(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】魚類の体表の寄生虫感染症の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20240119BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240119BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 33/10 20060101ALI20240119BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K35/74
A61P33/00 171
A61P33/10
C12N1/20 E
(21)【出願番号】P 2020545461
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081923
(87)【国際公開番号】W WO2019101739
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-26
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】CBS CBS 143505
(73)【特許権者】
【識別番号】520167276
【氏名又は名称】ネダーランズ インスティテュート フォー エコロジー (エヌアイオーオー-ケイエヌエーダブリュー)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDS INSTITUUT VOOR ECOLOGIE (NIOO-KNAW)
(73)【特許権者】
【識別番号】513004906
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・コペンハーゲン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF COPENHAGEN
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】デ ブリュイン イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】ラーイメイカーズ ジョセフス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブッフマン クルト
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】Liu Y, Rzeszutek E, van der Voort M, Wu C-H, Thoen E, Skaar I, et al.,Diversity of Aquatic Pseudomonas Species and Their Activity against the Fish Pathogenic Oomycete Saprolegnia,PLoS ONE,2015年,Vol. 10, No. 8,e0136241,https://doi.org/10.1371/journal.pone.0136241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/08
A61K 35/74
A61P 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ビスコシンリポペプチド、(b)マセトリド、及び(c)プチソルビンから選択されるリポペプチドバイオサーファクタントを含む、淡水魚及び海水魚などの魚類におけるウオノカイセンチュウ感染の処置剤。
【請求項2】
バイオサーファクタントが10~1000μg/mlの濃度を有する、請求項1に記載の処置剤。
【請求項3】
淡水魚及び海水魚などの魚類におけるウオノカイセンチュウ感染の処置に使用するための、(a)ビスコシンリポペプチド、(b)マセトリド、及び(c)プチソルビンから選択される少なくとも1種のリポペプチドバイオサーファクタントを含む組成物。
【請求項4】
リポペプチドバイオサーファクタントが、シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能なリポペプチドである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
魚類におけるウオノカイセンチュウ感染の処置に使用するための、(a)シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能なリポペプチド、(b)マセトリド、及び(c)プチソルビンから選択される細菌性リポペプチドバイオサーファクタントを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
バイオサーファクタントが10~1000μg/mlの濃度を有する、請求項3~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
細菌分離株を含む、淡水魚及び海水魚などの魚類におけるウオノカイセンチュウ感染の処置剤であって、前記細菌が、
a)ブダペスト条約の規則の下に、Westerdijk Fungal Biodiversity InstituteのCBSコレクションに寄託番号CBS143505で寄託されたシュードモナス・フルオレッセンスH6株、b)シュードモナス・フルオレッセンスSS101、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25及びシュードモナス・プチダ267から選択され、かつ(a)ビスコシンリポペプチド、(b)マセトリド、及び(c)プチソルビンから選択されるリポペプチド
バイオサーファクタントを産生する、前記処置剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類において白点病(white spot disease)を引き起こす寄生虫感染症の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
淡水魚などの魚類の体表(えら、皮、ひれ)の中及び表面の寄生虫によって引き起こされる魚類における疾患は、食用魚及び観賞魚を対象とする魚類生産業において経済的問題である。重要な一疾患は、特に寄生繊毛虫であるウオノカイセンチュウ(Ichthyophthirius multifiliis)によって引き起こされる淡水魚の白点病であり、世界中で、野生魚及び養殖魚の両方に、高罹患率及び高致死率をもたらしている。
【0003】
現在、幾つかの化学物質が、魚類における、例えば淡水魚における白点病を制御するために適用されている。
【0004】
この疾患の処置に以前使用されていた有機染料であるマラカイトグリーンが禁止されて以降、養魚業者は、過炭酸ナトリウム、硫酸銅、ホルマリン、過酢酸及びトトラズリル(totrazuril)を含む、疾患制御のための複数の化合物を適用している。しかし、これらの化合物は、環境に悪影響を及ぼす可能性がある。また、植物抽出物は、寄生虫のある特定の生活ステージに対して効果があるため、大いに注目されてきており、近年、シナトラトシド-C(cynatratoside-C)、サンギナリン、ジヒドロサンギナリン及びジヒドロケレリトリン、ペンタガロイルグルコースを含む、精製された植物由来の化合物は、実験室内実験において幾つかの抗寄生虫効果を示している。しかしながら、天然、半合成及び合成の植物由来生成物の抗寄生虫効果に関する有望な報告があるにもかかわらず、環境、魚類及びヒトに対するそれらの残留効果及び毒性作用についての問題は未解決のままである。
【0005】
白点病は、淡水及び海水の水産養殖において深刻な経済損失を引き起こす。したがって、魚類における白点病に対する有効で安全な治療薬が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、驚くべきことに、魚類における白点病の処置にリポペプチドサーファクタント(lipopeptide surfactant)を使用することができることが見出された。
【0007】
したがって、本発明は、魚類における白点病の処置におけるリポペプチドサーファクタントの使用に関する。本発明は、特に、白点病の処置における細菌性リポペプチドサーファクタントの使用に関する。
【0008】
さらに、そのような処置は安全であると考えられ、これは、有効なリポペプチドバイオサーファクタント(lipopeptide biosurfactant)濃度での数時間のインキュベーション後、魚類が即時型の有害な徴候も、遅延型の有害な徴候も示さなかったからである。
【0009】
したがって、サーファクタントリポペプチドは、水産養殖される魚類における抗寄生虫制御剤として、用途を見出すことができる。
【0010】
この目的のため、魚類又は魚用水槽の水を、単離されたサーファクタントリポペプチド、又はこのリポペプチドを含有する組成物若しくは製剤で処置することができる。
【0011】
代替として、魚類を、細菌が前記リポペプチドバイオサーファクタントを産生することができる細菌分離株(bacterial isolate)で処置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】シュードモナス・フルオレッセンスH6リポペプチドバイオサーファクタント(PS,Pseudomonas fluorescens H6 lipopeptide biosurfactant)の効果。3つの生活ステージの自由生活性ウオノカイセンチュウを、水中濃度系列のPSと共にインキュベートし、PSを加えていない対照水中の寄生虫と比較した。寄生虫の致死率を、処置後0分、15分、30分、45分、75分、60分、120分及び180分の各時点で記録した。A.トモント、B.トモシスト、C.セロント。
【
図2】PSの作用を受けたウオノカイセンチュウの、魚類の皮から放出されたトモント、及びトミーテを囲い込んでいるトモシスト。A)PSを加えていないトモント。B)PSへの30秒間の曝露後の、トミーテを囲い込んでいるトモシスト。C)15分間のPS曝露後の、膜破壊及び細胞質の放出を示すトモント。D)15分間のPS曝露後の、嚢胞の中心に死んだトミーテを囲い込んでいるトモシスト。
【
図3】セロントの数に対するバイオサーファクタントの効果。試験したバイオサーファクタントは、シュードモナス・フルオレッセンスSS101から得たマセトリド、シュードモナス・プチダ267に由来するプチソルビン様バイオサーファクタント、及びシュードモナス属(Pseudomonas)H6のビスコシン様バイオサーファクタントであった。この図には、次のデータ、(1)水対照;(2)0.15mg/mlビスコシン(H6);(3)0.015mg/mlビスコシン(H6);(4)0.15mg/mlマセトリド(SS101);(5)0.015mg/mlマセトリド(SS101);(6)0.15mg/mlプチソルビン(267);(7)0.015mg/mlプチソルビン(267)が含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、魚類における、例えば淡水魚における及び海水魚における白点病の処置に使用するためのリポペプチドバイオサーファクタントに関する。
【0014】
魚類における白点病を引き起こす寄生虫の例は、イクチオフチリウス科(Ichthyophthiriidae)と名付けられた科の寄生虫であり、特に淡水性白点病を引き起こすウオノカイセンチュウである。さらなる例は、海水性白点病を引き起こす寄生虫であるクリプトカリオン・イリタンス(Cryptocaryon irritans)(当初、イクチオフチリウス・マリヌス(Ichthyophthirius marinus)として分類されていた)である。
【0015】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、ウオノカイセンチュウの感染及びクリプトカリオン・イリタンスの感染によって引き起こされるような白点病の処置に使用するためのリポペプチドバイオサーファクタントに関する。
【0016】
より特定すると、本発明は、淡水魚においてはウオノカイセンチュウの感染によって、海水魚においてはクリプトカリオン・イリタンスによって引き起こされるような白点病の予防に使用するためのリポペプチドバイオサーファクタントに関する。
【0017】
本明細書において、「淡水魚」という用語は、その生活環の少なくともある特定のステージの間、淡水中で生息している魚類に関する。適切な例は、水産養殖において食用に養殖されている魚類[例えば、サケ科魚類{例としては、ニジマス(オンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss))}、コイ科魚類{例としては、ソウギョ(クテノファリンゴドン・イデラ(Ctenopharyngodon idella))、アオウオ(ミロファリンゴドン・ピケウス(Mylopharyngodon piceus))、ハクレン(ヒポフタルミクチス・モリトリクス(Hypophthalmichthys molitrix))、コイ(キプリヌス・カルピオ(Cyprinus carpio))、コクレン(ヒポフタルミクチス・ノビリス(Hypophthalmichthys nobilis))、カトラ(インドゴイ、カトラ・カトラ(Catla catla))、ヨーロッパブナ(カラシウス・カラシウス(Carassius carassius))、ローフー(roho labeo)(ラベオ・ロヒータ(Labeo rohita))}など]、ティラピア{例としては、ナイルティラピア(オレオクロミス・ニロティクス(Oreochromis niloticus))}、サバヒー(カノス・カノス(Chanos chanos))、ナマズ類{例としては、マナマズ(シルルス・アソトゥス(Silurus asotus))}、ダントウボウ(メガロブラマ・アンブリケファラ(Megalobrama amblycephala))、カムルチー(カンナ・アルグス(Channa argus))を含む他の魚類の科、及び水族館で飼育されている広範な観賞魚種である。
【0018】
本明細書で言及する場合、「海水魚」とは、その生涯の少なくとも一部を海洋水中で生息している魚種に関する。その例は、海洋生物養殖システム中で水産養殖用に養殖されている魚類、例えば、ヨーロッパヘダイ(スパルス・アウラトゥス(Sparus auratus))及びヨーロッパスズキ(ディケントラクス・ラブラクス(Dicentrarchus labrax))などである。加えて、海洋水族館で使用されている広範な観賞魚種がこの用語に含まれる。
【0019】
本明細書で言及する場合、「リポペプチドバイオサーファクタント」という表現は、サーファクタント特性を有する(即ち、流体の表面張力を低下させる)、ペプチド、一般に環状ペプチドに結合している脂質からなる分子に関する。リポペプチドバイオサーファクタントは、細菌によって産生することが可能である。一般に、所与の細菌株の内部でリポペプチドサーファクタントをコードする生合成経路によって、単一の主要なリポペプチドサーファクタント、及び主要なリポペプチドサーファクタントの構造的に関連する少量の誘導体が産生される。
【0020】
公知の細菌性リポペプチドバイオサーファクタントは、例えば、サーファクチン及びその誘導体、ダプトマイシン及びその誘導体、マセトリド(massetolide)及びその誘導体、ビスコシン(viscosin)及びその誘導体、タナマイシン(thanamycin)及びその誘導体、並びにプチソルビン(putisolvin)及びその誘導体である。
【0021】
本発明による使用のための適切なマセトリドリポペプチドサーファクタントは、マセトリドA、マセトリドB、マセトリドC、マセトリドD、マセトリドE、マセトリドF、マセトリドG及びマセトリドHである。
【0022】
魚類における白点病の処置は、特に、ウオノカイセンチュウ及びクリプトカリオン・イリタンスのような、魚類における白点病を引き起こす生物の、トモント(tomont)及びトモシスト(tomocyst)の発生を予防することによる、より特定すると、自由生活性のセロント(theront)の発生を予防することによる、白点病の予防を含む。
【0023】
細菌であるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)H6株から取得可能なさらなるビスコシン様(viscosin-like)リポペプチドバイオサーファクタントは、魚類の卵菌病原体であるサプロレグニア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)の遊走子を死滅させることが最近報告され(de Bruijn et al. (2007): de Bruijn I, de Kock MJD, Yang M, de Waard P, van Beek TA, Raaijmakers JM. “Genome-based discovery, structure prediction and functional analysis of cyclic lipopeptide antibiotics in Pseudomonas species.” Molecular Microbiology. 2007; 63(2):417-28、Liu et al. (2015): Yiying Liu, Elzbieta Rzeszutek, Menno van der Voort, Cheng-Hsuan Wu, Even Thoen, Ida Skaar, Vincent Bulone, Pieter C. Dorrestein, Jos M. Raaijmakers, Irene de Bruijn “Diversity of Aquatic Pseudomonas Species and Their Activity against the Fish Pathogenic Oomycete Saprolegnia” PLOSOne; DOI:10.1371/journal.pone.0136241; published 28. August 2016)、このため、ミズカビ属(Saprolegnia)の感染症を制御するのに有用である可能性がある。
【0024】
驚くべきことに、本発明者らは、このシュードモナス・フルオレッセンスH6株のビスコシン様リポペプチドバイオサーファクタントが、ウオノカイセンチュウによって引き起こされる感染症などの、魚類における白点病の処置にも適切に使用され得ることを発見した。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、魚類におけるウオノカイセンチュウの感染の処置に使用するための、シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能な細菌性リポペプチドバイオサーファクタント又はその誘導体に関する。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚における及び海水魚における白点の処置に使用するための、少なくとも1種のリポペプチドバイオサーファクタントを含む組成物に関する。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚におけるウオノカイセンチュウの感染の処置に使用するための、少なくとも1種のリポペプチドバイオサーファクタントを含む組成物に関する。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚における及び海水魚における白点の処置に使用するための、シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能な細菌性リポペプチドバイオサーファクタントを含む組成物に関する。
【0029】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚におけるウオノカイセンチュウの感染の処置に使用するための、シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能な細菌性リポペプチドバイオサーファクタント又はその誘導体を含む組成物に関する。
【0030】
本発明による適切な組成物は、主に、1種又は2種以上のリポペプチド、例えば1又は2以上のリポペプチドを1又は2以上の担体とともに含んでいてもよく、又は、例えばリポペプチドバイオサーファクタントを長時間かけて放出する徐放形態(即ち顆粒剤)を含んでいてもよい。
【0031】
特定の実施形態では、本発明による適切な組成物は、1種又は2種以上のリポペプチドの凍結乾燥溶液を滅菌蒸留水などの水に溶解させることによって、凍結乾燥溶液から調製することができる。
【0032】
代替として、リポペプチドバイオサーファクタントは、水産養殖の中でリポペプチドを産生することができる細菌培養物として、魚類に投与してもよい。
【0033】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、魚類、特に淡水魚及び海水魚における白点の処置に使用するためのリポペプチドサーファクタントを細菌が産生することができる細菌分離株に関する。
【0034】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類、特に淡水魚におけるウオノカイセンチュウの感染の処置に使用するためのリポペプチドサーファクタントを細菌が産生することができる細菌分離株に関する。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚における及び海水魚における白点の処置に使用するためのシュードモナス・フルオレッセンスH6株の細菌分離株に関する。
【0036】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚における白点病の処置に使用するためのマセトリド及び/又は誘導体を細菌が産生することができる細菌分離株に関する。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類における、特に淡水魚における白点病の処置に使用するためのプチソルビン及び/又は誘導体を細菌が産生することができる細菌分離株に関する。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明は、魚類におけるウオノカイセンチュウの感染の処置に使用するためのシュードモナス・フルオレッセンスH6株の細菌分離株又はその派生株に関する。
【0039】
シュードモナス・フルオレッセンスH6株の試料は、2017年11月1日、ブダペスト条約の規則の下に、Westerdijk Fungal Biodiversity InstituteのCBSコレクションに寄託番号CBS143505で寄託された。
【0040】
シュードモナス・フルオレッセンスH6株のリポペプチドバイオサーファクタントの単離及び特徴は、(Liu et al. (2015): Yiying Liu, Elzbieta Rzeszutek, Menno van der Voort, Cheng-Hsuan Wu, Even Thoen, Ida Skaar, Vincent Bulone, Pieter C. Dorrestein, Jos M. Raaijmakers, Irene de Bruijn “Diversity of Aquatic Pseudomonas Species and Their Activity against the Fish Pathogenic Oomycete Saprolegnia” PLOSOne; DOI:10.1371/journal.pone.0136241; published 28. August 2016)によって記載されている。このビスコシン様リポペプチドバイオサーファクタントは、よく知られている関連株のリポペプチドバイオサーファクタント、例えば、シュードモナス・フルオレッセンスSS101から得ることができるマセトリドリポペプチド、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25から得ることができるビスコシンリポペプチド、及びシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)267から得ることができるプチソルビンリポペプチドなどとは明確に区別されることが見出された。
【0041】
これらのリポペプチドバイオサーファクタントは、魚類の病原性繊毛虫であるウオノカイセンチュウに対して強力なインビトロ抗寄生虫効果を有することが示された。ウオノカイセンチュウは、様々な生活環ステージ、感染性のセロントステージ、魚類の表皮の中でのトロフォント(trophont)ステージ、トモント(トロフォントが魚類の皮を離脱した後に水中で到達するステージ)、セロントとして水中に放出されるトミーテ(tomite)を含有するトモシストを有する病原性繊毛虫である。トモント、トモシスト及びセロントを含む生活環ステージは、H6リポペプチドバイオサーファクタントに対して感受性があることが見出だされた。セロントは最も感受性が高く、10μg/ml及び13μg/mlもの低濃度で30分以内に100%致死率を示した。トモントは最も耐性があったが、それでも100μg/ml及び1000μg/mlのより高い濃度で迅速に死滅した。トモシストは、周囲の保護性の嚢胞壁があるため、一般に化学的処置及び医学的処置に対して耐性である。驚くべきことに、トモシストは、シュードモナス・フルオレッセンスH6株に由来するリポペプチドバイオサーファクタントに対して感受性があった。リポペプチドバイオサーファクタントは、10μg/ml及び13μg/mlの低濃度でさえも、(嚢胞壁に浸透し、)囲い込まれているトミーテを数分以内に死滅させた。
【0042】
したがって、このシュードモナス・フルオレッセンスH6株のリポペプチドバイオサーファクタントは、水産養殖される魚類において、特に水産養殖されるマスにおいて、例えばニジマスにおいて、抗寄生虫制御剤としてのさらなる用途が見出され得る。
【0043】
上で述べたように、本発明はまた、白点病の制御のための他のリポペプチドバイオサーファクタントの使用にも関する。例えば、マセトリド及びプチソルビンもまた、魚類において白点病を引き起こす寄生虫の様々な発達ステージに対して顕著なインビトロ活性を示すことが分かっている。
【0044】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、(a)ビスコシン様リポペプチド(シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能なリポペプチドバイオサーファクタントなど)又はその誘導体、(b)マセトリド(シュードモナス・フルオレッセンスSS101株から取得可能なマセトリドサーファクタントなど)又はその誘導体、及び(c)プチソルビン(シュードモナス・プチダ267から取得可能なプチソルビンバイオサーファクタントなど)又はその誘導体から選択されるリポペプチドバイオサーファクタントの、魚類における、特に淡水魚における及び海水魚における白点病の処置における、より特定すると、病原性繊毛虫であるウオノカイセンチュウによって引き起こされる白点病の処置における使用に関する。
【0045】
上記の適用において、本発明によるリポペプチドは、魚類に(例えば魚用水槽の水に)、10~1000μg/ml、例えば10~100μg/mlのリポペプチドバイオサーファクタントの濃度で投与することができる。
【0046】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、(a)ビスコシン様リポペプチド(シュードモナス・フルオレッセンスH6株から取得可能なリポペプチドバイオサーファクタントなど)、(b)マセトリド(シュードモナス・フルオレッセンスSS101株から取得可能なマセトリドバイオサーファクタントなど)又はその誘導体、及び(c)プチソルビン(シュードモナス・プチダ267から取得可能なプチソルビンバイオサーファクタントなど)又はその誘導体から選択されるリポペプチドバイオサーファクタントの、10~1000μg/mlの濃度での、例えば10~100μg/mlの濃度での、魚類における、特に淡水魚における白点病の処置における、より特定すると、病原性繊毛虫であるウオノカイセンチュウによって引き起こされる白点病の処置における使用に関する。
【0047】
処置は、感染が確認された後の1回の処置とすることができる。代替として、処置は、数回、例えば、1日1回又は週1回実施されてもよい。
【0048】
「含む(to comprise)」という動詞及びその活用形を使用する場合、請求項に述べられている要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。文脈上、明らかに他の意味が要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などの用語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味、つまり、「含むが、それに限定されない」の意味に解釈されるべきである。
【0049】
要素に先行する冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。
【0050】
「処置(treatment)」及び「制御(control)」又は「制御すること(controlling)」という用語は、互換的に使用することができ、全て、疾患の予防及び治癒に関係し得る。
【0051】
本特許に論じられている様々な態様は、さらなる利点を提供するために組み合わせることができる。さらに、当業者は、実施形態を組み合わせることができること、及び3以上の実施形態もまた組み合わせることができることを理解されよう。さらに、特徴の一部は、1又は2以上の分割出願の基礎を形成することができる。
【0052】
通知
本特許出願に至るプロジェクトは、欧州連合のホライズン2020研究及び革新的開発プログラムから、合意書第634429号の下で財政的支援を受けている。
[実施例]
【0053】
材料及び方法
寄生虫:
ウオノカイセンチュウのデンマーク株を、元来、無疾患の再循環システム中で養殖したニジマスの実験室集団の中に確立した(Xueqin et al. (2012): Xueqin J, Kania PW and Buchmann K. “Comparative effects of four feed types on white spot disease susceptibility and skin immune parameters in rainbow trout, Oncorhynchus mykiss (Walbaum)” J Fish Dis. 2012 Feb;35(2):127-35)。
【0054】
過去に記載されたように(Aihua, L., Buchmann, K. (2001). “Temperature- and salinity-dependent development of a Nordic strain of Ichthyophthirius multifiliis from rainbow trout.” J Appl Ichthyol 17, 273-276)、寄生虫を、デンマークの商用マス養魚場(Jutland、デンマーク西部)で飼育された、感染したニジマスから採取した。感染した生魚をコペンハーゲン大学に輸送した。
【0055】
安楽死させた魚(300mg/Lのトリカインメタンスルホネート、MS222、Sigma-Aldrich社、デンマーク)から採取したひれ及びえらを、淡水(22℃)を入れたペトリ皿に入れることにより、ウオノカイセンチュウ寄生虫を室温で単離した。これにより、表皮のトロフォントが放出されて、トモントとして魚類組織が残った。一部を単離し、リポペプチドバイオサーファクタントの曝露試験に直接使用した。他はさらにインキュベートし、各々が数百のトミーテを含有するトモシストに変態した(24時間)。これらの亜集団を曝露に使用し、他は、24~30時間以内にセロントを放出するまでさらにインキュベートした。これらを単離し、同様に、リポペプチドバイオサーファクタントの効果のインビトロ評価に使用した。
【0056】
シュードモナス・フルオレッセンスH6リポペプチドバイオサーファクタント(PS):
シュードモナス・フルオレッセンスH6株のリポペプチドバイオサーファクタントは、(Liu et al. (2015): Yiying Liu, Elzbieta Rzeszutek, Menno van der Voort, Cheng-Hsuan Wu, Even Thoen, Ida Skaar, Vincent Bulone, Pieter C. Dorrestein, Jos M. Raaijmakers, Irene de Bruijn “Diversity of Aquatic Pseudomonas Species and Their Activity against the Fish Pathogenic Oomycete Saprolegnia” PLOSOne; DOI:10.1371/journal.pone.0136241; published 28. August 2016)に記載されている方法に従って抽出した。
【0057】
シュードモナス・フルオレッセンスH6株を、シュードモナス属寒天プレート(20mlプレート)にて、25℃で48時間増殖させた。H6株の細胞を寒天プレートから回収し、滅菌脱ミネラル水(プレート当たり5~10ml)中に懸濁させ、ボルテックスして、細胞懸濁液をホモジナイズした。次いで細胞懸濁液を、9,000rpm(4℃)で10分間、2回遠心分離し、上清を0.2umフィルターで濾過滅菌した。上清を9%(v/v)HClでpH2.0まで酸性化することによって、無細胞の培養上清中に存在するリポペプチドバイオサーファクタントを沈殿させた。沈殿は、氷上で1時間行った。沈殿物を、最大速度での遠心分離によって回収し、酸性化した(pH2.0)脱ミネラル水で連続3回洗浄した。洗浄した沈殿物に脱ミネラル水を添加し、0.2M NaOHでpHを8.0に調整して、沈殿物を溶解させた。得られた溶液を凍結乾燥した。
【0058】
この生成物を滅菌蒸留水に溶解させることによって10mg/mLの原液を調製し、その後、寄生虫の曝露用に希釈系列を調製した。
【0059】
インビトロインキュベーション及び曝露:
それぞれ、30個の凹型ウェル(直径25mm、深さ3mm、最大水容量2000μL)を有するガラスプレート(厚さ6mm)を、各寄生虫生活ステージ(セロント、トモント及びトモシスト)のインキュベーションに使用した。
【0060】
ウェルの中のリポペプチドバイオサーファクタントの最終濃度は、1000μg/mL、100μg/mL、20μg/mL、13μg/mL、10μg/mL、7μg/mL、5μg/mL、2.5μg/mL、2μg/mL及び1μg/mLとし、全ての濃度は、各寄生虫ステージについて3連で試験した。
【0061】
各ウェルの中の寄生虫の数は、セロントについては20~25、トモントについては2、及びトモシストについては2であった。
【0062】
各ウェルに添加した体積は、50μLのリポペプチドバイオサーファクタント溶液を、寄生虫を含有する50μLの淡水と混合することによって構成される100μLとした。
【0063】
実験は室温(22℃)で実施し、寄生虫の運動性を0分、15分、30分、45分、75分、60分及び90分の各時点で記録した。実験は3連で行った。
【0064】
寄生虫の運動性に対するリポペプチドバイオサーファクタントの効果のモニタリング:
Leica MZ 95解剖顕微鏡(拡大率6~40×)を、トモント、トモシスト及びセロントの運動性をモニターするために使用した。
【0065】
運動性は、遊離セロント、遊離トモント、及びトモシストに囲い込まれているトミーテの繊毛活動及び細胞運動の存在として記録した。
【0066】
非運動性及び分解したトミーテ、セロント及びトモントは、死んだとみなした。
【0067】
リポペプチドバイオサーファクタントに対する魚類の感受性:
1Lのリポペプチドバイオサーファクタント溶液及びニジマス3匹をそれぞれ含有する魚類用プラスチック水槽(総容量3L)の中で、ニジマス(2×3匹)を、試験した全ての寄生虫生活ステージに対して90分以内に有効性が見出された濃度のリポペプチドバイオサーファクタント(10μg/mL及び13μg/mL)に曝露した。対照魚3匹を、リポペプチドバイオサーファクタントを欠くこと以外は同一の条件下に維持した。
【0068】
リポペプチドバイオサーファクタント溶液中で、魚類を曝露後3時間モニターし、その後、純水のみを含有する80Lの水槽に魚類を移し、何らかの有害な行動徴候(平衡感覚障害、嗜眠、食欲不振)を7日間観察した。
【0069】
データ分析
寄生虫の生存率(異なるリポペプチドバイオサーファクタント濃度での3つの異なる寄生虫生活ステージ)に関して、3連のウェル間に有意差が観察されなかったため、これらからのデータをプールした。
【0070】
異なる寄生虫生活ステージの生存率をカプラン・マイヤープロットで可視化し、ダンの多重比較検定により、確率水準を5%として統計的検定を行った。
【0071】
この試験における全ての統計分析及び統計図表の作製は、Graph Pad Prism Version 5を使用して実施した。
【実施例1】
【0072】
ウオノカイセンチュウに対するシュードモナス・フルオレッセンスH6株リポペプチドバイオサーファクタントのインビトロ効果
トモント
ウオノカイセンチュウのトモントは、最も高い2種の濃度(1000μg/mL及び100μg/mLのPS)にのみ感受性があり、この2種の濃度は、全ての寄生虫を15分以内に死滅させた(
図1A)。
【0073】
トモント内部の細胞質運動(
図2A)は、リポペプチドバイオサーファクタントに曝露されたとき、初期には増加し、その後続いて膜の破壊が起こり、最終的に細胞質がトモントの周囲に放出された(
図2C)。
【0074】
10μg/mLのPS濃度は、この寄生虫生活ステージには、試験観察時間内で効果はなかった。
【0075】
トモシスト
ウオノカイセンチュウの、トミーテを囲い込んだトモシスト(
図2B)は、リポペプチドバイオサーファクタントに対して、トモントと比較した際に異なる感受性を示した(
図1B)。
【0076】
最高試験濃度の1000μg/mLのPSでは、トモシスト中の大多数のトミーテ(83%)が、15分間の曝露後に不動であった(
図1B)。100μg/mLのPSに曝露した場合は、30分後に83%のトミーテに不動化が観察された。60分後には、全てのトモシストがトミーテを含有した状態で死んだ(
図2D)。
【0077】
死んだトミーテはトモシストの中心に集中したが、これは、トモシスト中のトミーテは、PSの添加後、即時に周縁部から離れたためである(
図2D)。
【0078】
13μg/mL及び10μg/mLのPSの効果は、わずかに低かったが、しかしながら、全ての寄生虫が、それぞれ、75分以内及び90分以内に死滅した。
【0079】
トモシストは、0μg/mL及び7μg/mLのPS濃度では、表現型としては作用を受けなかった。
【0080】
セロント
ウオノカイセンチュウのセロントは、PSに対して高い感受性を示し、1000μg/mL及び100μg/mLのPSに曝露された場合に、セロントは、5分以内に致死率が100%であった(
図1C)。20μg/mLのPSでは、この時点で20%未満の生存率が見られ、残存しているセロントは30分後に死滅した。
【0081】
13μg/mL及び10μg/mLの濃度のPSは、60分以内にセロントに対して致死的であった。7μg/mL以下の濃度のPSは、90分後でさえも、目に見える効果はなかった。
【実施例2】
【0082】
シュードモナス属のリポペプチドバイオサーファクタントに対する魚類の感受性
ニジマスは、10μg/mL及び13μg/mLの濃度のPSに3時間曝露された場合に、即時型の有害反応も遅延型の有害反応も示さなかった。魚類に対する毒性作用は検出できなかった。
【実施例3】
【0083】
トモント及びセロントに対する様々なバイオサーファクタントのインビトロ活性の比較
ウオノカイセンチュウの採取は上記のように実施した。バイオサーファクタントマセトリドAの抽出物は、(De Bruijn et al (2008): De Bruijn I, De Kock MJD, De Waard P, Van Beek TA, Raaijmakers JM. “Massetolide A Biosynthesis in Pseudomonas fluorescens.” J Bacteriol 190, 2777-2789 (2008))に記載されているようにシュードモナス・フルオレッセンスSS101から得、プチソルビン様バイオサーファクタントは、(Kruijt et al (2008): Kruijt M, Tran H, Raaijmakers JM. “Functional, genetic and chemical characterization of biosurfactants produced by plant growth-promoting Pseudomonas putida 267.” Journal of applied microbiology 107, 546-556 (2009))に記載されているようにシュードモナス・プチダ267から得、シュードモナス属H6のビスコシン様バイオサーファクタントは、上記のように得た。各サーファクタントについて、生成物を滅菌蒸留水に溶解させることによって15mg/mLの原液を調製し、その後、寄生虫の曝露用に希釈系列を調製し、曝露を上記のように実施した。全3種のバイオサーファクタントについて0.15mg/ml及び0.015mg/mlの濃度をトモント(1反復)及びセロント(2連で)に対して試験し、致死率を、曝露の1時間後まで15分毎に記録した。セロントの致死率データについて、分散分析により、続いてダネットの事後分析により、有意差を計算した(p<0.05)。
【0084】
結果
シュードモナス属種H6、シュードモナス・フルオレッセンスSS101及びシュードモナス・プチダ267それぞれからのバイオサーファクタント抽出物である、ビスコシン、マセトリド及びプチソルビンは、濃度0.15mg/mLでの最初の5分間の曝露中にセロントの致死率100%を導き出した。0.015mg/mlの濃度では、マセトリド及びビスコシン様バイオサーファクタントは、15分以内にセロントの致死率90%及び50%を導き出したが、プチソルビンはこの濃度では無効であった(
図3)。
【0085】
トモントは、シュードモナス属H6のビスコシン様バイオサーファクタントに曝露すると、0.1mg/mlでは15分以内に死滅した。1.5mg/mL及び0.15mg/mLのマセトリドに曝露されたトモントは、曝露15分以内に致死となり、一方、プチソルビンは、1.5mg/mLで最初の15分以内にトモントを死滅させたが、濃度0.15mg/mLでは効果が認められなかった(表1)。
【0086】
【0087】
結論
-シュードモナス属H6のビスコシン様バイオサーファクタントは、ウオノカイセンチュウの自由生活性のトモント及びセロントの生活ステージに対して、それぞれ、濃度100ug/ml及び10~20ug/mlで明白な阻害効果を示した。
-構造的に関連するバイオサーファクタントマセトリド(シュードモナス・フルオレッセンスSS101によって産生される)は、セロント及びトモントに対して、シュードモナス属H6に由来するビスコシン様バイオサーファクタントと同様の活性を示した。プチソルビンは、H6のビスコシン様バイオサーファクタントから構造的にそれより遠く、セロントに対して、より低い濃度では活性が少なく、トモントに対しては不活性である。
【0088】
(参考文献)
de Bruijn et al. (2007): de Bruijn I, de Kock MJD, Yang M, de Waard P, van Beek TA, Raaijmakers JM. “Genome-based discovery, structure prediction and functional analysis of cyclic lipopeptide antibiotics in Pseudomonas species.” Molecular Microbiology. 2007; 63(2):417-28.
De Bruijn et al (2008): De Bruijn I, De Kock MJD, De Waard P, Van Beek TA, Raaijmakers JM. “Massetolide A Biosynthesis in Pseudomonas fluorescens.” J Bacteriol 190, 2777-2789 (2008).
Liu et al. (2015): Yiying Liu, Elzbieta Rzeszutek, Menno van der Voort, Cheng-Hsuan Wu, Even Thoen, Ida Skaar, Vincent Bulone, Pieter C. Dorrestein, Jos M. Raaijmakers, Irene de Bruijn “Diversity of Aquatic Pseudomonas Species and Their Activity against the Fish Pathogenic Oomycete Saprolegnia” PLOSOne; DOI:10.1371/journal.pone.0136241; published 28. August 2016.
Xueqin et al. (2012): Xueqin J, Kania PW and Buchmann K. “Comparative effects of four feed types on white spot disease susceptibility and skin immune parameters in rainbow trout, Oncorhynchus mykiss (Walbaum)” J Fish Dis. 2012 Feb;35(2):127-35.
Aihua, L., Buchmann, K. (2001). “Temperature- and salinity-dependent development of a Nordic strain of Ichthyophthirius multifiliis from rainbow trout.” J Appl Ichthyol 17, 273-276.
Kruijt et al (2008): Kruijt M, Tran H, Raaijmakers JM. “Functional, genetic and chemical characterization of biosurfactants produced by plant growth-promoting Pseudomonas putida 267.” Journal of applied microbiology 107, 546-556 (2009).