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  • 特許-改良された地理的指標付け 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】改良された地理的指標付け
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/60 20060101AFI20240119BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G06T11/60 300
G09B29/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020565831
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066745
(87)【国際公開番号】W WO2020002281
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】18179588.1
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523037141
【氏名又は名称】カーベーセー グローバル サービシズ エンフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】マルティナ クレブコバ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエラ コヴァロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】バラク チツィ
(72)【発明者】
【氏名】イエルーン ダーン
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073065(JP,A)
【文献】特開2007-122712(JP,A)
【文献】特開2003-281348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/60
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせ地図を作成するコンピュータ実施方法であって、前記方法は、
・前記重ね合わせ地図を作成するユーザ要求をサーバで受信するステップと、
・前記サーバにおいて、少なくとも1つの属性情報を含む場所データを含むベクトルデータを読み込むステップと、
・前記ベクトルデータを指標尺度に従って画素からなる画像データに変換するステップと、
・前記変換された画像データをカラーランプに適用するステップと、
・前記変換された画像データ及び前記カラーランプに基づいて前記重ね合わせ地図を作成するステップと、を含み、
前記ベクトルデータはいくつかの層に従って編成され、前記場所データは各層の少なくとも1つの属性情報を含み、
前記ユーザ要求は前記いくつかの層のうち少なくとも2つの層の選択を含み、
前記ベクトルデータを読み込むステップは前記層の選択に基づき、
前記ベクトルデータを変換するステップは選択された層の各々について行い、前記選択された層の各々について画素からなる画像データ層を生成し、
前記ベクトルデータを前記指標尺度に従って画像データに変換するステップは、
・選択された画像データ層の各々について前記場所データに関連する畳み込み演算を行うことにより、前記画像データ層の各画素の画素スコアを計算するステップと、
・選択された少なくとも2つの層の各々について、対応する画素の前記画素スコアに基づいて各画素の合併スコアを計算することにより、前記選択された画像データ層を単一画像データに合併するステップと、のサブステップを含み、
前記選択された少なくとも2つの層の各々について、前記対応する画素の前記画素スコアに基づく加重和に従って前記合併スコアを計算し、前記ベクトルデータを前記指標尺度に従って画像データに変換するステップは、
・前記指標尺度に従って前記単一画像データの前記合併スコアを正規化して、前記変換された画像データである正規化スコアを取得する正規化ステップのサブステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記画素スコアを計算する前記サブステップが、前記画素スコアをメモリに格納するステップを含み、前記方法は、
・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は前記選択とは異なるが前記選択と共通の少なくとも1つの層を有する第2の選択を含む、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新するステップであって、前記選択及び前記第2の選択の両方に属する前記少なくとも1つの層の各々について、前記メモリから前記画素スコアを読み込むことで前記画素スコアの前記計算を回避する、更新ステップと、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画素スコアを計算する前記サブステップが、前記画素スコアをメモリに格納するステップを含み、前記方法は、
・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は第2の選択を含み、前記第2の選択は、前記選択に存在するが前記第2の選択には存在しない少なくとも1つの欠落層における選択とは異なり、前記第2の選択は、前記第2の選択には存在するが前記選択には存在しない任意の1つ以上の新規層における前記選択とは異なる、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新する更新ステップであって、前記更新ステップは、前記変換された画像データから、前記少なくとも1つの欠落層の各々の画素スコア寄与を削除し、前記任意の1つ以上の新規層の各々の画素スコア寄与を加算することによって行い、前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによって前記少なくとも1つの欠落層の各々に対する前記画素スコアの前記計算を回避する、更新ステップと、を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記画素スコアを計算する前記サブステップが前記画素スコアをメモリに格納するステップを含み、前記正規化ステップに関連付けられる正規化係数が前記メモリに格納され、
前記方法が、
・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は第2の選択を含み、前記第2の選択は、前記選択に存在するが前記第2の選択には存在しない少なくとも1つの欠落層における選択とは異なり、前記第2の選択は、前記第2の選択には存在するが前記選択には存在しない任意の1つ以上の新規層における前記選択とは異なる、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新する画像データ更新ステップと、を更に含み、
前記画像データ更新ステップは、
・・前記メモリに格納される前記正規化係数に基づいて前記変換された画像データの前記画素スコアを非正規化し、それによって中間画像データを取得するステップと、
・・前記中間画像データの各画素スコアを更新する画素スコア更新ステップであり、前記画素スコア更新ステップは、
・・・前記中間画像データの各画素スコアから、前記メモリに格納される前記少なくとも1つの欠落層の各々の対応する画素スコアを減算し、それにより前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによる欠落層の画素スコアの計算を回避することと、
・・・前記任意の1つ以上の新規層の各々について、前記中間画像データの各画素スコアに、前記新規層に対応する画像データ層の前記対応する画素スコアを加算することと、によって行い、前記画素スコア更新ステップによって新しい単一画像データを取得する、画素スコア更新ステップと、
・・前記新しい単一画像データの前記画素スコアを前記指標尺度に従って正規化して、それによって新しい変換された画像データを取得するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記画素スコアを計算する前記サブステップが前記画素スコアをメモリに格納するステップを含み、前記正規化ステップに関連付けられる正規化係数が前記メモリに格納され、
前記方法が、・前記サーバで前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は第2の選択を含み、前記第2の選択は、前記選択に存在するが前記第2の選択には存在しない少なくとも1つの欠落層における選択とは異なり、前記第2の選択は、前記第2の選択には存在するが前記選択には存在しない任意の1つ以上の新規層における前記選択とは異なる、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新する画像データ更新ステップと、を更に含み、
前記画像データ更新ステップは、
・・前記変換された画像データの各画素スコアを更新する画素スコア更新ステップであり、前記画素スコア更新ステップは、
・・・前記変換された画像データの各画素スコアから、前記少なくとも1つの欠落層の各々の対応する画素スコアを前記正規化係数に基づいて重み付けをして、減算し、それにより前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによる欠落層の画素スコアの計算を回避することと、
・・・前記任意の1つ以上の新規層の各々について、前記変換された画像データの各画素スコアに、前記新規層に対応する画像データ層の前記対応する画素スコアを、前記メモリに格納される前記正規化係数及び対応する重みに基づいて重み付けをして、加算することと、によって行い、前記画素スコア更新ステップによって新しい単一画像データを取得する、画素スコア更新ステップと、
・・前記新しい単一画像データの前記画素スコアを前記指標尺度に従って正規化して、それによって新しい変換された画像データを取得するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザ要求が少なくとも予め定義された地理的境界に関連する所望の集約タイプを更に含み、前記少なくとも2つの層の選択がいくつかの地域を含む少なくとも1つの境界ベース層を含み、各地域が少なくとも1つの地域属性情報に関連することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザ要求が関心地点に関連する所望の集約タイプを更に含み、前記少なくとも2つの層の選択がいくつかの関心地点を含む少なくとも1つの関心地点層を含み、各関心地点が少なくとも1つの属性情報に関連することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重ね合わせ地図がヒートマップであり、前記少なくとも1つの関心地点層の各々について、前記画素スコアを計算するステップが、
・前記関心地点層に関連する各関心地点について、前記ユーザ要求に含まれるユーザ提供バッファ半径に等しいバッファ半径を有するバッファを作成するステップであって、関心地点に対するバッファは、前記関心地点周り又は前記関心地点に関連する点周りの仮想ゾーンである、作成ステップと、
・生成されたバッファのうち重複するバッファを解消し、バッファの縮小セットを取得するステップと、
・前記縮小セットに属する各バッファについて、前記バッファの前記場所データに基づいて関心地点属性情報の少なくとも1つを前記バッファに割り当てるステップと、
記縮小セットに属する各バッファの重心を計算し、前記重心及びユーザ提供拡張バッファ半径に等しい拡張バッファ半径に基づいて各バッファの拡張バッファを定義するステップと、
・前記対応する画素が属する前記バッファの1つ以上の属性情報に基づいて、及び/又は前記対応する画素が最も近い前記バッファの1つ以上の属性情報に基づいて、前記画素スコアを計算するステップと、を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記画素スコアを計算するステップが、
・前記縮小セットに属する各バッファの重心を計算し、前記重心及びユーザ提供拡張バッファ半径に等しい拡張バッファ半径に基づいて各バッファの拡張バッファを定義するステップと、
・前記対応する画素が属する1つ以上の拡張バッファの1つ以上の属性情報に基づいて前記画素スコアを計算するステップと、を含むことを特徴とする。請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重ね合わせ地図がヒートマップであり、少なくとも2つの層の選択が、いくつかの地域を含む少なくとも1つの境界ベース層を含み、各地域は少なくとも1つの地域属性情報に関連し、前記少なくとも1つの境界ベース層の各々が各地域の地域重心を含み、前記画素スコアを計算するステップが、・前記地域重心に基づいて各地域のエリアバッファを定義するステップであって、地域に対するエリアバッファは前記地域重心周りの仮想ゾーンであり、前記地域に対する前記エリアバッファは前記地域の前記少なくとも1つの地域属性情報に関連する、定義ステップと、・前記対応する画素が属する1つ以上のエリアバッファの1つ以上の属性情報に基づいて前記画素スコアを計算するステップと、を含むことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアを計算するステップが、少なくとも前記層の前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの標本平均の計算を含み、前記標本平均は前記層に関する前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの平均に関連し、前記画素スコアは、少なくとも前記対応する画素の属性情報値及び前記標本平均に基づくことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアを計算するステップが、前記層の前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの標本標準偏差の計算を更に含み、前記標本標準偏差は、前記層に関する前記少なくとも1つの属性情報の1つの標本平均との差に関連し、前記画素スコアが前記標本標準偏差に更に基づくことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアがzスコアであり、前記zスコアは、前記少なくとも1つの属性情報の1つと、前記標本平均を前記標本標準偏差で除算したものとの差であり、各画素の前記合併スコアが前記層の各々の前記zスコアの前記加重和に関係することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記zスコアである前記画素スコアを計算する前記サブステップは、前記選択された層の各々について前記zスコアをメモリに格納するステップを含み、
前記方法は、・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は前記選択とは異なるが前記選択と共通の少なくとも1つの層を有する第2の選択を含む、受信ステップと、・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新するステップであって、前記選択及び前記第2の選択の両方に属する前記少なくとも1つの層の各々について、前記メモリから前記zスコアを読み込むことで前記zスコアの前記計算を回避する、更新ステップと、を更に含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
重ね合わせ地図を作成するシステムであって、前記システムは、
・ネットワークに接続されるサーバと、
・前記サーバによってアクセス可能なデータベースであって、前記データベースは場所データを含むベクトルデータを含み、前記場所データは少なくとも1つの属性情報を含む、データベースと、
ーザ装置と、
・サーバに接続されるアプリケーションと、を備え、
前記アプリケーションは重ね合わせ地図を作成する方法を実行するように構成され、前記方法は、
前記ユーザ装置から前記サーバにおいて及び前記ネットワークを介して前記重ね合わせ地図を作成するユーザからのユーザ要求を受信するステップと、
・前記サーバにおいて前記データベースからベクトルデータを読み込むステップと、
・前記ベクトルデータを指標尺度に従って画素からなる画像データに変換するステップと、
・前記変換された画像データをカラーランプに適用するステップと、
・前記変換された画像データ及び前記カラーランプに基づいて前記重ね合わせ地図を作成するステップと、を含み、
前記ベクトルデータはいくつかの層に従って編成され、前記場所データは各層の少なくとも1つの属性情報を含み、
前記ユーザ要求は前記いくつかの層のうち少なくとも2つの層の選択を含み、
前記ベクトルデータを読み込むステップは前記層の選択に基づき、
前記ベクトルデータを変換するステップは選択された層の各々について行い、前記選択された層の各々について画素からなる画像データ層を生成し、
ベクトル画像を前記指標尺度に従って画像データに変換するステップは、
・選択された画像データ層の各々について前記場所データに関連する畳み込み演算を行うことにより、前記画像データ層の各画素の画素スコアを計算するサブステップと、
・選択された少なくとも2つの層の各々について、対応する画素の前記画素スコアに基づく加重和に従って各画素の合併スコアを計算することにより、前記選択された画像データ層を単一画像データに合併するサブステップと、
・前記単一画像データの前記合併スコアを前記指標尺度に従って正規化して、前記変換された画像データである正規化スコアを取得するサブステップと、を含み、
記アプリケーションが前記方法の一部として、
・前記サーバにおいて、前記ネットワークを介して前記ユーザの前記ユーザ装置に、前記重ね合わせ地図を送信するステップを更に実行するように構成される、システム。
【請求項16】
前記アプリケーションが前記方法の一部として、
・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は前記選択とは異なるが前記選択と共通の少なくとも1つの層を有する第2の選択を含む、受信ステップと、
・前記第2の選択に含まれるが第1の選択に含まれない層が存在する場合、前記層のいずれかについて前記データベースからベクトルデータを読み込むステップと、
・前記第2の選択を考慮して前記画像データを更新するステップであって、前記選択及び前記第2の選択の両方に属する前記少なくとも1つの層の各々について、メモリから前記画素スコアを読み込むことで前記画素スコアの前記計算を回避し、更新された重ね合わせ地図を生成する、更新ステップと、
記サーバにおいて、前記ネットワークを介して前記ユーザの前記ユーザ装置に、前記更新された重ね合わせ地図を送信するステップと、
を更に実行するように構成されることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のシステムにおいて、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地理情報システム(GIS)アプリケーションの技術分野に関し、特にヒートマップのような重ね合わせ地図を生成するGISアプリケーションに関するものであり、したがってG06T11/206に関するものであり得る。
【背景技術】
【0002】
階級区分図、特にヒートマップのような重ね合わせ地図は、GISアプリケーションにおけるデータ分析のための新たな魅力的な手段であり、重要な用途を有する。ヒートマップはデータ分析の手段として、データ中に存在する極値の存在、数及び性質についてユーザに通知するときに、全体的に直観的であると同時に非常に正確な方法でデータを編成することが可能である。最近の例としては、ベイズ法による航空機の推定飛行経路の分析に基づいて行方不明となったマレーシア航空370便の可能性の高い場所を示したヒートマップがあり、これは[MH370-Definition of Underwater Search Areas(PDF)(報告書)、オーストラリア運輸安全局、2015年12月3日]に報告されている。このようなヒートマップが救助作業中の救助隊員にとって極めて重要な価値があることは明らかであり、専門家でない人でも使用でき、事前コメントを最小限に抑えて正しく解釈することができるデータ分析手段が必要とされる。
【0003】
しかしこれらの地図の生成にはいくつかの課題があり、その中でもヒートマップの生成に必要な固有のクラスタリングは特に困難である。ヒートマップの基礎となるデータは多くの場合に傾向を示すような方法ではクラスタリングされていない。一方で、そのようなクラスタリングがなければ一般的な全体的なパターンについて何かを推測することは困難であるか又は不可能であることが多い。既存の手法ではしばしば複雑すぎる計算に悩まされ、ユーザがリアルタイムでデータを操作して前記データを視覚化することを困難にする。
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、マッピング、データ管理及び分析を提供する方法を開示している。地図の作成は、所望のガウス集合及び所望のカラーマップパラメータを用いて開始する。データを読み込みして地図で利用する。データをラスタライズし、特定のスケールに変換する。データに対して畳み込み演算が行われる。畳み込み演算の結果をカラーランプに適用し、カラーランプ及び畳み込み演算の結果に基づいて地図を作成する。この方法は重ね合わせ地図生成の計算の複雑性を低減することを目的としているが、柔軟性に欠け、地図上に表現され得るデータの編成に関して計算が複雑である。特に特許文献2は、第1のデータセットのグリッド/ベクトル結果に第2のデータセットのグリッド/ベクトル結果を乗算することによってデータの交点のための地図を作成することを開示している。
【0005】
特許文献3は、屋内尤度ヒートマップを開示している。特定の例示的な実施形態では、装置のための方法は、屋内エリアの複数の障害物を示す概略地図を用いて、屋内エリアの概略地図上に複数の格子点を投影するステップを含むことができる。複数の格子点の格子点対間の実現可能な経路を決定することができる。複数の格子点のうち特定の格子点について、その特定の格子点を横断する実行可能経路のカウントを決定することができる。1以上のナビゲーションアプリケーションで使用するための尤度ヒートマップは、少なくとも部分的にカウントに基づいて生成されてもよい。特許文献3は、ヒートマップの柔軟性があり計算効率の良い計算のための規定を欠いている。これは、格子点の投影及び前記格子点間の実行可能経路の決定に基づいてヒートマップを提供することを目的とする特許文献3の特定の目的に関する。
【0006】
特許文献4は、対話型マップを含む対話型ユーザインタフェースを開示している。クライアントシステムにおけるマップとユーザとの対話に応答して、サーバ側コンポーネントを使用してタイル層が生成され、マップタイルに組み立てられ、クライアント側コンポーネントに送信されてユーザに表示される。一実施形態では、要求されたマップタイルを構成するのに必要な層がキャッシュされているかどうかが判断される。層がまだキャッシュされていないとき、その層は後の検索のために構成されてキャッシュされてもよい。この文献は、具体的な構成方法については言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第2070006号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0053326号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2593751号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0052655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に記載の方法を提供する。
【0010】
本発明の重要な利点は、データ層の追加及び削除に関する機敏性にある。新規層は、問題を複雑にすることなく一般的に追加することができる。全体として、本発明では新規層を処理するのに必要な労力は追加される層の数に比例し得るが、従来技術の方法及びシステムでの必要な労力は典型的にはそれに比例するよりも大きく、例えば古い層及び新規層の両方の数を含む層の総数に比例する。更に本発明では、層を削除するときに必要とされる労力が従来技術の方法及びシステムと比較した場合に大幅に軽減され、典型的にはデータ層の省略時に実質的な計算を必要とする。
【0011】
したがって本発明は異なるデータ層に関する計算の効率的な編成を提供する。GISのデータセットは通常いくつかの層を含むが、このデータの重ね合わせ地図表現への変換は、多くの場合これらの異なる層に結合してアプローチし、1つ以上のデータ層がユーザによって削除又は追加され、更新された重ね合わせ地図が生成されることになる典型的な使用事例を考慮しない。これは重ね合わせ地図を生成する課題に固有のクラスタリングが原因の一部であり、どのように効率的な方法で重ね合わせ地図を反復計算及び再計算するかという問題から開発者及び専門家を遠ざけている。特許文献1による方法のような最新技術の方法はズームの課題に対処することができるが、層の追加及び/又は削除の問題に対処するための規定を欠いている。その結果、最新技術による方法では、層の選択におけるいかなる変更も計算集約的な操作及び/又はユーザの手動による面倒な動作につながる。これは本発明によって回避することができる。
【0012】
第2の態様では、本発明は請求項14に記載のシステムを提供する。
【0013】
更なる態様によれば、本発明は請求項16に記載の用途及び請求項17に記載のコンピュータプログラム製品を提供する。
【0014】
更なる好ましい実施形態及びそれらの利点は、詳細な説明及び従属請求項において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による例示的な生成されたヒートマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書における「GIS」という用語は地理情報システムをいう。地理情報システムとは、地理情報を統合し、保存し、編集し、分析し、共有し及び/又は表示する、任意の情報システム及び関連する方法を説明する用語である。本明細書におけるGISアプリケーションは、ユーザが対話型クエリ(ユーザが作成した検索)を作成し、空間情報を分析し、地図内のデータを編集し、及びこれら全ての操作の結果を表示することを可能にするツールを提供する。
【0017】
本明細書における「ベクトルデータ」という用語は、画素以外の参照に関連して定義され、好ましくは地理的座標間の関係に関して定義されるデータを指す。それゆえ画素レベルの何らかの変更できない(hard-coded)参照を考慮することなく、いくつかの画素解像度で投影することができる。これに対して、本明細書における「画像データ」という用語は、行及び列で編成されるデータを指し、各エントリは画素に対応する。このようなデータは行数及び列数によって与えられる「ネイティブ」解像度に拘束され、ネイティブ解像度を考慮しないといかなる画素解像度でも投影できない。
【0018】
本明細書における「POI」という用語は関心地点を指し、複数の「POIs」は「複数の関心地点」を指す。ここでPOIは、地理的座標、好ましくは2次元座標及び少なくとも1つの属性情報に関連付けられる場所である。例えばPOI層は教育を参照することができ、その関連付けられる属性情報は例えば属性情報がブール変数値、整数及び/又は実数値の任意の値若しくは任意の値の組み合わせであることによってPOIの性質を示すことができる。3つの例示的なPOI層は以下の通りであり、各々が個々のPOIカテゴリを示す。
1.教育:学校、図書館、幼稚園、大学、専門大学
2.スポーツ:運動場、ピッチ、スポーツセンター、スタジアム、スイミングプール
3.健康:薬局、医師、歯科医、眼科医、病院
【0019】
他の例示的なPOI層は、公共施設(例えば郵便ポスト)、買い物、宿泊施設、食品、文化、旅行、交通機関(例えば駐車場)に関連し得る。
【0020】
この例は以下の境界ベース層の属性情報(購買力、移住活動(migration saldo)、会社(=企業、法人、起業家)の数、失業率、犯罪事件の解決率及び/又は数等)を更に含むことができ、それによってこれらの属性情報の値は例えば場所に基づいてバッファ又は拡張バッファに引き継ぐことができる。これらの層の各々は例えば地方自治体、地域、地区又は都道府県によって編成されてもよい。
【0021】
POIは輪郭が定義されていない単一の座標に関連付けられてもよいし、関連付けられなくてもよく、例えばPOIは地図上の一点に相当するものであってもよい。代替的に及び/又は追加的に、POIは特定の輪郭に関連付けられてもよく、例えばPOIは地図上のある地域であってもよい。このような場合、この輪郭をPOIの中心座標を定義する重心と組み合わせてもよいし、組み合わせなくてもよい。これにより重心を輪郭と分離して定義すること又は輪郭の中心として導出することができる。これは例えば輪郭がその場所を定義する1つ以上の座標を有するときに可能である。POIが特定の輪郭に関連付けられる場合、POIの最大寸法は好ましくは10km以下、より好ましくは5km以下、更により好ましくは2km以下、最も好ましくは1km以下であり、及び/又はPOIの面積は好ましくは1km以下、より好ましくは0.5km以下、最も好ましくは0.2km以下である。関連して、「POI層」は前記POI層に関連する1つ以上の属性情報を介して所与のPOIsに関連付けられる場所データに含まれるデータに関連する。例えばPOI層は「教育」に関連することができ、1つ以上の属性情報は、学校、図書館、幼鹿園、大学又は専門大学である所与のPOIsに関連することができる。
【0022】
本明細書における「地理的境界」という用語は、関心地理的地域、例えば国を「境界ベース地域」とも呼ばれる別個の地域に分割することを可能にする任意の種類の境界に関連する。これは好ましくは県、地域又は地方自治体等のよく知られた行政的、公的又は口語的性質の境界に関連し、これら境界は全て可能な境界ベース地域の広範なクラスに含まれる。関連して、「境界ベース層」は前記境界ベース層に関連する1つ以上の属性情報を介して、所与の地域に関連付けられる場所データに含まれるデータに関連する。例えば、境界ベース層は「移住活動」に関連することができ、1つ以上の属性情報は所与の期間、例えば昨年、過去10年又は所与の年にわたり特定のレベルの正味の移住(住民数)を有する所与の地域に関連することができる。
【0023】
本明細書における「重ね合わせ地図」という用語は、「ヒートマップ」及び「階級区分図」を含む地理的地域に関連するデータを図形的に表現するために、関心地理的地域上に置くことができるあらゆる種類の地図を表す包括用語である。特にPOIs又は境界ベース地域のような地理的地域の特定の部分は、その値が表示され得る属性情報値と関連付けることができる。階級区分図の場合には、表現されるべきデータが所与の境界ベース地域に関連付けられる単一の数値に関係する場合、この値はユーザによって提供されてもされなくてもよいカラーランプに従って表示することができる。ヒートマップの場合には、ヒートマップ生成は本質的に何らかの形式又はクラスタリングを必要とするので、仮定に応じて多かれ少なかれ適切であり及び/又は多かれ少なかれ計算上有効であることができるため、そのような直接的な表現は利用できない。
【0024】
GISアプリケーションでは、地物の「バッファ」は、地物周囲の仮想ゾーン又は地物の点(重心等)である。地物は、POI、地域、境界ベース地域、建物等を指す場合がある。地物は、単一の座標セット(点)又は輪郭によって定義することができる。地物を輪郭によって定義するとき、バッファは輪郭の境界に基づく仮想ゾーンであってもよいし、又は例えば輪郭の重心若しくは建物の輪郭の場合は建物の入口等、地物の点に基づく仮想ゾーンであってもよい。バッファは、好ましくは地物若しくは地物の点周りの距離半径等の距離又は時間の単位で、バッファサイズを介して定義することができる。バッファはいくつかの地物の近接分析に適している。地物のバッファは地物の属性情報を継承できる。バッファは複数の地物の集約に使用することができる。地物を集約する場合には、例えば重複するバッファの解消(dissolving)又は任意の他の適切な発見的規則によって、結合集約バッファを作成することができる。結合集約バッファは、1つ以上の予め定義された発見的規則に従って、それが基づくバッファ及び/又は地物の属性情報を採用することができる。
【0025】
バッファを使用して、例えば各地物を重ね合わせ地図内で別々に表示すべきか又はいくつかの地物を重ね合わせ地図内の結合集約地物を介して表示すべきかを決定することができる。当業者はこの例に関して、バッファ径がズームレベルに依存し得ることを理解するだろう。例としてはユーザによる「レストラン」に対するクエリがあり、このクエリではアイコンのオーバーレイが作成されることがあり、これによりレストランのズームレベル及び近接度に応じてアイコンを1つ以上のレストランに関連付けることができる。
【0026】
「指標尺度」とは、画像データの画素スコアを視覚的に表現するマッピングを指す。指標尺度は入力定義域を含む。画像データが指標尺度に適しているためには、画像データの各画素スコアが指標尺度の入力定義域内にある必要がある。指標尺度の例としては16ビットのグレースケールがあり、入力定義域として0から15までの範囲の整数又は[0,16]の範囲の浮動小数点数を持つ。後者については浮動小数点数の整数への切り捨てを行ったり、及び/又は切り捨てを暗黙的に仮定したりすることがある。指標尺度の別の例としては赤緑青(RGB)スケールがある。このスケールは入力定義域としてそれぞれ0~255の範囲の3つの整数のタプル又は[0,256]の範囲の3つの浮動小数点数のタプルを持つ。後者については浮動小数点数の整数への切り捨てを行ったり、及び/又は切り捨てを暗黙的に仮定したりすることがある。例えば指標尺度が16ビットのグレースケールである場合には、画像データは0~15の範囲の整数配列、[0,16]の範囲の浮動小数点数配列、又は[0,16]の範囲の各行及び列の浮動小数点数を計算可能にするデジタル補間データとすることができる。指標尺度は入力定義域及び出力範囲を含む仮想指標尺度であってもよく、これにより出力範囲はそれ自体がカラーランプに対する入力として適している。
【0027】
指標尺度によるデータの「正規化」とは、指標尺度の入力定義域内の新しいデータへのデータのマッピング、最も好ましくは線形マッピングを指す。例えば16ビットのグレースケールによる浮動小数点数配列の正規化は、配列内の浮動小数点数の下限(LB)及び上限(UB)を決定し、各エントリ(X)をX→X′=16(X-LB)/(UB-LB)のように変換することを含むことができる。例えば各層が特定の指標尺度の入力として適しており、全ての重みが正(例えば全ての重みが1に等しい)である画像データの層の加重和の正規化は、加重和を重みの合計で除算することによって行うことができる。あるいは加重和の画素に対して下限(LB)及び上限(UB)を決定してもよく、下限及び上限によって上述のように正規化を行ってもよい。第1の態様では、本発明は重ね合わせ地図、好ましくはヒートマップを作成するコンピュータ実施方法を提供し、方法は、
・重ね合わせ地図を作成するユーザ要求をサーバで受信するステップと、
・サーバにおいて、少なくとも1つの属性情報を含む場所データを含むベクトルデータを読み込むステップと、
・ベクトルデータを指標尺度に従って画素からなる画像データに変換するステップと、
・変換された画像データをカラーランプに適用するステップと、
・変換された画像データ及びカラーランプに基づいて重ね合わせ地図を作成するステップと、を含み、
前記ベクトルデータはいくつかの層に従って編成され、場所データは各層の少なくとも1つの属性情報を含み、
前記ユーザ要求は前記いくつかの層のうち少なくとも2つの層の選択を含み、
前記ベクトルデータを読み込むステップは前記層の選択に基づき、
ベクトルデータを変換するステップは選択された層の各々について行い、前記選択された層の各々について画素からなる画像データ層を生成し、
ベクトルデータを指標尺度に従って画像データに変換するステップは、
・選択された画像データ層の各々について前記場所データに関連する畳み込み演算を行うことにより、画像データ層の各画素の画素スコアを計算するサブステップと、
・選択された少なくとも2つの層の各々について、対応する画素の画素スコアに基づいて、好ましくは加重和による画素スコアに基づいて各画素の合併スコアを計算することにより、選択された画像データ層を単一画像データに合併するサブステップと、
・前記指標尺度に従って前記単一画像データの前記合併スコアを正規化して、変換された画像データである正規化スコアを取得するサブステップと、
のサブステップを含む。
【0028】
好ましい実施形態では、前記画素スコアを計算する前記サブステップが前記画素スコアをメモリに格納するステップを含み、前記方法は、
・重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は前記選択とは異なるが前記選択と共通の少なくとも1つの層を有する第2の選択を含む、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して画像データを更新するステップであって、前記選択及び前記第2の選択の両方に属する前記少なくとも1つの層に各々について、前記画素スコアの前記計算を前記メモリから前記画素スコアを読み込むことで簡略化及び/又は回避する、更新ステップと、
を更に含む。
【0029】
このような実施形態では、層の追加又は削除に関する機敏性により計算負荷低減及びユーザ体験の向上に寄与する。これは新規層の追加に関する機敏性につながるだけでなく、よりユーザフレンドリーで透明なヒートマップの作成にもつながる。ユーザは層の追加又は削除の影響をある程度まで、好ましくはリアルタイムで体験することができる。これはヒートマップを編集するユーザフレンドリーな方法につながり、ユーザは好ましくはユーザが慣れ親しんでいるデータの正確なヒートマップ表現により速く到達することができる。
【0030】
好ましい実施形態では、前記合併を加重和に従って行い、前記画素スコアを計算する前記サブステップは前記画素スコアをメモリに格納することを含み、更に前記正規化ステップに関連付けられる正規化係数、及び前記加重和に関連付けられる任意の重みが前記メモリに格納される。重みの格納は任意であり、例えば全ての重みが1に等しいとき、あるいは重みが例えば特性、注釈、属性情報、層のタイプ等を介して層に明確に関連付けられるとき等、重みが能動格納なしに知られている場合もあるからである。本方法は、重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信する更なるステップを含む。第2のユーザ要求は第2の選択を含み、第2の選択は、前記選択に存在するが前記第2の選択には存在しない少なくとも1つの欠落層における選択とは異なり、第2の選択は、前記第2の選択には存在するが前記選択には存在しない任意の1つ以上の新規層における前記選択とは異なる。次いで前記第2の選択を考慮して画像データを更新する。これは変換された画像データから前記少なくとも1つの欠落層の各々の画素スコア寄与を削除し、前記任意の1つ以上の新規層の各々の画素スコア寄与を加算することによって行うことができる。前記少なくとも1つの欠落層の各々について、前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによって前記画素スコアの前記計算を回避する。新規層の画素スコアが前記メモリに格納されている場合には、前記メモリから読み込むことが好ましく、それによって再計算も回避する。
【0031】
上記実施形態の第1の更なる好ましい実施形態では、本方法は前記第2の選択を考慮して画像データを更新する画像データ更新ステップを更に含み、画像データ更新ステップは、
・前記メモリに格納される正規化係数に基づいて前記変換された画像データの画素スコアを非正規化し、それによって中間画像データを取得するステップと、
・中間画像データの各画素スコアを更新する画素スコア更新ステップであり、画素スコア更新ステップは、
・・中間画像データの各画素スコアから、前記メモリに格納される前記少なくとも1つの欠落層の各々の対応する画素スコアを、任意に対応する重みで重み付けをして、減算し、それにより前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによる欠落層の画素スコアの計算を回避することと、
・・前記任意の1つ以上の新規層の各々について、中間画像データの各画素スコアに、新規層に対応する画像データ層の対応する画素スコアを、任意に対応する重みで重み付けをして、加算することと、
によって行い、前記画素スコア更新ステップによって新しい単一画像データを取得する、画素スコア更新ステップと、
・前記新しい単一画像データの前記更新スコアを前記指標尺度に従って正規化して、それによって新しい変換された画像データを取得するステップと、
を含む。
【0032】
上記実施形態の第2の更なる好ましい実施形態では、本方法は前記第2の選択を考慮して画像データを更新する画像データ更新ステップを更に含み、画像データ更新ステップは、
・変換された画像データの各画素スコアを更新する画素スコア更新ステップであり、画素スコア更新ステップは、
・・変換された画像データの各画素スコアから、前記少なくとも1つの欠落層の各々の対応する画素スコアを、任意に前記メモリに格納される、前記正規化係数及び任意に対応する重みに基づいて重み付けをして、減算し、それにより前記メモリから前記画素スコアを読み込むことによる欠落層の画素スコアの計算を回避することと、
・・前記任意の1つ以上の新規層の各々について、変換された画像データの各画素スコアに、新規層に対応する画像データ層の対応する画素スコアを、前記メモリに格納される前記正規化係数及び任意に対応する重みに基づいて重み付けをして、加算することと、
によって行い、画素スコア更新ステップによって新しい単一画像データを取得する、画素スコア更新ステップと、
・前記新しい単一画像データの前記更新スコアを前記指標尺度に従って正規化して、それによって新しい変換された画像データを取得するステップと、
を含む。
【0033】
変換された画像データに対して多くの層が合併されるとき、(第1の)選択に関する第2の選択の差分のみを考慮に入れることにより、第2の選択に対する計算数を大幅に削減することができる。画素スコアの乗算を行う交差分析では、典型的には多くの画素スコアがゼロ又はゼロに近いため、これは不可能である。集約画像データの画素スコアを画像データ層の画素スコアで除算すると、大きな誤差累積(画素スコアがゼロに近い場合)又は無意味な結果(画素スコアがゼロに等しい場合)につながる。更に除算は計算上の観点から加算、減算及び乗算よりもかなり高価な演算であり、その結果性能の向上が大幅に少なくなる。
【0034】
好ましい実施形態では、前記ユーザ要求は少なくとも予め定義された地理的境界に関連する所望の集約タイプを更に含む。少なくとも2つの層の選択はいくつかの地域を含む少なくとも1つの境界ベース層を含み、各地域は少なくとも1つの地域属性情報に関連する。前記重ね合わせ地図は好ましくは階級区分図又はヒートマップである。
【0035】
これは、予め定義された地理的境界に従って与えられるデータに少なくとも部分的に基づいて、階級区分図又は好ましくはヒートマップの効率的な計算に対処するという利点を提供する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、前記ユーザ要求がPOIsに関連する所望の集約タイプを更に含む。少なくとも2つの層の選択はいくつかのPOIsを含む少なくとも1つのPOI層を含み、各POIは少なくとも1つのPOI属性情報に関連する。前記重ね合わせ地図は好ましくはヒートマップである。
【0037】
好ましい実施形態では、前記重ね合わせ地図がヒートマップであり、前記少なくとも1つのPOI層の各々について前記画素スコアを計算するステップは、
・前記POI層に関連する各POIについて、前記ユーザ要求に含まれる好ましくはユーザ提供バッファ半径に等しいバッファ半径を有するバッファを作成するステップと、
・生成されたバッファのうち重複するバッファを解消し、バッファの縮小セットを取得するステップと、
・前記縮小セットに属する各バッファについて、前記バッファの場所に基づいて前記POI属性情報のうち少なくとも1つをバッファに割り当てるステップと、
・好ましくは、前記縮小セットに属する各バッファの重心を計算し、前記重心及び好ましくはユーザ提供拡張バッファ半径に等しい拡張バッファ半径に基づいて各バッファの拡張バッファを定義するステップと、
・対応する画素が属するバッファの1つ以上の属性情報に基づいて及び/又は対応する画素が最も近いバッファの1つ以上の属性情報に基づいて、前記画素スコアを計算するステップと、
を含む。
【0038】
このような実施形態は、好ましくは更なる好ましい実施形態と組み合わされ、前記画素スコアを計算するステップは、
・前記縮小セットに属する各バッファの重心を計算し、前記重心及び好ましくはユーザ提供拡張バッファ半径に等しい拡張バッファ半径に基づいて各バッファの拡張バッファを定義するステップと、
・対応する画素が属する1つ以上の拡張バッファの1つ以上の属性情報に基づいて前記画素スコアを計算するステップと、
を含む。
【0039】
これは、前記ヒートマップの作成が階層的に取り組まれ、全ての層の追加に関して機敏性を持つという点で有利であり得る。前記バッファの解消の更なる利点は、POIsの数を低減することができ、ヒートマップの主要な地物である極値に関して得られるヒートマップの十分な精度を維持しながら、計算負荷低減の更なる改善につながることである。
【0040】
好ましい実施形態では、前記重ね合わせ地図がヒートマップであり、少なくとも2つの層の選択がいくつかの地域を含む少なくとも1つの境界ベース層を含み、各地域は少なくとも1つの地域属性情報に関連し、前記少なくとも1つの境界ベース層の各々が各地域の地域重心を含み、前記画素スコアを計算するステップは、
・地域重心に基づいて各地域のエリアバッファを定義するステップと、
・対応する画素が属する1つ以上のエリアバッファの1つ以上の属性情報に基づいて前記画素スコアを計算するステップと、
を含む。
【0041】
これは、新規層の追加に関して更なる機敏性を提供する。
【0042】
別の好ましい実施形態では、選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアを計算するステップが少なくとも層の前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの標本平均の計算を含み、前記標本平均は層に関する前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの平均に関連し、前記画素スコアは、少なくとも対応する画素の属性情報値及び前記標本平均に基づいている。これは好ましくは更なる好ましい実施形態と組み合わせることができ、選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアを計算するステップが層の前記少なくとも1つの属性情報のうち1つの標本標準偏差の計算を更に含み、前記標本標準偏差は層に関する前記少なくとも1つの属性情報の1つの標本平均との差に関連し、前記画素スコアは、前記標本標準偏差に更に基づく。
【0043】
これは、スコア又は層が再縮尺され、他の層に由来するスコアとのより良好な比較を可能にする点で有利であり得る。
【0044】
更なる好ましい実施形態では、選択された画像データ層の各々について、前記画素スコアはzスコアであり、各画素の前記合併スコアは、層の各々のzスコアの加重和、好ましくは層の各々のzスコアの合計に関係する。ここで前記zスコアは、前記層の前記少なくとも1つの属性情報の1つと、前記標本平均を前記標本標準偏差で除算したものとの差である。
【0045】
これは、スコア又は層が既知の数値レシピに従って再縮尺され、層をまたいだスコアの合計を単純にすることが可能な点で有利であり得る。これは新規層の追加に関する機敏性につながるが、よりユーザフレンドリーで透明なヒートマップの作成にもつながり、ユーザはデータに関する以前の経験に基づいて層を追加又は削除する影響をある程度まで予測することができる。これはヒートマップを編集するユーザフレンドリーな方法につながり、ユーザは好ましくはユーザが慣れ親しんでいるデータの正確なヒートマップ表現により速く到達することができる。
【0046】
別の好ましい実施形態では、zスコアである前記画素スコアを計算する前記サブステップは、前記選択された層の各々について前記zスコアをメモリに格納するステップを含み、前記方法は、
・前記重ね合わせ地図を更新する第2のユーザ要求を前記サーバで受信するステップであって、前記第2のユーザ要求は前記選択とは異なるが前記選択と共通する少なくとも1つの層を有する第2の選択を含む、受信ステップと、
・前記第2の選択を考慮して画像データを更新するステップであって、前記選択及び前記第2の選択の両方に属する前記少なくとも1つの層の各々について、前記メモリから前記zスコアを読み込むことで前記zスコアの前記計算を回避する、更新ステップと、
を更に含む。
【0047】
これは、更新されたヒートマップをより迅速に更新することを可能にし、ユーザにユーザフレンドリーなツールを提供し、層を迅速に追加及び削除して明確な及び/又は正確なヒートマップに実験的に到達するという点で有利であり得る。
【0048】
本発明は、本発明を更に例示する以下の非限定的な例によって更に説明され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
[実施例]
【実施例1】
【0049】
<地域の魅力を示すヒートマップ作成例>
図1は、本発明に従って生成される例示的なヒートマップを示す。ヒートマップは10個のPOI層及び5個の境界ベース層に基づいて生成され、全てスロバキア又はスロバキアの一部を関心地理的地域としている。図1のヒートマップは、関心地理的地域がプレショフ市とその周辺地域であることを例示している。(例示の目的で2本の主要道路とトリサ川を示している。)
【0050】
ヒートマップは、地域の魅力度の指標に関するデータ分析の手段を提供する。この指標は、ヒートマップの重みとして使用される。すなわち、10個のPOI層及び5個の境界ベース層を含む元のベクトルデータは、画素からなる画像データに変換され、各画素値は所与の画素に対応する場所に対するその場所の魅力度の指標値に対応する。これにより場所の魅力度の指標が0から100の範囲値となるような指標尺度となっている。
【0051】
図1に示すようなヒートマップは、ヒートマップの白黒解釈であり、実際にはカラーランプに従って印刷されることを意図している。白黒解釈は、それぞれ第1、第2、第3及び第4の閾値41~44に従って輪郭線を示し、閾値は増加する順にランク付けされ、各閾値はゼロより大きく100より小さい。閾値の例示的な値としては、例えばそれぞれ20、40、60、80、又はそれぞれ30、50、70、90であってもよい。
【0052】
図1に示すように、ヒートマップは、指標が指標の第1の閾値41を下回る多くのゾーンを提供する。着色ヒートマップでは、これらのゾーンは透過的に表示され、すなわち重ね合わせ地図は透明である。
【0053】
・第1の閾値41と第2の閾値42との間の値の指標については、指標値は低い。着色ヒートマップでは、これらのゾーンを例えばカラースペクトルの青色部分に関連する第1の範囲の色で表示してもよく、指標値の値がより高いほどより緑がかった色合いになる「傾向がある」。
【0054】
・第2の閾値42と第3の閾値43との間の値の指標については、指標値は中程度である。着色ヒートマップでは、これらのゾーンを例えばカラースペクトルの緑色部分に関連する第2の範囲の色で表示してもよく、指標値の値がより高いほどより黄色がかった色合いにある「傾向がある」。
【0055】
・第3の閾値43と第4の閾値44との間の値の指標については、指標値は高い。着色ヒートマップでは、これらのゾーンを例えばカラースペクトルの黄色部分に関連する第3の範囲の色で表示してもよく、指標値の値がより高いほどよりオレンジ色の色合いになる「傾向がある」。
【0056】
・第4の閾値44を超える値の指標については、指標値は非常に高い。着色ヒートマップでは、これらのゾーンを例えばカラースペクトルのオレンジ色部分に関連する第4の範囲の色で表示してもよく、指標値の値がより高いほどより赤い色合いになる「傾向がある」。
【0057】
全体として、重ね合わせ地図であるヒートマップは以下の方法に従って作成される。最初に、重ね合わせ地図を作成するユーザ要求をサーバで受信する。ユーザ要求は前記いくつかの層のうち少なくとも2つの層の選択を含み、ユーザがヒートマップを生成させたいPOI層を示す。
【0058】
次に、サーバでベクトルデータを読み込む。ベクトルデータは、層当たり少なくとも1つの属性情報を含む場所データを含む。ベクトルデータの読み込みは前記層の選択に基づき、好ましくはユーザが選択した層のベクトルデータのみを読み込む。
【0059】
そして、ベクトルデータを指標尺度に従って画素からなる画像データに変換する。ここでいう「画像データ」とは、単に指標値を含む行及び列の行列を指す。この行列は、各エントリを画素に対応させてカラーランプを適用することにより画像データとして「解釈」され、ヒートマップが生成される。
【0060】
本発明において特に重要なことは、ベクトルデータの前記変換が前記選択された層の各々について行われ、前記選択された層の各々について画素から構成される画像データ層が生成されることである。これは可能な限り広い解釈として解釈されるべきであり、それによってデータの実際の計算が異なる好ましい実施形態に従って行われてもよい。
【0061】
指標尺度に従ってベクトルデータを画像データに変換するステップは、いくつかのサブステップを含む。最初に、前記選択された画像データ層の各々について前記場所データに関連する畳み込み演算を行うことにより、画像データ層の各画素の画素スコアを計算する。特に、選択された各POI層に対してバッファ半径25mのバッファが生成される。これは本質的に円形であってもよいが(POIが地図上の一点である場合)、典型的にはこれらのバッファはPOIの輪郭に基づいて計算されるいくつかの滑らかな形状を有する。この値は予め定義されていてもよいが、前記ユーザ要求に含まれるようにユーザによって与えられてもよい。次いで、前記生成されたバッファのうち重なり合うバッファを解消し、バッファの縮小セットを取得する。例えば合併した2つの円形バッファは8形状の輪郭を有することができる。一般に、解消バッファは、関与するバッファの数及びそれらのそれぞれの形状に応じて多くの形状を有することができる。次に、GISアプリケーションコンテキストに依存し得る別のステップによって、新しく作成されたバッファが個別にアドレス可能であることを保証する。一実施形態では、この動作を「複数パーツから単一パーツへ」と呼ぶ。前記縮小セットに属する各バッファに対して、次のステップでは、バッファの場所に基づいてPOI属性情報のうち少なくとも1つをバッファに割り当てる。最後にこれらの解消バッファの各々について重心を計算する。次いで、これらの新たに計算された重心は前記重心に基づいて各バッファの拡張バッファを定義するのに役立ち、拡張バッファ半径は250mに等しくなる。この値は好ましくはユーザ提供拡張バッファ半径に等しい。
【0062】
次のステップでは、拡張バッファに対する画素の関係に基づいて画素スコアを計算することができる。拡張バッファの各々が解消バッファの属性情報を継承している場合、画素スコアは画素が属する拡張バッファの全ての属性情報に関連し得る。これにより、これは例えば解消バッファに割り当てられ、次いで拡張バッファに持ち越されるPOIsの離散数に関連し得る。各層について、この数は同じPOI層に属する他の拡張バッファに関連付けられる他の全ての数に関連して最初に処理され、zスコアを取得することができる。次いで、所与の層に関する画素の画素スコアをzスコアとしてもよい。
【0063】
次のステップでは、個々の層のzスコアを合併して各画素のzスコアの最終的な合計を得る。上記において、zスコアの合計は層当たりの画素当たりのzスコアの合計として得てもよい。しかし代替的な実施形態によれば、画素当たりのzスコアの合計は層をまたいだ各重心に関するzスコアを集約することによっても得ることができ、次いで画素レベルでzスコアを取得することができることに留意されたい。
【0064】
zスコアの最終的な合計は、最終的に得られる指標が0から100の範囲となるように、何らかのスケーリング関数に従って処理される。
【0065】
この例から、新たに定義された拡張バッファが関心地理的地域の大部分をカバーすることが可能であること、あるいは地域全体をカバーすることさえ可能であることが更に明らかとなり得る。このことは、ヒートマップを作成する課題に対処するときにクラスタリング戦略を適切に行うことが重要であることを示している。
【0066】
異なるPOI層に関して、図1の例は10個のPOI層に基づく。3つの例示的なPOI層は以下の通りであり、各々が個々のPOIカテゴリを示す。
教育:学校、図書館、幼稚園、大学、専門大学
スポーツ:運動場、ピッチ、スポーツセンター、スタジアム、スイミングプール
健康:薬局、医師、歯科医、眼科医、病院
【0067】
他の例示的なPOI層は公共施設(例えば郵便ポスト)、買い物、宿泊施設、食品、文化、旅行、交通機関(例えば駐車場)に関連し得る。
【0068】
この例は以下の境界ベース層の属性情報(購買力、移住活動、会社数、失業率、犯罪事件の解決数等)を更に含むことができ、それによってこれらの属性情報の値は例えば場所に基づいてバッファ又は拡張バッファに引き継ぐことができる。これらの層の各々は例えば地方自治体、地域、地区又は都道府県によって編成されてもよい。
【0069】
場合によっては、ヒートマップが関心地理的地域の全ての部分のデータを確実に有することが望ましいことがある。このような場合には、既存POI層及び/又は新規POI層の追加の属性情報を考慮してもよい。
【0070】
前記バッファの解消の更なる利点は、POIsの数を低減することができ、ヒートマップの主要な地物である極値に関して得られるヒートマップの十分な精度を維持しながら、計算負荷低減の更なる改善につながることである。
図1