローラとの間に設けられてもよい。CPU201は、シートの後端がセンサを通過すると、モータ204を制御して、シートの搬送速度を第一搬送速度から第二搬送速度に変更してもよい。
【0054】
[観点7]
センサ(例:定着排出センサ109)は、画像形成手段でシートがジャムを起こしていないことを確認するためのシートセンサであってもよい。これにより、一つのセンサを複数の目的で使用することが可能となり、センサの数が削減されよう。
【0055】
[観点8]
画像形成手段は、シートにトナー画像を定着させる定着手段(例:定着装置130)を有してもよい。この場合、センサは、定着手段でシートがジャムを起こしていないことを確認するためのシートセンサ(例:定着排出センサ109)であってもよい。これにより、一つのセンサを複数の目的で使用することが可能となり、センサの数が削減されよう。
【0056】
[観点9]
センサ(例:レジストレーションセンサ105)は、主搬送路におけるシートの搬送方向において画像形成手段よりも上流側に設けられていてもよい。CPU201は、シートの後端がセンサを通過したタイミングから第一所定時間が経過したタイミングに、モータ204を制御して、シートの搬送速度を第一搬送速度から第二搬送速度に変更してもよい。
【0057】
[観点10]
センサは、画像形成手段における画像の形成を開始するタイミングを決定するために設けられたシートセンサ(例:レジストレーションセンサ105)であってもよい。これにより、一つのセンサを複数の目的で使用することが可能となり、センサの数が削減されよう。
【0058】
[観点11]
第一所定時間は、センサの検知位置から画像形成手段の定着手段のニップ部の中心位置までの距離を第一搬送速度で除算することで得られる時間(例:Td)であってもよい。
【0059】
[観点12]
CPU201は、センサ(例:定着装置130)がシートの後端を検知したタイミングを基準として、ローラの回転方向を切り替えることでシートの搬送方向を第一方向から第二方向へ切り替えてもよい。
【0060】
[観点13]
CPU201は、センサ(例:定着装置130)がシートの後端を検知したタイミングから第二所定時間(例:Tb)が経過したことをトリガーとして、ローラの回転方向を切り替えてもよい。これによりシートの搬送方向が第一方向から第二方向へ切り替えられる。
【0061】
[観点14]
反転センサ113は、副搬送路P2に設けられ、シートの副搬送路への搬送に成功したことを確認するために設けられた検知手段の一例である。CPU201は、検知手段がシートの先端を検知すると、シートの搬送速度を第二搬送速度から第一搬送速度に戻してもよい。つまり、シートの反転が成功したことが反転センサ113によって確認された後に、搬送速度が元に戻されるようになろう。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【符号の説明】
【0063】
P1:主搬送路、P2:副搬送路、111:FDローラ、201:CPU、204:モータ、205:ソレノイド、300:反転機構