(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】接着剤を保管および分注するためのアプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240119BHJP
B05C 17/005 20060101ALI20240119BHJP
C09J 4/04 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
A61B17/00 400
B05C17/005
C09J4/04
(21)【出願番号】P 2020526373
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 US2018060636
(87)【国際公開番号】W WO2019099352
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513175974
【氏名又は名称】アドヒージョン バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シェン
(72)【発明者】
【氏名】グイド、アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ラファエル シニア
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0108352(US,A1)
【文献】特表平08-501044(JP,A)
【文献】特表2003-519599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0025559(US,A1)
【文献】国際公開第2017/051039(WO,A1)
【文献】米国特許第04413753(US,A)
【文献】特表2010-508900(JP,A)
【文献】特開2002-102342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
B05C 17/005
C09J 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を保管および分注するためのアプリケータであって、
a)チャンバを規定する壁と、前記チャンバの遠位端を覆う脆弱シールとを有する容器であって、前記壁は環状オレフィンのコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーによって形成されているか、または最内層が環状オレフィンまたはアクリロニトリルのコポリマーを含む複数の層によって形成されており、前記脆弱シールは前記チャンバに保管された安定化されたシアノアクリレートモノマー接着剤と連通する側を有する前記容器と、
b)本体であって、第1近位端および遠位端と、前記本体の前記第1近位端から延びるとともに少なくとも1つの穴を有するフランジと、前記穴と連通し前記本体を通って延び前記本体の前記遠位端に開口部を有するチャネルと、グリップとを備え、前記グリップは、内向きの圧力が加えられると前記チャネルを収縮可能であり、前記フランジは、前記本体と前記容器が一緒に圧縮されると前記脆弱シールを貫通可能である前記本体と、
c)剛性の先端であって、前記先端は、
前記チャネルの前記開口部と連通する第2近位端と、
前記先端において前記第2近位端とは反対側に開口部を画定する末端部と、
前記先端の前記第2近位端と前記末端部との間の外面とを有し、かつ
前記先端の
前記第2近位端と前記末端部との間の前記外面は、
中断なく一定の傾斜角度で先細りになっている、前記先端とを備え、
前記本体と前記容器を一緒に圧縮することによって、前記フランジが前記脆弱シールを貫通し、前記接着剤が前記穴に流れ込み、前記チャネルを通り、前記先端から排出可能となることで、前記アプリケータは作動し、少なくとも前記容器は放射線により滅菌されており、前記容器に保管された前記接着剤は放射線照射時からその後少なくとも24ヶ月の間、棚保管で硬化しない、アプリケータ。
【請求項2】
前記シアノアクリレートモノマー接着剤は、2-オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2-エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3-メトキシブチルシアノアクリレート、2-ブトキシエチルシアノアクリレート、2-イソプロポキシエチルシアノアクリレート、または1-メトキシ-2-プロピルシアノアクリレートのモノマーを含む、請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
前記チャネルは、流れ規制部をさらに有する、請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記チャネルが先細りである、請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項5】
前記先端の前記開口部が、0.005mm~3mmの直径を有する、請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記脆弱シールが、前記容器に保管された前記接着剤と連通する側に環状オレフィンのコポリマーでラミネートされたアルミニウム箔を備える、請求項1に記載のアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、接着剤を保管および塗布するための塗布装置の分野に関する。より具体的には、本発明は、カテーテルを固定するために使用される剛性先細先端を有する直列化可能なアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で毎年何百万人もの患者を安全かつ効果的に治療するために、信頼性のある静脈アクセスは重要である。米国だけでも、毎年約3億3,000万個の血管内装置が病院で購入されており、入院患者の60~90%は入院中にIVカテーテルを必要とする。
【0003】
現在の末梢静脈カテーテル固定用被覆材は、テープ/透明被覆材、プラスチックシールド、および接着アンカーという3つの広いカテゴリーに分類できる。これらの現在の基準を最も厳格に遵守していても、現在のカテーテル固定用被覆製品を使用した場合の初期失敗率は35~50%と高いことが、最近の科学文献に示さている。治療終了前の失敗は、治療手順を継続するために患者が静脈への再挿入を受けるため、外傷の増加と合併症のリスクにつながる。最も一般的な合併症要素には、脱落、静脈炎、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)がある。カテーテルの動きに関連する合併症の頻度を減らすことで、医療従事者の針刺し損傷の発生を減らし、入院にかかる不必要な費用を防ぐことができる。
【0004】
IVカテーテルの使用に伴う合併症の結果として、信頼性が高く、費用対効果の高い固定技術の開発は非常に重要である。予備的な研究では、シアノアクリレート接着剤がこの重要な問題に対処し得ることが示された。Bugdenらによる最近の研究によると、末梢静脈カテーテルの失敗は、標準的な処置(27%)よりも皮膚接着剤の使用(17%)で10%低く(95%信頼区間-18%から2%;P=0.02)、脱落は7%低かった(95%信頼区間-13%から0%;P=0.04)。WilkinsonとFitz-Henryは、シアノアクリル酸ブチルを使用して硬膜外カテーテルを固定することで、脱落率を12.3%から3.8%に減らした。シアノアクリレート接着剤による固定方法は、「患者に非常に受け入れられ」、実施が簡単であることが分かった。Kleinらは、シアノアクリレートを使用して連続末梢神経カテーテルを固定する方法を説明し、彼らの発見に基づいて、移動性の高い箇所や「汗にさらされる領域」にも使用できることを示唆した。シアノアクリレート接着剤は強靭性、耐久性、および高い機械的強度を提供するため、Wilkinson、Sheikh、およびJayamahaは、一般的には縫合を使用する手順である中心静脈カテーテルの固定に、シアノアクリレートを選択した。このシアノアクリレート技術は、縫合と撤去の両方による患者の痛みと不快感を軽減すると同時に、コスト面のメリットももたらした。Simonovaらは、インビトロでのカテーテル固定のためのシアノアクリレートの使用を評価し、接着剤が「引き抜き力を大幅に増加させた」と同時に、「迅速かつ簡単に塗布でき」接着剤の下とIVトンネル沿いの両方で細菌の増殖を防ぐことを確認した。
【0005】
創傷/切開閉鎖の領域で接着剤組成物を利用するために、シアノアクリレート系接着剤の分注およびパッケージングシステムが数多く提案されてきた。提案例について順番に議論する。
【0006】
Quinteroらに発行された特許文献1および特許文献2は、接着剤材料を分注するためのアプリケータアセンブリであって、第1本体部および第2本体部と、接着剤用の脆弱アンプル容器と、接着剤材料を分注するために容器を壊す破壊部材とを備えたアプリケータアセンブリを開示している。
【0007】
D’Alessioらの特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、腹腔鏡手術または内視鏡手術に適したパッケージアセンブリを開示している。
Leungに発行された特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、および特許文献11は、多孔・吸収性のアプリケータ先端を有する脆弱ガラスアンプル容器に保管されたシアノアクリレート接着剤を分注するためのアプリケータ先端を開示している。アプリケータ先端は重合開始剤を含み、塗布時にシアノアクリレート接着剤の重合を促進する。
【0008】
Quinteroに発行された特許文献12は、ハンドル部分を有するシアノアクリレート系接着剤を分注および塗布するためのマイクロアプリケータを開示している。アプリケータ先端に設けられたマイクロリザーバーは、約20マイクロリットル以下の接着剤を保持する。アプリケータ先端は、へら、回転ボール、格子(grate)、多孔性材料、またはブラシを含み得る。
【0009】
Mainwaringらに発行された特許文献13は、シアノアクリレートモノマー接着材料を塗布および分注するための使い捨てアプリケータアセンブリを開示している。アプリケータアセンブリは、少なくとも1つの密封容器を有するベースと、アプリケータ先端とを備えており、先端が接着剤にアクセスできるようにアプリケータ先端は少なくとも部分的に容器内に配置されている。
【0010】
Dewittに発行された特許文献14は、木製家具の製造および修理に使用される特殊な低粘度シアノアクリレート接着剤を塗布するためのディスペンサーを開示している。ディスペンサーは金属ピンを有する閉鎖部材を備える。閉鎖部材が固定されている間、金属ピンは排出開口部を貫通する。
【0011】
Stockに発行された特許文献15は、単一または分割された一定直径の通路を備えるシアノアクリレート接着剤を分注するための自動排出先端を開示している。通路は、縁が鋭い環状端部を有する。
【0012】
Schaeferらに発行された特許文献16は、シアノアクリレートを実質的に含む製品を保管および分注するのに適したパッケージングチューブを開示している。チューブの側壁は多層シート材で作られ、被覆ストリップがチューブの内面上に配置されている。
【0013】
Lierらに発行された特許文献17は、シアノアクリレート接着剤などの自由流動性材料用のパッケージングシステムを開示している。パッケージングシステムは、圧力が解放されたときに跳ね返る押出レセプタクルアルミニウム容器と、排出開口部に嵌合する閉鎖可能なアプリケータ先端とを備えている。
【0014】
Stenton出願の特許文献18は、レシーバを有し、医療用接着剤を外科的切開部に適用するための接着剤アプリケータを開示している。レシーバは、非鋭利で変形可能な円筒体と接着剤透過性の発泡材料と、接着剤材料を含む脆弱アンプルと、脆弱アンプルを破るために円筒壁に面している圧力返しを有する一対の翼部とを有する。
【0015】
Nentwickら出願の特許文献19は、シアノアクリレート系接着剤をオフセット開口部および遠位端を有するリザーバから分注するためのアプリケータ先端を開示している。アプリケータ先端表面に圧力が加えられアプリケータ先端が変形すると、着剤材料は分注される。
【0016】
Stentonら出願の特許文献20は、アプリケータヘッドに内蔵された開口部を通る液体の分注を制御し、支持された薄い発砲層を使用することにより、基板表面に均一な厚さの層を形成するアプリケータを開示している。
【0017】
Battistiら出願の特許文献21は、一端が閉鎖され、他端が綿棒アプリケータによって覆われているシアノアクリレート接着剤を収容および分注するための使い捨て綿棒アプリケータを開示している。シアノアクリレート組成物は、必要に応じて容易に開くことができるバルブに含まれている。バルブは、ボール、ビーズ、またはカプセルであり得る。また、該装置は、乾熱滅菌により熱滅菌することもできる。
【0018】
上記アプリケータの設計例は全て、創傷閉鎖の目的でシアノアクリレート接着剤を塗布することを意図する。最適な創傷閉鎖強度を得るために、塗布の際、均一で厚いシアノアクリレートの層を裂傷の上に形成する必要がある。したがって、塗布用アプリケータが、まとまった単一層で切開の長さ全体に亘って容易に広がることが可能な平らな表面を有する場合、裂傷へのシアノアクリレートの塗布は最適に行われる。
【0019】
上記アプリケータの設計例は全て、接着剤の厚い液滴を塗布して、創傷の閉鎖を補助することができる。しかし、これらのアプリケータでは、体内にカテーテルを固定する際に必要となる正確な滴下はできない。動き、脱落、および予定外のIVやり直しを低減しつつ、カテーテルの固定を実現するためには、皮膚-カテーテルハブ接触面における皮膚、および、カテーテル挿入部位上にシアノアクリレート接着剤を直接塗布できる必要がある。実際、シアノアクリレートの塗布装置は、すでに挿入されているカテーテルを不必要に動かすことなく、カテーテルハブの下に到達可能である必要がある。シアノアクリレートの硬化性質上、1つまたは複数の少量の液滴を制御して適用できることは、乾燥時間と全体的な固定の向上に有益である。
【0020】
従って、最適なカテーテルと皮膚の接着強度、止血、および皮膚とカテーテルの接触面での細菌の不動化を提供すると共に、カテーテルを固定するのに必要な制御された1つまたは複数の少量の液滴を容易に生成可能なアプリケータが必要である。アプリケータは医療分野で使用されるため、滅菌技術にも適合する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許第7,306,390号明細書
【文献】米国特許第6,705,790号明細書
【文献】米国特許第6,960,040号明細書
【文献】米国特許第6,494,896号明細書
【文献】米国特許第6,340,097号明細書
【文献】米国特許第7,128,241号明細書
【文献】米国特許第6,676,322号明細書
【文献】米国特許第6,376,019号明細書
【文献】米国特許第6,322,852号明細書
【文献】米国特許第6,099,807号明細書
【文献】米国特許第5,928,611号明細書
【文献】米国特許第6,547,467号明細書
【文献】米国特許第6,779,657号明細書
【文献】米国特許第7,297,217号明細書
【文献】米国特許第4,413,753号明細書
【文献】米国特許第4,685,591号明細書
【文献】米国特許第5,649,648号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0167681号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0105580号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0147947号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0282035号明細書
【発明の概要】
【0022】
本発明は、容易に使用でき、カテーテルを固定するのに適しており、流量を制御することができ、滅菌技術に適合する改良されたアプリケータ設計を開示する。アプリケータは次第に細くなる先端に向かって先細りであり、シアノアクリレートを正確に制御された液滴で分注する。カテーテルハブの皮膚への固定に関して、先細アプリケータの設計は、カテーテルチューブを挿入した後の、ハブの下にある皮膚への容易なアクセスを可能にする。さらに、接着剤の液滴を広げるために先細りアプリケータ先端をその側面に向けることができるアプリケータの設計は、エンドユーザがそれを必要と判断する場合、カテーテルを固定する際に有利である。
【0023】
非限定的な実施形態において、本発明は、接着剤を保管および分注するためのアプリケータを提供する。アプリケータは、遠位端に開口部を有し、実質的に水分および空気に対して不透過性である材料から成るチャンバを画定する壁と、脆弱シールと、チャンバに保管された重合可能なシアノアクリレートモノマー接着剤とを有する容器を備える。アプリケータは、更に本体を備え、本体は、少なくとも1つの穴を有するフランジと、穴と連通し本体を通って遠位に伸び、遠位端に開口部を有するチャネルと、任意でグリップとを備える。グリップは内側へ圧力が加えられるとチャネルを収縮可能である。フランジは、本体と容器が一緒に圧縮されると脆弱シールを貫通可能である。アプリケータは、更にチャネルの遠位端で開口部と連通する剛性先細先端を備える。例えば、本体と容器を一緒に圧縮することにより、アプリケータが作動して容器から接着剤を排出する。本体と容器とを一緒に圧縮すると、フランジが脆弱シールを貫通し、これにより接着剤が穴に流れ込み、チャネルを通り、剛性先細先端に流入排出される。
【0024】
別の非限定的な実施形態では、本発明は、取外し可能な接着剤容器を収容するためのハウジングと、ハンドルの遠位端にあるルアーロックの雌型端部とを備える可撓性ハンドルと、本体の近位端に設けられハンドルの遠位端の雌型端部と接続可能なルアーロックの雄型端部と、本体を通って遠位に延在し遠位端に開口部を有するチャネルとを備える本体と、チャネルの遠位端の開口部と連通する剛性先細先端と、水分および空気に対して実質的に不透過性である材料から製造され、ハウジング内に嵌合可能な取り外し可能な接着剤容器とを備える。容器の遠位端に脆弱シールが設けられ、重合可能なシアノアクリレートモノマー接着剤は容器に保管される。例えば、脆弱シールを傷つける(例えば、壊す、裂く、穴をあける)ことによって、アプリケータが作動し、接着剤を容器から排出することができる。シールを傷つけることで、接着剤がチャネルに流れ込み、チャネルを通過し、透過性の先端に流入排出可能となる。
【0025】
別の非限定的な実施形態において、本発明は、遠位端に開口部を有するチャンバを画定し、水分および空気に対して実質的に不透過性である材料から作製された壁を含む容器と、開口部を覆う脆弱シールと、チャンバに保管された重合可能なシアノアクリレートモノマー接着剤と、任意で、壁の外部に設けられたねじ山と、近位端に空洞と、空洞と連通し本体を通って遠位に延び遠位端に開口部を有するチャネルとを備える本体と、内向きの圧力が加えられるとチャネルを収縮可能なグリップと、空洞内の少なくとも1つの突起とを備える。突起は、本体と容器が一緒に圧縮されると脆弱シールを貫通可能である。例えば、ねじ山によって指定された軸(例えば、時計回りまたは反時計回りの方向であり得る)を中心として本体と容器を回転させるなどして、本体と容器を一緒に圧縮することにより脆弱シールを傷つける(例えば、壊す、裂く、穴をあける)ことによって、アプリケータを作動させてもよい。シールを傷つけることで、接着剤がチャネルに流れ込み、チャネルを通過し、剛性先細先端に流入排出可能となる。
【0026】
本発明の設計によって、保管された液体シーラントが正確に分注され、カテーテル挿入部位、カテーテルチューブの上下、およびカテーテルハブの下、に塗布されることが確実となる。本発明の設計によって分注される液体シーラントは、静脈内(IV)カテーテル、末梢静脈カテーテル(PVC)、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、動脈カテーテル、尿道カテーテル、および透析カテーテル等のカテーテルを効果的に固定する。
【0027】
本発明は、アプリケータに保管された接着剤が照射滅菌によって滅菌できるように、ガンマ線滅菌、電子ビーム滅菌、およびX線滅菌などの照射滅菌技術と適合するように設計されたアプリケータを提供する。これらの優れたバリア特性により、接着剤容器に使用される材料は、本発明によるシアノアクリレート系接着剤を保管および滅菌するのに適している。したがって、アプリケータにパッケージされた接着剤は、照射滅菌技術によって滅菌され、滅菌により硬化されない。より望ましくは、本発明で開示されたアプリケータにパッケージされた接着剤は、照射滅菌技術による滅菌後、少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の長期保管可能期間の安定性を提供する。
【0028】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも本発明の例示であり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むと最もよく理解される。一般的な慣例に合わせ、図面のさまざまな特徴は縮尺通りではないことを強調しておく。また、さまざまな特徴を明確にするため任意に拡大または縮小されている。図面には次の図が含まれている。
【
図1】本発明の第1実施形態におけるアプリケータの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、重合性シアノアクリレートモノマーなどの接着剤またはシーラント材料を保管、滅菌、および塗布するためのディスペンサーおよび/またはアプリケータに関する。アプリケータは、安全で使いやすいように設計されており、正確な制御を目的として、先細先端と、接着剤またはシーラント材料の流量を制御する機能とを備える。また、アプリケータは、放射線滅菌技術に適合する。特に、アプリケータの接着剤とシーラント材料の容器は、環状オレフィンコポリマーやアクリロニトリルコポリマーなどの水分および空気に対するバリア性の高い材料で作られているので、接着剤とシーラント材料は放射線で滅菌でき、滅菌後長期間棚保管できる。
【0031】
非限定的な実施形態において、本発明は、本体と、接着材料を含むための容器と、剛性先細先端とを含む。接着剤は、アプリケータの容器に予めパッケージされていてもよく、例えば、脆弱箔または膜によって容器内に密封されていてもよい。接着剤用の容器は、多層シート材料から製造してもよく、接着剤と接触する容器の内層は、環状オレフィンコポリマーから製造してもよい。そのように構成された容器は、電子線、ガンマ線、またはX線滅菌などの放射線滅菌に適合するため、アプリケータ内部の接着剤は、棚保管安定性を損なうことなく(例えば、早期重合することなく)放射線で滅菌可能である。アプリケータにパッケージされた接着剤の長期保管安定性は、放射線滅菌後に提供され得る。
【0032】
図1~3は、本発明の非限定的な一実施形態を示している。
図1に示されるように、アプリケータ190は、剛性先細アプリケータ先端110、アプリケータ本体120、および容器130を含む。
【0033】
図2および
図3は、それぞれ、第1の実施形態のアプリケータ190の分解図および断面図を示す。アプリケータ本体120は、遠位端121を有する。遠位端121は、アプリケータ先端110の近位端103に接続する。
図2および
図3に示されるように、アプリケータ本体120は、流れ規制部105、グリップ104、少なくとも1つの穴125を有するフランジ117、および遠位端に開口部109を有するチャネル115を含んでもよい。穴125とチャネル115は連通しており、容器130に保管されている接着剤140にアクセスする導管として機能する。
【0034】
容器130は、好ましくは遠位端144で開いているチャンバ142を画定する複数の壁124を含む。チャンバ142は、少なくとも1つのシール、例えば、
図3の断面図に示されるような脆弱シール122によって閉鎖されてもよい。壁124が、容器130の近位端126に存在する。
【0035】
使用者はアプリケータ容器130をアプリケータ本体120に向かって動かして、アプリケータ190を作動させてもよい。例えば、使用者は、アプリケータ190を手で保持しながら、親指等の指で容器130の壁124の近位端126を下向きに押してもよい。容器130と本体120が一緒に押されると、穴125は押されて脆弱シール122を越えて容器130の中に入り、接着剤140が穴125を通ってチャネル115に流れ、チャネル115の遠位端に設けられた開口部109を通って流れる。接着剤140が剛性アプリケータ先端110を出ると、使用者は接着剤140を所望の表面に塗布することができる。
【0036】
排出/分注機構は、
図1~3に示される特定の実施形態に限定されない。穴125およびチャネル115は、異なる位置にあってもよい。穴122のシール122に対する相対的な配置は、他の適切な機構を使用して設計することができる。
【0037】
先細先端
アプリケータ先端110は、接着剤140の正確な塗布を可能にするために硬い。
さらに、先端110は、先細の外面102を有しており、カテーテルの下を容易に摺動することができる。アプリケータ先端110が正確な量の接着剤140を送達し、接着剤140の流れを制御するために、先端チャネル101がアプリケータ先端110内に設計される。アプリケータ先端110内の開口部109および先端チャネル101の直径は、約0.005mm~3mm、好ましくは約0.01mm~3mm、より好ましくは約0.02mm~3mm、好ましくは約0.05mm~3mm、より好ましくは約0.1mm~2mmである。先端チャネル101は先細であってもよい。先端チャネル101が先細の場合、接着剤140の流れに対して抵抗を与え得る。
【0038】
本体
フランジ117、グリップ104、およびチャネル115を含むアプリケータ本体120は、任意の適切な材料から製造することができる。好ましい態様では、アプリケータ本体120およびチャネル115は、チャネル115を通って流れる接着剤140の早期重合を防止または抑制することができる材料で作られる。適切な材料には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、およびポリメチルペンテンが含まれるが、これらに限定されない。グリップ104およびチャネル115は、好ましくは可撓性である。
【0039】
グリップ
アプリケータ本体120のグリップ104は、使用者が使用中にアプリケータ190を保持して配置するのに便利である。例えば、使用者は、ペンを保持するように、親指とその他の指の間でグリップ104を保持してもよい。グリップ104自体は、使用者がグリップ104を内側に押し潰すことを可能にする可撓性材料から構成されてもよく、または、使用者がチャネル115に向かって内側に圧搾し、移動させ、または調整することが可能な流れ規制部105を備えてもよい。チャネル115を通る接着剤140の流れを制御するために、グリップ104または流れ規制部105を収縮させることにより、可撓性材料から構成され得るチャネル115または先端チャネル101を収縮させてもよい。接着剤140の流量は、例えば、使用者がアプリケータ本体120のグリップ104または流れ規制部105に所望の量の圧力を与えることによって制御されてもよい。したがって、流れ規制部105またはグリップ104に所望の量の力を与えることによって、所望の量の接着剤140を分注することができる。
【0040】
接着剤の流量制御
接着剤140の流量は、アプリケータ本体120のグリップ104にゆっくり一定圧力を提供することによって制御されてもよい。流れ規制部105は、先端110と本体120との接合部に含まれてもよい。流れ規制部105は、チャネル115の先細りまたは先端チャネル101の先細りによって形成されてもよく、または多孔性材料であってもよい。いくつかの実施形態では、所望の力をグリップ104に加えることにより、所望の量の接着剤140を分注することができる。剛性先細先端110とグリップ104との組み合わせにより、カテーテル挿入部位への固定接着剤の正確な塗布を確実にすることができる。
【0041】
切断部分
切断部分116は、脆弱シール122を容易に破壊し、容器130内部の接着剤140を分注できるよう、鋭く強固に設計されている。逆に、グリップ部104は、容易に押し潰すことが可能なように十分に可撓性かつ柔軟でなければならない。したがって、アプリケータ本体120の材料は、アプリケータ本体120用に特別に設計されている。アプリケータ本体120に適した材料には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、および特定の割合の熱可塑性エラストマー(TPE)を含むポリメチルペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。アプリケータ本体120を構成するために使用される材料中に、TPEは5%~60%、好ましくは5%~50%、より好ましくは5%~40%の量で含まれ得る。TPEを含まない場合、アプリケータ本体120は、圧搾されて接着剤140の流れを分注および制御するには硬すぎる。アプリケータ本体120内に存在するTPEが多すぎる場合、切断部分116は柔らかくなりすぎて、脆弱シール122を突き刺し、容器130内部の接着剤140を分注することができない。
【0042】
容器容量
接着剤容器130は、約0.05mL~20mL、好ましくは約0.05mL~15mL、より好ましくは約0.1mL~10mLの容量を有する。接着剤140の早期重合を抑制するために、アプリケータ190の体積の好ましくは約20~80パーセント、より好ましくは30~80パーセントが、接着剤140によって満たされる。
【0043】
指ストッパ
本発明のアプリケータ設計の別の断面図(
図3)に示すように、快適性を高め、使用者がアプリケータ190を保持して作動させることができるようにするために、指ストッパ118がアプリケータ本体120に追加される。使用者は、人差し指と中指で指ストッパ118を保持しながら、親指で容器130の近位端126を押し、アプリケータ190を作動させることができる。
【0044】
脆弱シール
脆弱シール122は、接着剤140を保管するために容器130に熱融着される。脆弱シール122に適した材料には、アルミニウム箔、プラスチック膜、積層アルミニウム箔、プラスチックラップ、ワックス紙、油紙などが含まれるが、これらに限定されない。積層アルミニウム箔は、アルミニウム、アクリロニトリルコポリマー、低密度ポリエチレン、低密度ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマーなどを含む異なる材料の少なくとも2つの層から構成され得るが、材料はこれらに限定されない。好ましい実施形態において、内層としての環状オレフィンコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーが、脆弱シール122の形成に使用される。
【0045】
容器材料
容器130に適した材料は、接着剤140の早期重合を防止または抑制できるよう、水分および空気に対して望ましいバリア特性を有するべきである。容器130に適した材料には、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、容器130は、内層として環状オレフィンコポリマーを有する多層シート材料により形成される。別の好ましい実施形態では、容器130は、内層としてアクリロニトリルコポリマーを含む多層シート材料により形成される。別の好ましい実施形態では、容器130全体は、脆弱箔を除いて、環状オレフィンコポリマーにより形成される。別の好ましい実施形態では、脆弱箔以外の容器130全体が、アクリロニトリルコポリマーにより形成される。
【0046】
容器130および脆弱シール122の内層に適した材料には、不飽和環状モノマーおよび1つまたは複数の不飽和線状モノマーが含まれる。不飽和線状モノマーは、限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどのアルファ-オレフィンのような、1~20個、好ましくは1~12個の炭素原子、最も好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルケンを含む。不飽和環状モノマーは、限定するものではないが、シクロペンタジエンおよびその誘導体、例えば、ジシクロペンタジエンおよび2,3-ジヒドロシクロペンタジエン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルネンおよびその誘導体、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5-シアノ-2-ノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、および5-フェニル-2-ノルボルネン、およびそれらの2つ以上の組合せを含む。他の不飽和線状モノマーは、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキサン、3-メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチルテトラシクロドデセン、2-エチルテトラシクロドデセン、またはそれらの2つ以上の組合せを含む。好ましくは、不飽和線状モノマーは、1-ヘキセン、ブチレン、プロピレン、およびエチレンである。好ましくは、コポリマーは、シクロペンタジエン-エチレンコポリマー、シクロペンタジエン-ブチレンコポリマー、シクロペンタジエン-ヘキセンコポリマー、シクロペンタジエン-プロピレンコポリマー、シクロペンタジエン-オクテンコポリマー、ジシクロペンタジエン-エチレンコポリマー、ジシクロペンタジエン-ブチレンコポリマー、ジシクロペンタジエン-ヘキセンコポリマー、ジシクロペンタジエン-プロピレンコポリマー、ジシクロペンタジエン-オクテンコポリマー、ノルボルネン-エチレンコポリマー、ノルボルネン-プロピレンコポリマー、ノルボルネン-ブチレンコポリマー、ノルボルネン-ヘキセンコポリマー、5-シアノ-2-ノルボルネン-エチレンコポリマー、5-シアノ-2-ノルボルネン-プロピレンコポリマー、5-シアノ-2-ノルボルネン-ブチレンコポリマー、5-フェニル-2-ノルボルネン-エチレンコポリマー、5-フェニル-2-ノルボルネン-プロピレンコポリマー、5-フェニル-2-ノルボルネン-ブチレンコポリマー、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン-エチレンコポリマー、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン-プロピレンコポリマー、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン-ブチレンコポリマー、5-エチリデン-2-ノルボルネン-エチレンコポリマー、5-エチリデン-2-ノルボルネン-プロピレンコポリマー、および5-エチリデン-2-ノルボルネン-ブチレンコポリマー、大きい割合のモノ不飽和ニトリルと小さい割合の別のモノビニルモノマーとを重合することによって生成されるアクリロニトリルコポリマー、または大きい割合のモノ不飽和ニトリルと小さい割合の別のモノビニルモノマーとを重合することにより生成されるインデン共重合性ニトリルポリマー、またはジエンゴム存在下で共重合可能なインデン、ポリアクリレート、ポリメトアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリエーテル、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリキノキサロン、ポリオキサゾリン、スチレン-アクリロニトリルコポリマーおよびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、無水マレイン酸含有ポリマー、ブタジエンおよび/またはイソプレン系エラストマー、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルである。
【0047】
容器130を構成するために使用される好ましい材料は、容器130に保管されたシアノアクリレート接着剤140の安定性を保証する高いバリア特性を提供する。優れたバリア特性を有する本発明の好ましい材料は、本発明によるパッケージ体の構成に使用される理想的な材料である。本発明の好ましい材料は、あらゆるレベルの相対湿度において酸素に対する高いバリアを提供する。これにより、周囲の環境の湿度に関係なく、酸素に対するバリアが常に高く維持される。さらに、水蒸気バリア特性を有する本発明の好ましい材料は、本発明によるシアノアクリレート系接着剤材料をパッケージ化および滅菌するための望ましい材料である。
【0048】
容器130は、好ましくは取り外し可能であり、環状オレフィンコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーを含んでもよい。容器130は、単層の環状オレフィンコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーを含んでもよく、または複数層を含んでもよい。複数層の環状オレフィンコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーは容器130の最内層を構成し、環状オレフィンコポリマー層またはアクリロニトリルコポリマーは容器130に保管された接着剤140に接触する。容器130はスティックパック容器であってよい。脆弱シール122は、箔、例えば、アルミニウム箔を含んでもよく、環状オレフィンコポリマーまたはアクリロニトリルコポリマーでラミネートされてもよい。
【0049】
固定可能な医療製品
本発明の設計によって分注される液体シーラントを利用することができる医療製品は、コネクタフィッティング、カテーテルシステム(例えば、カテーテル、カテーテルハブ、カテーテルアダプター、カテーテルチューブなどを含む)、流体供給ライン、挿入されたポート、その他類似用品、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。カテーテルシステムの例には、静脈内(IV)カテーテル、末梢静脈カテーテル(PVC)、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、動脈カテーテル、尿道カテーテル、および透析カテーテルが含まれるが、これに限定されない。例示的な血管アクセス装置には、ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニーが販売するAUTOGUARD(商標)シールドカテーテルなどの直線およびポート付き静脈内カテーテル、一体型末梢静脈カテーテル、翼付針セット、および採血セットが含まれる。ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社が販売するBD NEXIVA(商標)閉鎖式静脈内(IV)カテーテルシステムなどのIVアクセスセットを使用して、クローズドアクセスシステムを作成することもできる。カテーテル、チューブ、またはその他の医療ラインを治療期間中適切に配置するために、アプリケータ190から分注される液体シーラントで、カテーテル、チューブ、または医療ラインを患者に固定することができる。アプリケータ190は使用が容易で、且つ、患者の皮膚にカテーテルを確実に固定できる。
【0050】
本発明の特別な設計は、従来のカテーテル包帯製品では達成できなかった、アプリケータ190に保管された液体シーラントを正確に分注し、カテーテル挿入部位、カテーテルチューブの上下、およびカテーテルハブの下に塗布することを確実にする。アプリケータ190によって分注される液体シーラントは、静脈内(IV)カテーテル、末梢静脈カテーテル(PVC)、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、動脈カテーテル、尿道カテーテル、および透析カテーテルなどのカテーテルを効果的に固定する。Tegaderm(商標)、Opsite、HubGuard(商標)、およびDurapore製品を含むがこれらに限定されない従来の市販のカテーテル被覆製品と比較して、アプリケータ190によって分注された液体シーラントは、カテーテル固定における接着強度が強い。例として、BD Autoguardカテーテルを固定する平均接着強度は、アプリケータ190に保管された液体シーラントでは塗布後30分で、Opsite製品の約4倍である。BD Nexivaカテーテルを固定する平均接着強度は、アプリケータ190に保管された液体シーラントでは塗布後30分で、Hubguard(商標)製品の約9倍である。
【0051】
接着特性
アプリケータ190に保管された液体シーラントは、カテーテルを固定することに加えて、止血をする。インビトロ試験において、アプリケータ190に保管された液体シーラントは、血流を一貫して抑制し、改変型活性化凝固時間(modified activated clotting time)が早いことが実証された。mACT試験において、アプリケータ190に保管された液体シーラントは、トロンボプラスチンより12倍速く止血した。ヘパリン処理されたブタに対して行われたインビボ試験では、アプリケータ190に保管された液体シーラントは、Gelfoam(商標)パウダーおよびKaltostat(商標)製品を含む現在販売されている承認止血製品と統計的に同等の止血特性を示し、未処理の偽対照群と比較するとより効果的である。
【0052】
本発明の液体シーラント組成物はまた、MRSA、表皮ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)、およびコリネバクテリウム・シュードディフェリチカム(corynebacterium pseudodiptheriticum)を含むグラム陽性菌およびグラム陰性菌および菌類を用いたインビトロ研究において、細菌を不動化し、不注意に導入された細菌がカテーテル挿入部位内に移動することを防ぐことを示した。
【0053】
本発明の液体シーラント組成物は、防湿層であることが証明されており、カテーテル挿入部位を効果的に密封する。アプリケータ190に保管された液体シーラントは、静水圧衝撃試験により試験された水浸透に対して著しい耐性を示した。アプリケータ190に保管された液体シーラント組成物は、水溶液に対して効果的なバリアを提供し、カテーテルに塗布された接着フィルム層のシーラント品質は、ピンホールが開くことなく無傷で保たれる。水性液体染料は、カテーテルと皮膚の接合部の接着フィルムに浸透しなかった。したがって、アプリケータ190に保管された液体シーラント組成物は、カテーテルを固定すると同時に、挿入部位およびカテーテルハブに高機能シーラント層を提供する。
【0054】
接着剤組成物
本発明のアプリケータ190は、液体シーラントを塗布して、人間の皮膚にカテーテルを固定するために使用される。好ましい液体シーラントは、容易に重合可能であり、例えば、アニオン重合可能および/またはフリーラジカル重合可能である。接着剤140は、好ましくは、1,1-二置換エチレンモノマー、例えば、シアノアクリレートモノマーである。好ましい実施形態では、アプリケータ190にパッケージ化される接着剤140は、1つ以上の重合可能なシアノアクリレートモノマー、および/またはシアノアクリレートの反応性オリゴマーに基づく。このようなシアノアクリレートモノマーは、容易に重合可能であり、例えば、アニオン重合可能および/またはフリーラジカル重合可能であり、ポリマーを形成する。本発明における使用に適したシアノアクリレートモノマーには、限定するものではないが、次式の1,1-二置換エチレンモノマーが含まれる:
【0055】
【0056】
ここで、XおよびYはそれぞれ強い電子求引基であり、RはH、--CH=CH2、またはC1-C4アルキル基である。式Iの範囲内のモノマーの例には、アルファ-シアノアクリレート、ビニリデンシアニド、ビニリデンシアニドのC1-C4アルキル同族体、ジアルキルメチレンマロネート、アシルアクリロニトリル、ビニルスルホネートおよび式CH2=CX’Yのビニルスルホネートが含まれ、式中、X’は--SO2R’または--SO3R’であり、Y’は--CN、--COOR’、--COCH3、--SO2R’または--SO3R’であり、R’はHまたはヒドロカルビルである。本発明での使用に好ましい式Iのモノマーは、アルファ-シアノアクリレートである。これらのモノマーは当技術分野で知られており、次式で表される:
【0057】
【0058】
ここで、R2は水素であり、R3はヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基;式--R4--O--R5--O--R6を有する基であって、R4は2~4個の炭素原子を有する1,2-アルキレン基であり、R5は2~12個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R6は1~6個の炭素原子を有するアルキル基である基;または次式で表される基である:
【0059】
【0060】
ここで、R7は:
【0061】
【0062】
であり、nは1~14、好ましくは1~8個の炭素原子であり、R8は有機部分である。
適切なヒドロカルビル基および置換ヒドロカルビル基の例には、1~16個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基;アシルオキシ基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはハロアルキル基で置換された直鎖または分岐鎖のC1-C16アルキル基;2~16個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル基;2~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキニル基、シクロアルキル基;アリールアルキル基;アルキルアリール基;およびアリール基が含まれる。
【0063】
有機部分R8は、置換または非置換であってよく、直鎖、分岐鎖または環状、飽和、不飽和、または芳香族であってよい。そのような有機部分の例には、C1-C8アルキル部分、C2-C8アルケニル部分、C2-C8アルキニル部分、C3-C12脂環式部分、フェニルおよび置換フェニルなどのアリール部分、ならびにベンジル、メチルベンジル、およびフェニルエチルなどのアリールアルキル部分が含まれる。他の有機部分には、ハロ(例えば、クロロ、フルオロ、およびブロモ置換炭化水素)およびオキシ(例えば、アルコキシ置換炭化水素)置換炭化水素部分などの置換炭化水素部分が含まれる。好ましい有機基は、1~約8個の炭素原子を有するアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分、ならびにそれらのハロ置換誘導体である。特に好ましいのは、4~8個の炭素原子のアルキル部分である。式IIのシアノアクリレートモノマーにおいて、R8は、好ましくは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基または式--AOR9を有する基であり、ここで、Aは2~8個の炭素原子を有する二価の直鎖または分岐鎖のアルキレンまたはオキシアルキレン部分であり、R9は1~8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル部分である。本発明で使用される好ましいアルファ-シアノアクリレートモノマーは、2-オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2-エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3-メトキシブチルシアノアクリレート、2-ブトキシエチルシアノアクリレート、2-イソプロポキシエチルシアノアクリレート、または1-メトキシ-2-プロピルシアノアクリレート、またはそれらの組合せである。
【0064】
接着剤の製造
本発明の好ましい実施形態では、シアノアクリレートモノマーは、当技術分野で知られている方法に従って準備することができる。例えば、米国特許第2,721,858号および3,254,111号を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そのようなプロセスの1つは、例えば、高温で塩基性縮合触媒の存在下でシアノアセテートをホルムアルデヒドと反応させて、低分子量ポリマーを生成することを含む。解重合(またはクラッキング)処理は、酸性およびアニオン性阻害剤の存在下で高温高真空下で行われ、ラジカルおよび酸性阻害剤の存在下で高温および高真空下で抽出可能な粗モノマーを生成する。
【0065】
接着剤の生体吸収性
アプリケータ190にパッケージされ得る液体シーラントは、生体吸収性であり得る。生体吸収性とは、血液などの体液にさらされたときに、完全に分解、浸食、および/または徐々に吸収または排泄されるポリマーまたは医療装置を指す。生体吸収性接着剤は、限定はしないが、一般的な創傷閉鎖、内視鏡手術、心臓手術、ヘルニア手術、および関節鏡手術を含む多くの異なる用途で使用することができる。生体吸収性接着剤は、好ましくはシアノアクリレートに基づく。本発明の実施形態において、生体吸収性接着剤組成物は、アルコキシアルキルシアノアクリレートおよびポリエチレングリコールから構成される。生体吸収性接着剤組成物はまた、シアノアクリル酸アルキル、シアノアクリル酸アルコキシアルキル、およびポリエチレングリコールの混合物からなり得る。好ましいアルコキシアルキルシアノアクリレートは、メトキシイソプロピルシアノアクリレートである。他の生体吸収性接着剤は、シアノアクリル酸アルキルまたはシアノアクリル酸アルコキシアルキルと、炭酸トリメチレン、アルキレングリコール、グリコリド、ラクチド、ε-カプロラクトン、およびジオキサンなどの他の生体適合性モノマーとのコポリマーを含み得る。
【0066】
接着剤は、生体吸収性または非生体吸収性であり得る。適切な接着剤の非限定的な例には、2-オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2-エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3-メトキシブチルシアノアクリレート、2-ブトキシエチルシアノアクリレート、2-イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1-メトキシ-2-プロピルシアノアクリレート、またはそれらの組合せを含む。2-オクチルシアノアクリレートおよびn-ブチルシアノアクリレートは、非生体吸収性接着剤の非限定的な例である。
【0067】
滅菌技術
本明細書に開示されるアプリケータ190は、電子ビーム滅菌、ガンマ線滅菌、および/またはX線滅菌などの照射滅菌技術に適合する。アプリケータ190の好ましい材料は、電子線、ガンマ、およびX線滅菌の最大線量の照射に安定性がある。優れたバリア特性を有する好ましい材料は、照射滅菌技術を使用して接着剤組成物を滅菌するのに、本発明に従ってパッケージ体の構成に使用される理想的な内層材料である。好ましい材料で作られた内層は、アプリケータ190に保管された液体接着剤組成物の安定性を確保する高いバリア特性を有する。液体容器130を構成するのに使用される好ましい材料は、あらゆるレベルの相対湿度で酸素に対する高いバリアを提供する。これにより、周囲の環境の湿度に関係なく、高い酸素バリアが常に維持される。さらに、好ましい材料の水蒸気バリア特性は、他のプラスチックパッケージ材料に匹敵し、本発明に従ってそこに固定された外層によって最終的に高められる。好ましい材料の全ての特性により、照射滅菌技術を利用してシアノアクリレートを滅菌するパッケージ体として適切な材料となる。
【0068】
適用される照射線量は、アプリケータ190とその内部の接着剤140の両方を滅菌するのに十分でなければならない。いくつかの実施形態では、電子ビーム照射は、約5~50kGy、好ましくは約10~約30kGy、より好ましくは約12~約25kGyが適切な線量であり得る。アプリケータ190に保管された接着剤140に適用されるX線の線量は、5kGy~40kGyの範囲、好ましくは約5kGy~30kGyの範囲、より好ましくは約5kGy~25kGyの範囲である。アプリケータ190にパッケージされた接着剤140に対するガンマ線照射は、約5~50kGy、好ましくは約5~約40kGy、そしてより好ましくは約5~25kGyが適切な線量であり得る。
【0069】
接着剤の保管可能期限
アプリケータ190に保管された接着剤140は、電子ビーム、ガンマ、またはX線滅菌時に硬化または重合されない。より好ましい実施形態では、接着材料は、医療分野で使用できるよう安定した保管可能期間を提供する。例えば、照射滅菌後のアプリケータ190内の接着剤140の保管可能期間は、少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月であり得る。様々な照射滅菌技術によって滅菌された様々なアプリケータ190における液体接着剤組成物の保管可能期間安定性は、80℃での加速劣化試験によって評価してもよい。試験は、80℃のオーブンで13日間行われる。ASTM F1980によると、80℃での13日間の加速劣化は、大気温度での2年の保管可能期間と相関し、80℃での1日間の加速劣化は、大気温度で56日間に相当する。
【0070】
液体シーラントは、実質的な粘度増加、劣化、品質低下、重合、またはその他の反応または特性変化を生じることなく、室温(例えば、約20℃~約25℃)でアプリケータ190に長期間保管することができる。製品の保管可能期間は、任意の適切な技術によって評価することができる。例えば、高温での加速劣化試験をアプリケータ190に実施して、シアノアクリレート組成物の保管可能期間安定性を評価してもよい。この試験は、80℃のオーブンで13日間実施してもよい。ASTM F1980によると、80℃での13日間の加速劣化は、大気温度での2年の保管可能期間と相関する。同様に、リアルタイムで保管可能期間試験も実施してよい。リアルタイム試験または加速劣化試験によって評価された2年の保管可能期間の終了時に、照射法によって滅菌されたアプリケータ190のシアノアクリレート組成物の粘性は、好ましくは約400mPa・s(cps)未満、より好ましくは約300mPa・s(cps)未満、最も好ましくは、約200cP未満である。
【0071】
アプリケータ190に保管されたシアノアクリレート組成物は、ガンマ線などの照射技術下で少なくとも24ヶ月の保管可能期間を提供する。これは、滅菌シアノアクリレート組成物を含む滅菌パッケージを80℃で13日間保管することによる加速劣化試験によって確認された。一方、比較すると、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびポリプロピレン、琥珀色HDPE、ガラス、およびポリエチレンテレフタレートグリコールのみで作られた他のパッケージシステムに含まれる同じシアノアクリレート接着剤組成物は、照射滅菌時に安定しないことが分かった。上述した他のシステムにパッケージされたシアノアクリレート組成物は、照射滅菌後約1か月で硬化し、保管可能期間として許容されない。一方、アプリケータ190にパッケージされたシアノアクリレート組成物の保管可能期間は長く、照射滅菌後少なくとも2年である。これらの試験結果により、シアノアクリレート組成物の適切な容器としてのアプリケータ190の独自性が実証された。
【0072】
接着剤の濾過および無菌性保証レベル
バイオバーデンを低減するために、アプリケータ190に保管されたシアノアクリレート接着剤組成物は、異なる照射滅菌の前に、0.2μmのフィルタを通して濾過されてもよい。無菌性保証レベル(SAL)は最低10-3である必要がある。つまり、滅菌後に1つのユニットが非滅菌である確率は1000分の1である。より好ましい実施形態では、無菌性保証レベルは少なくとも10-6であり得る。照射滅菌後の様々なアプリケータ190にパッケージ化されたシアノアクリレート接着剤の無菌性は、静菌および真菌検査により分析することができる。枯草菌、カンジダ・アルビカンス、およびクロコウジカビなどの影響を及ぼす微生物での試験後、照射滅菌後のアプリケータ190でのシアノアクリレート接着剤の微生物の成長は見られず、シアノアクリレート接着剤の無菌性を示している。
【0073】
安定剤
シアノアクリレートモノマーは、本発明の様々なアプリケータ190に保管する前に、フリーラジカルおよびアニオン安定剤の組合せを使用することにより安定させてもよい。適切なフリーラジカル安定剤は、限定するものではないが、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)ヒドロキノン、カテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびブチル化ヒドロキシアニソールなどのヒンダードフェノール、4-エトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-ターシャリーブチルブチルフェノール)、4-メトキシフェノール(MP)、3メトキシフェノール、2-ターシャリーブチル-4メトキシフェノール、および2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)を含む。安定剤は、200ppm~20,000ppm、好ましくは300ppm~20,000ppm、より好ましくは300ppm~15,000ppmの量で含まれてもよい。
【0074】
様々なアプリケータ190に保管される接着剤140に適したアニオン安定剤は、限定するものではないが、過塩素酸、塩酸、臭化水素酸、二酸化硫黄、トルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸、リン酸、オルト、メタ、またはパラ-リン酸、トリクロロ酢酸、および硫酸を含む。アニオン性安定剤は、約2ppm~約500ppm、好ましくは約10ppm~約200ppmの量で含まれてもよい。
【0075】
着色剤
いくつかの実施形態では、アプリケータ190内のシアノアクリレート接着剤は、染料または顔料などの少量の着色剤をさらに含んでもよい。適切な染料には、アントラセンの誘導体およびその他の複合構造、具体的には、限定するものではないが、1--ヒドロキシ-4-[4-メチルフェニルアミノ]-9,10アントラセンジオン(D&CバイオレットNo.2)、9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-3H-キサンテン-3-オン-二ナトリウム塩、一水和物(FD&C赤No.3)、6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホフェニル)アキソ]-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD&C黄No.6)、2-(1,3ジヒドロ-3-オキソ-5-スルホ-2H-インドール-2-イリジン)-2,3-ジヒドロ-3-オキソ-1H-インドール-5スルホン酸二ナトリウム塩(FD&C青No.2)、および1,4-ビス(4-メチルアニリノ)アントラセン-9,10-ジオン(D&C緑No.6)が含まれる。好ましい染料は、D&CバイオレットNo.2、FD&C青No.2、およびD&C緑No.6である。
【0076】
促進剤
重合促進剤は、本明細書に開示されるアプリケータ190に保管されるシアノアクリレート接着材料に含まれ得る。適切な重合促進剤は、限定するものではないが、カリキサレンおよびオキサカリキサレン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリンおよびその誘導体、ポリエーテル、脂肪族アルコール、様々な脂肪族カルボン酸エステル、過酸化ベンゾイル、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,Nジメチル-o-トルイジン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ビニルピリジン、エタノールアミン、プロパノールアミンおよびエチレンジアミンなどのアミン化合物、アルキルアンモニウム塩、アミド結合アンモニウム塩、エステル結合アンモニウム塩、エーテル結合アンモニウム塩およびアルキルイミダゾリニウム塩などの4級アンモニウム塩、シクロ硫黄化合物および誘導体、ならびにポリアルキレンオキシドおよび誘導体を含む。重合促進剤は、約1,000ppm未満、好ましくは約500ppm未満の量で含まれてもよい。
【0077】
可塑剤
アプリケータ190内のシアノアクリレート接着剤140は、モノマーから形成されたポリマーに可撓性を付与する少なくとも1つの可塑剤を任意に含んでもよい。可塑剤は、水分を含まないことが好ましく、シアノアクリレート組成物の安定性に悪影響を与えてはならない。適切な可塑剤の例は、限定するものではないが、クエン酸トリブチル(TBC)、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、リン酸トリエチル、トリ(2-エチル-ヘキシル)リン酸、トリ(p-クレシル)リン酸、ジイソデシルアジペート(DIDA)、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチレート、ジオクチルアジペート(DICA)、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、トリオクチルトリメリット酸、ジオクチルグルタレート(DICG)、およびそれらの混合物を含む。クエン酸トリブチル、アジピン酸ジイソデシル、およびクエン酸アセチルトリブチルは好ましい可塑剤であり、液体接着剤組成物の30重量%まで含まれる。使用量は、必要以上の実験をすることなく、既知の技術を使用して、当業者により決定され得る。
【0078】
抗菌剤
本発明のいくつかの実施形態では、アプリケータ190内のシアノアクリレート接着剤組成物は、任意で抗菌剤を有効量含んでもよい。抗菌剤は、ヒトまたは動物の皮膚に形成された接着剤のポリマーフィルムから放出され、微生物の増殖を抑制し、創傷または手術部位の感染を防止する。適切な抗菌剤は、限定しないが、クロルヘキシジンおよびその塩などの抗菌剤、一般的な抗生物質、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、防腐剤、ポビドンヨウ素などのヨウ素含有ポリマー、ビグアニジン化合物、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノールなどのフェノール化合物、アクリジン化合物、塩化ベンザルコニウム、セチルプリドスポア、ゼフィランなどの第4級アンモニウム化合物、ポリイソシアネートで架橋されたビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、硝酸銀などの重金属塩、グルタルアルドアルデヒドなどのアルデヒド化合物を含む。
【0079】
増粘剤
様々なアプリケータ190内のシアノアクリレート接着剤は、任意で増粘剤を含有してもよい。適切な増粘剤は、限定するものではないが、ポリカプロラクトン、アルキルアクリレートとビニルアセテートのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、乳酸グリコール酸コポリマー、乳酸-カプロラクトンコポリマー、ポリオルトエステル、アルキルメタクリレートとブタジエンのコポリマー、ポリオキサレート、およびポリオキシエチレンの2つの親水性鎖が隣接するポリオキシプロピレンのトリブロックコポリマーを含む。好ましい増粘剤としては、米国特許第8,198,344号および8,293,838号に開示されているようなシアノアクリレートの部分ポリマーが挙げられる。好ましくは、増粘剤は、室温でシアノアクリレートモノマー組成物と混和性がある。
【0080】
要約すると、本発明は、カテーテルを身体に固定するために必要な正確な液滴を生成することができる直列可能なアプリケータ190を提供する。
実施例
以下の実施例は、本発明の全体的な性質をより明確に示すために含まれている。これらの実施例は、本発明の限定ではなく例示である。
【0081】
実施例1
フリーラジカル安定剤およびアニオン安定剤により安定化された2/8の比率のn-ブチルシアノアクリレートおよび2-オクチルシアノアクリレートの混合物を、アクリロニトリルコポリマーで作られた容器130に保管した。容器130内の組成物は、ガンマ線照射により滅菌された。次に、80℃で13日間加速劣化させることにより、保管可能期間の安定性を評価した。ASTM F1980によると、80℃での13日間の加速劣化試験は、大気温度での2年の保管可能期間と相関する。80℃での加速劣化試験の13日目に、粘度は試験0日目の5.40から24.97mPa・s(cps)にわずかに増加した。これは、200mPa・s(cps)の仕様の十分な範囲内であり、パッケージ内の組成物が滅菌方法に適合しており、少なくとも24ヶ月の保管可能期間を提供することを示す。
【0082】
実施例2
500ppm未満の好ましい重合促進剤、フリーラジカル安定剤、およびアニオン安定剤を含む2-オクチルシアノアクリレート組成物を、環状オレフィンコポリマーで作られた容器130に保管した。ガンマ線滅菌後の容器130内の組成物の保管可能期間の安定性を、80℃で13日間の加速劣化試験によって評価した。80℃での加速劣化試験の13日目に、粘度は試験0日目の8.52mPa・s(cps)から71.13mPa・s(cps)に増加した。これは、200mPa・s(cps)の仕様の十分な範囲内であり、容器130の組成物が滅菌方法に適合しており、少なくとも24ヶ月の保管可能期間を提供することを示す。
【0083】
実施例3
フリーラジカル安定剤およびアニオン安定剤によって安定化された、n-ブチルシアノアクリレートと2-オクチルシアノアクリレートの混合物を、環状オレフィンコポリマーで作られた容器130に保管した。ガンマ線滅菌後の容器130内の組成物の保管可能期間の安定性を、80℃で13日間の加速劣化試験によって評価した。80℃での加速劣化試験の13日目に、粘度は試験0日目の4.68mPa・s(cps)から59.87mPa・s(cps)に増加した。これは、200mPa・s(cps)の仕様の十分な範囲内であり、容器130の組成物が滅菌方法に適合しており、少なくとも24ヶ月の保管可能期間を提供することを示す。
【0084】
実施例4
様々な照射滅菌下での、容器130および異なる材料で作られたその他のパッケージ内のシアノアクリレート組成物の保管可能期間の安定性を調査した。本発明のパッケージシステムに保管されたシアノアクリレート組成物は、ガンマ線照射などの照射技術下で少なくとも24ヶ月の保管可能期間を有した。これは、滅菌シアノアクリレート組成物を含む滅菌済みパッケージを80℃で13日間保管することによる加速劣化試験によって確認された。調査した組成物の粘度を、劣化工程の様々な間隔で調査した。表1に示すように、加速劣化が進むにつれて照射滅菌後の容器130内のシアノアクリレート組成物の粘度はわずかに増加するが、13日目の劣化サンプルの粘度の増加は非常に小さいため、シアノアクリレート組成物の性能またはパッケージ送達システムからの組成物の分注に影響しない。一方、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびポリプロピレン、琥珀色HDPE、ガラス、およびポリエチレンテレフタレートグリコールのみで作られた他のアプリケータに含まれている同じシアノアクリレート接着剤組成物は、比較すると、照射滅菌後安定しないことが分かった。以下の表1に示すように、他のシステムにパッケージされたシアノアクリレート組成物は、照射滅菌後数か月で硬化し、保管可能期間として許容されない。容器130にパッケージされたシアノアクリレート組成物の保管可能期間は長く、照射滅菌後少なくとも2年の保管可能期間を提供する。これらの試験結果により、シアノアクリレート組成物に適切な容器130として開示されたパッケージシステムの独自性が実証された。
【0085】
【0086】
実施例5
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物ならびに従来のカテーテル被覆製品であるOpsiteが、Autoguardカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。アプリケータ190内の組成物およびOpsite製品を使用してBD Autoguardカテーテルを固定する平均接着強度は、塗布後30分で、それぞれ12.5N(2.80lbf)および3.20N(0.72lbf)である。これは、Autoguardカテーテルの固定に関して、本発明のアプリケータ190内の組成物がOpsite製品の約4倍の強度があることを示す。
【0087】
実施例6
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物ならびに従来のカテーテル被覆製品であるHubGuard(商標)製品が、BD Nexivaカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。アプリケータ190内の組成物とHubGuard(商標)製品を使用してBD Nexivaカテーテルを固定する平均接着強度は、塗布後30分で、それぞれ13.3N(3.0lbf)および1.56N(0.35lbf)である。これは、Nexivaカテーテルの固定に関して、アプリケータ190内の組成物がHubGuard(商標)製品の約9倍の強度があることを示す。
【0088】
実施例7
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物ならびに従来のカテーテル被覆製品であるTegaderm(商標)1683製品が、Autoguardカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。BD Autoguardカテーテルを固定する平均接着強度は、(1)アプリケータ190にTegaderm(商標)1683製品を加えた構成を使用した場合と、(2)Tegaderm(商標)1683製品のみの構成を使用した場合とで、塗布後6時間で、それぞれ22.3N(5.01lbf)および8.41N(1.89lbf)である。これは、Autoguardカテーテルの固定に関して、アプリケータ190にTegaderm(商標)1683製品を加えた構成がTegaderm(商標)1683製品のみの構成よりもはるかに強度があることを示す。
【0089】
実施例8
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物ならびに従来のカテーテル被覆製品であるTegaderm(商標)9525HP製品が、BD Nexivaカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。BD Nexivaカテーテルを固定する平均接着強度は、(1)アプリケータ190にTegaderm(商標)9525HP製品を加えた構成を使用した場合と、(2)Tegaderm(商標)9525HP製品のみの構成を使用した場合とで、塗布後6時間で、それぞれ18.1N(4.07lbf)および7.47N(1.68lbf)である。これは、Autoguardカテーテルの固定に関して、アプリケータ190にTegaderm(商標)9525HP製品を加えた構成は、Tegaderm(商標)9525HP製品のみの構成よりもはるかに強度があること示す。
【0090】
実施例9
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物が、BD Autoguardカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。アプリケータ190内の組成物を使用してBD Autoguardカテーテルを固定した場合の平均接着強度は、塗布後3日目で15.0N(3.38lbf)である。
【0091】
実施例10
アプリケータ190内のシアノアクリレート組成物が、BD Nexivaカテーテルをブタの皮膚に固定するのを評価した。アプリケータ190内の組成物を使用してBD Nexivaカテーテルを固定した場合の平均接着強度は、塗布後3日目で13.4N(3.02lbf)である。
【0092】
いくつかの具体的な実施形態および実施例を参照して上記に例示および説明されたが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲および範囲内で、本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細に様々な変更を加えることができる。例えば、本明細書で広く列挙される全ての範囲は、その範囲内において含まれる全てのより狭い範囲を含むことが明確に意図されている。