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特許7422629鉄心製品の製造方法、残留樹脂の除去方法及び残留樹脂の除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】鉄心製品の製造方法、残留樹脂の除去方法及び残留樹脂の除去装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240119BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/03 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020140227
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035718
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】小谷 周平
(72)【発明者】
【氏名】天野 克己
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186589(JP,A)
【文献】特開2009-077548(JP,A)
【文献】特開2020-088909(JP,A)
【文献】特開2015-023597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心本体に設けられた樹脂形成領域が搬送治具の樹脂流路と連通するように、前記鉄心本体が前記搬送治具に載置された状態で、樹脂供給装置により、前記樹脂流路を介して前記樹脂形成領域に溶融樹脂を供給することと、
溶融樹脂を供給することの後に、前記鉄心本体と共に前記搬送治具を前記樹脂供給装置から回収部に搬送して、前記搬送治具を前記回収部に載置することと、
前記搬送治具を前記回収部に載置することの後に、前記鉄心本体を前記搬送治具から取り外して、前記樹脂形成領域で固化した樹脂と、前記樹脂流路内で固化した樹脂とを分断することにより、前記鉄心本体と、前記樹脂形成領域に形成された固化樹脂とを含む鉄心製品を得ると共に、固化樹脂の残留物である残留樹脂を前記樹脂流路内に形成することと、
前記残留樹脂を形成することの後に、上方から押出部を前記残留樹脂に当接させて、前記樹脂流路内から前記残留樹脂を前記回収部に落下させることとを含む、鉄心製品の製造方法。
【請求項2】
前記残留樹脂を落下させることは、鉛直方向において重なり合うように配置された前記回収部及び前記押出部が互いに近接するように、前記回収部及び前記押出部の少なくとも一方を鉛直方向に沿って移動させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記残留樹脂を落下させることは、前記回収部が前記押出部に当接する上昇位置まで前記回収部を前記押出部に向けて上昇させて、前記樹脂流路内から前記残留樹脂を前記回収部に落下させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
鉄心本体に設けられた樹脂形成領域が搬送治具の樹脂流路と連通するように、前記鉄心本体が前記搬送治具に載置された状態であって、前記樹脂形成領域及び前記樹脂流路の内部に一体的に固化樹脂が形成された状態で、前記鉄心本体と共に前記搬送治具を回収部に搬送して、前記搬送治具を前記回収部に載置することと、
前記搬送治具を前記回収部に載置することの後に、前記鉄心本体を前記搬送治具から取り外して、前記樹脂形成領域で固化した樹脂と、前記樹脂流路内で固化した樹脂とを分断することにより、固化樹脂の残留物である残留樹脂を前記樹脂流路内に形成することと、
前記残留樹脂を形成することの後に、上方から押出部を前記残留樹脂に当接させて、前記樹脂流路内から前記残留樹脂を前記回収部に落下させることとを含む、残留樹脂の除去方法。
【請求項5】
鉄心本体が載置された搬送治具を搬送するように構成された搬送部であって、前記鉄心本体には樹脂形成領域が設けられており、前記搬送治具には、前記鉄心本体が載置された状態で前記樹脂形成領域と連通する樹脂流路が設けられている、搬送部と、
前記搬送治具が載置可能に構成された回収部と、
前記回収部に載置されている前記搬送治具と前記鉄心本体とを分離するように構成された分離部と、
前記分離部によって前記鉄心本体が取り外された後の前記搬送治具の前記樹脂流路に残留している残留樹脂を前記回収部に向けて下方に押し出すように構成された押出部とを備える、残留樹脂の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄心製品の製造方法、残留樹脂の除去方法及び残留樹脂の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、樹脂を上方へ押し出して加圧するプランジャを有する下型と、下型の上方に配置され、上下にスライド可能であり、積層鉄心の下端面に対面して積層鉄心の磁石挿入孔に樹脂を注入するための注入口を有する樹脂注入型と、磁石挿入孔に樹脂が充填された後の積層鉄心が樹脂注入型から取り外された後に、注入口内の不要物を下方に落下させるピンとを備える樹脂充填装置を開示している。そのため、特許文献1の樹脂充填装置においては、樹脂注入型が他の装置等に向けて水平方向に移動することはない。すなわち、樹脂注入型の注入口からの不要物の除去が、樹脂充填装置内において完結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-023597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、樹脂充填装置において磁石挿入孔に樹脂を充填する工程には、比較的長時間を要する。そのため、特許文献1に開示されるように、不要物の除去といった樹脂の充填以外の工程が存在する場合、鉄心製品の生産効率に影響を与える懸念がある。そこで、鉄心製品の生産効率の向上を目的として、鉄心製品の製造過程において、鉄心製品の中間体が様々な装置を経由することがある。その際、中間体の搬送を容易にする目的で、中間体が搬送治具に載置された状態で、それらの装置間を搬送されることがある。
【0005】
搬送治具は、中間体の樹脂形成領域に対応する箇所に設けられた樹脂流路を含んでいる。中間体の樹脂形成領域に樹脂を形成する際には、中間体が載置された搬送治具がさらに下型に載置された状態で、下型から樹脂流路を介して樹脂形成領域に溶融樹脂が注入される。その後、樹脂形成後の中間体は搬送治具から取り外されて後の工程に搬送され、搬送治具は、樹脂形成前の中間体を搬送治具に載置するための載置装置に戻される。
【0006】
樹脂形成後の中間体が搬送治具から取り外されると、搬送治具の樹脂流路には固化した樹脂が残留する。そのため、中間体が搬送治具から取り外される際に搬送治具に生ずる振動や、搬送治具が載置装置に戻される際に搬送治具に生ずる振動などによって、樹脂流路内の残留樹脂が搬送治具から落下し、周囲に散乱する懸念がある。
【0007】
そこで、本開示は、搬送治具から脱落した残留樹脂の周囲への散乱を防止することが可能な鉄心製品の製造方法、残留樹脂の除去方法及び残留樹脂の除去装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鉄心製品の製造方法の一例は、鉄心本体に設けられた樹脂形成領域が搬送治具の樹脂流路と連通するように、鉄心本体が搬送治具に載置された状態で、樹脂供給装置により、樹脂流路を介して樹脂形成領域に溶融樹脂を供給することと、溶融樹脂を供給することの後に、鉄心本体と共に搬送治具を樹脂供給装置から回収部に搬送して、搬送治具を回収部に載置することと、搬送治具を回収部に載置することの後に、鉄心本体を搬送治具から取り外して、樹脂形成領域で固化した樹脂と、樹脂流路内で固化した樹脂とを分断することにより、鉄心本体と、樹脂形成領域に形成された固化樹脂とを含む鉄心製品を得ると共に、固化樹脂の残留物である残留樹脂を樹脂流路内に形成することと、残留樹脂を形成することの後に、上方から押出部を残留樹脂に当接させて、樹脂流路内から残留樹脂を回収部に落下させることとを含んでいてもよい。
【0009】
残留樹脂の除去方法の一例は、鉄心本体に設けられた樹脂形成領域が搬送治具の樹脂流路と連通するように、鉄心本体が搬送治具に載置された状態であって、樹脂形成領域及び樹脂流路の内部に一体的に固化樹脂が形成された状態で、鉄心本体と共に搬送治具を回収部に搬送して、搬送治具を回収部に載置することと、搬送治具を回収部に載置することの後に、鉄心本体を搬送治具から取り外して、樹脂形成領域で固化した樹脂と、樹脂流路内で固化した樹脂とを分断することにより、固化樹脂の残留物である残留樹脂を樹脂流路内に形成することと、残留樹脂を形成することの後に、上方から押出部を残留樹脂に当接させて、樹脂流路内から残留樹脂を回収部に落下させることとを含んでいてもよい。
【0010】
残留樹脂の除去装置の一例は、鉄心本体が載置された搬送治具を搬送するように構成された搬送部であって、鉄心本体には樹脂形成領域が設けられており、搬送治具には、鉄心本体が載置された状態で樹脂形成領域と連通する樹脂流路が設けられている、搬送部と、搬送部によって搬送される搬送治具が載置可能に構成された回収部と、回収部に載置されている搬送治具と鉄心本体とを分離するように構成された分離部と、除去部によって鉄心本体が取り外された後の搬送治具の樹脂流路に残留している残留樹脂を回収部に向けて下方に押し出すように構成された押出部とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る鉄心製品の製造方法、残留樹脂の除去方法及び残留樹脂の除去装置によれば、搬送治具から脱落した残留樹脂の周囲への散乱を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、樹脂供給装置の一例を概略的に示す断面図である。
図4図4は、残留樹脂の除去装置の一例を概略的に示す側面図である。
図5図5は、図4のV-V線断面図である。
図6図6は、回収部の一例を概略的に示す上面図である。
図7図7は、第2のストッパの一例を示す正面図である。
図8図8は、残留樹脂を除去する工程の一例を説明するための図である。
図9図9は、図8の後続の工程の一例を説明するための図である。
図10図10は、図9の後続の工程の一例を説明するための図である。
図11図11は、図10の後続の工程の一例を説明するための図である。
図12図12は、図11における回転子積層鉄心及び搬送治具を拡大して示す図である。
図13図13は、図11の後続の工程の一例を説明するための図である。
図14図14は、図11の後続の工程の一例を説明するための図である。
図15図15は、図13及び図14の後続の工程の一例を説明するための図である。
図16図16は、図15の後続の工程の一例を説明するための図である。
図17図17は、図16の後続の工程の一例を説明するための図である。
図18図18は、図17の後続の工程の一例を説明するための図である。
図19図19は、残留樹脂の除去方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
[回転子積層鉄心]
まず、図1を参照して、回転子積層鉄心1(鉄心製品)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、積層体2(鉄心本体)と、複数の永久磁石3と、複数の固化樹脂4とを備える。
【0015】
積層体2は、円筒状を呈している。積層体2の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体2を貫通する軸孔2aが設けられている。軸孔2aは、積層体2の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体2は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔2a内には、シャフトが挿通される。
【0016】
積層体2には、複数の磁石挿入孔5(樹脂形成領域)が形成されている。磁石挿入孔5は、図1に示されるように、積層体2の外周縁に沿って所定間隔で並んでいてもよい。各磁石挿入孔5は、中心軸Ax(高さ方向)に沿って延びるように積層体2を貫通している。一つの磁石挿入孔5内に一つの永久磁石3が挿入されていてもよいし、一つの磁石挿入孔5に複数の永久磁石3が挿入されていてもよい。
【0017】
積層体2は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、金属板(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体2に対応する形状を呈している。高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメ部6によって締結されていてもよいし(図1参照)、接着剤によって接合されていてもよいし、溶接によって結合されていてもよい。積層体2は、いわゆる転積又はスキューによって構成されていてもよい。
【0018】
固化樹脂4は、永久磁石3が配置されている磁石挿入孔5内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)の固化物である。固化樹脂4は、永久磁石3を磁石挿入孔5内に固定するように構成されていてもよい。固化樹脂4は、高さ方向(積層方向)で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されていてもよい。
【0019】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図2を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板から回転子積層鉄心1を製造するように構成されている。製造装置100は、プレス加工装置200と、磁石取付装置300と、樹脂供給装置400と、除去装置500と、コントローラCtrとを備える。
【0020】
プレス加工装置200は、帯状の金属板を間欠的に送り出しながら、金属板をプレス加工することにより、金属板から打抜部材Wを形成するように構成されている。プレス加工装置200は、形成された複数の打抜部材Wを順次積層して、積層体2を形成するように構成されている。積層体2は、搬送治具10に搭載された後、例えば搬送部Cv1によって磁石取付装置300に搬送される(図2の矢印Ar1参照)。搬送部Cv1及び後述する搬送部Cv2~Cv5は、例えば、ローラコンベアであってもよいし、ベルトコンベアであってもよい。
【0021】
搬送治具10は、図3に例示されるように、ベース部材11と、挿通ポスト12とを含む。ベース部材11は、積層体2を載置可能に構成されている。ベース部材11は、板状を呈していてもよい。ベース部材11は、複数の樹脂流路13を含んでいてもよい。樹脂流路13は、例えば、凹部13aと、貫通孔13bとを含んでいてもよい。
【0022】
凹部13aは、ベース部材11の下面にむけて開口している。凹部13aは、ベース部材11の下面に沿って延びるように設けられた凹溝(いわゆるランナ溝)であってもよいし、後述するプランジャ431の先端を収容可能な収容空間を構成していてもよい。貫通孔13bは、凹部13aの底面からベース部材11の上面に至るように、ベース部材11の高さ方向(厚さ方向)においてベース部材11を貫通している。複数の貫通孔13bの各出口(ベース部材11の上面側の開口)は、積層体2が搬送治具10に載置された状態で上方から見て、積層体2の各磁石挿入孔5と重なり合うように配置されていてもよい。凹部13a及び/又は貫通孔13bは、図3に示されるように、ベース部材11の上面から下面に向かうにつれて拡がるテーパ形状を呈していてもよい。
【0023】
挿通ポスト12は、ベース部材11の略中央部に位置しており、ベース部材11の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト12は、円柱形状を呈しており、積層体2の軸孔2aに対応する外形を有する。積層体2は、挿通ポスト12が軸孔2a内に挿通され且つ積層体2がベース部材11に載置されることにより、搬送治具10に搭載された状態となる。
【0024】
図2に戻って、磁石取付装置300は、一つの磁石挿入孔5に、一つ又は複数の永久磁石3を配置するように構成されている。磁石取付装置300は、例えば、ロボットハンドであってもよい。磁石挿入孔5に永久磁石3が配置された後、積層体2は、搬送治具10と共に、例えば搬送部Cv2によって樹脂供給装置400に搬送される(図2の矢印Ar2参照)。
【0025】
樹脂供給装置400は、永久磁石3が配置されている磁石挿入孔5内に溶融樹脂を供給するように構成されている。樹脂供給装置400の詳細については、後述する。磁石挿入孔5に樹脂が供給された後、積層体2は、搬送治具10と共に、例えば搬送部Cv3によって樹脂供給装置400に搬送される(図2の矢印Ar3参照)。
【0026】
除去装置500は、搬送治具10に載置されている積層体2を搬送治具10から取り外し、これによって回転子積層鉄心1を形成するように構成されている。回転子積層鉄心1は、例えば搬送部Cv4によって後続の装置に搬送される(図2の矢印Ar4参照)。除去装置500は、搬送治具10の樹脂流路13内の残留樹脂R(図3参照)を、樹脂流路13から除去するように構成されている。残留樹脂Rが除去された後の搬送治具10は、例えば搬送部Cv5によってプレス加工装置200に搬送される(図2の矢印Ar5参照)。
【0027】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、各装置200~500及び各搬送部Cv1~Cv5をそれぞれ動作させるための信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、生成した信号を、各装置200~500及び各搬送部Cv1~Cv5のそれぞれに送信するように構成されている。
【0028】
[樹脂供給装置]
続いて、図3を参照して、樹脂供給装置400の構成についてより詳細に説明する。樹脂供給装置400は、樹脂タブレット(樹脂材料)を溶融して溶融樹脂とし、永久磁石3が配置された磁石挿入孔5内に溶融樹脂を供給するように構成されている。樹脂供給装置400は、下型410と、上型420と、複数の押出機構430とを含む。
【0029】
下型410は、搬送治具10の下方に配置され、積層体2が搭載された状態の搬送治具10を支持するように構成されている。下型410は、複数の貫通孔411を含む。貫通孔411は、下型410の高さ方向において下型410を貫通するように延びていてもよい。一つの貫通孔411内に一つの樹脂タブレットが収容可能であってもよいし、一つの貫通孔411内に複数の樹脂タブレットが収容可能であってもよい。
【0030】
上型420は、搬送治具10の上方に配置され、下型410と共に、積層体2及び搬送治具10を高さ方向において挟持可能に構成されている。上型420と下型410が積層体2及び搬送治具10を挟持する際、下型410及び上型420は、高さ方向に所定の大きさの荷重を積層体2に対して付与するように構成されている。
【0031】
下型410及び上型420によって積層体2及び搬送治具10が挟持される際、各貫通孔411は、搬送治具10の各樹脂流路13にそれぞれ対応する箇所に位置していてもよい。例えば、各貫通孔411は、上方から見て、各樹脂流路13と部分的に又は全体的に重なり合うように位置していてもよい。
【0032】
下型410は、加熱源412を含んでいてもよい。加熱源222は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作するように構成されていてもよく、例えばヒータであってもよい。加熱源412は、下型410を加熱することにより、各貫通孔411に収容されている樹脂タブレットを加熱するように構成されていてもよい。加熱源412によって樹脂タブレットが加熱されると、樹脂タブレットが溶融して、溶融樹脂に変化する。加熱源412は、上型420内に配置されていてもよいし、下型410又は上型420の外部に配置されていてもよい。下型410又は上型420は、加熱源412を含んでいなくてもよい。
【0033】
押出機構430は、溶融樹脂を磁石挿入孔5に押し出すように構成されている。各押出機構430は、プランジャ431と、駆動源432とを含む。各プランジャ431は、対応する貫通孔411に対して下方から挿通可能に構成されている。各駆動源432は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作するように構成されている。各駆動源432は、対応するプランジャ431を上下動させるように構成されている。そのため、各プランジャ431は、対応する駆動源432によって、対応する貫通孔421に対してそれぞれ独立して挿抜されてもよい。
【0034】
押出機構430は、複数のプランジャ431に接続された一つの駆動源432を含んでいてもよい。この場合、一つの駆動源432は、複数のプランジャ431を略同時に上下動させるように構成されていてもよい。溶融樹脂を磁石挿入孔5に押し出したときのプランジャ431の先端(上端)の停止位置は、貫通孔411内であってもよいし、樹脂流路13の凹部13a内であってもよい。
【0035】
[除去装置]
続いて、図4図7を参照して、除去装置500の構成についてより詳細に説明する。除去装置500は、回収部510と、保持部520と、分離部530と、押出部540と、廃棄部550とを含む。
【0036】
回収部510は、回収ボックス511と、支持部材512と、複数の昇降ローラ513と、第1のストッパ514(ストッパ)と、第2のストッパ515(別のストッパ)と、第1のプッシャ516と、第2のプッシャ517とを含む。
【0037】
回収ボックス511は、図4図6に示されるように、昇降ローラ513、第1のストッパ514、第2のストッパ515及び保持部520を支持するように構成されている。回収ボックス511の上面には、上方に向けて開放された開口部511aが形成されている。開口部511aの大きさは、搬送治具10が回収部510に載置された状態で上方から見て、搬送治具10の大部分と重なり合っていてもよい。
【0038】
回収ボックス511の内部には、開口部511aと連通する凹空間SPが形成されている。回収ボックス511の底壁面は、図4に示されるように、廃棄部550に向かうにつれて降下する傾斜面となっている。そのため、回収ボックス511に向けて落下した残留樹脂Rは、開口部511aを通って凹空間SP内に至り、凹空間SP内において当該傾斜面に沿って滑り落ちる。
【0039】
回収ボックス511は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、高さ方向(図4等のZ方向)に上下動するように構成されている。回収ボックス511は、例えば、第1~第4の高さ位置でそれぞれ停止可能に構成されていてもよい。第1の高さ位置は、図4及び図5に示されるように、搬送部Cv3に対応する高さであってもよい。第2の高さ位置は、第1の高さ位置よりも低い高さ、より詳しくは、第1の高さ位置から挿通ポスト12の長さの分を差し引いた高さ位置よりも低い高さであってもよい。第3の高さ位置は、押出部540に対応する高さであってもよい(図16参照)。第4の高さ位置は、搬送部Cv5に対応する高さであってもよい(図18参照)。
【0040】
支持部材512は、搬送治具10を一時的に支持するように構成されている。支持部材512は、ベース部材512aと、複数の支持突起512bとを含む。ベース部材512aは、図5及び図6に示されるように、回収ボックス511の開口部511aの近傍に配置されている。ベース部材512aは、上方から見て、支持部材512に支持された状態における搬送治具10の樹脂流路13と重なり合わないように、開口部511aを部分的に閉塞していてもよい。この場合、残留樹脂Rがベース部材512aを避けて落下しやすくなる。なお、ベース部材512aは、水平面に対して傾斜していてもよい。例えば、ベース部材512aは、外周縁に向かうほど高さが低くなる錐面を含んでいてもよい。これらの場合、残留樹脂Rがベース部材512a上に乗った場合でも、斜面を伝って回収ボックス511に落下しやすくなる。
【0041】
支持突起512bは、ベース部材512aの表面から上方に向けて突出している。複数の支持突起512bの先端は、いずれも同じ高さに位置していてもよい。この場合、複数の支持突起512bによって搬送治具10が仮想的な水平面で支持されるので、支持部材512上において搬送治具10が安定する。支持突起512bは、上方から見て、支持部材512に支持された状態における搬送治具10の樹脂流路13と重なり合わないように配置されていてもよい。この場合、残留樹脂Rが支持部材512を避けて落下しやすくなる。
【0042】
昇降ローラ513は、Z方向に直交する水平方向(図4等のY方向)において対向する一対の車輪で構成されている。当該一対の車輪は、図4及び図6に示されるように、支持部材512が間に位置するように配置されている。当該一対の車輪の間隔は、搬送治具10の幅よりも狭い間隔となるように設定されている。複数の昇降ローラ513は、Y方向及びZ方向の双方に対して直交する方向(図4等のX方向)に沿って一列に並んでいる。X方向は、回収部510における搬送治具10の移動方向でもある。
【0043】
昇降ローラ513は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、Z方向において上下動するように構成されている。昇降ローラ513は、その上端が支持突起512bの上端よりも上方に位置する上昇位置(図5等参照)と、その上端が支持突起512bの上端よりも下方に位置する降下位置(図14等参照)との間で昇降してもよい。昇降ローラ513が降下位置にある場合、昇降ローラ513は、その一部又は全体が凹空間SP内に位置していてもよい。
【0044】
第1のストッパ514及び第2のストッパ515は、図5及び図6に示されるように、上方から見て開口部511aがこれらの間に位置するように、回収ボックス511に配置されている。換言すれば、第1のストッパ514及び第2のストッパ515は、X方向において対向している。回収ボックス511が第1の高さ位置にある状態で、第2のストッパ515は、図5に示されるように、第1のストッパ514よりも搬送部Cv3の近くに位置している。
【0045】
第1のストッパ514は、搬送部Cv3から回収部510に搬入された搬送治具10を第1のストッパ514の位置で停止させるように構成されている。第1のストッパ514は、図6に示されるように、Y方向に沿って並ぶ一対の板状部材を含んでいてもよい。当該一対の板状部材の離間距離は、第1のプッシャ516がこれらの間を通過できるよう、第1のプッシャ516の幅よりも大きく設定されていてもよい。
【0046】
第2のストッパ515は、搬送部Cv3から回収部510に搬入された搬送治具10が搬送部Cv3に戻るのを防ぐように構成されている。第2のストッパ515は、図5図7に示されるように、ベース部材515aと、ローラ515bと、付勢部材515cとを含む。ベース部材515aは、Y方向において延びており、中央部分が両端部分よりも低い位置を延びるクランク状を呈している。そのため、後述する第2のプッシャ517の進退に伴い、第2のプッシャ517とベース部材515aの中央部分との衝突が防止されている。
【0047】
ローラ515bは、ベース部材515aの両端部にそれぞれ回転可能に取り付けられた一対の車輪で構成されている。ローラ515bを構成する一対の車輪の間隔は、搬送治具10の幅よりも狭く設定されており、昇降ローラ513を構成する一対の車輪の間隔と同程度であってもよい。付勢部材515cは、ベース部材515aの中央部分と回収ボックス511の上面とを接続している。付勢部材515cは、ベース部材515a及びローラ515bを上方に向けて付勢するように構成されている。付勢部材515cは、例えば、圧縮コイルバネやゴムであってもよい。
【0048】
第1のプッシャ516は、図5及び図6に示されるように、回収ボックス511に対して第1のストッパ514側に配置されている。第1のプッシャ516は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、X方向において進退可能に構成されている。回収部510に搬送治具10が位置している場合、第1のプッシャ516が、第1のストッパ514の一対の板状部材の間を通って第2のストッパ515に近づくように伸びると、搬送治具10が回収部510から押し出される。
【0049】
第2のプッシャ517は、図5に示されるように、回収ボックス511に対して第2のストッパ515側(搬送部Cv3側)に配置されている。第2のプッシャ517は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、X方向において進退可能に構成されている。搬送部Cv3に搬送治具10が位置している場合、第2のプッシャ517が、第2のストッパ515のベース部材515aの中央部分に接触することなく第1のストッパ514に近づくように伸びると、搬送治具10が搬送部Cv3から回収部510に押し出される。
【0050】
保持部520は、図4図6に示されるように、一対の保持部材521で構成されている。一対の保持部材521は、上方から見て開口部511aがこれらの間に位置するように、回収ボックス511に取り付けられている。一対の保持部材521は、Y方向において対向している。
【0051】
保持部材521は、板状を呈するベース部材521aと、可動部材521bとを含む。ベース部材521aは、開口部511aの近傍に位置しており、X方向に沿って延びている。一対のベース部材512aの間隔は、搬送治具10の幅と同程度か又はそれよりもわずかに大きく設定されている。そのため、一対のベース部材512aは、搬送治具10が昇降ローラ513上をX方向に沿ってスライドする際のガイド部材として機能する。
【0052】
可動部材521bは、保持部材521の上端部に取り付けられている。可動部材521bは、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、Y方向において移動可能に構成されている。可動部材521bは、Y方向において可動部材521bが開口部511aの中央側に近づく接近位置(図4図6等参照)と、Y方向において可動部材521bが開口部511aから遠ざかる離隔位置(図15等参照)との間で移動してもよい。
【0053】
可動部材521bが近接位置にあり、且つ、昇降ローラ513が上昇位置にある場合、Z方向における可動部材521bと昇降ローラ513との離間距離は、搬送治具10のベース部材11の厚さと同程度か又はそれよりもわずかに大きく設定される。この場合、搬送治具10が昇降ローラ513上に位置していると、ベース部材11が上下方向において昇降ローラ513と可動部材521bとの間でほとんど移動できない。そのため、搬送治具10の上下方向における移動が制限される。
【0054】
分離部530は、搬送治具10に搭載されている積層体2を搬送治具10から分離して取り外すように構成されている。分離部530は、図4に示されるように、開口部511aと重なり合うように回収ボックス511の上方に位置している。分離部530は、搬送部Cv4の上面よりも上方に位置していてもよい。
【0055】
分離部530は、ベース部材531と、一対の可動部材532とを含む。ベース部材531は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、Y方向において移動可能に構成されている。ベース部材531は、上方から見てベース部材531が開口部511aと重なり合う第1の重複位置と、上方から見て搬送部Cv4と重なり合う第2の重複位置との間で移動してもよい。
【0056】
一対の可動部材532は、ベース部材531から突出するようにベース部材531に取り付けられている。一対の可動部材532は、ベース部材531から下方に突出していてもよいし(図4等参照)、ベース部材531から水平方向に沿って同じ向きに突出していてもよい。一対の可動部材532は、板状を呈しており、Y方向において対向している。一対の可動部材532の少なくとも一方は、図示しない駆動源に接続されており、コントローラCtrからの指示に基づいて当該駆動源が動作することにより、Y方向において移動可能に構成されている。例えば、一対の可動部材532の少なくとも一方は、一対の可動部材532が互いに近づく接近状態と、一対の可動部材532が互いに遠ざかる離隔状態とが生ずるように、Y方向において移動してもよい。
【0057】
離隔状態において、搬送治具10に搭載された積層体2を一対の可動部材532の間に配置し、その後、一対の可動部材532を接近状態とすることで、一対の可動部材532によって積層体2が挟持される。一対の可動部材532による積層体2の挟持をより確実にする目的で、一対の可動部材532のそれぞれの対向面が積層体2の周面に対応する湾曲面とされていてもよい。
【0058】
押出部540は、搬送治具10の樹脂流路13に残留している固化樹脂である残留樹脂Rを、樹脂流路13から下方に押し出すように構成されている。押出部540は、図4に示されるように、ベース部材541と、複数の押出突起542とを含む。
【0059】
ベース部材541は、ベース部材531が第1の重複位置にある場合、回収部510及び分離部530の上方に位置している。すなわち、ベース部材531が第1の重複位置にある場合、回収部510、分離部530及び押出部540は、Z方向(鉛直方向)に沿って一列に並ぶ。ベース部材541は、図示しない壁面等の非可動物に対して、着脱可能に取り付けられている。そのため、ベース部材541は、非可動物に取り付けられた状態において、X方向、Y方向及びZ方向のいずれにも移動しなくてもよい。
【0060】
ベース部材541の中央部には、Z方向に沿って延びる収容孔541aが形成されている。収容孔541aは、ベース部材541の下面に開放されていればよい。すなわち、収容孔541aは、ベース部材541を貫通する貫通孔であってもよいし、ベース部材541を貫通しない非貫通孔であってもよい。収容孔541aの開口面積及び高さはそれぞれ、搬送治具10の挿通ポスト12の直径及び高さよりも大きく設定されている。
【0061】
複数の押出突起542は、ベース部材541の下面から下方に向けて突出している。各押出突起542はそれぞれ、上方から見て、ベース部材11の各樹脂流路13と重なり合うように配置されていてもよい。上方から見たときの押出突起542の大きさは、貫通孔13bよりも小さく設定されている。押出突起542の高さは、押出突起542によって樹脂流路13から残留樹脂Rを押し出すことができれば特に制限されない。
【0062】
廃棄部550は、回収ボックス511に回収された残留樹脂Rを廃棄するための集積容器として構成されている。廃棄部550は、回収ボックス511が第3の高さ位置にあるときに、回収ボックス511と隣り合うように配置されている。廃棄部550に所定量の残留樹脂Rが集積された場合、自動的に又は人手により、廃棄部550が空の別の廃棄部550と交換されてもよい。あるいは、廃棄部550内に至った残留樹脂Rが、その都度、廃棄処理されてもよい。
【0063】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図2図19を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、図2に示されるように、コントローラCtrの指示に基づいて、プレス加工装置200が、金属板を順次打ち抜きつつ複数の打抜部材Wを積層して、積層体2を形成する(図19のステップS1参照)。プレス加工装置200から排出された積層体2は、各磁石挿入孔5と各樹脂流路13(貫通孔13b)とがそれぞれ少なくとも部分的に重なり合うように、搬送治具10に搭載される。その後、積層体2は、搬送治具10と共に、搬送部Cv1によって磁石取付装置300に搬送される(図2の矢印Ar1参照)。
【0064】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、磁石取付装置300が、各磁石挿入孔5に永久磁石3をそれぞれ配置する(図19のステップS2参照)。その後、積層体2は、搬送治具10と共に、搬送部Cv1によって磁石取付装置300に搬送される(図2の矢印Ar2参照)。
【0065】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、樹脂供給装置400が動作する。積層体2及び搬送治具10が搬入されると、樹脂供給装置400は、下型410及び上型420によって積層体2及び搬送治具10を挟持する。これにより、積層体2は、高さ方向において加圧される。この状態で、各貫通孔411に樹脂タブレットが投入され、加熱源412によって樹脂タブレットが加熱される。なお、樹脂タブレットの貫通孔411への投入前に加熱源412が動作し、下型410が予め所定温度まで昇温されていてもよい。
【0066】
樹脂タブレットが溶融状態となると、コントローラCtrの指示に基づいて、駆動源432がプランジャ431を駆動する。これにより、図3に示されるように、各貫通孔411内の溶融樹脂が、プランジャ431によって各磁石挿入孔5内に供給される(図19のステップS3参照)。その結果、磁石挿入孔5内に対して溶融樹脂が充填されると共に、溶融樹脂の一部が樹脂流路13内に残存する。磁石挿入孔5内及び樹脂流路13内の溶融樹脂は、これらの内部で固化する。
【0067】
その後、積層体2は、搬送治具10と共に、搬送部Cv3によって除去装置500に搬送される(図2の矢印Ar3参照)。このとき、除去装置500において、図5に示されるように、回収ボックス511が第1の高さ位置に位置しており、昇降ローラ513が上昇位置に位置しており、可動部材521bが近接位置に位置している。
【0068】
積層体2及び搬送治具10が搬送部Cv3の下流端まで至ると、図8に示されるように、コントローラCtrの指示に基づいて、第2のプッシャ517が回収部510に近づくように動作する。これにより、第2のプッシャ517によって押されたベース部材11が、Y方向において一対のベース部材521aによってガイドされると共に、Z方向において昇降ローラ513及び可動部材521bによってガイドされながら、第1のストッパ514に至るまで、搬送部Cv3上、ローラ515b上及び昇降ローラ513上をスライドする。その結果、図9に示されるように、積層体2及び搬送治具10が回収部510に載置される(図19のステップS4参照)。このとき、積層体2の外周面は、Y方向において、分離部530の一対の可動部材532と部分的に重なり合っている。
【0069】
なお、ローラ515bは付勢部材515cによって上方に付勢されているので、ベース部材11がいったんローラ515bを通過すると、ローラ515bが上方に移動する。そのため、ベース部材11は、ローラ515bによって搬送部Cv3側に戻り難くなっている。
【0070】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、一対の可動部材532が互いに近づく接近状態となるように、一対の可動部材532の少なくとも一方が動作する。これにより、積層体2の外周面が一対の可動部材532によって挟持される(図10参照)。この挟持状態を維持したまま、コントローラCtrの指示に基づいて、第2の高さ位置となるように回収ボックス511が降下する(図11参照)。このとき、ベース部材11は、Z方向において昇降ローラ513と可動部材521bとの間に位置しており、これらで保持されているので、積層体2側への移動が制限されている。これにより、図12に詳しく示されるように、積層体2が搬送治具10から分離されると共に、磁石挿入孔5内において固化した樹脂と樹脂流路13内において固化した樹脂とが、積層体2の下端面とベース部材11の上面との間で分断される(図19のステップS5参照)。よって、磁石挿入孔5内に固化樹脂4が形成され、回転子積層鉄心1が完成する。さらに、樹脂流路13内に固化した樹脂が残留することで、残留樹脂Rが形成される。
【0071】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、第2の重複位置に位置するようにベース部材531がY方向に移動する(図13参照)。これにより、回転子積層鉄心1が搬送部Cv4上に載置される。次に、コントローラCtrの指示に基づいて、一対の可動部材532が互いに遠ざかる離隔状態となるように、一対の可動部材532の少なくとも一方が動作する。これにより、一対の可動部材532による積層体2の外周面の挟持が解除され、回転子積層鉄心1が搬送部Cv4によって後続の工程に搬送される。
【0072】
一方、第2の高さ位置にある回収ボックス511において、コントローラCtrの指示に基づいて、降下位置となるように昇降ローラ513が降下する(図13及び図14参照)。これにより、搬送治具10が支持突起512b上に支持される。このとき、図13及び図14に示されるように、ベース部材11は、X方向において、第1のストッパ514及びベース部材515aによって位置決めされ、Y方向において、一対のベース部材521aによって位置決めされる(図19のステップS6参照)。
【0073】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、離隔位置に位置するように一対の可動部材521bが移動する(図13参照)。この状態で、コントローラCtrの指示に基づいて、第3の高さ位置となるように回収ボックス511が上昇する(図15参照)。挿通ポスト12が収容孔541aに収容され、且つ、ベース部材11の上面がベース部材541の下面と当接又は近接するまで、回収ボックス511が上昇すると、各押出突起542が、対応する樹脂流路13内の残留樹脂Rを下方に押し出す(図15参照)。これにより、樹脂流路13から残留樹脂Rが回収ボックス511内に落下する。その結果、樹脂流路13から残留樹脂Rが除去される(図19のステップS7参照)。回収ボックス511内に回収された残留樹脂Rは、回収ボックス511の底壁面(傾斜面)に沿って滑り落ちていき、廃棄部550内に集積される(図17参照)。
【0074】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、上昇位置に位置するように昇降ローラ513が上昇する(図17参照)。これにより、搬送治具10が昇降ローラ513によって支持される。次に、コントローラCtrの指示に基づいて、第4の高さ位置となるように回収ボックス511が降下する(図17参照)。これにより、昇降ローラ513と搬送部Cv5とが略等しい高さとなる(図18参照)。
【0075】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、第1のプッシャ516が第1のストッパ514の一対の板状部材の間を通って第2のストッパ515側に伸びるように動作する(図18参照)。これにより、第1のプッシャ516によって押されたベース部材11が、Y方向において一対のベース部材521aによってガイドされながら、昇降ローラ513上、ローラ515b上及び搬送部Cv5をスライドする。その結果、搬送治具10は、搬送部Cv5に押し出され、搬送部Cv5によってプレス加工装置200に搬送される(戻される)(図19のステップS8参照)。
【0076】
次に、コントローラCtrの指示に基づいて、接近位置に位置するように一対の可動部材521bが移動する。また、コントローラCtrの指示に基づいて、第1の高さ位置となるように回収ボックス511が上昇する。これにより、除去装置500は、図4に示される初期状態に戻される。その後、後続の積層体2及び搬送治具10の受け入れと、積層体2及び搬送治具10の分離と、樹脂流路13からの残留樹脂Rの除去と、回転子積層鉄心1の後続の工程への搬送と、搬送治具10のプレス加工装置への搬送とが繰り返し実行される。
【0077】
[作用]
以上の例によれば、磁石挿入孔5への溶融樹脂の供給後、積層体2及び搬送治具10が回収部510に搬送されるまでの間は、樹脂流路13内の固化樹脂が磁石挿入孔5内の固化樹脂と一体的に繋がっている。そのため、搬送治具10の移動時に、樹脂流路13から残留樹脂Rが脱落することがない。また、搬送治具10からの積層体2の分離と、押出部540による樹脂流路13からの残留樹脂Rの押し出しとは、共に、搬送治具10が回収部510に載置された状態で行われる。そのため、樹脂流路13の残留樹脂Rは押出部540によって押し出されて回収部510に回収される。あるいは、例えば、積層体2を搬送治具10から取り外す際の振動や、押出部540によって残留樹脂Rが押し出されるまでの間に搬送治具10に生ずる振動などによって、押出部540による押し出し前に残留樹脂Rが樹脂流路13から不意に落下しても、落下した残留樹脂Rは回収部510に回収される。したがって、樹脂流路13から残留樹脂Rが除去された状態で、搬送治具10が次の工程に移動する。以上によれば、搬送治具10から脱落した残留樹脂Rの周囲への散乱を防止することが可能となる。
【0078】
以上の例によれば、樹脂流路13を構成する凹部13a及び/又は貫通孔13bは、ベース部材11の上面から下面に向かうにつれて拡がるテーパ形状を呈しうる。この場合、押出部540によって樹脂流路13内の残留樹脂Rが上方から押圧される際に、残留樹脂Rが下方に落下しやすくなる。そのため、樹脂流路13から残留樹脂Rを効率的に除去することが可能となる。
【0079】
以上の例によれば、回収部510及び押出部540がZ方向(鉛直方向)において重なり合っており、回収ボックス511が押出部540に近づくように回収ボックス511を上昇させることで、押出突起542によって樹脂流路13から残留樹脂Rを押し出している。そのため、回収ボックス511の移動距離が短くなるので、残留樹脂Rを除去するための除去装置500をコンパクト化することが可能となる。また、この場合、押出部540を移動させるための駆動源が不要となるので、残留樹脂Rを除去するための除去装置500を低コストで構成することが可能となる。
【0080】
以上の例によれば、回収ボックス511に落下して回収された残留樹脂Rは、第3の高さ位置にある回収ボックス511と隣り合うように配置された廃棄部550に排出される。そのため、廃棄部550が移動しないので、残留樹脂Rを除去するための除去装置500をコンパクト化することが可能となる。また、回収ボックス511で回収された残留樹脂Rが廃棄部に適宜排出されるので、残留樹脂Rを廃棄するために回収部510を停止する必要がない。そのため、回転子積層鉄心1の製造効率を高めることが可能となる。
【0081】
以上の例によれば、回収ボックス511の上面には、上方に向けて開放された開口部511aが形成されている。開口部511aの大きさは、搬送治具10が回収部510に載置された状態で上方から見て、搬送治具10の大部分と重なり合っていてもよい。この場合、樹脂流路13の位置が様々であっても、搬送治具10が回収部510に載置されたときに、樹脂流路13が開口部511aと重なり合いやすい。そのため、押出部540によって樹脂流路13から押し出された残留樹脂Rが、開口部511aを通じて回収ボックス511に落下しやすい。したがって、異なる種類の積層体2に応じて、異なる種類の回収ボックス511を個別に用意する必要がなくなる。その結果、異なる種類の積層体2に対応しつつ、残留樹脂Rを除去するための除去装置500を低コストで構成することが可能となる。なお、回収ボックス511の上面には、2つ以上の樹脂流路13に対応した複数の開口部が形成されていてもよいし、複数の樹脂流路13に一対一で対応する複数の開口部が形成されていてもよい。
【0082】
以上の例によれば、ベース部材541は、図示しない壁面等の非可動物に対して、着脱可能に取り付けられている。そのため、押出突起542の配置が異なる別のベース部材541に交換しうる。この場合、押出部540の交換は比較的手間なく安価に行える。そのため、異なる種類の積層体2に対応しつつ、残留樹脂Rを除去するための除去装置500を低コストで構成することが可能となる。
【0083】
以上の例によれば、積層体2と搬送治具10との分離に際して、ベース部材11は、Z方向において昇降ローラ513と可動部材521bとの間に位置しており、これらで保持されている。そのため、搬送治具10の積層体2側への移動が制限されている。したがって、搬送治具10からの積層体2の取り外しをよりスムーズに行うことが可能となる。
【0084】
以上の例によれば、積層体2と搬送治具10との分離の後に、離隔位置に位置するように一対の可動部材521bが移動する。これにより、昇降ローラ513と可動部材521bとによる搬送治具10の保持が解除される。そのため、押出部540と搬送治具10との近接が可動部材521bによって阻害され難くなる。したがって、押出部540による残留樹脂Rの押し出しを、より精度よく行うことが可能となる。
【0085】
以上の例によれば、搬送部Cv3から回収部510に搬入された搬送治具10の停止位置が、第1のストッパ514によって規定されている。そのため、回収ボックス511に対する搬送治具10のX方向における位置ずれを防止することが可能となる。
【0086】
以上の例によれば、搬送治具10が支持突起512b上に支持されると、搬送治具10は、X方向において、第1のストッパ514及びベース部材515aによって位置決めされる。そのため、回収ボックス511に対する搬送治具10のX方向における位置ずれを、より確実に防止することが可能となる。
【0087】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0088】
(1)一つの貫通孔411に複数の樹脂タブレットが収容される場合、これらの樹脂タブレットのサイズ及び/又は材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
(2)上記の例では、貫通孔411内に樹脂タブレットT、すなわち、固形状の樹脂材料が収容されていたが、液状、粉体状の樹脂材料が貫通孔411内に収容されてもよい。
【0090】
(3)上記の例では、固定されたベース部材541に対して回収ボックス511が近接又は離間するように、回収ボックス511が上下動していたが、ベース部材541も上下動するように構成されていてもよい。あるいは、回収ボックス511とベース部材541とが、Z方向に沿うことなく近接又は離間するように構成されていてもよい。
【0091】
(4)上記の例では、押出突起542がベース部材541に固定されていたが、押出部540は、押出突起542に代えて、ベース部材541に対して上下動可能な押出ピンを含んでいてもよい。この場合、ベース部材541が搬送治具10のベース部材11に近接しなくても、押出ピンがベース部材541に対して下方に進出することにより、残留樹脂Rを樹脂流路13から押し出すことができる。そのため、保持部520の可動部材521bは、接近位置にあるまま移動しなくてもよいし、ベース部材521aに対して固定されていてもよい。
【0092】
(5)回転子積層鉄心1以外の他の鉄心製品に本技術を適用してもよい。他の鉄心製品は、例えば、固定子積層鉄心、非積層型の固定子鉄心、非積層型の回転子鉄心であってもよい。固定子鉄心は、複数の鉄心片が組み合われて構成される分割型の固定子鉄心であってもよいし、非分割型の固定子鉄心であってもよい。非分割型の固定子積層鉄心は、円環状を呈する打抜部材Wが複数積層されたものであってもよい。あるいは、非分割型の固定子積層鉄心は、一つのヨークに複数のティースが設けられており、ティース間において折り曲げられることによって環状となる折り曲げ型の打抜部材が複数積層されたものであってもよい。非積層型の回転子鉄心又は固定子鉄心は、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0093】
(6)高さ方向に延びる樹脂注入部(例えば、貫通孔、溝など)に溶融樹脂を充填する工程を含む鉄心製品の製造方法に、本技術を適用してもよい。例えば、固定子鉄心と巻線との間を絶縁するための樹脂膜を固定子鉄心のスロットの内周面に設ける際に、本技術を適用してもよい。あるいは、複数の打抜部材Wを接合する目的で、積層体2に設けられた貫通孔に溶融樹脂を充填する際に、本技術を適用してもよい。
【0094】
(7)上記の例では、プレス加工装置200から排出された積層体2が、除去装置500からプレス加工装置200に搬送された搬送治具10に搭載される。しかしながら、積層体2の搬送治具10への搭載処理は、プレス加工装置200とは異なる搭載装置において実行されてもよい。この場合、プレス加工装置200から排出された積層体2と、除去装置500から排出された搬送治具10とは、それぞれ別の搬送部によって搭載装置に搬送される。搭載装置において積層体2が搬送治具10に搭載されると、積層体2は、搬送治具10と共に、搭載装置と磁石取付装置との間を延びる搬送部によって磁石取付装置300に搬送される。
【0095】
[他の例]
例1.鉄心製品(1)の製造方法の一例は、鉄心本体(2)に設けられた樹脂形成領域(5)が搬送治具(10)の樹脂流路(13)と連通するように、鉄心本体(2)が搬送治具(10)に載置された状態で、樹脂供給装置(400)により、樹脂流路(13)を介して樹脂形成領域(5)に溶融樹脂を供給することと、溶融樹脂を供給することの後に、鉄心本体(2)と共に搬送治具(10)を樹脂供給装置(400)から回収部(510)に搬送して、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することと、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することの後に、鉄心本体(2)を搬送治具(10)から取り外して、樹脂形成領域(5)で固化した樹脂と、樹脂流路(13)内で固化した樹脂とを分断することにより、鉄心本体(2)と、樹脂形成領域(5)に形成された固化樹脂(4)とを含む鉄心製品(1)を得ると共に、固化樹脂の残留物である残留樹脂(R)を樹脂流路(13)内に形成することと、残留樹脂(R)を形成することの後に、上方から押出部(540)を残留樹脂(R)に当接させて、樹脂流路(13)内から残留樹脂(R)を回収部(510)に落下させることとを含んでいてもよい。この場合、溶融樹脂の供給後、鉄心本体及び搬送治具が回収部に搬送されるまでの間は、樹脂流路内の固化樹脂が樹脂形成領域内の固化樹脂と一体的に繋がっている。そのため、搬送治具の装置間の移動時に、樹脂流路から残留樹脂が脱落することがない。また、搬送治具からの鉄心本体の分離と、押出部による樹脂流路からの残留樹脂の押し出しとは、共に、搬送治具が回収部に載置された状態で行われる。そのため、樹脂流路の残留樹脂は押出部によって押し出されて回収部に回収される。あるいは、例えば、鉄心本体を搬送治具から取り外す際の振動や、押出部によって残留樹脂が押し出されるまでの間に搬送治具に生ずる振動などによって、押出部による押し出し前に残留樹脂が樹脂流路から不意に落下しても、落下した残留樹脂は回収部に回収される。したがって、樹脂流路から残留樹脂が除去された状態で、搬送治具が次の工程に移動する。以上によれば、搬送治具から脱落した残留樹脂の周囲への散乱を防止することが可能となる。
【0096】
例2.例1の方法において、樹脂流路(13)は、搬送治具(10)を上下方向に貫通する貫通孔であり、貫通孔は、下方に向かうにつれて面積が広がるテーパ形状を呈していてもよい。この場合、押出部によって樹脂流路内の残留樹脂が上方から押圧される際に、残留樹脂が下方に落下しやすくなる。そのため、樹脂流路から残留樹脂を効率的に除去することが可能となる。
【0097】
例3.例1又は例2の方法において、残留樹脂(R)を落下させることは、鉛直方向において重なり合うように配置された回収部(510)及び押出部(540)が互いに近接するように、回収部(510)及び押出部(540)の少なくとも一方を鉛直方向に沿って移動させることを含んでいてもよい。この場合、回収部又は押出部の移動距離が短くなるので、残留樹脂を除去するための除去装置をコンパクト化することが可能となる。
【0098】
例4.例1~例3のいずれかの方法において、残留樹脂(R)を落下させることは、回収部(510)が押出部(540)に当接する上昇位置まで回収部(510)を押出部(540)に向けて上昇させて、樹脂流路(13)内から残留樹脂(R)を回収部(510)に落下させることを含んでいてもよい。この場合、押出部を移動させるための駆動源が不要となるので、残留樹脂を除去するための除去装置を低コストで構成することが可能となる。
【0099】
例5.例4の方法において、残留樹脂(R)を落下させることは、樹脂流路(13)内から回収部(510)に落下した残留樹脂(R)を、回収部(510)を通じて、上昇位置にある回収部(510)の近傍に位置する廃棄部(550)に排出することを含んでいてもよい。この場合、廃棄部が移動しないので、残留樹脂を除去するための除去装置をコンパクト化することが可能となる。また、回収部で回収された残留樹脂が廃棄部に適宜排出されるので、残留樹脂を廃棄するために回収部を停止する必要がない。そのため、鉄心製品の製造効率を高めることが可能となる。
【0100】
例6.例1~例5のいずれかの方法において、回収部(510)は、樹脂流路(13)内から落下した残留樹脂(R)が通過可能で且つ鉛直方向から見たときに樹脂流路(13)よりも大きい開口部(511a)を含んでいてもよい。ところで、鉄心製品の種類(例えば、サイズなど)に応じて、鉄心本体に対する樹脂形成領域の位置が変化することがあり、それに応じて、搬送治具の樹脂流路の位置も変化することがある。しかしながら、例6の場合、比較的大きな開口部が回収部に形成されているので、樹脂流路の位置が様々であっても、搬送治具が回収部に載置されたときに、樹脂流路が当該開口部と重なり合いやすい。そのため、押出部によって樹脂流路から押し出された残留樹脂が、当該開口部を通じて回収部に落下しやすい。したがって、異なる種類の鉄心製品に応じて、異なる種類の回収部を個別に用意する必要がなくなる。その結果、異なる種類の鉄心製品に対応しつつ、残留樹脂を除去するための除去装置を低コストで構成することが可能となる。
【0101】
例7.例1~例6のいずれかの方法において、押出部(540)は、鉄心本体(2)の種類に応じて別の押出部(540)に交換可能であってもよい。ところで、押出部の交換は比較的手間なく安価に行える。そのため、例7の場合、異なる種類の鉄心製品に対応しつつ、残留樹脂を除去するための除去装置を低コストで構成することが可能となる。
【0102】
例8.例1~例7のいずれかの方法において、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することは、回収部(510)に載置された搬送治具(10)を回収部(510)と保持部(520)とで上下方向において保持することを含んでいてもよい。この場合、搬送治具が回収部と保持部とで保持されることにより、搬送治具の上下方向における移動が制限される。そのため、搬送治具からの鉄心本体の取り外しをよりスムーズに行うことが可能となる。
【0103】
例9.例8の方法において、残留樹脂(R)を落下させることは、回収部(510)及び保持部(520)による搬送治具(10)の保持を解除することを含んでいてもよい。この場合、押出部と搬送治具との近接が保持部によって阻害され難くなる。そのため、押出部による残留樹脂の押し出しを、より精度よく行うことが可能となる。
【0104】
例10.例1~例9のいずれかの方法において、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することは、回収部(510)に対する搬送治具(510)の停止位置を規定するストッパ(514)によって搬送治具(10)の移動を規制することを含んでいてもよい。この場合、回収部に対する搬送治具の水平方向における位置ずれを防止することが可能となる。
【0105】
例11.例10の方法において、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することは、停止位置にある搬送治具(10)に関してストッパ(514)とは反対側に別のストッパ(515)を配置することにより、ストッパ(514)及び別のストッパ(515)の並ぶ方向における搬送治具(10)の移動を規制することを含んでいてもよい。この場合、回収部に対する搬送治具の水平方向における位置ずれを、より確実に防止することが可能となる。
【0106】
例12.残留樹脂(R)の除去方法の一例は、鉄心本体(2)に設けられた樹脂形成領域(5)が搬送治具(10)の樹脂流路(13)と連通するように、鉄心本体(2)が搬送治具(10)に載置された状態であって、樹脂形成領域(5)及び樹脂流路(13)の内部に一体的に固化樹脂が形成された状態で、鉄心本体(2)と共に搬送治具(10)を回収部(510)に搬送して、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することと、搬送治具(10)を回収部(510)に載置することの後に、鉄心本体(2)を搬送治具(10)から取り外して、樹脂形成領域(5)で固化した樹脂と、樹脂流路(13)内で固化した樹脂とを分断することにより、固化樹脂の残留物である残留樹脂(R)を樹脂流路(13)内に形成することと、残留樹脂(R)を形成することの後に、上方から押出部(540)を残留樹脂(R)に当接させて、樹脂流路(13)内から残留樹脂(R)を回収部(510)に落下させることとを含んでいてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【0107】
例13.残留樹脂(R)の除去装置(500)の一例は、鉄心本体(2)が載置された搬送治具(10)を搬送するように構成された搬送部(Cv3)であって、鉄心本体(2)には樹脂形成領域(5)が設けられており、搬送治具(10)には、鉄心本体(2)が載置された状態で樹脂形成領域(5)と連通する樹脂流路(13)が設けられている、搬送部(Cv3)と、搬送部(Cv3)によって搬送される搬送治具(10)が載置可能に構成された回収部(510)と、回収部(510)に載置されている搬送治具(10)から鉄心本体(2)を取り外すように構成された分離部(530)と、分離部(530)によって鉄心本体(2)が取り外された後の搬送治具(10)の樹脂流路(13)に残留している残留樹脂(R)を回収部(510)に向けて下方に押し出すように構成された押出部(540)とを備えていてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0108】
1…回転子積層鉄心(鉄心製品)、2…積層体(鉄心本体)、4…固化樹脂、5…磁石挿入孔(樹脂形成領域)、10…搬送治具、13…樹脂流路、13a…凹部、13b…貫通孔、100…製造装置、400…樹脂供給装置、500…除去装置、510…回収部、511…回収ボックス、511a…開口部、512…支持部材、513…昇降ローラ、514…第1のストッパ(ストッパ)、515…第2のストッパ(別のストッパ)、520…保持部、521…保持部材、521a…ベース部材、521b…可動部材、530…分離部、540…押出部、550…廃棄部、Ctr…コントローラ、Cv1~Cv5…搬送部、R…残留樹脂。
図1
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