(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ゴム組成物、トレッドゴムおよびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240119BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240119BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/013
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020551132
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039404
(87)【国際公開番号】W WO2020071557
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018189549
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】熊木 健太郎
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028018(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034217(WO,A1)
【文献】特開2014-205842(JP,A)
【文献】特開2017-002189(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08C 19/00-19/44
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、フィラーとを含み、
前記ゴム成分は、互いに異なる、変性共役ジエン系重合体(A1)と、変性共役ジエン系重合体(A2)と、第3のポリマーとを少なくとも含み、
前記変性共役ジエン系重合体(A1)は、重量平均分子量が20×10
4~300×10
4であり、前記変性共役ジエン系重合体(A1)の総量に対して、分子量が200×10
4~500×10
4である当該変性共役ジエン系重合体を、0.25~30質量%含み、収縮因子(g’)が0.64未満であり、
前記ゴム成分は、tanδ温度分散曲線のピーク温度が最も高いポリマー相(1)と、前記ピーク温度が最も低いポリマー相(2)の少なくとも2つのポリマー相に分離しており、
前記ポリマー相(1)と前記ポリマー相(2)は、互いに非相溶であり、
前記ポリマー相(1)は、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と、前記変性共役ジエン系重合体(A2)と、前記フィラーとを少なくとも含み、
前記ポリマー相(2)が、天然ゴム、合成イソプレンゴムまたはシス-1,4含量が90質量%以上であるブタジエンゴムを含み、
前記変性共役ジエン系重合体(A1)と前記変性共役ジエン系重合体(A2)が、変性スチレンブタジエンゴムであり、
前記変性共役ジエン系重合体(A1)と前記変性共役ジエン系重合体(A2)のガラス転移温度(Tg)の差が20~40℃であり、
前記第3のポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴムおよびシス-1,4含量が90質量%以上であるブタジエンゴムからなる群より選択される1種であり、
前記ポリマー相(1)
に存在するポリマーの質量に対する、ポリマー相(1)における前記フィラーの
質量の割合(%)をX、前記ポリマー相(1)における前記フィラーの平均凝集塊面積(nm
2)をYとしたとき、XとYは、下記式(1):
Y<4.8X+1200 (1)
を満たす、ゴム組成物。
【請求項2】
前記式(1)におけるXが、100より大きい、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と前記変性共役ジエン系重合体(A2)の合計量が、50質量部以上である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、トレッドゴム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年10月4日に出願の日本国特許出願第2018-189549号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ゴム組成物、トレッドゴムおよびタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、シリカなどの無機充填剤によって、湿潤路面でのグリップ性能(以下、「ウェット性能」という)を向上させている。しかし、そのような充填剤ではエネルギーロスも上昇してしまい、転がり抵抗を低減することが難しい。
【0004】
さらに、タイヤでは、走行による経時的な摩耗に対する耐摩耗性に加えて、悪路などを走行した際の、タイヤのゴムの欠けなどに対する耐破壊特性も要求される。
【0005】
例えば、特許文献1では、タイヤの耐摩耗性を損なうことなく、ウェットグリップ性能と低転がり抵抗性能とのバランスに優れたタイヤの製造に使用するのに適したタイヤトレッド用ゴム組成物を提供するために、ゴム分としてtanδの温度分散曲線が、その高温度側のtanδのピーク温度が-10℃~-50℃にあり、そしてその低温度側のtanδのピーク温度が高温度側のピークより10℃以上低い、バイモーダルとなる少なくとも2種のジエン系ゴムを含んでなり、更に少なくとも一種の補強性充填剤を合計でゴム分100重量部当り30~90重量部含み、かつ当該コンパウンドのバウンドラバー中の高Tgゴム成分の含有量が[高Tgゴム成分の配合比]×0.7以下であるタイヤトレッド用ゴム組成物を提案している。しかし、この場合、低転がり抵抗性と耐摩耗性との両立は容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたトレッドゴムおよびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、フィラーとを含み、
前記ゴム成分は、互いに異なる、変性共役ジエン系重合体(A1)と、変性共役ジエン系重合体(A2)と、第3のポリマーとを少なくとも含み、
前記変性共役ジエン系重合体(A1)は、重量平均分子量が20×104~300×104であり、前記変性共役ジエン系重合体(A1)の総量に対して、分子量が200×104~500×104である当該変性共役ジエン系重合体を、0.25~30質量%含み、収縮因子(g’)が0.64未満であり、
前記ゴム成分は、tanδ温度分散曲線のピーク温度が最も高いポリマー相(1)と、前記ピーク温度が最も低いポリマー相(2)の少なくとも2つのポリマー相に分離しており、
前記ポリマー相(1)と前記ポリマー相(2)は、互いに非相溶であり、
前記ポリマー相(1)は、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と、前記変性共役ジエン系重合体(A2)と、前記フィラーとを少なくとも含み、
前記ポリマー相(1)における前記フィラーの割合(%)をX、前記ポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積(nm2)をYとしたとき、XとYは、下記式(1):
Y<4.8X+1200 (1)
を満たす、ゴム組成物である。
これにより、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度に
バランスさせることができる。
【0009】
本発明に係るトレッドゴムは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、トレッドゴムである。
これにより、トレッドゴムのウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【0010】
本発明に係るタイヤは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、タイヤである。
これにより、タイヤのウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたトレッドゴムおよびタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】
以下の説明では、変性共役ジエン系重合体(A1)、変性共役ジエン系重合体(A2)を、それぞれ、成分(A1)、成分(A2)と表すことがある。
【0014】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の下限値および上限値を含むことを意図している。例えば、0.25~30質量%は、0.25質量%以上30質量%以下を意味する。
【0015】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、フィラーとを含み、
前記ゴム成分は、互いに異なる、変性共役ジエン系重合体(A1)と、変性共役ジエン系重合体(A2)と、第3のポリマーとを少なくとも含み、
前記変性共役ジエン系重合体(A1)は、重量平均分子量が20×104~300×104であり、前記変性共役ジエン系重合体(A1)の総量に対して、分子量が200×104~500×104である当該変性共役ジエン系重合体を、0.25~30質量%含み、収縮因子(g’)が0.64未満であり、
前記ゴム成分は、tanδ温度分散曲線のピーク温度が最も高いポリマー相(1)と、前記ピーク温度が最も低いポリマー相(2)の少なくとも2つのポリマー相に分離しており、
前記ポリマー相(1)と前記ポリマー相(2)は、互いに非相溶であり、
前記ポリマー相(1)は、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と、前記変性共役ジエン系重合体(A2)と、前記フィラーとを少なくとも含み、
前記ポリマー相(1)における前記フィラーの割合(%)をX、前記ポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積(nm2)をYとしたとき、XとYは、下記式(1):
Y<4.8X+1200 (1)
を満たす、ゴム組成物である。
これにより、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【0016】
・ポリマー相
ゴム成分は、tanδ温度分散曲線のピーク温度が最も高いポリマー相(1)と、ピーク温度が最も低いポリマー相(2)の少なくとも2つのポリマー相に分離しており、ポリマー相(1)とポリマー相(2)は、互いに非相溶である。さらに、ポリマー相(1)は、変性共役ジエン系重合体(A1)と、変性共役ジエン系重合体(A2)と、フィラーとを少なくとも含む。また、ポリマー相(1)におけるフィラー割合(%)をX、ポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積(nm2)をYとしたとき、XとYは、下記式(1):
Y<4.8X+1200 (1)
を満たす。すなわち、式(1)では、XとYを上記単位で表したとき、Yは、右辺の4.8X+1200より小さい。この式(1)を満たす場合、ポリマー相(1)にゴム組成物中のフィラーがより多く分配され、かつ、ポリマー相(1)中で、そのフィラーがより高度に分散する。そのため、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【0017】
ゴム成分が、成分(A1)と、成分(A2)と、第3のポリマーとの3種類のみの場合、ポリマー相(1)は上述したように、成分(A1)と、成分(A2)と、フィラーとを含み、ポリマー相(2)は、第3のポリマーを含む。この場合、ポリマー相(2)は、フィラーを含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0018】
本発明では、ポリマー相のtanδ温度分散曲線は、東洋精機社製の粘弾性スペクトロメータを用いて、歪み1%、周波数52Hzの条件で測定して得られたものである。
【0019】
本発明では、ポリマー相(1)とポリマー相(2)が存在し、これらのポリマー相が非相溶であることは、FIB-SEMを用いて確認する。具体的には、FIB-SEMを用いて、ゴム組成物の4μm×4μmの領域を観察し、染色具合の違いがあることで、ポリマー相(1)とポリマー相(2)が存在し、これらのポリマー相が非相溶であるとする。この場合、肉眼での観察で相溶していてもよい。
【0020】
本発明では、ポリマー相(1)におけるフィラーの割合は、以下の手順1~4によって求める。
手順1:ポリマー相(1)に存在するポリマーの量(質量部)を求める。例えば、ゴム成分が、成分(A1)と、成分(A2)と、第3のポリマーの3種類の場合、ポリマー相(1)に存在するポリマーは、成分(A1)と、成分(A2)の2種のみである。したがって、この場合、ゴム組成物に配合した成分(A1)と、成分(A2)の合計質量部が、ポリマー相(1)に存在するポリマーの量(質量部)である。
手順2:ポリマー相(1)に分配(存在)しているフィラーの割合(分配率)を求める。フィラーの分配率の求め方は後述する。
手順3:ゴム組成物が含むフィラーの量に、ポリマー相(1)におけるフィラーの分配率をかけた値を求める。この値が、ポリマー相(1)におけるフィラーの分配量(質量部)である。
手順4:手順3で求めたフィラーの分配量(質量部)を、手順1で求めたポリマー相(1)に存在するポリマーの量(質量部)で割って、100をかけた値を求める。この値が、ポリマー相(1)におけるフィラーの割合(%)である。
【0021】
上記手順2での、ポリマー相(1)に分配しているフィラーの分配率(%)は、ゴム組成物の全てのポリマー相に含まれるフィラーの合計面積に対する、ポリマー相(1)に含まれるフィラーの面積の割合として求める。具体的には、以下の手順2-1~2-4によって求める。
手順2-1:ミクロトームにより切削されたゴム組成物の試料の平滑面をAFMを用いて、測定範囲2μm×2μmで測定する。その得られたAFM画像をヒストグラムにより各ポリマー相とフィラーに多値化像(例えば、ポリマー相(1)と(2)の場合は、3値化像)に変換する。
手順2-2:その多値化像に基づき、各ポリマー相に含まれるフィラーの面積を求める。
手順2-3:そのフィラー面積の合計を、全てのポリマー相に含まれるフィラーの合計面積とする。
手順2-4:当該フィラーの合計面積に対する、ポリマー相(1)に含まれるフィラーの面積の割合(%)を、ポリマー相(1)に存在するフィラーの分配率(%)とする。
フィラーがポリマー相の境界面にある場合は、各ポリマー相とフィラーとの3つが接している2点を結び、フィラーの面積を分割する。
【0022】
本発明では、ポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積は、FIB-SEMより、測定範囲4μm×4μmで得られた画像からポリマー相(1)のフィラー部分の凝集塊面積を求め、フィラー部分の全表面積と凝集塊の個数から、フィラー部分の平均凝集塊面積を数平均(相加平均)により算出する。算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見做しカウントしない。
【0023】
式(1)において、Xは、式(1)を満たせば特に限定されず、例えば、Xは、30以上、50以上、100以上、150以上、または200以上である。また、例えば、Xは、350以下、300以下、250以下、または200以下である。Xが大きいほど、ポリマー相(1)におけるフィラーの割合が高まり、ウェット性能が更に向上する。Xが50未満では、本発明の効果は小さいため、Xは50以上が好ましい。
【0024】
本発明に係るゴム組成物は、前記式(1)におけるXが、100より大きいことが好ましい。
これにより、低転がり抵抗性とウェット性能のさらに高度なバランスを実現することができる。
【0025】
式(1)において、Yは、式(1)を満たせば特に限定されず、例えば、Yは、2000以下、1950以下、1750以下、または1600以下である。また、例えば、Yは、1000以上、1200以上、1300以上、1400以上、1500以上、または1600以上である。Yが小さいほど、ポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積が小さく、ポリマー相(1)においてフィラーが高度に分散し、低転がり抵抗性が更に向上する。
【0026】
<ゴム成分>
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として互いに異なる、変性共役ジエン系重合体(A1)と、変性共役ジエン系重合体(A2)と、第3のポリマーとを少なくとも含む。
【0027】
成分(A1)および成分(A2)は、共に、共役ジエン系重合体を変性した重合体である。
【0028】
共役ジエン系重合体は、1種の共役ジエン化合物の重合体、または2種以上の共役ジエン化合物の共重合体である。また、共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。
【0029】
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエンなどの炭素数4~12の化合物が挙げられる。共役ジエン化合物としては、工業的入手の容易さの観点から、1,3-ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。
【0030】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロへキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル化合物としては、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。
【0031】
共役ジエン系重合体としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、イソプレンブタジエン共重合体、エチレンブタジエン共重合体、プロピレンブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0032】
・変性共役ジエン系重合体(A1)
変性共役ジエン系重合体(A1)は、重量平均分子量が20×104~300×104であり、変性共役ジエン系重合体(A1)の総量に対して、分子量が200×104~500×104である当該変性共役ジエン系重合体を、0.25~30質量%含み、収縮因子(g’)が0.64未満である。
【0033】
成分(A1)の重量平均分子量(Mw)は、20×104~300×104である。上記Mwは、好ましくは、50×104以上、64×104以上、または80×104以上である。また、上記Mwは、好ましくは、250×104以下、180×104以下、または150×104以下である。Mwが20×104以上であれば、タイヤの低転がり抵抗性と、ウェット性能とを高度に両立することができる。また、Mwが300×104以下であれば、ゴム組成物の加工性が向上する。
【0034】
共役ジエン系重合体及び成分(A1)についての、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布、後述する特定の高分子量成分の含有量は、以下のように測定する。共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC-8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)と、変性共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp1)と共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp2)とその比率(Mp1/Mp2)と、分子量200×104~500×104の変性共役ジエン系重合体の割合と、を求める。溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用する。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用する。測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定する。
【0035】
ピークトップ分子量(Mp1及びMp2)は、次のようにして求める。測定して得られるGPC曲線において、最も高分子量の成分として検出されるピークを選択する。その選択したピークについて、そのピークの極大値に相当する分子量を算出し、ピークトップ分子量とする。
【0036】
変性共役ジエン系重合体(A1)は、変性共役ジエン系重合体(A1)の総量(100質量%)に対して、分子量が200×104~500×104である当該変性共役ジエン系重合体(本明細書において、「特定の高分子量成分」ともいう。)を、0.25~30質量%含む。該特定の高分子量成分の含有量がこの範囲内であれば、タイヤの低転がり抵抗性と、ウェット性能とを高度に両立することができる。
【0037】
また、分子量200×104~500×104の変性共役ジエン系重合体の割合は、積分分子量分布曲線から分子量500×104以下が全体に占める割合から分子量200×104未満が占める割合を差し引くことで算出する。
【0038】
一例では、成分(A1)は、特定の高分子量成分を、1.0質量%以上、1.4質量%以上、1.75質量%以上、2.0質量%以上、2.15質量%以上、または2.5質量%以上含む。一例では、成分(A1)は、特定の高分子量成分を、28質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、または18質量%以下含む。
【0039】
本明細書において「分子量」とは、GPCによって得られる、標準ポリスチレン換算分子量である。特定の高分子量成分の含有量がこのような範囲にある成分(A1)を得るためには、後述する重合工程と反応工程とにおける反応条件を制御することが好ましい。例えば、重合工程においては、後述する有機モノリチウム化合物の重合開始剤としての使用量を調整すればよい。また、重合工程において、連続式、及び回分式のいずれの重合様式においても、滞留時間分布を有する方法を用いる、すなわち、成長反応の時間分布を広げるとよい。
【0040】
一例では、成分(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.6~3.0である。
【0041】
変性共役ジエン系重合体(A1)の収縮因子(g’)は0.64未満である。一般に、分岐を有する重合体は、同一の絶対分子量である直鎖状の重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にあり、前記収縮因子(g’)は、想定上同一の絶対分子量である直鎖状重合体に対する、分子の占める大きさの比率の指標である。即ち、重合体の分岐度が大きくなれば、収縮因子(g’)は小さくなる傾向にある。本実施形態では、分子の大きさの指標として固有粘度を用い、直鎖状の重合体は、固有粘度[η]=-3.883M0.771の関係式に従うものとして用いる。変性共役ジエン系重合体の各絶対分子量のときの収縮因子(g’)を算出し、絶対分子量が100×104~200×104のときの収縮因子(g’)の平均値を、その変性共役ジエン系重合体の収縮因子(g’)とする。ここで、「分岐」とは、1つの重合体に対して、他の重合体が直接的又は間接的に結合することにより形成されるものである。また、「分岐度」は、1の分岐に対して、直接的又は間接的に互いに結合している重合体の数である。例えば、後述するカップリング残基を介して間接的に、後述の5つの共役ジエン系重合体鎖が互いに結合している場合には、分岐度は5である。なお、カップリング残基とは、共役ジエン系重合体鎖に結合される、変性共役ジエン系重合体の構成単位であり、例えば、後述する共役ジエン系重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、カップリング剤由来の構造単位である。また、共役ジエン系重合体鎖は、変性共役ジエン系重合体の構成単位であり、例えば、後述する共役ジエン系重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、共役ジエン系重合体由来の構造単位である。
【0042】
収縮因子(g’)は、例えば、0.63以下、0.60以下、0.59以下、または0.57以下である。また、収縮因子(g’)の下限は特に限定されず、検出限界値以下であってもよく、例えば、0.30以上、0.33以上、0.35以上、0.45以上、0.57以上、または0.59以上である。収縮因子(g’)がこの範囲である成分(A1)を使用することで、ゴム組成物の加工性が向上する。
【0043】
収縮因子(g’)は分岐度に依存する傾向にあるため、例えば、分岐度を指標として収縮因子(g’)を制御することができる。具体的には、分岐度が6である変性共役ジエン系重合体とした場合には、その収縮因子(g’)は0.59~0.63となる傾向にあり、分岐度が8である変性共役ジエン系重合体とした場合には、その収縮因子(g’)は0.45~0.59となる傾向にある。
【0044】
収縮因子(g’)の測定方法は、以下のとおりである。変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(Malvern社製の商品名「GPCmax VE-2001」)を使用して、光散乱検出器、RI検出器、粘度検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)の順番に接続されている3つの検出器を用いて測定し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器の結果から絶対分子量を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度を求める。直鎖ポリマーは、固有粘度[η]=-3.883M0.771に従うものとして用い、各分子量に対応する固有粘度の比としての収縮因子(g’)を算出する。溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを使用する。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、及び「TSKgel G6000HXL」を接続して使用する。測定用の試料20mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1mL/分の条件で測定する。
【0045】
成分(A1)に加えられる伸展油の量は、適宜調節すればよく、例えば、成分(A1)100質量部に対して、1~40質量部、1~35質量部、または1~10質量部である。別の一例では、成分(A1)に加えられる伸展油の量は、成分(A1)100質量部に対して、0質量部より多く、10質量部以下である。
【0046】
伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、アロマ代替油などが挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルのブリード防止及びウェット制動性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
【0047】
成分(A1)は、伸展油を加えた油展重合体とすることができ、非油展であっても、油展であってもよい。
【0048】
成分(A1)は、分岐を有し、分岐度が5以上であることが好ましい。また、成分(A1)は、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合する共役ジエン系重合体鎖とを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して5以上の当該共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むことがより好ましい。分岐度が5以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して5以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性共役ジエン系重合体の構造を特定することにより、より確実に収縮因子(g’)を0.64未満にすることができる。なお、1のカップリング残基に対して結合している共役ジエン系重合体鎖の数は、収縮因子(g’)の値から確認することができる。
【0049】
また、成分(A1)は、分岐を有し、分岐度が6以上であることがより好ましい。また、成分(A1)は、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合する共役ジエン系重合体鎖とを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して6以上の当該共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むことが、さらに好ましい。分岐度が6以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して6以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性共役ジエン系重合体の構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.63以下にすることができる。
【0050】
更に、成分(A1)は、分岐を有し、分岐度が7以上であることがさらに好ましく、分岐度が8以上であることがより一層好ましい。分岐度の上限は特に限定されないが、18以下であることが好ましい。また、成分(A1)は、1以上のカップリング残基と、該カップリング残基に対して結合する共役ジエン系重合体鎖とを有し、さらに、上記分岐が、1の当該カップリング残基に対して7以上の当該共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むことが、より一層好ましく、1の当該カップリング残基に対して8以上の当該共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むことが、特に好ましい。分岐度が8以上であること、及び、分岐が、1のカップリング残基に対して8以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している分岐を含むよう、変性共役ジエン系重合体の構造を特定することにより、収縮因子(g’)を0.59以下にすることができる。
【0051】
変性共役ジエン系重合体(A1)は、下記一般式(I):
【化1】
[一般式(I)中、Dは、共役ジエン系重合体鎖を示し、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
4及びR
7は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
5、R
8、及びR
9は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、R
6及びR
10は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
11は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、m及びxは、それぞれ独立して1~3の整数を示し、x≦mであり、pは、1又は2を示し、yは、1~3の整数を示し、y≦(p+1)であり、zは、1又は2を示し、それぞれ複数存在する場合のD、R
1~R
11、m、p、x、y、及びzは、それぞれ独立しており、iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、((x×i)+(y×j)+(z×k))は、5~30の整数であり、Aは、炭素数1~20の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す]で表されることが好ましい。
これにより、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とをより高度にバランスさせることができる。
【0052】
一例では、一般式(I)中、Dで示される共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量は、10×104~100×104である。該共役ジエン系重合体鎖は、変性共役ジエン系重合体の構成単位であり、例えば、共役ジエン系重合体とカップリング剤とを反応させることによって生じる、共役ジエン系重合体由来の構造単位である。
【0053】
一般式(I)中、Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。上記活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH2)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
【0054】
一般式(I)において、Aは、下記一般式(II)~(V):
【化2】
[一般式(II)中、B
1は、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示し、複数存在する場合のB
1は、各々独立している;
一般式(III)中、B
2は、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、B
3は、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、1~10の整数を示し、それぞれ複数存在する場合のB
2及びB
3は、各々独立している;
一般式(IV)中、B
4は、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示し、複数存在する場合のB
4は、各々独立している;
一般式(V)中、B
5は、単結合又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示し、複数存在する場合のB
5は、各々独立している]のいずれかで表されることが好ましい。
これにより、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とをより高度にバランスさせることができる。
【0055】
一例では、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示す。別の一例では、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)又は(III)において、aは、2~10の整数を示す。さらに別の一例では、前記一般式(I)において、Aは、前記一般式(II)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)において、aは、2~10の整数を示す。
【0056】
一般式(II)~(V)中のB1、B2、B4、B5に関して、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基等が挙げられる。
【0057】
成分(A1)は、窒素原子と、ケイ素原子とを有することが好ましい。この場合、ゴム組成物の加工性が良好となり、また、タイヤに適用した際に、タイヤのウェット制動性及び耐摩耗性を向上させつつ、低転がり抵抗性を更に向上することができる。なお、成分(A1)が窒素原子を有することについては、後述する変性率の測定方法で、算出された変性率が10%以上であった場合、窒素原子を有していると判断する。
【0058】
成分(A1)がケイ素原子を有することは、以下の方法により判断する。変性共役ジエン系重合体0.5gを試料として、JIS K 0101 44.3.1に準拠して、紫外可視分光光度計(島津製作所社製の商品名「UV-1800」)を用いて測定し、モリブデン青吸光光度法により定量する。これにより、ケイ素原子が検出された場合(検出下限10質量ppm)、ケイ素原子を有していると判断する。
【0059】
一例では、共役ジエン系重合体鎖は、少なくともその1つの末端が、それぞれカップリング残基が有するケイ素原子と結合している。この場合、複数の共役ジエン系重合体鎖の末端が、1のケイ素原子と結合していてもよい。また、共役ジエン系重合体鎖の末端と炭素数1~20のアルコキシ基又は水酸基とが、一つのケイ素原子に結合し、その結果として、その1つのケイ素原子が炭素数1~20のアルコキシシリル基又はシラノール基を構成していてもよい。
【0060】
前記共役ジエン系重合体又は成分(A1)中の結合共役ジエン量は、例えば、40~100質量%であり、または55~80質量%である。結合共役ジエン量が上記範囲であると、ゴム組成物をタイヤに適用した際に、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを、より高度にバランスすることが可能となる。
【0061】
また、前記共役ジエン系重合体又は成分(A1)中の結合芳香族ビニル量は、例えば、0質量%以上、20質量%以上、または35質量%以上である。また、前記共役ジエン系重合体又は成分(A1)中の結合芳香族ビニル量は、例えば、60質量%以下、または45質量%以下である。結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、ゴム組成物をタイヤに適用した際に、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを、より高度にバランスすることが可能となる。
【0062】
結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、以下に準じて測定する。変性共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとする。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定する(島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0063】
前記共役ジエン系重合体又は成分(A1)において、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、例えば、10~75モル%、または20~65モル%である。
【0064】
成分(A1)がブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法[R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949)]により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2-結合量)を求めることができる。具体的には、以下のとおりである。変性共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとする。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度により上記ハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求める(日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0065】
成分(A1)は、Tgが-50℃より高いことが好ましく、-45~-15℃であることが更に好ましい。成分(A1)のTgが-45~-15℃の範囲にあると、ゴム組成物をタイヤに適用した際に、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを更に高度に両立することができる。
【0066】
Tgについては、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をTgとする。具体的には、以下のとおりである。変性共役ジエン系重合体を試料として、ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をTgとする。
【0067】
本発明に係るゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と前記変性共役ジエン系重合体(A2)のガラス転移温度(Tg)の差が、20℃以上であることが好ましい。
これにより、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0068】
一例では、成分(A1)と成分(A2)のTg差は、20~40℃である。
【0069】
成分(A1)は、100℃で測定されるムーニー粘度が、例えば、20~100、または30~80である。
【0070】
ムーニー粘度の測定方法は、以下のとおりである。共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定する。測定温度は、共役ジエン系重合体を試料とする場合には110℃とし、変性共役ジエン系重合体を試料とする場合には100℃とする。まず、試料を1分間試験温度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML(1+4))とする。
【0071】
一実施形態では、成分(A1)は、変性スチレンブタジエンゴムである。
【0072】
本発明に係るゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と前記変性共役ジエン系重合体(A2)が、変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
これにより、低転がり抵抗性とウェット性能のさらに高度なバランスを実現することができる。
【0073】
・変性共役ジエン系重合体(A1)の合成方法
成分(A1)の合成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、有機モノリチウム化合物を重合開始剤として用い、少なくとも共役ジエン化合物を重合し、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、該共役ジエン系重合体の活性末端に対して、5官能以上の反応性化合物(以下、「カップリング剤」ともいう。)を反応させる反応工程と、を有する合成方法などが挙げられる。
【0074】
重合工程は、例えば、リビングアニオン重合反応による成長反応による重合などが挙げられる。これにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができ、高変性率の成分(A1)を得ることができる。
【0075】
重合開始剤としての有機モノリチウム化合物の使用量は、目標とする共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体の分子量に応じて調整することができる。重合開始剤を減らすと、分子量は増大し、一方、重合開始剤を増やすと、分子量は低下する。
【0076】
有機モノリチウム化合物は、工業的入手の容易さ及び重合反応の制御の容易さの観点から、好ましくは、アルキルリチウム化合物である。この場合、重合開始末端にアルキル基を有する、共役ジエン系重合体が得られる。
【0077】
アルキルリチウム化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。これらの有機モノリチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
重合工程では、回分式、連続式の重合反応様式を適宜選択して用いることができる。
【0079】
重合工程では、不活性溶媒を使用してもよい。
【0080】
不活性溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。不活性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
重合反応に不活性溶媒を使用する前に、不活性溶媒中の不純物であるアレン類、及びアセチレン類を除去するために、有機金属化合物で処理してもよい。
【0082】
重合工程では、極性化合物を用いてもよい。極性化合物を用いることで、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができる。また、極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。
【0083】
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
重合工程の重合温度は、適宜調節すればよく、重合終了後の活性末端に対するカップリング剤の反応量を十分に確保する観点から、例えば、0~120℃、または50~100℃である。
【0085】
カップリング剤は、例えば、窒素原子とケイ素原子とを有する5官能以上の反応性化合物などが挙げられる。当該反応性化合物は、少なくとも3個のケイ素含有官能基を有していることが好ましい。カップリング剤は、好ましくは、少なくとも1のケイ素原子が、炭素数1~20のアルコキシシリル基又はシラノール基を構成するものであり、より好ましくは、後述する一般式(VI)で表される化合物である。カップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
カップリング剤が有するアルコキシシリル基は、例えば、共役ジエン系重合体が有する活性末端と反応して、アルコキシリチウムが解離し、共役ジエン系重合体鎖の末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する傾向にある。カップリング剤1分子が有するSiORの総数から、反応により減じたSiOR数を差し引いた値が、カップリング残基が有するアルコキシシリル基の数となる。また、カップリング剤が有するアザシラサイクル基は、>N-Li結合及び共役ジエン系重合体末端とカップリング残基のケイ素との結合を形成する。なお、>N-Li結合は、仕上げ時の水等により容易に>NH及びLiOHとなる傾向にある。また、カップリング剤において、未反応で残存したアルコキシシリル基は、仕上げ時の水等により容易にシラノール(Si-OH基)となり得る。
【0087】
変性共役ジエン系重合体(A1)は、共役ジエン系重合体を、下記一般式(VI):
【化3】
[一般式(VI)中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示す]で表されるカップリング剤と反応させてなることが好ましい。
これにより、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性をより高度にバランスさせることができる。
【0088】
一般式(VI)中、Aが示す炭化水素基は、飽和、不飽和、脂肪族、及び芳香族の炭化水素基を包含する。活性水素を有しない有機基としては、例えば、水酸基(-OH)、第2級アミノ基(>NH)、第1級アミノ基(-NH2)、スルフヒドリル基(-SH)等の活性水素を有する官能基、を有しない有機基が挙げられる。
【0089】
一例では、前記一般式(VI)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示す。別の一例では、前記一般式(VI)において、Aは、前記一般式(II)又は(III)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)又は(III)において、aは、2~10の整数を示す。さらに別の一例では、前記一般式(VI)において、Aは、前記一般式(II)で表され、kは、0を示し、前記一般式(II)において、aは、2~10の整数を示す。
【0090】
このようなカップリング剤としては、例えば、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリスメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
【0091】
カップリング剤としての一般式(VI)で表される化合物の添加量は、共役ジエン系重合体のモル数対カップリング剤のモル数が、所望の化学量論的比率で反応させるよう調整することができ、そのことにより所望の分岐度が達成される傾向にある。具体的な重合開始剤のモル数は、カップリング剤のモル数に対して、例えば、5.0倍モル以上、または6.0倍モル以上である。この場合、一般式(VI)において、カップリング剤の官能基数((m-1)×i+p×j+k)は、5~10の整数であり、または6~10の整数である。
【0092】
反応工程における反応温度は、適宜調節すればよく、例えば、0~120℃、または50~100℃である。また、重合工程後からカップリング剤が添加されるまでの温度変化は、例えば、10℃以下であり、または5℃以下である。
【0093】
反応工程における反応時間は、適宜調節すればよく、例えば、10秒以上、または30秒以上である。重合工程の終了時から反応工程の開始時までの時間は、カップリング率の観点から、より短い方が好ましく、例えば、5分以内である。
【0094】
反応工程における混合は、機械的な撹拌、スタティックミキサーによる撹拌等のいずれでもよい。
【0095】
前記特定の高分子量成分を有する成分(A1)を得るためには、共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)を、1.5~2.5、または1.8~2.2とするとよい。また、得られる成分(A1)は、GPCによる分子量曲線が一山のピークが検出されることが好ましい。
【0096】
一例では、成分(A1)のGPCによるピーク分子量をMp1、共役ジエン系重合体のピーク分子量をMp2とした場合、以下の式が成り立つ。
(Mp1/Mp2)<1.8×10-12×(Mp2-120×104)2+2
【0097】
一例では、Mp2は、20×104~80×104であり、Mp1は、30×104~150×104である。
【0098】
成分(A1)の変性率は、例えば、30質量%以上、50質量%以上、または70質量%以上である。変性率が30質量%以上であることで、ゴム組成物をタイヤに適用した際に、タイヤの耐摩耗性を向上させつつ、低転がり抵抗性をさらに向上することができる。
【0099】
変性率の測定方法は、以下のとおりである。変性共役ジエン系重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより測定する。試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求める。具体的には、以下に示すとおりである。
試料溶液の調製:試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とする。
ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを溶離液として用い、試料溶液10μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得る。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用する。
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得る。カラムは、商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用する。
変性率の計算方法:ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求める。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0100】
反応工程の後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9~11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
【0101】
成分(A1)は、重合後のゲル生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0102】
成分(A1)の加工性をより改善するために、必要に応じて、伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加してもよい。伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、例えば、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法などが挙げられる。
【0103】
成分(A1)を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法などが挙げられる。
【0104】
ゴム成分中の成分(A1)の量は、適宜調節すればよく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、または50質量部以上であり、また、例えば、成分(A1)の量は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、または30質量部以下である。
【0105】
本発明に係るゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記変性共役ジエン系重合体(A1)と後述する変性共役ジエン系重合体(A2)の合計量が、50質量部以上であることが好ましい。
これにより、フィラーをポリマー相(1)により多く分配し、かつ、フィラーをポリマー相(1)により高度に分散させることができる。
【0106】
・変性共役ジエン系重合体(A2)
変性共役ジエン系重合体(A2)は、変性共役ジエン系重合体(A1)とは異なる変性共役ジエン系重合体である。しかし、成分(A1)および成分(A2)は共に、変性共役ジエン系重合体であるため、これらはポリマー相(1)に含まれる。
【0107】
成分(A2)のベースポリマーである共役ジエン系重合体は、例えば、上述したポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、イソプレンブタジエン共重合体、エチレンブタジエン共重合体、プロピレンブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0108】
一実施形態では、成分(A2)は、変性スチレンブタジエンゴムである。
【0109】
成分(A2)としての変性SBRは、成分(A1)と異なればよく、公知の変性SBRを用いることができる。例えば、特開2017-190457号公報、国際公開第2016/194316号、国際公開第2017/077712号、国際公開第2017/077714号に記載の変性SBRなどが挙げられる。
【0110】
成分(A2)としての変性SBRを得るための変性剤は、公知の変性剤から適宜選択して用いることができる。フィラー(例えば、シリカ)に対して高い相互作用性を有するため、変性剤は、アルコキシシラン化合物、ヒドロカルビルオキシシラン化合物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0111】
アルコキシシラン化合物は、例えば、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトリジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。アルコキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、例えば、[N,N-ビス(トリメチルシリル)-(3-アミノ-1-プロピル)](メチル)(ジエトキシ)シラン、N1,N1,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)-1,7へプタン、2-((ヘキシル-ジメトキシシリル)メチル)-N1,N1,N3,N3-2-ペンタメチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル-N3,N3-ジメチル-N1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン、4-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N1,N1,N7,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)へプタン-1,7-ジアミン;N,N-ジメチル-2-(3-(ジメトキシメチルシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-3-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)プロパン-1-アミンなどが挙げられる。
【0113】
成分(A2)としての変性SBRをアニオン重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、3,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)-1-ビニルベンゼン、3,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、3,4-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、2-シアノピリジン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよび1-メチル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0114】
上記変性剤は、アニオン重合における重合開始剤として用いられるリチウムアミド化合物のアミド部分であることが好ましい。このようなリチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドおよびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、リチウムヘキサメチレンイミドのアミド部分となる変性剤はヘキサメチレンイミンであり、リチウムピロリジドのアミド部分となる変性剤はピロリジンであり、リチウムピペリジドのアミド部分となる変性剤はピペリジンである。
【0115】
成分(A2)としての変性SBRを配位重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、2-シアノピリジンおよび3,4-ジトリメチルシリルオキシベンズアルデヒドから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0116】
成分(A2)としての変性SBRを乳化重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、3,4-ジトリメチルシリルオキシベンズアルデヒドおよび4-ヘキサメチレンイミノアルキルスチレンから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。乳化重合において好ましく用いられるこれらの変性剤は、窒素原子および/またはケイ素原子を含むモノマーとして、乳化重合時に共重合されることが好ましい。
【0117】
成分(A2)としての変性SBRの変性率は、例えば、30%以上、35%以上、または70%以上である。変性率が高いほど、フィラーがシリカを含む場合、フィラーがポリマー相(1)により分配するようになり、ウェット性能をより向上することができる。
【0118】
成分(A2)のTgは、例えば、-40℃以下、-50℃以下、または-60℃以下である。また、成分(A2)のTgは、例えば、-70℃以上、-60℃以上、または-50℃以上である。
【0119】
ゴム成分中の成分(A2)の量は、適宜調節すればよく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、または50質量部以上である。また、例えば、成分(A2)の量は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、または30質量部以下である。
【0120】
・第3のポリマー
第3のポリマーは、成分(A1)および成分(A2)と異なるポリマーである。第3のポリマーは適宜選択すればよく、例えば、天然ゴム(NR)、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、イソプレンブタジエン共重合体、エチレンブタジエン共重合体、プロピレンブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0121】
一実施形態では、第3のポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴムおよびシス-1,4含量が90質量%以上であるブタジエンゴム(ハイシスBR)からなる群より選択される1種である。
【0122】
本発明に係るゴム組成物は、前記ポリマー相(2)が、天然ゴム、合成イソプレンゴムまたはシス-1,4含量が90質量%以上であるブタジエンゴム(ハイシスBR)を含むことが好ましい。
これにより、ポリマー相(1)とピーク温度が最も低いポリマー相とのTg差が大きくなり、これらの相を確実に非相溶とすることができる。
【0123】
ゴム成分中の第3のポリマーの量は、適宜調節すればよく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、または70質量部以上である。また、例えば、ゴム成分中の第3のポリマーの量は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、または20質量部以下である。
【0124】
<フィラー>
本発明に係るゴム組成物は、フィラーを含む。フィラーとしては、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0125】
一実施形態では、フィラーは、シリカおよびカーボンブラックである。別の実施形態では、フィラーは、シリカである。
【0126】
シリカは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。シリカは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
シリカのBET比表面積は、適宜選択すればよく、例えば、40~350m2/g、または80~300m2/gであり、または150~280m2/gである。
【0128】
BET比表面積は、BET法により求めた比表面積のことであり、本発明では、ASTM D4820-93に準拠して測定した値を指す。
【0129】
フィラー中のシリカの割合は、適宜調節すればよく、例えば、フィラーの総質量に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または95質量%以上である。また、例えば、フィラー中のシリカの割合は、フィラーの総質量に対して、100質量%以下、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、または50質量%以下である。
【0130】
カーボンブラックとしては、例えば、高、中または低ストラクチャーのSAF、ISAF、ISAF-HS、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードなどのカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
カーボンブラックのBET比表面積は、適宜選択すればよく、例えば、40~350m2/g、または80~200m2/gである。
【0132】
フィラー中のカーボンブラックの割合は、適宜調節すればよく、例えば、フィラーの総質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、または30質量%以上である。また、例えば、フィラー中のカーボンブラックの割合は、フィラーの総質量に対して、100質量%以下、100質量%未満、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、または5質量%以下である。
【0133】
フィラーの配合量は、適宜調節すればよく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、50~120質量部である。
【0134】
本発明に係るゴム組成物には、ゴム成分とフィラーに加えて、ゴム工業界で通常使用される成分、例えば、スチレン・アルキレンブロック共重合体、熱可塑性樹脂、軟化剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、加硫剤、グリセリン脂肪酸エステル、老化防止剤、加硫促進助剤、有機酸化合物などを、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜選択して含有することができる。
【0135】
(ゴム組成物の調製方法)
本発明に係るゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の混練方法を用いて、ゴム成分、フィラーなどの成分を混練すればよい。
【0136】
本発明に係るゴム組成物は、好適にはタイヤ用、より好適にはタイヤのトレッドゴム用である。
【0137】
(トレッドゴム)
本発明に係るトレッドゴムは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、トレッドゴムである。
これにより、トレッドゴムのウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【0138】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、上記いずれかに記載のゴム組成物を用いた、タイヤである。
これにより、タイヤのウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。配合量は、特に断らない限り、質量部を意味する。
【0140】
実施例における材料は以下のとおりである。
【0141】
ゴム成分
天然ゴム(NR):インドネシア製の商品名「SIR20」
ハイシスBR:JSR社製の商品名「JSRBR01(登録商標)」
変性SBR(3):旭化成社製の商品名「タフデンF3440」、スチレン含量35.5質量%、ビニル含量40質量%、重量平均分子量100×104、成分(A1)には該当しないが、成分(A2)に該当。Tg=-25℃
未変性SBR:JSR社製の商品名「HP755B」、溶液重合スチレンブタジエン共重合体、Tg=-18℃
【0142】
フィラー
カーボンブラック:旭カーボン社製の商品名「#78」
シリカ1:東ソー・シリカ社製の商品名「Nipsil(登録商標)AQ」CTAB165、BET比表面積205
シリカ2:東ソー・シリカ社製 CTAB79
【0143】
その他
シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、Evonik社製の商品名「Si75」
C5~C9系樹脂:日本ゼオン社製の商品名「クイントン(登録商標)G100B」
ステアリン酸亜鉛:Sigma-Aldrich社製の製品番号「307564」
老化防止剤(6PPD):N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック 6C」
加硫促進剤(1)(DPG):1,3-ジフェニルグアニジン、住友化学社製の商品名「ソクシノール(登録商標)D-G」
加硫促進剤(2)(MBTS):ジ(2-ベンゾチアゾリル)ペルスルフィド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)DM-P」
加硫促進剤(3)(CBS):N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)CZ-G」
【0144】
変性共役ジエン系重合体(A1)の、結合スチレン量、ブタジエン部分のミクロ構造、分子量、収縮因子(g’)、ムーニー粘度、Tg、変性率、窒素原子の有無、ケイ素原子の有無は上述の方法で分析する。
【0145】
<変性SBR(1)-成分(A1)の合成>
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、撹拌機付槽型反応器である撹拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とする。予め水分除去した、1,3-ブタジエンを17.2g/分、スチレンを10.5g/分、n-ヘキサンを145.3g/分の条件で混合する。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.117mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給する。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.019g/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.242mmol/分の速度で、撹拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続する。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御する。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、カップリング剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定する。次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、カップリング剤として2.74mmol/Lに希釈したテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.0302mmol/分(水分5.2ppm含有n-ヘキサン溶液)の速度で連続的に添加し、カップリング剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合されカップリング反応する。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液にカップリング剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は7℃である。カップリング反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了する。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「JOMOプロセスNC140」)が10.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合する。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、成分(A1)としての変性SBR(1)を得る。
【0146】
変性SBR(1)を上記の方法で分析すると、各値は以下のとおりであり、成分(A1)に該当する。
結合スチレン量=35質量%、
ビニル結合量(1,2-結合量)=42mol%、
Mw=85.2×104g/mol、
Mn=38.2×104g/mol、
Mw/Mn=2.23、
ピークトップ分子量(Mp1)=96.8×104g/mol、
ピークトップ分子量の比率(Mp1/Mp2)=3.13、
「特定の高分子量成分」の割合=4.6%、
収縮因子(g’)=0.59、
ムーニー粘度(100℃)=65、
Tg=-24℃、および
変性率=80%。
【0147】
また、変性SBR(1)は窒素原子を有し、ケイ素原子を有する。
【0148】
変性SBR(1)は、カップリング剤の官能基数と添加量から想定される分岐数に相当する「分岐度」は8であり(収縮因子の値からも確認できる)、カップリング剤1分子が有するSiORの総数から反応により減じたSiOR数を引いた値に相当する「SiOR残基数」は4である。
【0149】
<変性SBR(2)-成分(A2)の合成>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行う。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、[N,N-ビス(トリメチルシリル)-(3-アミノ-1-プロピル)](メチル)(ジエトキシ)シランを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行う。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得る。変性SBRのミクロ構造は、結合スチレン量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000である。また、Tgは、-60℃である。
【0150】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表1および表2に示す配合処方に従い、実施例1及び比較例1については通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を製造した。実施例2~実施例7及び比較例2~比較例5については通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を製造する。また、そのゴム組成物をトレッドゴムに用いて、サイズ195/65R15の乗用車用空気入りラジアルタイヤを作製する。ゴム組成物又はタイヤに対して、下記の方法で、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性を評価する。各評価を表1に示す。
【0151】
各ゴム組成物のポリマー相(1)とポリマー相(2)のtanδ温度分散曲線のピーク温度、ポリマー相(1)におけるフィラー割合、およびポリマー相(1)におけるフィラーの平均凝集塊面積は、上述した方法により求める。
【0152】
<ウェット性能>
実施例1及び比較例1については、長径40mm短径20mmの測定冶具に合うような加硫ゴムを作成し、固定した湿潤鉄板路面上に押し付けて往復させるときに発生する摩擦力をロードセルで検出し、動摩擦係数を算出した。実施例2~7及び比較例2~5については算出する。
【0153】
<耐摩耗性>
ゴム組成物を145℃で33分加硫後、JIS K 6264-2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機を使用して23℃で摩耗量を測定する。摩耗量の値は、その逆数をとり、比較例1の値を100として、それぞれ指数表示する。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れる。
【0154】
<低転がり抵抗性>
実施例1及び比較例1については50℃でのtanδをもとに指数化した。実施例2~7、比較例2~5は指数化する。指数値が小さい程、転がり抵抗が低く、低転がり抵抗性に優れる。
【0155】
<耐破壊特性>
実施例1及び比較例1についてはゴム組成物について、JIS-K6251に準拠して室温で引張試験を行い、得られた結果から加硫ゴム組成物の破壊応力を算出した。実施例2~実施例7、比較例2~比較例5についてはゴム組成物について、JIS-K6251に準拠して室温で引張試験を行い、加硫ゴム組成物の破壊応力を測定する。比較例1の値を100として、それぞれ指数表示する。指数値が大きい程、耐破壊特性に優れる。
【0156】
【0157】
【0158】
表2に示すように、本発明に係るゴム組成物によって、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明によれば、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、ウェット性能と、耐摩耗性と、低転がり抵抗性と、耐破壊特性とを高度にバランスさせたタイヤを提供することができる。