IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーベルハルト カールス ウニベルジテート テュービンゲンの特許一覧

<>
  • 特許-生体模倣オルガノイド培養物 図1
  • 特許-生体模倣オルガノイド培養物 図2
  • 特許-生体模倣オルガノイド培養物 図3
  • 特許-生体模倣オルガノイド培養物 図4A-B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】生体模倣オルガノイド培養物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240119BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C12N5/071
C12M1/00 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020540673
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076645
(87)【国際公開番号】W WO2019068640
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】102017217738.1
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520118625
【氏名又は名称】エーベルハルト カールス ウニベルジテート テュービンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロスキル,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リーバウ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アヒベルガー,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ハデルスペック,ヤスミーン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-501633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
C12M 1/00-42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に半透膜(33)を備えたバイオリアクター容器(30)を含むバイオリアクターシステム内でオルガノイド組織(10)の生体模倣共培養をする方法であって、
(a)少なくとも1種の第1の細胞種の細胞を膜(33)上に播種するステップと、
(b)前記播種細胞を培養して、前記膜(33)に支持された少なくとも1層のコンフルエントな2D細胞層(20)を形成させるステップと、
(c)バイオリアクター容器(30)内の前記支持されたコンフルエントな2D細胞層(20)上へ、
- 互いに対して規定の3D構造で配置されている少なくとも2種の更なる細胞種の細胞を含むオルガノイド(10)、及び
- ヒドロゲル(15)
を導入するステップであって、バイオリアクター容器(30)内のオルガノイド(10)が、導入されたヒドロゲル(15)を介して、前記支持されたコンフルエントな2D細胞層(20)から離れて位置することを条件とするステップと
を含
コンフルエントな2D細胞層(20)の頂端極(22)は、オルガノイド(10)の方向を向いており、かつコンフルエントな2D細胞層(20)の基底極(24)は、膜(33)に向けて反対方向を向いており、
基底潅流チャネル(34)が、バイオリアクターシステムにおいて提供されており、かつコンフルエントな2D細胞層(20)の基底極(24)の潅流を可能とし、かつ
オルガノイド(10)は、少なくとも光受容体細胞、及び脊椎動物の神経網膜の少なくとも1種の更なる細胞種の細胞を含む網膜オルガノイドであり、かつコンフルエントな2D細胞層(20)が、網膜色素上皮細胞の単層である、方法。
【請求項2】
ステップ(c)において、バイオリアクター容器(30)内のオルガノイド(10)が、導入されたヒドロゲル(15)を介して、バイオリアクター容器(30)の壁部(38)からも離れていることを更なる条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)において、オルガノイド(10)がヒドロゲル(15)と共にバイオリアクター容器(30)内に導入される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)が、
(c1)ヒドロゲルの一部を導入して、コンフルエントな2D細胞層(20)に対して、及び場合によりバイオリアクター容器(30)の壁部(38)に対して規定の間隔層(18)を形成させるサブステップと、次いで
(c2)形成されたヒドロゲル間隔層(18)上にオルガノイド(10)を導入するサブステップとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
底部の半透膜(33)上のコンフルエントな2D細胞層(20)の培養において、その基底極(24)がその頂端極(22)と別に潅流される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
底部に半透膜(33)を備えたバイオリアクター容器(30)を含むバイオリアクターシステム内のin vitro組織培養物であって、
- 半透膜(33)上の少なくとも第1の細胞種を含むコンフルエントな2D細胞層(20)と、
- 互いに対して規定の3D構造で配置されている少なくとも2種の更なる細胞種の細胞を含むオルガノイド(10)と、
- オルガノイド(10)がバイオリアクター容器(30)内で埋設されており、コンフルエントな底部の2D細胞層(20)から規定の距離離れて位置している、ヒドロゲル(15)と
を含
コンフルエントな2D細胞層(20)の頂端極(22)は、オルガノイド(10)の方向を向いており、かつコンフルエントな2D細胞層(20)の基底極(24)は、膜(33)に向けて反対方向を向いており、
基底潅流チャネル(34)が、バイオリアクターシステムにおいて提供されており、かつコンフルエントな2D細胞層(20)の基底極(24)の潅流を可能とし、かつ
オルガノイド(10)は、少なくとも光受容体細胞、及び脊椎動物の神経網膜の少なくとも1種の更なる細胞種の細胞を含む網膜オルガノイドであり、かつコンフルエントな2D細胞層(20)が、網膜色素上皮細胞の単層である、in vitro組織培養物。
【請求項7】
オルガノイド(10)のコンフルエントな2D細胞層(20)に対する規定の距離が、1μm~100μm、好ましくは2μm~20μmである、請求項6に記載のin vitro組織培養物。
【請求項8】
オルガノイド(10)が、バイオリアクター容器(30)の壁部(38)からも離れているように、ヒドロゲル(15)中に埋設されている、請求項6又は7に記載のin vitro組織培養物。
【請求項9】
第1の2D細胞層(20)が、膜(33)の、オルガノイド(10)に向いた上面に配置されている、請求項6~8のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
【請求項10】
更なる2D細胞層(25)が、膜(33)の、オルガノイド(10)と反対側の下面に配置されている、請求項9に記載のin vitro組織培養物。
【請求項11】
膜(33)の、オルガノイド(10)と反対側の下面にある更なる2D細胞層(25)が、内皮細胞を含む又は内皮細胞からなる、請求項10に記載のin vitro組織培養物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体模倣スケール(microphysiological scale)で臓器様機能を有する生体細胞及び組織の培養の分野にあり、3Dオルガノイド組織及び少なくとも1層の2D細胞層の生体模倣共培養をする方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
人体の遺伝病又は特発性疾患の研究並びに予防及び治療剤の開発において倫理的に問題があり費用のかかる動物モデルと置き換えることができる、細胞性及び幹細胞性in vitroモデルが開発されている。
【0003】
生体模倣(MPS)システム又はいわゆる「組織チップ」(OoaC)システムにより、肺、心臓、腸、腎臓等の特定の組織を再構成するために細胞株、初代細胞、胚起源又は人工多能性幹細胞(iPSC)等の内因性細胞の培養が生理的条件下で可能となる。幾つかの細胞種に由来する複雑な幹細胞性臓器系、いわゆるオルガノイドが開発された。オルガノイドは、in vitroでの分化の間に、わずかな外部シグナル分子の影響下で主として独立且つ自己組織的に生ずる。そのための例は、膵臓オルガノイド、腸オルガノイド、脳オルガノイド又は網膜オルガノイドである。オルガノイドは、集合して自己組織的に複雑な細胞集団となるため、ある程度までは生理学的関連性をシミュレートすることができる。こうして、患者の内因性幹細胞(個別化されたiPS細胞)から特異的に、特に個別化療法の開発、薬物の効果(薬物スクリーニング)及び薬物の安全性(薬物安全性)に関するマススクリーニングのために、又は疾患の基礎及び臓器系における生理学的関連性を研究するために使用することができる、患者特異的なin vitroオルガノイド系を得ることができる。
【0004】
目下、そのようなオルガノイドの培養に際して血管の供給が行われないこと、特にまたある特定の胚の成熟度を超えるオルガノイドの発達を保証できないことが欠点であり、オルガノイド内に含まれていない細胞種との相互作用又はそれらの非生理的な細胞配向の場合の相互作用を保証できないことも欠点である。こうして、公知の培養方法では、おそらく供給及び相互作用の欠如により供給不足、細胞死及び非生理的状態が引き起こされ、in vitroで見出された知見の有用性が妨げられる。
【0005】
特に有望なオルガノイド系として、多層の網膜での複雑な相互作用をシミュレート可能にし得る、いわゆる網膜オルガノイドが挙げられる。網膜オルガノイドは、特に患者特異的なiPS細胞から取得することができ、胚の状況と類似した複雑な相互関係において神経網膜:光受容体、網膜ニューロン及びグリア細胞の全ての細胞種を含む。人間の失明の主な原因である加齢性黄斑変性症(AMD)又は網膜色素変性症(RP)等の一般的で重篤な網膜疾患の予防及び治療は、できるだけ生理的な網膜臓器系を開発するための重要な動機付けである。しかしながら、できるだけ生理的な網膜を形作るには、目下の網膜オルガノイド系では、a)光受容体(とりわけ、その外節)と網膜色素上皮細胞(RPE)との細胞間相互作用、b)色素上皮下内皮細胞と脈絡膜の血管との結合、及びc)とりわけRPEの相互作用領域における生理的細胞外マトリックス(ECM)、いわゆる光受容体間マトリックスが欠落している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、公知のオルガノイド培養物の上述の欠点、特に不完全な成熟、細胞死及び細胞相互作用の欠如を克服する、特に患者特異的な細胞、とりわけiPS細胞から予防又は治療剤を研究及び開発するために臓器様の臓器系の改善された培養をする方法及び手段を提供する技術的課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題は、特に生体模倣スケールで、底部に半透膜を備えたバイオリアクター容器内でオルガノイド組織の共培養をする方法によって完全に解決される。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
底部に半透膜(33)を備えたバイオリアクター容器(30)内でオルガノイド組織(10)の生体模倣共培養をする方法であって、
(a)少なくとも1種の第1の細胞種の細胞を膜(33)上に播種するステップと、
(b)前記播種細胞を培養して、前記膜(33)に支持された少なくとも1層の2D細胞層(20)を形成させるステップと、
(c)バイオリアクター容器(30)内の前記支持2D細胞層(20)上へ、
- 互いに対して規定の3D構造で配置されている少なくとも2種の更なる細胞種の細胞を含むオルガノイド(10)、及び
- ヒドロゲル(15)
を導入するステップであって、バイオリアクター容器(30)内のオルガノイド(10)が、導入されたヒドロゲル(15)を介して、前記支持2D細胞層(20)から離れて位置することを条件とするステップと
を含む、方法。
[項目2]
ステップ(c)において、バイオリアクター容器(30)内のオルガノイド(10)が、導入されたヒドロゲル(15)を介して、バイオリアクター容器(30)の壁部(38)からも離れていることを更なる条件とする、項目1に記載の方法。
[項目3]
ステップ(c)において、オルガノイド(10)がヒドロゲル(15)と共にバイオリアクター容器(30)内に導入される、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
ステップ(c)が、
(c1)ヒドロゲルの一部を導入して、2D細胞層(20)に対して、及び場合によりバイオリアクター容器(30)の壁部(38)に対して規定の間隔層(18)を形成させるサブステップと、次いで
(c2)形成されたヒドロゲル間隔層(18)上にオルガノイド(10)を導入するサブステップとを含む、項目1又は2に記載の方法。
[項目5]
底部の半透膜(33)上の2D細胞層(20)の培養において、その基底極(24)がその頂端極(22)と別に潅流される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
底部に半透膜(33)を備えたバイオリアクター容器(30)内のin vitro組織培養物であって、
- 半透膜(33)上の少なくとも第1の細胞種を含む2D細胞層(20)と、
- 互いに対して規定の3D構造で配置されている少なくとも2種の更なる細胞種の細胞を含むオルガノイド(10)と、
- オルガノイド(10)がバイオリアクター容器(30)内で埋設されており、底部の2D細胞層(20)から規定の距離離れて位置している、ヒドロゲル(15)と
を含む、in vitro組織培養物。
[項目7]
オルガノイド(10)の2D細胞層(20)に対する規定の距離が、1μm~100μm、好ましくは2μm~20μmである、項目6に記載のin vitro組織培養物。
[項目8]
オルガノイド(10)が、バイオリアクター容器(30)の壁部(38)からも離れているように、ヒドロゲル(15)中に埋設されている、項目6又は7に記載のin vitro組織培養物。
[項目9]
第1の2D細胞層(20)が、膜(33)の、オルガノイド(10)に向いた上面に配置されている、項目6~8のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
[項目10]
更なる2D細胞層(25)が、膜(33)の、オルガノイド(10)と反対側の下面に配置されている、項目9に記載のin vitro組織培養物。
[項目11]
2D細胞層(20、25)の細胞種が、
- 上皮細胞、
- 上皮様細胞、
- 内皮細胞、
- 線維細胞及び/又は線維芽細胞を含む間質細胞、並びに
- 筋芽細胞、筋細胞、及び/又は筋線維を含む筋肉細胞
から選択される、項目6~10のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
[項目12]
膜(33)の、オルガノイド(10)に向いた上面にある第1の2D細胞層(20)が、上皮細胞を含む又は上皮細胞からなる、項目9~11のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
[項目13]
膜(33)の、オルガノイド(10)と反対側の下面にある更なる2D細胞層(25)が、内皮細胞を含む又は内皮細胞からなる、項目12に記載のin vitro組織培養物。
[項目14]
オルガノイド(10)が、網膜オルガノイド、脳オルガノイド、膵臓オルガノイド、及び腸オルガノイドを含む、自己組織化多細胞種組織、又は細胞プリントによって製造可能な規定の3D構造を有する多細胞種組織の群から選択される、項目6~13のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
[項目15]
オルガノイド(10)が、少なくとも光受容体細胞、及び脊椎動物の神経網膜の少なくとも1種の更なる細胞種の細胞を含む網膜オルガノイドであり、かつ2D細胞層(20)が、網膜色素上皮細胞由来のコンフルエントな単層である、項目6~14のいずれか一項に記載のin vitro組織培養物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】底部に半透膜(33)を備えた支持体(36)上にバイオリアクター容器(30)を備えるバイオリアクターシステムの第1の実施形態の概略断面図である。その中には、本発明により培養されたin vitro組織培養物が配置されており、それは、3Dオルガノイド(10)に対して規定の間隔で配置され、膜(33)上に支持されている少なくとも1層、好ましくは単層の2D細胞層(20)と一緒に共培養された3Dオルガノイド(10)からなる。バイオリアクター容器(30)内のオルガノイド(10)は、その下にある2D細胞層(20)の上方に浮かんでいる。示された実施形態では、2D細胞層(20)は、上皮細胞由来のコンフルエントな細胞層である。細胞層の頂端極(22)はオルガノイド方向を向き、基底極(24)は反対方向を向いており、基底極(24)は、示された実施形態では膜(33)上に載っている。バイオリアクターシステムには、2D細胞層(20)の基底極(24)の潅流を可能にする基底潅流チャネル(34)が設けられている。支持体(36)は、好ましくは、透過型光学顕微鏡による検査を可能にするために透明基材、スライドガラスである。
図2図1によるバイオリアクターシステムの実施形態の一変形形態の概略断面図である。半透膜(33)は、そのオルガノイドに向いた面に第1の2D細胞層(20)を有し、反対側の基底面に第2の2D細胞層(25)を有する。示された実施形態では、第1の2D細胞層(20)は、上皮細胞由来のコンフルエントな細胞層であり、第2の2D細胞層(25)は、内皮細胞由来のコンフルエントな細胞層である。基底潅流チャネル(34)を介して、2D細胞層(20)の基底極(24)の潅流が可能である。追加の頂端潅流チャネル(32)は、2D細胞層(20)の頂端面及びオルガノイド(10)の別の潅流を可能にする。
図3図1及び図2の概略図を踏まえて、バイオリアクターシステムのコロニー形成段階並びに網膜色素上皮(RPE)及び内皮層(EN)の共培養における網膜オルガノイド(RO)に基づいて形成されたin vitro組織の培養段階を示す図である。ステップAにおいて、底部に半透膜を備えたバイオリアクター容器を準備する。膜を任意にインキュベートによってラミニン(1)で覆う。ステップBにおいて、個別のRPE細胞(2)を懸濁液で膜に加え、増殖させてコンフルエントに成長するまでインキュベートする。ステップCにおいて、膜の基底側に内皮細胞を定着させる。工程Dにおいて、RPE細胞層(2)上に、間隔層としての役割を果たすヒドロゲルの第1の層(4)を加える。ステップEにおいて、網膜オルガノイド(5)をヒドロゲルと一緒に間隔層(4)上に入れる。ステップFにおいて、ヒドロゲル中に埋設され、RPE及び基底内皮に対して規定の間隔を取るROからなる、最終的なin vitro組織培養物(6)が形成される。ステップF以降に、ROの生理的成熟及びROの光受容体とRPE細胞との生理的相互作用が起こる。示された実施形態では、網膜オルガノイドの潅流は、バイオリアクターの基底潅流チャネルを介して、内皮層及び色素上皮層を通じて行われる。
図4A-B】蛍光体標識されたiPS-RPEと蛍光体が結合されたPNA-レクチン(ピーナッツ凝集素)により外節が標識されたiPS-ROとによる「生細胞イメージング」を示す図である(図4A)。iPS-ROに対するiPS-RPE組織の規定の配置は、図4Bに示されている。iPS-ROの内節/外節をPNA-レクチンにより標識した後に、GFP標識されたiPS-RPEと一緒に共培養する。RPE(下方)及び球状のRO(上方)の境界は破線で示されている(縮尺:40μm、d=RO-RPEの間隔)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、ステップ(a):少なくとも1種の第1の細胞種の細胞をバイオリアクター容器内の膜上へ播種するステップと、ステップ(b):上記播種された細胞を培養して、上記膜上に1層の、特にコンフルエントな支持された2D細胞層を形成するステップと、特にその直後にステップ(c):規定の3D構造に互いに配置されている少なくとも2種の更なる細胞型の細胞を含むオルガノイド及びヒドロゲルをバイオリアクター容器(30)内の上記支持2D細胞層(20)上へ導入するステップであって、特にオルガノイドが、それが導入されたバイオリアクター容器内で、事前に及び/又は同時に導入されたヒドロゲルを介して上記支持2D細胞層から規定の間隔で保持されることを条件とするステップとを含む。この間隔は、好ましくはin vivoで相互作用する細胞間の寸法に相当し、それを以下でより詳細に説明する。
【0010】
したがって、本発明は特に、複数の細胞種の3D構造を有する3Dオルガノイドを、少なくとも1種の更なる細胞種の細胞由来の少なくとも1層の2D細胞層、すなわち特に単層の上に規定の間隔で配置することを意図している。それによって、3Dオルガノイドの少なくとも1種の細胞種とその下にある2D単層の少なくとも1種の更なる細胞種との間の制御可能な生理的に適切な相互作用が可能となる。3Dオルガノイドの細胞をその下にある2D単層の上方に生理的に適切に供給することも場合により可能となる。それにより、供給されるオルガノイドを生理的に適切な条件下で培養することが可能となり、臓器組織の改善された成熟及び分化が達成され、望ましくない細胞死は回避される。有利には、3Dオルガノイドと2D細胞層との間の安定な相互作用が達成され、したがって調査されるため、こうしてin vivoの臓器の複雑な構造及び機能を反映する臓器に特有のサンドイッチ培養物が得られる。
【0011】
好ましい変形形態では、ステップ(c)において、バイオリアクター容器内のオルガノイドは、導入されたヒドロゲルを介して、バイオリアクター容器の壁部からも更に間隔を取る更なる条件を適用することを意図している。この好ましい変形形態によれば、導入されたオルガノイドは、いわばバイオリアクター容器内で容器壁部との機械的接触なしに、及びその下にある少なくとも1層の2D細胞層に対して規定の、すなわち制御可能な又は予め決めることが可能な間隔を取って浮いている。それは、オルガノイドの培養の結果を更に改善することを可能にし、細胞死が減り、特にオルガノイド内の細胞種の自己組織的な構造化は、培養の過程で、得られる細胞の成熟した、すなわち十分に完全に形成された積層及び構造につながる。
【0012】
バイオリアクター容器内で3Dオルガノイドを2D細胞層から、本発明により間隔を取ることを可能にするために、第1の変形形態では、ステップ(c)において、オルガノイドをヒドロゲルと一緒にバイオリアクター容器へ導入することを意図している。オルガノイドを、最初は液相で存在する規定の容量のヒドロゲル中で、容器内の上記支持2D細胞層上へ流し込み、又は場合によりポンプで送り、ヒドロゲルはそこで硬化するが、その間オルガノイドは、ヒドロゲル中で浮遊しており、規定の間隔で2D細胞層の上に浮いており、場合により容器の壁部からも間隔を取っていることを意図している。所望の規定の間隔は、特にステップ(c)で加えられるヒドロゲルの液相から固相への遷移(硬化)の時間推移によって、その粘度との関連で決定される。粘度は、オルガノイドがヒドロゲル中でその下にある2D細胞層の方向に沈下する時間を決める。ヒドロゲルが硬化すると、オルガノイドの更なる沈下は妨げられ、2D細胞層に対する予め決められた間隔が達成される。
【0013】
代替的な変形形態では、ステップ(c)はサブステップを含み、特に、少なくとも1つの第1のサブステップ(c1):ヒドロゲルの一部を、好ましくは液体ゾルとして導入し、それと関連してゲルに硬化させて、まず2D細胞層に対するヒドロゲル製の1層の規定の間隔層を形成するステップと、引き続き第2のサブステップ(c2):形成されたヒドロゲル間隔層上にオルガノイドを、特に好ましくは液体ゾルとしてのヒドロゲル中で導入し、それと関連してゲルに硬化させて、オルガノイドを容器内で、場合により容器の壁部からも間隔を取って固定化するステップとを含むことを意図している。所望の規定の間隔は、特にステップ(c1)で加えられるヒドロゲル成分の量/容量によって決定される。
【0014】
好ましい実施形態では、培養に際して、膜に支持された少なくとも1層の2D細胞層は、その基底極、すなわちオルガノイドと反対の面が、その頂端極、すなわちオルガノイドに向いた面と別に潅流されることを意図している。それによって、培養されるオルガノイドの適切な生理的な供給は、少なくとも1層の2D細胞層を通じて達成される。さらに、少なくとも1層の2D細胞層の適切な生理的機能は、とりわけこれらが頂端極及び基底極への極性化を形成する又は形成することが意図される場合に達成できる。それと有利に関連しているのは、2D細胞層とオルガノイドとの適切な生理的な相互作用である。こうして、in vivoでの臓器の生理的状態及び機能を十分に再現する最適に改善されたin vitroオルガノイド系を提供することができる。
【0015】
したがって、本発明の主題はまた、本発明による方法によって製造可能であるin vitro組織培養物である。このin vitro組織培養物は、本発明によれば、底部に半透膜を備えたバイオリアクター容器内に収容されており、好ましくは、半透膜に支持された少なくとも1種の第1の細胞種を含む少なくとも1層の2D細胞層と、規定の3D構造に互いに配置されている少なくとも2種の更なる細胞種の細胞を含むオルガノイドと、ヒドロゲルとを含み又はそれらからなり、オルガノイドはバイオリアクター容器内で埋設されており、上記支持2D細胞層に対して規定の間隔で配置されており、好ましくはバイオリアクター容器の壁部に対しても間隔を取っている。
【0016】
好ましい変形形態では、2D細胞層に対するオルガノイドの規定の間隔は、1μm~200μm、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは2μm~20μm、特に好ましくは2μm~15μmである。
【0017】
全ての細胞は、ヒト起源又は動物起源であってよく、マウス及びラットが好ましい。細胞は、胚性幹細胞、又は好ましくは代替的に人工多能性幹細胞(iPS)から取得することができる。細胞は、胚性組織又は成熟した組織から採取されたものであってよく、ヒト胚性細胞は好ましくは除外される。
【0018】
in vitro組織培養物の特定の実施形態では、2D細胞層の少なくとも1種の第1の細胞種は、上皮細胞、色素上皮細胞、又は上皮様細胞株、例えばARPE-19;内皮細胞;線維細胞及び/又は線維芽細胞を含む間質細胞;並びに筋芽細胞、筋細胞及び/又は筋線維を含む筋肉細胞から選択される。好ましくは内皮細胞と組み合わせた上皮細胞が特に好ましく、上皮細胞を含む、及び好ましくは上皮細胞からなる第1の2D細胞層が、膜の、オルガノイドに向いた上面に配置されている。特に好ましくは、内皮細胞を含み、好ましくは内皮細胞からなる更なる2D細胞層が、膜の、オルガノイドと反対側の下面に配置されている。好ましい変形形態では、2D細胞層の細胞種として、ヒト胚性細胞、特に胚性幹細胞自体は除外されているため、2D細胞層にはそのような細胞は含まれない。
【0019】
好ましくは、オルガノイドは、自己組織化する又は細胞プリントによって製造可能な規定の3D構造を有する多細胞型組織の群から選択される。この群は、好ましくは、網膜オルガノイド、脳オルガノイド、膵臓オルガノイド及び腸オルガノイドを含む、又は好ましくはそれらのみからなる。好ましい変形形態では、3Dオルガノイドの細胞として、ヒト胚性細胞、特に胚性幹細胞自体は除外されているため、該オルガノイドにはそのような細胞は含まれない。
【0020】
in vitro組織培養物の特に好ましい実施形態では、オルガノイドは、少なくとも光受容体細胞及び脊椎動物の神経網膜の少なくとも1種の更なる細胞種の細胞を含む網膜オルガノイドである。この実施形態では、上記支持2D細胞層は、網膜色素上皮細胞由来のコンフルエントな単層である。好ましくは、内皮細胞からなる更なる2D細胞層が、膜の、オルガノイドと反対側の下面に配置されている。
【0021】
本発明はまた、特に患者特異的な予防及び/又は治療方法、特に個人化療法における、予防及び/又は治療剤及び活性物質を開発及び/又は選択するための、本発明による共培養方法及び本発明によるin vitro組織培養物の使用に関する。好ましくは、この方法は、3Dオルガノイド及び、特にまた少なくとも1層の2D細胞層を患者の単離された細胞から、特にiPS細胞から取得することを意図している。
【0022】
本発明を、図面及び以下の実施例によって説明する。
【実施例
【0023】
ヒト網膜の生体模倣システム(MPS)
1.網膜MPSの製造/集成
バイオリアクターを製造するために、MPSの複数の層を、微細構造化されたシリコンウエハー上にポリジメチルシロキサン(PDMS)をキャスティングすることにより製造する。しかしながら、MPSの製造はこの材料に限定されず、ガラス、PC並びにPET及びそれらの組み合わせ物等の他の材料も可能である。それぞれの流し込み型(マスター)の微細構造化はフォトレジスト(SU-8、MicroChem社)のUVリソグラフィーによって実現される。
【0024】
内皮/培地層のキャスティングは、「エクスクルージョン成形(exclusion molding)」(EM)によって行われる。ROの追加の培地供給部を備えるMPSの変形形態では、同様にRPE組織層はEMによって製造される。
【0025】
例えばPET等の材料製の半透膜は、2μm~3μmの細孔サイズ及び10μm~30μmの厚さを有することが望まれる。PDMS及びPETの不可逆的な結合のために、酸素プラズマで事前に処理された膜上に液相からビスアミノシランにより膜の官能化が行われる。この追加の被覆によって、後に同様に酸素プラズマ処理されるPDMS層への膜の不可逆的な結合が生ずる。
【0026】
MPSの集成は幾つかのステップで行われる。まず0.17mm~1mmの厚さを有するスライドガラス上で、キャスティングされた内皮/基底潅流層を、酸素プラズマ中での活性化後に支持体フィルム上に置いてプレスする。結合を強化するために、これらを対流式オーブン内で60℃~80℃で加熱する。内皮/基底潅流層から支持体フィルムを除去する。半透膜並びにRO及びRPE組織層の適用は、複数のステップで行われる。このために、その下にある層に供給口及び排出口用の貫通孔を予め作製する。官能化された半透膜を、そのために意図した載置面へ載置する。最後のステップとして、RO及びRPE組織層を膜と一緒に内皮/基底潅流層の上に載せてプレスし、対流式オーブン内で60℃~80℃で10時間~24時間加熱する。
【0027】
幾つかのそのようなバイオリアクター容器が、1つのMPSにおいて1つの共通の支持体上に並んで配置されていてもよい。
【0028】
2.MPSにおける共培養の確立
初めに、アセンブルされたMPSを50ワットの出力及び0.1Nml/分~0.3Nml/分の酸素ガス流量並びに5分~15分の処理期間で酸素プラズマによって滅菌する。MPSの滅菌は、同様にオートクレーブ処理又はガンマ線照射によって行うこともできる。プラズマ処理の実施後に、RPE細胞の後の接着を可能にするために半透膜の被覆を行う。このために、DMEM/F12とラミニンとの1:10~1:25希釈を適用し、MPSを37℃及び5%のCO2で1時間~4時間の期間にわたりインキュベートする(図3A)。iPS-RPE細胞をプレーティングする前に、余分なラミニン混合物を除去し、MPS全体を培地ですすぐ。既に事前に引き離されたiPS-RPE細胞を、5μl~10μlの容量で直接的に上からRO及びRPE組織チャンバーを通じて膜上に加える。iPS RPE細胞を膜上に接着させることを可能にするために、iPS RPE細胞を37℃及び5%のCO2で30分間~60分間の期間にわたりインキュベートする(図3B)。引き続き、MPS内のiPS RPE細胞を、1日間~3日間の期間にわたり外部のシリンジポンプを介して10μl/時間~20μl/時間の一定の培地流量で培養した。
【0029】
iPS RPE細胞が膜をコンフルエントに覆った後に、膜の下面へのiPS内皮細胞の導入を行う(図3C)。このために、予め引き離したiPS内皮細胞を、内皮/培地チャネルへ注入し、MPSを逆さにして、細胞を膜の下面に沈下させた。iPS内皮細胞の膜への完全な接着を可能にするために、MPSを37℃及び5%のCO2で30分間~60分間の期間にわたりインキュベートした。引き続き、MPSに再び外部のシリンジポンプを介して10μl/時間~20μl/時間の流速で供給した。iPS内皮細胞が膜の下面をコンフルエントに覆った後に、個々のiPS-ROに対してiPS-RPE細胞を正確に隔てるために、ヒドロゲル(特にヒアルロン系ヒドロゲル)を導入した(図3D)。iPS-RPEとiPS-ROとの間の後の10μm~50μmの間隔を実現するために、RO及びRPE組織チャネルを介して又はそれぞれのRO及びRPE組織チャンバーの上方開口部を通じてヒドロゲルを直接注入した。ヒドロゲルの完全な固化後に、各バイオリアクター容器にそれぞれ1つのiPS-ROを上方から直接用いた(図3E)。培養期間中のiPS-ROの移動を防ぐため、このヒドロゲルによってiPS-ROを固定した。ヒドロゲルの導入は、RO及びRPE組織チャンバーの上面を通じた直接的な添加により行われる。
【0030】
引き続き、MPSの外部の培地供給を10μl/時間~20μl/時間の流速で再び回復させた。次いで、MPSを1日間~7日間の期間にわたり培養して、RPEとROの光受容体との間の相互作用を追跡して分析すると共に、様々な活性物質の影響を調査した(図3F)。
【0031】
3.網膜MPSの使用
MPSにおけるiPS-RO及びiPS-RPEの共培養の生理的機能性及び活力は、以下のように検出することができた:
【0032】
3.1 蛍光体標識されたiPS-RPEと蛍光体が結合されたPNAレクチン(ピーナッツ凝集素)により外節が標識されたiPS-ROとによる「生細胞イメージング」による活力検出(図4A及び図4B)。共焦点顕微鏡法による光学的再構成により、MPSにおける両方の組織の接近及び相互作用を示すことができた。最大7日間の培養期間にわたる種々の組織の活力。
【0033】
3.2 MPSにおける光学顕微鏡法及び電子顕微鏡法による組織構造の維持の検出及び形態の評価:両方の組織は予想された外観を示し、アポトーシス又はグリア細胞の活性化の兆候は見られなかった。さらに、RPEと向かい合ったオルガノイドの側面に大きな外節様構造物の形成を観察することができた(マーカーとしてペリフェリン2及びロドプシンを用いる)。これらの構造物は、RPEと反対側のオルガノイドの側面や、従来のオルガノイド培養下では検出することができなかった。
【0034】
3.3 典型的な網膜バイオマーカーの免疫組織学的検出:iPS-ROの免疫組織検査のために、iPS-ROを培養に引き続きMPSから単離し、切片を作製した。iPS-RPE細胞の免疫組織検査はMPS内で直接行われた。iPS-RPE細胞とiPS-ROの両方の最も重要なバイオマーカー(ZO-1、MiTF、RPE65、CHX10、ARR3、RHOD)の発現を示すことができた。
【0035】
3.4 典型的な網膜バイオマーカーの発現を検出するためのリアルタイム定量PCR(qPCR):このために、MPSにおいてiPS-RPE細胞と共に又はiPS-RPE細胞なしのいずれかで培養したiPS-ROを3日間の期間後に使用した。次いでこれらを従来の培養されたiPS-ROと比較した。全ての網膜細胞種について、対応するマーカーの同等の発現をmRNAレベルで検出することができた。同様に、MPSにおけるiPS-RPE培養物を従来の培養物と比較したところ、種々のRPEマーカーの発現についても有意な差を確認することができなかった。
【0036】
3.5 カルシウムイメージング及びファゴサイトーシスアッセイによるMPSにおけるiPS-RO及びiPS-RPEの共培養の機能性の検出:光受容体細胞内の自発的なカルシウム流動を検出することができ、これによりMPSにおいても光受容体の生理的挙動が示された。さらに、外節のPNA-レクチン標識によって、その光受容体細胞による生理的な拒絶を観察することもできる。iPS-RPEは、いわゆるファゴサイトーシスアッセイにおいて外部適用されたウシの外節の取り込み及びファゴサイトーシスを示しただけでなく、生細胞顕微鏡法においては、MPSにおけるこのPNA-レクチン標識された外節の取り込みさえも示した。
【0037】
3.6 MPSにおける更なるin-situ測定法の確立:全体的な免疫組織染色をMPS内で直接的に可能にするために、組織試料を光学的に透明化するための方法であるCLARITYを使用した。この方法によっても、典型的な網膜バイオマーカーを検出することができた。MPS内のiPS-ROをリアルタイム条件下で観察する他の方法は、対応する細胞種のための活性化マーカー遺伝子のプロモーター下で蛍光体が発現され、MPS内での生細胞イメージングを可能にするレポーター細胞株の使用である。この方法によって、光受容体、それらの外節、網膜神経節細胞及び活性化されたグリア細胞をリアルタイム条件下で検出することができた。
【0038】
3.7 医薬試験におけるMPSの使用:このために、公知の網膜症関連の望ましくない薬物効果を有する医薬を使用した。GABAトランスアミナーゼ阻害剤である抗てんかん薬のビガバトリン(Vigabtratin)(VB)は上記物質に当てはまる。このために、MPS内のiPS-ROをVBで20日間の期間にわたり処理した。iPS-ROにおけるグリア細胞の形態変化又は活性化は検出することができなかった。しかしながら、iPS-ROの追加の光曝露によって、11日間のVB処理後に光活性の増加が示された。さらに、光の下での急性VB処理は自発的なカルシウム電流の増加をもたらした。したがって、MPSにおけるVB処理によるこの電気生理学的効果により、患者においても観察される網膜症関連の副作用の証拠が提供された。さらに、いわゆるクロロキン網膜症を引き起こす同様に公知の網膜症関連の作用を有するマラリア薬であるクロロキンの効果を調査した。iPS-RPE細胞を用いた試験により、従来の培養条件下でも、MPSにおいてもリソソームの病的拡大に起因する血管新生が示された。それはリソソームマーカーとしてのLamp2の免疫組織染色によって示された。最後に、MPS内のiPS-ROに対するクロロキンの作用も調査した。iPS-ROの2日間の処理後に、GFAPプロモーター構築物により標識されたグリア細胞の活性化が観察された。
図1
図2
図3
図4A-B】