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特許7422563医療用投影装置および医療用観察システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】医療用投影装置および医療用観察システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/30 20160101AFI20240119BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20240119BHJP
   A61B 90/50 20160101ALI20240119BHJP
【FI】
A61B90/30
G02B21/06
A61B90/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020035367
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137129
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】313009556
【氏名又は名称】ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加戸 正隆
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0368903(US,A1)
【文献】特開2002-214535(JP,A)
【文献】特開平07-327984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/30
G02B 21/06
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、
を備え、
前記複数の投影部のうち少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射し、
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記観察光学系の観察領域における被写体を撮像する撮像部の合焦可能範囲である作動距離の範囲のいずれかの位置で交差し、
前記複数の投影部の少なくとも一つは、前記観察光学系の光軸のまわりに回転する、
医療用投影装置。
【請求項2】
前記複数の投影部の少なくとも一つは、当該投影部が投影光を出射する平面において放射状に光を出射して、前記観察領域において線状の前記投影光を照射する、
請求項1に記載の医療用投影装置。
【請求項3】
前記複数の投影部の少なくとも一つは、光の出射位置を走査することによって照射される複数の点状の光が線状に並んでなる前記投影光を照射する、
請求項1または2に記載の医療用投影装置。
【請求項4】
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記動距離の範囲のすべての位置において交差する、
請求項1~のいずれか一つに記載の医療用投影装置。
【請求項5】
観察領域における被写体を撮像する撮像部と、
観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、
を備え、
前記複数の投影部のうちの少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射し、
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記撮像部の合焦可能範囲である作動距離の範囲のいずれかの位置で交差し、
前記複数の投影部の少なくとも一つは、前記観察光学系の光軸のまわりに回転する、
医療用観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用投影装置および医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療もしくは産業用カメラにおいて、観察者に観察位置の中心を特定させるために、投影光を照射する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、照明光学系の外部から、ミラーによる反射によって投影光を照明光に入射させて、観察領域に投影光を照射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-214535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、投影光を反射させるミラーを設ける必要があり、装置が大型化し、装置構成を複雑化させるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる医療用投影装置および医療用観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る医療用投影装置は、観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、を備え、前記複数の投影部のうち少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射し、前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記観察光学系が取り得る少なくとも作動距離の範囲のいずれか位置で交差する。
【0007】
また、本開示に係る医療用投影装置は、上記開示において、前記複数の投影部の少なくとも一つは、当該投影部が投影光を出射する平面において放射状に光を出射して、前記観察領域において線状の前記投影光を照射する。
【0008】
また、本開示に係る医療用投影装置は、上記開示において、前記複数の投影部の少なくとも一つは、光の出射位置を走査することによって照射される複数の点状の光が線状に並んでなる前記投影光を照射する。
【0009】
また、本開示に係る医療用投影装置は、上記開示において、前記複数の投影部の少なくとも一つは、他の投影部に対し、前記観察光学系の光軸のまわりに回転する。
【0010】
また、本開示に係る医療用投影装置は、上記開示において、前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記観察光学系が取り得る作動距離の範囲のすべての位置において交差する。
【0011】
また、本開示に係る医療用投影装置は、上記開示において、前記作動距離の範囲は、合焦可能範囲である。
【0012】
また、本開示に係る医療用観察システムは、観察領域における被写体を撮像する撮像部と、観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、を備え、前記複数の投影部のうちの少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面に投影光をそれぞれ出射し、前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記撮像部の観察光学系が取り得る少なくとも作動距離の範囲のいずれかの位置で交差する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る医療用観察システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の一実施の形態に係る医療用観察システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1の矢視A方向からみた顕微鏡部の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の一実施の形態に係る医療用観察システムの顕微鏡部による、投影処理を説明する図(その1)である。
図5図5は、本開示の一実施の形態に係る医療用観察システムの顕微鏡部による、投影処理を説明する図(その2)である。
図6図6は、本開示の変形例1に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。
図7図7は、本開示の変形例2に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。
図8図8は、本開示の変形例3に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。
図9図9は、本開示の変形例4に係る医療用観察システムの要部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面はあくまで模式的なものであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0016】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る医療用観察システムの構成を示す図である。図2は、実施の形態に係る医療用観察システムの構成を示すブロック図である。医療用観察システム1は、被観察体の微細構造を拡大して撮像する顕微鏡としての機能を有する顕微鏡装置2と、医療用観察システム1の動作を統括して制御する制御装置3と、観察装置2が撮像した画像を表示する表示装置4と、顕微鏡装置2に照明光を供給する光源装置8とを備える。
【0017】
顕微鏡装置2は、床面上を移動可能なベース部5と、ベース部5に支持される支持部6と、支持部6の先端に設けられて被観察体の微小部位を拡大して撮像する柱状の顕微鏡部7と、を備える。
【0018】
顕微鏡装置2において、例えば、制御装置3と顕微鏡部7との間の信号伝送を行うための信号線を含む伝送ケーブルや、光源装置8から顕微鏡部7までの照明光の導光を行うためのライトガイドケーブル等を含むケーブル群が、ベース部5から顕微鏡部7にわたって配設されている。
【0019】
支持部6は、第1関節部11、第1アーム部21、第2関節部12、第2アーム部22、第3関節部13、第3アーム部23、第4関節部14、第4アーム部24、第5関節部15、第5アーム部25、および第6関節部16を有する。
【0020】
支持部6は、2つのアーム部および2つのアーム部の一方(先端側)を他方(基端側)に対して回動可能に連結する関節部からなる組を4組有する。この4組は、具体的には、(第1アーム部21、第2関節部12、第2アーム部22)、(第2アーム部22、第3関節部13、第3アーム部23)、(第3アーム部23、第4関節部14、第4アーム部24)、(第4アーム部24、第5関節部15、第5アーム部25)である。
【0021】
第1関節部11は、先端側で顕微鏡部7を回動可能に保持するとともに、基端側で第1アーム部21の先端部に固定された状態で第1アーム部21に保持される。第1関節部11は円筒状をなし、高さ方向の中心軸である第1軸O1のまわりに回動可能に顕微鏡部7を保持する。第1アーム部21は、第1関節部11の側面から第1軸O1と直交する方向に延びる形状をなす。
【0022】
第2関節部12は、先端側で第1アーム部21を回動可能に保持するとともに、基端側で第2アーム部22の先端部に固定された状態で第2アーム部22に保持される。第2関節部12は円筒状をなしており、高さ方向の中心軸であって第1軸O1と直交する軸である第2軸O2のまわりに回動可能に第1アーム部21を保持する。第2アーム部22は略L字状をなし、L字の縦線部分の端部で第2関節部12に連結する。
【0023】
第3関節部13は、先端側で第2アーム部22のL字の横線部分を回動可能に保持するとともに、基端側で第3アーム部23の先端部に固定された状態で第3アーム部23に保持される。第3関節部13は、円筒状をなしており、高さ方向の中心軸であって第2軸O2と直交する軸であり、かつ第2アーム部22が延びる方向と平行な軸である第3軸O3のまわりに回動可能に第2アーム部22を保持する。第3アーム部23は先端側が円筒状をなしており、基端側に先端側の円筒の高さ方向と直交する方向に貫通する孔部が形成されている。第3関節部13は、この孔部を介して第4関節部14に回動可能に保持される。
【0024】
第4関節部14は、先端側で第3アーム部23を回動可能に保持するとともに、基端側で第4アーム部24に固定された状態で第4アーム部24に保持される。第4関節部14は円筒状をなしており、高さ方向の中心軸であって第3軸O3と直交する軸である第4軸O4のまわりに回動可能に第3アーム部23を保持する。
【0025】
第5関節部15は、先端側で第4アーム部24を回動可能に保持するとともに、基端側で第5アーム部25に固定して取り付けられる。第5関節部15は円筒状をなしており、高さ方向の中心軸であって第4軸O4と平行な軸である第5軸O5のまわりに第4アーム部24を回動可能に保持する。第5アーム部25は、L字状をなす部分と、L字の横線部分から下方へ延びる棒状の部分とからなる。第5関節部15は、基端側で第5アーム部25のL字の縦線部分の端部に取り付けられる。
【0026】
第6関節部16は、先端側で第5アーム部25を回動可能に保持するとともに、基端側でベース部5の上面に固定して取り付けられる。第6関節部16は円筒状をなしており、高さ方向の中心軸であって第5軸O5と直交する軸である第6軸O6のまわりに第5アーム部25を回動可能に保持する。第6関節部16の先端側には、第5アーム部25の棒状の部分の基端部が取り付けられる。
【0027】
以上説明した構成を有する支持部6は、顕微鏡部7における並進3自由度および回転3自由度の計6自由度の動きを実現する。
【0028】
第1関節部11~第6関節部16は、顕微鏡部7および第1アーム部21~第5アーム部25の回動をそれぞれ禁止する電磁ブレーキを有する。各電磁ブレーキは、顕微鏡部7に設けられるアーム操作スイッチ(後述)が押下された状態で解除され、顕微鏡部7および第1アーム部21~第5アーム部25の回動を許容する。なお、電磁ブレーキの代わりにエアブレーキを適用してもよい。
【0029】
各関節部には、上述した電磁ブレーキのほか、エンコーダおよびアクチュエータを搭載してもよい。エンコーダは、例えば、第1関節部11に設けられている場合、第1軸O1における回転角度を検出する。アクチュエータは、例えばサーボモータ等の電動モータによって構成され、制御装置3からの制御により駆動され、関節部における回転を所定の角度だけ生じさせる。関節部における回転角度は、例えば顕微鏡部7を移動させるために必要な値として、各回転軸(第1軸O1~第6軸O6)における回転角度に基づいて制御装置3によって設定される。このように、アクチュエータ等の能動的な駆動機構が設けられる関節部は、当該アクチュエータの駆動が制御されることにより能動的に回転する回転軸を構成する。
【0030】
顕微鏡部7は、円筒状をなす筐体に、被観察体の像を拡大して撮像する撮像部71を有する。このほか、顕微鏡部7には、第1関節部11~第6関節部16における電磁ブレーキを解除して各関節部の回動を許容する操作入力を受け付けるアーム操作スイッチ、撮像部における拡大倍率および被観察体までの焦点距離を変更可能な十字レバーが設けられる。ユーザがアーム操作スイッチを押下している間、第1関節部11~第6関節部16の電磁ブレーキが解除される。
【0031】
撮像部71は、カメラヘッド制御部94による制御の下、被写体を撮像する。撮像部71は、複数のレンズと、撮像素子とを筐体内に収容して構成される。撮像素子は、レンズが結像した被写体像を受光して電気信号(撮像信号)に変換する。撮像部71は、レンズを通過した被写体像を、撮像素子の撮像面に結像する観察光学系を形成する。撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサにより構成される。
【0032】
図3は、図1の矢視A方向からみた顕微鏡部の構成を示す図である。また、顕微鏡部7には、筐体の外部に取り付けられ、観察領域に光(以下、「投影光」ということがある)を投影する第1投影部91および第2投影部92が取り付けられる。第1投影部91および第2投影部92は、被写体を線状にライン照射する、投影装置を構成する。
【0033】
第1投影部91は、点光源91aと、点光源91aが発した光を屈折させる屈折レンズ91bとを用いて構成される。また、第2投影部92は、点光源92aと、点光源92aが発した光を屈折させ、放射状に光を出射する屈折レンズ92bとを用いて構成される。なお、点光源としては、LD(Laser Diode)またはLED(Light Emitting Diode)等が挙げられる。また、屈折レンズに代えて回折格子を用いてもよい。
【0034】
第1投影部91および第2投影部92は、互いに異なる平面であって、撮像部71が形成する観察光学系の光軸を含む平面内に放射状の光をそれぞれ出射する。本実施の形態において、顕微鏡部7の撮像部71の光軸NPと、第1投影部91が照射する光の光軸とを通過する線分N1、および、光軸NPと、第2投影部92が照射する光の光軸とを通過する線分N2は、互いに直交する。
【0035】
光源装置8は、制御装置3の制御のもと、光の出射を制御する。光源装置8は、光源ケーブル81を介して顕微鏡装置2に接続する。光源ケーブル81には、光ファイバや制御信号の伝送線が挿通される。光源装置8は、光源ケーブル81を介して顕微鏡装置2に照明光を供給する発光部82と、第1投影部91および第2投影部92に制御信号を出力して、第1投影部91および第2投影部92の駆動を制御する駆動部83と、光源装置8の各構成部の駆動制御、および制御装置3に対する情報の入出力制御などを行う制御部84とを有する。
【0036】
制御装置3は、顕微鏡装置2が出力した撮像信号を受信し、この撮像信号に所定の信号処理を施すことによって表示用の画像データを生成する。なお、制御装置3をベース部5の内部に設置して顕微鏡装置2と一体化してもよい。
【0037】
制御装置3は、画像処理部31と、入力部32と、出力部33と、制御部34と、記憶部35とを備える。なお、制御装置3には、顕微鏡装置2および制御装置3を駆動するための電源電圧を生成し、制御装置3の各部にそれぞれ供給するとともに、伝送ケーブルを介して顕微鏡装置2に供給する電源部(図示略)などが設けられていてもよい。
【0038】
画像処理部31は、顕微鏡部7が出力した撮像信号に対してノイズ除去や、必要に応じてA/D変換等の信号処理を行う。画像処理部31は、信号処理後の撮像信号をもとに、表示装置4が表示する表示用の画像信号を生成する。画像処理部31は、撮像信号に対して、所定の信号処理を実行して被写体画像を含む表示用の画像信号を生成する。ここで、画像処理部31は、検波処理や、補間処理、色補正処理、色強調処理、および輪郭強調処理等の各種画像処理等の公知の画像処理を行う。画像処理部31は、生成した画像信号を表示装置4に出力する。
【0039】
また、画像処理部31が、入力されたフレームの撮像信号を基に、各フレームの所定のAF用評価値を出力するAF処理部、および、AF処理部からの各フレームのAF用評価値から、最も合焦位置として適したフレームまたはフォーカスレンズ位置等を選択するようなAF演算処理を行うAF演算部を有していてもよい。
【0040】
入力部32は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて実現され、各種情報の入力を受け付ける。
【0041】
出力部33は、スピーカーやプリンタ、ディスプレイ等を用いて実現され、各種情報を出力する。
【0042】
制御部34は、制御装置3およびカメラヘッド9を含む各構成部の駆動制御、および各構成部に対する情報の入出力制御などを行う。制御部34は、記憶部35に記録されている通信情報データ(例えば、通信用フォーマット情報など)を参照して制御信号を生成し、該生成した制御信号を顕微鏡装置2へ送信する。
【0043】
なお、制御部34は、顕微鏡部7および制御装置3の同期信号、およびクロックを生成する。顕微鏡部7への同期信号(例えば、撮像タイミングを指示する同期信号等)やクロック(例えばシリアル通信用のクロック)は、図示しないラインで顕微鏡部7に送られ、この同期信号やクロックを基に、顕微鏡部7が駆動する。
【0044】
記憶部35は、フラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリを用いて実現され、通信情報データ(例えば、通信用フォーマット情報など)等が記録されている。なお、記憶部35は、制御部34が実行する各種プログラム等が記録されていてもよい。
【0045】
上述した画像処理部31および制御部34は、プログラムが記録された内部メモリ(図示略)を有するCPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサやASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて実現される。また、プログラマブル集積回路の一種であるFPGA(Field Programmable Gate Array:図示略)を用いて構成するようにしてもよい。なお、FPGAにより構成される場合は、コンフィグレーションデータを記憶するメモリを設け、メモリから読み出したコンフィグレーションデータにより、プログラマブル集積回路であるFPGAをコンフィグレーションしてもよい。
【0046】
表示装置4は、制御装置3が生成した画像データを制御装置3から受信し、該画像データに対応する画像を表示する。このような表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)からなる表示パネルを備える。なお、表示装置4のほか、スピーカーやプリンタ等を用いて情報を出力する出力装置を備えてもよい。
【0047】
以上の構成を有する医療用観察システム1を用いて行われる手術の概要を説明する。ユーザである術者が被観察体である患者の頭部を手術する場合、術者は、表示装置4が表示する画像を目視しながら、顕微鏡部7のアーム操作スイッチを押下した状態で顕微鏡部7を把持して所望の位置まで移動させ、顕微鏡部7の撮像視野を決定した後、アーム操作スイッチから指を離す。これにより、第1関節部11~第6関節部16では電磁ブレーキが動作し、顕微鏡部7の撮像視野が固定される。その後、術者は、拡大倍率および被観察体までの焦点距離の調整等を行う。
【0048】
次に、第1投影部91および第2投影部92による投影処理について、図4、5を参照して説明する。図4および図5は、本開示の一実施の形態に係る医療用観察システムの顕微鏡部による、投影処理を説明する図である。図4は、顕微鏡部7の撮像部71が取り得る焦点距離のうちの最短距離d1に位置する投影光L1、L2を示す。図5は、顕微鏡部7の撮像部71が取り得る焦点距離のうちの最長距離d2に位置する投影光L1、L2を示す。
【0049】
投影光L1、L2は、ともに観察領域Rをライン照明する。観察領域Rは、顕微鏡部7(撮像部71)によって撮像される、光取り込み領域に相当する。投影光L1、L2は、観察領域Rにおいて互いに直交する方向に延びる。投影光L1と投影光L2との交点Pにおいて、顕微鏡部7の光軸NPが通過する。この際、投影光L1、L2は、撮像部71が取り得る作動距離の範囲のすべての位置において、交点Pにおいて光軸NPが通過する。ここでの作動距離の範囲は、合焦可能範囲に相当する。このため、観察者は、投影光L1、L2の交点Pを確認することによって、顕微鏡部7による撮像中心を把握することができる。
【0050】
以上説明した実施の形態は、顕微鏡部7の筐体の外周に、観察領域に対してライン照明を行う第1投影部91および第2投影部92を設けることによって、観察領域に対し、焦点位置によらず顕微鏡部7の光軸と交差する交点Pを形成する投影光L1、L2が照射される。本実施の形態によれば、複数のライン照明の交点によって、焦点位置によらず光学中心が示されるため、その結果、装置構成を複雑化させることなく、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態において、第1投影部91および第2投影部92によるライン照明は、顕微鏡部7(撮像部71)の作動距離の範囲内において、撮像部71の光軸が通過する位置で交差していればよい。
【0052】
また、上述した実施の形態において、図4、5では、投影光L1、L2が、観察領域Rを通過する長さ、例えば、焦点位置における観察領域Rの直径より大きい長さで延びる例を示しているが、光学中心を知覚させることができれば、投影光L1、L2の長さを、観察領域Rの直径より短くしてもよい。
【0053】
なお、上述した実施の形態では、二つの投影部を備える構成について説明したが、三つ以上の投影部を備える構成としてもよい。この際、各投影部が出射する投影光は、一点で交わり、その交点には顕微鏡部7の光軸NPが通過する。また、三つ以上の投影部を備える場合、少なくとも2以上の投影部が、撮像部71の観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射すればよく、この2以上の投影部が出射する投影光は、観察光学系が取り得る少なくとも作動距離の範囲のいずれかの位置で交差する。
【0054】
(変形例1)
次に、実施の形態の変形例1について、図6を参照して説明する。図6は、本開示の変形例1に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。変形例1では、第1投影部91および第2投影部92の他の例として、投影部93について説明する。上述した実施の形態において、第1投影部91を投影部93に代えてもよいし、第2投影部92を投影部93に代えてもよいし、第1投影部91および第2投影部92の両方をそれぞれ投影部93に代えてもよい。その他の構成は、上述した実施の形態の医療用観察システム1と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0055】
投影部93は、被写体(観察領域)を線状にライン照射する。投影部93は、それぞれ、点光源と、点光源が発した光の出射方向を制御する制御機構とを用いて構成される。制御機構としては、点光源が発したビーム状の光を、走査方向に沿って(ここでは、光軸NPと交差する線状に)移動させる構成を有する。移動機構として、例えば、光源自体を動かすか、または光源が出射した光を屈折させるレンズを動かす構成が挙げられる。投影部93は、点状の照射光LPの照射位置が移動することによって、観察領域を知覚的にライン照明する。照射光LPの走査平面は、顕微鏡部7の光軸NPを含む。この際、複数の照射光LPが残像として残る程度の時間間隔(例えば、5Hz程度以上)で走査することが好ましい。投影部93が照射する光によって、観察者に、線状に並んでなる複数の照射光LPによって形成される投影光を知覚させる。
【0056】
変形例1では、照射光LPの走査よって生成される投影光と、他方の投影部の投影光との交点において、顕微鏡部7の光軸NPが通過する。このため、観察者は、投影光同士の交点を確認することによって、顕微鏡部7による撮像中心を把握することができる。
【0057】
本変形例1のように、観察領域に点状の光(照射光LP)を走査して投影光を照射する場合であっても、上述した実施の形態と同様に光学中心が示されるため、その結果、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる。
【0058】
(変形例2)
次に、実施の形態の変形例2について、図7を参照して説明する。図7は、本開示の変形例2に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。変形例2に係る医療用観察システムの構成は、上述した実施の形態または変形例1に係る医療用観察システム1と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0059】
第1投影部91および第2投影部92は、被写体を間欠的な線状となる照明光を観察領域に出射する。本変形例2に係る第1投影部91および第2投影部92は、例えば、出射面の一部がマスクされる。このため、第1投影部91が出射する投影光L1´、および、第2投影部92が出射する投影光L2´は、ともに観察領域Rを間欠的にライン照明する。投影光L1´、L2´は、観察領域Rにおいて互いに直交する方向に延びる。投影光L1´と投影光L2´とが交わる部分には、光が照射されない。観察者は、投影光L1´と投影光L2´とが交わる部分を空間的に認識することによって、顕微鏡部7による撮像中心を把握することができる。
【0060】
本変形例2は、第1投影部91および第2投影部92によって間欠的にライン照明するため、実施の形態と同様に、装置構成を複雑化させることなく、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる。
【0061】
さらに、変形例2は、投影光L1´と投影光L2´とが交わる部分には光が照射されないため、投影光の交点付近における観察領域の被写体の視認性の低下を抑制できる。
【0062】
なお、変形例2において、本変形例1のように、観察領域に点状の光(照射光LP)を走査して投影光を照射するようにしてもよい。この際、照射光LPは、顕微鏡部7の光軸NPを含む光軸NPの近傍では、出射が停止される。
【0063】
(変形例3)
次に、実施の形態の変形例3について、図8を参照して説明する。図8は、本開示の変形例3に係る医療用観察システムにおける投影処理を説明するための図である。変形例3に係る医療用観察システムは、第2投影部92を顕微鏡部7の鏡筒の外周を移動させる移動機構が設けられる。その他の構成は、上述した実施の形態の医療用観察システム1と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0064】
第2投影部92は、移動機構(図示せず)によって顕微鏡部7の鏡筒の外周を、顕微鏡部7の光軸NPのまわりに移動する。移動機構としては、例えば、顕微鏡部7の鏡筒外周に設けられるレールと、第2投影部92を保持し、レールに沿って移動可能な移動部材とによって構成される。移動機構は、制御部34または84の制御のもと、第2投影部92を移動させる。
【0065】
第2投影部92が移動すると、投影光L1と投影光L2とがなす角度が変化する。この際、投影光L1と投影光L2との交点Pには、焦点距離によらず、顕微鏡部7の光軸NPが通過する。
【0066】
本変形例3は、第1投影部91および第2投影部92によってライン照明するため、実施の形態と同様に、装置構成を複雑化させることなく、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる。
【0067】
さらに、変形例3は、第2投影部29を移動させることによって、投影光L2の投影光L1に対する角度を変化させることを可能とした。変形例3によれば、観察領域における被写体の凹凸によって投影光が歪む場合に、第2投影部92を移動させることによって、投影光を歪みの小さくすることができる。その結果、投影光の視認性の低下を抑制して、観察領域の中心位置を確実に知覚させることができる。
【0068】
なお、変形例3において、本変形例1のように、観察領域に点状の光(照射光LP)を走査して投影光を照射するようにしてもよいし、変形例2のように間欠的にライン照明するようにしてもよい。
【0069】
(変形例4)
次に、実施の形態の変形例4について、図9を参照して説明する。図9は、本開示の変形例4に係る医療用観察システムの要部の構成を示す斜視図である。変形例4に係る医療用観察システムは、第1投影部91および第2投影部92を顕微鏡部7の鏡筒以外の部分に設けた点以外は、上述した実施の形態の医療用観察システム1と同じ構成である。
【0070】
第1投影部91は、第1関節部11に設けられる。具体的に、第1投影部91は、連結部材11aによって保持される。連結部材11aは、第1関節部11の、第1アーム部21が延びる部分とは異なる位置に接続される。
【0071】
第2投影部92は、第1アーム部21に設けられる。第2投影部92は、例えば、投影光が、顕微鏡部7と干渉しない位置に設けられる。
【0072】
第1投影部91および第2投影部92からそれぞれ出射される投影光(投影光L1、L2)は、実施の形態と同様に、ともに観察領域をライン照明する。各投影光は、投影光L1、L2と同様に、交点において顕微鏡部7の光軸NPが通過する。このため、観察者は、投影光の交点を確認することによって、顕微鏡部7による撮像中心を把握することができる。
【0073】
本変形例4によれば、第1投影部91および第2投影部92を顕微鏡部7以外の部分に設けた場合であっても、顕微鏡部7の光軸NPが通過する位置で投影光を交差させることによって、実施の形態と同様に、装置構成を複雑化させることなく、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させることができる。
【0074】
なお、変形例4において、本変形例1のように、観察領域に点状の光(照射光LP)を走査して投影光を照射するようにしてもよいし、変形例2のように間欠的にライン照明するようにしてもよいし、変形例3のように一方の投影部を他方の投影部に対して移動可能としてもよい。
【0075】
(その他の実施の形態)
上述した本開示の実施の形態に係る医療用観察システムに開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上述した本開示の実施の形態に係る医療用観察システムに記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、上述した本開示の実施の形態1~6に係る医療用観察システムで説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0076】
また、本開示の実施の形態に係る医療用観察システムでは、上述してきた「部」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0077】
また、本開示の実施の形態に係る医療用観察システムに実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルデータでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB媒体、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0078】
また、本開示の実施の形態に係る医療用観察システムに実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0079】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0080】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、
を備え、
前記複数の投影部のうちの少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射し、
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記観察光学系が取り得る少なくとも作動距離の範囲のいずれかの位置で交差する、
医療用投影装置。
(2)
前記複数の投影部の少なくとも一つは、当該投影部が投影光を出射する平面において放射状に光を出射して、前記観察領域において線状の前記投影光を照射する、
前記(1)に記載の医療用投影装置。
(3)
前記複数の投影部の少なくとも一つは、光の出射位置を走査することによって照射される複数の点状の光が線状に並んでなる前記投影光を照射する、
前記(1)または(2)に記載の医療用投影装置。
(4)
前記複数の投影部の少なくとも一つは、他の投影部に対し、前記観察光学系の光軸のまわりに回転する、
前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の医療用投影装置。
(5)
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記観察光学系が取り得る作動距離の範囲のすべての位置において交差する、
前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の医療用投影装置。
(6)
前記作動距離の範囲は、合焦可能範囲である、
前記(5)に記載の医療用投影装置。
(7)
観察領域における被写体を撮像する撮像部と、
観察光学系の観察領域に、投影光をそれぞれ投影する複数の投影部、
を備え、
前記複数の投影部のうちの少なくとも2以上の投影部は、前記観察光学系の光軸を含む互いに異なる平面内に投影光をそれぞれ出射し、
前記2以上の投影部が出射する投影光は、前記撮像部の観察光学系が取り得る少なくとも作動距離の範囲のいずれかの位置で交差する、
医療用観察システム。
【0081】
以上のように、本発明に係る医療用投影装置および医療用観察システムは、簡易な構成によって観察領域の中心位置を知覚させるのに有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 医療用観察システム
2 顕微鏡装置
3 制御装置
4 表示装置
5 ベース部
6 支持部
7 顕微鏡部
8 光源装置
11 第1関節部
12 第2関節部
13 第3関節部
14 第4関節部
15 第5関節部
16 第6関節部
21 第1アーム部
22 第2アーム部
23 第3アーム部
24 第4アーム部
25 第5アーム部
31 画像処理部
32 入力部
33 出力部
34、84 制御部
35 記憶部
71 撮像部
81 光源ケーブル
82 発光部
83 駆動部
91 第1投影部
92 第2投影部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9