(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】缶体印刷方法、缶体印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240119BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20240119BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240119BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B41J29/38
B41J3/407
B65D25/20 Q
G06F3/12 350
G06F3/12 343
G06F3/12 308
(21)【出願番号】P 2020037433
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 真一
(72)【発明者】
【氏名】松島 妃美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 兼司
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025521(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033627(WO,A1)
【文献】特開2006-248600(JP,A)
【文献】特開2019-108138(JP,A)
【文献】特開平09-226776(JP,A)
【文献】特開2008-183613(JP,A)
【文献】特開2007-041990(JP,A)
【文献】特開平06-156503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0178579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 3/407
B65D 25/20
G06F 3/12
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶メーカ側の処理が、
缶体の縮径部に対する第1の印刷として、ユーザ側で作成された画像の一部の印刷を施すステップと、
前記印刷が施された前記縮径部を変形させるステップと、
前記縮径部が変形された前記缶体を前記ユーザ側に提供するステップと、
を含み、
前記ユーザ側の処理が、
前記画像を作成して前記缶メーカ側に提供するステップと、
前記缶メーカ側から提供された前記缶体を支持するステップと、
支持された前記缶体の胴部に対するデジタル印刷からなる第2の印刷として、前記画像の残りの部分の印刷を施すステップと、
を含むことを特徴とする缶体印刷方法。
【請求項2】
缶体をユーザに提供する缶体メーカ側の装置と、当該缶体の提供を受けるユーザ側の装置とを含み、
前記缶体メーカ側の装置は、
前記缶体の
縮径部に対
する第1の印刷
として、前記ユーザ側で作成された画像の一部の印刷を施す第1印刷手段と、
前記
縮径部を変形させる変形手段と、
を有し、
前記ユーザ側の装置は、
前記第1の印刷が施され変形された
前記縮径部に連続して設けられた胴部に対して、当該
縮径部の変形後、デジタル印刷からなる第2の印刷
として、前記画像の残りの部分の印刷を施す第2印刷手段と、
を有することを特徴とする缶体印刷システム。
【請求項3】
前記缶体メーカ側の装置は、ネットワークを介して前記画像を取得するホスト装置と、前記第1印刷手段と前記変形手段とを有するメーカ側装置とを含み、
前記ユーザ側の装置は、前記画像の作成に用いられるユーザPCと、前記第2印刷手段を有する印刷装置とを含むことを特徴とする請求項2に記載の缶体印刷システム。
【請求項4】
前記第1印刷手段は、前記
縮径部または当該
縮径部以外の箇所に、前記缶体を他の缶体と識別するための像を形成させるように印刷を施す、
ことを特徴とする請求項2に記載の缶体印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体印刷装置、缶体印刷システム、缶体、および内部に飲料が充填された缶体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正規部品以外の部品が使用されると、それを検出して作業機械の動作を制限する、とされる部品監視装置についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年における缶体に対する印刷技術の進歩から、従来、不可能であった、缶体をユーザ側で印刷することも検討されている。
ここで、缶体には、通常、その一部を変形させる処理が施されるが、この変形させる処理が施される箇所にも印刷を施したいと欲する場合がある。
しかしながら、缶体の一部を変形させる処理をユーザ側にて施すことは一般的に難しい。そのため、変形させる処理が施される箇所にユーザ側にて印刷を施す場合には、その変形後に印刷が施されることとなる。かかる場合には、缶体の印刷面の一部が屈曲した状態になっているため、意図する印刷品質が得られないことがある。
【0005】
本発明は、缶体の印刷面の一部を変形させる処理が行われた後の段階でのみ印刷が施される場合に比べ、印刷の品質がより良く保たれた缶体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が適用される缶体印刷装置は、予め定められた部位に対して第1の印刷が施され当該部位が変形された缶体を支持する支持手段と、支持された前記缶体の胴部に対してデジタル印刷からなる第2の印刷を施す印刷手段とを有する、ことを特徴とする缶体印刷装置である。
他の観点から捉えると、本発明が適用される缶体印刷システムは、缶体の予め定められた部位に対して第1の印刷を施す第1印刷手段と、前記部位を変形させる変形手段と、前記第1の印刷が施され変形された部位に連続して設けられた胴部に対して、当該部位の変形後、デジタル印刷からなる第2の印刷を施す第2印刷手段とを有する、ことを特徴とする缶体印刷システムである。
ここで、前記予め定められた部位は、前記缶体の縮径部であり、前記第1の印刷は、前記部位が変形される前に施される、ことを特徴とすることができる。
また、前記第1印刷手段は、前記部位または当該部位以外の箇所に、前記缶体を他の缶体と識別するための像を形成させるように印刷を施す、ことを特徴とすることができる。
さらに他の観点から捉えると、デジタル印刷が施される缶体であって、第1の印刷が施され変形された部位と、前記部位に連続して設けられ、デジタル印刷からなる第2の印刷を施すことが可能な胴部とを有する缶体である。
ここで、他の缶体と識別するための識別部を更に有する、ことを特徴とすることができる。
また、前記識別部は、前記胴部に形成された像であること、を特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、第1の印刷が施され変形された部位と、前記部位に連続して設けられ、デジタル印刷からなる第2の印刷が施された胴部と、を有し、内部に飲料が充填された缶体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、缶体の印刷面の一部を変形させる処理が行われた後の段階でのみ印刷が施される場合に比べ、印刷の品質がより良く保たれた缶体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態が適用される缶体印刷システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図2】ホスト装置の本実施の形態における機能構成を示す図である。
【
図3】メーカ側装置の本実施の形態における機能構成を示す図である。
【
図4】印刷装置側の本実施の形態における機能構成を示す図である。
【
図5】(A)~(C)は、ホスト装置にて実行される処理を示すフローチャートである。
【
図6】メーカ側装置にて実行される本実施の形態における処理を示すフローチャートである。
【
図7】印刷装置側にて実行される本実施の形態における処理を示すフローチャートである。
【
図8】(A)~(C)は、本実施の形態が適用される缶体の例を示した図である。
【
図9】飲料が充填された後の缶体に印刷が施される例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔缶体印刷システムの構成〕
以下、添付図面を参照して、本実施の形態が適用される缶体印刷システムについて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される缶体印刷システム1のハードウェア構成を示す図である。缶体印刷システム1には、缶体メーカ側の装置と、ユーザ側の装置とが含まれる。
缶体メーカ側の装置には、缶体印刷システム1の根幹をなす情報処理装置であるホスト装置10が含まれる。また、缶体メーカにおいて、ユーザに提供される前の缶体の予め定められた部位に印刷と加工とを施す第1印刷手段としてのメーカ側装置20が含まれる。なお、本実施の形態では、缶体の「予め定められた部位」として、縮径部が採用されている。「縮径部」とは、缶体の開口部付近の部位であって、開口部を縮径させるいわゆるネッキング加工が施される部位である。
ユーザ側の装置には、缶体メーカから缶体の提供を受けたユーザにおいて、提供された缶体に印刷を施す第2印刷手段としての印刷装置30が含まれる。また、ユーザが操作するコンピュータ装置であるユーザPC40が含まれる。ホスト装置10、メーカ側装置20、印刷装置30、およびユーザPC40は、インターネットなどのネットワーク60を介して接続されている。
なお、缶体メーカは、印刷装置30をユーザに提供する印刷装置メーカを兼ねている態様と、兼ねていない態様とがある。
【0010】
本実施の形態において、ホスト装置10は、缶体をユーザに提供する缶体メーカにより提供されるコンピュータ装置である。ホスト装置10には、缶体印刷システム1にて用いられる各種情報を記憶するデータベース(DB)50が、直接またはネットワーク60を介して接続されている。
【0011】
ホスト装置10は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)である制御部11と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)などのメモリ12とを有している。また、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられる記憶部13を有している。記憶部13としては、例えば半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置が用いられる。さらに、ネットワーク60を介してデータの送受信を行う通信部14を有している。
【0012】
また、ホスト装置10は、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの操作部15を有しており、缶体印刷システム1を管理する管理者からの入力操作を受け付ける。また、管理者が行う管理作業に必要な画像やテキスト情報などを表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部16と、表示部16を制御する表示制御部17とを有している。なお、各ハードウェアは、筐体を1つにするものとは限らない。
【0013】
メーカ側装置20は、装置全体を制御する制御部21と、ネットワーク60を介して各種データの送受信を行う通信部22とを有している。また、缶体に印刷を施す印刷部23と、印刷された缶体に加工を施す加工部24とを有している。また、メーカ側装置20の操作担当者への表示や、操作担当者からの入力操作を受け付けるユーザインタフェース25と、取得した印刷画像情報などを記憶する記憶部26とを有する。メーカ側装置20により印刷が施される媒体としての缶体は、例えばネッキング加工が施される前のストレート形状の缶体などである。
【0014】
缶体メーカ側のホスト装置10と、メーカ側装置20とは、直接、インタフェースケーブルを介して接続され、またはイーサネット(登録商標)などのLAN(Local Area Network)などを介して相互に接続される態様がある。
【0015】
印刷装置30は、装置全体を制御する制御部31と、ネットワーク60を介して各種データの送受信を行う通信部32とを有している。また、缶体メーカ側にて縮径部に識別情報が印刷される態様の場合に、当該識別情報を読みとるためのCCD(Charge Coupled Device)センサなどからなる読取部33を有している。また、印刷の対象となる缶体を支持する支持手段の一つとしての支持部34と、支持部34により支持された状態の缶体の胴部に印刷を施す印刷部35とを有している。また、印刷装置30は、印刷装置30を操作するユーザへの表示やユーザからの入力操作を受け付けるユーザインタフェース36を有する。また、缶体メーカ側から取得し、またはユーザ側で生成された印刷画像情報などを記憶する記憶部37を有する。
ここで、印刷装置30により印刷される媒体としての缶体は、缶体メーカ側において、縮径部に印刷が施され、その後縮径部へのネッキング加工が施された缶体となる。なお、印刷される媒体は、ビールやジュースなどの飲料物が充填される前の缶体、飲料物が充填された後の缶体、の何れの場合もある。
なお、印刷装置30は、単体で「缶体印刷装置」として把握できる場合もあるが、印刷装置30とユーザPC40とを含めて「缶体印刷装置」として把握することも可能である。
【0016】
読取部33は、例えば、印刷部35による印刷のために支持部34に搬送される缶体について、その搬送途中にて、例えば缶体の軸方向を中心として回転させ、缶体の表面に形成された識別情報を読み取る。読取部33にて読み取られる識別情報としては、各種バーコード情報や、シリアル番号、識別できる各種の画像情報などが挙げられる。なお、読取部33は、予め定められた波長の光線である紫外線を発光し、蛍光塗料で描かれた識別情報を可視像化して読み取る構成を採用することで、例えば缶体を購入したユーザに対して、缶体に識別情報が存在することを気づかせない態様もある。
【0017】
支持部34は、縮径部に印刷と加工とが施された缶体が搬送されてくると、印刷部35による印刷が可能となるように缶体を支持する。具体的には、縮径部に対するネッキング加工が施された缶体を支持する必要があるため、例えば開口部から缶体の内部に向かって筒状のマンドレルを挿入し、缶体の内部でマンドレルを膨らませることによって缶体を内側から支持する。そして、マンドレルを周方向に回転させることで缶体をインクジェットのノズル位置にて周方向に回転させる。また、例えば、マンドレルと押圧部とによって缶体の天頂部と底部を挟むことで缶体を支持し、インクジェットのノズル位置にて周方向に缶体を回転させる態様もある。飲料物が封入された缶体に印刷を施す場合には、缶体の内側から支持することができないので、例えば、複数の押圧部によって缶体の天頂部と底部を挟むことで缶体を支持する態様がある。
【0018】
印刷部35は、支持部34により支持された缶体の胴部に対して、インクジェットによるデジタル印刷を行い、缶体毎に印刷内容を変えて印刷することが可能である。かかる点は、通常の版下印刷による缶体への印刷とは大きく異なり、缶体に印刷を施す者の利便性が高く、装置の軽量化などが図られる。印刷部35では、インクを液滴としてノズルから噴射して、このインクを缶体の外周面に付着させて、缶体の外周面に画像を形成し、さらに、この画像の上に塗料を塗布して保護層を形成する。印刷部35では、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを基本のインクとして用い、さらに、必要に応じて、銘柄毎に用意した特別な色のインク(特色インク)を用いる。また、この場合、色毎にインクジェットヘッドを用意し、複数のインクジェットヘッドを用いて缶体への画像形成を行う。また、用いるインクとしては、活性放射線硬化型インクが望ましい。ここで、活性放射線硬化型インクには、例えば、紫外線(UV)硬化型インクが含まれる。インクジェットヘッドによる画像形成後に、缶体の外周面に対して塗料が塗布されて、保護層(オーバーコート層)が形成される。
【0019】
ユーザPC40は、装置全体を制御する制御部41と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAMなどのメモリ42とを有している。また、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられ、半導体メモリやHDDなどの記憶装置からなる記憶部43を有している。さらに、ネットワーク60を介してのデータの送受信や、印刷装置30に接続してデータの送受信を行う通信部44を有している。また、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、バーコードリーダなどの操作部45を有しており、印刷装置30を操作するユーザからの入力操作を受け付ける。また、ユーザが印刷装置30を用いて行う印刷作業に必要な画像やテキスト情報などを表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部46と、表示部46を制御する表示制御部47とを有している。
【0020】
ユーザPC40は、ホスト装置10からの各種情報などを取得する。このため、印刷装置30の通信部32は、ホスト装置10と直接、通信を行う態様の他に、ユーザPC40を介してホスト装置10と通信を行う態様がある。また、情報に応じて、これらを使い分ける態様もある。
【0021】
ユーザ側の装置である、印刷装置30と、ユーザPC40とは、直接、インタフェースケーブルを介して接続され、またはイーサネット(登録商標)などのLANなどを介して相互に接続される態様がある。
【0022】
〔本実施の形態におけるホスト装置10の機能構成〕
次に、ホスト装置10にて実行される本実施の形態における機能について説明する。
図2は、ホスト装置10の本実施の形態における機能構成を示す図である。ホスト装置10は、例えばネットワーク60を介して他のコンピュータ装置から印刷装置情報を取得する印刷装置情報取得部101を有する。また、缶体に識別情報を印刷する態様もあるため、例えばネットワーク60を介して他のコンピュータ装置から識別情報を取得する識別情報取得部102を有する。また、取得した印刷装置情報と識別情報とを対応付けた缶体の識別情報として、記憶部13やデータベース50に記憶する識別情報記憶部103を有する。
印刷装置情報や識別情報は、ネットワーク60と通信部14を介して取得する場合の他、例えばホスト装置10の管理者により操作部15から入力される態様がある。
【0023】
また、ホスト装置10は、印刷装置30から識別情報の取得要求があった場合に、これを受け付ける取得要求受付部104を有する。また、識別情報記憶部103に記憶された印刷装置情報をもとに、受け付けた取得要求が登録された印刷装置30からの取得要求か否かを確認する取得要求確認部105を有する。さらに、識別情報を識別情報記憶部103から読み出す識別情報読出部106と、読み出した識別情報を印刷装置30側(印刷装置30、または印刷装置30およびユーザPC40)に向けて出力する識別情報出力部107とを有する。
また、ホスト装置10は、印刷装置30から印刷結果を取得する印刷結果取得部108と、缶体への印刷処理に識別情報が用いられた場合にその識別情報を認識する出力識別情報処理部109とを有する。
【0024】
なお、識別情報記憶部103に記憶される識別情報としては、例えば二次元コードや一次元バーコードなどの他、例えば十数桁など、複数桁の数字からなるシリアル番号なども採用できる。また、番号を付していないドット像などを識別情報とすることもできる。缶体毎に異なる識別情報を印刷した場合、この識別情報は、缶体を一意に特定可能な情報として取り扱うことができる。
【0025】
識別情報記憶部103に記憶される印刷装置情報は、ユーザに提供される印刷装置30を一意に特定できる情報である。例えば、印刷装置30のシリアル番号などが挙げられる。また、例えば、印刷装置30を使用するユーザを一意に特定する情報であるユーザIDなどを用いることもできる。
【0026】
なお、缶体毎に異なる識別情報を印刷する代わりに、複数個の缶体に対して同一の識別情報を付加することもできる。言い換えると、1つの識別情報が予め定められた数量の缶体を含む態様である。例えば、缶体メーカにおいて製造されたロット単位で同一の識別情報を印刷する等である。また、製造年月日などの情報を用いて識別情報とすることもできる。
また、ここでは、缶体の識別情報について、印刷装置情報と対応付けて記憶しているが、印刷装置情報と対応付けずに記憶する態様もある。例えば、缶体を一意に特定可能な識別情報だけを記憶し、印刷装置情報は管理しない態様もある。
【0027】
〔本実施の形態におけるメーカ側装置20の機能構成〕
次に、メーカ側装置20にて実行される本実施の形態における機能について説明する。この本実施の形態は、メーカ側装置20が、ユーザに提供される前の缶体の縮径部に第1の印刷と加工とを施す点に特徴がある。
【0028】
図3は、メーカ側装置20の本実施の形態における機能構成を示す図である。メーカ側装置20は、缶体に印刷する画像の印刷画像情報を取得する印刷画像情報取得部201と、取得した印刷画像情報を記憶部26やデータベース50等に記憶する印刷画像情報記憶部202とを有している。印刷画像情報取得部201が取得する印刷画像情報は、ホスト装置10から取得する場合の他、例えばユーザ側にて生成された印刷画像情報である場合がある。また、ホスト側で生成されたあと、ユーザ側で変更処理が施された印刷画像情報を取得する態様もある。また、メーカ側装置20は、印刷画像情報記憶部202に記憶された印刷画像情報を読み出す印刷画像情報読出部203を有する。
また、メーカ側装置20は、缶体の縮径部またはそれ以外の部位に識別情報を印刷する態様がある。このため、メーカ側装置20は、識別情報を取得する識別情報取得部204と、取得した識別情報を記憶部26に記憶する識別情報記憶部205とを有する。また、記憶された識別情報を読み出す識別情報読出部206を有する。
また、メーカ側装置20は、読み出した印刷画像情報による画像を縮径処理前の縮径部に印刷する印刷処理部207を有する。また、印刷処理部207は、識別情報を、縮径部またはそれ以外の部位に印刷する。印刷処理部207は、インクジェットによるデジタル印刷や、凸版オフセット印刷等によって、縮径処理前の縮径部に画像や識別情報を印刷する。また、加工処理部208は、印刷された縮径部にネッキング加工を施す。
【0029】
〔本実施の形態における印刷装置30側の機能構成〕
次に、印刷装置30側(印刷装置30、または印刷装置30およびユーザPC40)にて実行される本実施の形態における機能について説明する。本実施の形態は、印刷装置30が、缶体メーカ側にて縮径部に第1の印刷と加工とが施された缶体の胴部に第2の印刷を施す点に特徴がある。
【0030】
図4は、印刷装置30側の本実施の形態における機能構成を示す図である。印刷装置30側は、印刷画像情報を取得する印刷画像情報取得部301と、取得した印刷画像情報をユーザPC40の記憶部43や印刷装置30の記憶部37等に記憶する印刷画像情報記憶部302とを有している。印刷画像情報取得部301が取得する印刷画像情報は、ネットワーク60を介してホスト装置10から取得する場合の他、例えばユーザPC40にて作成された印刷画像情報である場合がある。また、ユーザPC40がホスト装置10から取得した画像に変更処理を施して、印刷画像情報として取得する態様もある。
【0031】
さらに、缶体の縮径部またはそれ以外の部位に識別情報が印刷されている場合、印刷装置30は、ホスト装置10からネットワーク60を介して、識別情報を取得する識別情報取得部303と、取得した識別情報をユーザPC40の記憶部43や印刷装置30の記憶部37等に記憶する識別情報記憶部304とを有する。また、缶体に付された識別情報を読取部33によって読み取る識別情報読取部305を有する。また、印刷装置30側は、識別情報読取部305にて読み取られた識別情報と、識別情報記憶部304に記憶された識別情報とを照合させる照合部306を有する。また、照合結果を、ユーザPC40の表示部46や、ネットワーク60を介してホスト装置10などの外部装置へ出力する照合結果出力部307を有する。
【0032】
また、印刷装置30側は、印刷画像情報記憶部302から印刷画像情報を読み出し、印刷部35に缶体の胴部の印刷を行わせるための処理を行う印刷処理部308を有する。また、照合部306による照合が行われる場合には、印刷処理部308は、その照合結果を受けて、印刷部35に缶体の胴部の印刷を行わせるための処理を行う。また、印刷装置30は、印刷処理部308による印刷結果を、ホスト装置10やユーザPC40の表示部46等に出力するための印刷結果出力部309を有する。
【0033】
〔本実施の形態におけるホスト装置10の処理〕
次に、ホスト装置10にて実行される処理について、
図1、
図2および
図5を用いて説明する。
図5(A)~(C)は、ホスト装置10にて実行される処理を示すフローチャートである。
図5(A)は、缶体メーカからユーザに缶体が提供される前のホスト装置10における処理を示している。また、
図5(B)は、缶体メーカからユーザに缶体が提供されてからユーザ側にて缶体への印刷が開始されるまでのホスト装置10における処理を示している。また、
図5(C)は、ユーザ側にて缶体への印刷が完了した後のホスト装置10における処理を示している。
【0034】
ここで、
図5(A)および(B)に示すフローチャートについて、具体的な事例を想定して説明する。即ち、本事例におけるユーザは、いわゆる地ビールを生産する地域密着型のビール製造会社であるものとする。ユーザは、本社が所在する地域の自治体とコラボレートして、地域活性化のキャンペーン商品として地ビールの缶製品(飲料缶)を提供することとなった。そして、ユーザと自治体との協議の結果、当該地域の特徴をイメージさせる画像が缶体の印刷面全体(印刷面には屈曲した縮径部の表面が含まれる)に印刷された缶ビール500本をユーザが製造することとなった。また、缶体に印刷される画像は、当該地域の都市部の風景を描画した画像に決定した。その後、ユーザは、当該画像について、缶体メーカであるA社に相談し、A社が当該画像の作成を担当することとなった。A社は、自社が保有する他のコンピュータ装置(図示せず)を用いて当該画像を作成し、その内容についてユーザ及び自治体の了承を得た。
【0035】
このような前提の下、まず、
図5(A)に示すように、ホスト装置10の印刷装置情報取得部101は、例えば印刷装置メーカが保有する、他のコンピュータ装置(図示せず)から印刷装置情報を取得する(ステップ101)。また、識別情報取得部102は、識別情報を取得する(ステップ102)。具体的には、本事例では、識別情報として、バーコードからなるコード情報を取得する。また、識別情報記憶部103は、取得された印刷装置情報と、取得された識別情報とを対応付けた情報を、ユーザに提供される缶体の識別情報として記憶部13やデータベース50に記憶する(ステップ103)。そして、取得要求受付部104がメーカ側装置20から識別情報の取得要求を受け付けて(ステップ104)、識別情報読出部106が識別情報記憶部103から識別情報を読み出す(ステップ105)。そして、識別情報出力部107は、読み出された識別情報をメーカ側装置20に向けて出力して(ステップ106)、処理が終了する。その後、缶体メーカ側では、ストレート形状の缶体のうち、ネッキング加工の対象となる縮径部に対して、メーカ側装置20による印刷が施される。具体的には、A社により作成された画像(対象地域の都市部の風景を描画した画像)のうち縮径部にかかる部分の画像(空に浮かぶ雲を描画した画像)が印刷される。さらに、缶体の胴部にバーコードからなるコード情報が印刷される。また、印刷が施された縮径部にネッキング加工が施される。その後、缶体メーカからユーザに対して、一部に印刷処理と加工処理とが施された500本(実際にはこれに歩留まり分が考慮された数量)の缶体が提供される。
【0036】
缶体メーカからユーザに対して缶体が提供されると、
図5(B)に示すように、ホスト装置10の取得要求受付部104は、印刷装置30側から識別情報の取得要求を受け付ける(ステップ111)。また、取得要求確認部105は、識別情報記憶部103に記憶された印刷装置情報をもとに、印刷装置30側からの取得要求が、登録された印刷装置30からの取得要求か否かを確認する(ステップ112)。そして、登録された印刷装置30からの取得要求であることが確認されると、識別情報読出部106は、識別情報記憶部103から識別情報を読み出す(ステップ113)。そして、識別情報出力部107は、読み出された識別情報を印刷装置30側に向けて出力して(ステップ114)、処理が終了する。その後、ユーザ側にて缶体の胴部への印刷が開始される。
【0037】
ユーザ側における缶体の胴部への印刷が完了すると、
図5(C)に示すように、ホスト装置10の印刷結果取得部108は、印刷装置30側から、印刷結果を示す情報を取得する(ステップ121)。また、出力識別情報処理部109は、缶体への印刷処理に用いた識別情報を認識する(ステップ122)。その後、出力識別情報処理部109が、印刷の結果を示す情報を識別情報記憶部103の記憶内容に反映させて(ステップ123)、処理が終了する。なお、ここで行われる記憶内容への反映は、印刷装置30における缶体の胴部への印刷が完了したという実績について、印刷装置30の印刷装置情報と、識別情報とを対応付けて記憶する等である。
【0038】
〔本実施の形態におけるメーカ側装置20の処理〕
次に、メーカ側装置20にて実行される処理について、
図1、
図3および
図6を用いて説明する。
図6は、メーカ側装置20にて実行される本実施の形態における処理を示すフローチャートである。まず、本事例では、缶体の縮径部に、A社により作成された画像の一部を印刷する。このため、メーカ側装置20の印刷画像情報取得部201は、缶体の縮径部に印刷する画像の印刷画像情報を、ネットワーク60を介してホスト装置10から取得する(ステップ201)。また、印刷画像情報記憶部202は、取得された印刷画像情報を記憶部26やデータベース50等に記憶する(ステップ202)。また、印刷画像情報読出部203は、印刷画像情報記憶部202に記憶された印刷画像情報を読み出す(ステップ203)。
また、本事例では、識別情報として、バーコードからなるコード情報が缶体の胴部に印刷される。このため、メーカ側装置20の識別情報取得部204は、ホスト装置10からネットワーク60を介して、識別情報を取得する(ステップ204)。そして、識別情報記憶部205は、取得された識別情報を記憶部26に記憶する(ステップ205)。その後、識別情報読出部206は、記憶された識別情報を読み出す(ステップ206)。そして、印刷処理部207は、読み出した印刷画像情報による画像を缶体の縮径部に印刷し、また、読み出された識別情報を缶体の胴部に印刷する(ステップ207)。そして、加工処理部208が、缶体の縮径部にネッキング加工を施して(ステップ208)、処理が終了する。
【0039】
〔本実施の形態における印刷装置30側の処理〕
次に、印刷装置30側にて実行される処理について、
図1、
図4および
図7を用いて説明する。
図7は、印刷装置30側にて実行される本実施の形態における処理を示すフローチャートである。まず、印刷画像情報取得部301は、ネットワーク60を介して、ホスト装置10から印刷画像情報を取得する(ステップ301)。すると、印刷画像情報記憶部302は、取得された印刷画像情報を印刷装置30の記憶部37やユーザPC40の記憶部43に記憶する(ステップ302)。また、識別情報取得部303は、ホスト装置10からネットワーク60を介して缶体の識別情報を取得する(ステップ303)。次に、識別情報記憶部304は、取得された識別情報をユーザPC40の記憶部43や印刷装置30の記憶部37等に記憶する(ステップ304)。また、識別情報読取部305は、印刷により缶体に形成された識別情報を読取部33によって読み取る(ステップ305)。また、照合部306は、識別情報読取部305にて読み取られた識別情報と、識別情報記憶部304に記憶された識別情報とを照合する(ステップ306)。また、照合結果出力部307は、
照合部306による照合の結果を、ユーザPC40の表示部46や、ネットワーク60を介してホスト装置10などの外部装置へ出力する(ステップ307)。印刷処理部308は、印刷画像情報記憶部302から印刷画像情報を読み出して、印刷部35による印刷を施す(ステップ308)。具体的には、A社により作成された画像のうち、縮径部に印刷された部分(空に浮かぶ雲を描画した画像)以外の部分(例えばビルの部分)が缶体の胴部に印刷される。その後、印刷結果出力部309が、通信部32、ネットワーク60を介して印刷結果をホスト装置10へ出力して(ステップ309)、処理が終了する。
【0040】
〔缶体の構成〕
次に、本実施の形態にて用いられる缶体、及び印刷が施された後の缶体について、前述の事例に基づいて説明する。
図8(A)~(C)は、本実施の形態が適用される缶体の例を示した図である。
図8(A)は、メーカ側装置20による縮径部71への印刷後、ネッキング加工前のストレート形状の缶体の一例を示している。
図8(B)は、メーカ側装置20によるネッキング加工後、ユーザ側の印刷装置30による印刷前の缶体の一例を示している。
図8(C)は、印刷装置30による印刷後に飲料が充填された、製品としての飲料缶の一例を示している。
図8(A)および(B)に示すように、飲料缶の製品として完成する前の缶体には、縮径部71、胴部72、開口部73、および底部74が存在している。このうち、縮径部71は、缶体の開口部73側に位置する部位であり、ネッキング加工の対象となる。
【0041】
図8(A)に示す缶体は、メーカ側装置20にて、縮径部71に、第1の印刷の一例として空に浮かぶ雲を描画した画像82が印刷されている。また、
図8(A)に示す缶体には、メーカ側装置20にて、外周面75の、胴部72における底部74に近い側に、軸方向に長手となるように、バーコードからなるコード情報81が印刷されている。コード情報81の印刷は、メーカ側装置20の印刷部23にて、縮径部71への画像82の印刷と同時に行うことができる。このようにして形成されるコード情報81は、識別情報の1つとして、印刷装置30の読取部33によって読み取られる。
図8(A)に示す缶体の縮径部71は、外径が胴部72と同径であり、表面も未だ屈曲しておらず、缶体全体がストレート形状となっている。本実施の形態では、メーカ側装置20にて、他と識別するためのコード情報81の形成と併せて、縮径部71に画像82が形成される。
【0042】
図8(B)に示す缶体は、変形処理がなされる前の縮径部71に対して、
図8(A)に示すような第1の印刷がメーカ側装置20にて施された後、メーカ側装置20にてその部位が変形されネッキング加工が施された缶体である。このネッキング加工により、縮径部71の外径が、開口部73に近づくに従い次第に小さくなるように変形され、縮径部71の表面は屈曲している。一方、缶体の胴部72は、円筒状に形成され、缶体の外周面75の主たる面を形成しており、ユーザ側にて、デジタル印刷からなる第2の印刷を施すことが可能である。本実施の形態では、この
図8(B)に示す状態の缶体が、例えばメーカ側装置20が設置される缶体メーカ側から、印刷装置30が設置されるユーザ側に提供される。
【0043】
図8(C)に示す製品としての缶体は、例えば、ユーザ側にて
図8(B)に示す缶体の胴部72に、印刷装置30にて第2の印刷が施された後、
図8(B)に示す缶体の開口部73から、例えば、ビールやチューハイ等のアルコール系飲料や、清涼飲料(非アルコール系飲料)などの飲料が充填される。そして、飲料の充填後、フランジング加工(蓋部材を取り付けるためのフランジを形成する加工)によって缶体の開口部73に蓋部材が取り付けられる。これにより、
図8(C)に示す、飲料が充填された飲料缶が完成する。なお、
図8(C)に示す製品としての缶体は、後述する
図9に示す缶体の胴部に、印刷装置30にて第2の印刷が施されて形成される態様もある。
【0044】
この
図8(C)に示す飲料缶の製品としての缶体は、前述のようにユーザ側の印刷装置30によって胴部72に、第2の印刷の一例としてビル群を描画した画像83が印刷されている。
図8(C)に示す例では、メーカ側で縮径部に印刷された画像82(空に浮かぶ雲を描画した画像)と、ユーザ側で胴部72に印刷された画像83(ビル群を描画した画像)とが関連性を持ち、意味をなす一連の画像84を構成している。言い換えると、最終的にユーザ側にて第2の印刷が施され製品化される缶体について、ユーザ側にて変形処理を行うことの困難性に鑑み、変形を伴う箇所の第1の印刷はユーザ側で行わせずにメーカ側で行うとともに、この第1の印刷と第2の印刷とが意匠として一体化させることが可能である。
【0045】
なお、
図8(A)~(C)に示す例では、印刷装置30が、飲料が充填される前の缶体に対して画像84の一部を印刷しているが、飲料が充填された後の缶体に対して画像84の一部を印刷する態様もある。
図9は、飲料が充填された後の缶体に印刷が施される例を示す図である。
図9に示す缶体には、既に飲料が充填されており、フランジング加工によって蓋部材79が取り付けられている。
図9に示す缶体の縮径部の一部分には、画像82が印刷されている。また、缶体の胴部の一部分には、識別情報としてのコード情報81が印刷されている。
【0046】
この
図9に示す缶体の例は、例えばビール会社などの飲料メーカ以外の者がユーザであるようなケースである。このケースでは、缶体メーカ側で缶体の縮径部71に対する画像の印刷(第1の印刷)とネッキング加工とが行われた後、その缶体が飲料メーカに提供される。そして、飲料メーカにて飲料が充填され、その缶体がユーザ側に提供される。その後、ユーザ側にて、インクジェットのデジタル印刷装置などを用いて、胴部72に第2の印刷が施される。このような形態からなる缶体(飲料が充填されているが印刷される画像が完全ではない缶体)の納入を受けるユーザとしては、例えばイベント会社やホテル、大手スーパーやデパート、コンビニエンスストアなどの小売業者、インターネット上でサービスを提供するプラットフォーマーなどが挙げられる。
【0047】
なお、
図8(A)~(C)、及び
図9に示す例では、縮径部71に画像82が印刷され、缶体の胴部の一部にコード情報81が印刷されているが、画像82とコード情報81との両者が、またはコード情報81だけが縮径部71に印刷される態様もある。
【0048】
以上、詳述したように、本実施の形態によれば、屈曲する印刷面を有する縮径部への第1の印刷とネッキング加工が既に施された缶体が、印刷装置30による第2の印刷の対象とされることになる。これにより、缶体に対する印刷がユーザによって行われた場合であっても、意図する印刷品質が得られる。
【符号の説明】
【0049】
1…缶体印刷システム、10…ホスト装置、20…メーカ側装置、21…制御部、22…通信部、23…印刷部、24…加工部、30…印刷装置、31…制御部、32…通信部、33…読取部、34…支持部、35…印刷部、40…ユーザPC、41…制御部、42…メモリ、43…記憶部、44…通信部、45…操作部