(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】医療用パウチ、医療用ドレープおよび使い捨て医療機器セット
(51)【国際特許分類】
A61B 46/20 20160101AFI20240119BHJP
【FI】
A61B46/20
(21)【出願番号】P 2020087556
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】安部 義雄
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-042950(JP,A)
【文献】特開2013-126572(JP,A)
【文献】米国特許第5618278(US,A)
【文献】特開2003-210487(JP,A)
【文献】特表2008-514354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/00-46/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置時における術野からの液体を上部受液口にて受ける医療用パウチであって、
ドレープ本体の開口近傍に取り付けられる第1シート部と、
前記第1シート部と略同形状であり、使用前の状態において前記第1シート部に重なるとともに、左右方向の両側の側縁部が前記第1シート部と連続する第2シート部と、
を備え、
前記第1シート部および前記第2シート部は、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成され、
前記1枚のシート部材の左右方向の前記両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部は、使用前の状態における前記第2シート部の左右方向の中央に位置することを特徴とする医療用パウチ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用パウチであって、
下端部に下部排液口が設けられることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用パウチであって、
使用前の状態において、前記第2シート部の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、前記第2シート部の前記下部の左右両側の側縁が成す角度は60°以上かつ120°以下であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、
前記第1シート部および前記第2シート部はポリオレフィン系樹脂製であることを特徴とする医療用パウチ。
【請求項5】
医療処置の際に患者を覆う医療用ドレープであって、
術野を露出させる開口を有するドレープ本体と、
前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定されて前記術野からの液体を受ける請求項1ないし4のいずれか1つに記載の医療用パウチと、
を備えることを特徴とする医療用ドレープ。
【請求項6】
使い捨て医療機器セットであって、
請求項5に記載の医療用ドレープを含むことを特徴とする使い捨て医療機器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術時における術野からの液体を受ける医療用パウチ、当該医療用パウチを備える医療用ドレープ、および、当該医療用ドレープを備える使い捨て医療機器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術室において外科手術等の医療処置が行われる際には、不潔領域と定められる患者の体表を医療用のドレープにて覆い、清潔領域を当該不潔領域から隔離することが行われている。当該ドレープでは、患者の手術対象部位である術野をドレープから露出させるための開口が設けられている。
【0003】
ところで、開頭手術や関節鏡を利用した膝関節の手術等では、術野に対して生理食塩水等を連続的あるいは断続的に付与しつつ手術が行われることがある。このような手術に利用されるドレープでは、術野から流れ落ちる生理食塩水や血液等の廃液を受けて所定の廃液タンク等へと送る医療用パウチが、術野を露出させるための開口近傍に取り付けられている。
【0004】
例えば、特許文献1のドレープでは、廃液を受ける流水袋のうち手前側の部位において、帯状の枠体を袋体の上縁部に沿って設ける技術が開示されている。当該ドレープでは、金属バーまたは可塑材からなる当該枠体を半円状に湾曲させて袋体の上部開口を半円状に広げることにより、廃液を流水袋に流入しやすくしている。
【0005】
また、特許文献2では、2枚の略同形状のシート部材を重ね、左右両側縁を接合してシール部を形成した医療用パウチにおいて、各シート部材の下部に保形部材を設ける技術が開示されている。当該医療用パウチでは、当該保形部材を変形させて2枚のシート部材の内面同士を離間させることにより、医療用パウチの下部が閉塞して廃液の排出が阻害されることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-210487号公報
【文献】特開2013-126572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の流水袋では、流水袋の上部が自重により垂れ下がり、流水袋の内面同士が貼り付くおそれがある。その結果、流水袋に流入する廃液の排出が阻害されるおそれがある。上述のように、流水袋には枠体が設けられているが、医療用パウチが大型になると、枠体の剛性では流水袋を構成するシート部材の重量を支えきれず、手前側のシート部材の左右方向の中央部が垂れ下がって、シート部材の内面同士が貼り付くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、医療用パウチを形成するシート部の内面同士の貼り付きを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、医療処置時における術野からの液体を上部受液口にて受ける医療用パウチであって、ドレープ本体の開口近傍に取り付けられる第1シート部と、前記第1シート部と略同形状であり、使用前の状態において前記第1シート部に重なるとともに、左右方向の両側の側縁部が前記第1シート部と連続する第2シート部とを備え、前記第1シート部および前記第2シート部は、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成され、前記1枚のシート部材の左右方向の前記両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部は、使用前の状態における前記第2シート部の左右方向の中央に位置する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療用パウチであって、下端部に下部排液口が設けられる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の医療用パウチであって、使用前の状態において、前記第2シート部の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、前記第2シート部の前記下部の左右両側の側縁が成す角度は60°以上かつ120°以下である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の医療用パウチであって、前記第1シート部および前記第2シート部はポリオレフィン系樹脂製である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、医療処置の際に患者を覆う医療用ドレープであって、術野を露出させる開口を有するドレープ本体と、前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定されて前記術野からの液体を受ける請求項1ないし4のいずれか1つに記載の医療用パウチとを備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、使い捨て医療機器セットであって、請求項5に記載の医療用ドレープを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、医療用パウチを形成するシート部の内面同士の貼り付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一の実施の形態に係るドレープを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る医療用ドレープ3を示す図である。医療用ドレープ3(以下、単に「ドレープ3」という。)は、医療施設内において手術等の医療処置が行われる際に患者を覆うことにより、不潔領域である患者の体表から清潔領域を隔離するシート状の部材である。ドレープ3は、例えば、関節鏡を利用した膝関節の手術を受ける患者を覆うために利用される。
図1では、ドレープ3の使用前の状態(すなわち、患者を覆っていない状態)を描いている。
【0018】
図1に示すように、ドレープ3は、ドレープ本体31と、医療用パウチ1(以下、単に「パウチ1」という。)とを備える。ドレープ本体31は、患者を覆うシート状の部材である。ドレープ本体31は、例えば、不織布やプラスチックフィルム等により形成される。ドレープ本体31には、患者の手術部位(すなわち、術野)を露出させるための開口310が設けられる。
図1に示す例では、開口310(すなわち、開窓部)は略矩形である。ドレープ本体31は、開口310を有するとともに患者を覆う基布33と、開口310の周囲を囲んで基布33に接合された補助シート32と、を備える。基布33は、例えば、略矩形のシート部材である。補助シート32は、例えば、略矩形枠状のシート部材であり、撥液性または吸液性を有する。ドレープ本体31では、補助シート32、基布33および開口310の形状は様々に変更されてよい。例えば、開口310は略円形であってもよく、ドレープ本体31の外縁から延びる略帯状の切れ込み等であってもよい。以下の説明では、ドレープ本体31の患者とは反対側の面を「清潔面311」といい、ドレープ本体31の患者側の面を「不潔面312」という。
図1では、清潔面311を手前側にしてドレープ3を描いている。
【0019】
パウチ1は、ドレープ本体31の清潔面311上において、開口310近傍に固定される。パウチ1は、医療処置時における術野からの液体(例えば、血液、体液、および、術野の洗浄に利用された生理食塩水等であり、以下、「廃液」とも呼ぶ。)を受ける、いわゆる受水袋である。ドレープ3に設けられるパウチ1の数は2以上であってもよい。例えば、2つのパウチ1が、ドレープ3の開口310近傍において、開口310を挟んで配置されてもよい。
【0020】
パウチ1は、使用前の状態においてシート状の柔軟な部材である。パウチ1は、ドレープ本体31の開口310の
図1中における下側に配置される。パウチ1の
図1中における上端部には、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける上部受液口21が設けられる。
図1に示す例では、使用前の状態のパウチ1は略五角形である。パウチ1の
図1中における左右方向の幅は、パウチ1の上部において略一定であり、パウチ1の下部では下側に向かうに従って(すなわち、開口310から離れるに従って)漸次減少する。パウチ1の
図1中における下端部には、上部受液口21にて受けた液体を排出する下部排液口22が設けられる。下部排液口22には、図示省略の排液ホースを連結するための略円筒状の導管部24が設けられる。
【0021】
以下の説明では、
図1中の上下方向および左右方向を、単に「上下方向」および「左右方向」とも呼ぶ。また、
図1の紙面に垂直な方向の手前側および奥側を、単に「手前側」および「奥側」とも呼ぶ。なお、上述の上下方向は、ドレープ3が実際に使用される際の重力方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0022】
ドレープ3は、
図2に示すように、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療機器のセットである使い捨て医療機器セット6に含まれている。使用前のドレープ3は、例えば、略矩形状に折り畳まれた状態で、使い捨て医療機器セット6のトレイ61に収容され、トレイ61は、二点鎖線にて描く包装袋62内に収容される。
【0023】
図3および
図4は、使用前の状態(すなわち、上部受液口21が開かれていない状態)のシート状のパウチ1を拡大して示す平面図である。
図3は、パウチ1の手前側の面を示す正面図であり、
図4は、パウチ1の奥側(すなわち、ドレープ本体31に接触する側)の面を示す背面図である。
図5は、パウチ1を
図3中のV-Vの位置にて切断した断面図である。
図6は、使用状態(すなわち、上部受液口21が開かれた状態)のパウチ1を示す斜視図である。
【0024】
パウチ1は、容易に変形可能な柔軟な材料により形成された略同形状の2つのシート部11,12を備える。
図3ないし
図5に示すように、使用前の状態のパウチ1では、2つのシート部11,12はほぼ重なっている。以下の説明では、2つのシート部11,12をそれぞれ、「第1シート部11」および「第2シート部12」と呼ぶ。第1シート部11および第2シート部12は、好ましくは、透明または半透明の樹脂材料により形成される。第1シート部11および第2シート部12は、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂製である。第1シート部11および第2シート部12は、好ましくはポリエチレン製であり、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)製である。
【0025】
図3および
図4に示す例では、使用前の状態における第1シート部11および第2シート部12は略五角形である。第1シート部11および第2シート部12の左右方向の幅は、上部において略一定であり、下部では、図中の上側から下方に向かうに従って(すなわち、上部受液口21から上下方向において離れるに従って)漸次減少する。第1シート部11の左右方向の両側の側縁部は、第2シート部12の左右方向の両側の側縁部と、上端部から下端部に至るまで連続する。なお、第1シート部11の上縁部と第2シート部12の上縁部とは連続していない。
【0026】
第1シート部11および第2シート部12の形状は、略五角形には限定されず、様々に変更されてよい。好ましくは、第1シート部11および第2シート部12の少なくとも下部の左右方向の幅は、下方に向かうに従って漸次減少し、下端にて1つの頂点を形成する。換言すれば、第1シート部11および第2シート部12は、1つの頂点が下端に位置する略三角形や略五角形等の多角形であることが好ましい。第1シート部11および第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度α(すなわち、内角)は、好ましくは60°以上かつ120°以下であり、より好ましくは80°以上かつ100°以下である。
【0027】
図1に示すように、ドレープ3では、第1シート部11の上端部がドレープ本体31の開口310近傍に取り付けられることにより、パウチ1がドレープ本体31に固定される。
図1および
図6に示す例では、第1シート部11の上端部の外面(すなわち、第2シート部12とは反対側の面)が、両面テープ等の粘着層により、ドレープ本体31の清潔面311に固定される。具体的には、第1シート部11の上端部の外面は、補助シート32の下端部と基布33との間に挟まれ、基布33の清潔側の面に固定される。
図4では、第1シート部11のうち、ドレープ本体31の清潔面311(具体的には、基布33の清潔側の面)に固定される領域113に平行斜線を付す。以下の説明では、当該領域113を「固定領域113」とも呼ぶ。補助シート32の下端部は、第1シート部11の上縁を上下方向に跨いで第1シート部11の上端部の内面(すなわち、第2シート部12と対向する側の面)に接合される。具体的には、補助シート32の下縁から上方に延びる2本のスリットが設けられ、当該2本のスリットの間にて左右方向に延びる略矩形状の部位321が、第1シート部11の上端部の内面上に重なり、当該内面に両面テープ等の粘着層により固定される。以下の説明では、補助シート32のうち、第1シート部11の内面上に積層されて固定される当該部位321を「積層部321」とも呼ぶ。
【0028】
図4に示す例では、固定領域113の左右方向の幅は、第1シート部11の上端部の左右方向の幅よりも小さい。固定領域113は、第1シート部11の上端部の左右方向中央部に設けられる。第1シート部11の上端部の左右方向両端部は、固定領域113の左右方向の側縁よりも左右方向の外側に位置しており、ドレープ本体31には接合されない。すなわち、第1シート部11の上端部のうち、左右方向中央部はドレープ本体31に固定され、左右方向両端部は、ドレープ本体31に固定されず、ドレープ本体31から離間可能とされる。上記補助シート32の積層部321の左右方向の幅は、固定領域113の左右方向の幅と略同じであり、固定領域113と積層部321とは、左右方向の略同じ位置に位置する。なお、積層部321の左右方向の幅は、固定領域113の左右方向の幅よりも短くてもよく、長くてもよい。なお、第1シート部11のドレープ本体31への固定は、上記例には限定されず、様々な方法により行われてよい。
【0029】
第1シート部11および第2シート部12は、1枚のシート部材(すなわち、一繋がりのシート状の部材)から形成される。具体的には、まず、1枚のシート部材を準備する。当該シート部材の広げた状態における形状は、例えば、略五角形である。続いて、当該シート部材を、下端部が上述の頂点となるように左右方向に筒状(本実施の形態では、下端部が尖った逆円錐状)に丸める。次に、当該シート部材の左右方向の両端部(すなわち、左右両側の側縁部)を、上端部から下端部までヒートシール等により接合することにより、上下方向に沿って延びる略帯状の1つのシール部13が形成される。
【0030】
そして、シール部13を手前側の中央(すなわち、第2シート部12の左右方向の中央となる予定の位置)に位置させた状態で、当該筒状のシート部材の手前側の部位(すなわち、第2シート部12)が奥側の部位(すなわち、第1シート部11)上に重ねられて略平面状とされることにより、使用前の状態のパウチ1が形成される。
図3に示すように、使用前の状態におけるパウチ1では、第2シート部12の中央に上述のシール部13が位置する。また、シール部13は、第1シート部11には設けられない。第1シート部11は、上述の1枚のシート部材を広げた状態で、左右方向の中央部に相当し、第2シート部12は、当該中央部の左右両側の部位に相当する。
【0031】
パウチ1は、第2シート部12の上端部にて左右方向に沿って延びる保形部材4をさらに備える。
図3に示す例では、保形部材4は、第2シート部12の上端縁に沿って、第2シート部12の左右方向の略全長に亘って設けられる略帯状の部材である。保形部材4は、第2シート部12の左右方向の全長よりも短くてもよい。保形部材4の上下方向の幅は、例えば、5mm~15mmである。保形部材4の形状は、略帯状には限定されず、略線状または略管状等、様々に変更されてよい。保形部材4は、例えば、
図5に示すように、第2シート部12の上端部が折り返され、折り返された部位の下端が対向する部位に接合されることにより形成された筒状部(すなわち、断面ループ状の部位)に、側方から挿入されて保持される。なお、保形部材4は上記以外の様々な方法により第2シート部12の上端部に配置されてもよい。例えば、保形部材4は、両面テープ等の粘着層を介して第2シート部12に接合されてもよい。保形部材4は、塑性変形可能な材料(例えば、樹脂または金属)により形成される。保形部材4は、第2シート部12よりも高い剛性を有する。
【0032】
ドレープ3が使用される際には、
図6に示すように、パウチ1の第2シート部12の上部が手前側に引っ張られ、第1シート部11の上部と第2シート部12の上部とが離間する。これにより、パウチ1の上端に、術野からの液体(すなわち、廃液)を受ける上部受液口21が形成される。第1シート部11と第2シート部12とは上端部から下端部まで離間し、これにより、パウチ1が略筒状となる。
【0033】
上部受液口21が形成される際には、保形部材4は、第2シート部12の上部の第1シート部11からの離間に伴って塑性変形し、上部受液口21の形状を維持する。具体的には、第2シート部12に設けられた保形部材4の左右方向中央部が、第1シート部11から離れる方向へと突出するように略円弧状に湾曲する。
【0034】
パウチ1では、第2シート部12の左右方向の中央に設けられたシール部13が、第2シート部12のうちシール部13近傍の部位に対して、略垂直に手前側に突出する。当該シール部13は、第2シート部12よりも高い剛性を有する。シール部13は、第2シート部12の自重等による変形を抑制する桁構造として働く。これにより、第2シート部12が自重等により垂れ下がることが抑制される。その結果、パウチ1の上部受液口21の形状が維持され、第1シート部11および第2シート部12の内面同士が貼り付く(すなわち、密着する)ことが防止または抑制される。
【0035】
パウチ1の上部受液口21から流入した廃液は、第1シート部11と第2シート部12との間の筒状の空間を下方へと流れ、下部排液口22からパウチ1の外部へと排出される。下部排液口22から排出された廃液は、例えば、図示省略の排液ホース等を介して、所定の廃液タンク等へと導かれる。
【0036】
以上に説明したように、パウチ1は、第1シート部11と、第2シート部12とを備える。第1シート部11は、ドレープ本体31の開口310近傍に取り付けられる。第2シート部12は、第1シート部11と略同形状であり、使用前の状態において第1シート部11に重なる。また、第2シート部12の左右方向の両側の側縁部は、第1シート部11と連続する。第1シート部11および第2シート部12は、1枚のシート部材を左右方向に筒状に丸めて左右方向の両端部を接合することにより形成される。当該1枚のシート部材の左右方向の両端部が接合されて形成された上下方向に沿って延びる帯状のシール部13は、使用前の状態における第2シート部12の左右方向の中央に位置する。
【0037】
上述のように、パウチ1では、シール部13は、第2シート部12の自重等による変形を抑制する桁構造として働く。このため、第2シート部12が自重等により垂れ下がることが抑制される。その結果、第1シート部11および第2シート部12の内面同士が貼り付くこと(すなわち、パウチ1を形成するシート部の内面同士の貼り付き)を防止または抑制することができる。
【0038】
パウチ1では、下端部に下部排液口22が設けられることが好ましい。パウチ1では、上述のように、第1シート部11と第2シート部12との貼り付きを抑制することができるため、上部受液口21から流入した廃液の流下が阻害されることが抑制される。したがって、下部排液口22からの廃液の排出を円滑に行うことができる。
【0039】
上述のように、好ましくは、使用前の状態において第2シート部12の下部の左右方向の幅は下方に向かうに従って漸次減少し、第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度αは、60°以上かつ120°以下である。角度αが120°以下とされることにより、第2シート部12の上部の幅が広くなって当該上部が自重により垂れ下がることをさらに抑制することができる。また、上部受液口21から流入した廃液を、パウチ1の下端部へとさらに円滑に流下させることができる。上部受液口21の開口状態の維持、および、廃液の流下の円滑化という観点からは、角度αは100°以下であることがさらに好ましい。一方、角度αが60°以上とされることにより、上部受液口21の左右方向の幅を、ある程度以上大きくすることができる。上部受液口21の幅を確保するという観点からは、角度αは80°以上であることがさらに好ましい。
【0040】
上述のように、第1シート部11および第2シート部12はポリオレフィン系樹脂製であることが好ましい。このように、比較的硬い材料で第1シート部11および第2シート部12を形成することにより、第2シート部12の上記垂れ下がりをさらに抑制することができる。当該観点からは、第1シート部11および第2シート部12は、ポリエチレン製であることがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン製であることが、より一層好ましい。
【0041】
上述のように、ドレープ3は、術野を露出させる開口310を有するドレープ本体31と、ドレープ本体31の清潔面311上において開口310近傍に固定されて術野からの液体を受ける上記パウチ1と、を備える。当該ドレープ3では、上述のように、パウチ1の第1シート部11および第2シート部12の内面同士が貼り付くことを防止または抑制することができる。このため、ドレープ3を使用する膝関節手術等の医療処置を、容易かつ円滑に実施することができる。
【0042】
上述のパウチ1、ドレープ3および使い捨て医療機器セット6では、様々な変更が可能である。
【0043】
例えば、使用前のパウチ1の形状は、様々に変更されてよい。例えば、使用前のパウチ1では、第1シート部11および第2シート部12の下部の左右両側の側縁が成す角度αは、120°よりも大きくてもよく、60°未満であってもよい。また、使用前のパウチ1の形状(すなわち、第1シート部11および第2シート部12の形状)は、略五角形には限定されず、様々に変更されてよい。使用前のパウチ1の形状は、例えば、略三角形や略矩形であってもよい。
【0044】
パウチ1の材料は、必ずしもポリオレフィン系樹脂には限定されず、様々に変更されてよい。
【0045】
パウチ1のシール部13は、ヒートシール以外の様々な接合方法により形成されてもよい。
【0046】
パウチ1の内部(すなわち、第1シート部11と第2シート部12との間)には、術野からの液体中の固形物を補足するためのメッシュ部材または多数の穴が形成されたシート部材が設けられてもよい。また、パウチ1では、下部排液口22は省略されてもよい。
【0047】
パウチ1は、上述のドレープ本体31とは異なる形状のドレープ本体に固定されて利用されてもよく、ドレープ本体に固定されることなく単体にて利用されてもよい。また、パウチ1およびドレープ3は、膝関節手術以外の手術(例えば、脳外科手術や泌尿器科手術)に利用されてもよい。パウチ1、および、ドレープ3は、必ずしも使い捨て医療機器セット6に含まれる必要はない。
【0048】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 パウチ
3 ドレープ
6 使い捨て医療機器セット
11 第1シート部
12 第2シート部
13 シール部
21 上部受液口
22 下部排液口
31 ドレープ本体
310 (ドレープ本体の)開口