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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】細胞回収装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036640
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021136901
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昇平
(72)【発明者】
【氏名】古野 哲生
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069148(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/170623(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104666(WO,A1)
【文献】特開2018-20(JP,A)
【文献】特開2006-115798(JP,A)
【文献】特開2012-147685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下移動により開閉されるシャッター部を前面に有し、内部を清浄環境とできる外構部と、
前記外構部の内部に設けられたロボットアームと、
細胞を培養した培養容器が置かれる培養容器置台と、
前記培養容器から細胞を取り出すために用いられる試薬を入れる試薬容器が置かれる試薬容器置台と、
前記培養容器から取り出された細胞を回収する細胞回収容器が置かれる細胞回収容器置台と、を備え、
各置台は、前記外構部の内部に、前記ロボットアームの移動範囲内で各容器を把持可能なように設けられ、
前記培養容器置台は、前記外構部の左右中央寄りで、かつ、前記シャッター部と前記ロボットアームとの間の位置に設けられ、
前記試薬容器置台及び前記細胞回収容器置台は、前記培養容器置台の側方かつ後方に設けられた、細胞回収装置。
【請求項2】
前記試薬容器置台は、前記外構部の内部で前後に移動可能とされている、請求項1に記載の細胞回収装置。
【請求項3】
前記外構部における前方であって、前記シャッター部の後方には、上方に開口した前方吸気部が設けられ、
前記培養容器置台は、上下方向に通気性を有する前方パネルに設けられており、
前記前方パネルの一部は、前記前方吸気部のうち一部を上方から覆うように設けられている、請求項1または2に記載の細胞回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を自動的に回収する細胞回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の様々な部位の組織、細胞、受精卵等の細胞培養を行い、培養された細胞を再生医療等に使用することが実用化されている。接着性細胞の細胞培養の一つとして、細胞をシャーレ、培養フラスコ等の培養容器に播種して、インキュベータ内に静置して細胞を培養容器に接着させ、単層の状態で培養する静置培養(単層培養)がある。接着細胞の継代は、培養容器から培地を取り除いた後に、PBS等で細胞表面を洗い酵素(例えばトリプシン)等により、細胞を培養容器から剥がし、培地を入れた新しい培養容器に必要量の細胞を移すことによって行われる。
【0003】
従来、細胞の継代作業は人による手作業で行われていた。特に、再生医療等で用いる細胞は、安全で良質な細胞を培養する必要があるため、細胞培養士によって細胞の継代作業が行われる必要がある。しかしながら、細胞培養士の育成に時間がかかり、また細胞培養士への作業負担も大きかった。
【0004】
一方、細胞培養を自動化した装置が存在する(例えば特許文献1に記載)。しかし、このような装置は、培地交換や継代の操作を一連の動作として自動化した装置であるから、大がかりなものとなってしまい、設置場所が限定されるものであった。
【0005】
また、病院、クリニック等で細胞の培養を行い、患者に投与を行う事が希望されているが、病院、クリニック等では設置場所の制限から、自動化した装置の導入が難しいとの実情があった。そのため、病院、クリニック等にも設置可能な、コンパクトな継代装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-54690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、前記事情を考慮し、細胞継代における細胞回収のみに特化した装置であって、しかもコンパクトな細胞回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下移動により開閉されるシャッター部を前面に有し、内部を清浄環境とできる外構部と、前記外構部の内部に設けられたロボットアームと、細胞を培養した培養容器が置かれる培養容器置台と、前記培養容器から細胞を取り出すために用いられる試薬を入れる試薬容器が置かれる試薬容器置台と、前記培養容器から取り出された細胞を回収する細胞回収容器が置かれる細胞回収容器置台と、を備え、各置台は、前記外構部の内部に、前記ロボットアームの移動範囲内で各容器を把持可能なように設けられ、前記培養容器置台は、前記外構部の左右中央寄りで、かつ、前記シャッター部と前記ロボットアームとの間の位置に設けられ、前記試薬容器置台及び前記細胞回収容器置台は、前記培養容器置台の側方かつ後方に設けられた、細胞回収装置である。
【0009】
これによれば、培養容器置台が、外構部の左右中央寄りで、かつ、シャッター部とロボットアームとの間の位置に設けられたことで、培養容器置台に対し、作業者が培養容器を置いたり取ったりすることが容易であり、試薬容器置台及び細胞回収容器置台が培養容器置台の側方かつ後方に設けられたことで、各置台を、外構部の内部にコンパクトに配置できる。
【0010】
また、前記試薬容器置台は、前記外構部の内部で前後に移動可能とされていてもよい。
【0011】
これによれば、試薬容器置台を前後に移動させることによって、作業者が試薬容器を置きやすく、かつ、ロボットアームが試薬容器を持ちやすい。
【0012】
また、前記外構部における前方であって、前記シャッター部の後方には、上方に開口した前方吸気部が設けられ、前記培養容器置台は、上下方向に通気性を有する前方パネルに設けられており、前記前方パネルの一部は、前記前方吸気部のうち一部を上方から覆うように設けられていてもよい。
【0013】
これによれば、前方パネルが前方吸気部を覆う位置関係であっても、前方吸気部での気流の吸い込みが阻害されにくい。そして、前方吸気部上方の空間を、少なくとも培養容器置台として有効に利用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、培養容器置台に対し、作業者が培養容器を置いたり取ったりすることが容易であり、かつ、各置台を、外構部の内部にコンパクトに配置できる。よって、容器の出し入れのみを作業者が行えばよく、細胞回収のための動作は自動化されていて、しかもコンパクトな細胞回収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る細胞回収装置の構成を概略的に示す正面図である。
図2】前記細胞回収装置の構成のうち内部構成を概略的に示すため、外構部における天部を省略して示す平面図である。
図3】前記細胞回収装置の構成のうち内部構成を概略的に示すため、外構部における側部を図示省略して示す右側面図である。
図4】前記細胞回収装置のロボットアームにおけるハンド部(または把持部)を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(b)のc-c矢視図である。
図5】前記ハンド部(または把持部)のうち左右片側部分を示し、(a)は正面及び右側面側の斜視図であり、(b)は正面図である。
図6】前記ハンド部(または把持部)のうち左右片側部分を示し、(a)は背面図であり、(b)は平面図である。
図7】前記ハンド部(または把持部)のうち左右片側部分を示し、(a)は底面図であり、(b)は右側面図である。
図8】前記ハンド部(または把持部)のうち左右片側部分を示し、(a)は左側面図であり、(b)は背面及び左側面側の斜視図である。
図9】前記細胞回収装置で用いられる培養容器をホルダと共に示し、(a)は正面図、(b)はキャップを外した状態の平面図である。
図10】前記細胞回収装置で用いられる培養容器用のホルダを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
図11】(a)は前記細胞回収装置で用いられる細胞回収容器をホルダと共に示した正面図、(b)はホルダ単体の平面図である。
図12】前記細胞回収装置で用いられる試薬容器をホルダと共に示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は背面図である。
図13】(a)は前記細胞回収装置で用いられる培地回収容器をホルダと共に示した正面図、(b)はホルダ単体の平面図である。
図14】前記細胞回収装置のロボットアームが、ホルダが装着された培養容器を持った状態であって、(a)は第1状態、(b)は第2状態を示す。
図15】前記細胞回収装置のキャップ開閉装置14のうち、回転把持部とキャップ(大きいキャップの例を実線表示、小さいキャップの例を二点鎖線表示)との関係を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る細胞回収装置1について説明する。なお、以下における方向の表現は、「上下」に関しては、図1に示す方向に対応している。また、「前後」に関しては、図2に示す下方(図3に示すシャッター部102のある側)を前方とし、同上方(図3に示すシャッター部102の反対側)を後方とする。また、「左右」に関しては、図1及び図2に示す方向に対応している。
【0017】
本実施形態の細胞回収装置1は、培養した細胞を回収するためのみの装置である。このため、一連の細胞培養を行う装置とは異なり、大量に培養した細胞を回収することは、基本的に想定外である。ただし、本発明の技術的範囲から、大量に培養した細胞を回収することを排除しているわけではない。
【0018】
本実施形態の細胞回収装置1は、図1図3に示すように構成されていて、主に、外構部10、ロボットアーム11、培養容器置台121、試薬容器置台13、細胞回収容器置台122を備える。またこれらの他、培地回収容器置台123、キャップ開閉装置14、キャップセンサ15、キャップ置台16、傾斜台17、振動台18、ピペット装置19、仮置台20、操作パネル21を備える。細胞回収装置1のうちで、物理的に動く部分(ロボットアーム11、試薬容器置台13、キャップ開閉装置14、傾斜台17、振動台18、ピペット装置19)は制御部(図示しない)により動きが制御される。
【0019】
外構部10は箱状であって、内部に空間を有しており、この空間に細胞回収のために必要な種々の構造物が配置されている。これらの構造物は、外構部10の内部における、上向きで左右に長い長方形状の平面を有するテーブル部101に対し、一部はテーブル部101上に設置され、他の一部はテーブル部101を下方から上方に貫通するように設置されている。各構造物とテーブル部101は、少なくとも外面が、除染のための薬剤(例えば、エタノール、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム水溶液)に対する耐薬品性を有する材料で形成されている。本実施形態ではステンレス合金製とされている。外構部10の基本構造は、市販されている安全キャビネットの構造と同じである(このため、外構部10に関しては、本発明に直接関係しない部分の説明を省略する)。本実施形態の外構部10は、前面部の下方領域につき上下移動により開閉されるシャッター部102を前面に有するが、シャッター部102を開放しても(具体的には、外構部10における前面部の下方領域を開放した状態であっても)、内部を清浄環境とできるように構成されている。清浄度は、例えばPIC/S GMP 規定のグレードAに設定される。シャッター部102は、例えば無色透明強化ガラスから形成された平板状のものであって、例えば作業者の手により開閉される。シャッター部102の開放時には、シャッター部102の下縁の下方に開口部が形成される。従って、外構部10における前面部の下方領域が開放される。この開口部を用いて資材(各容器51~54等)の搬入出が可能である。また、外構部10の前部には図示しないシャッター開放センサが設けられており、所定開度を超えてシャッター部102が開放されると、操作パネル21への表示等によって警告がされるようになっている。
【0020】
外構部10における前方であって、シャッター部102の後方(直後)には、上方に開口した前方吸気部103が設けられており、作業者がシャッター部102を上方に移動させたことにより、少なくとも開口部が形成された場合に、外構部10の内部(テーブル部101の上方の空間)を下方に向かう気流の吸い込みがなされる。前方吸気部103は多孔板や金網により、上下方向で通気可能に覆われている。本実施形態の前方吸気部103は帯状で、シャッター部102の正面視における幅方向に沿い、左右に連続して設けられている。
【0021】
作業者が外構部10に対して資材を搬入出する際、シャッター部102を開けることで、外構部10における前面部の下方領域が開放されて開口部が形成された場合であっても、前方吸気部103での気流の吸い込みにより、開口部を内方から外方に通り抜ける気流が生じないようにされている。このため、外構部10の内部空間の清浄度が保たれる。
【0022】
細胞回収のために必要な構造物は、外構部10における前方吸気部103よりも後方(前方吸気部103の上方に一部が重なる場合も含む)に設けられている。
【0023】
培養容器置台121及び培地回収容器置台123は、前方パネル12上に形成されている。前方パネル12は上下方向に通気性を有する材料、例えば多孔板から形成されており、テーブル部101の上方に浮かして設けられている。本実施形態では一枚の多孔板に、培養容器51、細胞回収容器52、培地回収容器54の各々がホルダ61,62,64に装着された状態で位置保持するブロック状のストッパが取り付けられることにより区画されることで、培養容器置台121、細胞回収容器置台122、培地回収容器置台123が同一平面上に形成されている。一枚の前方パネル12において、同一平面上に複数の容器置台121~123が設けられているので、例えば清掃作業が容易である。前方パネル12の一部は、前方吸気部103のうち一部を上方から覆うようにしてテーブル部101上に配置されている。前方パネル12が多孔板から形成されているため、前方吸気部103を覆う位置関係であっても、前方吸気部103での気流の吸い込みが阻害されにくい。なお、本実施形態では、前方パネル12の多孔板の穴径が、前方吸気部103の多孔板の穴径よりも大きく形成されていて、上下方向の通気性が確保されている。また、このような位置関係によって、前方吸気部103上方の空間を、培養容器置台121及び培地回収容器置台123として有効に利用できる点で有利である。
【0024】
ロボットアーム11は、外構部10の内部に設けられている。ロボットアーム11は、外構部10のテーブル部101における前後左右で中央付近に設けられている。このため、ロボットアーム11の届く範囲内に、細胞回収のために必要な構造物をバランス良く配置できるので、細胞回収装置1を全体としてコンパクト化し、占有面積を小さくすることに貢献できる。
【0025】
ロボットアーム11は、図4(a)~(c)及び図5図8に示すように(なお、図4図5図8とは、図示の関係により若干の形状差異がある)、先端において各容器51~54を持つことのできるハンド部(または把持部)111を備える。ハンド部111は、接近・離反する一対の把持片112,112を備える。接近・離反の際の移動は、一対の把持片112,112が平行状態を保つような直線移動である。各把持片112は、容器を支持するのに適した形状とされている。各把持片112は、接近・離反方向に複数の凸部113~113がハンド部111における内方に突出して設けられている。このように構成されたハンド部111により、各容器51~54(具体的には、各容器51~54に装着された各ホルダ61~64)を単に挟むだけではなく、凹凸嵌合の状態で持てるため、ロボットアーム11が、内容物の撹拌や排出のために各容器51~54を様々な姿勢(例えば上下逆向きや横向き)としても、各容器51~54の確実な支持が可能である。
【0026】
各把持片112に設けられる複数の凸部113~113は2個で一組とされていて、直交する関係にある二方向に各組が設けられている。具体的には、図4(b)に示す状態で、2個が縦方向に並ぶ組と2個が横方向に並ぶ組となっている。これにより、ハンド部111を基準で各容器51~54を縦向きにも横向きにも支持できる。しかも、縦向きの場合上下逆方向、横向きの場合左右逆方向にも支持できる。よって、液状の内容物を他の容器に移し替える際に、最も移しやすい方向で、移し元の容器を支持できる。従って、効率良い移し替え作業が可能である。
【0027】
ホルダ61が装着された培養容器51をロボットアーム11が持った状態につき、図14(a)が第1状態、図14(b)が第2状態である。基本的な把持状態は第1状態であるが、内容物を他の容器に移す際、ロボットアーム11が持った培養容器51を、口部が下方を向くまで倒す場合、及び、培養容器51を空中で振る場合には、ロボットアーム11が培養容器51を持ち替えて第2状態とされる。培養容器51以外の各容器52~54についても同様である。第1状態と第2状態の持ち替えは、例えば、培養容器51または試薬容器53が仮置台20に一旦置かれてから行われる。
【0028】
また、異常発生時の復帰作業を容易にするため、ロボットアーム11は、個々の動作において、原点位置(ハンド部111が前方を向いた位置)で一旦停止するように制御される。
【0029】
本実施形態の細胞回収装置1では、例えば手培養において用いられる市販の容器51~54が、ホルダ61~64を装着した状態で用いられる。こうすることで、専用の特殊形状の容器を用いなくてよく、有利である。各容器51~54において筒状に突出して形成された口部にはスクリュー式(回転式)のキャップが取り付けられる。
【0030】
ホルダ61~64は、市販の容器51~54をロボットアーム11が持ちやすくするためのものである。例えば培養容器51用のホルダ61は、図10(a)~(d)に示す形状とされており、容器に装着されると図9(a)(b)に示すような形状となる。他の容器用のホルダ62~64に関しては、各容器52~54に装着された状態または単体の状態を図11図13に示す。
【0031】
各ホルダ61~64の側方には突出部611~641が設けられている。各突出部611~641は、ロボットアーム11の一対の把持片112,112により挟まれる。そして各突出部611~641には、ロボットアーム11の各把持片112に設けられた凸部113と一致する凹部612~642が形成されている。ロボットアーム11が各容器51~54を直接持つと、各容器51~54の側部が撓んだり、ロボットアーム11のハンド部111から滑り落ちたりする可能性がある。これに対し、本実施形態のような各ホルダ61~64を用いることで、ロボットアーム11が各ホルダ61~64を介して各容器51~54を確実に持つことができる。なお、試薬容器53用のホルダ63における突出部631は、図12に示すようにホルダ63の本体にあって突出した形態とはなっておらず、ホルダ63の本体における側部に直接凹部632が形成されている。
【0032】
図10(c)に示すように、培養容器51用のホルダ61の底部には底凹部613が形成されている。他の容器用の各ホルダ62~64も同様、底部に底凹部623~643が形成されている。各ホルダ61~64に形成された底凹部613~643は、線対称(180度)及び回転対称(90度、270度)で非対称となる位置に形成されている。本実施形態では底凹部が複数形成されていて、各底凹部613~643の底部における位置及び/または大きさは、容器51~54の種類ごとに異なった組み合わせとされている。試薬容器53に関しては、図示していないが、洗浄液(PBS)容器531と酵素(トリプシン)容器532とで、各底凹部633の底部における位置が異なっている。
【0033】
一方、各置台121,122,123,13には、各ホルダ61~64の底凹部613~643に対応した凸部が、例えば前方パネル12に固定されたピンにより形成されており、各置台121,122,123,13に各容器51~54が正しく装着されると凹凸嵌合がなされる。この凹凸の組み合わせにより、各置台121,122,123,13に対する各容器51~54の正しい位置での位置決めが可能である。そして、誤装着(同じ容器での方向違い、及び、別容器の装着)が防止される。
【0034】
なお、本実施形態では、試薬容器53である洗浄液(PBS)容器531と酵素(トリプシン)容器532は同一形状であって、各容器531,532に装着されるホルダ63も、底凹部633を除いた外形は同一である。ただし、底凹部633は別個の位置に形成されているため、試薬容器置台13への装着時に、相互の区別がなされる。
【0035】
培養容器51については図9(a)(b)に、試薬容器53については、図12(a)~(c)に示すように、輪状の弾性体(シリコンゴム等)で構成された留めリング71,73が、作業者の手によりあらかじめ(細胞回収装置1への搬入前に)掛け渡されている。具体的には、培養容器51用のホルダ61では、厚み方向で対向する一対の面からそれぞれ外側に突出するようにフック部614,614が設けられている。試薬容器53用のホルダ63では、一つの面から外側に突出するようにフック部634が設けられている。各フック部614,634は、先端の径寸法が拡大した形状とされている。培養容器51用のホルダ61では、図9(a)(b)に示すように、留めリング71は一対のフック部614,614と培養容器51の口部(首部)とに図示のような輪状、または8の字状に掛け渡される。試薬容器53用のホルダ63では、図12(a)~(c)に示すように、留めリング73は1個のフック部634と試薬容器53の口部(首部)とに、口部を留めリング73が周回するようにして掛け渡される。培養容器51及び試薬容器53が各ホルダ61,63に対して留めリング71,73で保持されるため、ロボットアーム11が各ホルダ61,63を持って上下逆向きにしたり振り回しても、各ホルダ61,63から各容器51,53が落下することなく、ロボットアーム11を用いて各容器51,53から内容物を円滑に排出できる。
【0036】
培養容器置台121は、細胞を培養する培養容器51が、ホルダ61を装着した状態で置かれる台である。この培養容器置台121は、外構部10の左右中央寄りで、かつ、シャッター部102とロボットアーム11との間の位置に設けられている。本実施形態では、培養容器置台121は、シャッター部102の幅中心に略一致して設けられている。
【0037】
本実施形態の培養容器51としては、市販の「ハイパーフラスコTM」(コーニングインターナショナル株式会社製)が用いられ、図9(a)(b)に示すようにホルダ61が取り付けられて使用される。培養容器51は、底面形状が長方形である略直方体形状であり、内部が厚み方向で多層に区切られている。この培養容器51は、厚み方向における口部の位置が非対称とされている。培養容器置台121における各培養容器51の置かれる区画には、培養容器51が置かれていることを検知するセンサが設けられている。このセンサは本実施形態では、光線の遮蔽により検知する光学式センサが用いられている。センサは培養容器置台121の底部に設けられていて、光線の照射方向は上向きである。なお、試薬容器置台13、細胞回収容器置台122、培地回収容器置台123にも同様のセンサが設けられている。
【0038】
本実施形態の培養容器置台121には複数(具体的には3個)の培養容器51を縦置きできる。なお、培養容器置台121には任意の個数の培養容器51を置くことができる。本実施形態では、1個~3個の範囲で任意個数の培養容器51を培養容器置台121に置くことができる。3個の培養容器51~51は、培養容器置台121に左右方向(直線方向)に横並びに配置される。つまり、培養容器置台121は左右方向(直線方向)に沿って設けられる。このため、3個の培養容器51~51は、シャッター部102からの距離が等距離になる。したがって、作業者が培養容器置台121に各培養容器51を置く際の置きやすさにばらつきが生じないので、例えば一部の培養容器51を後方に置かなければならない構成に比べ、作業性が良い。また、細胞回収装置1への培養容器51の出し入れを速やかに行うことができるので、培養容器51の出し入れに伴い、細胞回収装置1の内部における清浄度が低下することを避けられる。培養容器置台121には各培養容器51が、厚み方向が前後に沿い、厚み方向で非対称である口部が前方に位置するように並べられる。
【0039】
インキュベータ処理を行う等の理由により、培養容器51は作業者によって、処理途中(第1工程終了後)で一旦装置外へ出され、処理終了後(第2工程開始前)に再度装置内へ入れられる。この出し入れの便宜のため、培養容器置台121は、細胞回収装置1における略中央部で、かつ、最も前方に設けられている。このような位置関係によって、細胞回収装置1の内部を汚染することなく、培養容器51の容易な出し入れが可能である。
【0040】
細胞回収容器置台122は、培養容器51から取り出された細胞を回収する細胞回収容器52が、ホルダ62を装着した状態で置かれる台である。細胞回収容器52には、細胞のほか、培養容器51の内部において培養した細胞が接着する表面(細胞接着面)から細胞を剥がすために加えられる酵素(トリプシン)、及び、培養容器51の内部を洗浄する洗浄液(PBS)も移される。細胞回収容器置台122は、培養容器置台121より右後方(細胞回収装置1の平面視における方向、以下同じ)、ロボットアーム11より右前方(ロボットアーム11の平面視における回転中心基準、以下同じ)に設けられている。細胞回収容器置台122は、培養容器置台121と培地回収容器置台123と共に一枚の前方パネル12に一緒に設けられている。
【0041】
培地回収容器置台123は、培養容器51から取り出された培地を、回収する培地回収容器54が、ホルダ64を装着した状態で置かれる台である。培地回収容器置台123は、培養容器置台121より右後方(培養容器置台121と細胞回収容器置台122との間)、ロボットアーム11より右前方に設けられている。培地回収容器置台123は、培養容器置台121と細胞回収容器置台122と共に一枚の前方パネル12に一緒に設けられている。
【0042】
試薬容器置台13は、培養容器51から細胞を取り出すために用いられる試薬を入れる試薬容器53が、ホルダ63を装着した状態で置かれる台である。なお、試薬容器53(特に洗浄液容器531)は、培養容器51に一度入れた試薬(具体的には洗浄液(PBS))を取り出して、回収する用途でも用いられる。試薬容器置台13は、培養容器置台121より左後方、ロボットアーム11より左前方に設けられている。
【0043】
本実施形態の試薬容器置台13は2段式であり、上段部131は洗浄液(本実施形態ではPBS)の入った洗浄液容器531が置かれる台であり、下段部132は酵素(本実施形態ではトリプシン)の入った酵素容器532が置かれる台である。上段部131と下段部132は上下方向に延びる支持軸により支持されている。上段部131と下段部132とは別個に、支持軸133を中心に回転動作可能である。回転範囲は、図2に実線と二点鎖線で示した状態との間で、図示矢印で示した範囲である。実線表示の状態は、ロボットアーム11が試薬容器53を持つ際の後方位置にある状態である。二点鎖線表示の状態は、作業者が試薬容器53を搬入して上段部131または下段部132に試薬容器53を置く際の前方位置にある状態である。回転によって試薬容器置台13の上段部131、下段部132を前方位置に移動できるため、作業者が試薬容器53を置きやすく、かつ、ロボットアーム11が試薬容器53を持ちやすい。
【0044】
試薬容器置台13(上段部131及び下段部132)には、垂直方向に延びる平板状の背面板134が設けられている。背面板134の上端縁には下方に延びるように切り欠かれた切欠部135が形成されている。この切欠部135には、試薬容器53に装着されたホルダ63の、先端の径寸法が拡大したフック部634が挟まる。これにより、上段部131または下段部132が回転しても落下しないように、試薬容器53が支持される。
【0045】
なお本実施形態では、試薬容器53のうち、洗浄液容器531の数量、及び、酵素容器532の数量は培養容器51の数量(任意の数量であって、本実施形態では1個~3個)と一致するように設定されている。このため、細胞回収に必要な試薬容器53の数量が統一されているので、作業者が試薬容器53の数量を把握しやすく、試薬容器置台13に置く試薬容器53の数量をまちがえることを抑制できる。
【0046】
キャップ開閉装置14は、各容器51~54のキャップを開閉する。キャップ開閉装置14は、ロボットアーム11より左後方に設けられている。キャップ開閉装置14は、キャップを径外方向から挟んだ状態で上下方向に延びる中心軸周りに回転することで、各容器51~54の本体に対してキャップを回転させる回転把持部141を有している。回転把持部141は、下側が広がったり狭まったりする複数の拡開片が組み合わされており、キャップ開閉装置14の下部に設けられた容器置台142に置かれた各容器51~54に対して上下動する。この回転把持部141により、スクリューキャップが取り付けられた市販の容器を用いることができるので、開閉を容易にするための特殊構造のキャップを備えた特別な容器を用意しなくてもよい。図15に示すように、回転把持部141は、上下2段で構成されていて、上部把持部1411の内径は小さく、下部把持部1412の内径は大きい。本実施形態で用いられる各容器51~54には、外径の異なる2種のキャップが用いられている。相対的に外径の小さなキャップC1が培養容器51と試薬容器53に用いられ、相対的に外径の大きなキャップC2が細胞回収容器52と培地回収容器54に用いられる。このため、相対的に外径の小さなキャップC1は回転把持部141における上部把持部1411によって挟まれ、相対的に外径の大きなキャップC2は下部把持部1412によって挟まれる。容器置台142には容器挟持装置1421が設けられている。一部の容器は容器挟持装置により水平方向に挟まれた状態で回転把持部141によってキャップの開閉がされる。これにより、安定的にキャップを開閉できる。
【0047】
キャップセンサ15は、各容器51~54におけるキャップの有無を検知するためのセンサであって、本実施形態では、光線の照射方向が下方に設定された光学センサが用いられている。キャップ開閉装置14は、ロボットアーム11より右後方に設けられている。キャップ開閉装置14による開閉操作が行われた後、各容器51~54は必ずキャップセンサ15の位置に移動させられる。これにより、各容器51~54におけるキャップの有無が確実に検知され、各容器51~54の開閉が実際にされていることが確認される。
【0048】
キャップ置台16は、各容器51~54から取り外したキャップを一時的に置いておくための台である。キャップ置台16は、ロボットアーム11より右後方で、キャップセンサ15よりも前方に設けられている。キャップ置台16は、テーブル部101の上方で不動である固定台161と、固定台161に対して着脱される移動台162とを有している。各容器51~54から取り外したキャップは移動台162に載せられる。移動台162は、各ホルダ61~64の突出部611~641と同様の部分が設けられていて、当該部分がロボットアーム11のハンド部111に持たれることで、キャップ置台16とキャップ開閉装置14との間で移動する。
【0049】
傾斜台17は、上面を、水平状態と、上面が斜め前方を向くように傾斜した状態とにできる。図1は傾斜した状態を示している。傾斜台17は、ロボットアーム11の右側方に設けられている。傾斜台17の上面に乗せた各容器(具体的には培養容器51、試薬容器53、培地回収容器54)を傾斜させることで、当該各容器51,53,54に対して、ロボットアーム11に持たれた他の容器の液状の内容物をこぼさず、効率的に移すことができる。
【0050】
振動台18は、テーブル部101に対して左右に往復動(揺動)する台である。振動台18は、ロボットアーム11の右前方で、細胞回収容器置台122よりも後方右寄りに設けられている。振動台18には、培養容器51が、厚み方向が上下となるように横倒しに載せられる。培養容器51を載せた状態で振動台18が左右に往復動することにより、培養容器51に衝撃を与えることができる。この衝撃により、洗浄液(PBS)、酵素(トリプシン)のいずれか、または、両方が入れられた状態の培養容器51の内部において培養した細胞が接着する表面(細胞接着面)から細胞を剥がすことができる。本実施形態では、後述の第2工程で、洗浄液が入れられた培養容器51が振動台18上で振動させられる。
【0051】
ピペット装置19は、細胞回収容器52の、細胞を含んだ内容物を懸濁させるのに用いられる。ピペット装置19は振動台18の右側方に設けられている。ピペット装置19は、主に、ピペット部191、連結チューブ192、シリンダ部193、しずく受け皿194を備える。ピペット部191は上下方向に延びる筒状(具体的には円筒状)で下端が絞られた形状である。ピペット部191は、上端が支持された旋回アーム195が旋回及び上下動することにより、旋回中心に対して平面視で回転し、かつ、上下動する。なお、ピペット部191は、一回の細胞回収作業ごとに交換される。連結チューブ192は、ピペット部191の上端とシリンダ部193とを通気可能に連結する。シリンダ部193は上下方向に延び、内部に往復動するシリンダが設けられており、シリンダ部193の往復動に伴い、ピペット部191の下端を介して、ピペット部191の内部空間に液体を吸引したり、ピペット部191の内部空間から液体を排出したりするように構成されている。しずく受け皿194は、ピペット部191の回転範囲のうち、前方パネル12と重ならない部分(前方パネル12の右方)に設けられており、ピペット部191から落下したしずくを受ける。
【0052】
仮置台20は、主に、各容器51~54をロボットアーム11が持ち替える際に、各容器51~54が一時的に置かれる、上面が平面である台である。本実施形態では、テーブル部101よりも高い位置に設けられている。
【0053】
操作パネル21はタッチパネルであって、リアルタイムの運転状態が表示され、各動作の内容を作業者が設定できる。また、異常発生時には警告表示がなされる。本実施形態の細胞回収装置1にはこの他に、メンテナンス時等にロボットアーム11を操作するための有線コントローラ22が設けられている。
【0054】
細胞回収作業において用いられる、外構部10の内部に設けられる各構造物(各置台121,122,123,13を含む)は、ロボットアーム11の移動範囲(ロボットアーム11が届く範囲)内で各容器51~54を把持可能であり、各容器51~54に対して処理可能に設けられている。ロボットアーム11の移動範囲は円弧状の範囲である。特に、各置台の位置関係は図2に示す通りであり、ロボットアーム11の回動中心からほぼ同じ距離に配置されている。従って、ロボットアーム11を用いた作業が、把持対象物がばらばらの位置にあることに比べて容易である。
【0055】
また特に、試薬容器置台13及び細胞回収容器置台122は、培養容器置台121の側方かつ後方に設けられている。ここで、細胞回収容器52、試薬容器53、培地回収容器54は、細胞回収作業の開始前に搬入され、細胞回収作業の終了後に搬出される。このため、細胞回収作業の途中での出し入れがある培養容器51(最前位置にあることが好ましい)との関係で、細胞回収装置1における中央部に対して離れた位置で、しかも、培養容器置台121よりも後方に設けられている。
【0056】
作業者が各容器51~54を置く各置台121~123,13は、高さ方向でテーブル部101に近い位置に設けられている。このため、作業者が背の低い人であっても困難なく手が届き、各容器51~54を各置台121~123,13に置く作業に支障をきたしにくい。
【0057】
次に、本実施形態の細胞回収装置1を用いた細胞回収作業(第1工程、第2工程)における一連の動作の一例について説明する。なお、第1工程では、培養を経て細胞が内部に入っている培養容器51(3個)、試薬容器53(洗浄液(PBS)容器531が3個、酵素(トリプシン)容器532が3個)、培地回収容器54(1個)が装置内に搬入され、各置台121,123,13に置かれた状態とされた以降について説明する。また、第2工程では、第1工程を経た培養容器51(3個)、試薬容器53(洗浄液(PBS)容器531が3個)、細胞回収容器52(1個)が装置内に搬入され、各置台121,122,13に置かれた状態とされた以降について説明する。各工程における以下の説明は、時間経過順に記載している。
【0058】
なお、各容器51~54及びキャップの細胞回収装置1内での移動は全てロボットアーム11によりなされる。また、各容器51~54が備えるキャップの開閉は、キャップ開閉装置14に対して各容器51~54が移動されてなされる。キャップ開閉装置14とキャップ置台16との間でのキャップの移動は、キャップ置台16のうち移動台162をロボットアーム11が移動させることでなされる。また、キャップ開閉装置14によるキャップの開閉の後、ロボットアーム11により各容器51~54の口部はキャップセンサ15の下方にかざされ、キャップの開閉状況が検知される。また、以下の動作説明では省略したが、ロボットアーム11が各容器51~54を持ち替える際、各容器51~54は一旦仮置台20に置かれる。
【0059】
まず第1工程について説明する。最初に、培地回収容器54のキャップを外す。キャップが外された状態の培地回収容器54は培地回収容器置台123に置かれる(移動前の位置に戻される)。外されたキャップはキャップ置台16へ移動させる。次に、洗浄液(PBS)容器531のキャップを外し、試薬容器置台13における上段部131の所定位置(移動前に置かれていた位置のこと、以下同じ)へ置く。外されたキャップはキャップ置台16へ移動させる。次に、酵素(トリプシン)容器532のキャップを外し、試薬容器置台13における下段部132の所定位置へ置く。外されたキャップはキャップ置台16へ移動させる。次に、培養容器51のキャップを外し、培養容器51を仮置台20へ置く。外されたキャップはキャップ開閉装置14が保持したままとしておく。
【0060】
次に、培地回収容器54を傾斜台17に移動させ、傾斜台17を、培地回収容器54の口部が斜め前方を向くように傾斜させる。培養容器51をロボットアーム11が持ち、培養容器51を傾けることで、培養容器51内の培地の半分程度を培地回収容器54に移す。培養容器51をロボットアーム11が持ち替えた上で、培養容器51内の培地の残りを培地回収容器54に移す。培養容器51を仮置台20に置く。次に、傾斜台17を水平状態に戻した上で、培地回収容器54を培地回収容器置台123に移動させる。
【0061】
なお、各容器51~54の内容物を他の容器に移す際、本実施形態では、内容物の移動自体は検知しておらず、内容物を移す動作を行う時間を一定の時間確保するように、制御部が制御している。
【0062】
次に、培養容器51を傾斜台17に移動させ、傾斜台17を、培養容器51の口部が斜め前方を向くように傾斜させる。洗浄液(PBS)容器531をロボットアーム11が持ち、洗浄液(PBS)を培養容器51に移す。洗浄液容器531を試薬容器置台13における上段部131の所定位置へ置く。次に、傾斜台17を水平状態に戻した上で、培養容器51のキャップを閉じる。次に、培養容器51をロボットアーム11が持ち、空中で振る。そして、培養容器51のキャップを開けて、培養容器置台121の所定位置に置く。次に、空の洗浄液容器531を傾斜台17に置く(ただし傾斜はさせない)。次に、培養容器51内の洗浄液を洗浄液容器531に移す。この動作により、培養容器51に移されていた洗浄液は、元の洗浄液容器531に戻されたことになる。培養容器51を培養容器置台121の所定位置に置く。洗浄液容器531を試薬容器置台13における上段部131の所定位置へ置く。
【0063】
次に、培養容器51を傾斜台17に移動させ、傾斜台17を、培養容器51の口部が斜め前方を向くように傾斜させる。酵素(トリプシン)容器532をロボットアーム11が持ち、酵素(トリプシン)を培養容器51に移す。酵素容器532を試薬容器置台13における下段部132の所定位置へ置く。次に、傾斜台17を水平状態に戻した上で、培養容器51のキャップを閉じる。次に、培養容器51をロボットアーム11が持ち、空中で振る。そして、培養容器51を培養容器置台121の所定位置に置く。次に、作業者がシャッター部102を開けて培養容器51を取り出し、その後シャッター部102を閉じる。細胞回収装置1から一旦取り出された培養容器51は、別に設けられたインキュベータに作業者により移動させられて処理される。
【0064】
次に、培地回収容器54、洗浄液容器531、空の酵素容器532の順でキャップを閉じる。キャップを閉じる際は、キャップ置台16から移動台162ごとキャップをキャップ開閉装置14における回転把持部141に移動させ、各容器51~54をキャップ開閉装置14における容器置台142に移動させる。そして、回転把持部141が把持したキャップを各容器51~54に取り付ける。これで第1工程は終了である。
【0065】
次に第2工程について説明する。第2工程の開始前に、作業者がシャッター部102を開けて、インキュベータで処理された培養容器51を培養容器置台121の所定位置(第1工程で置かれていた位置)へ置き、その後シャッター部102を閉じる。第2工程では、まず、細胞回収容器52のキャップを外す。外されたキャップはキャップ置台16へ移動させる。次に、洗浄液(PBS)容器531のキャップを外し、試薬容器置台13における上段部131の所定位置へ置く。外されたキャップはキャップ置台16へ移動させる。次に、培養容器51を空中で振り、その後振動台18へ置いて振動台18を作動させる(タッピング)。そして、培養容器51を再び空中で振る。次に、培養容器51のキャップを外し、内容物を細胞回収容器52に移す。外されたキャップはキャップ開閉装置14が保持したままとしておく。
【0066】
次に、培養容器51を傾斜台17に移動させ、傾斜台17を、培養容器51の口部が斜め前方を向くように傾斜させる。次に、洗浄液(PBS)容器531をロボットアーム11が持ち、洗浄液(PBS)を培養容器51に移す。培養容器51のキャップを閉じる。次に、培養容器51を空中で振り、その後振動台18へ置いて振動台18を作動させる(タッピング)。そして、培養容器51を再び空中で振る。次に、培養容器51のキャップを外し、内容物を細胞回収容器52に移す。培養容器51のキャップを閉じ、培養容器置台121へ移動させる。次に、細胞回収容器52の内容物にピペット装置19のピペット部191を差し入れ、シリンダ部193を作動させて内容物の吸引と排出を行うことで分散させる(ピペッティング)。そして、ピペット部191の先端を細胞回収容器52の内容物から引き上げてシリンダ部193を作動させる(空打ちを行う)ことで、ピペット部191内部の残存物(しずく)を細胞回収容器52に入れる。次に、細胞回収容器52のキャップを閉じ、洗浄液容器531のキャップを閉じる。細胞回収装置1における一連の動作はこれで終了である。
【0067】
作業者がシャッター部102を開け、細胞回収容器52とその他の容器が、細胞回収装置1から取り出されると、培養容器51からの細胞回収作業は終了する。なお、複数(具体的に、本実施形態では3個)の培養容器51から細胞回収を行う場合には、まず、全ての試薬容器53のキャップを開けてから、個々の培養容器51の処理を、前記一連の動作と同じようにして繰り返す。全ての培養容器51の処理が終了したら、他の全ての細胞回収容器52及び試薬容器53のキャップを閉じる。
【0068】
以上のように構成された、本実施形態の細胞回収装置1によれば、培養容器置台121が、外構部10の左右中央寄りで、かつ、シャッター部102とロボットアーム11との間の位置に設けられたことで、培養容器置台121に対し、作業者が培養容器51を置いたり取ったりすることが容易であり、試薬容器置台13及び細胞回収容器置台122が培養容器置台121の側方かつ後方に設けられたことで、少なくとも各置台121,122,13を、外構部10の内部にコンパクトに配置できる。よって、各容器51~54の出し入れのみを作業者が行えばよく、細胞回収のための動作は自動化されていて、しかもコンパクトな細胞回収装置1とできる。
【0069】
また、本実施形態の細胞回収装置1では、試薬容器置台13は、外構部10の内部で前後に移動可能とされている。このため、作業者が試薬容器53を置きやすく、かつ、ロボットアーム11が試薬容器53を持ちやすい。
【0070】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、明示しなかった形態であっても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…細胞回収装置、10…外構部、11…ロボットアーム、12…前方パネル、13…試薬容器置台、14…キャップ開閉装置、15…キャップセンサ、16…キャップ置台、17…傾斜台、18…振動台、19…ピペット装置、20…仮置台、21…操作パネル、22…有線コントローラ、51…培養容器、52…細胞回収容器、53…試薬容器、54…培地回収容器、61…培養容器用ホルダ、62…細胞回収容器用ホルダ、63…試薬容器用ホルダ、64…培地回収容器用ホルダ、71…留めリング(培養容器)、73…留めリング(試薬容器)、101…テーブル部、102…シャッター部、103…前方吸気部、111…ハンド部、112…把持片、113…凸部、121…培養容器置台、122…細胞回収容器置台、123…培地回収容器置台、131…上段部(試薬容器置台)、132…下段部(試薬容器置台)、133…支持軸、134…背面板、135…切欠部、141…回転把持部、142…容器置台、161…固定台(キャップ置台)、162…移動台(キャップ置台)、191…ピペット部、192…連結チューブ、193…シリンダ部、194…しずく受け皿、195…旋回アーム、531…洗浄液(PBS)容器、532…酵素(トリプシン)容器、613…底凹部(培養容器)、623…底凹部(細胞回収容器)、633…底凹部(試薬容器)、643…底凹部(培地回収容器)、614…フック部(培養容器)、634…フック部(試薬容器)、1411…上部把持部、1412…下部把持部
図1
図2
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