(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】医療用パウチ、医療用ドレープおよび使い捨て医療機器セット
(51)【国際特許分類】
A61B 46/20 20160101AFI20240119BHJP
【FI】
A61B46/20
(21)【出願番号】P 2020087555
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】安部 義雄
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/175700(US,A1)
【文献】特開2010-142356(JP,A)
【文献】特開平05-042950(JP,A)
【文献】特開2003-210487(JP,A)
【文献】特表2008-514354(JP,A)
【文献】特開2005-237895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/00-46/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置時における術野からの液体を上部受液口にて受ける医療用パウチであって、
ドレープ本体の開口近傍に取り付けられる第1シート部と、
前記第1シート部と略同形状であり、使用前の状態において前記第1シート部に重なるとともに、左右方向の両側の側縁部が前記第1シート部と連続する第2シート部と、
前記第1シート部の上端部および前記第2シート部の上端部にて左右方向に沿って延びる塑性変形可能な保形部材と、
を備え、
使用される際に、前記第1シート部の上部と前記第2シート部の上部とが離間することにより、術野からの液体を受ける上部受液口が形成され、
前記保形部材は、前記第2シート部の前記上端部の左右方向の全長に亘って延び、前記第2シート部の左右方向の両端から前記第1シート部の前記上端部の左右方向両端部へと連続して延在して前記上部受液口の形状を維持し、
前記第1シート部の前記上端部の左右方向中央部は、保形部材が設けられない保形部材非存在領域であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用パウチであって、
前記第1シート部の前記上端部の左右方向中央部は前記ドレープ本体に固定され、
前記第1シート部の前記上端部の左右方向両端部は前記ドレープ本体から離間可能であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用パウチであって、
下端部に下部排液口が設けられることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、
前記第1シート部と前記第2シート部とは別部材であり、
前記第1シート部の左右方向の両側の側縁部と前記第2シート部の左右方向の両側の前記側縁部とが互いに接合されることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、
前記第1シート部および前記第2シート部は、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成され、
前記1枚のシート部材の左右方向の前記両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部は、使用前の状態における前記第2シート部の左右方向の中央に位置することを特徴とする医療用パウチ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、
使用前の状態において、前記第2シート部の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、前記第2シート部の前記下部の左右両側の側縁が成す角度は60°以上かつ120°以下であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、
前記第1シート部および前記第2シート部はポリオレフィン系樹脂製であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項8】
医療処置の際に患者を覆う医療用ドレープであって、
術野を露出させる開口を有するドレープ本体と、
前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定されて前記術野からの液体を受ける請求項1ないし7のいずれか1つに記載の医療用パウチと、
を備えることを特徴とする医療用ドレープ。
【請求項9】
使い捨て医療機器セットであって、
請求項8に記載の医療用ドレープを含むことを特徴とする使い捨て医療機器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術時における術野からの液体を受ける医療用パウチ、当該医療用パウチを備える医療用ドレープ、および、当該医療用ドレープを備える使い捨て医療機器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術室において外科手術等の医療処置が行われる際には、不潔領域と定められる患者の体表を医療用のドレープにて覆い、清潔領域を当該不潔領域から隔離することが行われている。当該ドレープでは、患者の手術対象部位である術野をドレープから露出させるための開口が設けられている。
【0003】
ところで、開頭手術や関節鏡を利用した膝関節の手術等では、術野に対して生理食塩水等を連続的あるいは断続的に付与しつつ手術が行われることがある。このような手術に利用されるドレープでは、術野から流れ落ちる生理食塩水や血液等の廃液を受けて所定の廃液タンク等へと送る医療用パウチが、術野を露出させるための開口近傍に取り付けられている。
【0004】
例えば、特許文献1の脳外科手術用のドレープでは、廃液を受ける流水袋のうち手前側の部位において、帯状の枠体を袋体の上縁部に沿って設ける技術が開示されている。当該ドレープでは、金属バーまたは可塑材からなる当該枠体を半円状に湾曲させて袋体の上部開口を半円状に広げることにより、廃液を流水袋に流入しやすくしている。
【0005】
また、特許文献2では、ドレープから独立して使用される関節手術用の大型の受液パウチが開示されている。当該受液パウチは、上方に開口するお椀型であり、側面には患者の腕や脚が挿入される貫通孔が設けられる。当該受液パウチの上部開口の周囲には、ポリエチレンチューブ等の形状保持バーが全周に亘って設けられており、これにより、受液パウチの上部開口の形状が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-210487号公報
【文献】特開2011-254943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の流水袋では、使用前の状態において重なる2枚のシート部のうち、ドレープに固定した状態で手前側となる1枚のシート部のみに枠体が設けられているため、半円状に湾曲させた状態の枠体の両端部を支持する構造が存在しない。このため、流水袋の自重や流水袋内に溜まる廃液の重さ等により、枠体の両端部が左右方向に離れていき、袋体の上部開口を半円状に維持できなくなるおそれがある。その結果、流水袋の上記2枚のシート部の内面同士が貼り付き、流水袋に流入する廃液の排出が阻害されるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2の受液パウチの構造は、ドレープから独立して使用するためのものであり、ドレープに固定される医療用パウチに適用することは困難である。仮に、ドレープに固定される医療用パウチの上部開口に、上述のポリエチレンチューブを全周に亘って設けた場合、当該上部開口を開く際に、医療用パウチの手前側の部位を引っ張って変形させようとすると、ポリエチレンチューブの奥側の部位もつられて大きく変形し、ドレープの術野近傍の部位が意図に反した形状となったり、部分的に引っ張られて破損するおそれがある。あるいは、ポリエチレンチューブの奥側の部位がほとんど変形しない場合は、ポリエチレンチューブの手前側の部位の変形が阻害されて医療用パウチの上部開口が開きにくくなったり、医療用パウチの自重や医療用パウチ内に溜まる廃液の重さ等により、当該手前側の部位が奥側の部位に近づいていき、医療用パウチの上部開口を開いた状態で維持できなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、医療用パウチにおいて、上部受液口を容易に形成するとともに、上部受液口の開口状態を維持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、医療処置時における術野からの液体を上部受液口にて受ける医療用パウチであって、ドレープ本体の開口近傍に取り付けられる第1シート部と、前記第1シート部と略同形状であり、使用前の状態において前記第1シート部に重なるとともに、左右方向の両側の側縁部が前記第1シート部と連続する第2シート部と、前記第1シート部の上端部および前記第2シート部の上端部にて左右方向に沿って延びる塑性変形可能な保形部材とを備え、使用される際に、前記第1シート部の上部と前記第2シート部の上部とが離間することにより、術野からの液体を受ける上部受液口が形成され、前記保形部材は、前記第2シート部の前記上端部の左右方向の全長に亘って延び、前記第2シート部の左右方向の両端から前記第1シート部の前記上端部の左右方向両端部へと連続して延在して前記上部受液口の形状を維持し、前記第1シート部の前記上端部の左右方向中央部は、保形部材が設けられない保形部材非存在領域である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療用パウチであって、前記第1シート部の前記上端部の左右方向中央部は前記ドレープ本体に固定され、前記第1シート部の前記上端部の左右方向両端部は前記ドレープ本体から離間可能である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の医療用パウチであって、下端部に下部排液口が設けられる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、前記第1シート部と前記第2シート部とは別部材であり、前記第1シート部の左右方向の両側の側縁部と前記第2シート部の左右方向の両側の前記側縁部とが互いに接合される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、前記第1シート部および前記第2シート部は、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成され、前記1枚のシート部材の左右方向の前記両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部は、使用前の状態における前記第2シート部の左右方向の中央に位置する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、使用前の状態において、前記第2シート部の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、前記第2シート部の前記下部の左右両側の側縁が成す角度は60°以上かつ120°以下である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、前記第1シート部および前記第2シート部はポリオレフィン系樹脂製である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、医療処置の際に患者を覆う医療用ドレープであって、術野を露出させる開口を有するドレープ本体と、前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定されて前記術野からの液体を受ける請求項1ないし7のいずれか1つに記載の医療用パウチとを備える。
【0018】
請求項9に記載の発明は、使い捨て医療機器セットであって、請求項8に記載の医療用ドレープを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、上部受液口を容易に形成することができるとともに、上部受液口の開口状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態に係るドレープを示す図である。
【
図7】第2の実施の形態に係るパウチを示す正面図である。
【
図10】パウチの使用時の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る医療用ドレープ3を示す図である。医療用ドレープ3(以下、単に「ドレープ3」という。)は、医療施設内において手術等の医療処置が行われる際に患者を覆うことにより、不潔領域である患者の体表から清潔領域を隔離するシート状の部材である。ドレープ3は、例えば、脳外科手術を受ける患者を覆うために利用される。
図1では、ドレープ3の使用前の状態(すなわち、患者を覆っていない状態)を描いている。
【0022】
図1に示すように、ドレープ3は、ドレープ本体31と、医療用パウチ1(以下、単に「パウチ1」という。)とを備える。ドレープ本体31は、患者を覆うシート状の部材である。ドレープ本体31は、例えば、不織布やプラスチックフィルム等により形成される。ドレープ本体31には、患者の手術部位(すなわち、術野)を露出させるための開口310が設けられる。
図1に示す例では、開口310(すなわち、開窓部)は略矩形である。ドレープ本体31は、開口310を有するとともに患者を覆う基布33と、開口310の周囲を囲んで基布33に接合された補助シート32と、を備える。基布33は、例えば、略矩形のシート部材である補助シート32は、例えば、略矩形枠状のシート部材であり、撥液性または吸液性を有する。ドレープ本体31では、補助シート32、基布33および開口310の形状は様々に変更されてよい。例えば、開口310は略円形であってもよく、ドレープ本体31の外縁から延びる略帯状の切れ込み等であってもよい。以下の説明では、ドレープ本体31の患者とは反対側の面を「清潔面311」といい、ドレープ本体31の患者側の面を「不潔面312」という。
図1では、清潔面311を手前側にしてドレープ3を描いている。
【0023】
パウチ1は、ドレープ本体31の清潔面311上において、開口310近傍に固定される。パウチ1は、医療処置時における術野からの液体(例えば、血液、体液、および、術野の洗浄に利用された生理食塩水等であり、以下、「廃液」とも呼ぶ。)を受ける、いわゆる受水袋である。ドレープ3に設けられるパウチ1の数は2以上であってもよい。例えば、2つのパウチ1が、ドレープ3の開口310近傍において、開口310を挟んで配置されてもよい。
【0024】
パウチ1は、使用前の状態においてシート状の柔軟な部材である。パウチ1は、ドレープ本体31の開口310の
図1中における下側に配置される。パウチ1の
図1中における上端部には、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける上部受液口21が設けられる。
図1に示す例では、使用前の状態のパウチ1は略三角形である。パウチ1の
図1中における左右方向の幅は、下側に向かうに従って(すなわち、開口310から離れるに従って)漸次減少する。パウチ1の
図1中における下端部には、上部受液口21にて受けた液体を排出する下部排液口22が設けられる。下部排液口22には、図示省略の排液ホースを連結するための略円筒状の導管部24が設けられる。導管部24には、液体を吸引するためのポンプが接続されてもよい。
【0025】
以下の説明では、
図1中の上下方向および左右方向を、単に「上下方向」および「左右方向」とも呼ぶ。また、
図1の紙面に垂直な方向の手前側および奥側を、単に「手前側」および「奥側」とも呼ぶ。なお、上述の上下方向は、ドレープ3が実際に使用される際の重力方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0026】
ドレープ3は、
図2に示すように、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療機器のセットである使い捨て医療機器セット6に含まれている。使用前のドレープ3は、例えば、略矩形状に折り畳まれた状態で、使い捨て医療機器セット6のトレイ61に収容され、トレイ61は、二点鎖線にて描く包装袋62内に収容される。
【0027】
図3および
図4は、使用前の状態(すなわち、上部受液口21が開かれていない状態)のシート状のパウチ1を拡大して示す平面図である。
図3は、パウチ1の手前側の面を示す正面図であり、
図4は、パウチ1の奥側(すなわち、ドレープ本体31に接触する側)の面を示す背面図である。
図5は、パウチ1を
図3中のV-Vの位置にて切断した断面図である。
図6は、使用状態(すなわち、上部受液口21が開かれた状態)のパウチ1を示す斜視図である。
【0028】
パウチ1は、容易に変形可能な柔軟な材料により形成された略同形状の2つのシート部11,12を備える。
図3ないし
図5に示すように、使用前の状態のパウチ1では、2つのシート部11,12はほぼ重なっている。以下の説明では、2つのシート部11,12をそれぞれ、「第1シート部11」および「第2シート部12」と呼ぶ。第1シート部11および第2シート部12は、好ましくは、透明または半透明の樹脂材料により形成される。第1シート部11および第2シート部12は、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂製である。第1シート部11および第2シート部12は、好ましくはポリエチレン製であり、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)製である。
【0029】
図3および
図4に示す例では、使用前の状態における第1シート部11および第2シート部12は略三角形であり、図中の上側から下方に向かうに従って(すなわち、上部受液口21から上下方向において離れるに従って)、左右方向の幅が漸次減少する。第1シート部11の左右方向の両側の側縁部は、第2シート部12の左右方向の両側の側縁部と、上端部から下端部に至るまで連続する。なお、第1シート部11の上縁部と第2シート部12の上縁部とは連続していない。
【0030】
第1シート部11および第2シート部12の形状は、略三角形には限定されず、様々に変更されてよい。好ましくは、第1シート部11および第2シート部12の少なくとも下部の左右方向の幅は、下方に向かうに従って漸次減少し、下端にて1つの頂点を形成する。換言すれば、第1シート部11および第2シート部12は、1つの頂点が下端に位置する略三角形や略五角形等の多角形であることが好ましい。第1シート部11および第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度α(すなわち、内角)は、好ましくは60°以上かつ120°以下であり、より好ましくは80°以上かつ100°以下である。
【0031】
図1に示すように、ドレープ3では、第1シート部11の上端部がドレープ本体31の開口310近傍に取り付けられることにより、パウチ1がドレープ本体31に固定される。
図1および
図6に示す例では、第1シート部11の上端部の外面(すなわち、第2シート部12とは反対側の面)が、両面テープ等の粘着層により、ドレープ本体31の清潔面311に固定される。具体的には、第1シート部11の上端部の外面は、補助シート32の下端部と基布33との間に挟まれ、基布33の清潔側の面に上記粘着層により固定される。
図4では、第1シート部11のうち、ドレープ本体31の清潔面311(具体的には、基布33の清潔側の面)に固定される領域113に平行斜線を付す。以下の説明では、当該領域113を「固定領域113」とも呼ぶ。補助シート32の下端部は、第1シート部11の上縁を上下方向に跨いで第1シート部11の上端部の内面(すなわち、第2シート部12と対向する側の面)に接合される。具体的には、補助シート32の下縁から上方に延びる2本のスリットが設けられ、当該2本のスリットの間にて左右方向に延びる略矩形状の部位321が、第1シート部11の上端部の内面上に重なり、当該内面に両面テープ等の粘着層により固定される。以下の説明では、補助シート32のうち、第1シート部11の内面上に積層されて固定される当該部位321を「積層部321」とも呼ぶ。
【0032】
図4に示す例では、固定領域113の左右方向の幅は、第1シート部11の上端部の左右方向の幅よりも小さい。固定領域113は、第1シート部11の上端部の左右方向中央部に設けられる。第1シート部11の上端部の左右方向両端部は、固定領域113の左右方向の側縁よりも左右方向の外側に位置しており、ドレープ本体31には接合されない。すなわち、第1シート部11の上端部のうち、左右方向中央部はドレープ本体31に固定され、左右方向両端部は、ドレープ本体31に固定されず、ドレープ本体31から離間可能とされる。上記補助シート32の積層部321の左右方向の幅は、固定領域113の左右方向の幅と略同じであり、固定領域113と積層部321とは、左右方向の略同じ位置に位置する。なお、積層部321の左右方向の幅は、固定領域113の左右方向の幅よりも短くてもよく、長くてもよい。また、第1シート部11のドレープ本体31への固定は、上記例には限定されず、様々な方法により行われてよい。
【0033】
図3および
図4に示す例では、第1シート部11と第2シート部12とは別部材(すなわち、個別のシート部材)であり、第1シート部11の左右方向の両側の側縁部と、第2シート部12の左右方向の両側の側縁部とが、互いに接合されている。第1シート部11の両側縁部と第2シート部12の両側縁部との接合は、例えば、ヒートシールにより行われる。これにより、ドレープ本体31の左右方向の両側に、第1シート部11と第2シート部12との接合部である略帯状のシール部13が設けられる。2つのシール部13は、第1シート部11および第2シート部12の左右方向の両側において上下方向に沿って延びる。
【0034】
パウチ1は、第1シート部11および第2シート部12の上端部にて左右方向に沿って延びる保形部材4をさらに備える。
図3および
図4に示す例では、保形部材4は、第1シート部11および第2シート部12の上端縁に沿って設けられる略帯状の部材である。保形部材4の上下方向の幅は、例えば、5mm~15mmである。保形部材4の形状は、略帯状には限定されず、略線状または略管状等、様々に変更されてよい。保形部材4は、例えば、
図5に示すように、第2シート部12の上端部が折り返され、折り返された部位の下端が対向する部位に接合されることにより形成された筒状部(すなわち、断面ループ状の部位)に、側方から挿入されて保持される。第1シート部11の上端部においても同様である。なお、保形部材4は上記以外の様々な方法により第1シート部11および第2シート部12の上端部に配置されてもよい。例えば、保形部材4は、両面テープ等の粘着層を介して第1シート部11および第2シート部12に接合されてもよい。保形部材4は、塑性変形可能な材料(例えば、樹脂または金属)により形成される。保形部材4は、第1シート部11および第2シート部12よりも高い剛性を有する。
【0035】
保形部材4は、第2シート部12の上端部において左右方向の全長に亘って延び、第2シート部12の左右方向の両端から第1シート部11の上端部の左右方向両端部へと連続して延在する。保形部材4のうち、第2シート部12に設けられる部位41(以下、「保形前部41」と呼ぶ。)と、第1シート部11に設けられる2つの部位42(以下、「保形後部42」と呼ぶ。)とは、一繋がりの連続する部材である。第1シート部11の上端部のうち、2つの保形後部42の間の部位は、保形部材4が設けられない領域である。換言すれば、第1シート部11の上端部の左右方向中央部は、保形部材非存在領域115である。
図4に示す例では、保形部材非存在領域115の左右方向の幅は、各保形後部42の左右方向の幅(すなわち、左右方向の長さ)よりも長い。なお、保形部材非存在領域115の左右方向の幅は、各保形後部42の左右方向の幅と同じであってもよく、各保形後部42の左右方向の幅よりも短くてもよい。各保形後部42の左右方向の幅は、例えば、第1シート部11の上端部の左右方向の全長の10%~45%である。
【0036】
図4に示す例では、上述の固定領域113の左右方向の幅は、保形部材非存在領域115の左右方向の幅よりも長い。固定領域113は、第1シート部11の上端部のうち保形部材非存在領域115、および、保形部材4の保形後部42の左右方向内端部(すなわち、保形後部42のうち保形部材非存在領域115に隣接する部位)と重なる。また、固定領域113は、保形後部42の上記内端部以外の部位とは重ならない。換言すれば、第1シート部11の上端部は、左右方向中央部においてドレープ本体31に固定され、左右方向両端部においてドレープ本体31から離間可能である。
図4に示す例では、第1シート部11の上端部の左右方向中央部は、保形部材非存在領域115の全長に亘るとともに、保形部材非存在領域115の左右両側に延在する部位である。また、第1シート部11の上端部の左右方向両端部には、保形後部42が存在する。なお、固定領域113の左右方向の幅は、保形部材非存在領域115の左右方向の幅と略同じであってもよい。この場合も、上記と同様に、第1シート部11の上端部は、保形部材非存在領域115の左右方向の略全長に亘ってドレープ本体31に固定される。また、固定領域113の左右方向の幅は、保形部材非存在領域115の左右方向の幅よりも短くてもよい。この場合、第1シート部11の上端部は、保形部材非存在領域115の左右方向中央部のみにおいてドレープ本体31に固定され、保形部材非存在領域115の左右方向両端部は、ドレープ本体31から離間可能である。
【0037】
ドレープ3が使用される際には、
図6に示すように、パウチ1の第2シート部12の上部が手前側に引っ張られ、第1シート部11の上部と第2シート部12の上部とが離間する。これにより、パウチ1の上端に、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける上部受液口21が形成される。第1シート部11と第2シート部12とは上端部から下端部まで離間し、これにより、パウチ1が略筒状となる。
【0038】
上部受液口21が形成される際には、保形部材4は、第2シート部12の上部の第1シート部11からの離間に伴って塑性変形し、上部受液口21の形状を維持する。具体的には、第2シート部12に設けられた保形前部41の左右方向中央部が、第1シート部11から離れる方向へと突出するように略円弧状に湾曲する。また、保形前部41の左右方向端部および保形後部42の左右方向端部は、左右方向の外側に向かって突出するように略円弧状に湾曲する。換言すれば、保形部材4のうちパウチ1の両側端部近傍の部位43(すなわち、2つのシール部13近傍の部位であり、以下、「側方湾曲部43」とも呼ぶ。)は、左右方向において互いに離れる方向へと突出するように湾曲する。
【0039】
上述のように、第1シート部11の上端部の左右方向中央部は、保形部材4が存在しない保形部材非存在領域115である。また、第1シート部11の上端部では、保形後部42が存在する左右方向両端部はドレープ本体31に接合されていない。このため、保形部材4が湾曲される際に、ドレープ本体31の第1シート部11との接合部が変形することが抑制される。また、側方湾曲部43の湾曲に伴って、第1シート部11の上端部の左右方向両端部は、ドレープ本体31から手前側に離間し、ドレープ本体31から独立して自由に変形する。したがって、ドレープ本体31の開口310近傍の部位が、保形部材4の変形に伴って意図しない形状に変形することが防止または抑制される。また、第1シート部11の上端部が、保形部材4の変形の際にドレープ本体31から剥離してドレープ本体31が損傷することが防止される。
【0040】
パウチ1では、
図6中の手前側に向かって湾曲する保形前部41の中央部が、左右方向の両側において側方湾曲部43により支持されている。このため、第2シート部12の自重やパウチ1内に溜まる廃液の重さ等により、保形前部41の湾曲を減少させて第1シート部11に近付けようとする力が働いた場合であっても、当該力は、側方湾曲部43をさらに湾曲させる程大きくはないため、両側の側方湾曲部43に支持されている保形前部41の変形が抑制される。その結果、パウチ1の上部受液口21の形状が維持され、第1シート部11および第2シート部12の内面同士が貼り付く(すなわち、密着する)ことが防止または抑制される。
【0041】
パウチ1の上部受液口21から流入した廃液は、第1シート部11と第2シート部12との間の筒状の空間を下方へと流れ、下部排液口22からパウチ1の外部へと排出される。下部排液口22から排出された廃液は、例えば、図示省略の排液ホース等を介して、所定の廃液タンク等へと導かれる。
【0042】
以上に説明したように、パウチ1は、第1シート部11と、第2シート部12と、保形部材4とを備える。第1シート部11は、ドレープ本体31の開口310近傍に取り付けられる。第2シート部12は、第1シート部11と略同形状であり、使用前の状態において第1シート部11に重なる。また、第2シート部12の左右方向の両側の側縁部は、第1シート部11と連続する。保形部材4は、第1シート部11の上端部および第2シート部12の上端部にて左右方向に延びる塑性変形可能な部材である。
【0043】
パウチ1が使用される際には、第1シート部11の上部と第2シート部12の上部とが離間することにより、術野からの液体を受ける上部受液口21が形成される。保形部材4は、第2シート部12の上端部の左右方向の全長に亘って延び、第2シート部12の左右方向の両端から第1シート部11の上端部の左右方向両端部へと連続して延在する。保形部材4は、上部受液口21の形状を維持する。第1シート部11の上端部の左右方向中央部は、保形部材4が設けられない保形部材非存在領域115である。
【0044】
これにより、上述のように、ドレープ本体31の開口310近傍の部位の変形を抑制しつつ、上部受液口21を容易に形成することができる。また、保形部材4の保形前部41が側方湾曲部43により左右方向の両側から支持されるため、パウチ1の自重や廃液の重さによる保形部材4の変形を抑制することができ、上部受液口21の開口状態を好適に維持することができる。その結果、第1シート部11の内面と第2シート部12の内面との貼り付き(すなわち、パウチ1を形成するシート部の内面同士の貼り付き)を防止または抑制することができる。したがって、術野からの液体がパウチ1により受けられずに周囲に流れることを防止または抑制することができ、また、パウチ1により受けられた廃液をパウチ1の下端部へと円滑に流下させることができる。
【0045】
上述のように、好ましくは、第1シート部11の上端部の左右方向中央部はドレープ本体31に固定され、第1シート部11の上端部の左右方向両端部はドレープ本体31から離間可能である。これにより、保形部材4が変形されて上部受液口21が形成される際に、ドレープ本体31の開口310近傍の部位に、意図しない変形や損傷が生じることを防止または抑制することができる。
【0046】
パウチ1では、下端部に下部排液口22が設けられることが好ましい。パウチ1では、上述のように、第1シート部11と第2シート部12との貼り付きを抑制することができるため、上部受液口21から流入した廃液の流下が阻害されることが抑制される。したがって、下部排液口22からの廃液の排出を円滑に行うことができる。
【0047】
上述のように、好ましくは、第1シート部11と第2シート部12とは別部材であり、第1シート部11の左右方向の両側の側縁部と第2シート部12の左右方向の両側の側縁部とが互いに接合される。これにより、パウチ1を製造する際に、第1シート部11および第2シート部12の材料となる予定のシート部材を広げるためのスペースを小型化することができる。その結果、パウチ1の製造に要するスペースを小型化することができる。
【0048】
上述のように、好ましくは、使用前の状態において第2シート部12の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度αは、60°以上かつ120°以下である。角度αが120°以下とされることにより、第2シート部12の上部の幅が広くなって当該上部が自重により垂れ下がることを抑制し、上部受液口21の開口状態を、より好適に維持することができる。また、上部受液口21から流入した廃液を、パウチ1の下端部へとさらに円滑に流下させることができる。上部受液口21の開口状態の維持、および、廃液の流下の円滑化という観点からは、角度αは100°以下であることがさらに好ましい。一方、角度αが60°以上とされることにより、上部受液口21の左右方向の幅を、ある程度以上大きくすることができる。上部受液口21の幅を確保するという観点からは、角度αは80°以上であることがさらに好ましい。
【0049】
上述のように、第1シート部11および第2シート部12はポリオレフィン系樹脂製であることが好ましい。このように、比較的硬い材料で第1シート部11および第2シート部12を形成することにより、上部受液口21の開口状態をさらに好適に維持することができる。また、第2シート部12の上記垂れ下がりをさらに抑制することができる。当該観点からは、第1シート部11および第2シート部12は、ポリエチレン製であることがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン製であることが、より一層好ましい。
【0050】
上述のように、ドレープ3は、術野を露出させる開口310を有するドレープ本体31と、ドレープ本体31の清潔面311上において開口310近傍に固定されて術野からの液体を受ける上記パウチ1と、を備える。当該ドレープ3では、上述のように、ドレープ本体31の開口310近傍の部位の変形を抑制しつつ上部受液口21を容易に形成し、上部受液口21の開口状態を維持することができる。このため、ドレープ3を使用する脳外科手術等の医療処置を、容易かつ円滑に実施することができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るパウチ1aについて説明する。
図7および
図8は、使用前の状態(すなわち、上部受液口21が開かれていない状態)のシート状のパウチ1aを示す平面図である。
図7は、パウチ1aの手前側の面を示す正面図であり、
図8は、パウチ1aの奥側の面を示す背面図である。
図9は、パウチ1aを
図7中のIX-IXの位置にて切断した断面図である。
図10は、使用状態(すなわち、上部受液口21が開かれた状態)のパウチ1aを示す斜視図である。パウチ1aは、例えば、関節鏡を利用した膝関節の手術に利用される。パウチ1aの構成のうち上述のパウチ1と同様の構成には、以下の説明において同符号を付す。
【0052】
パウチ1aは、
図1に示すパウチ1と同様に、ドレープ本体31の清潔面311上において開口310近傍に固定され、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける。パウチ1aの上端部には、術野からの液体を受ける上部受液口21が設けられる。
図7および
図8に示す例では、使用前の状態のパウチ1aは略五角形である。パウチ1aの左右方向の幅は、パウチ1aの上部において略一定であり、パウチ1aの下部では下側に向かうに従って漸次減少する。パウチ1aの下端部には、上部受液口21にて受けた液体を排出する下部排液口22が設けられる。下部排液口22には、図示省略の排液ホースやポンプ等を連結するための略円筒状の導管部24が設けられる。パウチ1aが設けられたドレープ3も、上述のように、折り畳まれた状態で使い捨て医療機器セット6(
図2参照)に収容される。
【0053】
パウチ1aは、容易に変形可能な柔軟な材料により形成された略同形状の第1シート部11aおよび第2シート部12aを備える。
図7ないし
図9に示すように、使用前の状態のパウチ1aでは、第1シート部11aおよび第2シート部12aはほぼ重なっている。第1シート部11aおよび第2シート部12aは、上述の第1シート部11および第2シート部12と同様に、好ましくは、透明または半透明の樹脂材料により形成される。第1シート部11aおよび第2シート部12aは、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂製である。第1シート部11aおよび第2シート部12aは、好ましくはポリエチレン製であり、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)製である。
【0054】
図7および
図8に示す例では、使用前の状態における第1シート部11aおよび第2シート部12aは略五角形である。第1シート部11aおよび第2シート部12aの左右方向の幅は、上部において略一定であり、下部では、図中の上側から下方に向かうに従って(すなわち、上部受液口21から上下方向において離れるに従って)漸次減少する。第1シート部11aの左右方向の両側の側縁部は、第2シート部12aの左右方向の両側の側縁部と、上端部から下端部に至るまで連続する。なお、第1シート部11aの上縁部と第2シート部12aの上縁部とは連続していない。
【0055】
第1シート部11aおよび第2シート部12aの形状は、略五角形には限定されず、様々に変更されてよい。好ましくは、第1シート部11aおよび第2シート部12aの少なくとも下部の左右方向の幅は、下方に向かうに従って漸次減少し、下端にて1つの頂点を形成する。換言すれば、第1シート部11aおよび第2シート部12aは、1つの頂点が下端に位置する略三角形や略五角形等の多角形であることが好ましい。第1シート部11aおよび第2シート部12aの下部の左右両側の側縁が成す角度α(すなわち、内角)は、好ましくは60°以上かつ120°以下であり、より好ましくは80°以上かつ100°以下である。
【0056】
パウチ1aの第1シート部11aの上端部は、上述のパウチ1と略同様に、ドレープ本体31の開口310(
図1参照)近傍に取り付けられる。これにより、パウチ1aがドレープ本体31に固定される。第1シート部11aがドレープ本体31に固定される際には、例えば上述のように、第1シート部11aの上端部の外面における固定領域113が、両面テープ等の粘着層により基布33の清潔側の面に固定される。また、補助シート32の下端部における積層部321は、第1シート部11aの上縁を上下方向に跨いで、第1シート部11aの上端部の内面に両面テープ等の粘着層により接合される。固定領域113の左右方向の幅は、第1シート部11aの上端部の左右方向の幅よりも小さく、当該上端部の左右方向中央部に設けられる。固定領域113の左右方向の幅は、積層部321の左右方向の幅と同じであってもよく、積層部321の左右方向幅よりも長くても短くてもよい。なお、第1シート部11aのドレープ本体31への固定は、上記例には限定されず、様々な方法により行われてよい。
【0057】
第1シート部11aおよび第2シート部12aは、1枚のシート部材(すなわち、一繋がりのシート状の部材)から形成される。具体的には、まず、1枚のシート部材を準備する。当該シート部材の広げた状態における形状は、例えば、略五角形である。続いて、当該シート部材を、下端部が上述の頂点となるように左右方向に筒状(本実施の形態では、下端部が尖った逆円錐状)に丸める。次に、当該シート部材の左右方向の両端部(すなわち、左右両側の側縁部)を、上端部から下端部までヒートシール等により接合することにより、上下方向に沿って延びる略帯状の1つのシール部13aが形成される。
【0058】
そして、シール部13aを手前側の中央(すなわち、第2シート部12aの左右方向の中央となる予定の位置)に位置させた状態で、当該筒状のシート部材の手前側の部位(すなわち、第2シート部12a)が奥側の部位(すなわち、第1シート部11a)上に重ねられて略平面状とされることにより、使用前の状態のパウチ1aが形成される。
図7に示すように、使用前の状態におけるパウチ1aでは、第2シート部12aの中央に上述のシール部13aが位置する。また、シール部13aは、第1シート部11aには設けられない。第1シート部11aは、上述の1枚のシート部材を広げた状態で、左右方向の中央部に相当し、第2シート部12aは、当該中央部の左右両側の部位に相当する。
【0059】
パウチ1aは、
図3ないし
図6に示すパウチ1と同様に、上述の塑性変形可能な保形部材4をさらに備える。保形部材4は、第1シート部11aおよび第2シート部12aの上端部にて左右方向に沿って延びる。
図7および
図8に示す例では、保形部材4は、第1シート部11aおよび第2シート部12aの上端縁に沿って設けられる略帯状の部材である。
【0060】
保形部材4は、第2シート部12aの上端部において左右方向の全長に亘って延び、第2シート部12aの左右方向の両端から第1シート部11aの上端部の左右方向両端部へと連続して延在する。保形部材4では、第2シート部12aに設けられる保形前部41と、第1シート部11aの左右方向両端部に設けられる2つの保形後部42とは、上述のように一繋がりの部材である。また、第1シート部11aの上端部の左右方向中央部は、保形部材非存在領域115である。
【0061】
図8に示す例では、上述の固定領域113は、第1シート部11aの上端部のうち保形部材非存在領域115のみと重なり、保形部材4の保形後部42とは重ならない。換言すれば、第1シート部11aの上端部は、保形部材非存在領域115のみにおいてドレープ本体31に固定され、保形部材非存在領域115の左右方向両側の部位(すなわち、保形後部42が存在する部位)は、ドレープ本体31から離間可能である。
図8に示す例では、固定領域113の左右方向の幅は、保形部材非存在領域115の左右方向の幅と略同じであるため、第1シート部11aの上端部は、保形部材非存在領域115の左右方向の略全長に亘ってドレープ本体31に固定される。これにより、保形部材4が変形されて上部受液口21が形成される際に、ドレープ本体31の開口310近傍の部位の意図しない変形や損傷を、より一層防止または抑制することができる。なお、固定領域113の左右方向の幅は、保形部材非存在領域115の左右方向の幅よりも長くても短くてもよい。
【0062】
ドレープ3が使用される際には、
図10に示すように、パウチ1aの第2シート部12aの上部が手前側に引っ張られ、第1シート部11aの上部と第2シート部12aの上部とが離間する。これにより、パウチ1aの上端に、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける上部受液口21が形成される。第1シート部11aと第2シート部12aとは上端部から下端部まで離間し、これにより、パウチ1aが略筒状となる。
【0063】
上部受液口21が形成される際には、上述のパウチ1の場合と同様に、第2シート部12aに設けられた保形前部41の左右方向中央部が、第1シート部11aから離れる方向へと突出するように略円弧状に湾曲する。また、保形前部41の左右方向端部および保形後部42の左右方向端部(すなわち、側方湾曲部43)は、左右方向の外側に向かって突出するように略円弧状に湾曲する。このように、保形部材4が塑性変形することにより、上部受液口21の形状が維持される。
【0064】
以上に説明したように、パウチ1aは、パウチ1と同様に、第1シート部11aと、第2シート部12aと、保形部材4とを備える。第1シート部11aは、ドレープ本体31の開口310近傍に取り付けられる。第2シート部12aは、第1シート部11aと略同形状であり、使用前の状態において第1シート部11aに重なる。また、第2シート部12aの左右方向の両側の側縁部は、第1シート部11aと連続する。保形部材4は、第1シート部11aの上端部および第2シート部12aの上端部にて左右方向に延びる塑性変形可能な部材である。
【0065】
パウチ1aが使用される際には、第1シート部11aの上部と第2シート部12aの上部とが離間することにより、術野からの液体を受ける上部受液口21が形成される。保形部材4は、第2シート部12aの上端部の左右方向の全長に亘って延び、第2シート部12aの左右方向の両端から第1シート部11aの上端部の左右方向両端部へと連続して延在する。保形部材4は、上部受液口21の形状を維持する。第1シート部11aの上端部の左右方向中央部は、保形部材4が設けられない保形部材非存在領域115である。
【0066】
これにより、パウチ1と同様に、ドレープ本体31の開口310近傍の部位の変形を抑制しつつ、上部受液口21を容易に形成することができる。また、パウチ1aの自重や廃液の重さによる保形部材4の変形を抑制することができ、上部受液口21の開口状態を好適に維持することができる。その結果、第1シート部11aの内面と第2シート部12aの内面との貼り付きを防止または抑制することができる。
【0067】
上述のように、好ましくは、第1シート部11aおよび第2シート部12aは、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成され、当該1枚のシート部材の左右方向の両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部13aは、使用前の状態における第2シート部12aの左右方向の中央に位置する。
【0068】
シール部13aは、第2シート部12aのうちシール部13a近傍の部位に対して、略垂直に手前側に突出する。当該シール部13aは、第2シート部12aよりも高い剛性を有する。シール部13aは、第2シート部12aの自重等による変形を抑制する桁構造として働く。これにより、第2シート部12aが自重等により垂れ下がることが抑制される。その結果、パウチ1aの上部受液口21の開口状態を、さらに好適に維持することができる。また、第1シート部11aおよび第2シート部12aの内面同士が貼り付くことを防止、または、より一層抑制することができる。
【0069】
上述のパウチ1,1a、ドレープ3および使い捨て医療機器セット6では、様々な変更が可能である。
【0070】
例えば、使用前のパウチ1の形状は、様々に変更されてよい。例えば、使用前のパウチ1では、第1シート部11および第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度αは、120°よりも大きくてもよく、60°未満であってもよい。また、使用前のパウチ1の形状(すなわち、第1シート部11および第2シート部12の形状)は、略三角形には限定されず、様々に変更されてよい。使用前のパウチ1aの形状(すなわち、第1シート部11aおよび第2シート部12aの形状)も同様に、様々に変更されてよい。使用前のパウチ1,1aの形状は、例えば略矩形であってもよい。
【0071】
パウチ1,1aの材料は、必ずしもポリオレフィン系樹脂には限定されず、様々に変更されてよい。
【0072】
パウチ1,1aでは、シール部13,13aの形状、数および配置は、パウチ1,1aの製造方法等に合わせて、様々に変更されてよい。例えば、パウチ1では、2つのシール部13がそれぞれ、第1シート部11の左右方向中央、および、第2シート部12の左右方向中央に配置されてもよい。この場合、パウチ1aと同様に、シール部13が桁構造として働くため、第1シート部11および第2シート部12の上部が垂れ下がることを防止または抑制することができる。また、シール部13,13aは、ヒートシール以外の様々な接合方法により形成されてもよい。
【0073】
パウチ1,1aの内部(すなわち、第1シート部11,11aと第2シート部12,12aとの間)には、術野からの液体中の固形物を補足するためのメッシュ部材または多数の穴が形成されたシート部材が設けられてもよい。また、パウチ1,1aでは、下部排液口22は省略されてもよい。
【0074】
パウチ1,1aでは、第1シート部11,11aの上端部の左右方向両端部は、必ずしもドレープ本体31から離間可能である必要はなく、ドレープ本体31の清潔面311に固定されていてもよい。
【0075】
パウチ1,1aは、上述のドレープ本体31とは異なる形状のドレープ本体に固定されて利用されてもよく、ドレープ本体に固定されることなく単体にて利用されてもよい。また、パウチ1,1a、および、ドレープ3は、脳外科手術や膝関節手術以外の手術(例えば、泌尿器科手術)に利用されてもよい。パウチ1,1a、および、ドレープ3は、必ずしも使い捨て医療機器セット6に含まれる必要はない。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0077】
1,1a パウチ
3 ドレープ
4 保形部材
6 使い捨て医療機器セット
11,11a 第1シート部
12,12a 第2シート部
21 上部受液口
22 下部排液口
31 ドレープ本体
115 保形部材非存在領域
310 (ドレープ本体の)開口