(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】表面仕上げスタイラス
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20240119BHJP
G01B 5/28 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B5/28
(21)【出願番号】P 2020559463
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 GB2019051130
(87)【国際公開番号】W WO2019207293
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エドワード ラムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジェームズ アンドリュー ホームズ
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536603(JP,A)
【文献】特開平08-261748(JP,A)
【文献】実開昭62-181354(JP,U)
【文献】特表平03-502603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多方向走査プローブ用の表面仕上げスタイラスであって、
縦軸を有する細長いスタイラスシャフトと、
測定される表面に接触するための、前記細長いシャフトから突き出てい
る接触要素と、を備え、
前
記接触要素が、縦軸に平行でない測定方向に沿った、表面に対する前記スタイラスシャフトの運動中の表面仕上げの測定を可能にするように構成され、
前
記接触要素は、中空の円錐要素を含むことを特徴とする表面仕上げスタイラス。
【請求項2】
前
記接触要素は、前記縦軸に対して斜めの角度で方向付けられていることを特徴とする請求項1に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項3】
前記中空の円錐要素は、前記縦軸に対して斜めの角度で、前記細長いスタイラスシャフトから突出する周縁部を有し、前記周縁部は、測定される表面に接触することを特徴とする請求項1または2に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項4】
前記斜めの角度は約45°であることを特徴とする請求項2または3に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項5】
前
記接触要素は、前記スタイラスシャフトに対して複数の異なる向きを有
することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項6】
前記スタイラスシャフトは、前
記接触要素を保持するための1つまたは複数のクランプを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項7】
前
記接触要素は金属ディスクを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項8】
前記金属ディスクは曲げられることを特徴とする請求項7に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項9】
前記金属ディスクは、当該金属ディスクの複数の領域を曲げて当該金属ディスクの平面から突出する接触要素を形成することを可能にする、当該金属ディスクの中に形成された複数のスリットを含むことを特徴とする請求項7または8に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項10】
前
記接触要素は剛性が低い材料によって形成されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項11】
前
記接触要素の有効半径は、300μm未満であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラス。
【請求項12】
表面仕上げ測定値を取得するための多方向走査プローブであって、プローブ本体と、前記プローブ本体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダーと、前記プローブ本体に対するスタイラスホルダーの偏移を測定するための偏移センサと、を含み、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の表面仕上げスタイラスが前記スタイラスホルダーに取り付けられることを特徴とする多方向走査プローブ。
【請求項13】
工作機械走査プローブを含む、請求項12に記載の多方向走査プローブ。
【請求項14】
表面仕上げスタイラスを含む多方向走査プローブを使用して対象物の表面仕上げを測定する方法であって、前記表面仕上げスタイラスは、縦軸を有する細長いシャフトと、前記細長いシャフトから突出し測定される表面に接触するため
の接触要素と、を含み、前
記接触要素は、中空の円錐要素を含み、前記縦軸に非平行である測定方向に沿って、表面に対してスタイラスシャフトを動かすことによって表面仕上げを測定するステップによって特徴付けられる方法。
【請求項15】
前記表面仕上げを測定するステップは、前記スタイラスシャフトが前記測定方向に沿って前記表面に対して移動する間、前記接触要素と局所表面法線との整列を維持するように前記表面仕上げスタイラスを表面に対して配向することを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
多方向走査プローブ用の表面仕上げスタイラスであって、縦軸を有する細長いシャフトと、前記縦軸に対して斜めの角度で前記細長いシャフトから延び
る接触要素と、を含み、前
記接触要素は、中空の円錐要素を含むことを特徴とする表面仕上げスタイラス。
【請求項17】
前記円錐要素は、前記縦軸に対して45°の斜めの角度で突出することを特徴とする請求項16に記載の表面仕上げスタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面仕上げスタイラスに関し、特に、機械加工部品の表面粗さまたは表面うねりを測定するための、多方向の工作機械走査プローブと共に使用する表面仕上げスタイラスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、加工後の加工物を測定し、一定の基準を満たしていることを確認することが行われる。特に、工作機械で機械加工された加工物の形状および/または表面仕上げを測定することが知られている。機械加工された部品の形状は、ワークの切削に使用された工作機械のスピンドルによって保持移動される走査プローブを用いて「オンマシン」で決まった方法で測定されるが、そのような部品の表面仕上げ(表面粗さなど)は、通常、専用の表面形状測定装置を用いて「オフマシン」で測定される。
【0003】
一般的な表面形状測定装置は、シャフトの遠位端から垂直に延びるワークピース接触先端を有する細長いシャフトを含む。先端は、測定される表面と接触するよう配置され、その表面に沿って押したり引いたりすることで、表面の細かい特徴(谷や山など)を追跡する。センサは、先端が水平面を横切って移動するときの先端の垂直偏移を監視し、それによって表面粗さの測定値を与える。留意すべきは、表面形状測定装置は、スタイラス先端の偏移の垂直成分(つまり、先端がそれに沿って移動する表面に垂直な方向の先端の偏移)のみを測定するように構成されているため、一方向の機器であることである。したがって、測定対象物と先端との間の相対移動は、測定処理中に先端が常に表面に対して垂直に保たれるように、表面測定装置において注意深く制御する必要がある。部品の製造に使用される工作機械に加えて別個の表面形状測定器が必要であることから、費用と時間が製造プロセスに追加されることになる。
【0004】
物体の形状を測定するために従来から使用されている多方向プローブを備えた座標測定機(CMM)が、特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、このような多方向プローブに、回転継ぎ手を介して表面仕上げスタイラスを取り付ける方法についても記載されている。この構成は、回転継ぎ手を用いて、走査プローブに対して表面仕上げスタイラスを適切に回転させることにより、異なる方向の表面で表面仕上げ測定値を取得することを可能にする。したがって、特許文献1は、表面形状測定装置と同様の方法で表面仕上げを測定するように適合された専用のCMM(すなわち、工作機械ではない)を記載していることになる。このようなCMMは、表面形状測定装置よりも柔軟性があるものの、表面形状測定装置よりもかなり高価であり、製造プロセスの速度を向上させることはほとんどない。
【0005】
特許文献2は、従来から用いられているタイプの多方向走査プローブを使用して形状測定を取得する、工作機械の表面仕上げを測定するための装置について記載している。特に、シャフトから直交して突出する回転対称ディスクを保持移動する細長いシャフトを備えた表面仕上げスタイラスが提供される。ディスクの最大直径の領域は接触検知面として機能し、ディスクの回転対称性により、その表面に対してシャフトがその縦軸に沿って移動したときに、細長いシャフトの縦軸に平行に整列した任意の面の表面仕上げを測定することが可能となる。このようにして、穴の内壁面の異なる領域の表面仕上げを、走査型プローブの向きを変えることなく測定することができる。特許文献2の装置は、限られた数の「オンマシン」表面仕上げ測定(たとえば、穴の内壁面の測定)に適している場合があるが、一般的な機械加工部品には、単純にそのような装置を使用して測定することはできない、多くの異なる表面配向が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5778551号明細書
【文献】米国特許公開2016/0231108号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、多方向走査プローブ用の表面仕上げスタイラスであって、縦軸を有する細長いスタイラスシャフトと、測定される表面に接触するための、前記細長いシャフトから突き出ている1つまたは複数の接触要素と、を備え、前記1つまたは複数の接触要素が、縦軸に平行でない測定方向に沿った、表面に対する前記スタイラスシャフトの運動中の表面仕上げの測定を可能にするように構成されることを特徴とする表面仕上げスタイラスが提供される。
【0008】
したがって、本発明は、多方向走査型プローブ用の表面仕上げスタイラスに関する。以下で説明するように、多方向プローブは、従来技術の表面形状測定装置の一方向測定センサによって感知できる単一の偏移方向ではなく、取り付けられたスタイラスの複数の方向の偏移を測定することができる。本発明のスタイラスはまた、細長いシャフトから突出する1つまたは複数の接触要素を備えた縦軸を有する細長いスタイラスシャフトを有する。各接触要素は、測定される表面に接触するように配置され、表面に沿って移動するときに表面仕上げ(例えば、表面粗さおよび/または表面うねりなど)を測定することを可能にする。特に、接触要素は、それが移動する表面に追従し、それによって表面に垂直な方向の接触要素の動きが、スタイラスシャフトが取り付けられている多方向プローブによる測定を可能とする。
【0009】
上述した従来技術の表面仕上げ測定装置では、スタイラスシャフトは、シャフトから垂直に突出するスパイクまたはディスクが測定される表面に接触するように配置される。表面仕上げの測定値を集めるため、突き出たスパイクまたはディスクが表面の法線に揃うように、スタイラスを表面に対して配置する。そして、スタイラスシャフトを表面の面に平行に移動して、スパイクまたはディスクが表面上を引きずられる間、スパイクまたはディスクと表面の法線との整列を維持する。スパイクまたはディスクの表面法線方向の偏移を測定して、表面が表面に沿ってどのように変化するかを定める。このようにして、従来技術の表面仕上げ測定値は、スタイラスシャフトがスタイラスシャフトの縦軸に平行な方向に沿って表面に対して移動される間に収集される。相対的な向きと動きに対するこの制限は、測定デバイスおよび/または測定対象が向きを変えて、異なる面(水平面や垂直面など)で対象物の表面を測定する必要があることを意味し、これには時間がかかるか、あるいは工作機械の特定のモデルを使用する場合は不可能でさえある。
【0010】
本発明は、縦軸に平行でない測定方向に沿った表面に対するスタイラスシャフトの移動中に表面仕上げの測定を可能にするように構成された1つまたは複数の接触要素を含むことを特徴とする。換言すれば、1つまたは複数の接触要素は、スタイラスシャフトがスタイラスシャフトの縦軸に平行な方向に沿って表面に対して移動することを確実にしなければならないという従来技術のシステムの制約によって妨げられない表面仕上げの測定を可能にする。以下でより詳細に説明するように、本発明のスタイラスの1つまたは複数の接触要素は、縦軸に対して斜めの角度でシャフトから突出し得るか、または複数の異なる方向でシャフトから突出しおよび/または異なる向きを有する複数の接触要素が提供され得る。この接触要素の構成により、スタイラスを動かして、対象物に対してプローブの向きを変えることなく、対象物の向きの異なる複数の表面(たとえば、水平面と垂直面)の表面仕上げを感知できる。
【0011】
有利なことに、1つまたは複数の接触要素は、縦軸に対して斜めの角度で方向付けられている。このように、1つまたは複数の接触要素は、好ましくは、従来技術のスタイラスのようにシャフトから垂直に延びるのではなく、代わりに、スタイラスシャフトに対して非垂直ないし斜めの角度で突出する。したがって、スタイラスシャフトは、表面に対して傾斜し、その縦軸に平行でない方向に移動して、接触要素がその表面に沿って移動するときにその表面の法線との整列を維持することができる。複数の接触要素が提供される場合、これらは、対象物に対してプローブを再配向する必要なしに、異なる配向面を測定することを可能にする角度でシャフトから延びることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、1つまたは複数の接触要素は中空の円錐要素を含む。円錐要素は、縦軸に対して斜めの角度で、細長いスタイラスシャフトから突出する周縁部を有し得る。周縁部は、好ましくは、円錐の庭部を形成し、円錐の頂点は、スタイラスシャフトの縦軸と一致し得る。周縁部は、測定される表面に接触するように構成されることが好ましく、例えば、中空円錐の周縁部は丸みを帯びて、表面仕上げ測定に適した有効半径を有することができる。円錐要素は、完全な中空円錐(すなわち、円周の全360°の周りに周縁部を有する)または部分的な中空円錐(すなわち、スタイラスシャフト円周の一部のみの周りに周縁部を有する)を含み得る。使用においては、円錐要素がスタイラスシャフトから延びる方向が表面の法線と局所的に整列するように、スタイラスが適切に向き付けられた状態で、周縁部が物体の表面と接触する。次に、スタイラスを移動して、表面の法線との局所的な整列を維持しながら、円錐要素を表面に沿って移動させることができる。表面仕上げ情報は、表面に垂直な方向の接触要素の動きから決定できる。
【0013】
有利には、斜めの角度は約45°である。したがって、円錐要素の周縁部は、45°の斜めの角度でスタイラスシャフトから突出し得る。垂直に対して45°に向けられたそのようなスタイラスは、水平面と垂直面の両方の表面粗さを測定するのに使用することができる。すなわち、周縁部における正反対の部分は、垂直面と水平面の両方の表面法線方向に整列させることができる。そして、スタイラスは、並進運動のみで対象物の垂直面と水平面に沿って移動(押すまたは引く)できる(つまり、対象物のスタイラスに対する向きを変える必要がない)。
【0014】
有利には、1つまたは複数の接触要素は、複数の接触要素を含む。複数の接触要素は、好ましくは、スタイラスシャフトに対して複数の異なる向きを有する。換言すれば、複数の接触要素は、シャフトから異なる方向に突出しおよび/またはシャフトに対して異なる角度で整列され得る。例えば、1つの接触要素は、縦軸に沿ってスタイラスシャフトの遠位端から突出し得、他の接触要素は、シャフトの側面から突出し得る。そして、スタイラスシャフトに対して異なる方向の表面の表面仕上げを、異なる接触要素を使用して測定することができる。例えば、スタイラスが垂直に保持されている場合、水平面は、スタイラスシャフトの遠位端から突き出ている接触要素を使用して測定され得、一方、垂直面は、他の接触要素を使用して測定され得る。
【0015】
1つまたは複数の接触要素は、スタイラスシャフトと一体に形成され得る。あるいは、1つまたは複数の接触要素をスタイラスシャフトに(永久的または取り外し可能に)取り付けることができる。好ましい実施形態では、スタイラスシャフトは、1つまたは複数の接触要素を保持するための1つまたは複数のクランプを備える。このようにして、1つまたは複数の接触要素をスタイラスシャフトに固定することができる。
【0016】
有利には、1つまたは複数の接触要素は金属ディスクを含む。金属ディスクは成形されたものとすることができる。このディスクの成形は、金属ディスクを曲げることによって行うことができる。金属ディスクは、成形されることによって接触要素の所望の構成を提供できる(例えば、曲げられることによって、1つまたは複数の接触要素を提供でき、または中空円錐を形成することができる)。ディスクの成形/曲げを用いることはまた、スタイラスシャフトに対する一定の位置にディスクを固定することに役立ち得る。金属ディスクは、所望の形状への曲げを促進する弱い領域(例えば、より薄い領域)を含み得る。金属ディスクのそのような曲げは、(例えば、上記のクランプを使用して)それがスタイラスシャフトに固定されるときに実現され得る。金属ディスクはまた、ディスクの複数の領域を曲げて金属ディスクの平面から突出する接触要素を形成することを可能にする、そのディスクの中に形成された複数のスリットを含み得る。その結果、単一の材料片(例えば、単一の金属ディスク)は、複数の接触要素を提供し得る。あるいは、複数の別個の接触要素をスタイラスシャフトに取り付けることができる。
【0017】
1つまたは複数の接触要素は、任意の適切な材料から形成することができる。例えば、セラミックまたはガラス材料を用いることができる。あるいは、1つまたは複数の接触要素は、金属から形成され得る。
【0018】
1つまたは複数の接触要素を形成する材料は、好ましくは、(測定される表面への損傷を最小限にするため)剛性が低いものである。有利には、1つまたは複数の接触要素のヤング率(E)は、250GPa未満である。より好ましくは、1つまたは複数の接触要素のヤング率は、150GPa未満である。より好ましくは、1つまたは複数の接触要素のヤング率は、100GPa未満である。より好ましくは、1つまたは複数の接触要素のヤング率は、50GPa未満である。
【0019】
有利には、材料は機械的にも硬いものである(つまり摩耗を減らすため)。したがって、1つまたは複数の接触要素を形成する材料は、好ましくは、高い硬度を有する。有利には、1つまたは複数の接触要素の硬度(H)は、1GPaよりも大きい。好都合には、1つまたは複数の接触要素の硬度(H)は2GPaよりも大きい。好ましくは、1つまたは複数の接触要素の硬度(H)は5GPaよりも大きい。
【0020】
1つまたは複数の接触要素のヤング率(E)および硬度(H)の特性はそれぞれ、それ自体が重要であるが、接触要素に適した材料を選択する場合、剛性と硬度の比(「E/H」比)を用いることもできる。特に、E/H比は可能な限り低いことが好ましい。例えば、E/H比は、好ましくは50未満である。より好ましくは、E/H比は20未満である。より好ましくは、E/H比は15以下である。より好ましくは、E/H比は10未満である。
【0021】
1つまたは複数の接触要素は、任意の適切な材料を含むことができる(例えば、上で概説した特性を有することができる)。接触要素は、複数の材料から形成することができる。有利には、接触要素は単一の材料を含む。好都合には、接触要素は金属を含み、例えば、金属ディスクまたは金属シートの材料が接触要素を形成し得る。接触要素は鋼を含み得る。例えば、接触要素は、スウェーデン、ストックホルムのサンドビックABによって製造されたマルテンサイトクロム鋼「クロムフレックス」などのクロム鋼を含み得る。上記クロムフレックスのヤング率(E)は2l0GPaで、硬度(H)は5.8GPaである(したがって、E/H=36)。あるいは、接触要素は、ジルコニア(E=200GPa、H=11.8GPaおよびE/H=17)を含み得る。あるいは、接触要素は、ステアタイト(E=120GPa、H=5.8GPaおよびE/H=2l)を含み得る。あるいは、接触要素は、N-BK7ホウケイ酸ガラス(E=82GPa、H=5.6GPaおよびE/H=15)を含み得る。有利には、接触要素は、ニチノール(E=45GPa、H=5.5GPaおよびE/H=8)を含み得る。
【0022】
1つまたは複数の接触要素は、表面仕上げの任意の面を測定するように構成することができる。表面仕上げという用語は、標準的な走査型プローブによって測定される表面の形状よりも、表面のより細かい細部を指すことに注意する必要がある。1つまたは複数の接触要素は、表面のうねりを測定するように構成され得る。1つまたは複数の接触要素は、表面粗さを測定するように構成され得る。表面のうねりや表面粗さは、表面仕上げの例である。
【0023】
1つまたは複数の接触要素は、表面仕上げの必要な面を測定するために寸法が決められることが好ましい。例えば、1つまたは複数の接触要素の遠位端(または先端)は、300μm未満の有効半径を有し得る。有効半径は、接触要素が表面上を移動する方向に平行な方向の接触要素の半径または寸法である(たとえば、接触要素ディスクの縁部の厚さ)。有利には、1つまたは複数の接触要素は、200μm未満の有効半径を有し得る。有利には、1つまたは複数の接触要素は、100μm未満の有効半径を有する。有利には、1つまたは複数の接触要素は、50μm未満の有効半径を有する。接触要素の対象物接触端または先端が小さいほど、測定できる表面組織の解像度は細かくなる(ただし、接触要素は使用中に摩耗または損傷しやすくなる)。表面粗さの場合、表面組織の測定された変動を使用して、「Ra」表面粗さ値を生成することができる。
【0024】
スタイラスは横滑りしないことが好ましい(すなわち、横滑りを含まず、接触要素のみが測定される表面に係合することが好ましい)。スタイラスシャフトは、好ましくは、走査型プローブのスタイラスホルダーに直接取り付けることができるものである。スタイラスシャフトもまた、好ましくは剛性である。有利には、スタイラスシャフトは、それが取り付けられている走査プローブのスタイラスホルダーに対する接触要素の向きを変更するための回転(ナックル)継ぎ手などを含まない。このように、接触要素の位置および方向は、それが取り付けられている走査プローブのスタイラスホルダーに対して不変である。
【0025】
本発明は、上記の表面仕上げスタイラスを含む多方向走査プローブにも及ぶ。その結果、多方向走査プローブを使用して、表面仕上げ測定値を取得することができる。多方向走査プローブは、好ましくは、プローブ本体と、プローブ本体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダーとを含む。スタイラスは、走査型プローブのハウジングに対して、相互に垂直な2つの方向のいずれか、または相互に垂直な3つの方向のいずれかにおいて偏移することが可能であり得る。プローブ本体に対するスタイラスホルダーの偏移を測定するために、少なくとも1つの偏移センサを設けることができる。上述の表面仕上げスタイラスは、(たとえば、標準のネジ山取り付け具によって)スタイラスホルダーに取り付けることができる。好ましい実施形態では、走査プローブは、工作機械走査プローブ(すなわち、工作機械環境での使用に適した走査プローブ)を含む。
【0026】
上述のように、少なくとも1つの偏移センサを走査プローブ内に設けてスタイラスの偏移を測定し、それによって走査プローブが出力可能なプローブデータを生成することができる。走査プローブは、スタイラスの偏移の(方向ではない)大きさのみを測定できる偏移センサを含むことができる。すなわち、走査プローブは、スタイラスの偏移の大きさのみを示すプローブデータを生成する多方向の単一出力走査プローブを含み得る。例えば、走査型プローブは、ドイツのBlum Novotest GmbHによって製造されるTC76-DigilogまたはTC64-Digilogの走査型プローブ、またはイタリアのMarpossによって販売されるモデルG25プローブを含み得る。あるいは、走査プローブは、スタイラスの偏移の大きさと方向の両方を測定できるセンサを備えていてもよい。例えば、アナログ走査プローブは、3つの相互に直交する方向でのスタイラス先端の偏移に関連する3つの出力信号を生成し得る。英国ウォットンアンダーエッジのRenishaw picによって製造されたSPRINT(OSP-60)プロービングシステムは、そのような走査型プローブの例である。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、表面仕上げスタイラスを含む多方向走査プローブを使用して対象物の表面仕上げを測定する方法が提供され、表面仕上げスタイラスは、縦軸を有する細長いシャフトと、細長いシャフトから突出し測定される表面に接触するための1つまたは複数の接触要素と、を含み、この方法は、縦軸に非平行である測定方向に沿って表面に対してスタイラスシャフトを動かすことによって表面仕上げを測定するステップによって特徴付けられる。
【0028】
有利には、表面仕上げを測定するステップは、スタイラスシャフトが測定方向に沿って表面に対して移動する間、接触要素と局所表面法線との整列を維持するように表面仕上げスタイラスを表面に対して配向することを含む。このようにして、表面の法線方向に沿ったスタイラスの偏移が測定される。この方法はまた、上述のスタイラスの機能または使用方法のいずれかを含み得る。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、縦軸を有する細長いシャフトと、細長いシャフトから延びる複数の接触要素とを備える多方向走査プローブ用の表面仕上げスタイラスが提供される。複数の接触要素は、好ましくは、スタイラスシャフトに対して複数の異なる向きを有する。有利には、複数の接触要素は、縦軸に沿って細長いシャフトの遠位端から突出する第1の接触要素を含む。好ましくは、複数の接触要素は、細長いシャフトから半径方向または斜めに突出する少なくとも1つの接触要素を含む。必要に応じて、さらに接触要素が提供され得る。スタイラスはまた、上述したスタイラスの特徴のいずれかを含み得る。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、縦軸を有する細長いシャフトと、縦軸に対する斜めの角度で細長いシャフトから延びる1つまたは複数の接触要素とを含む、多方向走査プローブ用の表面仕上げスタイラスが提供される。1つまたは複数の接触要素は、中空の円錐要素を含む。円錐要素は、縦軸に対して45°の斜めの角度で突出し得る。スタイラスはまた、上述したスタイラスの特徴のいずれかを含み得る。
【0031】
当業者は、上述した特徴のいずれも、以下に記載される特定の実施形態の任意の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることを理解するであろう。同様に、方法の文脈で説明された特徴は、装置の一部を形成し得、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、以下の添付の図面を参照して、一例としてのみ説明される。
【
図1】
図1は、従来技術の表面形状測定装置を示す。
【
図2】
図2は、工作機械の従来技術の表面粗さ走査プローブを示す。
【
図3a】
図3aは、本発明の表面仕上げスタイラスを示す。
【
図3b】
図3bは、本発明の表面仕上げスタイラスを示す。
【
図4a】
図4aは、
図3を参照して説明したスタイラスの円錐形インサートディスクの詳細に示す。
【
図4b】
図4bは、
図3を参照して説明したスタイラスの円錐形インサートディスクの詳細に示す。
【
図5】
図5は、2つの接触要素ディスクを含む代替の表面仕上げスタイラスを示す。
【
図6】
図6は、複数の接触要素を含む表面仕上げスタイラスの代替実施形態を示す。
【
図7】
図7は、3つの直交配向接触要素を含む表面仕上げスタイラスの代替実施形態を示す。
【
図8a】
図8aは、金属ディスクを折りたたんで複数の方向に接触要素を形成する様子を示す。
【
図8b】
図8bは、金属ディスクを折りたたんで複数の方向に接触要素を形成する様子を示す。
【
図9】
図9は、複数の接触要素を含む表面仕上げスタイラスのさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、従来技術の表面形状測定装置が模式的に示されている。表面形状測定装置は、縦軸Lを有する細長いシャフト4をそこから延ばすハウジング2を備える。接触要素6は、方向Pに沿ってシャフト4から垂直に延びる。ハウジング2は、方向Pに沿った接触要素6の前後の動きによって引き起こされるシャフト4の偏移を測定する一方向変換器(図示せず)を含む。
【0034】
使用時には、接触要素6を対象物10の表面に接触させる。次に、接触要素6は、縦軸Lに平行な方向Mで対象物10に対して移動される。対象物10と表面形状測定装置との間のこの相対運動は、表面形状測定装置(例えば、シャフト4を直線的に収縮/伸長することによって)、対象物10、または対象物と表面形状測定装置の両方を動かすことによって与えられ得る。相対運動の結果、接触要素6は、対象物10の表面上の経路12に沿って移動することになる(すなわち、押したり引いたりする)。接触要素6は、また、表面に追従するように上下に移動する。これは、接触要素6の先端および対象物の表面の拡大図を与える
図1の挿入図に見ることができる。ハウジング2内の一方向変換器は、接触要素6の垂直偏移(すなわち、方向Pに沿った偏移)に関する偏移信号を出力する。経路12を横断するときの偏移信号の変動の分析によって、対象物のその領域における表面仕上げの測定値が与えられる。例えば、平均表面粗さまたはRa値を計算することができる。
【0035】
図2を参照して、特許文献2の従来技術の表面粗さプローブ20をより詳細に説明する。上述したように、特許文献2の走査プローブは、工作機械のスピンドルに取り付けられて加工物の「オンマシン」測定を可能にする多方向走査プローブである。
【0036】
走査プローブ20は、プローブ本体22とスタイラスを保持するためのスタイラスホルダー21とを備える。スタイラスホルダー21は、偏移機構(図示せず)によってプローブ本体22に取り付けられ、変換器23もまたプローブ本体22内に提供され、スタイラスホルダー21の(すなわち、取り付けられたスタイラスの偏移によって引き起こされる)プローブ本体22に対する、偏移の大きさを測定する。変換器23によって取得された偏移測定値は、送信機ユニット25によってプローブインターフェース27に渡される。プローブ本体22は、また、工具軸部(図示せず)を介して工作機械のスピンドルに取り付けることができる。したがって、プローブ20は、工作機械の可動範囲の周辺で移動することができ、特に、プローブスタイラスを、測定される物体の表面と接触させることができる。
【0037】
このタイプの走査プローブ20は、従来、対象物の形状を測定することを可能にするスタイラスと共に使用される。例えば、そのようなスタイラスは、細長いシャフトの遠位端に取り付けられた直径数ミリメートルのルビー球を含み得るものである。特許文献2に記載されているさまざまな例では、代わりに、表面粗さスタイラス24がプローブ20に取り付けられている。表面粗さスタイラス24は、細長いシャフト30と、シャフト30の縦軸Lから垂直なP方向に延びる接触要素28とを備える。接触要素28は、その円周の周りに丸みを帯びた(
図2の挿入図に示されている)周縁部26を備えた二重切頭円錐の形態を有する。
【0038】
使用時には、接触要素28がシャフト30からその方向に沿って突出する垂直方向Pは、測定される表面の表面法線Nと平行になるように揃えられる。
図2は、破線の輪郭で対象物36の適切な垂直面34を示している。接触要素28の周縁部26は、垂直面34と接触させられ、次いで、プローブ20は、方向Mで垂直上向きに移動させられる。接触要素28の垂直突出方向Pの表面法線Nとの必要な整列を維持するために、プローブ20は、スタイラスシャフト30の縦軸Lに平行であり、また表面34の平面にも平行である方向Mに沿って垂直に移動される。走査プローブ20の変換器23は、スタイラスが表面34に沿って引きずられるときのスタイラスの偏移の大きさを測定し、これらの測定された偏移値は、表面粗さを特定するために用いられる。
【0039】
本発明者らは、特許文献2に記載されている構成に関連する多くの問題点を認識している。例えば、走査プローブ20は、スタイラスシャフト30の縦軸Lに平行であり、また表面(例えば、表面34)の面に平行である、方向Mに移動しなければならない。これらの制約は、測定されている表面の表面法線Nが、走査経路が横断される間、接触要素28がシャフト30から突出する垂直方向Pに平行なままであることを保証するために必要である。例えば、表面粗さは、プローブを垂直に上下に動かすことによって、垂直な穴内の任意の円周方向位置で測定することができる。しかしながら、スタイラスシャフトの縦軸Lに対して角度が付いた平面内の面(例えば、ブラインドボアの底面などの水平面)を、何らかの方法で走査プローブまたは対象物の方向を変えることなしに測定することは不可能である。例えば、走査プローブ20は、垂直面と水平面の両方を測定するために、対象物に対して90°だけ再配向されなければならないことになる。このような方向転換は、工作機械の特定のモデルでは単純に不可能であり、可能であっても、測定プロセスの遅延につながり、それによって製造コストが増加する可能性がある。
【0040】
特許文献2の構成の様々な問題点は、以下に説明するスタイラスの構成によって克服される。例えば、以下に説明するスタイラスは、表面仕上げを測定するために使用される接触要素が突き出るシャフトの縦軸に平行ではない面に向いた表面に沿う表面粗さの測定を可能にする。プローブまたはスタイラスを対象物に対して再配向する必要なしに、異なる向きの表面の測定を可能にするスタイラスについても記載される。
【0041】
図3aおよび3bは、本発明の表面仕上げスタイラス50を示している。スタイラス50は、縦軸Lを有する細長いスタイラスシャフト52を備える。スタイラスシャフト52の近位端は、スタイラスを多方向走査プローブのスタイラスホルダー(不図示)に取り付けることを可能にするねじ込み取り付け部材54を含む。スタイラスシャフト52の遠位端は、中空の円錐形の金属ディスク56の形態の接触要素を含む。金属ディスク56は、ボルト62によってスタイラスシャフトに取り付けられたくさび形の保持部材60によって、円錐台形のくぼみ58内に保持される。従って、金属ディスク56は、スタイラスシャフト52の円周の周りに延在し、縦軸Lに対して45°の角度が付いた方向Qに沿って突出するスカート状の接触要素である。
【0042】
使用時には、表面仕上げスタイラス50を使用して、走査プローブの向きを変えることなく、向きの異なる複数の表面の表面仕上げを測定することができる。例えば、
図3aに示されるように、表面仕上げスタイラス50は、水平(および垂直)に対して45°の角度で傾斜している。次に、水平面70の表面仕上げを測定するために、表面仕上げスタイラス50を方向M1に動かすことができる。すなわち、接触要素56は、スタイラス50を保持している走査プローブがスタイラスの偏移を測定している間、水平移動M1によって水平面70に沿って引っ張られる。次に、表面仕上げスタイラス50を方向M2に動かして、垂直面72の表面仕上げを測定することができる。すなわち、接触要素56の正反対の部分は、スタイラス50を保持している走査プローブが再びスタイラスの偏移を測定している間、垂直移動M2によって垂直面72に沿って引っ張られる。水平測定と垂直測定の両方で、突出した接触要素56は、表面法線Nに対して垂直配向を維持する(すなわち、接触要素が細長いシャフトから突出する方向Qは、スタイラスが方向M1およびM2に沿って移動されるときに、局所表面法線Nに整列したままである。)。
【0043】
図2を参照して説明した従来技術の構成とは異なり、表面仕上げスタイラス50は、スタイラスの移動の方向がスタイラスシャフトの縦軸に沿っていなければならないという制限によって制約されない。これにより、対象物に対して走査プローブの方向を変えることなく、異なる向きの表面を測定できるため、測定の柔軟性が高まり、測定時間を短縮することができる。
【0044】
図4aおよび4bを手短に参照して、
図3aおよび3bを参照して説明した表面仕上げスタイラス50を作製するための手法を説明する。特に、スタイラスの接触要素を与える金属ディスク56を形成するための方法を説明する。
【0045】
図4aに示すように、平らな金属ディスク56’が提供される。ディスク56’は、中央開口80と、ディスクのその他の部分よりも薄い材料の環状領域82を含む。ここで
図3bも参照すると、くさび形の保持部材60がボルト62上に配置されて、ねじ付きボルト上にすでに配置されている平らな金属ディスク56’と係合する。中央開口80の直径は、隙間を供するためにボルトねじの直径よりわずかに大きい。そして、ボルト62がスタイラスシャフトにねじ込まれ、それにより、平らな金属ディスク56’を円錐台形のくぼみ58と係合させる。このように、平らな金属ディスク56’は、くさび形の保持部材60と円錐台形のくぼみ58との間に挟まれ、ボルト62を締めることによって平らな金属ディスク56’が変形して、
図4bおよび
図3bに示される円錐形の金属ディスク56が供される。これにより、金属ディスク56がスタイラスシャフトにしっかりと取り付けられ、表面仕上げスタイラス全体を交換することなく、(例えば、摩耗または損傷した場合などに)金属ディスク56を簡単に交換することができる。中空の円錐接触要素を形成するこの手法は好都合であるが、他の製造技術も使用できることに留意されたい。
【0046】
図5は表面仕上げスタイラスの別の実施形態を示している。縦軸Lを有する細長いスタイラスシャフト100は、第1の接触要素102および第2の接触要素104を保持する。第1の接触要素102は、スタイラスシャフト100から垂直に延びるディスクであり、方向M1に移動したときに縦軸Lと整列した表面の表面粗さを感知することができる。第2の接触要素104もディスクであるが、第1の接触要素102の下側に配置され、第1の接触要素102に対して垂直に配向されている。第2の接触要素104は、縦軸上に位置し、方向M2に沿って表面に対して移動したときの表面粗さを測定することができる。方向M2は方向M1に垂直である。
【0047】
図6は表面仕上げスタイラスの別の実施形態を示している。縦軸Lを有する細長いスタイラスシャフト120が再び提供される。溝付き金属ディスク122は、シャフト120の遠位端に取り付けられる。金属ディスクの第1のセグメント124は、2本のねじ123によって、縦軸Lに平行な平面にある平らな支持面に取り付けられている。第1のセグメント124は、方向M2に沿った移動によって、垂直または水平の面の表面粗さを測定するのに用いることができる接触要素を提供する。ディスクの第2のセグメント126は、縦軸Lから垂直に延びるように曲げられ、縦軸Lに垂直な平坦な支持面に対してねじ127によって保持される。第2のセグメント126は、方向M1で移動するとき縦軸Lに整列する表面の粗さを測定するための接触要素を形成する。
【0048】
図7は表面仕上げスタイラスの別の実施形態を示している。縦軸Lを有する細長いスタイラスシャフト140は、その遠位端に卵形シェル142を備える。第1の接触要素144、第2の接触要素146、および第3の接触要素148は、シェル142の開口を通って突出している。第1の接触要素144は、縦軸に沿ってシェル142の底部から突出している。したがって、第1の接触要素144を使用して、スタイラスに垂直な面の表面粗さを測定することができる。例えば、縦軸Lが垂直面に整列している場合、第1の接触要素144は、水平面に沿って方向M3に移動することができる。第2の接触要素146は、シャフトから延在し、方向M2において表面粗さを測定するように配向されている。例えば、縦軸Lが垂直面に整列している場合、第2の接触要素146は、垂直面上の水平方向曲線に沿って表面粗さを測定することができる。第3の接触要素148は、方向M1において移動したときに縦軸Lと整列した面の粗さを測定するための接触要素を形成する。
図7に示される実施形態の変形として、追加の接触要素または接触要素の別の構成を備えた表面仕上げスタイラスを提供することが可能となる。例えば、接触要素の対が、卵形シェル142の反対側に提供され得る。
【0049】
次に、
図8aおよび8bを参照すると、折り曲げ式金属シートを使用して、複数の異なる方向に沿って表面仕上げを測定することを可能にする複数の接触要素を提供できる表面仕上げスタイラスの形成の仕方について説明する。
図8aは、ディスクの選択された部分を折り曲げることを可能にする切り抜きを含むディスク160を形成するために切断された金属シートを示している。
図8bは、領域162および164を上向きに折り曲げて、M2方向において表面仕上げを感知するための接触要素を提供する方法を示している。領域166は、下向きに折り曲げられて、M3方向における表面仕上げを感知するための接触要素を形成することができる。エッジ領域168は、方向M1に移動したとき縦軸Lに整列して表面の粗さを測定するための接触要素を(折り曲げることなく)提供することができる。
図8bの折り曲げディスクは、
図7に示されるのと同様の方法で、接触要素がシェルを通って突出するようにシェルに収容され得る。
【0050】
図9は、縦軸Lを有する細長いスタイラスシャフト192を有するさらなる表面仕上げスタイラス190を示している。シャフト192に取り付けられた担体部194は、第1の接触要素196および第2の接触要素198を保持する。図示の接触要素196および198は、日本国、神奈川県のミツトヨ株式会社によって販売されている、単一のベベルエッジ表面仕上げスタイラスである。第1の接触要素196は、スタイラスが縦軸Lに平行な方向M1に動かされたときに表面仕上げを測定するように配向されている。例えば、垂直面の上下の動きで表面仕上げを測定する。第2の接触要素198は、スタイラスが方向M2に動かされたときに表面仕上げを測定するように方向付けられている。例えば、垂直面の水平曲線に沿って表面仕上げを測定する。
【0051】
当業者であれば、上述のことが本発明の単なる例であることを認識するであろう。本発明によれば、別のスタイラス構造をも提供することができる。