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特許7422635電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び電気加熱式担体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び電気加熱式担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240119BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20240119BHJP
   B01J 35/50 20240101ALI20240119BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240119BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240119BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
F01N3/20 K ZAB
B01J35/02 G
B01J35/04 301F
B01J35/04 301G
B01D53/94 222
H05B3/03
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020159053
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052585
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 謙一
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-218856(JP,A)
【文献】特開平09-192453(JP,A)
【文献】特表2015-535796(JP,A)
【文献】特開2018-164899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 3/20
B01J 35/02
B01J 35/04
B01D 53/94
H05B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体と、
前記外周壁の表面に設けられている一対の電極端子と、
を備える、電気加熱式担体であって、
前記セルの延伸方向に対して垂直な断面において、前記ハニカム構造体が、
互いに離間して配置され、前記外周壁との間及び互いの間に通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリットと、
前記通電経路内に位置し、前記第1スリットとは異なる方向に延在する複数の第2スリットと、
を有し、
一方の前記電極端子から他方の前記電極端子までの通電経路の長さが、前記ハニカム構造体の径より長
前記第1スリットのそれぞれは、前記断面において、直線状に第1方向に延在し、かつ、前記第1方向に直交する第2方向に互いに離間して配置されており、
前記通電経路は、前記第2方向に隣り合う前記一対の第1スリットに挟まれているとともに、前記一対の第1スリットの一方の端部から他方の端部まで前記第1方向に延在された複数の部分経路を含み、前記複数の第2スリットは、前記部分経路内に設けられており、
前記部分経路内での前記第1方向に係る前記複数の第2スリットのそれぞれの位置は、前記第1方向に係る前記部分経路の中心位置から前記第1方向に係る前記部分経路の延在幅の30%以内の位置である、
電気加熱式担体。
【請求項2】
前記第2スリットは、前記断面において前記第1スリットと交わっている、
請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項3】
記第2方向に隣り合う一対の前記第1スリットは、前記第2方向から見たときに互いに一部重なるように配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の電気加熱式担体。
【請求項4】
前記第2方向に係る前記第2スリットの延在幅は、該第2スリットが設けられた前記部分経路を挟む前記一対の第1スリットの前記第2方向に係る離間距離の10%以上かつ90%以下である、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項5】
1つの前記部分経路内に複数の前記第2スリットが、前記第1方向に互いに離間して設けられており、
前記1つの部分経路内の前記複数の第2スリット間の離間距離は、前記1つの部分経路を挟む前記一対の第1スリットの前記第2方向に係る離間距離の1.25倍以上である、
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項6】
前記通電経路内で少なくとも2つの前記部分経路が互いに直列に配置されている、
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項7】
前記断面において、前記一対の電極端子が、前記ハニカム構造体の中心軸を挟んで前記第2方向に対向するように配置されている、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項8】
前記第1及び第2スリットの少なくとも一方に充填剤が充填されている、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項9】
前記第1スリットの少なくとも一部は前記外周壁から延在されている、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項10】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を収容する金属ケースと
を備える、排気ガス浄化装置。
【請求項11】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体と、
前記外周壁の表面に設けられている一対の電極端子と、
を備え、
前記セルの延伸方向に対して垂直な断面において、前記ハニカム構造体が、互いに離間して配置され、前記外周壁との間及び互いの間に通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリットを有する電気加熱式担体の製造方法であって、
前記第1スリットを有する加工前の電気加熱式担体を準備する工程と、
前記一対の電極端子に通電し、前記通電経路の電気抵抗を測定する工程と、
前記電気抵抗の測定値を前記電気抵抗の目標値と比較して、前記測定値と前記目標値との差に基づいて、前記断面において前記通電経路内に位置する少なくとも1本の第2スリットを前記加工前の電気加熱式担体に設ける工程と
を含む、電気加熱式担体の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも1本の第2スリットが、前記第1スリットとは異なる方向に延在する、
請求項11に記載の電気加熱式担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び電気加熱式担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1等で示されるように、ハニカム構造体の外周壁表面に設けられている一対の電極端子を通してハニカム構造体に電流を流し、ハニカム構造体を加熱する電気加熱式触媒(EHC)が知られている。このような電気加熱式触媒では、ハニカム構造体を流れる電流の通電経路を規定するために、複数本のスリットがハニカム構造体に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-103684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来構成において、ハニカム構造体に同一形状のスリットを設けたとしても、例えば基材の体積抵抗のばらつき等の要因により、電極端子間の電気抵抗が変動することがある。電極端子間の電気抵抗が変動すると、例えば電極端子間に一定電圧を印加する場合、投入電力が変動し、設計した出力を得られずに加熱不足等の不具合が生じる虞がある。また、電気抵抗が規定よりも低くなり、電流値が高くなる虞もある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電極端子間の電気抵抗の変動を抑え、設計した出力をより確実に得ることができる電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び電気加熱式担体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気加熱式担体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体と、外周壁の表面に設けられている一対の電極端子と、を備える、電気加熱式担体であって、セルの延伸方向に対して垂直な断面において、ハニカム構造体が、互いに離間して配置され、外周壁との間及び互いの間に通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリットと、通電経路内に位置し、第1スリットとは異なる方向に延在する複数の第2スリットと、を有し、一方の電極端子から他方の電極端子までの通電経路の長さが、ハニカム構造体の径より長く、第1スリットのそれぞれは、断面において、直線状に第1方向に延在し、かつ、第1方向に直交する第2方向に互いに離間して配置されており、通電経路は、第2方向に隣り合う一対の第1スリットに挟まれているとともに、一対の第1スリットの一方の端部から他方の端部まで第1方向に延在された複数の部分経路を含み、複数の第2スリットは、部分経路内に設けられており、部分経路内での第1方向に係る複数の第2スリットのそれぞれの位置は、第1方向に係る部分経路の中心位置から第1方向に係る部分経路の延在幅の30%以内の位置である
【0007】
本発明に係る排気ガス浄化装置は、上述の電気加熱式担体と、電気加熱式担体を収容する金属ケースとを備える。
【0008】
本発明に係る電気加熱式担体の製造方法は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム構造体と、外周壁の表面に設けられている一対の電極端子と、を備え、セルの延伸方向に対して垂直な断面において、ハニカム構造体が、互いに離間して配置され、外周壁との間及び互いの間に通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリットを有する電気加熱式担体の製造方法であって、第1スリットを有する加工前の電気加熱式担体を準備する工程と、一対の電極端子に通電し、通電経路の電気抵抗を測定する工程と、電気抵抗の測定値を電気抵抗の目標値と比較して、測定値と目標値との差に基づいて、断面において通電経路内に位置する少なくとも1本の第2スリットを加工前の電気加熱式担体に設ける工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び電気加熱式担体の製造方法によれば、通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリットとは別に少なくとも1本の第2スリットをハニカム構造体が有しているので、電極端子間の電気抵抗の変動を抑え、設計した出力をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における電気加熱式担体を示す正面図である。
図2図1の線II-IIにおける電気加熱式担体の断面図である。
図3図1の部分経路のうちの1つを拡大して示す説明図である。
図4図3の第1及び第2スリットの第1態様を示す説明図である。
図5図3の第1及び第2スリットの第2態様を示す説明図である。
図6図3の第1及び第2スリットの第3態様を示す説明図である。
図7図3の第1及び第2スリットの第4態様を示す説明図である。
図8図1の電気加熱式担体を含む排気ガス浄化装置を示す斜視図である。
図9図3の排気ガス浄化装置を示す分解斜視図である。
図10図1の電気加熱式担体の製造方法を示すフロチャートである。
図11図1の電気加熱式担体の第1変形例を示す正面図である。
図12図1の電気加熱式担体の第2変形例を示す正面図である。
図13図1の電気加熱式担体の第3変形例を示す正面図である。
図14】第2スリットの延在幅と通電経路の電気抵抗との関係を示すグラフである。
図15】1つの部分経路内に複数の第2スリットを設ける場合の第2スリット間の離間距離と第1スリットの離間距離との関係を示すグラフである。
図16】部分経路内での第2スリットの位置と部分経路の中心位置との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
<電気加熱式担体について>
図1は本発明の実施形態における電気加熱式担体1を示す正面図であり、図2図1の線II-IIにおける電気加熱式担体1の断面図である。図1及び図2に示すように、本実施の形態の電気加熱式担体1は、ハニカム構造体2及び一対の電極端子3を有している。
【0013】
ハニカム構造体2は、セラミックス製の柱状部材である。セラミックス材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックス等を挙げることができる。これらの中でも、SiC及びSiの少なくとも一方を主成分として含むセラミックスが好ましい。より好ましくは、Si含浸SiCで構成されているセラミックスである。
【0014】
本実施の形態のハニカム構造体2は、導電性を有する。ハニカム構造体2は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、電気抵抗率については特に制限はないが、0.0005~200Ωcmであることが好ましく、0.001~100Ωcmであることが更に好ましい。本発明において、ハニカム構造体2の電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0015】
ハニカム構造体2の外形は、柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。なお、柱状とは、セル20cの延伸方向(ハニカム構造体2の軸方向2A)に厚みを有する立体形状と理解できる。軸方向2Aに係るハニカム構造体2の軸方向長さは、幅方向2Wに係るハニカム構造体2の幅方向長さよりも短くてもよい。
【0016】
本実施の形態のハニカム構造体2は、中央部20、外周部21及び外周壁22を有している。
【0017】
中央部20は、ハニカム構造体2の幅方向2Wに係るハニカム構造体2の中央に設けられている。図1に示すようにハニカム構造体2の底面が円形状であるとき、幅方向2Wは径方向と同義である。中央部20は、中央部20の一方の端面20aから他方の端面20bまで貫通して流路を形成する複数のセル20cを区画形成する隔壁20dを有している。一方の端面20aからセル20cに流入した流体は、流路及び/又は隔壁20dを通過して他方の端面20bから抜け出ることができる。流体は、例えば自動車等の排気ガスであり得る。
【0018】
セル20cの延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル20cの形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体2に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、四角形が特に好ましい。
【0019】
隔壁20dは、気孔率が0~60%であることが好ましく、0~50%であることがより好ましく、0~40%であることがさらに好ましい。気孔率が60%以下であることで、隔壁20dの強度を確保することができる。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。なお、気孔率が20%以下の場合は水銀ポロシメータではなく、隔壁20dの断面のSEM画像から空隙部と隔壁部を二値化して気孔率を算出してもよい。
【0020】
セル20cを区画形成する隔壁20dの厚みは、0.05~0.31mmであることが好ましく、0.07~0.25mmであることがより好ましく、0.09~0.2mmであることがさらに好ましい。隔壁20dの厚みが0.05mm以上であることで、ハニカム構造体2の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁20dの厚みが0.31mm以下であることで、ハニカム構造体2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁20dの厚みは、セル20cの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル20cの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁20dを通過する部分の長さとして定義される。
【0021】
ハニカム構造体2は、セル20cの流路方向に垂直な断面において、セル密度が150×103~1400×103セル/m2であることが好ましく、300×103~1300×103セル/m2であることがより好ましく、400×103~1200×103セル/m2であることがさらに好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が150×103セル/m2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が1400×103セル/m2以下であるとハニカム構造体2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、中央部20の端面の面積でセル数を除して得られる値である。
【0022】
ハニカム構造体2に触媒を担持することにより、電気加熱式担体1を触媒体として使用することができる。セル20cの流路には、例えば自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0023】
外周部21は、中央部20の幅方向外側に設けられている。本実施の形態の外周部21は、中央部20の周方向全域にわたって中央部20を囲むように設けられている。
【0024】
外周壁22は、中央部20の周方向全域にわたって外周部21を囲むように設けられている。セル20cを区画形成する隔壁20dは、外周壁22の内側に配置されている。ハニカム構造体2に外周壁22を設けることは、ハニカム構造体2の構造強度を確保し、また、セル20cを流れる流体が外周壁22から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁22の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁22を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁20dとの強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁22の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁22の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁22の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁22の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0025】
本実施の形態の外周部21は、中央部20から外周部21の外周面21dに向かって先細り状の外形を有している。換言すると、外周部21は、中央部20から外周部21の外周面21dに向かって軸方向長さが徐々に短くなっている。本実施の形態の外周部21の端面21a,21bは、ハニカム構造体2の幅方向2Wに対して傾斜して延在されたテーパ面とされている。外周部21の端面21a,21bは、ハニカム構造体2の軸方向2Aに係る両端において、中央部20の外縁と外周面21dとを接続する面である。なお、外周部21は無くてもよく、この場合、隔壁20dで区画されたセルcを有する中央部20が広がる。
【0026】
本実施の形態の外周部21は、ハニカム構造体2の軸方向2Aに係る中心位置においてハニカム構造体2の幅方向2Wに延在する平面を中心に対称の形状を有している。各端面21a,21bを構成する各テーパ面の傾斜角度及び延在幅は互いに等しくされている。
【0027】
本実施の形態の外周部21の内部には、外周部21の一方の端面21aから他方の端面21bまで貫通された複数のセル20cが設けられている。外周部21の内部に設けられたセル20cは、中央部20の内部に設けられたセル20cと同等の構成を有する。しかしながら、外周部21は、内部にセル20cを有しない中実構造とされていてもよい。
【0028】
本実施の形態では、外周部21の端面21a,21bにおいて、セル20cの開口が充填剤24によって塞がれている。換言すると、外周部21の端面21a,21bは、充填剤24によって平滑面とされている。ここでいう平滑面とは、セル20cの開口が剥き出されている場合と比較して表面凹凸が小さな面を意味する。後述のように、外周部21の端面21a,21bは、ハニカム構造体2を把持するための把持用端面を構成する。外周部21の端面21a,21bにおいてセル20cの開口が充填剤24によって塞がれることで、端面21a,21bとの接触により後述の金属ケース6若しくはマット7(図8参照)又は端面21a,21bが削れることを抑えることができる。しかしながら、充填剤24が省略されて、外周部21の端面21a,21bにおいてセル20cの開口が開放されていてもよい。
【0029】
電極端子3は、外周壁22の表面に設けられている。また、電極端子3は、ハニカム構造体2の周方向に互いに離間して外周部21の外周面21d上に設けられている。本実施の形態の一対の電極端子3は、セル20cの延伸方向に対して垂直な断面において、ハニカム構造体2の中心軸を挟んでハニカム構造体2の幅方向2Wに対向するように配置されている。一対の電極端子3がハニカム構造体2の周方向に180°の角度間隔をおいて配置されていると理解してもよい。本実施の形態では、一対の電極端子3は、後述の第1スリット251が互いに離間する第2方向2W2に対向するように配置されている。
【0030】
本実施の形態の電極端子3は、外周面21d上に立設された柱状の部材とされている。電極端子3と外周面21dとの間に帯状又は瓦状の電極層が設けられていてもよい。電極端子3の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。
【0031】
電極端子3の径は、好ましくは5~25mmであり、より好ましくは8~20mmであり、さらに好ましくは10~15mmである。電極端子3の径が5mm以上であることで、耐電流性能を確保することができる。電極端子3の径が25mm以下であることで、良好な接合性を確保することができる。
【0032】
電極端子3の長さは、好ましくは6~30mmであり、より好ましくは8~25mmであり、さらに好ましくは10~20mmである。電極端子3の長さが6mm以上であることで、電極端子3に外部電極を接続しやすくなる。電極端子3の長さが30mm以下であることで、ハニカム構造体2の外径が過大となることを回避できる。
【0033】
電極端子3に電圧を印加するとジュール熱によりハニカム構造体2を発熱させることが可能である。このため、ハニカム構造体2はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0034】
セル20cの延伸方向に対して垂直な断面において、ハニカム構造体2は、複数本の第1スリット251と、少なくとも1本の第2スリット252とを有している。以下、この「セル20cの延伸方向に対して垂直な断面」を「上述の断面」と呼ぶことがある。
【0035】
第1スリット251は、上述の断面において、互いに離間して配置され、外周壁22との間及び互いの間に通電経路を規定するように構成されている。第1スリット251は電流の流れを阻害するように構成されており、一方の電極端子3からの電流は第1スリット251を迂回しながらハニカム構造体2を通り他方の電極端子3に向かう。この電極端子3間で電流が流れる経路が通電経路である。一方の電極端子3から他方の電極端子3までの通電経路の長さは、ハニカム構造体2の径(電極端子3間の最短距離)より長くされている。
【0036】
第1スリット251の形状及び配置態様は任意であるが、本実施の形態の第1スリット251のそれぞれは、上述の断面において、直線状に第1方向2W1に延在し、かつ、第1方向2W1に直交する第2方向2W2に互いに離間して配置されている。すなわち、複数本の直線状の第1スリット251が互いに平行に配置されている。第1及び第2方向2W1,2W2は、ハニカム構造体2の幅方向2Wに含まれる互いに直交する2つの方向である。本実施の形態では、第1スリット251は、第2方向2W2に等間隔に配置されている。しかしながら、第1スリット251の間隔が互いに異なっていてもよい。
【0037】
第2方向2W2に隣り合う一対の第1スリット251は、第2方向2W2から見たときに互いに一部重なるように配置されている。換言すると、第2方向2W2に隣り合う一対の第1スリット251の一方の先端は、他方の先端よりも他方の基端側に位置されている。基端とは第1スリット251の外周壁22側の一端であり、先端とは第1スリット251の他端である。本実施の形態の各第1スリット251の先端は、中央部20内に位置している。しかしながら、第1スリット251の少なくとも一部の先端は、中央部20を超えて外周部21に到達していてもよい。
【0038】
第1スリット251の少なくとも一部が外周壁22から延在されている。換言すると、第1スリット251によって外周壁22がハニカム構造体2の周方向に不連続とされている。本実施の形態では、すべての第1スリット251が外周壁22から延在されている。本実施の形態では、第1方向2W1に係るハニカム構造体2の一端側の外周壁22から延在する第1スリット251と、他端側の外周壁22から延在する第1スリット251とが第2方向2W2に交互に配置されている。少なくとも一部の第1スリット251が外周壁22から延在されていなくてもよい(外周壁22から離れて設けられていてもよい)。
【0039】
ここで、第1スリット251によって規定される通電経路は、複数の部分経路26を含んでいる。部分経路26は、第2方向2W2に隣り合う一対の第1スリット251に挟まれているとともに、一対の第1スリット251の一方の端部から他方の端部まで第1方向2W1に延在されている。本実施の形態の通電経路内では、少なくとも2つの部分経路26が互いに直列に配置されている。本実施の形態では、すべての部分経路26(6つの部分経路26)が通電経路内で互いに直列に配置されている。
【0040】
第2スリット252は、上述の断面において、通電経路内に位置している。第2スリット252は、電流の流れを阻害するように構成されており、第1スリット251に加えて第2スリット252が設けられていることで、通電経路全体及び第2スリット252の周辺の電気抵抗が上昇されている。第2スリット252は、通電経路の電気抵抗を調整するために設けられている。本実施の形態では、第2スリット252は、第1スリット251とは異なる方向に延在している。第2スリット252は、第1スリット251よりも短く、かつ第2方向2W2に延在されている。また、第2スリット252は、第1スリット251と交わっている。第2スリット252は、第2方向2W2に対して傾斜されていてもよいし、第1スリット251から離れて設けられていてもよい。
【0041】
本実施の形態の第2スリット252は、部分経路26内に設けられている。しかしながら、第2スリット252は、通電経路のうち第1スリット251と外周壁22との間の部分に設けられていてもよい。本実施の形態では、すべての部分経路26に少なくとも1つの第2スリット252が設けられている。しかしながら、少なくとも1つの部分経路26に第2スリット252が設けられていなくてもよい。
【0042】
本実施の形態のように部分経路26が直列に配置されている場合、ハニカム構造体2の中央部が集中して発熱しやすい。一方、本実施の形態の第2スリット252は、第2スリット252周辺の電気抵抗を上昇させ、第2スリット252周辺の発熱量を上昇させることができる。すなわち、第2スリット252により電気抵抗を調整することで、ハニカム構造体2の発熱をより均一化することが可能になる。ハニカム構造体2の中心部と比較して周辺部に多くの第2スリット252を設けることにより、より確実にハニカム構造体2の発熱を均一化することが可能になる。なお、ハニカム構造体2の中心部とは、ハニカム構造体2の面積重心を中心とする領域であって、流体が通されるセル20cが設けられた領域(本実施の形態の中央部20)の外形に相似な形状を有し、かつそのセル20cが設けられた領域の1/4の面積の領域と考えられ得る。また、周辺部とは、その中心部の外側と考えられる。
【0043】
また、ハニカム構造体2の使用態様等によっては、ハニカム構造体2の中心部を集中して発熱させることが望まれることもある。このような場合には、ハニカム構造体2の周辺部と比較して中心部に多くの第2スリット252を設けてもよい。換言すると、第2スリット252の分布によりハニカム構造体2の発熱分布を調整してもよい。
【0044】
第1及び第2スリット251,252の少なくとも一方には、充填剤25aが充填されている。本実施の形態では、第1及び第2スリット251,252の両方に充填剤25aが充填されている。より具体的には、第1及び第2スリット251,252のすべてに隙間なく充填剤25aが充填されている。第1及び第2スリット251,252に充填剤25aが充填されていることで、ハニカム構造体2の強度を向上できる。また、外周壁22から延在されている第1スリット251を通して外周壁22側に流体が流れることを抑えることができ、電極端子3などの劣化を低減することもできる。第1及び第2スリット251,252の一部のみに充填剤25aが充填されていてもよく、第1及び第2スリット251,252のいずれか一方又は両方に充填剤25aが充填されていなくてもよい。
【0045】
次に、図3は、図1の部分経路26のうちの1つを拡大して示す説明図である。図3には、部分経路26を挟む一対の第1スリット251と、その部分経路26に設けられた2つの第2スリット252とが示されている。
【0046】
図3に示すように、第2スリット252は、第2方向2W2に所定の延在幅252aを有している。第2スリット252の延在幅252aが大きいほど、第2スリット252による電気抵抗の上昇量が増える。その第2スリット252が設けられた部分経路26を挟む一対の第1スリット251は、第2方向2W2に離間距離251aを有している。第2スリット252の延在幅252aは、第1スリット251の離間距離251aの10%以上かつ90%以下であることが好ましい。後に詳しく説明するように、第2スリット252の延在幅252aが第1スリット251の離間距離251aの10%以上であると、第2スリット252による電気抵抗の上昇が生じやすくなり好ましい。一方、第2スリット252の延在幅252aが第1スリット251の離間距離251aの90%以下であると、ハニカム構造体2の強度及び/又は浄化効率が向上するとともに、その第2スリット252の周辺がヒートスポットになり部分的に熱応力が増大することでクラック発生の懸念が抑制される。また、充填剤25aが充填された第2スリット252の延在幅252aが第1スリット251の離間距離251aの90%以下であると、圧力損失の上昇を抑制することができる。これらの利点をより確実に得るため、第2スリット252の延在幅252aは、一対の第1スリット251の離間距離251aの30%以上かつ60%以下であることがより好ましい。
【0047】
部分経路26内での第1方向2W1に係る第2スリット252の位置は、第1方向2W1に係る部分経路26の中心位置26aから第1方向2W1に係る部分経路26の延在幅26bの30%以内の位置にあることが好ましい。すなわち、第2スリット252は、部分経路26の中央領域(中心位置26aを中心とする部分経路26の領域であって、第1方向2W1に部分経路26の延在幅26bの60%の幅を有する領域)に配置されていることが好ましい。後に詳しく説明するように、第2スリット252の位置が中心位置26aから延在幅26bの30%以内の位置にあることで、第2スリット252による電気抵抗の調整を安定させることができる。部分経路26内に1つの第2スリット252が設けられる場合、その第2スリット252を部分経路26の中心位置26aに配置してもよい。
【0048】
図3に示すように1つの部分経路26内に複数の第2スリット252が第1方向2W1に互いに離間して設けられている場合、それらの複数の第2スリット252間の離間距離252bは、その1つの部分経路26を挟む一対の第1スリット251の第2方向2W2に係る離間距離251aの1.25倍以上であることが好ましい。後に詳しく説明するように、第2スリット252間の離間距離252bを第1スリット251の離間距離251aの1.25倍以上とすることで、第2スリット252による電気抵抗の調整を安定させることができる。また、第2スリット252による電気抵抗の調整をより安定させるため、第2スリット252間の離間距離252bを第1スリット251の離間距離251aの2倍以上とすることがより好ましい。
【0049】
1つの部分経路26に設ける第2スリット252の数は、第1方向2W1に係る部分経路26の延在幅26bに応じて決定してもよい。例えば、第1方向2W1に係る部分経路26の延在幅26bが所定幅を超える場合に、その部分経路26に複数の第2スリット252を設けてもよい。1つの部分経路26に1つの第2スリット252を設ける場所に比べて、1つの部分経路26に複数の第2スリット252を設ける場所では、第2スリット252の延在幅252aが短くてもよい。複数の第2スリット252により全体として部分経路26の電気抵抗の上昇量を確保できるためである。複数の短い第2スリット252を設けることで、電気抵抗の上昇量を確保しつつ、強度向上及び電気抵抗の均一化を図ることができる。
【0050】
次に、図4は、図3の第1及び第2スリット251,252の第1態様を示す説明図である。図4では、セル20cが四角形とされている態様を示している。上述のようにセル20cは隔壁20dにより区画形成されている。上述の断面において、電流は隔壁20dを伝って流れる。第1及び第2スリット251,252は、隣り合うセル20cを繋げるように隔壁20dを欠落させる(切れ込みを入れる)ことで形成され得る。図4では一列のセル20cを繋げることで第1及び第2スリット251,252が形成されるように図示しているが、より多くの列のセル20cが繋げられてもよい。第2スリット252の延在幅252aは、隔壁20dに沿った距離として理解され得る。図4に示すように、セル20cが四角形であるとき、直線に沿った距離として第2スリット252の延在幅252aを測定され得る。
【0051】
次に、図5図3の第1及び第2スリット251,252の第2態様を示す説明図であり、図6図3の第1及び第2スリット251,252の第3態様を示す説明図であり、図7図3の第1及び第2スリット251,252の第4態様を示す説明図である。図5図7では、セル20cが六角形とされている態様を示している。上述のように第2スリット252の延在幅252aは、隔壁20dに沿った距離として理解され得る。図5図7に示すように、セル20cが六角形であるとき、第2スリット252の延在幅252aは図5図7に示すように折れ線に沿った距離として測定され得る。
【0052】
次に、図8図1の電気加熱式担体1を含む排気ガス浄化装置5を示す斜視図であり、図9図3の排気ガス浄化装置5を示す分解斜視図である。図8及び図9に示すように、排気ガス浄化装置5は、電気加熱式担体1、金属ケース6及び一対のマット7を有している。
【0053】
金属ケース6は、電気加熱式担体1を収容するためのケースである。金属ケース6には、中央部20の端面20a,20bを露出させる開口60が設けられている。金属ケース6は、ハニカム構造体2の軸方向に沿ってハニカム構造体2を見たときに外周部21を覆い隠すように設けられている。開口60を通して中央部20の一方の端面20a,20bに流体が流れ込み、他方の端面20a,20bから流体が抜け出る。すなわち、中央部20の端面20a,20bは、流体流通用端面を構成する。
【0054】
図9に特に表れているように、本実施の形態の金属ケース6は、一対のケース体61,62を有している。ケース体61,62は、軸方向に係る両側からハニカム構造体2を挟み込んでいる。より具体的には、ケース体61,62は、外周部21の端面21a,21bを挟み込むことによりハニカム構造体2を把持している。すなわち、本実施の形態の電気加熱式担体1では、外周部21の端面21a,21bがハニカム構造体2を把持するための把持用端面を構成する。
【0055】
マット7は、金属ケース6(ケース体61,62)とハニカム構造体2との間に介在される部材である。マット7は、例えばステンレス等の金属ケース6及びハニカム構造体2よりも柔軟な材料によって構成される。マット7が設けられることで、金属ケース6(ケース体61,62)によってハニカム構造体2をより確実に保持できる。しかしながら、マット7は省略されていてもよい。
【0056】
次に、図10は、図1の電気加熱式担体1の製造方法を示すフロチャートである。図10に示すように、図1の電気加熱式担体1の製造方法には、準備工程(ステップS1)、測定工程(ステップS2)及び加工工程(ステップS3)が含まれている。
【0057】
準備工程(ステップS1)は、第1スリット251を有する加工前の電気加熱式担体1を準備する工程である。加工前の電気加熱式担体1は、図1に示す第2スリット252を除く各構成を有する電気加熱式担体1であり得る。準備工程は、限定はされないが、所定量の材料(セラミック坏土)を調製する調製工程、金型から材料を押し出して外周壁22及び隔壁20dを有する成形体を得る成形工程、成形体に電極端子3を取り付ける取付工程、並びに成形体を焼成する焼成工程を含み得る。取付工程は、焼成工程の後に行われてもよい。成形工程時に第1スリット251を有する成形体を得てもよいし、成形工程にて得られた成形体、又は焼成工程にて得られた焼成体に対して加工を施すことで第1スリット251を形成してもよい。
【0058】
測定工程(ステップS2)は、加工前の電気加熱式担体1において一対の電極端子3に通電し、加工前の電気加熱式担体1における通電経路の電気抵抗を測定する工程である。電極端子3間には直流電圧を印加し得る。電気抵抗の測定は、例えば25℃等の室温で行い得る。測定は、例えば電気加熱式担体1毎又は電気加熱式担体1の製造ロット毎等の所定頻度で行うことができる。製造ロット毎に測定を行うとは、例えば1回の調製工程で得られた同一の材料で作成される複数の電気加熱式担体1のうち1つ又は複数の代表的な電気加熱式担体1において通電経路の電気抵抗を測定すること等と理解できる。
【0059】
加工工程(ステップS3)は、電気抵抗の測定値を電気抵抗の目標値と比較して、測定値と目標値との差に基づいて、上述の断面において通電経路内に位置するとともに第1スリット251とは異なる方向に延在する少なくとも1本の第2スリット252を加工前の電気加熱式担体1に設ける工程である。
【0060】
加工前の電気加熱式担体1に第2スリット252を設けることで、通電経路の電気抵抗を向上させることができる。すなわち、電気抵抗の測定値が目標値を下回るときに、加工前の電気加熱式担体1に第2スリット252を設けることで、通電経路の電気抵抗を目標値に近づけることができる。
【0061】
第2スリット252の数、位置及び大きさを変更することで、電気抵抗の上昇量を調整することができる。すなわち、電気抵抗の測定値と目標値との差に応じて、第2スリット252の数、位置及び大きさを決定することで、通電経路の電気抵抗を目標値に近づけることができる。図1等に示すようにすべての部分経路26に少なくとも1本の第2スリット252を設けてもよいし、一部の部分経路26のみに第2スリット252を設けてもよいし、また通電経路のうち第1スリット251と外周壁22との間の部分に第2スリット252を設けてもよい。
【0062】
特に、第2方向2W2に係る第2スリット252の延在幅252aを変更することで、通電経路の電気抵抗を容易に調整することができる。また、所定条件を満たすように第2スリット252の位置を決定することで、第2スリット252による電気抵抗の上昇量を安定させることができる。このため、第2スリット252の配置パターン(数及び位置)を予め定めておき、電気抵抗の測定値と目標値との差に応じて第2スリット252の延在幅252aを調整することで、より安定的かつ容易に電気抵抗を目標値に近づけることができる。なお、同じタイプ(同じ寸法及び/又は同じ使用目的)の複数の電気加熱式担体1を比較することにより、それらの電気加熱式担体1において、第2スリット252の配置パターンを予め定めた上で第2スリット252の延在幅252aを調整することで、通電経路の電気抵抗を調整していることが分かる。
【0063】
次に、図11は、図1の電気加熱式担体1の第1変形例を示す正面図である。図1の電気加熱式担体1では、一対の電極端子3は、セル20cの延伸方向に対して垂直な断面において、ハニカム構造体2の中心軸を挟んでハニカム構造体2の幅方向2W(第2方向2W2)に対向するように配置されていた。換言すると、一対の電極端子3がハニカム構造体2の周方向に180°の角度間隔をおいて配置されていた。しかしながら、一対の電極端子3は、必ずしも互いに対向するように配置されなくてよく、図11に示すようにハニカム構造体2の周方向に180°未満の角度間隔で配置されていてもよい。
【0064】
次に、図12は、図1の電気加熱式担体1の第2変形例を示す正面図である。図1の電気加熱式担体1では、すべての第1スリット251が外周壁22から延在されている。しかしながら、図12に示すように、少なくとも一部の第1スリット251が外周壁22から延在されていなくてもよい(外周壁22から離れて設けられていてもよい)。図12に示す第2変形例では、外周壁22から離れて設けられている第1スリット251と、外周壁22から延在されている第1スリット251とが第2方向2W2に交互に配置されている。また、第2変形例では、一部の部分経路26に第2スリット252が1つずつ設けられている。各第2スリット252は、第1方向2W1に係る部分経路26の中央位置に配置されている。
【0065】
なお、図12では、第2方向2W2について最も外側に配置された第1スリット251に第2スリット252が設けられていないが、最も外側に配置された第1スリット251にも第2スリット252が設けられていてもよい。この場合、第2スリット252は、部分経路26ではなく、通電経路のうち第1スリット251と外周壁22との間の部分に設けられていてもよい。
【0066】
次に、図13は、図1の電気加熱式担体1の第3変形例を示す正面図である。図13に示すように、少なくとも一部の第1スリット251が外周壁22から延在されていない態様においても、部分経路26に複数の第2スリット252が設けられていてもよい。また、図13に示すように、同態様においても、各第2スリット252が第1方向2W1に係る部分経路26の中央位置からずれて配置されていてもよい。
【0067】
本実施の形態のような電気加熱式担体1では、排気ガス浄化装置5及び電気加熱式担体1の製造方法によれば、通電経路を規定するように構成された複数本の第1スリット251とは別に少なくとも1本の第2スリット252をハニカム構造体2が有しているので、電極端子3間の電気抵抗の変動を抑え、設計した出力をより確実に得ることができる。
【0068】
また、第1スリット251のそれぞれは、上述の断面において、直線状に第1方向2W1に延在し、かつ、第1方向2W1に直交する第2方向2W2に互いに離間して配置されており、第2方向2W2に隣り合う一対の第1スリット251は、第2方向2W2から見たときに互いに一部重なるように配置されているので、より確実に通電経路を長くできる。
【0069】
第2方向2W2に係る第2スリット252の延在幅252aは、第2スリット252が設けられた部分経路26を挟む一対の第1スリット251の第2方向2W2に係る離間距離251aの10%以上かつ90%以下であるので、より確実に第2スリット252によって電気抵抗を上昇させることができ、ハニカム構造体2の強度及び/又は浄化効率が低下することを回避でき、その第2スリット252の周辺がヒートスポットになり部分的に熱応力が増大することでクラック発生の懸念の増大を抑えることができる。また、第2スリット252に充填剤25aが充填された態様において、圧力損失が過度に上昇することを回避できる。
【0070】
また、部分経路26内での第1方向2W1に係る第2スリット252の位置は、第1方向2W1に係る部分経路26の中心位置26aから第1方向2W1に係る部分経路26の延在幅26bの30%以内の位置であるので、第2スリット252による電気抵抗の調整を安定させることができる。
【0071】
また、1つの部分経路26内の複数の第2スリット252間の離間距離252bは、1つの部分経路26を挟む一対の第1スリット251の第2方向2W2に係る離間距離251aの1.25倍以上であるので、第2スリット252による電気抵抗の調整を安定させることができる。
【0072】
また、通電経路内で少なくとも2つの部分経路26が互いに直列に配置されているので、ハニカム構造体2の中央部が集中して発熱しやすい。第2スリット252により電気抵抗を調整することで、ハニカム構造体2の発熱をより均一化することが可能になる。すなわち、少なくとも2つの部分経路26が互いに直列に配置されている態様において、第2スリット252を設けることが特に有用である。
【0073】
また、第1及び第2スリット251,252の少なくとも一方に充填剤25aが充填されているので、ハニカム構造体2の強度を向上できる。また、外周壁22から延在されている第1スリット251を通して外周壁22側に流体が流れることを抑えることができ、電極端子3などの劣化を低減することもできる。
【0074】
また、第1スリット251の少なくとも一部は外周壁22から延在されているので、外周壁22に沿った通電経路が最短距離となり、外周発熱を抑えることができる。
【0075】
次に、実施例を挙げる。本発明者は、以下のように回路モデルを規定するとともに、その回路モデル中に種々の第2スリット252を設けると仮定して、回路モデルにおける電気抵抗を算出した。回路モデルは、全体として、縦方向(第1方向2W1)に57個のセル20cを有し、横方向(第2方向2W2)に10個のセル20cを有するハニカム構造体として規定した。各セル20cは、四角形とされている。隔壁20dの1枚あたりの電気抵抗は0.0251Ωである。両側の縦1列ずつのセル20cを第1スリット251とし、第1スリット251間の横8セルの領域に電流が流れるとする。簡単のため、電流は回路全体に均等に流れるとする。回路モデルに4.8Vを印可すると仮定する。第1スリット251間の横8セルの領域において、横方向一列の所定数のセル20cを第2スリット252とする。回路モデル中に1つの第2スリット252を設ける場合には、縦方向に係る回路中央部に第2スリット252を配置する。回路モデル中に複数の第2スリット252を設ける場合、回路両端から10セル以上離れた領域に第2スリット252を配置する。
【0076】
図14は、第2スリット252の延在幅252aと通電経路の電気抵抗との関係を示すグラフである。図14において、横軸は回路モデルにおいて第2スリット252とする横方向一列のセル20cの数を示し、右縦軸は電気抵抗(Ω)を示し、左縦軸は初期状態からの電気抵抗の上昇率(%)を示している。また、第1スリット251の離間距離251a(8セル)に対する第2スリット252の延在幅252aの割合をグラフ上部に示している。
【0077】
図14に示すように、延在幅252aが離間距離251aの10%未満であると、第2スリット252による電気抵抗の上昇が生じにくい。一方、延在幅252aが離間距離251aの90%を超えると、抵抗値が大きく上昇する。抵抗値の大きな上昇は、第2スリット252の周辺をヒートスポットとし、部分的に熱応力が増大することでクラック発生の懸念を増大させる。また、延在幅252aが離間距離251aの90%を超えると、ハニカム構造体2の強度及び/又は浄化効率が低下するとともに、圧力損失の上昇が大きくなってしまう。これらから、第2スリット252の延在幅252aが第1スリット251の離間距離251aの10%以上かつ90%以下であることが好ましいことが分かる。また、これらの懸念をより小さくするため、第2スリット252の延在幅252aは、一対の第1スリット251の離間距離251aの30%以上かつ60%以下であることがより好ましい。
【0078】
次に、図15は、1つの部分経路26内に複数の第2スリット252を設ける場合の第2スリット252間の離間距離252bと電気抵抗との関係を示すグラフである。図15において、横軸は回路モデルにおいて第2スリット252間の離間距離252bとする縦方向一列のセル20cの数を示し、左縦軸は電気抵抗(Ω)を示し、右縦軸は初期状態からの電気抵抗の上昇率(%)を示している。また、第1スリット251の離間距離251a(8セル)に対する第2スリット252間の離間距離252bの倍率をグラフ上部に示している。
【0079】
図15に示すように、第2スリット252間の離間距離252bが一定値を超えると、大きくなるにつれて、電気抵抗の値及び上昇率の変化が小さくなることが分かる。特に、第2スリット252間の離間距離252bが第1スリット251の離間距離251aの1.25倍以上とすれば、電気抵抗の値及び上昇率の変化が確実に小さくなり、第2スリット252による電気抵抗の調整が安定することが分かる。このことから、第2スリット252間の離間距離252bが第1スリット251の離間距離251aの1.25倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上である。
【0080】
次に、図16は、部分経路26内での第2スリット252の位置と部分経路26の中心位置26aとの関係を示すグラフである。図16において、横軸は回路モデルにおいて部分経路26の中心位置26aから第2スリット252までの縦方向のセル20cの数であり、左縦軸は電気抵抗(Ω)を示し、右縦軸は初期状態からの電気抵抗の上昇率(%)を示している。また、縦方向に係る部分経路26の延在幅26b(57セル)に対する中心位置26aから第2スリット252までの距離(セル数)の割合をグラフ上部に示している。なお、図16のグラフに示す抵抗値等は、一方の第1スリット251の上端から回路モデル内に電流が流入し、他方の第1スリット251の下端から電流が流れ出ると仮定して算出している。
【0081】
図16に示すように、部分経路26内での縦方向に係る第2スリット252の位置が、縦方向に係る部分経路26の中心位置26aから縦方向に係る部分経路26の延在幅の30%以内の位置であるときに、電気抵抗の値及び上昇率の変化が小さいことが分かる。このことから、第2スリット252の位置が、部分経路26の中心位置26aから部分経路26の延在幅の30%以内の位置であることが好ましい。
【符号の説明】
【0082】
1 電気加熱式担体
2 ハニカム構造体
20c セル
20d 隔壁
22 外周壁
25a 充填剤
26 部分経路
251 第1スリット
252 第2スリット
3 電極端子
5 排気ガス浄化装置
6 金属ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16