(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】遺伝子伝達用細胞シート
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240119BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240119BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240119BHJP
A61K 35/13 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/33 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240119BHJP
A61K 35/765 20150101ALI20240119BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240119BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240119BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20240119BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240119BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K9/127
A61K31/7088
A61K35/13
A61K35/30
A61K35/32
A61K35/33
A61K35/34
A61K35/35
A61K35/36
A61K35/545
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/765
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/09
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/88 Z
(21)【出願番号】P 2020535060
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2018016869
(87)【国際公開番号】W WO2019132594
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183653
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519209439
【氏名又は名称】ジーンメディスン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ・オク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】テ・クク・キム
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】天野 貴子
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183673(WO,A1)
【文献】特開2013-094160(JP,A)
【文献】特表平8-507921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12M
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体として体細胞を含む細胞層と;
癌細
胞を含み、腫瘍殺傷アデノウイルスが導入されている細胞層と;を含む、癌の予防もしくは治療のための、または、癌の再発もしくは癌の転移予防用細胞シート。
【請求項6】
温度感応性ポリマーを含む温度反応性培養皿に、
支持体として体細胞を含む細胞層を形成し、
前記細胞層上に癌細
胞を含む細胞層を形成し、
腫瘍殺傷アデノウイルスを癌細
胞を含む細胞層に導入し、
温度反応性培養皿から前記細胞シートを分離することを含む、
請求項1に記載の癌の予防もしくは治療のための、または、癌の再発もしくは癌の転移予防用細胞シートの製造方法。
【請求項7】
前記温度感応性ポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリラクテート-co-グリコレート(PLGA)よりなる群から選ばれた一つ以上である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子伝達用細胞シートに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療剤の急速な発展にもかかわらず、癌は、依然として全世界的に死亡率が高い疾患の一つである。既存の臨床的に使用されている主な癌治療方法は、外科的手術、放射線治療、抗癌剤治療方法であるか、またはこれを併行する治療であって、最大限癌細胞を患者から除去する方法である。しかしながら、このような治療は、比較的初期癌において、転移にならない状態で癌細胞を完全に除去したときにのみ治療効果を示すという問題がある。
【0003】
特に、肝細胞性癌腫(Hepatocellular carcinoma,HCC)は、世界で五番目に多く発生する癌であって、癌関連死亡原因のうち3番目に多いと知られている。B型肝炎およびC型肝炎ウイルス感染のような慢性肝疾患およびこれによる肝硬変は、すべての肝癌発生の80~90%を占める。HCCの核心特性の一つは、多病巣性腫瘍病変(多発性/多核性/肝内転移性)を同時に発病することがあり、この多病巣性肝細胞は、高い再発率、薬物内科的特性および罹患率に寄与するということである。重要なことは、長期間のコホート研究は、肝硬変と多発性/多病巣性肝細胞癌腫との間の強い量の相関関係を示した。慢性ウイルス感染は、反復的な肝細胞壊死と密接に関連しており、その次に再生が起こる。そのような加速化した細胞周期は、多くの肝部位で腫瘍を発生させる肝での遺伝的エラーの蓄積と関連があり得、これら患者を多病巣性肝細胞癌腫に分類することができる。
【0004】
HCCの現在標準治療法には、選択的内部放射線療法および化学療法剤を用いた全身療法が含まれる。しかしながら、癌特異性が欠如したこのような治療様相は、肝に対して非常に毒性があり、これは、肝機能障害を示す多数の肝細胞癌患者に深刻な問題を起こすので、腫瘍を撲滅するのに十分な量の薬物を投与することが難しい。前述した理由によって外科的切除が優先的な治療法として残っているが、多発性硬化症および肝硬変のような多様な理由によって肝細胞癌患者のほとんど(70%未満)は、切除が不可能である [El-Serag,H.B.,et al.,Diagnosis and treatment of hepatocellular carcinoma.Gastroenterology、2008.134(6):p.1752-63;Belghiti,J.and R.Kianmanesh,Surgical treatment of hepatocellular carcinoma.HPB(Oxford),2005.7(1):p.42-9;Ziser,A.,et al.,Morbidity and mortality in cirrhotic patients undergoing anesthesia and surgery.Anesthesiology、1999.90(1):p.42-53]。
【0005】
治癒的切除手術を施行するとしても、患者の高い再発率は、肝細胞癌の治療に重要な課題として残っている。
【0006】
多様な臨床試験で強力かつ癌特異的な細胞殺傷効能を立証した腫瘍殺傷療法は、小分子化学療法に関連した標的細胞毒性を克服するための有望な候補者になりうる。
【0007】
様々な腫瘍殺傷ベクターのうちアデノウイルス(Ad)は、挿入突然変異の誘発危険がなく、高力価での容易な生産および高い転移遺伝子発現水準のようないくつかの有益な特性を有していて、癌遺伝子の治療に有利である。有望な前臨床結果にもかかわらず、臨床試験で最適な抗腫瘍効能を導き出すためには、不適切な伝達および不十分な水準の治療遺伝子伝達またはウイルス複製のようないくつかの障害物を克服しなければならない。重要なことは、安全問題と全身投与されたビリオンの効能制限によって臨床試験で好ましい投与経路として提示されるビリオンの腫瘍内接種は、多病巣性腫瘍の場合には可能でないことがあることを意味する。現在腫瘍殺傷ウイルスで様々な腫瘍を同時に治療する効果的かつ標準化されたプロトコルが不足している。全身投与が異なる標準治療法でこのような限界を避けることができるが、腫瘍殺傷ウイルスの免疫原性が強く、患者にAdに対する既存の免疫力が高ければ、このような接近法は、クリニックでは非実用的である。
【0008】
多病巣性肝細胞癌腫に対する標準治療療法と腫瘍殺傷療法の内在的限界を克服するために、多発性肝細胞癌腫で腫瘍殺傷Adの効能を向上させる有望な候補として細胞シートを研究した。
【0009】
伝統的に、細胞シートは、主に損傷した組織の機能を代替したり復元するために組織工学に使用された。細胞シートの主な強みは、生体適合性、耐久性ある生着誘導能力、合成抗体より不利な炎症反応の危険を低減することである。しかしながら、このような細胞シートを遺伝子伝達のために使用した研究は、報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、遺伝子伝達システムの全身投与の問題点を解決するために、局所的遺伝子伝達プラットホームとして細胞シートを開発することによって、本発明を完成することになった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
二つ以上の細胞層を含み、
そのうちの一つ以上の細胞層に遺伝子伝達システムが導入されている、
細胞シートを提供する。
【0012】
また、本発明は、
温度感応性ポリマーを含む温度反応性培養皿に、
二つ以上の細胞層を含む細胞シートを形成し、
そのうちの一つ以上の細胞層に遺伝子伝達システムを導入し、
温度反応性培養皿から前記細胞シートを分離することを
含む、細胞シートの製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、
前記細胞シートを含む遺伝子治療剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、
癌除去手術部位または癌治療が必要な部位に前記細胞シートを移植することを含む癌再発防止方法または癌治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による細胞シートは、既存の組織再生用途に使用された細胞シートとは異なって、局所的遺伝子伝達システムとして活用可能である。特に、遺伝子伝達システムとしてウイルスを使用する場合、ウイルスを細胞シート内で増殖させることができ、ウイルスが治療部位だけで局所的に作用することになるので、ウイルスの全身投与または腫瘍内投与と比較して、ウイルス投与量を顕著に低減しても、癌の予防または治療、癌の再発または癌の転移防止、特に多病巣性腫瘍の治療に卓越したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1は、温度反応性培養皿で分離したoAd-DCN/CFCSの外観(a)、ヘマトキシリンおよびエオシン染色によるoAd-DCN/CFCSの組織学的分析結果(b)およびPBS-処理された対照CFCSs(c)およびoAd-DCN/CFCSs(d)でAd E1Aタンパク質の免疫染色による検出を示すものである[スケールバー:1cm(a)および2μm(b-d)]。
図2は、oAd-DCN/CFCSのウイルス生産および治療遺伝子発現プロファイルを示すものである[(a)CFCSに感染したoAd-DCNのウイルス生成。CFCSsは、0.5のMOIでnaked oAd-DCNに感染した。感染後、4、12、24、48、72および96時間にCFCSおよび上澄み液を回収した後、リアルタイム定量PCRによりウイルスゲノムコピーを測定した。(b)oAd-DCN/CFCSsでのDCN発現。平均±SDで示す1MOIデータでoAd-DCNで感染後、48時間に回収した細胞溶解液および上澄み液を使用するDCNの代表的なウェスタンブロット。*P<0.05、**P<0.01]。
図3は、肝内移植後、生体内oAd-DCN/CFCSsのウイルス持続性に対する分解プロファイルおよび評価を示すものである[(a)細胞シートの分解プロファイル。CFCSsは、線維芽細胞とホタルルシフェラーゼ発現癌細胞(CFCSs/Fluc)で作った。引き続いて、CFCS/FlucにoAd-DCNを感染させた後、同所HCC腫瘍があるヌードマウスの左側肝葉に移植した。(b)oAd-DCN/CFCSの移植後、ウイルス持続性の評価。CFCSをホタルルシフェラーゼ発現oAd-DCN(oAd-DCN/Fluc/CFCSs)に感染させた後、腫瘍保有マウスの左側肝葉の表面に移植した。生物発光(Bioluminescence)イメージングは、移植後に毎日モニタリングされた]。
図4は、多病巣性肝細胞癌腫(HCC)の組織学結果を示すものである[PBSで処理した群において腫瘍細胞の注射後21日目に多病巣性肝癌組織の断面を得、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。本来倍率:×40、白色点線:腫瘍]。
図5は、oAd-DCN/CFCSの強力な抗腫瘍効能を示したものであり、
図5aは、Hep3B同所腫瘍モデルでoAd-DCN/CFCSの抗腫瘍効能を示すものである[同所肝腫瘍は、マウスの左側肝葉に1×10
6個のホタルルシフェラーゼを発現するHep3B細胞を注入することによって確立された。細胞注射の直後に細胞注入部位をPBSまたはスプレーにより3×10
8VP oAd-DCN(スプレー)処理されたりPBS処理されたCFCSまたはoAd-DCN/CFCS(n=6)に移植して処理した。また、6匹のマウスにHep3B細胞注射後、尻尾静脈を通じて3×10
8VPを全身的に注射した。腫瘍成長は、処理後、2、5、7、14および21日にモニタリングした]。
図5bは、バックグラウンド除去法(background subtraction)後の各治療群からHCCからの生物発光信号を示すものである[データは平均±標準偏差で示した。*P<0.05]。
図6は、PBS、oAd-DCN血管内注射、oAd-DCN腹腔内注射、CFCS単独またはoAd-DCN/CFCSで処理したマウスの腫瘍組織の組織学的分析結果である[処理された多病巣性肝細胞癌の断面は、PBS、oAd-DCN血管内注射、oAd-DCN腹腔内注射、CFCS単独またはoAd-DCN/CFCSで治療後14日目に得られた。本来倍率:×50、黒色点線:腫瘍]。
図7は、oAd-DCN/CFCSを形成する過程を図式化したものである。
図8は、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスを搭載した細胞シートから複製されたアデノウイルスの生物学的活性を確認したものである。
図9は、腫瘍除去手術後、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスが搭載された細胞シートを付着後、腫瘍の再発の有無を確認したものである。
図10は、ワクシニアウイルスが搭載された細胞シートの形成を確認したものである。
図11は、ワクシニアウイルスが搭載された細胞シートのワクシニアウイルス複製能を確認したものである。
図12は、ワクシニアウイルスが搭載された細胞シートのワクシニアウイルス細胞死滅を確認したものである。
図13は、放射線を照射した癌細胞の細胞生存能を確認したものである。
図14は、放射線照射された癌細胞を含む細胞シートにおけるアデノウイルス複製能を確認したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、
二つ以上の細胞層を含み、
そのうちの一つ以上の細胞層に遺伝子伝達システムが導入されている、
細胞シートを提供する。
【0018】
本発明において、細胞シートは、局所的遺伝子伝達のために使用される。すなわち、遺伝子伝達システムを遺伝子治療が必要な体内部位に局所伝達することができる一種のキャリアとして役割をすることになる。
【0019】
前記細胞シートは、製造および体内移植の過程でユーザのハンドリングに適した機械的物性を有することが好ましい。
【0020】
このために、前記細胞シートは、細胞層のうち一つであって、支持体として作用する細胞層を含む。
【0021】
一具体例において、前記細胞シートは、支持体として体細胞を含む細胞層を含む。
【0022】
体細胞を含む細胞層は、遺伝子伝達システムが導入される細胞層の支持体の役割をし、体内環境と類似していて、多様な細胞の付着、増殖、分化および培養をすることができる環境を提供することができる。
【0023】
このような役割をするに適した体細胞であれば、いずれのものでも使用することができ、特にその種類が制限されない。具体的に、前記体細胞は、線維芽細胞、軟骨細胞、上皮細胞、筋上皮細胞(myoepithelial cell)、真皮細胞(dermal cell)、上皮ケラチン細胞(epithelial keratinocyte)、シュワン細胞(schwann cell)、神経膠細胞(glial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、心筋細胞(cardiomyocyte)、巨大細胞(megakaratyocyte)、脂肪細胞、幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)および癌細胞よりなる群から選ばれた一つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0024】
本発明において、遺伝子治療に使用できるものと知られたいかなる遺伝子伝達システムでも使用可能である。
【0025】
例えば、本発明の遺伝子伝達システムは、(i)ネイキッド(naked)組換えDNA分子、(ii)プラスミド、(iii)ウイルスベクターおよび(iv)前記ネイキッド組換えDNA分子またはプラスミドを内包するリポソームまたはニオソームの形態でありうる。
【0026】
通常の遺伝子治療に用いられるすべての遺伝子伝達システムが、本発明による細胞シートに適用され得、好ましくは、プラスミド、アデノウイルス(Lockett LJ,et al.,Clin.Cancer Res.3:2075-2080(1997))、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV,Lashford LS.,et al.,Gene Therapy Technologies,Applications and Regulations Ed.A.Meager,1999)、レトロウイルス(Gunzburg WH,et al.,Retroviral vectors.Gene Therapy Technologies,Applications and Regulations Ed.A.Meager、1999)、レンチウイルス(Wang G.et al.,J.Clin.Invest.104(11):R55-62(1999))、単純ヘルペスウイルス(Chamber R.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:1411-1415(1995))、ワクシニアウイルス(Puhlmann M.et al.,Human Gene Therapy 10:649-657(1999))、リポソーム(Methods in Molecular Biology,Vol 199,S.C.Basu and M.Basu(Eds.)、Human Press 2002)またはニオソームが使用され得る。
【0027】
i.アデノウイルス
アデノウイルスは、中間程度のゲノムサイズ、操作の便宜性、高いタイター、広範囲なターゲット細胞および優れた感染性に起因して遺伝子伝達ベクターとして多く用いられている。ゲノムの両末端は、100~200bpのITR(inverted terminal repeat)を含み、これは、DNA複製およびパッケージングに必須のシスエレメントである。ゲノムのE1領域(E1AおよびE1B)は、転写および宿主細胞遺伝子の転写を調節するタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)は、ウイルスDNA複製に関与するタンパク質をコードする。
【0028】
現在開発されたアデノウイルスベクターのうち、E1領域が欠如した複製不能アデノウイルスが多く用いられている。一方、E3領域は、通常のアデノウイルスベクターから除去されて外来遺伝子が挿入されるサイトを提供する(Thimmappaya,B.et al.,Cell,31:543-551(1982);およびRiordan,J.R.et al.,Science,245:1066-1073(1989))。したがって、細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド配列は、欠失したE1領域(E1A領域および/またはE1B領域、好ましくはE1B領域)またはE3領域に挿入されることが好ましく、より好ましくは、欠失したE1領域に挿入される。本明細書でウイルスゲノム配列と関連して使用される用語「欠失」は、当該配列が完全に欠失したものだけでなく、部分的に欠失したものをも含む意味を有する。
【0029】
アデノウイルスは、42個の異なる血清型およびA-Fのサブグループを有する。この中で、サブグループCに属するアデノウイルスタイプ2およびタイプ5が本発明のアデノウイルスベクターを得るための最も好ましい出発物質である。アデノウイルスタイプ2およびタイプ5に対する生化学的および遺伝的情報はよく知られている。
【0030】
アデノウイルスにより運搬される外来遺伝子は、エピソームと同じ方式で複製され、これにより、宿主細胞に対して遺伝的毒性が非常に低い。したがって、本発明のアデノウイルス遺伝子伝達システムを用いた遺伝子治療が非常に安全なものと判断される。
【0031】
ii.レトロウイルス
レトロウイルスは、自分の遺伝子を宿主のゲノムに挿入させ、大量の外来遺伝物質を運搬することができ、感染させることができる細胞のスペクトルが広いので、遺伝子伝達ベクターとして多く用いられている。
【0032】
レトロウイルスベクターを構築するために、細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド配列は、レトロウイルスの配列の代わりに、レトロウイルスゲノムに挿入されて、複製不能のウイルスを生産する。ビリオンを生産するために、gag、polおよびenv遺伝子を含むが、LTR(long terminal repeat)とΨ配列はないパッケージング細胞株を構築する(Mann et al.,Cell,33:153-159(1983))。運搬しようとする目的ヌクレオチド配列、LTRおよびΨ配列を含む組換えプラスミドを前記細胞株に移入すれば、Ψ配列は、組換えプラスミドのRNA転写体の生産を可能にし、この転写体は、ウイルスにパッケージングされ、ウイルスは、培地に排出される(Nicolas and Rubinstein “Retroviral vectors,” In:Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses,Rodriguez and Denhardt(eds.),Stoneham:Butterworth、494-513(1988))。組換えレトロウイルスを含有する培地を収集し濃縮して遺伝子伝達システムに用いる。
【0033】
2世代レトロウイルスベクターを用いた遺伝子伝達が発表された。Kasahara et al.Science,266:1373-1376(1994))は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の変異体を製造し、ここで、EPO(erythropoietin)配列をエンベロープ部位に挿入して、新しい結合特性を有するキメラタンパク質を生産した。本発明の遺伝子伝達システムも、このような2世代レトロウイルスベクターの構築戦略によって製造することができる。
【0034】
iii.AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、非分裂細胞を感染させることができ、多様な種類の細胞に感染できる能力を有しているので、本発明の遺伝子伝達システムに適している。AAVベクターの製造および用途に関する詳細な説明は、米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に詳細に開示されている。
【0035】
遺伝子伝達システムとしてのAAVに関する研究は、LaFace et al,Viology,162:483486(1988),Zhou et al.,Exp.Hematol.(NY),21:928-933(1993),Walsh et al,J.Clin.Invest.,94:1440-1448(1994)およびFlotte et al.,Gene Therapy,2:29-37(1995)に開示されている。
【0036】
典型的に、AAVウイルスは、二つのAAV末端リピートが側傍に位置している目的の遺伝子配列(細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド配列)を含むプラスミド(McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963-1973(1988);およびSamulski et al.,J.Virol.,63:3822-3828(1989))および末端リピートがない野生型AAVコーディング配列を含む発現プラスミド(McCarty et al.,J.Virol.,65:2936-2945(1991))を同時形質転換させて製造される。
【0037】
iv.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターも、本発明の遺伝子伝達システムに用いることができる。ワクシニアウイルス(Puhlmann M.et al.,Human Gene Therapy 10:649-657(1999);Ridgeway,“ Mammalian expression vectors,” In:Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses.Rodriguez and Denhardt,eds.Stoneham:Butterworth、467-492(1988);Baichwal and Sugden,“ Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses:Transient and stable expression of transferred genes,” In:Kucherlapati R,ed.Gene transfer.New York:Plenum Press,117-148(1986)およびCoupar et al.,Gene,68:1-10(1988))、レンチウイルス(Wang G.et al.,J.Clin.Invest.104(11):R55-62(1999))または単純ヘルペスウイルス(Chamber R.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:1411-1415(1995))に由来したベクターも、目的ヌクレオチド配列を細胞内に運搬できる運搬システムに用いることができる。
【0038】
その他にも、ウイルスベクターとしては、レオウイルス、ポックスウイルス、セムリキフォレストウイルスおよび麻疹ウイルス(Measles virus)などがある。
【0039】
v.リポソーム
リポソームは、水相に分散したリン脂質により自動的に形成される。外来DNA分子をリポソームで成功裏に細胞内に運搬した例は、NicolauおよびSene,Biochim.Biophys.Acta,721:185-190(1982)およびNicolau et al.,Methods Enzymol.,149:157-176(1987)に開示されている。一方、リポソームを用いた動物細胞の形質転換に最も多く用いられる試薬としては、リポフェクタミン(Lipofectamine,Gibco BRL)がある。運搬しようとする目的ヌクレオチド配列を内包したリポソームは、エンドサイトーシス、細胞表面への吸着またはプラズマ細胞膜との融合などの機序を通じて細胞と相互作用して細胞内に目的ヌクレオチド配列を運搬する。
【0040】
一つ以上の細胞層に遺伝子伝達システムを導入する方法は、細胞層を成す細胞と前記遺伝子伝達システムを接触させることによって行われる。
【0041】
本発明において、遺伝子伝達システムがウイルスベクターに基づいて製作された場合には、前記接触させる段階は、当業界に公知となったウイルス感染方法によって実施される。ウイルスベクターを用いた宿主細胞の感染は、上述した引用文献に記載されている。
【0042】
本発明において遺伝子伝達システムがネイキッド(naked)組換えDNA分子またはプラスミドである場合には、微細注入法(Capecchi,M.R.,Cell、22:479(1980);およびHarlandとWeintraub,J.Cell Biol.101:1094-1099(1985))、カルシウムホスフェート沈殿法(Graham,F.L.et al.,Virology,52:456(1973);およびChenとOkayama,Mol.Cell.Biol.7:2745-2752(1987))、電気穿孔法(Neumann,E.et al.,EMBO J.,1:841(1982);およびTur-Kaspa et al.,Mol.Cell Biol.,6:716-718(1986))、リポソーム-媒介形質感染法(Wong,T.K.et al.,Gene、10:87(1980);NicolauおよびSene,Biochim.Biophys.Acta,721:185-190(1982);およびNicolau et al.,Methods Enzymol.,149:157-176(1987))、DEAE-デキストラン処理法(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188-1190(1985)),および遺伝子ボンバードメント(Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:9568-9572(1990))方法により遺伝子を細胞内に移入させることができる。
【0043】
本発明の一具体例において、本発明による細胞シートは、ウイルス複製が可能な局部的な伝達プラットホームとして使用される。腫瘍殺傷ウイルスは、標的腫瘍部位をカバーし、腫瘍殺傷ウイルスを使用して腫瘍の除去に有利な特定遺伝子(例えば、デコリンなど)を発現させ、腫瘍殺傷ウイルスおよび治療遺伝子の効果的な複製を可能にする。また、細胞シートが体内で完全に分解されるまで細胞シートと腫瘍組織の全部でビリオンの活性複製を可能にすることによって、腫瘍組織で腫瘍殺傷ウイルスの長期維持を可能にする。
【0044】
これによって、細胞シートが腫瘍内投与された既存の腫瘍殺傷ウイルスより強力な抗腫瘍効果を導き出し、多病巣性癌腫の形成を効果的に予防できることになる。また、腫瘍殺傷ウイルスの細胞シート-媒介伝達は、腫瘍部位に局所化されるので、正常組織へのビリオンの非特異的排出を防止する。細胞シートに搭載した腫瘍殺傷ウイルスの投与が、腫瘍内局所化を同時に強化し、ウイルスの非特異的放出を防止することによって、安全性プロファイルを向上させると共に、ウイルスの治療効能を延長、増幅および強化させることができる。
【0045】
本発明の一具体例において、前記遺伝子伝達システムは、組換えアデノウイルスでありうる。
【0046】
遺伝子伝達ベクターとして組換えアデノウイルスの様々な長所が浮び上がるに伴い、癌遺伝子の治療においてその使用頻度は着実に増加している傾向にある。特に、遺伝子治療剤で癌を治療しようとする場合、長期的かつ持続的な治療遺伝子の発現が必要でないという長所がある。また、ベクターとして使用されるウイルスにより誘導される宿主の免疫反応が大きく問題にならないか、かえって利点として作用できるので、組換えアデノウイルスは、癌治療用遺伝子伝達体として脚光を浴びている。
【0047】
前記組換えアデノウイルスは、複製不能アデノウイルスまたは腫瘍殺傷アデノウイルスでありうる。
【0048】
複製不能アデノウイルスは、アデノウイルスの複製に必須のE1遺伝子(全部または一部)の代わりに治療用遺伝子を挿入して組換えられたものであって、アデノウイルスが導入された細胞内で複製されないように作ったものである。
【0049】
腫瘍殺傷アデノウイルスは、E1B 55kDa遺伝子が部分的に欠損したアデノウイルスであって、p53が機能的に非活性化された細胞だけで増殖が可能である。p53の機能が抑制されている癌細胞では、ウイルスの増殖が活発に起こることになる反面、正常細胞では、ウイルスの増殖が抑制される。したがって、腫瘍殺傷アデノウイルスは、正常細胞には影響を与えず、癌細胞だけを選択的に死滅させることができて、癌の治療にあって特に有利である。
【0050】
本発明の一具体例において、組換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19kDa遺伝子、E1B 55kDa遺伝子またはE1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子を有し、好ましくは、非活性化されたE1B 19kDaおよびE1B 55kDa遺伝子を有する。
【0051】
本明細書において、遺伝子と関連して使用される用語「非活性化」は、その遺伝子の転写および/または解読が正常に行われなくて、その遺伝子によりコードされる正常なタンパク質の機能が現れないことを意味する。例えば、非活性化E1B 19kDa遺伝子は、その遺伝子に変移(置換、付加、部分欠失または全体欠失)が発生して、活性のE1B 19kDaタンパク質を生成しない遺伝子である。E1B 19kDa遺伝子が欠如した場合には、細胞死滅能を増加させることができ、E1B 55kDa遺伝子が欠如した場合には、腫瘍細胞特異性を有するようにする(参照:韓国特許出願第2002-0023760号)。
【0052】
本発明の一具体例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子を含むことができる。E1A遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、複製可能な特性を有することになる。本発明のより好ましい具現例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子および活性のE1A遺伝子を含む。本発明の一具体例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、E1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子が欠失し、活性のE1A遺伝子を含み、デコリン-エンコーディングヌクレオチド配列は、欠失したE1領域に挿入されているものである。
【0053】
本発明の一具体例において、
遺伝子伝達システムが導入される細胞層は、癌細胞または幹細胞を含むことができる。
【0054】
遺伝子伝達システムとして腫瘍殺傷アデノウイルスを使用する場合、遺伝子伝達システムが導入される細胞層は、癌細胞を含むことができる。先立って説明したように、腫瘍殺傷アデノウイルスは、癌細胞だけで増殖し、癌細胞を含む細胞層以外の正常細胞では、その複製が抑制される。したがって、細胞シートを長期間培養しても、支持体の役割をする細胞層の死滅による機械的物性の低下を心配する必要がない。また、細胞シートの体内移植後に腫瘍殺傷アデノウイルスにより癌細胞自体が死滅するので、癌細胞の体内残存を心配しなくてもよい。
【0055】
腫瘍殺傷アデノウイルスでなく、他の遺伝子伝達システムを使用しても、癌細胞は、放射線照射させて、癌細胞自体の複製能を喪失させることができるので、遺伝子伝達システムが導入される細胞層に使用するのに何らの問題もない。本発明の一具体例において、前記細胞シートは、遺伝子伝達システムが導入されている、癌細胞を含む細胞層を含み、前記癌細胞は、放射線が照射されたものでありうる。
【0056】
前記癌細胞は、具体的に、膠芽細胞腫、喉頭癌、すい臓癌、肺癌、非小細胞性肺癌、結腸癌、骨癌、すい臓癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、卵巣癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、大腸癌、乳癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、膀胱癌、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、中枢神経系(central nervous system,CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、脳幹部神経膠腫および脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれた一つ以上の癌に由来した癌細胞でありうるが、これに制限されない。
【0057】
他の具体例において、遺伝子伝達システムが導入される細胞層は、幹細胞を含むことができる。幹細胞は、腫瘍標的能を有しているので、本発明の細胞シートを癌患者に使用する場合、特に有利になりうる。ただし、一般的に、幹細胞は、アデノウイルスの感染率が低いものと知られているので、幹細胞導入能が改善された組換えアデノウイルスを使用することが好ましいことがある。これに制限されるものではないが、遺伝子伝達システムが導入される細胞層に幹細胞を含む場合、血清型35のファイバー(fiber)ノブ(knob)を含む幹細胞導入能が改善された組換えアデノウイルスを使用することが好ましいことがある。血清型35のファイバー(fiber)ノブ(knob)を含む組換えアデノウイルスの場合、間葉系幹細胞への導入効率に顕著に優れており、低いウイルス濃度でもよく導入され得る特徴を有する。
【0058】
これに制限されるものではないが、本発明の一具体例において、本発明の組換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19kDa遺伝子、E1B 55kDa遺伝子またはE1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子を有し、好ましくは非活性化されたE1B 19kDaおよびE1B 55kDa遺伝子を有する。
【0059】
本明細書において、遺伝子と関連して使用される用語「非活性化」は、その遺伝子の転写および/または解読が正常に行われず、その遺伝子によりコードされる正常なタンパク質の機能が現れないことを意味する。例えば、非活性化E1B 19kDa遺伝子は、その遺伝子に変移(置換、付加、部分欠失または全体欠失)が発生して、活性のE1B 19 kDaタンパク質を生成しない遺伝子である。E1B 19kDa遺伝子が欠如した場合には、細胞死滅能を増加させることができ、E1B 55kDa遺伝子が欠如した場合には、腫瘍細胞特異性を有するようにする(参照:韓国特許出願第2002-0023760号)。
【0060】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子を含む。E1A遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、複製可能な特性を有するようになる。本発明のより好ましい具現例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子および活性のE1A遺伝子を含む。本発明の最も好ましい具現例によれば、本発明の組換えアデノウイルスは、E1B 19kDa/E1B 55kDa遺伝子が欠失し、活性のE1A遺伝子を含み、デコリン-エンコーディングヌクレオチド配列は、欠失したE1領域に挿入されているものである。
【0061】
本発明において用いられる組換えアデノウイルスは、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞で作動可能なプロモーターを含む。本発明に適したプロモーターは、哺乳動物ウイルスに由来したプロモーターおよび哺乳動物細胞のゲノムに由来したプロモーターを含み、例えば、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、U6プロモーターおよびH1プロモーター、MLV(Murine Leukemia Virus)LTR(Long terminal repeat)プロモーター、アデノウイルス初期プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1プロモーター、メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプロモーター、inducibleプロモーター、癌細胞特異的プロモーター(例えば、TERTプロモーター、modified TERTプロモーター、PSAプロモーター、PSMAプロモーター、CEAプロモーター、Survivinプロモーター、E2Fプロモーター、modified E2Fプロモーター、AFPプロモーター、modified AFPプロモーター、E2F-AFP hybridプロモーター、およびE2F-TERT hybridプロモーター)および組織特異的プロモーター(例えば、アルブミンプロモーター)、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターを含むが、これに限定されるものではない。最も好ましくは、CMVプロモーターである。トランス遺伝子を発現させるための発現コンストラクトでトランス遺伝子のダウンストリームにポリアデニル化配列が結合されていることが好ましい。前記ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモンターミネーター(Gimmi,E.R.,et al.,NucleicAcids Res.17:6983-6998(1989))、SV40由来ポリアデニル化配列(Schek,N,et al.,Mol.Cell Biol.12:5386-5393(1992))、HIV-1 polyA(Klasens,B.I.F.,et al.,Nucleic Acids Res.26:1870-1876(1998))、βグロビンpolyA(Gil,A.,et al,Cell 49:399-406(1987))、HSV TK polyA(Cole,C.N.and T.P.Stacy,Mol.Cell.Biol.5:2104-2113(1985))またはポリオーマウイルスpolyA(Batt,D.B and G.G.Carmichael,Mol.Cell.Biol.15:4783-4790(1995))を含むが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明の組換えアデノウイルスは、選択標識として抗生剤耐性遺伝子およびレポータ遺伝子(例えば、GFP(green fluorescence protein)、ルシフェラーゼおよびβグルクロニダーゼ)をさらに含むことができる。前記抗生剤耐性遺伝子は、当業界において通常的に用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子があり、好ましくはネオマイシン耐性遺伝子である。
【0063】
本発明による細胞シート内搭載されるウイルスベクター(例えば、組換えアデノウイルス)は、0.1~500MOI(Multiplicity of infection)の量で搭載されることが好ましい。より好ましくは、0.1~200MOI、0.1~100MOI、0.1~50MOI、0.1~10MOI、0.1~5MOI、0.5~200MOI、0.5~100MOI、0.5~50MOI、0.5~10MOIまたは0.5~5MOIで搭載され得る。これは、既存の腫瘍治療法で使用された腫瘍殺傷ウイルス量1×1010VP~5×1010VPに比べて顕著に少ない量を使用しても、癌細胞で増殖させることができるので、既存の腫瘍殺傷ウイルスを使用した腫瘍治療法に比べてウイルス搭載量を顕著に低減することができ、医師の負担感を顕著に減らすことができる。
【0064】
また、本発明は、
温度感応性ポリマーを含む温度反応性培養皿に、
二つ以上の細胞層を含む細胞シートを形成し、
そのうちの一つ以上の細胞層に遺伝子伝達システムを導入し、
温度反応性培養皿から前記細胞シートを分離することを
含む細胞シートの製造方法を提供する。
【0065】
前記で細胞シートと関連して記述したすべての内容が細胞シートの製造方法にそのまま適用または準用され得る。
【0066】
これに制限されるものではないが、本発明による細胞シートの製造方法は、例えば、次のような段階を含んで行われ得る:
温度感応性ポリマーを含む温度反応性培養皿に体細胞を培養して、体細胞を含む第1細胞層を形成させる段階;
前記第1細胞層に癌細胞を培養して、癌細胞を含む第2細胞層を形成させて細胞シートを製造する段階;
前記第2細胞層に腫瘍殺傷ウイルスを接種させる段階;および
温度反応性培養皿から前記細胞シートを分離する段階。
【0067】
前記例を具体的に説明すれば、
まず、温度感応性ポリマーを含む温度反応性培養皿にシリコンリングを載置し、シリコンリングの内側に支持体の役割をする体細胞を分注して、恒温装置で培養して、体細胞を含む第1細胞層を形成させる。
【0068】
前記温度感応型培養皿は、表面の下限臨界温度(lower critical solution temperature,LCST)以上では、細胞が付着して細胞シートを形成し、下限臨界温度以下では、ポリマーが膨潤して細胞をシート形態に回収することができる。
【0069】
前記温度感応性ポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリラクテート-co-グリコレート(PLGA)よりなる群から選ばれた一つ以上でありうるが、温度感応性を有するポリマーであれば、制限なしに使用することができる。
【0070】
次に、前記第1細胞層上に癌細胞を分注して、恒温装置で培養して、癌細胞を含む第2細胞層を形成させて細胞シートを製造する。
【0071】
特に、前記第2細胞層に細胞シートを構成する癌細胞による発癌の可能性を除去するために、放射線を照射する段階をさらに含ませることができる。
【0072】
次に、前記第2細胞層に腫瘍殺傷ウイルスを接種させて、細胞シートにウイルスを搭載させる。
【0073】
この際、腫瘍殺傷ウイルスを0.1~500MOIの量(より好ましくは0.1~200MOI、0.1~100MOI、0.1~50MOI、0.1~10MOI、0.1~5MOI、0.5~200MOI、0.5~100MOI、0.5~50MOI、0.5~10MOIまたは0.5~5MOIの量)で前記細胞シートの形成後、12時間~1日目に接種させる。一定の時間間隔を置いて接種させる場合にのみ、細胞がシートを形成することができ、また、細胞の個数当たりウイルスの搭載量の計算が可能である。このような腫瘍殺傷ウイルスを接種させることによって、癌細胞は、一定期間(接種後12時間~7日)後に自然に消滅する。また、腫瘍殺傷ウイルスが癌細胞に起因して増幅が可能で、少ない量を投与することによって、癌細胞の治療が可能である。
【0074】
最後に、温度反応性培養皿から前記細胞シートを分離させる。
【0075】
前記温度感応型培養皿は、表面の下限臨界温度以下では、ポリマーが膨潤するので、細胞シートが培養皿から脱着させることができる。この際、ウイルス接種後6時間~1日目に細胞シートを培養皿から分離させることが、搭載したウイルスの複製による細胞シートの分解が起こらずに、堅固な細胞シートの形態で剥き出すことができるので好ましい。
【0076】
また、本発明は、本発明の細胞シートを有効成分として含む、遺伝子治療剤を提供する。
【0077】
本発明の用語「遺伝子治療剤」は、疾病の治療などを目的に遺伝物質または遺伝物質を移入した担体(carrier)を対象体に投与する細胞または医薬品を意味する。また、対象体の損傷した遺伝子に正常遺伝子あるいは治療効果を有する遺伝子を注入させて、遺伝的欠陥を治療したり予防する目的で使用される医薬品を意味する。
【0078】
遺伝子治療剤として適用され得る薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれら成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができ、標的器官に特異的に作用することができるように、標的器官特異的抗体またはその他リガンドを前記担体と結合させて使用することができる。
【0079】
好ましくは、本発明の遺伝子治療剤は、癌の予防または治療、癌の再発または癌の転移防止のために用いられる。
【0080】
前記癌は、多病巣性肝細胞癌腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、喉頭癌、すい臓癌、肺癌、非小細胞性肺癌、結腸癌、骨癌、すい臓癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、卵巣癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、結腸癌、乳癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、膀胱癌、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、中枢神経系(central nervous system,CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、脳幹部神経膠腫および脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれた一つ以上でありうる。
【0081】
本発明の細胞シートを癌(腫瘍)が除去された手術部位、または癌が発生した部位に投与することによって、癌を治療したり癌転移または再発を防止することができる。本発明の細胞治療剤の好ましい投与量は、個体の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者により適宜選択され得る。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもでき、前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するのではない。
【0082】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による細胞シートの投与によって癌(腫瘍)を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0083】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による細胞シートの投与によって癌(腫瘍)に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0084】
本発明において使用される用語「転移」とは、悪性腫瘍が発病した臓器から離れた他の組織に伝播した状態を意味する。
【0085】
本発明において使用される用語「再発」とは、腫癌が手術的摘出または放射線照射などにより一旦消失した後に同じ腫瘍が再び発育すること、残った腫瘍細胞が増殖することまたは腫瘍細胞が完全に消失し、新しく腫瘍が発生することを意味する。
【0086】
また、本発明は、対象体の癌除去手術部位に本発明による細胞シートを移植する段階を含む癌再発防止方法を含む。
【0087】
また、本発明は、対象体の癌治療が必要な部位に本発明による細胞シートを移植する段階を含む癌治療方法を含む。
【0088】
本発明において「対象体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、げっ歯類(ラット、マウス、ギニアピッグなど)、犬、猫、馬、牛、羊、豚、ヤギ、ラクダ、レイヨウなどの哺乳類を意味する。
【0089】
本発明による細胞シートは、移植後に一定期間(6日~10日)後に癌細胞層がウイルスの複製により破壊されるので、自然に消滅する。
【0090】
これに制限されるものではないが、本発明の細胞シートを標的部位に移植させる方法は、例えば、次のような段階を含んで行われ得る:
温度反応性培養皿で形成したウイルスを感染させた細胞シートに培養液を除去し、PBSで洗浄する。メンブレインを細胞シート上に載置したまま、温度を下げて、細胞シートを引き剥がすと、メンブレインに細胞シートが付着したまま、細胞シートを得ることができる。細胞シートが付着したメンブレインを標的(病変)部位に載置し、用心深くメンブレインを引き剥がすと、細胞シートは、標的部位に付着し、メンブレインを除去することによって、細胞シートを標的部位に移植可能である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0092】
[実施例]
実験方法
細胞株および細胞培養
すべての細胞株は、10%ウシ胎児血清(FBS,Gibco BRL)とペニシリン-ストレプトマイシン(100IU/mL,Gibco BRL)が添加されたDulbecco’s modified Eagle’s培地(DMEM,Gibco BRL,Grand Island,NY USA)で培養した。
【0093】
HEK293(Ad E1領域を発現するヒト胚芽腎臓細胞株)、A549(肺癌細胞株)、Hep3B(肝細胞癌腫細胞株)、U343(膠芽細胞腫細胞株)およびNIH3T3(線維芽細胞細胞株)細胞株は、アメリカンタイプ培養コレクション(ATCC,Manassas,VA)から購入した。
【0094】
すべての細胞株を5%CO2の加湿雰囲気で37℃に維持させた。
【0095】
oAd-DCN(デコリン-発現腫瘍殺傷Ad)の製作
pCA14/DCNをBgl II制限酵素で切ってDCN発現カセットを得、これとBamHI制限酵素で切断したpdE1sp1B(p)-HRE-mTERT-Rd19をライゲーションして、pdE1sp1B(p)-HRE-mTERT-Rd19/DCN E1 shuttle vectorを製作した。
【0096】
前記のベクターをXmnI制限酵素を処理して一本鎖に作り、アデノウイルスのknobをAd35のもので置換したベクターであるdl324-k35をBstBI制限酵素処理して一本鎖を作って、二つのベクターを大腸菌BJ5183に同時に形質転換させて、遺伝子相同組換え(homologous recombination)を誘導することによって、DCN-発現するoAdベクター(HmT-Rd19-k35/DCN,oAd-DCN)を製作した。
【0097】
Ad-搭載された癌細胞/線維芽細胞細胞シート(oAd/CFCSs)
線維芽細胞第1細胞層と癌細胞第2細胞層から構成された細胞シート(CFCS)は、温度反応性培養皿(TRCD;UpCell;NUNC,Tokyo,Japan)を使用して製作した。
【0098】
二重層の細胞シートを作るために、NIH3T3細胞(3×105)を35mmのTRCDにシリコンリング(半径1.8cm)の中空の内部層に入れて、37℃で培養した。培養48時間後、U343細胞(3×105)をシリコンリング限定領域に添加して、細胞シートの第2層を形成し、24時間の間培養した。各皿の培地を5%FBSが含有された新鮮なDMEMに交換した後、細胞を0.5または5の多重感染(MOI)でデコリン-発現腫瘍殺傷Ad(oAd-DCN)で感染させた。Ad-DCN-感染癌細胞/線維芽細胞細胞シート(oAd-DCN/CFCSs)を培養温度を室温に30分間下げて、感染4時間後に皿から分離した。
【0099】
組織学
oAd-DCN CFCSは、oAd-DCNの5MOIを使用して前記記述されたように生成され、対照群CFCSは、細胞シートをリン酸緩衝食塩水(PBS)で処理することによって生成された。
【0100】
30分間培養温度を室温に下げて24時間の間4%パラホルムアルデヒドで固定させることによって、処理後12時間目に腫瘍殺傷Ad搭載またはPBS処理されたCFCSを回収した。固定されたサンプルをパラフィンに包埋し、5um断面に切って、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色のためにパラフィンを除去した。
【0101】
ウイルス生産分析
細胞シートで腫瘍殺傷Adのウイルス生産を評価するために、CFCSを12-ウェルプレートに入れて、oAd-DCNで0.5MOIで感染させた。感染4時間後、ウェルをPBSで洗浄し、5%FBSを含有する新鮮なDMEMに交換した。
【0102】
感染4、12、24、48、72および96時間後、上澄み液と細胞シートの全部を収集し、リアルタイム定量PCR(Q-PCR,TaqMan PCR検出,Applied Biosystems,CA,USA)によりAd粒子の数を評価した。
【0103】
ウェスタンブロッティング分析
oAd-DCN/CFCSsで腫瘍殺傷Ad-媒介DCN発現の水準を評価するために、シートをMOIが1であるoAd-DCNで感染させ、48時間の間培養した。引き続いて、シートをプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma,MO,USA)が入っている氷冷RIPAバッファー(Elipis Biotech,Taejeon,Korea)で均質化し、生成された均質液を13,200rpmで10分間遠心分離した。
【0104】
総タンパク質濃度は、BCAタンパク質分析法(Pierce,Rockford,IL,USA)により測定され、同等なタンパク質量(試料当たり200μg)を電気泳動のためにドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルに載置した。タンパク質をポリビニリデンフルオライドメンブレインに移し、ヤギ抗-DCN抗体(Ab,R&D Systems,MN,USA)またはウサギ抗-β-アクチン抗体(Cell Signaling Technology,Beverly,MA,USA)とともに培養した。
【0105】
膜を2次Abで西洋ワサビペルオキシダーゼ-結合されたマウス抗-ヤギIgG Abまたはヤギ抗-ウサギIgG(細胞シグナリング)とともに培養し、免疫反応性バンドを強化された化学発光(Amersham Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)を通じて視覚化した。
【0106】
DCNの発現水準は、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して準(semi)-定量分析した。
【0107】
MTT分析
試験管内でCFCSのウイルス複製媒介分解を評価するために、CFCSを48-ウェルプレートに載置した後、MOIが5であるoAd-DCNで感染させた。
【0108】
感染4、12、24、48、72、96時間後に培地を除去し、CFCSsを500μLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド(MTT,Sigma,MO,USA)で処理した。引き続いて、プレートを540nmでマイクロプレートリーダーで読み出した。PBS-処理群からの吸光度を100%生存能に設定した。
【0109】
oAd-DCN/CFCSの生体内分解プロファイルおよびウイルス持続性
生体内でCFCSsの分解およびウイルス持続性を評価するために、二つの異なる類型の細胞シートを製作した。
【0110】
CFCSの分解プロファイルは、線維芽細胞とホタルルシフェラーゼ(fluc)発現癌細胞(CFCSs/fluc)から構成されたCFCSを用いて評価した後、MOIが5であるoAd-DCNに感染して、oAd-DCN/CFCSs/flucを生成させることによって評価された。
【0111】
細胞シートのウイルス持続性を評価するために、線維芽細胞とfluc遺伝子を発現しない癌細胞を利用してMOIが5であるホタルルシフェラーゼ発現oAd-DCN(oAd-DCN-fluc)に感染させてCFCSを作った。oAd-DCN-fluc/CFCSs、Oad-DCN/CFCSs/flucおよびoAd-DCN-fluc/CFCSは、全部感染後4時間にHCCを有するマウスの最も大きい肝葉に移植された。移植後2、4、6、8および10日に、IVIS映像システム(Xenogen,Alameda,CA,USA)を通じてoAd-DCN/CFCS/flucの分解およびoAd-DCN-fluc/CFCSの腫瘍殺傷Adの持続性を評価するために、酸素で2%イソフルランで満たされたチャンバーで麻酔させ、D-ルシフェリン(150mg/kg,Caliper,Hopkinton,MA)を腹腔内注射した。
【0112】
インビボ抗腫瘍効能
oAd-DCNの抗腫瘍効果を評価するために、CFCSs、oAd-DCN/CFCSsを同所(orthotopic)HCC異種移植モデルで6~7週齢の胸腺ヌードマウス(OrientBioInc.,Seongnam,Korea)で肝葉の最も大きい葉に1×106fluc-発現Hep3B細胞(Hep3B/fluc)を注入した。
【0113】
腫瘍細胞の注射直後、肝注射部位をトリプシンで5分間処理した後、CFCS群(CFCSまたはoAd-DCN/CFCS)を移植したり、PBSまたはoAd-DCN(5MOI)を噴射した。最後に、治療群の一つが尻尾静脈(他のoncolytic Adを含む群と同じ量のウイルス投与)を通じてoAd-DCNで全身投与された。
【0114】
細胞注入2日後に、マウスを酸素のうち2%イソフルランで満たされたチャンバーで麻酔させ、IVISイメージングシステム(Xenogen)を通じてHep3B/fluc細胞の成功的な移植を確認するために、D-ルシフェリン(150mg/kg;Caliper,MA,Hopkinton,MA)を腹腔内注射した。
【0115】
生体内生物発光信号強度は、治療後2日、5日、7日、14日および21日に関心の対象身体部位(腫瘍)で秒当たりフォトン(photons/second[p/s])で得られた。
【0116】
組織学的および免疫組織化学的分析
Hep3B-HCC腫瘍組織をHCC細胞注射後21日目に回収し、10%ホルマリンに固定させ、パラフィン包埋処理し、5μm断面で切断した。切片をH&Eで染色し、光学顕微鏡で検査した。腫瘍組織でAd粒子を検出するために、腫瘍切片をウサギ抗-Ad E1Aポリクロナール抗体(Santa Cruz Biotechnology)で免疫染色した。
【0117】
また、腫瘍切片は、腫瘍細胞増殖または処理後に細胞死滅誘導を評価するために、増殖する細胞核抗原(PCNA)特異抗体(Dako,Glostrup,Denmark)または末端デオキシヌクレオチジル転移酵素dUTPニックエンドラベリング(TUNEL)で免疫染色された。その後、2次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ-結合されたヤギ抗-ラットIgG(BD Biosciences Pharmingen)または西洋ワサビペルオキシダーゼ-結合されたヤギ抗-マウスIgG(Southern Biotech,Birmingham,AL,USA)で処理した。
【0118】
ジアミノベンジジン/水素ペルオキシダーゼ(DAKO)をクロモゲン基質として使用した。すべてのスライドは、メイヤー(Mayer)のヘマトキシリンで対照染色された。
【0119】
統計分析
データは、平均±標準偏差(SD)で表示された。統計的有意性は、two-tailed Student T-testまたはOne-way Anova test(SPSS 13.0ソフトウェア,SPSS,Chicago,IL)により測定された。0.05未満のP値は、統計的に有意なものと見なされた。
【0120】
放射線を照射した癌細胞の細胞生存能の確認
U343細胞株に多様な強さの放射線を照射(1、5、10、15、30、50Gy)した後、放射線照射癌細胞の細胞生存能(cell viability)を確認するために、放射線を照射したU343細胞株を96ウェルプレートに播種(seeding)し、9日目までMTTアッセイを行った。
【0121】
放射線を照射した癌細胞を用いた細胞シートからウイルス複製能の確認
線維芽細胞第1細胞層と癌細胞第2細胞層から構成された細胞シート(CFCS)は、温度反応性培養皿(TRCD;UpCell;NUNC,Tokyo,Japan)を使用して製作した。
【0122】
二重層の細胞シートを作るために、NIH3T3細胞(3×105)を35mmのTRCDにシリコンリング(半径1.8cm)の中空の内部層に入れて、37℃で培養した。培養48時間後、放射線を照射しないU343細胞(対照群)、または5Gyで放射線を照射したU343細胞(3×105)をシリコンリング限定領域に添加して、細胞シートの第2層を形成し、24時間の間培養した。各皿の培地を5%FBSが含有された新鮮なDMEMに交換した後、細胞を0.5の多重感染(MOI)でDCN-発現腫瘍殺傷Ad(oAd-DCN)で感染させた。その後、4時間目に感染しないウイルスを除去するために、培養液を新鮮な(fresh)ものに変え、4、24、48時間目に、培養液と細胞を回収して、そのうち存在するウイルスをQ-PCRを通じて確認した。
【0123】
細胞シートを腫瘍除去手術(標的)部位に移植後に生物学的活性および腫瘍発生の有無の確認
図7のように、温度反応性培養皿にNIH3T3を分注して第1層を形成し、3日後にU343細胞株を分注して第2層を形成し、48時間後に腫瘍選択的殺傷アデノウイルスを感染させ、24時間後に温度反応性培養皿の温度を20℃に下げて、細胞シートを引き剥がした。
【0124】
温度反応性培養皿で形成したウイルスを感染させた細胞シートに培養液を除去し、1X PBSを利用して3回洗浄した。メンブレン(membrane)を細胞シートの上に載置したまま、温度を20℃に下げて、細胞シートが付着した状態のメンブレンを得た。
【0125】
H460肺癌皮下腫瘍を有しているマウスモデルの腫瘍を外科的手術として除去し、細胞シートが付着したメンブレンを腫瘍除去手術部位に載置した後、用心深くメンブレンを引き剥がして、細胞シートを腫瘍除去手術部位に付着させた。その後、手術部位を縫合し、腫瘍の再発の有無を30日目まで観察した。
【0126】
細胞シートで生産されたウイルスの生物学的活性分析
細胞シートで複製された腫瘍殺傷アデノウイルスの生物学的活性を評価するために、CFCSを12-ウェルプレートに入れて、0.5MOIのoAd-DCNで感染させた。感染4時間後、ウェルを1XPBSで洗浄し、5%FBSを含有する新鮮なDMEMに交換した。感染4、12、24、48および72時間後、上澄み液と細胞シートの全部を収集した。
【0127】
A549細胞株を96ウェルプレートに1×104cells/wellで播種(seeding)し、収集したサンプルでそれぞれ25、50、100μLを取って細胞に処理した後、48時間目にMTTアッセイを行うことによって、細胞シートで生産されたウイルスの癌細胞殺傷能を確認した。
【0128】
ウイルスを搭載した細胞シート製作
ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスを複製または伝達するための細胞シートを製作するために、温度反応性培養皿(TRCD)に内側直径が1.8mmであるシリコンリングを載置し、シリコンリングの内側にNIH3T3細胞株を3×105個分注し、48時間後、U343細胞株3×105個を分注して細胞シートを製作した。
【0129】
24時間後、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスを細胞シートに感染させた。一定時間の後に温度反応性培養皿からウイルスが感染した細胞シートの培養液およびシリコンリングを除去し、1XPBSで3回洗浄した後、2mLの新しい1XPBSを入れて、20℃で引き剥がして、細胞シート形成を確認した。
【0130】
実験結果
oAd-DCN/CFCSの生成および特性糾明
Ad複製を許容できるCFCSを製作するために、ヒト脳膠芽細胞腫細胞株(U343)およびマウス線維芽細胞細胞株(NIH3T3)から構成された二重層細胞シートを用いた。
【0131】
CFCSは、温度反応性培養皿(TRCD)で生成され、MOIが5であるoAd-DCNに感染して腫瘍殺傷Ad感染したCFCS(oAd-DCN/CFCSs)を生成した。感染12時間後、30分間プレート温度を室温に下げることによって、oAd-DCN/CFCSをTRCDから分離させた。
図1aに示されたように、均一なサイズの円形シートがTRCDから容易に分離された。シートのH&E染色は、癌細胞と正常線維芽細胞成分がシート層(
図1b)に存在することを示した。
【0132】
重要なことは、細胞シートのAd E1A染色は、赤色スポットから見ることができる腫瘍殺傷Adの広範囲な分布を示した(
図1d)。反面、PBS-処理された対照シートは、検出可能なスポットがなかった(
図1c)。注目すべき点は、PBSと腫瘍殺傷Ad-搭載されたCFCSが感染後12時間で類似した構造と形状を示すということである。また、このような結果は、腫瘍殺傷Adが細胞シートに搭載することができ、細胞シートの全般的な構造的無欠性に害にならないことを示した。
【0133】
oAd-DCN/CFCS内でのウイルス複製および遺伝子発現プロファイル
シートの癌細胞層が腫瘍殺傷Ad感染に対して許容可能であるかを評価するために、ウイルス複製および治療遺伝子発現プロファイルをそれぞれQ-PCRおよびウェスタン ブロッティングで分析した。
【0134】
図2aに示されたように、腫瘍殺傷Adは、感染後72時間まで時間によって細胞シート内で効果的に複製して、細胞シートが腫瘍殺傷Ad複製を許容することを立証した。(4時間目は、細胞シート内に感染したウイルスの量を検出することであるが、少ないMOIを使用したので、Q-PCR上の検出限界以下の値であって、分析にならなかった)。
【0135】
処理後96時間に、oAd-DCNの腫瘍殺傷活性によってAd量の若干の減少が観察され、処理後96時間で細胞シートの顕著な分解を誘導した。このような結果によって、ウェスタンブロット分析によりoAd-DCNは、oAd-DCN/CFCS内で効果的にDCNを生成することができることを明らかにした(
図2b)。
【0136】
また、このような結果は、細胞シートが腫瘍殺傷Ad感染に影響を受けやすく、究極的に、シートがウイルス複製および治療遺伝子発現を許容する伝達スキャフォールドとして機能することができることを立証した。
【0137】
生体内oAd-DCN/CFCSsの分解プロピルおよびウイルス持続性
CFCSで細胞シートの分解および搭載された腫瘍殺傷Adの持続性をモニタリングし視覚化するために、HCC異種移植マウスにoAd-DCN-loaded fluc-発現CFCSs(oAd-DCN/CFCSs/Fluc)(
図3a)またはfluc-発現oAd-DCN(oAd-DCN-Fluc/CFCSs)に感染したCFCSs(レポータ遺伝子なし)を移植した(
図4b)。
【0138】
図3aに示されたように、細胞シートのルシフェラーゼ信号は、時間依存的に減少したし、移植後10日まで完全に消えた。
【0139】
また、移植後10日目にマウスを犠牲させ、移植されたすべてのCFCSが肝で完全に分解されたことを肉眼で確認した。
【0140】
同様に、腫瘍殺傷Adウイルスの信号は、また、時間依存的方式で減少して、10日間細胞シートのようにルシフェラーゼ発現パターンで類似した時間依存的減少を示した(
図3b)。
【0141】
多病巣性肝細胞癌腫に対するoAd-DCN/CFCSの強力な抗腫瘍効能
同所(orthotopic)腫瘍モデルは、臨床関連性のため、重要な癌研究モデルの一つとして浮上している。HCCの多病巣性は、クリニックで成功的な治療に向かった重要な挑戦であるから、ルシフェラーゼを発現するHep3B細胞に肝で最も大きい葉に多重注射をして、多病巣性肝細胞同所腫瘍モデルを確立した。
【0142】
図4に示されたように、HCC病変は、PBSで処理したマウスの肝で検出され、同所多病巣性HCCが成功裏に確立されたことを確認した。
【0143】
図5aに示されたように、oAd-DCN/CFCS処理は、治療後21日目他のどんな治療群より顕著に高い抗腫瘍活性を示して、PBS(7.2×10
8±4.5×10
8)、PBS処理されたCFCS(1.7×10
8±9.3×10
7)、またはoAd-DCN(sprayed)(1.2×10
8±1.3×10
8)よりそれぞれ20.4倍、4.7倍または3.5倍さらに大きい腫瘍成長抑制を示した(
図5b)。
【0144】
また、すべてのoAd-DCN/CFCSs処理マウスは、肝に多病巣性肝細胞癌を示さないので、CFCSが媒介する腫瘍殺傷Adの伝達が多病巣性腫瘍の形成を予防することができることを示唆する(
図6)。
【0145】
また、このような結果は、細胞シートに搭載されたoAd-DCNが強力な抗腫瘍効能を導き出し、多病巣性肝細胞癌の形成を予防するために、腫瘍組織に効果的に伝達され得ることを示唆する。
【0146】
多病巣性肝細胞癌に対するoAd-DCN/CFCSの組織学的分析
さらに治療効果を調査するために、各群(PBS,oAd-DCN血管内注射、oAd-DCN腹腔内注射、CFCS単独またはoAd-DCN/CFCS)で処理した後、2週に腫瘍組織を回収し、組織学的および免疫組織学的分析を通じて分析した。
【0147】
図6に示されたように、H&E染色は、PBS-処理、oAd-DCN血管内注射、oAd-DCN腹腔内注射、CFCSs単独処理された組織または大食細胞での増殖する腫瘍細胞の大きい多病巣領域を示した。
【0148】
oAd-DCN/CFCSでは、腫瘍細胞の小さい領域と多発性腫瘍が観察されなかった。総合すれば、oAd局所伝達にCFCSを使用する場合、抗腫瘍効能が向上し、多病巣性腫瘍の成長を予防することを立証する。
【0149】
細胞シートを腫瘍除去手術(標的)部位に移植後に生物学的活性および腫瘍発生の有無の確認
図8は、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスを搭載した細胞シートから複製されたアデノウイルスの生物学的活性を確認したものであって、複製されたウイルスの量が多いlate timeのサンプルであるほど、細胞殺傷能が増加することを確認することによって、細胞シートから複製されたアデノウイルスの生物学的活性があることを立証した。
【0150】
図9は、腫瘍除去手術後、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスが搭載された細胞シートを付着後、腫瘍の再発の有無を確認したものであって、腫瘍除去手術後、細胞シートを付着しない対照群では、手術30日以後に腫瘍の再発が観察された反面、細胞シートを付着し縫合した実験群では、腫瘍の再発が起こらなかったことを確認した。
【0151】
ワクシニアウイルスが感染した細胞シート形成の確認
ウイルスの感染有無と関係なく、細胞シートがよく形成されることを確認した。
【0152】
図10は、温度反応性培養皿の細胞シートにワクシニアウイルスを0.5MOIで感染させ、6時間後の細胞シートの写真(a)、細胞シートを温度反応性培養皿から引き剥がすために、シリコンリングを除去し、1XPBSで3回洗浄した後の細胞シート写真(b)、温度反応性培養皿を20℃で15分間反応後、細胞シートを引き剥がし、ウイルスを感染させない細胞シート写真(c)およびワクシニアウイルスを0.5MOIで感染させた細胞シート写真(d)を示したものである。
【0153】
細胞シートでのワクシニアウイルス複製能の確認
細胞シートの癌細胞層でワクシニアウイルスの複製能を評価するために、
図11aに示されたように、線維芽細胞第1細胞層と癌細胞第2細胞層から構成された細胞シートを形成し、ワクシニアウイルスを0.1MOIで感染させた後、4時間目に感染しないワクシニアウイルスを全部洗浄して除去した後、24時間、48時間、72時間目に細胞培養液と細胞シートからQ-PCRを通じてワクシニアウイルスを確認した。
【0154】
図11bに示されたように、ワクシニアウイルスは、感染後72時間まで時間によって細胞シート内で効果的に複製して、細胞シートがワクシニアウイルスの複製を許容することを立証した。
【0155】
ワクシニアウイルスによる細胞シートの細胞死滅の確認
ウイルス感染による細胞シートの細胞死滅を確認するために、
図11aに示されたように、線維芽細胞第1細胞層と癌細胞第2細胞層から構成された細胞シートを形成し、ワクシニアウイルスを2または5MOIで感染させた後、死滅した細胞を赤色で染色できる7-AAD dyeを添加して、時間による細胞死滅を確認した。
【0156】
図12aから分かるように、2または5MOIでワクシニアウイルスを感染させた細胞シートの全部で時間によって死滅した細胞の数が増加することを確認し、写真での赤色を帯びる面積を定量化した(
図12b)。
【0157】
図11と
図12の結果を総合すれば、細胞シートは、アデノウイルスだけでなく、ワクシニアウイルスの感染も可能であり、その複製が可能にし、ウイルスの複製によって細胞シートが生分解性を有することを立証した。
【0158】
放射線を照射した癌細胞の細胞生存能の確認
多様な強さの放射線を照射(1、5、10、15、30、50Gy)したU343細胞の細胞生存能をMTTアッセイを通じて確認した。1Gyの放射線を照射したU343細胞株は、放射線を照射しない細胞(対照群)と類似した程度に細胞が分裂し、5Gyの放射線を照射した場合、細胞の分裂速度が対照群に比べて遅れ、7日目以後には、細胞が死滅し始めた。10~50Gyの放射線を照射したU343の場合、細胞の分裂がほとんど起こらなく、6日目に全部死滅した(
図13)。
【0159】
放射線照射された癌細胞を含む細胞シートにおけるアデノウイルス複製能の確認
細胞シートの放射線が照射された癌細胞層でウイルスの複製能を評価するために、
図11aに示されたように、線維芽細胞第1細胞層と癌細胞第2細胞層から構成された細胞シートを形成し、アデノウイルスを0.5MOIで感染させた後、4時間目に感染しないアデノウイルスを全部洗浄して除去した後、24時間、48時間、72時間目に細胞培養液と細胞シートからQ-PCRを通じてアデノウイルスを確認した。その結果、放射線が照射された癌細胞でもアデノウイルスの複製が起こることを確認した(
図14)。
【0160】
討議
肝臓で慢性ストレスによって頻繁に発生する多発性肝細胞癌腫は、突然変異が大きく、多くの肝臓を覆って、多くの患者で治癒切除手術を施行し難い。
【0161】
切除手術を受ける患者さえも再発率が高いので、5年生存率が50%である予後が良くない。
【0162】
また、この患者において広範囲な肝損傷は、これらの薬物が激しい肝毒性を起こすので、適切な量の化学療法剤を全身投与しないようにする。
【0163】
伝統的なHCC治療オプションのこのような限界を解決するために、HCCの多病巣性同所に腫瘍殺傷Adを効率的に伝達するために、生分解性およびAd複製許容細胞シートを生成した。
【0164】
細胞シート伝達プラットホームのウイルス複製許容性質は、他の通常の治療経路(oncolytic Adの多くの地域および全身投与には、1~5×1010VPが必要である)と比較して比較的低いウイルス用量を有する多病巣性肝細胞癌の効果的な治療を可能にする。
【0165】
同等なウイルス用量で、oc-DCN/CFCS治療は、長期的な腫瘍殺傷Ad放出につながって、naked oAd-DCNの全身または局所投与より優れた腫瘍成長抑制および多発性肝細胞癌形成の予防を示す(
図6)。
【0166】
これに関する説明の一つは、ウイルス複製を媒介とする細胞溶解およびCFCSから放出された腫瘍に到達する多くのビリオンが、多病巣性腫瘍部位の広い領域を感染させることができることである。
【0167】
究極的に、長時間間治療用ウイルスの感染性を維持することは、臨床試験で主要な障害物として残っている。ハイドロゲル、パッチおよび治療剤の局所化および治療効能を向上させるために現在開発されている腫瘍内注射のようないくつかの他の局所伝達プラットホームがある[Pesonen,S.,L.Kangasniemi,and A.Hemminki,Oncolytic adenoviruses for the treatment of human cancer:focus on translational and clinical data.Mol Pharm,2011.8(1):p.12-28;Wang,C.,et al.,Enhanced Cancer Immunotherapy by Microneedle Patch-Assisted Delivery of Anti-PD1 Antibody.Nano Lett,2016.16(4):p.2334-40;Kasala,D.,et al.,Evolving lessons on nanomaterial-coated viral vectors for local and systemic gene therapy.Nanomedicine(Lond),2016.11(13):p.1689-713]。このようなプラットホームの主な問題点の一つは、ポリマー、リポソームおよびナノ粒子のような合成成分を頻繁に使用するということであり、分解生成物は、炎症およびその他副作用を誘発しうるということである。しかしながら、本発明の腫瘍殺傷ウイルスが搭載された細胞シート(例えば、oAd-DCN/CFCS)は、既存の他の局所伝達プラットホームとは異なって、合成成分が全く含まれていないので、生体適合性および分解性に優れている。クリニックでCFCS接近法に対する重要な関心と障害物の一つは、他の腫瘍を生成することができるので、ウイルス複製を支援する癌細胞層を使用することである。このような憂慮を解消するために、放射線照射された癌細胞を利用してCFCSを生成させて、初期移植後に癌細胞層の撲滅を誘導して、ウイルス複製を支援した(
図13)。また、放射線照射は、細胞シート層にウイルス複製を強化させた(
図14)。
【0168】
このような結果は、放射線によるDNA損傷と補助的な放射線治療を通じて腫瘍殺傷Adの複製が向上することができることを示し、DNA復旧を加速化すれば、エピゾーム性アデノウイルスDNAの複製をさらに大きくすることができる。
【0169】
さらに、放射線照射された癌細胞は、現在癌ワクチンの有望な候補として評価されている。腫瘍ワクチンと腫瘍殺傷Adの同時伝達のための有望な免疫療法プラットホームになりうる潜在性を示す腫瘍特異的免疫反応を認知し、誘導する宿主免疫系に対する腫瘍関連抗原を提供することができるためである。
【0170】
腫瘍殺傷Ad(oncolytic Ads)のCFCS媒介伝達の潜在的な免疫学的調節は、現在未来研究として評価されている。
【0171】
結論
本発明の一部実施例は、腫瘍殺傷ウイルスと細胞シートを結合して、多病巣性腫瘍治療のための効率的な伝達システムを作り、このようなシステムは、効率的な増幅と持続的な放出を示し、許容細胞シートによるoAdの非特異的排出を防止した。
【0172】
結論的に、本発明の一部の実施例は、既存の癌遺伝子治療法の限界を克服することによって、腫瘍殺傷ウイルス/細胞シートシステムの使用が腫瘍殺傷ウイルスの治療効果を最大化することができることを示す。
【0173】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。特に、本願で記述した実施例では、一部のウイルスに対する使用のみを例示しているだけであり、他のウイルスシステムにも変更可能である。