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特許7422656非接触式の光学的なツール長さ測定装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】非接触式の光学的なツール長さ測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20240119BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
B23Q17/22 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020513499
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2018052473
(87)【国際公開番号】W WO2019048833
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】17189506.3
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジェイソン メリフィールド
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ベンジャミン エッグルストーン
(72)【発明者】
【氏名】アラン ジェームズ ホロウェイ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-277073(JP,A)
【文献】特表2003-524154(JP,A)
【文献】特開2007-301649(JP,A)
【文献】特開2007-185771(JP,A)
【文献】特開2019-000977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/24
B23Q 17/22
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール長さ測定のための方法であって、前記非接触式ツールセッティング装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、前記光ビームを受け取るためのレシーバーとを含み、前記レシーバーは、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し、前記方法は、前記ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を有するツールの長さを測定するためのものであり、前記光ビームの中へ前記ツールを完全に挿入することが、前記光ビームを部分的にのみ遮るようになっており、前記方法は、
(i)前記光ビームを通して前記ツールを移動させ、それによって、前記ビーム強度信号の変化を引き起こすステップと、
(ii)前記ビーム強度信号がトリガー閾値を越えたことを示すトリガー信号を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)において生成された前記トリガー信号を使用して、前記ツールの前記長さを決定するステップと
を含み、
前記方法は、前記公称ツール直径が前記ビーム幅よりも小さいことを考慮に入れるツール長さ補正を適用するステップを含み、
ツール長さ補正を適用する前記ステップは、必要とされる前記ツール長さ補正と有効ツール直径との間の関係を記述するキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを参照することによって、前記ツール長さ補正を計算するステップを含む方法。
【請求項2】
ツール長さ補正を適用する前記ステップは、ステップ(ii)において適用される前記トリガー閾値を調節するステップを含み、前記トリガー閾値は、トリガー信号が生成されるために必要とされる前記光ビームの遮蔽の量が、より小さい直径のツールに関して低減されるように調節される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)は、前記トリガー閾値が越えられるときと前記工作機械への前記トリガー信号の発行との間にトリガー遅延を提供するステップを含み、ツール長さ補正を適用する前記ステップは、より小さい直径のツールに関して前記トリガー遅延を低減させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ツール長さ補正を適用する前記ステップは、異なるツール直径を有するツールの先端部が前記光ビームの中の実質的に同じ位置に位置しているときに、ステップ(ii)の前記トリガー信号を生成させる請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(iii)は、未補正のツール長さを計算するステップを含み、ツール長さ補正を適用する前記ステップは、前記計算された未補正のツール長さにツール長さ補正値を適用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ツール長さ補正を適用する前記ステップは、前記ツールが前記光ビームを通して移動させられるときに起こる前記ビーム強度信号の変化から前記有効ツール直径を評価するステップを含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有効ツール直径を評価する前記ステップは、前記ツールが前記光ビームの中へ完全に挿入され、それによって前記光ビームを部分的に遮っているときに、前記ビーム強度信号を測定するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
必要とされる前記ツール長さ補正と前記有効ツール直径との間の前記関係を記述する前記キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出するステップを含む請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出する前記ステップは、異なる幅の複数のツールが前記光ビームを通して移動させられるときに起こる前記ビーム強度信号の前記変化を測定するステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出する前記ステップは、前記複数のツールのそれぞれが前記光ビームを通して移動させられるときに起こる前記ビーム強度信号の前記変化から、前記有効ツール直径に関係する特徴を識別するステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ツール長さ補正を適用する前記ステップは、全体が前記非接触式ツールセッティング装置によって実施される請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基準光レベルに対して、ツールが前記光ビームの中に位置していないときに前記レシーバーにおいて受け取られる前記光の強度の変動を考慮に入れるための調節を適用するステップを含む請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工作機械上で非接触式ツール測定を実施するための装置であって、
ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、
前記光ビームを受け取るためのレシーバーであって、前記レシーバーにおいて受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成する、レシーバーと、
公称ツール直径を有するツールが前記光ビームを通して移動させられるときに起こる前記ビーム強度信号の変動を解析するためのトリガーユニットであって、前記トリガーユニットは、前記ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときにトリガー信号を生成し、前記トリガー信号は、前記ツールの長さを決定するために前記工作機械によって使用可能である、トリガーユニットとを含み、
前記装置は、前記公称ツール直径が前記ビーム幅よりも小さいときに、ツール長さ補正を適用するツール長さ補正ユニットを含み、
前記ツール長さ補正ユニットは、必要とされる前記ツール長さ補正と有効ツール直径との間の関係を記述するキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを参照することによって、前記ツール長さ補正を計算することを特徴とする、装置。
【請求項14】
前記ツール長さ補正ユニットは、前記トリガーユニットの前記トリガー閾値を調節することによって、または、前記工作機械への前記トリガー信号の発行を遅延させることによって、前記ツール長さ補正を適用する請求項13に記載の装置。
【請求項15】
工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール長さ測定のための方法であって、前記非接触式ツールセッティング装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、前記光ビームを受け取るためのレシーバーとを含み、前記レシーバーは、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し、前記方法は、前記ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を有するツールの長さを測定するためのものであり、前記光ビームの中へ前記ツールを完全に挿入することが、前記光ビームを部分的にのみ遮るようになっており、前記方法は、
(i)前記光ビームを通して前記ツールを移動させ、それによって、前記ビーム強度信号の変化を引き起こすステップと、
(ii)前記ビーム強度信号がトリガー閾値を越えたことを示すトリガー信号を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)において生成された前記トリガー信号を使用して、前記ツールの前記長さを決定するステップと
を含み、
前記方法は、前記公称ツール直径が前記ビーム幅よりも小さいことを考慮に入れるツール長さ補正を適用するステップを含み、
ステップ(ii)は、前記トリガー閾値が越えられるときと前記工作機械への前記トリガー信号の発行との間にトリガー遅延を提供するステップを含み、ツール長さ補正を適用する前記ステップは、より小さい直径のツールに関して前記トリガー遅延を低減させるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ツールセッティング装置に関し、とりわけ、非接触式ツールセッティング装置のビーム幅よりも小さい直径を有するツールの長さを測定するための改善された方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械上で使用するためのブレークビームツールセッティングデバイスが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。このタイプのツールセッティング装置は、光源を含み、光源は光のビームを生成し、光のビームは光検出器に渡される。ツールセッティング動作の間に、工作機械は、光ビームの中へおよび光ビームから外へツールを移動させるように動作させられる。ツールによる光ビームの中断は、検出器出力信号の分析によって検出され、装置は、いわゆる「トリガー信号」を生成し、光ビームが破壊されたことを関連の工作機械に示す。この機構は、たとえば、ツール長さおよび/またはツール直径などのような、ツールサイズが測定されることを可能にする。
【0003】
現代のマシンによって実装されるマシニングプロセスは、典型的に、さまざまな異なるツールを使用する。大型の切削ツールが、パーツから過剰なストック材料を除去するために使用されることができ、次いで、複数のより小さい仕上げ用ツールが、入り組んだ微細なディテールを作り出すために使用される。また、切削ツールの端部形態は、意図される機能に依存して変化が可能である。たとえば、エンドミルは、平坦な底部および/または半径を有することが可能であり、ドリルは、典型的に、118°または120°の端部形態を有しており、一方、スポットまたは面取りツールは、典型的に、90°の端部形態を有している。上記に説明されているツールセッティング装置は、さまざまなツールの長さを測定するために使用され得、測定精度は、切削されているパーツの全体的な精度に影響を与える。とりわけ、異なるツールの測定された長さの任意の誤差は、パーツの最終的なサイズの変動につながる可能性があり、そして、それは、パーツが必要とされる仕様を満たさず、破棄されなければならないことを意味する。
【0004】
上記に述べられているように、非接触式ツールセッティング装置は、光ビームが遮蔽されているときに、工作機械コントローラーに対してトリガー信号を発行する。典型的に、このトリガー信号は、光レベルが固定されたパーセンテージ(たとえば、50%)の「ビームクリア」状態に到達するとき(すなわち、固定されたパーセンテージの光学的なビームが検出器に到達することを阻止されるとき)に発行される。今日まで、ツール長さ測定誤差は、ツールセンシング領域におけるビームサイズが可能な限り小さくなるようにツールセッター装置の光学的なレイアウトを設計することによって最小化されている。これは、最小の仕上げ用ツールでもビーム幅と同程度の直径を有し、そのため、それらが光のビームの中に設置されたときにビームを実質的に遮ることができることを確実にすることを試みて行われている。そのような幅の狭い(焦点を合わせられた)光ビームを形成することを必要とすることは、複雑で高価な光学的設計が必要とされるという不利益があり、それは、結果としてマシニング環境内で信頼性の低い動作を生じさせる可能性もある。たとえば、光学的要素の汚染またはミスアライメントに起因して焦点が容易に喪失される可能性があるので、レーザービームの厳格な合焦は、定期的にチェックされる必要がある。いくつかの場合では、測定されるツールは、依然として、焦点を合わせられたビームよりも小さくなっており、したがって、長さ測定値に誤差が不可避的に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6496273号明細書
【文献】British patent application 1700879.8
【文献】European patent application number 17189509.7
【文献】欧州特許第1587648号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】書籍:「Numerical Recipes; the Art of Scientific Computing」, 第3版、 W H Pressら著, Cambridge University Press (ISBN: 139780521880688)
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール長さ測定のための方法であって、非接触式ツールセッティング装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーとを含み、レシーバーは、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し、方法は、ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を有するツールの長さを測定するためのものであり、光ビームの中へツールを完全に挿入することが、光ビームを部分的にのみ遮るようになっており、方法は、
(i) 光ビームを通してツールを移動させ、それによって、ビーム強度信号の変化を引き起こすステップと、
(ii) ビーム強度信号がトリガー閾値を超えるときにトリガー信号を生成するステップと、
(iii) ステップ(ii)において生成されたトリガー信号を使用して、ツールの長さを決定するステップと
を含む、方法において、
方法は、公称ツール直径がビーム幅よりも小さいことを考慮に入れるツール長さ補正を適用するステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール長さ測定のための方法に関する。非接触式ツールセッティング装置は、ブレークビームタイプのツール検出システムを含み、そこでは、(たとえば、トランスミッターのレーザーダイオードによって)トランスミッターから放出される光ビーム(たとえば、レーザービーム)が、自由空間の領域を通過してレシーバーへ渡される。トランスミッターによって生成される光ビームは、特定のビーム幅を有しており、たとえば、円形または楕円形の断面ビームのケースでは、特定のビーム直径を有している。レシーバーは、(たとえば、フォトダイオードを使用して)受け取られた光を検出し、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成する。
【0009】
本発明の方法は、ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を有するツール(たとえば、マイクロツール)の長さを測定するためのものである。したがって、そのようなツールは、それがビームの中に完全に挿入されているときでも(すなわち、ビームの一方の側から他方の側へ延在しているとき)、光ビームを部分的にのみ遮ることとなる。ステップ(i)は、光ビームを通してツールを移動させるステップを含む。換言すれば、ツールを保持する工作機械は、光ビームに対してツールを駆動するようにプログラムされており、ツールが光ビームの中へまたは光ビームから外へ移動するようになっている。光ビームを通るこの移動は、ツールによって遮蔽されている光ビームの量がツール移動によって変更されるため、レシーバーによって生成されるビーム強度信号の変化を引き起こす。測定プロセスは、ツールがビームの中へ移動させられること(いわゆる「明暗」測定)、または、ツールがビームから外へ移動させられること(いわゆる「暗明」測定)を含むことが可能であるということが留意されるべきである。
【0010】
トリガー信号を生成するステップ(ii)は、ビーム強度信号がトリガー閾値を超えるときを評価するために、(たとえば、トリガーユニットを使用して)それをモニタリングすることを必要とする。換言すれば、ビーム強度がトリガー閾値を越えたことを示すトリガー信号が生成される。このトリガー信号は、ツールが光ビームの中の特定の位置に位置していることを示すために使用される。「明暗」測定のケースでは、トリガー信号は、ビーム強度信号が特定のトリガー閾値を下回って低下するときに生成される。生成されたトリガー信号は、次いで、工作機械へ渡され(発行され)、工作機械は、トリガー信号が発行されたときのツールの位置を記録する。すなわち、工作機械は、非接触式ツールセッティング装置によって発行されたトリガー信号を受け取ると、自身の軸位置を記録する(これは「スケールをフリーズさせる」と呼ばれることが多い)。トリガー信号の発生と発行との間に遅延が存在し得るが、遅延が実質的に一定である場合には、これは、適切なキャリブレーションによって考慮に入れられ得るということが留意されるべきである。したがって、トリガー信号は、ツール先端部が光ビームの中の特定の位置に位置していることを関連の工作機械に示すために使用される。当技術分野で知られているように、トリガー信号は、工作機械コントローラーのSKIP入力へ給送される電圧レベル変化または電圧パルスを含み得る。あるいは、トリガー信号は、(たとえば、我々の特許文献2に説明されている技法を使用して)デジタルデータパケットとして工作機械へ出力され得る。したがって、上記は、適切なキャリブレーションによって、ツールの長さを決定するステップ(iii)が実施されることを可能にする。
【0011】
本発明は、ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を考慮に入れるツール長さ補正を適用するステップによって特徴付けられる。換言すれば、ツール長さは、ビーム幅よりも小さいツール直径を有する任意のツールが、それらが完全にビームの中へ挿入されているときでもそれを完全に遮蔽することはない(すなわち、それらの幅が光ビームほど広くないため)という事実を考慮に入れるように補正される。したがって、適用されるツール長さ補正は、ツール長さ誤差を補償し、ツール長さ誤差は、そうでなければ、公称ツール直径がビーム幅よりも小さいときに生じることとなる。下記に説明されるように、ツール長さ補正は、(たとえば、トリガー閾値もしくはトリガー遅延を調節することによって、または、未補正のツール長さ測定に長さ調節またはオフセットを適用することによって)さまざまな方式で計算および実施され得る。
【0012】
したがって、本発明は、ツールの公称直径がビーム幅よりも小さくなっているときに測定の不正確さを示す先行技術の非接触式ツールセッティング装置に伴う問題を克服する。下記により詳細に説明されるように、そのような測定誤差は、先行技術システムにおいて生じる。その理由は、ビーム強度信号が特定のレベルへ低下する前に、より小さい直径のツールを光ビームの中へさらに挿入することが必要であるからである。これは、ツールが常に光ビームよりも幅広いことを確実にするためにビーム幅を最小化する合焦光学系を備える先行技術装置につながった。本発明は、そのような高価で手間のかかる合焦光学系に対する必要性を克服し、それほど厳格に焦点を合わせられないより幅の広い光ビームによって正確なツール長さ測定が実施されることを可能にする。たとえば、小口径の緩やかにコリメートされたビーム(すなわち、小口径の低開口数ビーム)が使用され得る。また、よりコンパクトな(たとえば、厳格に焦点を合わせられていない)光学的な機構の使用は、工作機械環境内の汚染からそのような光学系を保護することをより容易にする。
【0013】
本発明の方法の中で適用されるツール長さ補正は、さまざまな異なる方式で確立され得る。1つの実施形態では、ツール長さ補正を適用するステップは、以前に導出されたキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを参照することを含む。下記により詳細に説明されているように、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルは、異なる幅のツールまたはキャリブレーションピンが光ビームの中へ挿入されているときに行われた一連の以前の測定から生成され得る。たとえば、キャリブレーション等式は、異なる幅のツールの範囲に関する測定値を示すツール幅のセットにツール長さ補正を関係付ける数値的な(たとえば、最小二乗法の)フィットの出力から確立され得る。次いで、キャリブレーション等式にツール幅指示値を代入することでツール長さ補正を提供する。また、キャリブレーション等式値の個別のセットを含むルックアップテーブルが提供され得る。物理的な測定値を使用する代わりに、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルは、あるいは、装置の光学的なモデルから生成され得る。
【0014】
方法は、上記に説明されているキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出する初期のステップまたはキャリブレーションステップ(たとえば、ツールの任意の測定が行われる前に実施されるか、または、初期の測定の一部として実施される)を追加的に含むことが可能である。このキャリブレーションプロセスは、異なる幅の複数のツールまたは対象物の長さを測定することによって実施され得る。とりわけ、既知の幅のさまざまなツールの長さは、非接触式ツールセッティング装置および別個の(基準)長さ測定センサー(たとえば、ビデオセンサー)を使用して測定され得る。次いで、長さ誤差は、ツール幅の関数として、数学的関数(たとえば、多項式)またはルックアップテーブル(たとえば、数学的関数から導出された値のセット)を使用して記述され得る。測定を行うために、および、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを確立するために適切なプロセスの例が、下記により詳細に説明されている。
【0015】
適用されるツール長さ補正は、ツールが光ビームを通って移動する(たとえば、光ビームに進入する、および/または、光ビームを離れる)ときに測定されるビーム強度信号を解析することによって計算され得る。換言すれば、ツール直径に特有であるビーム強度信号の特性(たとえば、s字曲線の特徴)が、ツールに関して測定され、次いで、適用されるツール長さ補正を決定するために使用される。たとえば、ビーム強度信号の変動(たとえば、低下)の勾配(たとえば、下記に説明されているs字曲線の選択された部分の勾配)が、適用されるツール長さ補正を計算するために、キャリブレーション等式変数として使用され得る。代替的な実施形態では、残存光レベルが、有効ツール直径を示すビーム強度信号の特性として使用される。残存光レベルは、ツールが光ビームの中へ完全に挿入された状態での絶対的なビーム強度信号であることが可能であり、または、ビームクリアレベルと残存光レベルとの間のビーム強度の変化であることが可能である。残存光レベルは、(有効)ツール直径の信頼性の高い測定を提供することが見出されている(下記に説明されているように、それは、通例、ビーム幅に対するツール直径を記述することが留意される)。したがって、残存光レベルは、適用されるツール長さ補正を計算するためのキャリブレーション等式変数として使用され得る。したがって、ツール長さ補正を適用するステップは、ツールが光ビームの中へ完全に挿入され、それによって光ビームを部分的に遮っているときに、残存ビーム強度信号を測定することを含むことが可能である。下記により詳細に説明されているように、ツール長さ補正は、実際のツール直径およびビーム幅が別個に知られていない場合にも、測定された残存光レベルに基づいて適用され得る。
【0016】
典型的に、光ビームを通るツールの1回のパスを使用して、必要とされるツール長さ補正を計算および適用できることが好適である。しかし、ツール測定プロセスは、あるいは、2つのステップまたはパスで実施され得る。第1のステップにおいて、ツールは、光ビームの中へ完全に挿入され得、それによって、光ビームを部分的に遮る。光ビームの中へのツールの完全な挿入の結果として生じる残存光レベルは、次いで、ツール直径を示すために使用され得る。ツール直径のこの指示値に基づき、その後光ビームの中にツールを再挿入する間に適用されるツール長さ補正が確立され得る。次いで、選択されたツール長さ補正は、光ビームからのツールの引き抜きの間、または、光ビームの中へのツールの後続の2回目のパスの間のいずれかに、(たとえば、下記に説明されているようなトリガー閾値またはトリガー遅延を調節することによって)実装され得る。
【0017】
下記により詳細に説明されているように、ビーム幅の変動は、ツールが光ビームを通して移動させられているときに起こるビーム強度の変化に対して、ツール直径の変動と同様の影響を有している。いくつかの場合では、単に、ビーム幅が不変であると仮定することが可能であり得る。しかし、時間の経過とともに、または、ツールを測定するために使用されるものとは異なるツールセッターの上でキャリブレーションプロセスが実施される場合は、ビーム幅のいくらかの変化が存在する可能性が高い。ツール長さ補正を適用するステップは、ビーム幅に対する公称ツール直径を決定することを含むことが可能である。有利には、ツール長さ補正を適用するステップは、光ビームのビーム幅を評価するステップを含む。ビーム幅の評価は、工作機械の上への据え付けの前または後に、別個の機器(たとえば、ビームプロファイラー)によって行われ得る。あるいは、方法は、ビーム幅を測定するために非接触式ツールセッティング装置を使用する初期のステップを含むことが可能である。ビーム幅測定の方法は、工作機械のスピンドルの中へエッジを有する対象物をロードすることと、対象物のエッジが光ビームを通過するように、非接触式ツールセッティング装置に対してスピンドルを移動させるために工作機械を使用することとを含むことが可能である。次いで、光ビームのビーム幅は、エッジが光ビームを通して移動させられるときに、複数の位置において生成されるビーム強度信号を使用して決定され得る。そのような技法は、特許文献3の優先権を主張する我々の同時係属中のPCT特許出願に詳細に説明されている。
【0018】
どのようにツール長さ補正がツール測定に関して実施されることができるかということに戻ると、好適な実施形態では、ツール長さ補正が、適当な量だけトリガー閾値を調節することによって実装され得るということが上記に述べられた。トリガー閾値が、たとえば、対象物が光ビームの中に存在しないときに受け取られる光に対して、受け取られた光のパーセンテージ(すなわち、いわゆる「ビームクリア」条件)として、または、電圧レベルとしてなど、さまざまな方式で定義され得るということが最初に留意されるべきである。したがって、ツール長さ補正を適用するステップは、ステップ(ii)において適用されるトリガー閾値(電圧レベル、パーセンテージなどとして定義されていたとしても)を適当に調節することを含むことが可能である。上記に説明されているように、測定されている特定のツールのために必要とされるトリガー閾値調節の量は、ステップ(i)の間に生成されるビーム強度信号の特有の特性から、ツール直径に関係する要因を確立することによって決定され得る。次いで、ツール長さ補正を実装するためにステップ(ii)で使用される修正されたトリガー閾値は、ツール直径に関係付けられた要因を適用されるトリガー閾値に関係付ける数学的表現から導出され得る。換言すれば、数学的表現は、測定されているツールの特定の直径に関して必要とされるトリガー閾値を計算するために使用され得る。
【0019】
上記に説明されているトリガー閾値の調節(すなわち、ツール長さ補正を実装すること)は、ツール直径に関係なくツール先端部が光ビームの中の特定の位置(たとえば、大型ツール平面)に位置していることを、発行されたトリガー信号が示すことを可能にする。このように、したがって、トリガー信号は、異なる直径のツールの先端部がビームの中の実質的に同じ位置に位置しているときに発行され得る。換言すれば、トリガー信号が生成されるために必要とされる光ビームの遮蔽の量がより小さいツール直径に関して低減されるように、トリガー閾値が調節され得る(たとえば、増加または低減される)。それぞれの修正されたトリガー閾値を数学的表現から直接的に計算する代わりに、トリガー閾値は、あるいは、そのような表現から、または、異なってサイズ決めされたツールの以前の測定値、または、既知のサイズもしくは長さの基準アーチファクトから生成されるデータセットから導出されたルックアップテーブルを参照することによって設定され得る。適切な近似では、トリガー閾値は、特定のツールに関して、ビームクリアレベルとツールがビームを通して完全に挿入されているときに起こる残存光レベルとの間の中間の領域の中に設定され得る。そのような技法は、下記により詳細に説明されているように、事前のキャリブレーション測定またはビーム幅補償(すなわち正規化)の必要性を回避することに加えて、ツールオフセット誤差に耐性があることが見出された。
【0020】
ツール長さ補正は、あるいは、測定の間のツールフィードレートが既知であるかまたは一定であると仮定され得るということを仮定して、トリガー遅延を調節することによって実装され得る。非接触式ツールセッティング装置では、光ビームが必要とされる量だけ遮蔽されているときと工作機械へのトリガー信号の発行との間に、時間遅延(電子的な処理の速度、誤トリガーを抑制するためのトリガーフィルターの使用などに起因する)が常に存在する。トリガー遅延は、通常、一定の値であり(すなわち、それは、速度に依存する誤差を導入する)、それは、ツール長さ測定に対するその影響がキャリブレーションによって除去されることを可能にする。しかし、任意の必要とされるツール長さ補正を実装するために、適用されるトリガー遅延を調節する(すなわち、変化させる)ことも可能である。したがって、ステップ(ii)は、ビーム強度閾値が越えられるとき(それによって、トリガー信号を生成するとき)と工作機械へのトリガー信号の発行との間に、トリガー遅延を提供することを含むことが可能である。したがって、ツール長さ補正を適用するステップは、好適には、トリガー遅延を調節する(すなわち、変化させる)ことを含むことが可能である。とりわけ、適用されるトリガー遅延は、好ましくは、より小さい直径のツールに関して低減される。
【0021】
トリガー遅延が、より小型のツールに関して低減されるべき場合には、大型ツール(すなわち、ビーム幅よりも大きい直径のツール)に関して、わずかにより長いトリガー遅延を提供することが必要である可能性がある。これは、単に、必要とされるツール長さ補正を提供するのに十分な量だけトリガー遅延が低減され得ることを確実にするためである。トリガー遅延を効果的に低減させることは、工作機械が、より小さい直径のツールに関してトリガー遅延が変更されなかった場合よりも早く(すなわち、より少ない光ビームが遮蔽されているときに)トリガー信号を受け取り、それによって、そのようなツールが実際よりも短いものとして誤って測定されるのを防止することを意味する。したがって、トリガー遅延の低減は、ツール直径がビーム幅よりも小さいことから結果として生じる光ビーム遮蔽の低減を考慮に入れる。
【0022】
ツール長さ補正を実装する上記に説明されている方法は、ツール長さ補正を適用する(たとえば、トリガー遅延またはトリガー閾値を変化させる)ことによって実施され得、受け取られたトリガー信号を使用して工作機械が、補正されたツール長さを決定するようになっている。とりわけ、ツール長さ補正を適用するステップは、異なるツール直径を有するツールが光ビームの中の実質的に同じ位置に位置しているときに、トリガー信号を発行させる。したがって、より小さい直径のツールを測定した結果生じる光の遮蔽の低減は、トリガー信号の発生を調節することによって(たとえば、トリガー閾値またはトリガー遅延を変更することによって)補正される。
【0023】
トリガー閾値またはトリガー遅延を変更する代わりに、ツール長さ補正値は、工作機械によって行われたツール長さ測定を補正するために確立され得る。有利には、ステップ(iii)は、未補正のツール長さを計算することを含む。次いで、ステップ(iii)は、ツール長さ補正値(すなわち、ツール直径に関係する値に基づく)を未補正のツール長さに適用することによって、ツール長さを決定するステップをさらに含み得る。このケースでは、ツール長さ補正を適用するステップは、ツール長さ補正値(たとえば、マイクロメートルまたはミリメートルでの長さ補正値)を計算することを含む。したがって、ツール長さは、先行技術に従って決定され得、ツール長さ補正値を計算する追加のステップが、次いで実施され得る。ツール長さ補正の計算は、工作機械のコントローラー、または、コントローラーにインターフェース接続されたコンピューターによって実施され得、後続の切削行為で工作機械によって使用されるツール長さが自動的に更新されることを可能にする。
【0024】
上記に説明されている方法はすべて、当然のことながら、ビーム幅よりも大きい直径を有するツールを測定するときに適用され得るが、その場合ツール長さ補正はゼロとして計算されることとなる。あるいは、上記の方法は、ビーム幅よりも小さい直径を有するツールが測定されるときにのみ実装され得る。したがって、非接触式ツールセッターは、上記に説明されている方法を使用する小型ツールモードと従来のツール長さ測定値が獲得される大型ツールモードとの間で切り替え可能であり得る。
【0025】
ツール長さ補正を適用するステップは、必要とされるツール長さ補正とツール直径との間の関係を記述するキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを参照することによって、ツール長さ補正を計算することを含み得る。ツール長さ補正の計算は、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを使用して決定され得る。キャリブレーション等式またはルックアップテーブルは、純粋に数学的なプロセスによって生成され得る。好適には、キャリブレーション等式(キャリブレーション関数)またはルックアップテーブルは、以前の測定値から導出される。
【0026】
方法は、ツール長さ補正とツール直径との間の関係を記述するキャリブレーション等式またはルックアップテーブルを(たとえば、リモートデータベースまたはデータ記憶媒体から)取り出すステップをさらに含むことが可能である。有利には、方法は、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出する初期のステップを含む。キャリブレーション等式またはルックアップテーブルは、純粋に数学的な(理論的な)プロセスによって(たとえば、光学的なモデルを使用して)生成され得る。有利には、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出するステップは、異なる幅の複数のツールが光ビームを通して移動させられるときに起こるビーム強度信号の変化を測定することを含む。とりわけ、キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出するステップは、複数のツールのそれぞれが光ビームを通して移動させられるときに起こるビーム強度信号の変化から、ツール直径に関係する特徴を識別することを含むことが可能である。キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出するステップは、ツール先端部位置(すなわち、異なる幅ツールに関して必要とされるツール長さ補正を確立するために)の独立した測定を提供するために、追加的なセンサー(たとえば、カメラ)を使用することをさらに必要とすることが可能である。キャリブレーション等式またはルックアップテーブルを導出するステップは、方法のステップ(i)から(iii)が実施される同じ非接触式ツールセッティング装置上で実施される必要はないということが留意されるべきである。実際には、下記に詳細に説明されているように、複数の公称的に同様の非接触式ツールセッティング装置とともに使用され得るキャリブレーション等式またはルックアップテーブルが導出され得る。
【0027】
ツール長さ補正を適用するステップは、非接触式ツールセッティング装置、工作機械、補助コンピューター、またはビスポーク計算ユニットのうちの少なくとも1つによって実施され得る。好ましくは、ツール長さ補正を適用するステップは、非接触式ツールセッティング装置によって(たとえば、そのような装置のプロセッサーによって)、少なくとも部分的に実施される。有利には、ツール長さ補正を適用するステップは、全体が非接触式ツールセッティング装置によって実施される。好適には、工作機械は、コントローラーを含み、ツール長さ補正を適用するステップは、コントローラーによって少なくとも部分的に実施される。したがって、ツール長さ補正プロセスは、システムの任意の適切なコンポーネントによって実施され得る。たとえば、非接触式ツールセッティング装置は、調節可能なトリガー閾値または調節可能なトリガー遅延を有し得、また、工作機械コントローラーから補正情報を受け取るように配置され得、それは、調節可能なトリガー閾値または調節可能なトリガー遅延が適当に設定されることを可能にする。次いで、公称ツール直径は、工作機械コントローラーによって非接触式ツールセッティング装置へ渡され得、それによって、そのような直径のツールに関して適当なトリガー閾値またはトリガー遅延を非接触ツールセッティング装置が計算することを可能にする。あるいは、工作機械コントローラーは、ツール直径およびビーム幅に基づいて、必要とされるトリガー閾値またはトリガー遅延を計算し得、この情報を非接触式ツールセッティング装置に渡し得る。また、非接触式ツールセッティング装置がユーザーによって直接的にプログラム可能であること、および/または、工作機械コントローラーにもインターフェース接続され得る別個のインターフェースもしくはコンピューターによって制御されることも可能である。当業者は、本方法が実装され得る多くのさまざまな方式を認識されよう。
【0028】
本発明は、任意の非接触式ツールセッティング装置とともに使用されることが可能である。本発明の利点は、実質的にコリメートされたまたは緩やかにコリメートされた光ビーム(厳格に焦点を合わせられた光ビームの代わりに)を使用して小型ツールが測定されることを許容することである。たとえば、光ビームは、1/65未満の開口数(NA)を有し得る。光ビームは、小さい開口を通る通過によって作り出され得る(たとえば、0.6mmのピンホールが赤い光とともに使用され、開口から20mmから200mmの距離においてビームウエストを形成することが可能である)。したがって、方法は、好ましくは、光ビームが実質的にコリメートされた光ビームである装置を使用して実施される。実質的にコリメートされたビームは、その長さに沿って実質的に一定のビーム幅を有しており、それによって、合焦光学系の特定の厳格な焦点距離の中にツールを置く必要性を低減させる。また、本発明は、より幅の広いビームが使用されることを許容する。たとえば、0.5mmよりも大きい幅、1mmよりも大きい幅、2mmよりも大きい幅、または、3mmよりも大きい幅、または、5mmよりも大きい幅または、10mmよりも大きい幅を有するビームが使用され得る。また、方法は、焦点を合わせられたビームシステムとともに使用され得、その性能を改善する。
【0029】
方法は、任意の適切なツールの長さを決定するために使用され得る。上記に概説されているように、ツールは、マイクロツールであることが可能である。たとえば、ツールは、1.0mm未満の、0.5mm未満の、250μm未満の、または100μm未満のツール直径を有し得る。ツール直径は、ビーム幅の90%未満、ビーム幅の80%未満、ビーム幅の75%未満、ビーム幅の60%未満、ビーム幅の50%未満、ビーム幅の30%未満、ビーム幅の20%未満、または、ビーム幅の10%未満であり得る。本明細書で使用されるツール幅は、ツールの主切削部分の幅(たとえば、ドリルビットのフルート付き切削部分の幅、および、ツールチャックの中にツールを保つ目的のために提供されるツールの全く幅広になっていない近位端部)に関係するということが留意されるべきである。ツール長さは、工作機械スピンドルの上の基準点に対して測定され得る(すなわち、それは、物理的なツール長さの正確な測定というよりも、有効ツール長さまたはツールオフセットであることが可能である)。ツールは、測定の間に静止していることが可能である(たとえば、好ましくは、光ビームの最大遮蔽に関して回転方向に配向されている場合)。あるいは、ツールは、測定の間に回転していることがあり得る。ツールが回転している場合には、ビーム強度信号の中の最小値が解析され得る(たとえば、特許文献4に説明されている様式で)。
【0030】
上記はツールの長さを測定することに関係しているが、これは、ツール特徴のサイズを測定する単に1つの例である。また、ツール幅(たとえば、1つまたは複数の切削歯の直径)が決定され得る。測定は、ツール上の複数のポイントにおいて繰り返され得る(たとえば、直径が、ツールの長さに沿って複数のポイントにおいて測定され得る)。
【0031】
ツール長さ補正を適用することに加えて、方法は、「ビームクリア」条件での変化を考慮し得る。とりわけ、方法は、基準光レベルに対して、ツールが光ビームの中に位置していないときにレシーバーにおいて受け取られる光の強度の任意の変動を考慮に入れるための調節を適用するステップを含むことが可能である。そのような調節を行うことは、ビームクリア条件で(すなわち、ビームの中に位置するツールが存在しないとき)レシーバーにおいて受け取られる光の強度の任意の変動が補償され得るということを意味している。とりわけ、調節は、基準光レベル(たとえば、装置の据え付けまたはキャリブレーション時に以前に確立されたビームクリア光レベル)に対して、ビームクリア条件で(すなわち、ツールが光ビームを遮蔽していないとき)レシーバーにおいて受け取られる光の強度の任意の変動が考慮に入れられることを可能にする。そのような光強度の変動は、たとえば、使用の間に工作機械の中に存在している冷媒ミスト、レーザー出力強度を変更する温度変化、または、光ビームの光学的な経路の中にあるレシーバーおよび/もしくはトランスミッターのコンポーネントの上の少量の塵もしくは汚染から生じる可能性がある。
【0032】
「ビームクリア」条件での変化を考慮に入れるための調節が、さまざまな方式で実装され得る。たとえば、変化は、トリガー閾値、送信された光強度、またはレシーバー感度などのうちの任意の1つまたは複数に対して行われ得る。調節がトリガー閾値を調節することを含む場合、そのような調節は、ツール長さ補正を実装するために必要とされるトリガー閾値の任意の変更に対して追加的なものであり得る。また、適用されている調節(たとえば、レーザーパワー、レシーバーゲイン、トリガー閾値などの変化)の大きさを示す出力が提供され得る。これは、工作機械ユーザーが、補償ユニットによって適用されている調節の大きさを知ることを確実にする。補償ユニットは、調節を実装するために提供され得る。
【0033】
方法の中で使用される非接触式ツールセッティング装置は、ブラケットにそれぞれ取り付けられ得る個別のトランスミッターユニットおよびレシーバーユニットを含むことが可能である。あるいは、トランスミッターおよびレシーバーを含む単一のユニットが提供され得る。装置は、トランスミッター/レシーバーユニットとは別個のコントローラーを含むことが可能であり、または、コントローラーはそのようなユニットと一体的に形成され得る。有利には、トランスミッターは、光を生成するためのレーザーを含む。また、トランスミッターは、コリメートされた光ビームを提供するための光学系を含むことが可能である。あるいは、トランスミッターは、(コリメートされるのではなく)焦点を合わせられたレーザービームを提供し得る。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、工作機械上で非接触式ツール測定を実施するための装置であって、装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーであって、レシーバーにおいて受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成する、レシーバーと、公称ツール直径を有するツールが光ビームを通して移動させられるときに起こるビーム強度信号の変動を解析するためのトリガーユニットであって、トリガーユニットは、ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときにトリガー信号を生成し、トリガー信号は、ツールの長さを決定するために工作機械によって使用可能である、トリガーユニットとを含み、装置は、ツール長さ補正ユニットを含み、ツール長さ補正ユニットは、公称ツール直径がビーム幅よりも小さいときに、ツール長さ補正を適用することを特徴とする、装置が提供される。装置は、同様の方法の文脈において上記に説明されている任意の1つまたは複数の特徴を含み得る。有利には、ツール長さ補正ユニットは、トリガーユニットによって発行されるトリガー信号を調節することによって、ツール長さ補正を適用する。たとえば、ツール長さ補正ユニットは、トリガーユニットのトリガー閾値を調節することによって、および/または、工作機械へのトリガー信号の発行を遅延させることによって、ツール長さ補正を適用し得る。
【0035】
上記に述べられているように、ハウジングは、工作機械の作業環境の中に装着するために提供され得、ハウジングは、トリガーユニット、ならびに、トランスミッターおよびレシーバーのうちの少なくとも1つを含有している。また、ツール長さ補正ユニットは、ハウジングの中に提供され得る。あるいは、ツール長さ補正ユニットは、別個のユニットとして、または、工作機械の一部として(たとえば、工作機械コントローラーによって実装されるモジュールとして)提供され得る。また、上記に説明されているように、補償ユニットが含まれ得る。本明細書で使用される「ユニット」という用語は、1つの物理的な場所に存在する個別の要素またはコンポーネントのセットに限定されるものとして読まれるべきではなく、そのような「ユニット」は、分配されたコンポーネントによって実装され得、または、1つもしくは複数のプロセッサー上で走るソフトウェアによっても実装され得るということが留意されるべきである。
【0036】
また、本明細書で説明されているのは、光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーとを含む、非接触式ツールセッティング装置である。また、レシーバーは、レシーバーにおいて受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し得る。トリガーユニットは、対象物が光ビームを通して移動させられている間に、ビーム強度信号を解析するために提供され得る。また、トリガーユニットは、ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときにトリガー信号を生成するためのものであることが可能である。トリガーユニットは、調節可能なトリガー閾値を有することが可能である。トリガー閾値は、「ビームクリア」状態で受け取られるビーム強度信号の割合として定義され得る。トリガーユニットは、光ビームを通して移動させられている対象物のサイズに基づいて、トリガー閾値を調節するように配置され得る。トリガーユニットは、光ビームの幅よりも大きい直径を有する対象物を測定するときに、第1のトリガー閾値を適用し得る。トリガーユニットは、光ビームの幅よりも小さい直径を有する対象物を測定するときに、第2のトリガー閾値を適用し得、第2のトリガー閾値は、第1のトリガー閾値とは異なっている(たとえば、それよりも高い)。
【0037】
また、本明細書で説明されているのは、工作機械のための非接触式ツールセッティング装置であって、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーであって、レシーバーにおいて受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成する、レシーバーと、公称ツール直径を有するツールが光ビームを通して移動させられるときに起こるビーム強度信号の変動を解析するためのトリガーユニットであって、トリガーユニットは、ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときにトリガー信号を生成し、トリガー信号は、ツールサイズを決定するために工作機械によって使用可能である、トリガーユニットとを含み、ツールサイズ補正が、ツールの公称直径がビーム幅よりも小さいときに、決定されたツールサイズに適用され、補正は、公称ツール直径に対するビーム幅から計算される、非接触式ツールセッティング装置である。
【0038】
また、本明細書で説明されているのは、工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール長さ測定のための方法であって、非接触式ツールセッティング装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーとを含み、レシーバーは、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し、方法は、(i)ツール直径を有するツールを、光ビームを通して移動させ、それによって、ビーム強度信号の変化を引き起こすステップであって、ツール直径は、ビーム幅よりも小さい、ステップと、(ii)ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときに、トリガー信号を生成するステップと、(iii)ステップ(ii)において生成されるトリガー信号を使用して、ツールの長さを決定するステップとを含み、方法は、公称ツール直径がビーム幅よりも小さいことを考慮に入れるツール長さ補正を適用するステップを含む、方法である。ツール長さ補正は、ツール直径およびビームの相対的なサイズに依存し得る。ツール長さ補正は、上記に説明されている方法(たとえば、トリガー遅延、トリガー閾値などを変更する)のいずれかを使用して適用され得る。
【0039】
また、本明細書で説明されているのは、工作機械に装着された非接触式ツールセッティング装置を使用するツール測定のための方法であって、非接触式ツールセッティング装置は、ビーム幅を有する光ビームを放出するためのトランスミッターと、光ビームを受け取るためのレシーバーとを含み、レシーバーは、受け取られた光の強度を記述するビーム強度信号を生成し、方法は、ビーム幅よりも小さい公称ツール直径を有するツール特徴を含むツールを測定するためのものであり、光ビームの中へツール特徴を完全に挿入することが、光ビームを部分的にのみ遮るようになっており、方法は、(i)光ビームを通してツール特徴を移動させ、それによって、ビーム強度信号の変化を引き起こすステップと、(ii)ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときに、トリガー信号を生成するステップと、(iii)ステップ(ii)において生成されるトリガー信号を使用して、ツール特徴のサイズを決定するステップとを含み、方法は、ツール特徴の公称ツール直径がビーム幅よりも小さいことを考慮に入れるツールサイズ補正を適用するステップを含む、方法である。方法は、ツール長さ補正のために使用され得、本明細書で説明されている特徴のいずれかを含むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
ここで、本発明が、添付の図面を参照して、単なる例として説明される。
図1】本発明の非接触式ツールセッティング装置を示す図である。
図2】ピンがビームを遮蔽するように移動させられているときに受け取られる光の低下を示す図である。
図3a】ビームクリア条件を図示する図である。
図3b】光ビームを部分的に遮蔽している大型ツールを示す図である。
図3c】光ビームを部分的に遮蔽している小型ツールを示す図である。
図4】受け取られる光強度に対するツール直径の影響を示す図である。
図5】異なる直径ツールに関するさまざまなs字曲線を示す図である。
図6】回転しているツールに関するs字曲線を示す図である。
図7】一連の平滑化されたs字曲線を示す図である。
図8】ツールオフセットおよびツール直径の変動の影響を図示する図である。
図9】ツールオフセット-対-ツール直径測定値を、それらにフィットさせた多項式とともに示す図である。
図10】残存光レベルの関数としてツール長さ誤差を示す図である。
図11】ビームおよびツール幅のスケーリングを図示する図である。
図12】異なる先端部プロファイルを有するツールに関するs字曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1を参照すると、本発明のツールセッティング装置が図示されている。装置は、実質的にコリメートされた光のビーム12を生成するためのトランスミッター10を含む。トランスミッター10は、コリメートされた光のビーム12を生成するためのレーザーダイオードおよび適切な光学系(図示せず)を含む。また、レシーバー14は、光のビーム12を受け取るように図示されている。レシーバーは、光のビーム12を検出するためのフォトダイオード(図示せず)を含む。
【0042】
トランスミッター10およびレシーバー14は、両方とも、ピラー18によって共通のベース20に固着されている。この機構は、トランスミッター10およびレシーバー14が互いに対して固定された間隔および配向を維持することを確実にする。次いで、ベース20は、工作機械のベッドに、または、実際には、任意の適当な一部に直接的に装着され得る。また、トランスミッターおよびレシーバーを装着するためのさまざまな代替的な構造体が使用され得ることが留意されるべきである。たとえば、トランスミッターおよびレシーバーのための共通のハウジングが提供されることができ、または、個別のトランスミッターユニットおよびレシーバーユニットが、工作機械に別個に装着されることができる。
【0043】
また、装置は、インターフェース15を含み、インターフェース15は、電気ケーブル17を介してトランスミッター10およびレシーバー14に接続されている。インターフェース15は、トランスミッター10およびレシーバー14に電力を提供し、また、レシーバー14のフォトダイオード検出器からビーム強度信号を受け取る。また、インターフェース15は、トリガーユニット22を含み、トリガーユニット22は、それがレシーバー14から受け取るビーム強度信号をモニタリングし、ビーム強度信号がトリガー閾値を越えるときに、関連の工作機械30にトリガー信号を発行する。この例のトリガー信号は、出力ラインのステータスの変化を含むが、それは、電気的なパルスまたは工作機械30のコントローラーに通信する他の公知の方式としても実装されることが可能である。また、インターフェース15は、ツール長さ補正ユニット40を含み、ツール長さ補正ユニット40は、下記により詳細に説明されている。
【0044】
ツール測定動作における使用の前に、たとえば、セットアップまたは据え付けプロセスの間に、トランスミッター10およびレシーバー14は、互いに対してまっすぐ並べられ、レシーバー14のフォトダイオードの上に落ちる光の強度を最大化する。次いで、レシーバーに関連付けられた可変ゲイン増幅器が調節されて、ビーム強度信号が、ビームの遮断が全くない状態で(すなわち、装置がいわゆる「ビームクリア」条件になっている状態で)5vの値をとるようにする。この5vビーム強度信号は、基準ビーム強度レベルとして設定される。
【0045】
先行技術システムでは、トリガーユニット22は、次いで、2.5v(すなわち、基準最大ビーム強度レベルの50パーセント)の固定されたトリガー閾値を有するように設定される。光ビーム12の中へ対象物を通すことは、ビーム強度信号が2.5vを下回って低下するときに結果としてトリガー信号を発行させる。したがって、このトリガー信号は、対象物(たとえば、ツール)がレーザービーム12に対して特定の位置に達したことを示すために使用され得る。50%レベルが一般に使用されるが、50%または2.5Vの領域の中のいずれかの閾値も使用され得る。
【0046】
図2は、8mm直径を有する大型の中実の(キャリブレーション)ピンを8mm未満のビーム幅を有する光ビームの中へ通すときに、どのようにトリガー信号の発行が起こるかということを例証している。とりわけ、図2のグラフは、キャリブレーションピンが光ビームの軸線に対して垂直の方向に沿って光ビームの中へ横断させられるときに、工作機械によって測定されるピンの位置(x軸上にプロットされている)の関数として、ビーム強度信号(y軸上にプロットされている)の変化を示している。光ビームの任意の遮断がないときに(すなわち、いわゆる「ビームクリア」条件)、ビーム強度信号は、おおよそ5vの値をとり、これは、ビームがs字形状の曲線50を辿って完全に遮断されるときには0vまで低減する。2.5v(50%)トリガー閾値の使用は、12.117mmのピンに関するトリガー位置を与えることが見て取れる。50%トリガー閾値の使用は、ツールが光ビームのビーム幅よりも大きいときに、ツール位置の信頼性の高い測定を提供することが見出された。しかし、ここで図3aから図3cを参照して説明されるように、固定されたトリガー閾値は、ツール直径がビーム幅よりも小さいときに誤差を導入することが見出された。
【0047】
図3aは、上記に説明されているツールセッター装置によって生成される光ビーム80を示している。光ビーム80は、適切な近似では、円形であり、ガウス強度分布を有している。上記に述べられているように、光ビームはコリメートされ、したがって、その長さに沿って同様の断面を有している。図3aは、いわゆる「ビームクリア」条件を示しており、ここでは、測定されるツール82は、ビームから離れている。この例では、光の100%が、トランスミッター10からレシーバー14へ通過する。
【0048】
次に図3bを参照すると、ツール82は、工作機械によって光ビーム80の中へ(方向zに沿って)移動させられる。ツールが図3bに図示されている位置(すなわち、光ビーム80の50パーセントが遮蔽される場所)に到達する時点において、トリガーユニット22は、トリガー信号を発行する。工作機械は、トリガー信号が受け取られる瞬間に、ツールの測定された位置を記録し、それによって、(適切なキャリブレーションによって)ツール先端部の位置が決定されることを可能にする。したがって、ツール82の測定されたツール長さが記憶されることができ、その後に、その特定のツールが切削動作において使用されているときに使用され得る。
【0049】
図3cを参照すると、固定されたトリガー閾値を使用し、光ビーム80の直径よりも小さい直径を有するツール84を測定するときに生じる位置誤差が図示されている。ここでも、使用の間に、ツール84は、(方向zに沿って)光ビーム80の中へ移動させられる。しかし、ツールは、光ビームの幅全体を遮らず、したがって、ツール先端部が光ビーム80の中心に到達するときには、50パーセントトリガー条件は到達されない。その代わりに、ツール84は、トリガー信号が発行される前に、図3cに図示されている位置までさらにビームの中へ入る必要がある。したがって、ツール84の先端部位置は、ビーム中心からの距離Eによってオフセットされている。この余分な距離Eは、ツール84の低減された長さとして工作機械によって解釈される(すなわち、工作機械は、ツール84を実際よりも短く測定する。その理由は、トリガー信号が生成される前に、それがビームの中へさらに移動させられる必要があるからである)。ツール82の先端部の測定される位置とツール84の先端部の測定される位置との間のこの差または誤差は、これらのツールを使用して切削される任意のパーツにおける誤差を結果として生じさせる(すなわち、その理由は、ツール長さがこの誤差を含むからである)。
【0050】
図4は、ツールが光ビームの中へ移動させられるときに作り出されるビーム強度信号に対するツール直径の影響を示している。x軸(水平方向の軸線)は、光ビームに対するツールの変位を示しており、y軸(垂直方向の軸線)は、ビーム強度信号をボルトで示している。曲線102、104、106、108、109、および110は、100μm、70μm、60μm、40μm、30μm、および20μmの公称直径をそれぞれ有するツールが光ビームの中へ移動させられるときの、ビーム強度信号の低下を示している。ビーム幅は、100μm未満であるが、70μmよりも大きく、したがって、最大の100μmツールのみが、ビームの中へ完全に挿入されたときに、それを完全に遮蔽することとなる。100μmツールは、キャリブレーションピンと交換されることができる。トリガー閾値が2.0vに設定されたとすれば、異なる直径ツールの測定された長さは、10μmよりも大きい誤差Lを含むことになることが図4から見ることができる。
【0051】
ツール長さ補正ユニット40のトリガーユニット22は、上記に説明されている位置誤差を除去する(または、少なくとも低減させる)ために、トリガー閾値を調節するように命令される。本実施形態では、ツール長さ補正ユニット40は、ビーム幅値を記憶しており、測定されるツールに関係する工作機械30から公称ツール直径情報を受け取る。ツールの測定の前に、ツール長さ補正ユニット40は、公称ツール直径がビーム幅よりも小さいかどうかをチェックする。任意のそのようなツールに関して、マッピング動作が、ツール長さ補正ユニット40によって実施され、ツールの先端部がビームに対してキャリブレーションピンと同じポイントに位置するときにトリガー信号が発行されるために必要とされるトリガー閾値電圧を決定する。このマッピングプロセスは、本例においては、(たとえば、図4に示されるタイプのデータからとられる)補正のルックアップテーブルを使用することに基づいている。しかし、ルックアップテーブルは、ビームを部分的に遮蔽する影響を光学的にモデリングして、必要なトリガー閾値電圧をツール直径に関係付ける適切な数学的表現などを取得することによって生成されることも可能である。
【0052】
次いで、70μmの公称直径を有するツール(すなわち、図4の曲線104を生成した)に関して、ツール長さ補正ユニット40は、2.2V閾値が越えられるときにトリガー信号を発行するようにトリガーユニット22に命令する。図4に示されているように、70μmツールおよび100μmツールは、ビーム強度信号がそれぞれ2.2Vおよび2.1Vにあるときに、両方ともビームの中の同じz位置に位置している。換言すれば、異なるトリガー閾値120および122は、ツール先端部が光ビームの中の同じ位置に位置している状態で、それぞれ70μmツールおよび100μmによって越えられる。このように、ツール長さ補正ユニット40は、ビーム幅よりも小さい直径を有するツールを測定するときに起こるビーム閉塞の低減を補償する。
【0053】
図5を参照すると、異なるツール直径の範囲を測定するときに作り出される「s字曲線」の例が図示されている。s字曲線は、ツールが光学的なビームの中へ徐々に挿入されるときの検出器応答のグラフィック表現である。最も簡単なケースは、ビームの中心を通過する完璧に整合されたツールに関するものである。プロットの垂直方向の軸線は、検出器応答であり(このスケールは、図5に従って、妨害されていないビーム応答のボルトまたはパーセントであることが可能である)、水平方向の軸線は、ツール変位であるか、または、より便宜的には、距離の単位(たとえば、ミクロンまたはミリメートル)での光学的なビームの中の所望の平面に対する先端部の場所である。
【0054】
それぞれのs字曲線は異なるポイントにおいて75%閾値を越え、その結果、所望のツール先端部位置(図5のグラフの中の0.000として示されている)に対して異なるツール先端部位置が測定されるということが図5から見ることができる。したがって、ツール長さの誤差が存在し(これは、15μm直径ツールに関してZ15として示されている)、本明細書で説明されている方法の目標は、ツール直径に依存する測定または他の情報の関数として、この長さ誤差を確立することである。
【0055】
次に図6を参照すると、多くのツール長さ測定の間にツールは回転していることが留意されるべきである。したがって、ツールのさまざまな切削歯は、ビームの中で回転していることになり、それによってビーム遮蔽の量を変化させる。したがって、図6は、スピンしている50μm直径ツールに関する未処理のs字曲線測定を図示しており、ここでは、交流電流(AC)成分が、ツールフルートに起因している。フルートに起因する処理誤差を回避するために、キャリブレーションデータを抽出する前に、未処理のs字曲線が、ツールの1回転当たりの最小値のみを考慮することによって平滑化されることができる。
【0056】
図7は、ツールが回転させられているときに抽出された最小値を使用して生成された一連の平滑化されたs字曲線を図示している。曲線300、302、304、306、および310は、直径20μm、40μm、60μm、70μm、および110μmのツールに関係する。これらのs字曲線を生成するために使用される平滑化プロセスは、図示されている曲線の群を作り出すために、最小データにわたって移動平均(5つの最小値分の幅)を通すことによって実施された。
【0057】
次に図8を参照して、光ビームの中心に対してツールをオフセットすることがどのように、異なる直径のツールを使用することと非常に類似する、s字曲線に対する影響を有するかについて説明する。図8の差し込み図は、ビーム中心400を有する光ビーム402の中へ下向きに(すなわち、z軸に沿って)移動させられる直径dのツール404を図示している。ツール404は、ビーム中心400から距離aだけ横方向にオフセットされた長軸線406を有している。図8のグラフは、4つの重なり合っているs字曲線を示しており、それらは、ほとんど互いに区別不可能である。4つのs字曲線は、第1のツール(d=18μm、a=0)、第2のツール(d=20μm、a=6.1μm)、第3のツール(d=25μm、a=9.5μm)、および第4のツール(d=30μm、a=12μm)に関して生成された。下記により詳細に説明されるように、この効果は重要である。その理由は、それが、s字曲線から抽出される任意のキャリブレーションデータが、s字曲線を作り出す任意のツール直径/ツールオフセット組み合わせに関して有効であることを意味するからである。これは、したがって、一連のs字曲線から抽出されたデータを表す下記に説明されるキャリブレーション等式が、軸上のおよび軸外のツールの範囲に関して本質的に有効のままであることを意味する。
【0058】
次に図9を参照すると、ツール長さ補正がどのように、75%閾値の領域においてs字曲線の勾配に関係するかということが図示されている。この例では、ツール長さ補正は、垂直方向の軸線の上のトリガー遅延として表現されており、75%閾値の領域の中のs字曲線勾配(それは、ツール直径に依存している)が、水平方向の軸線の上にプロットされている。トリガー遅延は、10μmから60μmのツール幅(5μmステップ)に関して、および、0から8μmのツール横方向オフセット(すなわち、図8の中の距離「a」)(1μmステップ)に関して、(75%閾値の領域の中の)s字曲線勾配の関数としてプロットされている。これらの曲線は、下記により詳細に説明されているように、正規化された単位でプロットされているが、軸上のおよび軸外のs字曲線が、共通のキャリブレーション等式または関係(すなわち、プロットされたライン500によって示されている)を生じさせることが見て取れることが留意されるべきである。
【0059】
要約すると、上記に説明されているs字曲線のそれぞれは、光学的なビームの中へ徐々に挿入されるツールとして検出器応答を表している。最も簡単なケースは、ビームの中心を通過する完璧に整合されたツールであるが、8に図示されているように、非常に類似したs字曲線が、適度な横方向オフセットを伴う異なる幅ツールによって作り出される。これは、実用的な観点から極めて有利である可能性がある。その理由は、それが、ツールセッター装置に関する光学的なアライメント制約を大きく緩和するからである。予期されるように、s字曲線の形態、および、実際には、横方向オフセットに対するs字曲線の公差は、光学的な回折効果に起因して、光学的なツールセッターの幾何学形状によっていくらか変化する。たとえば、図1を参照して説明されているタイプのツールセッティング装置は、670nm光(光ビーム12)の55mm長さの光学的なビームを有することが可能であり、それは、0.6mm直径供給源開口(すなわち、トランスミッター10の中のもの)を通過し、直径0.6mmのレシーバー開口(すなわち、レシーバー14の中のもの)に進入する信号強度を最大化するようにわずかに収束させられる。そのようなほぼコリメートされたビームを使用することは、さまざまな理由(たとえば、光学的なコスト、空気汚染に対する抵抗など)のために有利であるが、同じ効果が、厳格に収束する(焦点を合わせられた)または発散的な光ビームを含むものなどの、他の光学的機構において起こる。
【0060】
次に、どのようにキャリブレーションを実施するかについてのさらなる詳細が提供される前に、どのようにツール長さ補正を実装するかについて説明する。
【0061】
第1の実施形態では、すべてのツール長さ補正動作は、ビームの中へのツールの1回のパスの間に起こる。したがって、ツール長さ補正は、ユーザーにとって透過になり、外部からは任意の大型ツール測定動作と同じように表れる。これを実現するために、実行されているs字曲線を推定するために、および、適用されることを必要とするツール長さ補正をそれから計算するために検出された、s字曲線信号の「特徴」を観察することが可能である。次いで、この補正は、ツール先端部がビーム光軸(すなわち、図5に示されているz=0位置)に到達するとすぐにトリガーパルスをマシンコントローラーに発行するために使用されることができる。
【0062】
上記の目標を実現するための1つの方式は、高い信号レベル(一定のフィードレートを仮定する)においてS字曲線勾配を観察することである。たとえば、s字曲線勾配は、たとえば、妨害されていない信号(ビームクリア)レベルの75%閾値において決定され得る。75%閾値における測定されるS字曲線勾配は、次いで、キャリブレーション等式の中の縦座標として使用され得、または、ルックアップテーブルアドレスに変換され、閾値交差点からz=0(トリガー発行)ポイントまでのツール位置オフセット(dz)を推論することが可能である。図示のために、15μmツールに関するオフセットdzは、図5の中でZ15と表記されている。75%閾値における値dzまたは勾配の指示値は、補正としてマシンコントローラーに直接的に送られ得、または、非接触式ツールセッターによって作り出されるトリガー信号は、(たとえば、トリガー閾値またはトリガー遅延を変更することによって)dz補正を提供するように適合され得ることが留意されるべきである。
【0063】
また、代替的な「変調深さ」技法も可能であり、そこでは、ツールが光ビームの中に2回挿入され得る。第1の測定ステップにおいて、ツールは、光ビームの中へ完全に挿入され(すなわち、したがって、それは、ビームの一方の側から他方の側へ通過する)、ビーム強度信号が測定される。そのように完全に挿入されたツールに関するビーム強度は、「残存光レベル」と呼ばれ、これは、ツール直径の信頼性の高い指示値を提供することが見出されている。図5において、15μmツールに関するビームクリア値から残存光レベルへのビーム強度の低減は、R15と表記されている。
【0064】
図10は、異なる直径の複数のツールに関して、残存光レベル(ビームクリア値のパーセンテージとして表現されている)の関数として、所与のビーム幅に関するz遅延またはdz値(すなわち、ツール先端部位置における誤差)を示している。その関係は、便宜的に低次の多項式によって記述される曲線に従うことが見て取れる。
【0065】
したがって、残存光レベルからツール長さ補正を取得することが可能である。次いで、ツールは、光ビームから引き抜かれ、第2の測定ステップのために再挿入され得る。あるいは、第2の測定ステップは、単にツールが引き抜かれているときに起こることも可能である。残存光レベルから計算されるツール長さ補正は、ビームの中へのツールの再挿入の間に適用されるトリガー閾値を調節するために使用され得る。このように、再挿入の間に発行されるトリガー信号は、ビーム幅よりも小さくなっているツール直径に関して補正され得る。キャリブレーション多項式を計算する必要性を回避することが望ましい場合には、トリガー閾値は、単に、(図5の中のレベル200によって示されているように)後続の測定に関してビームクリアと残存光レベルとの間のおおよそ中間に設定され得る。
【0066】
ここで、どのようにキャリブレーションデータが収集され得るかについて説明する。とりわけ、以下の手順が、異なる直径のマイクロツールの範囲に関して、s字曲線を測定するために使用された。このキャリブレーションプロセスにおいて、異なる直径ツールの範囲のそれぞれが、順番に測定された。
【0067】
概要として、キャリブレーションの行為は、典型的に、以下のステップの少なくともいくつかを伴う。
【0068】
A) ツールセッティング装置の動作の中で適用されることとなるツール幅を代表するツールの範囲に関して、現実の測定を表すs字曲線の群を生成するステップ。
【0069】
B) ツール幅(または、より正しくは、ビーム幅に対するツール幅の比率)に依存するそれぞれのs字曲線から「特徴値」を識別および測定するステップ。この特徴値は、ツールセッティング装置の動作の間に検出器信号の分析から、どのs字曲線が実行されているかを自動的に識別するのに適切であるべきである。
【0070】
C) それぞれのs字曲線に関してツール長さ補正を選択および測定するステップ。これは、選択される補正技法(トリガー遅延の調節、トリガー閾値調節、コントローラーへの通信のために長さ補正/オフセットを計算することなど)を使用するツール長さ補正に関して適切であるべきである。
【0071】
D) (たとえば、ステップAに従って)測定されるもの以外のs字曲線に関する長さ補正が必要とされる場合には、内挿/外挿方法(たとえば、キャリブレーション等式)を公式化することも可能であり、内挿/外挿方法は、特徴値または代替的なs字曲線識別子の連続的な範囲から長さ補正値を導出するのに適切である。これらの追加的な長さ補正は、動作の間に計算され得るかまたは以前に伝達され得る。これは、たとえば、s字曲線発生プロセス(ステップA)の間に測定されるものとは異なる直径を有するツールの測定を可能にする。
【0072】
キャリブレーションデータを取得するために、第2の光学的なセンサー(この例では、高倍率レンズを備えたカメラ)が、参照目的のために使用された。カメラを使用することは便利であるが、任意の適切に正確な変位センサーが使用され得ることが留意されるべきである。最初に、大きい直径の平坦な底部のツール(たとえば、エンドミルなど)が、NCツールセッターの光ビームの上に、それがトリガーされるまで下げられた。エンドミルは、「トリガーレベル」に保持され、カメラによって観察された。これは、カメラに「大型ツールトリガー平面」の垂直方向の場所を伝える。視差の誤差を回避するために、カメラ軸線は、ツール運動に対して垂直の所望の「深さ」(たとえば、大型ツールトリガー)平面の中に設定された。大型ツールトリガー平面の中で動作するようにキャリブレーション(すなわち、Z0)をセットアップすることは必須ではないが、これは、ほとんどの用途に関して好都合な選択肢である。
【0073】
次いで、工作機械のスピンドルの中に第1のマイクロツールを置くことによって、テストが開始された。マイクロツールが、ツールセッターの光ビームの中へ通され、先端部が「大型ツールトリガー平面」にあるときに、カメラを使用して、それが観察された。マシンスケール値(たとえば、Z0と呼ばれる)が、このポイントにおいて測定された。次いで、マイクロツールが引っ込められ(すなわち、光ビームから後退させられた)、ビーム強度信号およびマシンスケール(z)値の両方を記録しながら、光ビームの中に戻された。値Z0がスケール(z)値から差し引かれ、ビーム強度信号が垂直方向にプロットされ、補正されたスケール値が水平方向にプロットされた。したがって、z=0の値は、「大型ツールトリガー平面」に対応している。また、ビーム強度信号が閾値(たとえば、75%閾値)に等しくなるz値も留意された。このz値は、このツールに関するzオフセットである。したがって、zオフセットは、(すなわち、ビーム幅よりも小さいツール幅を考慮に入れるなどのために)この特定のs字曲線に関して適用されることを必要とするツール長さ補正を記述している。ツール長さ補正値(すなわち、zオフセット)の目的は、ツール先端部が光学的なビームの中で特定の深さに位置しているときに、マシンツールに知らせることである。補正のために使用される特定の深さは、選択可能であり、それは、すべてのツールに関して同じである必要はないことが留意されるべきである。しかし、簡単にするために、一定の深さが、すべてのツールに関して使用されてもよい(これは、本明細書で説明されているさまざまな実施形態に該当する)。
【0074】
ツール長さ補正を確立することに関連する概念が、再び簡潔に図5を参照することによってさらに説明されることができる。図5は、Z15と表記されたzオフセットを示しており、それは、15μmツールに関する強度曲線が75%閾値を越えるときのツールオフセットである。したがって、このZ15値は、「補正値」の例である。図5の例では、Z15値は、トリガー発行のときに記録されるものとしてそのスケール読み値を補正するためにコントローラーに伝達されることができる量(たとえば、マイクロメートルでの値)である。明らかに、図5に示されているそれぞれのs字曲線は、独自のツールオフセット値を有することとなる。
【0075】
ツールオフセット値(Os)についての情報を工作機械のコントローラーに渡すことは、常に可能または実用的であるわけではない。その代わりに、マシンツールへのインターフェースは、必要とされるツール長さ補正を提供するためにトリガー遅延を適用することによって(すなわち、工作機械コントローラーへのトリガー信号の発行を遅らせることによって)簡単化されることができる。そのような技法は、ツールフィードレート(Vf)が既知であることを必要とするということが留意されるべきである。次いで、必要とされるトリガー遅延(td)は、単に、フィードレート(Vf)で除算されたツールオフセット(Os)である。フィードレートは、既知の一定の(または、平均)フィードレート値である。このトリガー遅延パラメーター(td)は、トリガーが初期に生成された後の正しい時間に(すなわち、ツール長さ補正を実装するために)、ツールセッターがトリガーを工作機械に発行することを可能にする。ツール長さ補正を実装するための別の方式は、ここでも、非接触式ツールセッターと工作機械コントローラーとの間のインターフェースを変更する必要なしに、トリガーレベル(すなわち、トリガー信号が発行される閾値レベル)を変更することである。これは、大型ツール平面の中に(すなわち、所望の深さにおいて)ツール先端部を位置決めするためにカメラを使用することによって行われ得る。次いで、受け取られる信号レベルは、動作時に、トリガーがマシンツールに発行される閾値を表す。当然のことながら、そのようなツール長さ補正が実際に実装され得る他の方式も存在する。
【0076】
zオフセットを確立するのと同様に、「s字曲線特徴値」もこの第1のマイクロツールに関して(すなわち、上記のステップBに従って)留意された。s字曲線特徴値は、変調深さ(すなわち、ビームクリア信号に対する、ツールがビームの中へ完全に挿入されているときのビーム強度信号)であることが可能である。変調深さは、最大遮蔽とも呼ばれ得る(および、残っている信号または除去された信号に基づくことが可能である)。あるいは、s字曲線特徴値は、定義された信号レベルの領域の中の勾配(たとえば、トリガー閾値の領域の中の勾配)、または、ビーム幅に対する有効ツール幅に依存する任意の他の測定値であることが可能である。特徴値およびzオフセット値は、この第1のツールに関して記録された。
【0077】
上記に説明されているもの以外の特徴値に依存するツール幅が使用され得るということが留意されるべきである。これらは、平均勾配、曲線の下の面積、または、(既知の(もしくは、一定の)ツールフィードレートに関する)2つ以上の信号レベルの間の遅延の使用を含むことが可能である。特徴値に依存するツール幅の主要な目的は、どのs字曲線が実行されているかをラベル付けまたは識別することである。特徴値は単にs字曲線識別子であるので、それは、また、(必要とされる場合には)以前の知識または外部から伝達される情報によって交換されることができる。
【0078】
次いで、第1のマイクロツールに関して上記に説明されたテストプロセスが、異なる直径の複数のマイクロツールに関して繰り返された。したがって、s字曲線特徴値およびzオフセットが、ツールセットの中のすべてのツールに関して記録された。s字曲線データを記録(保存)することは必要でなく、その代わりに、それはリアルタイムで(または、準リアルタイムで)処理され得ることが留意されるべきである。また、全体的なs字曲線を測定することは不必要であり、s字曲線特徴値および補正値(zオフセット)だけを測定するので十分である。
【0079】
複数のマイクロツールに関して特徴値(たとえば、曲線勾配)および関連の補正値(たとえば、zオフセット)を収集した後に(すなわち、上記に説明されているステップAからC)、長さ補正値の個別のセットおよび特徴値のペアが存在する。そのような値のペアの数は、ステップAにおいて生成された独自のS字曲線の数に対応している。
【0080】
ここで、どのように実際に(すなわち、上記のステップDに従って)上記に説明されている値のペアを適用するかについて説明する。
【0081】
機器および測定の環境および安定性が十分に制御され、現在測定されているs字曲線の個別のセット(または、サブセット)のみが関連している場合には、測定されているS字曲線の特徴値に対応する補正値(たとえば、zオフセット値)を識別することが可能である。このケースでは、簡単なルックアップテーブルが使用されることができる。
【0082】
以前に測定されていないs字曲線に関する長さ補正値を予測することが望ましい場合には、複数の方法が適用され得る。たとえば、1つのアプローチは(精緻なものではないが)、測定される特徴値に最も近い特徴値を備えた事前測定値のペアを選択することであり得る。あるいは、線形補間技法は、その最も近い近所の測定値同士の間の測定された特徴値の設置に基づいて、修正された補正値を推論するために使用され得る。また、3次スプラインの適用も可能性がある。好適な実施形態では、補正値は、最小二乗法フィットを使用して、特徴値の関数として表現されている。これは、本明細書でキャリブレーション等式と呼ばれるものを作り出す。たとえば、キャリブレーション等式は、特徴値を指数とする多項式級数として、補正値を説明することが可能である。上記に説明されたさまざまな数値的方法(線形補間、3次スプライン、最小二乗法フィットなど)は、数値的データ処理の分野において知られており、さらなる詳細は、簡潔化のために省略される。必要とされる場合には、さらなる情報が非特許文献1に見出されることができる。
【0083】
下記により詳細に説明されるように、ビーム幅に対してS字曲線およびキャリブレーション結果を正規化するために、ビーム幅パラメーター(w)を記録するさらなるステップも実施されたことが留意されるべきである。次いで、正規化された補正値が、垂直方向にプロットされ、正規化された特徴値が、水平方向にプロットされた。次いで、多項式が、最小二乗法ルーチンを使用して、このデータプロットにフィットさせられた。したがって、フィットさせられた多項式表現は、正規化されたキャリブレーション等式である。また、キャリブレーションの間に使用されたビーム幅(wc)は、必要に応じて保たれ、キャリブレーション等式をその後に使用するときに、ビーム幅の関数として補正値のスケーリングを可能にする。
【0084】
多項式キャリブレーション等式が確立された後に、それは、以下の通りに、ツール長さ測定を補正するために使用され得る。第1のステップとして、ビーム幅パラメーター(w)が測定され得、次いで、s字曲線特徴値が測定される。必要な場合には、このs字曲線は、(下記に説明されているように)ビーム幅パラメーターによって正規化される。所望の精度を条件として、結果として生じるキャリブレーション等式は、ビーム幅の幅広い変動(たとえば、+/-50%)に関して有効であり、次いで、測定されたビーム幅パラメーター(w)を使用して、補正されたzオフセットを作り出すために使用されることができる。たとえば、ツールセッターが限られたプロセッサー能力を有する場合には、ルックアップテーブルに記憶されている十分に大きいセットの値のペアを事前に計算する(すなわち、キャリブレーション等式を使用する)ことが好都合であり得ることが留意されるべきである。s字曲線特徴値は、ルックアップテーブルアドレスを生成するために使用され得る。次いで、この補正されたzオフセットは、(たとえば、より詳細に上記に説明されているように、トリガー閾値、トリガー遅延などを変更することによって)適宜、適用され得る。
【0085】
また、S字曲線形態のほとんどは、ツールが特定のパーセンテージのビームエリアをブロックする結果として生じることが留意されるべきである。非接触式ツールセッター生産ラインまたは製品寿命の中で起こる可能性の高いスポットサイズ変形例に関して、ビーム幅に対する有効ツール幅を示すs字曲線特徴値は、ビーム幅測定に対して正規化されると、ビーム幅の範囲に関して有効なキャリブレーション等式を生み出す。所望の精度を条件として、ビーム幅を考慮に入れるために1次スケーリングを使用する正規化は、最大で+/-50%までのビーム変動に関して適当であるように思われる。
【0086】
図11を参照して、適用の前に現在のビーム幅に対してs字曲線を正規化することによって、どのようにビーム幅変動の問題が克服され得るかについて説明する。
【0087】
キャリブレーション等式を導出すること(または、他の方法)は、時間がかかり、熟練の必要なプロセスである。したがって、単一のキャリブレーションを単に単一のツールセッターにその寿命の全体を通して適用するだけでなく、同様の形態の他のツールセッターにも適用することができることは、大きな実用的利益のあるものである。検出器応答とツール先端部オフセットとのs字曲線プロットから開始して、キャリブレーションは、ビーム幅が変化するときに、その有効性を喪失することとなる。ビーム幅の変動は、オペレーターがビームに沿って間違った軸線方向の位置にツールを適用する場合には、短期間に起こる可能性があり(コリメートされたビームであっても緩やかな収束-発散プロファイルを有するため)、または、室温および供給源波長の変化に起因して、より長い時間スケールで起こる可能性がある。また、生産ラインから出て来るユニットに関するビーム幅を制御することを試みて、光学機械的な公差を厳しくすることは、ツールセッター製造のコストを増加させることとなる。
【0088】
光学的なビームおよびツールを同時に同じ量だけスケーリングする場合には、ビームの遮蔽、ひいては、信号レベルが、変化しないままになることが見出された。これは、適切な近似では、実際に該当する。図11は、回折効果がどのように、ビームおよびツール幅の±10%変動に関して幾何学的に予期されるものからわずかな偏差だけをもたらすかを図示している。しかし、(水平方向の軸線の上において)ツールがより幅の広いビームを通ってさらに進行しなければならないことなどのため、曲線の勾配は異なっている。しかし、水平方向の軸線の単位が、ビーム幅の指示値(w)で除算されたツール先端部位置ごとに変化させられる場合には、s字曲線は、非常に類似したままである。
【0089】
したがって、キャリブレーションのために正規化されたs字曲線は、Z/wcに対する信号「S」によってプロットされており、ここで、Zは、先端部位置を表しており、wcは、キャリブレーションのときのビーム幅の指示値(たとえば、10%から90%値)である。次いで、動作時に使用するための正規化されたキャリブレーション等式(または、他のもの)を作り出すことが可能である。動作時に、正規化された特徴値は、正規化されたキャリブレーション等式の中への変数として置換される。特徴値は、正規化された単位(Z/s、S)で導出され、ここで、wは、ビーム幅インジケーターの現在の値である。
【0090】
キャリブレーション等式の出力が、正規化されたs字曲線の水平方向の軸線に関係するように定義された場合には(オフセットまたは遅延)、それは、当然に(しかし、必須ではない)Z/Wcの観点から表現されることとなり、それは、Wで乗算することによって実際のオフセット(または、遅延)に補正されることができる。この方法によって、単一のキャリブレーション等式が、非常に多数のツールセッターユニットに信頼性高く適用され得る。しかし、特徴値が、信号レベルベースであり(たとえば、遮蔽レベル)、したがって、また、補正値(たとえば、調節されたトリガーレベル)である場合には、正規化は必要とされない。その理由は、水平方向の軸線の任意の圧縮または膨張はいずれの値に対しても影響を与えないためである。
【0091】
図12を参照すると、ツール先端部の形態が、ツール長さ測定誤差を生じさせる可能性があるということも留意されるべきである。図12は、ボールおよび120°先端部ツールからの第1のセットのs字曲線600、および、平坦な先端部付きのツールからの第2のセットのs字曲線602を示している。中間の落下勾配は非常に類似しているが、異なる幾何学形状先端部は、湾曲した領域において、勾配の異なる変化のレートを有している。したがって、s字曲線の湾曲した領域における信号勾配の形態のs字曲線特徴値は、ツール先端部を差別化するために使用され得る。これは、s字曲線が識別されることを可能にし、続いてツール長さ補正が上記に説明されているものと同様の様式で行われる。
【0092】
上記に説明されているように、上記の例の大部分は、ツール長さ補正を実施するためにトリガー閾値を変更することを説明しているが、さまざまな他の方式で補正を実施することが可能である。たとえば、トリガー遅延(すなわち、トリガー閾値が越えられるときと工作機械へのトリガー信号の発行との間の時間)は、ツール長さ補正を実装するために変化させられることができる。ツール直径がビーム幅を超えているときに、特定のトリガー遅延が提供されることができ、このトリガー遅延は、ツール直径がビーム幅よりも小さいときに低減されることができる。これは、より小さい直径のツールに関して補償するために、時間的にトリガー信号を効果的に前へ進める。また、ツール長さ補正が、初期のツール長さ測定が行われた後に別個のステップとして実施されることも可能である。たとえば、ツール直径の影響を無視した未補正のツール長さ測定が行われることができる。次いで、補正値が(たとえば、図4に示されているタイプのデータを使用して)計算されることができ、それが、未補正のツール長さ測定と組み合わせられて、補正されたツール長さを生成する。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12