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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240119BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B65D47/08
B65D47/20 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020129138
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025934
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-51789(JP,A)
【文献】特開2020-83409(JP,A)
【文献】特開2004-83036(JP,A)
【文献】特表2022-528918(JP,A)
【文献】特開平6-48455(JP,A)
【文献】特開2018-34234(JP,A)
【文献】米国特許第6089411(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00 - 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に装着され、前記内容物を吐出させる吐出孔が設けられたキャップ本体と、
前記吐出孔を開放可能に閉塞するスリットバルブと、
を備え、
前記キャップ本体と前記スリットバルブとは、一体成形されており、
前記キャップ本体は、上下方向に延在する筒状の周壁と、前記周壁の上部から径方向内側に広がる環状の天壁と、を有し、
前記スリットバルブは、前記吐出孔内において上下方向に延在する筒状部と、前記筒状部の内周面から径方向内側に広がる弁部と、を有し、
前記スリットバルブのゲート痕が、前記筒状部に形成され
前記スリットバルブは、前記口部の上端に接触する環状シール部をさらに有し、
前記キャップ本体の前記天壁の下面において、前記環状シール部の外周面と前記キャップ本体の前記周壁の内周面との間に、空隙が形成された、キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の前記天壁の上面に、周方向に延びる周溝が形成された、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記弁部は、端部が前記筒状部の上端面よりも下方位置に接続されている、請求項1または請求項2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1に示すように、キャップ本体と、キャップ本体の開口に配置されたスリットバルブと、を備えたキャップが従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-347813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなキャップには、キャップ本体にスリットバルブを固定するために、スリットバルブを押さえるための部材が設けられている。そのため、キャップの部品点数が増加し、キャップの製造工数および製造コストが増大する問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、部品点数を低減できる構造を有するキャップを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様のキャップは、内容物が収容される容器本体の口部に装着され、前記内容物を吐出させる吐出孔が設けられたキャップ本体と、前記吐出孔を開放可能に閉塞するスリットバルブと、を備え、前記キャップ本体と前記スリットバルブとは、一体成形されており、前記キャップ本体は、上下方向に延在する筒状の周壁と、前記周壁の上部から径方向内側に広がる環状の天壁と、を有し、前記スリットバルブは、前記吐出孔内において上下方向に延在する筒状部と、前記筒状部の内周面における前記筒状部の上端面よりも下方位置から径方向内側に広がる弁部と、を有し、前記スリットバルブのゲート痕が、前記筒状部に形成されている。
【0007】
本発明の一つの態様のキャップによれば、キャップ本体とスリットバルブとは、一体成形されている。そのため、スリットバルブをキャップ本体に固定するための部材を別途設ける必要がない。これにより、キャップの部品点数を低減することができる。
【0008】
また、キャップ本体とスリットバルブとを一体成形する際に、スリットバルブの弁部に樹脂注入用のゲートを配置する方法が採用される場合があった。ところが、この成形方法を採用した場合、筒状部よりも肉厚の薄い弁部の一部にゲート痕が残り、弁部の動きが不安定になるおそれがあった。この問題に対して、本発明の一つの態様のキャップにおいては、スリットバルブのゲート痕が筒状部に形成されているため、弁部の肉厚を一定にすることができる。その結果、本発明の一つの態様のキャップによれば、弁部の動きの安定性を高めることができる。
【0009】
本発明の一つの態様のキャップにおいて、前記キャップ本体の前記天壁の上面に、周方向に延びる周溝が形成されていてもよい。
【0010】
キャップ本体とスリットバルブとを一体成形する際には、例えば二色成形やインサート成形が用いられる。このとき、例えば一次成形によりキャップ本体が成形され、二次成形によりスリットバルブがキャップ本体に一体に連結された状態で成形される。この場合、二次成形時にキャップ本体を構成する一次成形の樹脂が固化していなかったとすると、二次成形の樹脂がキャップ本体側に流れ込み、所望のキャップを安定して製造することが難しい。この問題に対し、本発明の一つの態様のキャップによれば、キャップ本体の天壁の上面に周溝が形成されているため、周溝が形成された部分の天壁が薄肉化される。すなわち、天壁の上面側に肉抜き部を形成したことになる。これにより、天壁を薄肉化した部分で一次成形の樹脂が固化しやすくなり、二次成形の樹脂のキャップ本体側への流れ込みを抑えることができる。その結果、所望のキャップを安定して製造することができる。
【0011】
本発明の一つの態様のキャップにおいて、前記スリットバルブは、前記口部の上端に接触する環状シール部をさらに有し、前記キャップ本体の前記天壁の下面において、前記環状シール部の外周面と前記キャップ本体の前記周壁の内周面との間に、空隙が形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、環状シール部により口部の上端とキャップとの間をシールすることができるため、容器本体とキャップとの間からの内容物の漏れを抑制することができる。また、キャップ本体の天壁の下面において、環状シール部の外周面とキャップ本体の周壁の内周面との間に空隙が形成されているため、この部分に空隙を形成しなかった場合に比べて天壁が薄肉化されることになる。すなわち、天壁の下面側に肉抜き部を形成したことになる。これにより、空隙を形成した部分で一次成形の樹脂が固化しやすくなり、二次成形の樹脂のキャップ本体側への流れ込みを抑えることができる。その結果、所望のキャップを安定して製造することができる。
【0013】
本発明の一つの態様のキャップにおいて、前記弁部は、端部が前記筒状部の上端面よりも下方位置に接続されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、筒状部の上端面に形成されたゲート痕の位置が、弁部の端部が筒状部の上端に接続されていた場合に比べて弁部から遠くなるため、弁部の動きの安定性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一つの態様によれば、部品点数を低減できるとともに、スリットバルブの弁部の動きの安定性に優れたキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のキャップを示す図であって、閉蓋状態におけるキャップの縦断面図である。
図2】同、開蓋状態におけるキャップを上面から見た平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るキャップについて説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のキャップ20は、吐出容器1に備えられている。吐出容器1は、内容物が収容される有底筒状の容器本体10と、容器本体10の口部11に装着されたキャップ20と、を備えている。
【0019】
本実施形態では、容器本体10およびキャップ20の各中心軸は、共通の軸線上に配置されている。以下、この共通の軸線をキャップ軸Oと呼び、キャップ軸Oに沿う方向を上下方向と称する。また、容器本体10に対してキャップ20が位置する側を上側または上方と称し、逆側を下側または下方と称する。また、上方から見た平面視において、キャップ軸Oに交差する方向を径方向と称し、キャップ軸O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0020】
容器本体10は、例えばスクイズボトルであり、容器本体10のうちの少なくとも胴部は、径方向にスクイズ変形(弾性変形)可能となっている。容器本体10に収容される内容物は、特に限定されないが、例えば香料、果汁、濃縮液等の液体である。
【0021】
容器本体10の口部11は、上下方向に延びる円筒状の形状を有し、上方に開口している。吐出容器1の使用前の状態において、口部11の上方の開口はシート部材12によって閉塞されている。これにより、吐出容器1の使用前の状態において、容器本体10の内部は密閉されている。シート部材12は、例えばアルミニウム製のシールで構成され、口部11の上端部に貼り付けられている。口部11の外周面には、雄ネジ部11aが形成されている。
【0022】
キャップ20は、容器本体10の口部11に装着される有頂筒状のキャップ本体30と、キャップ本体30にヒンジ60を介して連結された有頂筒状の蓋体40と、キャップ本体30に設けられたスリットバルブ50と、を備えている。
【0023】
キャップ本体30には、内容物を吐出させる吐出孔33が設けられている。蓋体40は、ヒンジ60を中心として、キャップ本体30に対して上下方向と直交する方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。図1では、蓋体40が閉じた状態、いわゆる閉蓋状態を示している。蓋体40は、閉じた状態において吐出孔33を上方から覆い、吐出孔33の上端開口を閉塞する。図1に示す状態から蓋体40を上方に向けてヒンジ60回りに回動させることによって、図3に示すように、蓋体40を開くことができる。なお、以下の各部の相対位置関係の説明においては、特に断りのない限り、閉蓋状態について説明する。
【0024】
キャップ本体30は、キャップ軸Oと同軸に配置された円筒状の周壁31と、周壁31の上端部から径方向内側に広がる天壁32と、を有している。
【0025】
周壁31の内周面には、口部11の外周面に形成された雄ネジ部11aに噛み合う雌ネジ部31bが形成されている。これにより、キャップ本体30は、容器本体10の口部11に螺着された状態で装着される。なお、キャップ本体30は、上記の螺着の他、容器本体10の口部11にアンダーカット嵌合された状態で装着されてもよい。
【0026】
天壁32は、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。天壁32は、容器本体10の口部11の上方に配置される。天壁32は、周壁31の上端部から径方向内側に突出する外側円環部32aと、外側円環部32aの径方向内端部から径方向内側斜め上方に延びる内側円環部32bと、を有している。
【0027】
外側円環部32aは、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。外側円環部32aの上面は、周壁31の上端部よりも上方に位置している。外側円環部32aの上面には、周方向に延びる周溝32mが形成されている。本実施形態において、周溝32mは、キャップ軸Oと同軸に円環状に形成されている。これにより、周溝32mが形成された部分の外側円環部32aの肉厚は、周溝32mが形成されていなかった場合に比べて薄くなっている。換言すると、外側円環部32aの上面に肉抜き部が形成されたことにより、外側円環部32aの一部が薄肉化されている。なお、周溝32mは、必ずしも円環状に連続して形成されていなくてもよく、例えば周方向に途切れた形態で、複数形成されていてもよい。
【0028】
また、外側円環部32aの上面における径方向外周縁部には、上方に突出する環状突起32dが形成されている。環状突起32dの外周面には、径方向外側に向けて突出する係合突起32tが形成されている。
【0029】
内側円環部32bは、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。内側円環部32bは、外側円環部32aの径方向内端部から径方向内側の斜め上方に向かって延びている。内側円環部32bは、径方向内側を向く環状の内周面32gを有する。内周面32gは、下方から上方に向かうに従って径方向内側に位置するテーパ面である。
【0030】
外側円環部32aの下面には、下方に突出する凸部32hが形成されている。凸部32hは、例えばキャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。なお、凸部32hは、例えば周方向に沿って間隔を空けて、複数配置されていてもよい。
【0031】
上述した吐出孔33は、天壁32に設けられている。環状の天壁32の内側が吐出孔33を形成しており、吐出孔33は、天壁32を上下方向に貫通している。本実施形態においては、吐出孔33の内周縁部は、内側円環部32bの上端の内周縁部により構成されている。
【0032】
蓋体40は、キャップ本体30の上方を覆う円板状の頂壁41と、頂壁41の外周縁部から下方に延びる周壁42と、周壁42の径方向内側において頂壁41から下方に延びる閉塞筒部43と、頂壁41から径方向外側に突出する摘み部44と、を有する。
【0033】
頂壁41は、閉塞筒部43の径方向内側において下方に窪む凹部41bが形成されている。凹部41bの上面および下面は、曲面状に形成されている。凹部41bは、後述するスリットバルブ50の弁部51に当接している。なお、凹部41bは、形成されていなくてもよい。
【0034】
周壁42は、キャップ軸Oと同軸に配置され、下方に開口する円筒状の形状を有する。周壁42は、キャップ本体30の外側円環部32aに外嵌されている。周壁42の下端部は、キャップ本体30の周壁31の上方に僅かな隙間を介して対向して配置されている。周壁42の下端部における内周面には、環状突起32dの係合突起32tに下方から係合する係合突起42tが形成されている。係合突起32tと係合突起42tとが互いに係合することにより、閉じた状態の蓋体40が意図せずに開くことを抑制できる。周壁42の下端部は、ヒンジ60を介してキャップ本体30の周壁31と連結されている。
【0035】
閉塞筒部43は、キャップ軸Oと同軸に配置され、下方に開口する円筒状の形状を有する。閉塞筒部43の下端部は、周壁42の下端部よりも上方に位置する。閉塞筒部43は、スリットバルブ50の筒状部52の上部に外嵌されており、これによって吐出孔33が閉塞されている。摘み部44は、径方向において、キャップ軸Oを挟んだヒンジ60の反対側に配設されている。
【0036】
本実施形態において、キャップ本体30と蓋体40とヒンジ60とは、同一の材料によって一体成形されている。キャップ本体30、蓋体40、およびヒンジ60は、例えばポリプロピレン等の硬質の樹脂材料で構成されている。
【0037】
スリットバルブ50は、キャップ本体の天壁32の径方向内側、すなわち、吐出孔33内に配置されている。スリットバルブ50は、スリット51sを通じて吐出孔33を開放可能に閉塞する。スリットバルブ50を構成する材料は、キャップ本体30を構成する材料よりも軟らかい材料である。スリットバルブ50は、例えばポリエチレンやエラストマー等の軟質の樹脂材料で構成されている。これにより、スリットバルブ50は、弾性変形可能となっている。
【0038】
スリットバルブ50は、吐出孔33内において上下方向に延びる筒状部52と、筒状部52の内周面から径方向内側に広がる弁部51と、筒状部52の外周面から径方向外側に広がる環状シール部53と、を有する。
【0039】
筒状部52は、キャップ軸Oと同軸に配置され、内径および外径が下方から上方に向かうに従って小さくなっている略テーパ筒状の形状を有する。これにより、筒状部52の内周面は、上下方向に対して傾斜する傾斜面52aとなっている。すなわち、傾斜面52aは、下方から上方に向かうに従って径方向内側に位置するテーパ面である。本実施形態においては、筒状部52の内周面の略全体が傾斜面52aとなっている。
【0040】
筒状部52の内周面における上下方向の中央部には、径方向内側に突出する突出部52bが形成されている。突出部52bは、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。突出部52bの内周面は、径方向と直交する円筒面である。突出部52bの下面は、上下方向と直交する円環状の面である。筒状部52のうち、突出部52bよりも上方に位置する部分の厚さは、筒状部52のうち突出部52bよりも下方に位置する部分の厚さよりも薄い。なお、筒状部52のうち、突出部52bよりも上方に位置する部分の厚さは、突出部52bよりも下方に位置する部分の厚さより厚くてもよいし、突出部52bよりも下方に位置する部分の厚さと同じであってもよい。
【0041】
筒状部52の突出部52bよりも下側部分の外周面は、キャップ本体30における内側円環部32bの内周面32gに連結されている。これにより、筒状部52の外周面は、吐出孔33の内周縁部に連結されている。筒状部52の突出部52bよりも上側部分は、キャップ本体30の内側円環部32bよりも上方に延びている。
【0042】
弁部51は、筒状部52の内周面における筒状部の上端面よりも下方位置から径方向内側に広がって形成されている。弁部51は、筒状部52の上方の開口を塞ぐ薄膜状の部分である。弁部51は、図2に示すように、平面視において、キャップ軸Oと同軸に配置された円形の形状を有する。弁部51は、図1に示すように、下方に凸となる向きに僅かに湾曲している。弁部51は、上下方向において、蓋体40の閉塞筒部43の下端と略同じ高さに配置されている。
【0043】
弁部51には、弁部51を上下方向に貫通するスリット51sが形成されており、スリット51sの開口および閉塞によって、吐出孔33を通じた容器本体10の内部と吐出容器1の外部との連通および遮断を切り替えることができる。これにより、スリットバルブ50の弁部51は、吐出孔33を開放可能に閉塞している。図2に示すように、スリット51sの形状は、例えば平面視でキャップ軸Oを中心とした十字状である。なお、スリット51sの形状は、特に限定されず、平面視でキャップ軸Oから径方向に延びる放射線状であってもよいし、平面視で一直線状に延びる形状であってもよい。
【0044】
環状シール部53は、筒状部52の下端部から径方向外側に突出している。環状シール部53は、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。環状シール部53の外周面53cは、キャップ本体30の周壁31の内周面31cに当接しておらず、周壁31の内周面31cから径方向内側に離間した位置に配置されている。すなわち、キャップ本体30の天壁32の下面において、環状シール部53の外周面53cと周壁31の内周面31cとの間に、空隙Kが形成されている。
【0045】
本実施形態において、空隙Kは、キャップ軸Oと同軸に円環状に形成されている。これにより、空隙Kが形成された部分の天壁32(外側円環部32a)の肉厚は、空隙Kが形成されずに環状シール部53の外周面53cと周壁31の内周面31cとが当接している場合に比べて薄くなっている。換言すると、天壁32(外側円環部32a)の下面には、肉抜き部が形成されている。なお、空隙Kは、必ずしも円環状に連続して形成されていなくてもよく、例えば周方向に途切れた形態で、複数形成されていてもよい。
【0046】
また、環状シール部53の上面は、キャップ本体30の外側円環部32aの下面に連結されている。環状シール部53には、外側円環部32aの下面に形成された凸部32hが埋め込まれている。
【0047】
環状シール部53の下面には、下方に突出し、口部11の上端部に接触するシール凸部54が形成されている。本実施形態において、シール凸部54は、キャップ軸Oと同軸に配置された円環状の形状を有する。シール凸部54の径方向位置は、外側円環部32aの下面に形成された凸部32hの径方向位置と同じである。環状シール部53は、キャップ20が容器本体10に装着された状態において、容器本体10の口部11の上端部に接触する。吐出容器1が未使用の状態においては、環状シール部53は、シート部材12を介して口部11の上端部に接触する。環状シール部53が口部11の上端部に接触した状態において、シール凸部54は、上下方向に圧縮弾性変形した状態となっている。
【0048】
キャップ本体30とスリットバルブ50とは、一体成形されている。キャップ本体30とスリットバルブ50とは、例えば二色成形またはインサート成形等の成形方法によって一体成形されている。具体的に、本実施形態では、一次成形によって、キャップ本体30および蓋体40がヒンジ60を介して連結された部材が成形される。その後、二次成形によって、スリットバルブ50がキャップ本体30に一体に連結された状態で成形される。このように、本実施形態では、キャップ20全体が一体成形されている。
【0049】
本実施形態において、二次成形時には、スリットバルブ50の筒状部52の上端面に樹脂注入用のゲートが配置される。これにより、筒状部52の上端面には、ゲート痕56が形成される。図2に示すように、ゲート痕56は、平面視においてキャップ軸Oに対してヒンジ60とは反対側に配置されている。なお、ゲート痕56の位置は、必ずしも平面視においてキャップ軸Oに対してヒンジ60と反対側でなくてもよく、筒状部52の上端面であれば、他の位置であってもよい。また、本実施形態では、ゲート痕56が筒状部52の上端面に形成されているが、上端面に限ることはなく、例えば筒状部52の外周面等、筒状部52の上端面以外の位置に形成されていてもよい。
【0050】
また、一次成形時には、蓋体40の頂壁41の凹部41bの下面に樹脂注入用のゲートが配置される。これにより、頂壁41の凹部41bの下面には、ゲート痕46が形成される。図2に示すように、一次成形時は蓋体40が開いた形態で行われるが、ゲート痕46は、平面視においてキャップ軸Oに対してヒンジ60とは反対側に配置されている。このように、一次成形時のゲート位置と二次成形時のゲート位置とは、極力離れた位置に設定されることが望ましい。これにより、一体成形が行いやすくなる。
【0051】
以下、上記構成の吐出容器1の使用方法について説明する。
吐出容器1から内容物を取り出す際、使用者は、蓋体40をヒンジ60回りに回動させて開いた後、吐出容器1を倒立させた状態で容器本体10の胴部を径方向内側に押圧してスクイズ変形させる。これにより、容器本体10の内容積が減少して内容物に圧力が加えられる。内容物の圧力を受けることで弁部51のスリット51sが開口し、スリット51sから内容物が吐出される。なお、容器本体10の口部11にシート部材12が設けられている場合には、使用者は、シート部材12を剥がしてから吐出容器1を使用する。
【0052】
本実施形態のキャップ20によれば、キャップ本体30とスリットバルブ50とは、一体成形されている。そのため、スリットバルブ50をキャップ本体30に固定するための部材を別途設ける必要がない。これにより、キャップ20の部品点数を低減できる。以上のように、本実施形態によれば、キャップ20の部品点数を低減できるため、キャップ20の製造工数および製造コストを低減することができる。
【0053】
また、従来のキャップにおいては、キャップ本体とスリットバルブとを一体成形する際の二次成形時に、スリットバルブの弁部に樹脂注入用のゲートを配置する場合があった。ところが、この場合、スリットバルブの筒状部よりも肉厚の薄い弁部の一部にゲート痕が残るため、弁部の動きが不安定になるおそれがあった。
【0054】
この問題に対し、本実施形態のキャップ20によれば、スリットバルブ50のゲート痕56が筒状部52の上端面に形成されているため、弁部51の肉厚を一定にすることができる。これにより、弁部51の動きの安定性を高めることができる。特に本実施形態の場合、弁部51の端部が筒状部52の内周面における上端部よりも下方位置に接続されているため、筒状部52の上端面に形成されたゲート痕56の位置が、弁部51の端部が筒状部52の上端に接続されている場合に比べて弁部51から遠くなる。これにより、弁部51の動きの安定性をさらに高めることができる。
【0055】
また、従来のキャップにおいては、キャップ本体を構成する一次成形の樹脂が二次成形時に未だ固化していなかったとすると、二次成形の樹脂がキャップ本体側に流れ込むおそれがあった。具体的には、ゲートを介して二次成形の樹脂の流れ方向下流側のスリットバルブの端部において、一次成形の樹脂が固化していなかったとすると、キャップ本体の天壁にスリットバルブの端部から樹脂が流れ込み、所望のキャップを安定して製造することが難しいという問題があった。特に本実施形態のキャップ20においては、二次成形時のゲートが筒状部52に配置されるため、筒状部52のゲート位置からの樹脂の流れが速くなり、上記の問題が顕著になるおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態のキャップ20においては、キャップ本体30の天壁32を構成する外側円環部32aの上面に周溝32mが形成され、さらに、天壁32の下面において環状シール部53の外周面53cと周壁31の内周面31cとの間に空隙Kが形成されている。本実施形態において、空隙Kは、キャップ軸Oと同軸に円環状に形成されている。このように、天壁32の上面および下面の双方に、肉抜き部が形成されたことにより、この部分の肉厚は、周溝32mや空隙Kが形成されなかった場合に比べて薄くなっている。そのため、天壁32を構成する一次成形の樹脂が固化しやすくなり、二次成形時のゲートが筒状部52の上端面に配置され、樹脂の流れが速くなっても、二次成形の樹脂のキャップ本体30側への流れ込みを抑えることができる。その結果、所望のキャップを安定して製造することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、スリットバルブ50は、容器本体10の口部11の上端部に接触する環状シール部53を有し、スリットバルブ50は、キャップ本体30を形成する材料よりも軟らかい材料で形成されている。そのため、環状シール部53を比較的軟らかくでき、環状シール部53を口部11の上端部に好適に密着させやすい。これにより、環状シール部53によって口部11の上端部とキャップ20との間を好適にシールすることができ、容器本体10とキャップ20との間からの内容物の漏れを抑制することができる。
【0058】
特に本実施形態のように、未使用時において容器本体10の口部11の上端部にシート部材12が貼り付けられている場合には、シート部材12を剥がすと、シート部材12を貼り付けていた粘着剤の一部が残る等によって、口部11の上端部が汚れやすい。そのため、口部11の上端部とキャップ20との間をシールしにくくなりやすい。ところが、環状シール部53を比較的軟らかい材料で形成することにより、汚れた口部11の上端部に対して環状シール部53を食い込ませやすくできる。したがって、シート部材12を剥がして口部11の上端部が汚れた場合であっても、容器本体10とキャップ20との間を好適にシールすることができる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、スリットバルブ50によって容器本体10とキャップ20との間を好適にシールできるため、容器本体10とキャップ20との間をシールするシール部材を別途設ける必要がない。したがって、キャップ20の部品点数をより低減できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、環状シール部53の下面に、口部11の上端部に接触するシール凸部54が形成されている。そのため、シール凸部54が口部11の上端部に接触して圧縮弾性変形することで、環状シール部53をより好適に口部11の上端部に密着させることができる。したがって、容器本体10とキャップ20との間のシール性をより向上できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、スリットバルブ50は、吐出孔33内において上下方向に延び、外周面が吐出孔33の内周縁部に連結された筒状部52を有している。そのため、吐出容器1を倒立させてスリット51sを介して吐出孔33から内容物を吐出させる際、内容物は、筒状部52の内部に流入する。ここで、本実施形態によれば、筒状部52の内周面には、上下方向に対して傾斜する傾斜面52aが設けられている。そのため、吐出容器1を使用した後、吐出容器1を正立した状態に戻した際に、筒状部52内に残った内容物を傾斜面52aに沿って容器本体10内に導きやすい。これにより、筒状部52内から容器本体10内に内容物を回収しやすい。
【0062】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、キャップ本体30の天壁32の上面に周溝32mが形成され、天壁32の下面に空隙Kが形成されたことにより、キャップ本体30の天壁32の上面および下面の双方に、肉抜き部が形成されていた。この構成に代えて、この種の肉抜き部は、キャップ本体30の天壁32の上面および下面のいずれか一方にのみ形成されていてもよい。また、二次成形の樹脂のキャップ本体側への流れ込みが特に問題とならない場合には、この種の肉抜き部が形成されていなくてもよい。
【0063】
また、キャップ本体30とスリットバルブ50とが一体成形された構成であれば、キャップ20の他の部分は、キャップ本体30およびスリットバルブ50と別体に成形されていてもよい。例えば上記実施形態において、蓋体40がキャップ本体30およびスリットバルブ50とは別体に成形され、キャップ本体30に回動可能に取り付けられてもよい。このように、蓋体40は、キャップ本体30に対して分離可能に取り付けられていてもよい。
【0064】
また、シール凸部54は、環状でなくてもよく、周方向に間隔を空けて複数配置される構成であってもよい。もしくは、環状シール部53の下面には、シール凸部54が形成されていなくてもよい。また、スリットバルブ50の筒状部52の内周面に、傾斜面52aが設けられていなくてもよい。
【0065】
また、スリットバルブ50の弁部51に、下方に窪む凹部が形成されていてもよい。これにより、スリットによって周方向に4つに分割された弁部の各部分を、上下方向に弾性変形しやすくすることができる。また、キャップ本体30の天壁32に、内側円環部32bの上端から上方に延びる円筒部が形成されていてもよく、この円筒部と蓋体40の閉塞筒部43とが嵌合する構成であってもよい。
【0066】
その他、上記実施形態のキャップ20を構成する各構成要素の形状、配置、数、構成材料等の具体的構成については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 容器本体
11 口部
20 キャップ
30 キャップ本体
31 周壁
31c (周壁の)内周面
32 天壁
32m 周溝
33 吐出孔
50 スリットバルブ
51 弁部
52 筒状部
53 環状シール部
53c (環状シール部の)外周面
56 ゲート痕
K 空隙
図1
図2
図3