(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】配管内補修装置、配管内補修方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/127 20060101AFI20240119BHJP
B23K 9/29 20060101ALI20240119BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20240119BHJP
B23K 37/02 20060101ALI20240119BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B23K9/127 501Z
B23K9/127 508A
B23K9/29 E
B23K31/00 D
B23K37/02 301Z
F16L55/18 Z
(21)【出願番号】P 2021083755
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591027237
【氏名又は名称】コスモエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】又賀 和昭
(72)【発明者】
【氏名】陶山 雄貴
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143507(JP,A)
【文献】特開平11-267985(JP,A)
【文献】特開平07-223073(JP,A)
【文献】特開2001-179448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
B23K 9/29
B23K 31/00
B23K 37/02
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチ部と、前記溶接トーチ部の位置を変更可能に支持するロボットアーム部と、を有し、配管内で溶接を行うことが可能な
MAG溶接可能なガスシールドアーク溶接機と、
前記配管内の補修すべき箇所を含む画像情報又は前記補修すべき箇所と前記補修すべき箇所の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得する視覚センサ部と、
前記視覚センサ部で得た画像情報に基づいて前記マーカおよび前記マーカの近傍の前記補修すべき箇所を認識し、前記ロボットアーム部および前記溶接トーチ部を制御して、前記補修すべき箇所を溶接補修させる制御部と、
前記溶接機、前記視覚センサ部、および前記制御部に電力供給する
ディーゼルエンジン発電機と、
前記ガスシールドアーク溶接機と、前記視覚センサ部と、前記制御部と、前記ディーゼルエンジン発電機と、を載置可能な台車と、
を備える配管内補修装置。
【請求項2】
前記視覚センサ部は、前記配管の底部に対応した前記画像情報を取得する請求項1に記載の配管内補修装置。
【請求項3】
前記発電機から電力供給を受けて前記配管内を照らす光源を有する請求項1
又は請求項2に記載の配管内補修装置。
【請求項4】
溶接トーチ部と前記溶接トーチ部の位置を変更可能に支持するロボットアーム部とを有する
MAG溶接可能なガスシールドアーク溶接機と、視覚センサ部と、前記溶接機および前記視覚センサ部を制御する制御部と、これらに電力供給する
ディーゼルエンジン発電機と、を備えた配管内補修装置を用いた配管内補修方法であって、
前記配管内の環境を整え、
検査人が前記配管内を移動して補修すべき箇所にマーカを付与し、
前記配管内で前記配管内補修装置を移動させ、前記視覚センサ部により前記配管内の補修すべき箇所と前記補修すべき箇所の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得し、
前記制御部により前記画像情報に基づき前記ロボットアーム部を制御して前記補修すべき箇所の近傍に前記溶接トーチ部を移動させ、
前記制御部により前記溶接トーチ部を制御して前記補修すべき箇所を溶接補修する配管内補修方法。
【請求項5】
前記視覚センサ部は、前記配管の底部に対応した前記画像情報を取得する請求項
4に記載の配管内補修方法。
【請求項6】
前記配管内補修装置は、前記
ガスシールドアーク溶接機と、前記視覚センサ部と、前記制御部と、前記
ディーゼルエンジン発電機と、を載置する台車を備え、
前記配管内で前記配管内補修装置を移動させる工程において前記配管内補修装置は、前記台車で移動する
請求項4又は請求項5に記載の配管内補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の内側から配管の補修をすることが可能な配管内補修装置および配管内補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の補修を外側からシール材を当てて配管の亀裂等を補修する配管の補修方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この配管の補修方法では、半割リング状のシール材を嵌装した半割筒状のクランプ材により、シール材の内周縁部が配管外周に当接するように配管を包囲する。そして、クランプ材の内周面と、シール材の側面と、配管の外周面と、によって形成された空間内に空気抜きを行いながら、配管内を流通する流体の圧力よりも高い圧力の充填材を注入充填し、配管の外側から配管の補修を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管が水中(海中)に配置される場合や、地中に埋設される場合には、配管の外側から配管の補修をすることができない問題がある。一方、配管の内側から配管を補修する場合には、配管内に電源がない問題や照明や太陽光といった光源がない問題がある。さらには、配管を補修せずに交換する場合には、補修にかかる費用よりもはるかに高い莫大な更新費用を生じる問題がある。
従って、本発明の目的は、配管の内側から配管の補修作業を行うことができる配管内補修装置および配管内補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)の配管内補修装置は、
溶接トーチ部と、前記溶接トーチ部の位置を変更可能に支持するロボットアーム部と、を有し、配管内で溶接を行うことが可能な溶接機と、
前記配管内の補修すべき箇所を含む画像情報又は前記補修すべき箇所と前記補修すべき箇所の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得する視覚センサ部と、
前記視覚センサ部で得た画像情報に基づいて前記マーカおよび前記マーカの近傍の前記補修すべき箇所を認識し、前記ロボットアーム部および前記溶接トーチ部を制御して、前記補修すべき箇所を溶接補修させる制御部と、
前記溶接機、前記視覚センサ部、および前記制御部に電力供給する発電機と、
を備える。
【0006】
また、本発明(2)の配管内補修装置は、(1)記載の配管内補修装置であって、
前記視覚センサ部は、前記配管の底部に対応した前記画像情報を取得する。
【0007】
また、本発明(3)の配管内補修装置は、(1)又は(2)記載の配管内補修装置であって、
前記溶接機と、前記視覚センサ部と、前記制御部と、前記発電機と、を載置可能な台車を備える。
【0008】
また、本発明(4)の配管内補修装置は、(1)~(3)のいずれか1項に記載の配管内補修装置であって、
前記溶接機は、ガスシールドアーク溶接機である。
【0009】
また、本発明(5)の配管内補修装置は、(1)~(4)のいずれか1項に記載の配管内補修装置であって、
前記発電機から電力供給を受けて前記配管内を照らす光源を有する。
【0010】
本発明(6)の配管内補修方法は、
溶接トーチ部と前記溶接トーチ部の位置を変更可能に支持するロボットアーム部とを有する溶接機と、視覚センサ部と、前記溶接機および前記視覚センサ部を制御する制御部と、これらに電力供給する発電機と、を備えた配管内補修装置を用いた配管内補修方法であって、
前記配管内の環境を整え、
検査人が前記配管内を移動して補修すべき箇所にマーカを付与し、
前記配管内で前記配管内補修装置を移動させ、前記視覚センサ部により前記配管内の補修すべき箇所と前記補修すべき箇所の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得し、
前記制御部により前記画像情報に基づき前記ロボットアーム部を制御して前記補修すべき箇所の近傍に前記溶接トーチ部を移動させ、
前記制御部により前記溶接トーチ部を制御して前記補修すべき箇所を溶接補修する。
【0011】
本発明(7)の配管内補修方法は、(6)記載の配管内補修方法であって、
前記視覚センサ部は、前記配管の底部に対応した前記画像情報を取得する。
【0012】
本発明(8)の配管内補修方法は、(6)又は(7)記載の配管内補修方法であって、
前記配管内補修装置は、前記溶接機と、前記視覚センサ部と、前記制御部と、前記発電機と、を載置する台車を備え、
前記配管内で前記配管内補修装置を移動させる工程において前記配管内補修装置は、前記台車で移動する。
【0013】
本発明(9)の配管内補修方法は、(6)~(8)記載の配管内補修方法であって、
前記溶接補修は、ガスシールドアーク溶接である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管の内側から配管の補修作業を行うことができる配管内補修装置および配管内補修方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の配管内補修装置を配管内に配置し、配管をその中心軸に沿う面で切断して示す断面図である。
【
図2】
図1に示す配管内補修装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の配管内補修装置を用いた配管内補修方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示すフローチャートの溶接補修工程の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しつつ本発明の配管内補修装置およびそれを用いた配管内補修方法について説明する。配管内補修装置は、例えば、原油のパイプライン等の円筒形の配管又は方形筒状の配管を内側から補修できるものである。また、配管内補修装置は、配管を補修する際に作業の一部に人手を介するものの、他の大部分の作業を自動化した半自動的な溶接補修を可能にするものである。
[実施形態]
【0017】
図1~
図4を参照して、第1実施形態の配管内補修装置11およびそれを用いた配管内補修方法について説明する。
【0018】
図1、
図2に示すように、配管内補修装置11は、溶接トーチ部12とロボットアーム部13とを有する溶接機14と、配管15内で画像情報を取得する視覚センサ部16と、溶接機14の溶接トーチ部12およびロボットアーム部13を制御する制御部17と、溶接機14、視覚センサ部16、および制御部17に電力供給する発電機18と、配管15内を照らすための光源21と、溶接機14の溶接トーチ部12に供給するためのシールドガスを貯留したガスボンベ22と、制御部17にコマンドを入力するためのコントローラ23(教示ペンダント)と、これらを載置した1以上の台車24と、を備える。補修対象となる配管15は、炭素鋼製であることが多い。台車24は、一台で構成されていてもよいし、2以上で構成される場合には互いに連結部を介して連結されていてもよい。
【0019】
溶接機14は、例えば、一部がロボット化されたコンピュータ制御によって半自動的に動作する半自動溶接機(GMAW;CO2、MAG)で構成される。溶接機14は、ガスシールドアーク溶接機であり、Gas Metal Arc Weldingと呼ばれる溶接法を用いる。このGas Metal Arc Weldingと呼ばれる溶接法には、CO2溶接やMAG溶接が含まれる。溶接機14は、制御部17に記憶されたプログラムに従い、配管15内で半自動的に溶接を行うことができる。溶接機14は、溶接棒を兼ねる接線ワイヤとその外側のガスノズルとを含む溶接トーチ部12と、溶接トーチ部12を支持するロボットアーム部13と、を有する。接線ワイヤは、ガスシールドアーク溶接時の電極を構成する。溶接機14は、発電機18から電力供給を受けて各部に電力を供給する図示しない電源回路を有する。溶接機14は、配管15に対して電気的に接続するアース線を有する。溶接機14は、配管15の底部に対して溶接補修を行うことができる。ここで、配管15の底部とは、円筒形の配管15の天頂方向を12時方向としたときに、概ね5時から7時まで範囲内に対応する部分である。配管15が方形ダクト状に形成される場合には、配管15の底部は、配管15の最も下側に位置した下面に対応する部分である。
【0020】
ロボットアーム部13は、例えば、直交3軸移動ロボット(X軸Y軸Z軸移動テーブル)で構成されているが、それ以外の多関節型のアーム形ロボットで構成されていてもよい。
【0021】
視覚センサ部16は、撮像素子(CCDセンサ又はCMOSセンサ)およびレンズを有する一般的なカメラ又はビデオカメラで構成されており、配管15内の様子を画像情報として取得できる。或いは、視覚センサ部16は、レーザ光を用いて補修すべき箇所までの距離と、補修すべき箇所およびその周囲の凹凸の高さの変位と、を測定可能なレーザ変位計(laser displacement sensor)であってもよい。レーザ変位計で構成される視覚センサ部16は、補修すべき箇所を含む配管15の内面の凹凸を3次元的に取得することで得られる情報を画像情報として取得できる。視覚センサ部16で取得した画像情報は、制御部17に送られて制御部17の記憶装置に蓄積される。視覚センサ部16は、暗視カメラ等の別途に光源21を必要としないカメラ等で構成されていてもよい。視覚センサ部16は、配管15の補修すべき箇所と溶接トーチ部12との間の距離を測定可能なレーザ測定器やその他の距離センサを有していてもよい。
【0022】
制御部17は、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)で構成されているが、それ以外のワンチップマイコン、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他のコンピュータ等で構成されていてもよい。制御部17は、例えば、CPUと、ROM・RAM・HDD(ハードディスクドライブ)・SSD(ソリッドステートドライブ)等の記憶装置と、それらを接続する内部バスと、CPUに電気的に接続されてロボットアーム部13のモータを駆動したり、溶接トーチ部を制御したりする各種のドライバICと、を有する。記憶装置は、溶接機14のロボットアーム部13および溶接トーチ部12を制御するための各種の制御プログラム(制御用ソフトウェア)を記憶している。また、記憶装置は、視覚センサ部16で取得した画像情報を画像解析する画像解析プログラム(画像解析用ソフトウェア)を記憶している。記憶装置は、視覚センサ部16から送られた画像情報を随時記憶することができる。制御部17は、安全停止プログラムを記憶装置に記憶していてもよい。すなわち、配管内補修装置11は、制御部17に接続され配管内補修装置11の姿勢の異常(例えば、横転等)を感知できる加速度センサや、発電機18等の異常を感知できる各種のセンサを有していてもよい。制御部17は、加速度センサや各種のセンサからの信号に基づき、異常を検知した場合には、安全停止プログラムに従って、配管内補修装置11を緊急停止させてもよい。制御部17は、配管内補修装置11を緊急停止させた後に、エラーの信号を発出して、緊急停止があったことを管理者に報知してもよい。
【0023】
コントローラ23は、管理者がコマンドを入力するための複数の操作ボタン25と、管理者によって操作ボタン25を介して入力されたコマンドを表示したり制御部17からのエラーメッセージを表示したりするための液晶表示部26と、を有する。コントローラ23は、上記安全停止プログラムによって緊急停止した状態から配管内補修装置11を復帰させるスイッチを有していてもよい。コントローラ23は、緊急時に管理者が手動で操作して配管内補修装置11の電源を強制的に落とすことが可能な緊急停止スイッチを有していてもよい。なお、緊急停止スイッチは、管理者が携帯するリモコンに設けられていてもよく、当該リモコンとコントローラ23との間で無線によって信号をやりとりして、配管内補修装置11の電源を落とすようにしてもよい。コントローラ23は、配管内補修装置11を起動したり、上記緊急停止スイッチの操作によって電源が落とされた配管内補修装置11を再起動したりするための電源スイッチを有していてもよい。
【0024】
発電機18は、一般的なディーゼルエンジン発電機で構成されている。台車24は、金属材料によって構成された一般的な台車24(トロッコ)で構成されている。台車24は、発電機18から電力供給を受けたモータによって自走するものであるが、管理者の人力によって前進・後退できるものであってもよい。
【0025】
光源21は、発電機18から電力供給を受けて配管15内を照らすことができる。光源21は、例えば、LED照明で構成されているが、ハロゲンランプ等の他の光源ランプで構成されていてもよい。視覚センサ部16が暗視カメラで構成される場合には、光源21を省略してもよい。
【0026】
ガスボンベ22は、シールドガス(CO2ガス又はアルゴン等の不活性ガス)を内側に貯留しており、溶接機14からの操作を受けて、シールドガスの量を調整して溶接トーチ部12のガスノズルにシールドガスを供給できる。
【0027】
続いて、
図3、
図4等を参照して、本実施形態の配管内補修装置11を用いた配管内補修方法を説明する。まず、配管15内の環境を整える工程を行う。配管15内の環境を整える工程では、具体的に、配管15内から原油等の流体を除去して、必要に応じて洗浄等を行う。続いて、配管15内に空気を流通させて、検査人および溶接補修を管理する管理者が入れる配管内環境を形成する。
【0028】
補修に先立ち、検査人が配管内を移動して目視により検査し、補修すべき箇所27にチョークやステッカー、その他の目印等で構成されるマーカを付与する工程(ステップS11)を行う。マーカの付与後に、配管15内に配管内補修装置11を導入する。配管15内には、配管内補修装置11とともに、配管内補修装置11による溶接補修を管理するための管理者が入る。配管内補修装置11は、発電機18から電力供給を受けたモータによってよって自走するものであるが、管理者の人力によって前進・後退できるものであってもよい。また、配管内補修装置11は、配管15内に導入された直後に発電機18が起動され、発電機18から電力供給を受けた光源21によって、配管15内で配管内補修装置11の直下および配管内補修装置11よりも前方を照明できる。
【0029】
配管内補修装置11がマーカを付与した地点の近傍まで移動を完了した後に(ステップS12)、次の溶接補修工程(ステップS13)に移行する。溶接補修工程(ステップS13)は、台車24から溶接機14、視覚センサ部16、および制御部17を降ろさずに行うようにしているが、人力又は機械力によって台車24からこれらを降ろして、配管15にマグネット等を介して固定してから行ってもよい。
【0030】
管理者がコントローラ23を操作して配管内補修装置11の制御部17、溶接機14、および視覚センサ部16を起動する。或いは、配管内補修装置11の制御部17、溶接機14、および視覚センサ部16は、配管15内に導入された直後に管理者によって起動されてもよい。
【0031】
配管内補修装置11の制御部17、溶接機14、および視覚センサ部16が起動すると、溶接補修工程が開始する(ステップS13)。溶接補修工程(ステップS13)の詳細を
図4に示す。制御部17は、視覚センサ部16を介してマーカおよびマーカ近傍の補修すべき箇所を含む配管15内の画像情報を取得する(ステップS21)。制御部17は、画像解析用ソフトウェアを起動して、画像情報内のマーカおよびマーカ近傍の補修すべき箇所(配管15内に腐食によって形成された凹部)を画像認識する(ステップS22)。このとき、制御部17は、視覚センサ部16を介して、円筒形の配管15の内面の全周360°ではなく、配管15の底部に対応する箇所の画像情報を取得することで、画像情報を記憶するのに必要な記憶装置の容量を低減する。また、補修すべき箇所27を含まない余計な画像情報を排除することで、制御部17の演算処理速度を最速化するとともに動作を安定化することができる。これによって、作業全体の進行を円滑に進めることができる。
【0032】
制御部17は、さらにロボットアーム部13を制御して、溶接トーチ部12を補修すべき箇所27の直上に移動させる(ステップS23)。続いて、制御部17は、溶接トーチ部12を駆動するとともに溶接トーチ部12のガスノズルにシールドガスを供給し、補修すべき箇所27を溶接(ガスシールドアーク溶接)で肉盛り(穴埋め)補修をする(ステップS24)。溶接補修の完了後、制御部17はロボットアーム部13を制御して溶接トーチ部12を初期位置に戻すように移動させる(ステップS25)。これによって1回の溶接補修工程が完了する。
【0033】
図3に示すように、制御部17は、溶接補修が完了した箇所以外に、取得した画像情報内でマーカおよび補修すべき箇所27がないかを確認する(ステップS14)。画像情報内にマーカおよび補修すべき箇所27が残存している場合には、制御部17は、当該残存している補修すべき箇所27に対して、上記と同様の手順で溶接補修工程を行う(ステップS13)。画像情報内にマーカおよび補修すべき箇所27が残存しない場合には、当該位置での溶接補修工程を完了する。
【0034】
配管15内の他の位置、例えば、現在地よりも前方にマーカおよび補修すべき箇所27が残存している場合には(ステップS15)、配管内補修装置11をマーカを付与した他の地点の近傍まで移動させる(ステップS12)。その位置で上記と同様の手順で溶接補修工程(ステップS13、ステップS14)を行う。配管15内のすべての補修すべき箇所の補修が完了し、配管15内にマーカおよび補修すべき箇所27が残存しない場合には、配管15の補修作業が完了する(ステップS15)。
【0035】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。配管内補修装置11は、溶接トーチ部12と、溶接トーチ部12の位置を変更可能に支持するロボットアーム部13と、を有し、配管15内で溶接を行うことが可能な溶接機14と、配管15内の補修すべき箇所27と補修すべき箇所27の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得する視覚センサ部16と、視覚センサ部16で得た画像情報に基づいて前記マーカおよび前記マーカの近傍の補修すべき箇所27を認識し、ロボットアーム部13および溶接トーチ部12を制御して、補修すべき箇所27を溶接補修させる制御部17と、溶接機14、視覚センサ部16、および制御部17に電力供給する発電機18と、を備える。
【0036】
特殊環境に対応できる熟練した溶接工が人材不足となっており、熟練した溶接工のもつ技術の承継が重要課題となっている。また、暗く密閉された配管15内での溶接作業であるので、予測し得ないリスクが存在している可能性がある。上記の構成によれば、電源の存在しない配管15内に、発電機18を持つ配管内補修装置11を導入することで、配管15内の腐食箇所の補修作業を人力に寄らずに配管内補修装置11によって半自動的に行うことができる。これによって、溶接作業員のもつ高度な技術の承継の問題を解決できる。また、溶接作業員に対する潜在的リスクをなくすことができる。
【0037】
視覚センサ部16は、配管15の底部に対応した前記画像情報を取得する。配管15が原油のパイプライン等である場合には、配管15内で腐食する箇所は、配管15の底部に限られ、配管15の底部の肉厚が腐食によって減少する。なぜなら、原油に混入している水や海水は、比重の関係で配管15の底部に溜まることになるからである。上記構成によれば、視覚センサ部16で取得する画像情報を配管15の底部に対応するものにしているため、視覚センサ部16を配管15の全周である360°に対応するように複数設ける必要がなくなり、装置構成を簡略化することができる。また、取得した画像情報を保存する記憶装置の容量も小さくすることができる。また、補修すべき箇所27を含まない余計な画像情報を排除することで、制御部17の演算処理速度を最速化するとともに動作を安定化することができる。これによって、作業全体の進行を円滑に進めることができる。さらに、溶接機14の装置構成も簡略化できる。
【0038】
溶接機14と、視覚センサ部16と、制御部17と、発電機18と、を載置可能な台車24を備える。この構成によれば、配管15内で重量のある溶接機14や発電機18を輸送する際に輸送作業を楽に行うことができる。
【0039】
溶接機14は、ガスシールドアーク溶接機である。例えば溶接作業員による溶接補修では、コスト優位性があり且つ最も一般的な溶接手法である被覆アーク溶接を用いることが想定される。しかしながら、一連の被覆アーク溶接作業では、まず研削加工用のグラインダーによって溶接面を整え、被覆アーク溶接で肉盛りを行い、被覆アーク溶接後に溶接部に発生するスラグおよび溶接部の周囲に発生するスパッタを再度グラインダーで除去する必要がある。このように、溶接作業員による被覆アーク溶接を用いた補修では、作業工数が多く作業が煩雑であるだけでなく、グラインダーで発生する粉塵による安全性の問題や健康被害の問題を生じる可能性があることが想定される。一方、配管15内にバッテリー等を持ち込むことも考えられるが、バッテリーでは電力容量不足を生じる問題や、或いは低温環境下で電力供給量が低下してしまう問題がある。上記の構成によれば、被覆アーク溶接に比して、スラグおよびスパッタが発生せず、作業工数を少なくして、溶接補修作業を短時間で完了できる。これによって、配管内補修装置11による溶接作業を管理する管理者の負担軽減と、作業の短時間化による潜在リスクの低減および管理者の長時間労働の解消とを実現できる。
【0040】
発電機18から電力供給を受けて配管15内を照らす光源21を有する。この構成によれば、暗い配管15内に照明を設置することができる。これによって、視覚センサ部16による高解像度の画像取得を円滑にして、溶接機14による溶接作業の精度を向上できる。
【0041】
配管内補修方法は、溶接トーチ部12と溶接トーチ部12の位置を変更可能に支持するロボットアーム部13とを有する溶接機14と、視覚センサ部16と、溶接機14および視覚センサ部16を制御する制御部17と、これらに電力供給する発電機18と、を備えた配管内補修装置11を用いた配管内補修方法であって、配管15から流体を取り除き、配管15内に空気を通し、検査人が配管15内を移動して補修すべき箇所27にマーカを付与し、配管15内で配管内補修装置11を移動させ、視覚センサ部16により配管15内の補修すべき箇所27と補修すべき箇所27の近傍に付されたマーカとを含む画像情報を取得し、制御部17により前記画像情報に基づきロボットアーム部13を制御して補修すべき箇所27の近傍に溶接トーチ部12を移動させ、制御部17により溶接トーチ部12を制御して補修すべき箇所27を溶接補修する。
【0042】
この構成によれば、電源の存在しない配管15内に、発電機18を持つ配管内補修装置11を導入することで、配管15内の腐食箇所の補修作業を人力に寄らずに配管内補修装置11によって半自動的に行うことができる。これによって、溶接作業員のもつ高度な技術の承継の問題を解決できる。また、溶接作業員に対する潜在的リスクを低減することができる。
【0043】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。
【符号の説明】
【0044】
11 配管内補修装置
12 溶接トーチ部
13 ロボットアーム部
14 溶接機
15 配管
16 視覚センサ部
17 制御部
18 発電機
21 光源
24 台車
27 補修すべき箇所