(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】建材の隅部構造、建材の隅部構造の判別方法および補修方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
E04F13/08 101Q
E04F13/08 E
(21)【出願番号】P 2020112033
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229228
【氏名又は名称】木村プログレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 聡
(72)【発明者】
【氏名】平野 隆雄
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5612458(JP,B2)
【文献】特開2006-257717(JP,A)
【文献】特開昭64-024947(JP,A)
【文献】特開2011-149260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に所定の角度の傾斜面を有する二つの窯業系サイディング材の前記傾斜面同士が突き合わされて隅部が形成される建材の隅部構造であって、
前記二つの窯業系サイディング材同士は、青色の接着剤で接合され、
前記隅部の頂部は略平面状の面取り部を有し、
前記面取り部は前記接着剤を被覆する塗膜を有する、建材の隅部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建材の隅部構造の判別方法であって、
前記面取り部の前記塗膜を除去して前記接着剤を露出させ、
前記接着剤の色に基づいて前記建材の隅部構造を判別する、建材の隅部構造の判別方法。
【請求項3】
請求項1に記載の建材の隅部構造の補修方法であって、
前記塗膜を除去して前記接着剤を露出させ、
前記接着剤の色に基づいて前記建材の隅部構造を判別したのちに、
前記面取り部に前記接着剤を被覆する塗膜を再塗装する、建材の隅部構造の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建材の隅部構造、建材の隅部構造の判別方法および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築物の外壁材として、窯業系サイディング材が広く使用されている。建築物の駆体に例えば平板状の窯業系サイディング材が貼り合わされることによって、外壁が構成される。窯業系サイディング材の端部同士が突き合わされ、接着剤等により接合されることで、外壁の出隅部分や入隅部分が構成される。窯業系サイディング材の端部同士の接合部分が露出していると、外壁の外観を損ね、意匠性が低下する。そのため、接合部分は角を面取りし、上から塗装するなどして露出しないようにすることが好ましい。
【0003】
窯業系サイディング材の出隅や入隅にあっては純正でない製品が使用されることもあり、純正品かどうかを識別するために印刷や刻印などでマークや識別を施すことが行われている。純正品でないサイディング材の出隅や入隅が純正品に混在すると、建物の品質が低下するおそれがある。
【0004】
例えば、純正品であることを示すマークやロゴ、ロット番号を印字することで、サイディング材の生産日時、生産工場、塗装グレードなどが判別可能となる。このようなマーク等は、通常、サイディング材の裏面や他の部材が重なる隠蔽部分などに施されているため、施工後に不具合の発生等により純正品かどうかを確認する必要が生じた場合には、サイディング材を取り外す必要がある。
【0005】
特許文献1には、基材表面の露出部分に刻印を認識可能に有する窯業系サイディング材が開示されている。これにより、施工後に窯業系サイディング材が純正品であるかを確認する際に、サイディング材を取り外す必要がないため、工程を削減し、確認を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、表面に認識可能な刻印を有する場合には、外観に刻印が露出しているため、外壁の意匠性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、端部に所定の角度の傾斜面を有する二つの窯業系サイディング材の前記傾斜面同士が突き合わされて隅部が形成される建材の隅部構造であって、前記二つの窯業系サイディング材同士は、青色の接着剤で接合され、前記隅部の頂部は略平面状の面取り部を有し、前記面取り部は前記接着剤を被覆する塗膜を有する、建材の隅部構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】本発明の外壁パネルの表面を示す図である。
【
図3B】本発明の外壁パネルの裏面を示す図である。
【
図4A】本発明の外壁パネルの表面を示す図である。
【
図4B】本発明の外壁パネルの裏面を示す図である。
【
図5】本発明の隅部の接合部分を示す模式図である。
【
図6】本発明の塗装された隅部の接合部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の隅部構造100は、
図1および
図2に示すように2つの外壁パネル1A,1Bの端部同士が突き合わされて接合されることで構成される。隅部構造100は、2つの外壁パネル1A,1Bが突き合されて構成された隅部の頂部に、略平面状の面取り部10を有する。これらの外壁パネル1A,1Bを上下に複数並べて配置されることで、地面から屋上までの外壁隅部が構成される。
【0011】
2枚の外壁パネル1A,1Bは、建築物の駆体(不図示)に外壁材として取付施工され、互いに端部で突き合わされて隅部を形成する窯業系サイディング材である。
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bに示すように、外壁パネル1A,1Bはそれぞれ、外面部11A,11Bと、上端部12A,12Bと、下端部13A,13Bと、隅部側接合端部14A,14Bと、平面側接合端部15A,15Bと、裏面部16A,16Bと、を有する。
【0012】
窯業系サイディング材は、セメントを主成分とする材料により形成されるものである。窯業系サイディング材は、例えば、原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製される。水硬性膠着材としては、特に限定されない。例えばポルトランドセメント、高炉セメントなどのセメント材料を1種又は複数種で用いることができる。また、セメント材料に、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏などを1種又は複数種、混合してもよい。また、無機充填剤としてはフライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を用いることができる。また、繊維質材料としてはパルプ、合成繊維、無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。
【0013】
外面部11A,11Bは建築物の外観に露出する壁面であり、塗装や表面加工によって意匠が施される。意匠性の観点から、他の外壁パネルとの接合部分において、継ぎ目が視認されないように塗装されることが好ましい。
【0014】
上端部12A,12Bおよび下端部13A,13Bは、上下に並んで配置される別の外壁パネル1A,1Bと接合される部分である。例えば上端部12Aは別の外壁パネル1Aの下端部13Aと、役物を介して接合される。建築物の地面側端や屋上側端においては、予め専用に用意された別のパネルと接合されてもよいし、外壁パネル1Aを切断して端部用のパネルとして使用してもよい。
【0015】
隅部側端部14A,14Bは、外面部11から裏面部16に向かって45°下り傾斜する傾斜面を有し、前記傾斜面同士が接合されることにより、90°の直角隅部が形成される。傾斜面同士の接合には、青色などの高彩度の接着剤2が使用される。これにより、接合面を目視することで、接着剤の色によって建築物の隅部構造が本実施形態の隅部構造100であることを容易に判別できる。他にも、接合された2枚の外壁パネル1A,1Bの検品の際に、接着剤2のはみだし箇所が容易に判別できる。
【0016】
平面側端部15A,15Bは隅部側端部14A,14Bの反対側に位置し、本実施形態においては外壁の平面部分を構成する別の外壁パネル(不図示)と、役物を介して接合される。外壁パネル1A,1Bは、平面側端部15A,15Bの代わりに隅部側端部14A,14Bをもう1つずつ有していてもよく、反対側で別の隅部構造100を形成してもよい。
【0017】
裏面部16A,16Bは、建築物駆体に対向する面であり、取付施工後は建物外観に露出しない。裏面部16A,16Bには、従来同様に製造ロット番号が記載されていてもよい。
【0018】
面取り部10は、2つの外壁パネル1A,1Bが突き合されて構成された隅部の頂部に形成される。面取り部10は、2つの外壁パネル1A,1Bが突き合されたのち、隅部の頂部を切断することによって形成されてもよいし、予め面取り部10を構成する略平面部分を2つの外壁パネル1A,1Bの隅部側端部14A,14Bにそれぞれ形成した後に、2つの外壁パネル1A,1Bを突き合わせて形成されてもよい。
【0019】
接着剤2は、高彩度の色彩を呈するように顔料を含んで構成される。例えば本実施形態の接着剤2は、青色の色彩を呈する。青色であれば、接着剤の色彩が視認されやすい。これにより、接合面を目視することで、接着剤の色によって建築物の隅部構造が本実施形態の隅部構造100であることを容易に判別できる。
【0020】
すなわち、建築物の隅部構造が隅部構造100であれば、隅部構造100の提供者の管轄のもとに施工されたものであることが容易に判別できるため、予め純正品の外壁パネル1A,1Bと所定の色の接着剤2を使用することを施工業者と取り決めておくことで、外壁パネル1A,1Bが純正品であることを容易に判別可能である。
【0021】
他にも、接合された2枚の外壁パネル1A,1Bから接着剤がはみ出すことがあり、従来はブラックライトを使用してはみだし箇所を特定し、はみ出した接着剤2を除去する検品工程を行っていた。接着剤2が高彩度の色彩を有する場合には、ブラックライトを使用することなく接着剤2のはみだし箇所を容易に判別できるため、検品工程が短縮される。
【0022】
接着剤2は、高彩度の色彩を呈する顔料の他、隅部構造100判別可能となる成分を含有していてもよい。例えば隅部構造100に特有の色を設定して、その色を抵触する顔料を含んでいることが好ましい。例えば外壁パネルの製品種ごとに色を設定することで、製品間の識別性が向上する。他にも、ライトの照射により発光するような成分をさらに含んでいてもよい。
【0023】
接着剤2は、例えば高周波誘導加熱により短時間で接着が可能な高周波接着剤で構成される。接着剤2は、例えば湿気硬化型ポリウレタン接着剤であり、ウレタン結合およびイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを主成分とする。イソシアネート基が空気中やパネル基材中の水分と反応してポリウレタンプレポリマーが高分子量化することで、湿気硬化反応が進行し、2枚の外壁パネル1A,1B同士を接合する。
【0024】
ポリウレタン接着剤は、弾性、強靭性、耐摩耗性、耐老化性、耐溶剤性、低温特性に優れる。本実施形態の接着剤2はポリエーテル系のポリウレタン接着剤であり、さらに機械的強度が高く、耐加水分解性にも優れている。接着剤2として、ポリエステル系のポリウレタン接着剤を使用してもよく、優れた耐熱性を有する。
【0025】
隅部構造100は、面取り部10および接着剤2を被覆する塗膜3を有する。塗膜3は、外面部11A,11Bに塗装されるものと同質または統一的な意匠を有するものであることが好ましい。これにより、通常時は塗膜3によって接合部分が被覆されて継ぎ目部分が露出せず、良好な外観の意匠性を有する。
【0026】
施工後の隅部構造100に変形や外れなどの不具合が発生した場合には、外壁パネル1A,1Bが純正品であるか確認する必要がある場合が生じる。このとき、外壁パネル1A,1Bの裏面などにマークがある場合、施工後に純正品かどうかを識別するためには、外壁パネル1A,1Bを建物から取り外して確認しなければならない。施工後に外壁パネル1A,1Bを剥がすと、建物を破損してしまうことになり好ましくないほか、新しい外壁パネル1A,1Bが必要となる。
【0027】
隅部構造100は、塗膜3を研磨によって除去することで、
図5に示すように青色の接着剤2が面取り部10の表面に露出する。青色の接着剤2を使用していることを目視で確認できれば、予め純正品の外壁パネル1A,1Bと青色の接着剤2を使用することを取り決めた施工業者が施工を行ったことが一見して把握されるため、外壁パネル1A,1Bを取り外すことなく純正品であるかどうか容易に判別することができる。われている。例えば、純正品であることを示すマークやロゴ、ロット番号を印字すると、生産日時、生産工場、塗装グレードなどが判別可能となる。このようなマーク
【0028】
判別後には、
図6に示すように除去した塗膜3を再塗装して面取り部10および接着剤2を被覆することによって、外壁パネル1A,1Bの取付施工を再び行うことなく、元の隅部構造100に補修できる。すなわちこの方法によれば、塗膜3の再塗装のみで容易に良好な外観の意匠性を回復することができる。
【0029】
以上、本開示の一実施形態について説明した。上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0030】
本実施形態の建材の隅部構造100は、端部14に所定の角度の傾斜面を有する二つの窯業系サイディング材1の前記傾斜面同士が突き合わされて隅部が形成される建材の隅部構造100であって、二つの窯業系サイディング材1同士は、青色の接着剤2で接合され、前記隅部の頂部は略平面状の面取り部10を有し、面取り部10は接着剤2を被覆する塗膜3を有する。これにより、通常時は塗膜によって良好な外観の意匠性を有するとともに、不具合発生時等には塗膜を除去することで隅部が隅部構造100で構成されることを容易に判別可能である。すなわち、建築物の隅部構造が隅部構造100の提供者の管轄のもとに施工されたものであることが容易に判別できるため、予め純正品と青色の接着剤を使用することを施工業者と取り決めておくことで、外壁パネル1A,1Bが純正品であることを容易に判別可能である。
【0031】
また本実施形態の建材の隅部構造100の判別方法は、面取り部10の塗膜3を除去して接着剤2を露出させ、接着剤2の色に基づいて前記建材の隅部構造100を判別する。これにより、通常時は塗膜によって良好な外観の意匠性を有するとともに、不具合発生時等には塗膜を除去することで隅部が隅部構造100で構成されることを容易に判別可能である。すなわち、建築物の隅部構造が隅部構造100の提供者の管轄のもとに施工されたものであることが容易に判別できるため、予め純正品と青色の接着剤を使用することを施工業者と取り決めておくことで、外壁パネル1A,1Bが純正品であることを容易に判別可能である。
【0032】
また本実施形態の建材の隅部構造100の補修方法は、塗膜3を除去して接着剤2を露出させ、接着剤2の色に基づいて前記建材の隅部構造100を判別したのちに、面取り部10に接着剤2を被覆する塗膜3を再塗装する。これにより、隅部構造100の判別後に塗膜3を再塗装するのみで、容易に良好な外観の意匠性を回復することができる。
【0033】
以上、本開示の隅部構造、隅部構造の判別方法および補修方法について説明した。本開示は外壁の出隅構造に限定されない。本開示の隅部構造は、例えば次のような変形例を有する。
【0034】
本開示の隅部構造は、例えば建材の入隅部分に適用されてもよいし、外壁でなくポーチ柱など、隅部構造を有する建材に広く適用することができる。また、隅部の角度は例えば60°や120°など、直角以外の角度で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B…外壁パネル、11A,11B…外面部、12A,12B…上端部、13A,13B…下端部、14A,14B…隅部側端部、15A,15B…平面側端部、16A,16B…裏面部、2…接着剤、3…塗膜、10…面取り部