(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】コンパクトな反射型照準器のための軸外れ非球面鏡を内蔵した平坦光学コンバイナ
(51)【国際特許分類】
F41G 1/30 20060101AFI20240119BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20240119BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
F41G1/30
G02B5/04 A
G02B5/04 B
G02B5/10
(21)【出願番号】P 2020532605
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 CA2018000074
(87)【国際公開番号】W WO2019140502
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520130661
【氏名又は名称】レイセオン カナダ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】スザピエル,スタニスロウ
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】沼生 泰伸
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第2292465(GB,A)
【文献】特開2010-185947(JP,A)
【文献】特表2006-519421(JP,A)
【文献】特開2009-176381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377842(US,A1)
【文献】特開平7-104209(JP,A)
【文献】特開昭64-50012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41G 1/30
G02B 5/04
G02B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザがターゲットを視認するための視線を有する光学コンバイナであって:
凸表面を有する第1光学素子;及び
凹表面を有する第2光学素子;
を含み、
前記凸表面が非球面曲面を有し、
前記凹表面が球面曲面を有し、
さらに、
前記非球面曲面に対して適用された反射性コーティング;及び
前記凸表面を前記凹表面に結合して、光学的二重素子として前記第1光学素子及び前記第2光学素子を含むコンバインされた光学素子を提供するように構成された接着剤;
を含み、
前記非球面曲面は、少なくとも部分的に、
で定義され、ゼロの円錐定数k=0、高次の係数A、B、C、D、E、F…は非球面変形係数であり、第4次係数及び第6次係数が非ゼロ値A≠0、B≠0であり、第8次係数、第10次係数、第12次係数及び第14次係数が非ゼロ値であり、zは頂点から面に沿った半径方向の距離rにおける参照平面からのたわみであり、前記非球面曲面は曲面軸線の周りで回転対称であって中心が頂点にあり、曲率cは頂点の曲率半径の逆数であ
り、
前記球面曲面は前記曲面軸線の周りで回転対称であり、前記曲面軸線は前記視線から離れ前記視線に平行である、
光学コンバイナ。
【請求項2】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、前記非球面曲面は、前記第1光学素子及び前記第2光学素子のうちの少なくとも1つの素子の平坦表面に対して実質的に垂直な
前記曲面軸線を有する、光学コンバイナ。
【請求項3】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、前記非球面曲面の頂点が、前記凸表面上に位置せず、かつ前記凹表面上に位置しない、光学コンバイナ。
【請求項4】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、前記非球面曲面の
前記曲面軸線に公称直交する平坦表面を含む、光学コンバイナ。
【請求項5】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、さらに、
前記非球面曲面の焦点に公称位置決めされた光源を備える光学コンバイナ。
【請求項6】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、前記反射性コーティングは、ダイクロイック反射性コーティングである、光学コンバイナ。
【請求項7】
請求項1に記載された光学コンバイナであって、前記反射性コーティングは、可視スペクトル内の波長帯を反射するように構成されている、光学コンバイナ。
【請求項8】
請求項7に記載された光学コンバイナであって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、前記可視スペクトル内の波長範囲を透過し、前記波長範囲は前記波長帯以上に広い、光学コンバイナ。
【請求項9】
請求項7に記載された光学コンバイナであって、さらに、
前記非球面曲面の焦点に公称位置決めされた光源を含み、
前記光源は、前記波長帯内の波長の光を生成するように構成されている、
光学コンバイナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コンバイナに関し、特にユーザがターゲットを視認するための視線を有する反射型照準器に関する。本出願は、PCT第8条に基づく優先権の利益を、2018年1月19日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/619,209号、及び2018年4月19日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/659,778号に対して主張する。これらの特許出願の各々は、EMBEDDED OFF-AXIS ASPHERIC MIRROR With EMBEDDDED OFFF-AXIS
OFFF-ASPHERIC MIRROR FOR COMPACT REFLEX SIGHTSであり、その各々は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
光学コンバイナ(optical combiners)は、2つの光信号を1つに組み合わせる。光学コンバイナの少なくとも1つの用途は、反射型銃照準器を含む。反射型銃照準器により、ユーザは、光源の反射像(少なくとも部分的な反射)を見ると同時に、コンバータを通して意図されたターゲットを見ることができる。光源の反射像は、投射体(projectile)の公称軌跡と整列することを意図している。従って、光学コンバイナは、ターゲット(例えば、遠視野)の視野を、光源の平行反射に組み合わせる。光源の反射、例えばレッドドットが、コンバイナを通してユーザにより見られる際に、意図されたターゲットと整列するとき、投射体の公称軌跡がターゲットに当たるはずである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に記載される態様及び実施例は、改良された光学コンバイナ(optical combiner)、並びにそれらの製造、整合及び使用のための方法を提供する。本明細書に記載される光学コンバイナは、照準基準(例えば、「レッドドット」)を生成し、同時に、ターゲットの歪んでいない観察を可能にする光源からのコリメートされたビーム(collimated beam)を提供する。「レッドドット(red dot)」は、ユーザの眼の瞳によってサンプリングされ、ユーザの網膜に焦点が合わされたコリメートされた光の一部として、ユーザによって視認される。種々の例において、本明細書に記載される光学コンバイナは、湾曲した反射表面の回転対称軸線に整合した(例えば、垂直な)平らな(平坦な)フロント表面を有し得る。このような軸線はまた、コンバイナを通して見るユーザの理想的な視線(例えば、軸線に平行な)を定義する。したがって、本明細書に記載されるような光学コンバイナは、従来であれば湾曲光学コンバイナの角度又は傾斜によって引き起こされ得る目標画像の収差(歪みを含む)を、最小化する。種々の例において、本明細書に記載される光学コンバイナは、改善されたコリメーション、従って「レッドドット」照準基準の精度を提供する非球面反射表面を含んでもよい。さらに、種々の例において、本明細書に記載される光学コンバイナは、ユーザの視線及び/又は光学コンバイナ自体の構造から回転対称軸線がオフセットされている反射表面を含んでもよく、その反射表面の頂点は光学コンバイナの一部ではなく、例えば、頂点は光学コンバイナの構造的境界の外側にある例を含む。
【0004】
一態様に従った光学コンバイナは、凸表面を有する第1光学素子;及び 凹表面を有する第2光学素子;を含み、前記凸表面又は前記凹表面のうち少なくとも1つが非球面曲面を有し、さらに、 前記非球面曲面に対して適用された反射性コーティング;及び 前記凸表面を前記凹表面に結合して、光学的二重素子(optical doublet)として前記第1光学素子及び前記第2光学素子を含むコンバインされた光学素子を提供するように構成された接着剤; を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、前記非球面曲面は、前記第1光学素子及び前記第2光学素子のうちの少なくとも1つ素子の平坦表面に対して実質的に垂直な回転対称軸線(曲面軸線とも呼ぶ)を有する。
【0006】
特定の実施形態では、前記非球面曲面の頂点が、前記凸表面上に位置せず、かつ前記凹表面上に位置しない。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、前記非球面曲面の曲面軸線(回転対称軸線)に公称直交する平坦表面を含む。
【0008】
様々な実施形態では、前記非球面曲面は、少なくとも部分的に、ゼロの円錐定数により定義される。
【0009】
様々な実施形態では、前記非球面曲面は、少なくとも部分的に、ゼロでない高次係数により定義される。
【0010】
特定の実施形態では、前記非球面曲面は、非球面離脱が頂点からの線形距離の4乗で変化するように非ゼロの第4次係数により、少なくとも部分的に定義される。ある実施形態において、前記非球面曲面は、非球面離脱が前記頂点からの前記線形距離の6乗で変化するように非ゼロの第6次係数により、少なくとも部分的に定義される。
【0011】
いくつかの実施形態は、前記非球面曲面の焦点に公称位置決めされた光源を備える。
【0012】
様々な実施形態では、前記反射性コーティングは、ダイクロイック反射性コーティングである。
【0013】
特定の実施形態では、前記凸表面は前記非球面曲面を有し、前記凹表面は球面曲面を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記反射性コーティングは、可視スペクトル内の波長帯を反射するように構成されている。ある実施形態において、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、前記可視スペクトル内の波長範囲を透過し、前記波長範囲は前記波長帯以上広い。ある実施形態は、さらに、前記非球面曲面の焦点に公称位置決めされた光源を含み、前記光源は、前記波長帯内の波長の光を生成するように構成されている。
【0015】
別の態様に従って、ユーザがターゲットを視認するための視線を有する反射型照準器が提供される。反射型照準器は、実質的に平坦なフロント表面及びリア表面を有する光学素子であり、前記フロント表面及び前記リア表面は、前記視線に実質的に直角に配置される、光学素子; 前記光学素子に埋め込まれ、焦点で発生する光を反射しコリメートするように配置された非球面反射表面であり、コリメートされた光が、前記フロント表面及び前記リア表面に実質的に直交して、前記視線に実質的に平行に、前記光学素子から出るように、配置された非球面反射表面;及び 前記焦点に公称位置決めされ、前記非球面反射表面に向けて光を発生するように構成された光源;を含む。
【0016】
特定の実施形態では、前記非球面反射表面はダイクロイックミラーコーティングを含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、前記非球面反射表面は、少なくとも部分的に、ゼロの円錐定数により定義される曲面に従う。
【0018】
いくつかの実施態様において、前記非球面反射表面は、少なくとも部分的に、ゼロでない高次係数により定義される曲面に従う。
【0019】
いくつかの実施態様において、前記非球面反射表面は、非球面離脱が頂点からの線形距離の4乗で変化するように非ゼロの第4次係数により、少なくとも部分的に定義される。ある実施形態において、前記非球面反射表面は、非球面離脱が前記頂点からの前記線形距離の6乗で変化するように非ゼロの第6次係数により、少なくとも部分的に定義される。
【0020】
様々な実施形態では、前記反射表面はダイクロイック反射表面である。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記反射表面は、可視スペクトル内の波長帯を反射するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記光源は、前記波長帯内の波長を含む前記光を発生するように構成される。
【0022】
さらに別の態様によれば、反射曲面を伴う光学コンバイナを有する反射型照準器を較正する方法が提供される。当該方法は、前記光学コンバイナの平坦表面に向けてコリメートされた光を方向づけるステップと; 前記平坦表面に対して実質的に垂直であるように前記コリメートされた光を整合させるステップと; 前記反射曲面により反射された前記コリメートされた光の一部分を方向づけるステップと; 前記平坦表面に対して実質的に垂直な前記コリメートされた光の整合を実質的に維持しつつ、所定範囲の位置に亘り前記コリメートされた光を並進移動させるステップと; 前記コリメートされた光を並進移動させても、前記反射曲面により反射された前記コリメートされた光の前記一部分が実質的に固定されたままである位置を検出するステップと; 前記位置に光源を置くステップとを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記平坦表面に対して実質的に垂直であるように前記コリメートされた光を整合させるステップは、前記平坦表面により反射される前記コリメートされた光の一部分を検出するステップを含む。
【0024】
特定の実施形態は、さらに、前記光源が動作中に光を前記反射曲面に向けて方向づけるように前記光源を配向するステップを含む。
【0025】
いくつかの実施形態は、前記反射型照準器を取り付けるステップを含む。ある実施形態は、さらに、前記反射型照準器を火器に取り付けるステップを含む。
【0026】
様々な実施形態は、さらに、前記反射型照準器を、武器、カメラ、望遠鏡、レンズ、ジンバル、車両、通信装置、トランシーバ及びアンテナのうちの1つに取り付けるステップを含む。
【0027】
さらに他の態様、実施例、及び利点は、以下で詳細に議論される。本明細書に開示された実施形態は、本明細書に開示された原理の少なくとも1つと矛盾しない任意の方法で他の実施形態と組み合わせることができ、「実施形態」、「一部の実施形態」、「代替の実施形態」、「種々の実施形態」、「1つの実施形態」などへの言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記載された特定の特徴、構造、又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すことを意図している。本明細書におけるこのような用語の外観は、必ずしも同一の実施形態を指すものではない。ここに記載される種々の態様及び実施形態は、記載される方法又は機能のいずれかを実施するための手段を含み得る。
【0028】
少なくとも1つの実施形態の種々の態様が、添付の図面を参照して後述されるが、これらは、縮尺通りに描かれることを意図されていない。図面は、種々の態様及び実施形態の説明及びさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本開示の限定の定義として意図されるものではない。図面において、種々の図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明瞭にするために、全ての構成要素が全ての図面においてラベル付けされているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】反射照準器の構成要素としての用途における、本実施態様及び特徴に従った光学コンバイナの概略側面図である。
【
図3】本実施態様及び特徴に従った光学コンバイナの概略正面図及び概略側面図である。
【
図4】本実施態様及び特徴に従った光学コンバイナの構成の詳細な例の概略図である。
【
図5】本実施態様及び特徴に従った光学コンバイナを有する反射型照準器を較正する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
様々な態様及び実施形態は、反射型銃照準器及び他の視覚的照準又はターゲティング用途において有利に適用され得る、光学コンバイナのための改良されたシステム及び方法を対象とする。
【0031】
本明細書に記載される方法及び装置の実施形態は、以下の説明に記載される、又は添付の図面に例示される構成及び構成要素の配置の詳細に適用することに限定されないことを理解されたい。方法及び装置は、他の実施形態で実施可能であり、実施可能であるか、又は種々の方法で実行可能である。具体的な実施例は、例示的な目的のためだけに本明細書で提供されており、本発明を限定することを意図したものではない。また、本明細書中で使用される表現及び用語は制限的に理解されるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「包含する」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの同等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。「又は」への言及は、「又は」を使用して記載される用語が単一の、複数の、及び記載される用語のすべてを示すことができるように、「又は」への言及は包括的であると解釈され得る。前後、左右、頂部底部、上方下方、端部、側部、垂直、水平などへの言及は、本システム及び方法又はそれらの構成要素を、いずれか1つの位置又は空間方向に限定するのではなく、説明の便宜のために意図されたものである。
【0032】
従来の反射型照準器は、イメージの歪みを通常引き起こす湾曲した表面を有する光学コンバイナを含む。
図1Aを参照すると、希少形態の従来の光学コンバイナ100の例が示されており、フロント光学素子110のフロント平坦表面112及びリア光学素子120のリア平坦表面122を有する。フロント光学素子110及びリア光学素子120は、湾曲表面130において互いに整合又は接合される。湾曲表面130は、従来の光学コンバイナ100内に埋め込まれており、以下により詳細に説明するように、少なくとも部分的に反射性であり、少なくとも部分的に透過性である。湾曲表面130の対称軸線132も示されている。湾曲表面130は、従来、球面形状又は放物面形状に一致しており、従って、対称軸線上に焦点を含むことができる。
【0033】
図1Bは、反射型照準器の構成要素として使用される従来の光学コンバイナ100を示している。従来の光学コンバイナ100は、視線140に対してある角度で傾斜しており、ターゲット(図示せず)から光学コンバイナ100に入射する光142は、光学コンバイナ100を通過して視線140に追従し、ユーザ150によって視認される。「レッドドット(red dot)」イメージが、光源160からの光を反射する湾曲表面130の作用によって、ユーザ150により見えるシーンに重ね合わされる。「レッドドット」という用語は、単なる概念用語であり、光源160は、様々な色の光(例えば、緑色)のいずれかを提供するように構成され、様々な形状(例えば、十字線)のいずれかを含んでもよい。光源160は、リア光学素子120を通って光学コンバイナ100に入射する光162を生成する。光162は、湾曲表面130によって(少なくとも部分的に)反射される。湾曲表面130は、光162をほぼコリメートし、その結果、光162の小さなイメージ(例えば、レッドドット)が、ユーザ150から見えるように、ユーザの眼の可視位置の範囲に対して、シーン上に実質的に位置されるように現れる。湾曲表面130の球面又は放物面形状は、コリメート光を提供するための能力に限界があり、従って、視野角の範囲を制限し、及び/又は「レッドドット」の位置の精度を低下させてしまう。
【0034】
従来の反射型照準器光学設計では、反射型の湾曲を有する平坦な屈折表面が直観に反し、「ルールに反する」と考えられていた。このような平坦表面が発散光線と相互作用すると、従来のような収差が生じ、コリメーションの質が低下し、視差誤差が生じる。従って、従来の設計の圧倒的多数は、平坦な屈折表面に比較して収差量を低減するために凹面屈折表面を使用している。
【0035】
しかしながら、本明細書に記載される実施態様及び特徴は、平坦な屈折表面の上記の問題を解決するために軸外れ非球面反射表面をもたらし、その結果、非常に高速なコリメータ光学系を得ることができる。いくつかの実施態様において、親ミラー(parent mirror)クリアアパーチャ直径(clear aperture
diameter )は34mmであり、コリメータの焦点距離は30mmであり、対応するF値は(30/34)であり、1未満である。さらに、複数の平坦な屈折表面を有するコンバイナは、本明細書に記載される実施態様及び特徴に従い、湾曲表面を有するコンバイナよりも大規模生産中の取扱いがはるかに容易であり、封止が容易であり、様々なかなりの深さの水中圧力に耐えるようにより容易に作ることができる。
【0036】
本明細書に開示される特徴及び実施形態による光学コンバイナでは、反射光のコリメーションが改善され、複数の平坦表面が視線に対して実質的に垂直であり、これらの平面の各々は、光学的歪みを生じることなく、より広範囲の視野角に亘ってより高い精度を提供する。本明細書に開示された特徴及び実施形態に従った光学コンバイナ及び方法もまた、光源の最終的配置など、製造及び較正の相対的な容易さに適応する。種々の特徴及び実施形態に関して本明細書で使用されるように、用語「非球面曲面(aspherical curvature)」は、一般に、湾曲した非球面表面を指す。本明細書でこのような非球面表面に関して使用されるように、用語「曲面軸線(axis of curvature)」は、一般に、非球面表面の対称軸線を指し、該表面上の個々の局所点における軸線とは異なる。したがって、本明細書で使用される用語「曲面軸線」は、湾曲した非球面表面の頂点によって定義される、或いは頂点において定義される軸線を指す。
【0037】
図2は、本明細書に記載される特徴及び実施形態に従った、光学コンバイナ200の一例を含む、反射型照準器配置を示す。光学コンバイナ200はフロント光学素子210を含み、フロント光学素子210は、リア光学素子220と接合され、内部に埋め込まれた非球面ミラー230を有する。フロント光学素子210は、ユーザ150の視線140に対して実質的に垂直に配置され得る平坦表面212を有し、リア光学素子220は、視線140に対して実質的に垂直に配置され得る平坦表面222を有する。非球面ミラー230は、視線140に実質的に平行な曲面軸線232を有する。頂点234は、非球面ミラー230の湾曲表面と湾曲軸線232との間の交点であり、光学コンバイナ200の外側にある仮想的な点である。
【0038】
非球面ミラー230は、回転対称非球面表面として形成されてもよく、例えば、フロント光学素子210又はリア光学素子220のいずれか上の内方表面から形成され、ダイクロイックミラーコーティング(dichroic
mirror coating)でコーティングされる。非球面ミラー230は、様々な実施形態において、以下により詳細に説明するように、高次非球面曲面を有してもよい。ダイクロイックミラーコーティングは、波長の狭帯域の光を反射し、光源160、例えば赤、緑その他の光を反射するように整合される。非球面曲面の種々のパラメータが、非球面ミラー230のために選択され得、これは、いくつかの実施形態では、高次の非球面係数を含み、(光源160からの)光を視線140に正確にコリメートさせる。光162のコリメーションの精度は、さらに、本明細書に開示される特徴及び実施形態によって高められる。このことは、湾曲軸線232が視線140と実質的に平行となり、光源160の配置が湾曲軸線232上にあり頂点234と整合するように、頂点234を視線140から外すことによって、達成される。
【0039】
図3は、光学コンバイナ200の少なくとも1つの形態を示す概略正面
図310及び概略側面
図320を示す。非球面ミラー230は、
図3にある程度詳細に示すように、曲面230aに従う。フロント及びリア光学素子210、220は、光学的透明度、硬度、屈折率などの種々な望ましい特性を有する光学材料から形成することができる。非球面ミラー230の一部を形成する曲面230aは、様々な実施形態では、リア光学素子220の非球面凸表面として形成されてもよく、フロント光学素子210は、リア光学素子の非球面凸表面に近接整合するように選択された球面凹表面を有してもよい。フロント及びリア光学素子210、220は、フロント及びリア光学素子210、220の屈折率に整合する光学セメントで、それらの湾曲表面で互いに接合されてもよい。球面凹表面は、非球面凸表面に最も良好に適合する球面であり得る。
【0040】
他の実施形態では、曲面230aは、フロント光学素子210上の非球面凹表面として形成されてもよく、或いはフロント光学素子210及びリア光学素子220の各々上で隣接する非球面表面として形成されてもよい。
【0041】
光学コンバイナ200は、
図3の正面
図310に、前方又は後方から見たときに矩形プロファイルを有するものとして示されているが、様々な実施形態は、他の形状又は形態を有してもよい。例えば、前方又は後方から見た場合、本明細書に記載の特徴及び実施形態に従った種々の光学コンバイナは、正方形、円形、長円形、又は直線又は丸みを帯びたエッジを有する他の形状であってもよく、対称であってもなくてもよい。
【0042】
曲面230aは非球面曲面(湾曲した非球面表面)であり、曲面230aの少なくとも一部が、反射性コーティング、例えばダイクロイックミラーコーティングの適用によって、非球面ミラー230になる表面を形成する。様々な実施形態では、曲面230aは、以下の式(1)によって定義される。ここで、頂点から面に沿った半径方向の距離rにおける、参照平面からのたわみ(sag)がz(曲面230aの離脱(departure)を定義する)である。曲面230aは、曲面軸線232の周りで回転対称であり、中心が頂点234にある。
【0043】
【数1】
高次の係数A、B、C、D、E、F、...は、非球面変形係数と呼ばれる。曲率cは、頂点の曲率半径の逆数である。円錐定数(conic constant)kがゼロであり、すべての高次係数A、B、C、D、...などがゼロのとき、式(1)は頂点半径(vertex radius)R = 1/cの球面を定義する。したがって、様々な実施形態では、曲面230aは、定数k、A、B、C、・・・のうちの少なくとも1つが非ゼロ値を有する式(1)によって定義され、非球面形状を有する。様々な実施形態では、曲面230aは、ゼロの円錐定数k = 0を有し、非ゼロの4次係数A≠0を有する非球面である。さらなる実施形態では、曲面230aは、k = 0の円錐定数を有し、第4次係数及び第6次係数の各々が非ゼロ値A≠0、B≠0を有する非球面である。
【0044】
図4は、光学コンバイナ200のアセンブリの一例を示す。非球面ミラー230は、ダイクロイック反射表面コーティング(例えば、光162を反射するため)を有する非球面曲面(例えば、
図3の曲面230aの一部)として、リア光学素子220上に形成されてもよい。フロント光学素子210は、非球面ミラー230の形状に良好に整合(match)するように選択された球面表面240を有してもよい。例えば、球面表面240は、球面自体と非球面ミラー230との間のギャップ250の体積を最小限に抑えることが、最良適合球であると考えられる。明瞭にするために図において誇張されているギャップ250は、屈折率整合光学セメントで充填されてもよく、それによって、光学素子210とリア光学素子220とを互いに接合し、ギャップ250を満たして、光学コンバイナ200が固体ユニットとして存在するようにすることができる。様々な実施形態では、球面表面240は、非球面ミラー230の曲面よりも容易に製造することができ、したがって、
図4に示されるアセンブリは、単一の非球面曲面表面を生成する要求のみだけで、光学コンバイナ200の製造が可能になる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態において、光学コンバイナ200は、以下の表1に記載されたような処方箋を有してもよく、この処方箋は、本明細書に記載される態様及び実施形態に従って、光学コンバイナの少なくとも1つの実施形態の例示的な目的のために提供されるに過ぎない。表1に示される種々の寸法及び値は、概略的であってもよく、種々の他の実施形態は、表1の寸法及び値とは大きく異なる寸法及び値を有してもよい。
【0046】
【表1】
図5は、光源160を光学コンバイナ200に位置合わせする方法の一例を示す。コリメートされた光源510(例えば、白色光を放射することができる)は、リア光学素子220の平坦表面222に向けて光512を放射するように配置することができる。コリメートされた光源510(いくつかの例ではオートコリメータ)は、光512が視線となるものに実質的に平行に進むように正確に位置決めすることができる。これは、少量の反射光514が、上述したように視線に実質的に垂直な平坦表面222によって反射され得ることによる。したがって、反射光514が、コリメートされた光源510の光軸と整合する場合、光512が、平坦表面222に垂直に進行し、したがって、意図された視線と平行に進んでいることを確認することができる。コリメートされた光源510が上記の方法で配置されると、非球面ミラー230は、光512のうち狭い波長帯域部分(例えば、赤色光、ダイクロイックコーティングに依存)である反射光516を反射し、反射光は焦点518を通過する。コリメートされた光源510が、その方向に変更を加えることなく(例えば、光512の経路を視線に平行に維持したまま)並進運動520すると、全てが焦点518を通過する反射光516の範囲を生成し、それによって、焦点518の識別を容易にする。識別された焦点518に光源、例えば
図2の光源160を配置すると、整列した(例えば較正された)反射型照準器が得られる。
【0047】
本明細書に記載した特徴及び実施形態に従った光学コンバイナは、顕著な効果を提供し得る。例えば、非球面ミラーは、より良好な光のコリメーションを提供することができ、光学コンバイナのより広い面積が、可視位置の範囲にわたって「レッドドット」の正確かつ正確な位置決めを提供することを可能にする。従って、このようなものは、ユーザが覗くための大きなアイボックス(eyebox)を可能にし、ユーザの目の位置を、照準の精度を維持しつつ、より広く中心からずれることを許容する。非球面ミラーの湾曲の頂点が視線から外れ、非球面ミラーの曲面軸線が視線に実質的に平行になるように非球面ミラーを位置決めすることによって、焦点に光源を配置することが可能となり、それによってまた、コリメーション精度が改善され、「レッドドット」を用いてより精密かつ正確に照準することができる。光学コンバイナの平坦なフロント表面及びリア表面は、歪みをもたらさず、したがって、より改良された制度をもたらす。平坦なリア表面は、位置合わせ(整合)及び較正のために有利に使用でき、焦点の認識を可能にするコリメートされた光源の位置合わせを確認できる。種々の実施形態は、光学セメントを用いて、ミラーコーティングされた非球面表面を適合性の良好な球面表面に接合することにより、1つの非球面表面のみを製造するだけでよく、より容易に製造することができ、それにより内部非球面ミラーを有する単一のユニットを形成することができる。
【0048】
かくして、少なくとも1つの実施形態のいくつかの特徴を説明してきたが、当業者には、種々の変更、修正、及び改良が容易に生じることが理解されるであろう。このような変更、修正、及び改善は、本開示の一部であることが意図されており、本開示の範囲内であることが意図されている。従って、前述の記載及び図面は例示の目的のみである。