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特許7422737神経変性疾患を治療するためのPpargc1a活性化剤としての2‐アリールベンゾイミダゾール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】神経変性疾患を治療するためのPpargc1a活性化剤としての2‐アリールベンゾイミダゾール
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20240119BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240119BHJP
   C07D 235/18 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P25/02
C07D235/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021506624
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019045229
(87)【国際公開番号】W WO2020033359
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/714,962
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】バニスター,サムエル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エングルマン,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】グエン,クォア ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マーク
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0074367(US,A1)
【文献】特表2014-503527(JP,A)
【文献】特表2008-540586(JP,A)
【文献】国際公開第2012/118935(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245166(US,A1)
【文献】特表2019-505500(JP,A)
【文献】国際公開第2016/180472(WO,A1)
【文献】SUN, W. et al.,In vitro and in vivo metabolite identification of a novel benzimidazol compound ZLN005 by liquid chromatography/tandem mass spectrometry,Rapid Communications in Mass Spectrometry,2018年01月15日,Vol. 32, No. 6,pp. 480-488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 235/18
A61P 25/28
A61P 21/00
A61P 25/16
A61P 25/14
A61P 25/00
A61P 25/02
A61K 31/4184
A61K 31/437
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
【化1】
の化合物を含む、神経変性疾患治療用、又は老齢化に関連する認知障害及び神経炎症の治療用医薬組成物であって、
上記式中、
、N‐R であり
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はC‐Rであり;
はCであ
上記式中、
は、H、又は(C‐C)アルキルであり;
、R、R及びRは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH ]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐(C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから独立に選択され;
及びR10は、水素、重水素、ハロ、(C‐C)アルキル、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、及びアミノから独立に選択され;
及びRは、水素、重水素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、及びハロ(C‐C)アルコキシから独立に選択され;
は、tert-ブチルであり
ただし、前記化合物は
でない、医薬組成物。
【請求項2】
前記神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、前頭側頭型変性症、レビー小体型認知症、運動ニューロン疾患、及び脱髄疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
老齢化に関連する認知障害及び神経炎症の治療用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記式(III)の化合物が下記式:
【化2】
の化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬学的に許容可能な担体、及び下記式:
【化3】
の化合物又は薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患を治療するためのPpargc1aの化学的活性化剤としての、2‐アリールベンゾイミダゾール、2‐アリールベンゾオキサゾール、2‐アリールベンゾチアゾール、2‐アリールイミダゾ[1,2‐a]ピリジン、及びこれらのプロドラッグ誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[筋萎縮性側索硬化症]
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの消失を特徴とし、運動機能が徐々に低下して最終的には死に至る、重篤な神経変性疾患である。ALSの運動症状には筋力低下、筋攣縮及び筋肉消耗があり、このため発話、嚥下及び呼吸が困難となる。ALSにおける運動ニューロン死の原因は不明であり、ALS症例の5~10%は遺伝性である。
【0003】
中枢神経系及び末梢神経系における免疫細胞の活性化は、ALSの疾患進行の極めて重要な決定因子であると示唆されている(Phani ら, Frontiers in Pharmacology, (スイス), 2012, Vol.3, 150)。具体的には、ミクログリア及びマクロファージがこの疾患における神経炎症の組み立てに明確な役割を果たすことが示されている(Dibaj ら, PLoS One., (米), 2011, Vol.6, No.3, e17910; Boillee ら, Science, (米), 2006, Vol.312, p.1389-92)。注目すべきことに、宿主の骨髄性細胞を交換する骨髄移植術(BMT)はALSの動物モデルで生存期間を延長することが示されており、このことはCNSのミクログリアの交換によって仲介されると考えられた(Beers ら, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, (米), 2006, Vol.103, p.16021-6)。しかしながら最近の研究からは、この細胞が骨髄細胞からではなく、より未分化な卵黄嚢の前駆細胞から発生することが示されており(Ginhoux ら, Science, (米), 2110, Vol.330, p.841-5)、上記研究においてBMTの治療効果に関与した骨髄由来の細胞は、末梢又は脳の血管周囲マクロファージである可能性が高いことが示唆された。しかしながら、ALSの自然免疫細胞が関与する炎症に寄与している特定のシグナル経路は未だ完全には理解されていない。
【0004】
現在のところ、ALSを治す方法は存在しない。ある種の治療法、例えばリルゾール、骨髄移植術(Deda, Cytotherapy, (オランダ), 2009, Vol.11, p.18-25)、及び非侵襲的人工呼吸器(McDermott ら, BMJ, (英), 2008, Vol.336, p.658-62)は、生活の質を改善し、生存期間を延長することには若干の結果を示しているが、治癒をもたらすか又は劇的な利益をもたらす治療法はない。
【0005】
[アルツハイマー病]
アルツハイマー病(AD)は、記憶、認知、論理的思考、判断力及び情動安定性に加えて運動機能が進行性に失われることを臨床的な特徴とし、徐々に深刻な精神機能低下をもたらし最終的には死に至る、退行性脳障害である。酸化ストレスの形のニューロン代謝機能不全が、ADにおける神経変性の根本原因であるという説が示されている(Friedland-Leuner ら, Progress in Molecular Biology and Translational Science, (オランダ), 2014, Vol.127, p.183-201)。
【0006】
ADは各個人により発症のしかたに違いはあるが、数多くの共通した症状がある。初期症状は、年齢に関係した問題又はストレスの現われであると誤解されることが多い。初期段階では、最も一般的な症状は、運動機能低下及び最近の出来事を思い出せないこと(短期記憶喪失として知られている)である(Buchman ら, Expert Review of Neurotherapeutics, (英), 2011, Vol.11, p.665-76)。ADが疑われる場合、診断は通常は行動及び思考能力を評価するテストと、利用可能であれば多くの場合は追加される脳走査法とに基づいて行われる。しかしながら、確定診断には脳組織の検査が必要である。疾患が進行するにつれて、症状には錯乱、易刺激性、攻撃性、気分変動、言語障害、及び長期記憶喪失が含まれる可能性がある。患者の状態が悪化するにつれて、彼/彼女は家族や社会を避けるようになることが多い。徐々に身体機能が失われ、最終的には死に至る。
【0007】
[パーキンソン病]
特発性又は一次性パーキンソン症候群としても知られるパーキンソン病(PD)は、中枢神経系の神経変性疾患である。PDの運動症状は、中脳の一部である黒質のドーパミン生成細胞の死に起因するが、この細胞死の原因は不明である。この疾患の経過の初期に最も明白な症状は運動に関連する症状であり、振動、強剛、動作緩慢、並びに微細運動技能、歩行及び歩容の障害が挙げられる。後期には、この疾患の進行期によく生じる認知症と共に思考及び行動上の問題が発生する場合があるが、一方で抑うつが最も一般的な精神医学的症状である。他の症状には、感覚、睡眠及び情緒の障害が挙げられる。
【0008】
PDは、進行性の運動障害、及び中枢神経系に常在する免疫細胞であるミクログリアによって引き起こされる神経炎症を特徴とする(Aguzzi ら, Science, (米), 2013, Vol.339, p.156-61)。機能不全のミクログリアによって生産された炎症伝達物質はニューロンの細胞死を引き起こすことが示されているが、このことが神経変性疾患における認知及び行動に関する能力の進行性障害の根底にある(Czirr ら, Journal of Clinical Investigation, (米), 2012, Vol.122, p.1156-63)。しかしながら、ミクログリアを介した炎症に寄与する特定のシグナル経路は捉え難いままである。
【0009】
[ハンチントン舞踏病]
ハンチントン舞踏病(HD)は、ハンチンチン遺伝子に変異が生じている、常染色体優性遺伝形式の中枢神経系の変性疾患である。HDは、脳内の神経細胞の進行性の破壊(変性)を引き起こす遺伝病である。HDは人間の機能的能力に広く影響を及ぼし、通常は運動、思考(認知)及び精神の障害をもたらす。
【0010】
HDの症状は患者によって様々であるが、その一方でこの疾患の進行は比較的予測しやすい(Mason S ら, Journal of Neurology, (独), 2015, Vol.262, No.8, p.1990-5)。疾患の経過の初期には、症状は気分変調など潜行性である。後期には、認知及び運動の障害が生じる可能性があり、疾患の進行期には一般に認知症を生じる。舞踏運動(不随意運動)は最も一般的な運動症状である。他の合併症には、肺炎、心疾患、及び転倒による身体的外傷が挙げられる。
【0011】
HDを治す方法は目下存在せず、疾患が進行した患者には24時間介護が必要である。
【0012】
[前頭側頭型変性症]
前頭側頭型変性症(FTD)は、脳の前頭葉及び側頭葉に進行性の変性が生じる、ADと密接に関係する疾患である。グリオーシス及びミクログリアの炎症性活性化が、FTD患者及びFTD動物モデルにおいて報告されている(Cagnin ら, Annals of Neurology, (米), 2004, Vol.6, p.894-897; Yi ら, Journal of Experimental Medicine (米),2010, Vol.1, p.117-128)。FTD患者には行動及び言語の緩徐な低下が認められるが、記憶は通常は比較的維持される。疾患が進行するにつれて、罹患者は系統立てて活動し、適切に行動し、自立することが次第に困難になる。この疾患の進行を遅らせるか又は止める治療は目下存在しない。
【0013】
[レビー小体型認知症]
レビー小体型認知症(DLB)はPDに関係する認知症の一種である。この疾患の顕著な特徴は、罹患者の脳内にαシヌクレイン凝集物が存在することである。この患者には、PDのような症状、例えば前傾姿勢、筋強剛、引きずり足歩行及び運動開始困難、加えて論理的思考及び思考の変化、記憶障害(ただしADほど顕著ではない)が認められる。レビー小体はPDにも存在するので、これら2つの疾患は脳がαシヌクレインタンパク質をどのように処理するかという点で同じ根本的異常に関連づけることができる。さらに、PDと同様に、ミクログリアに関連した神経炎症がDLB患者の脳内に存在するが、ただしこの病理学的特徴がより広範囲に生じている(Iannaccone ら, Parkinsonism and Related Disorders, (オランダ), 2013, Vol.19, p.47-52)。
【0014】
[運動ニューロン疾患]
運動ニューロン疾患(MND)は、発話、歩行、嚥下、及び自発運動などの随意筋活動を制御する細胞である運動ニューロンを選択的に侵す、ALSに類似の神経学的障害である。MNDに有効な治療は存在しない。この疾患は本質的に神経変性疾患であり、進行性の身体障害及び死を引き起こす。さらに、プログラニュリンと呼ばれる特定の経路がMNDの動物モデルにおいてミクログリアの炎症性活性化を誘発する可能性があり、この経路の遺伝的除去により疾患の進行を遅らせることができる(Philips ら, Journal of neuropathology and experimental neurology, (英), 2010, Vol.69, p.1191-200)。
【0015】
[脱髄疾患]
ギラン・バレー症候群及び多発性硬化症(MS)のような脱髄疾患は、ニューロンの髄鞘が損なわれる変性疾患である。この損傷は、患部神経におけるシグナル伝導を害し、その結果として感覚、運動、認知、又はその他の機能の欠損を引き起こす。これらの疾患を治す方法は存在しない。該疾患の最もよく知られた病型は、免疫系の細胞サブセットが関与している疾患のMSである。例えば、進行中の脱髄は、血液循環からのT細胞及びマクロファージの浸潤、並びにミクログリアの炎症性活性化と関係していることが多い(Kutzelnigg ら, Handbook of Clinical Neurology, (オランダ), 2014, Vol.122, p.15-58)。
【0016】
本明細書中に記載される化合物はPpargc1aを活性化し、かつ上述の神経変性疾患の治療に有用である。
【0017】
ある種の2‐アリールベンゾイミダゾール、2‐アリールベンゾオキサゾール、2‐アリールベンゾチアゾール、及び2‐アリールイミダゾ[1,2‐a]ピリジンは、Ppargc1aを活性化することが見出された。これらの化合物及びそのプロドラッグ誘導体は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、前頭側頭型変性症、レビー小体型認知症、運動ニューロン疾患、及び脱髄疾患のような、神経変性疾患の治療に有用である。
【0018】
第1の態様では、本発明は式(I):
【化1】
の化合物に関し、上記式中、
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
上記式中、
は、‐CHOC(=O)R30、‐CHOP(=O)OR40OR41、-C(=O)OR42、及び-C(=O)R43から選択され;
上記式中、
30は、(C‐C10)ヒドロカルビル、アミノで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、(C‐C)アルコキシカルボニルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニル、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C‐C10)オキサアルキル、CHR44NHR45、及びグアニジノから選択され;
上記式中、
44は任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
45はH、メチル、及び(C‐C)アルコキシカルボニルから選択され;
40及びR41は、水素及び(C‐C)ヒドロカルビルから独立に選択され;
42は(C‐C)アルキルであり;
43は(C‐C)アルキルであり;
、R、R及びRは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから独立に選択され;
及びR10は、水素、重水素、ハロ、(C‐C)アルキル、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、及びアミノから独立に選択され;
及びRは、水素、重水素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、及びハロ(C‐C)アルコキシから独立に選択され;
は、水素、重水素、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ハロ(C‐C)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、及びアミノから選択される。
【0019】
第2の態様では、本発明は式(II):
【化2】
の化合物に関し、上記式中、
Arは
【化3】
であり;
は、O、S、及びN‐Rから選択されるか、又は、WがNである場合にWはさらにC‐R50であってよく;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はCであるか、又は、WがC‐R50である場合にWはNであってよく;
上記式中、
は、H、(C‐C)アルキル、‐CHOC(=O)R30、‐CHOP(=O)OR40OR41、‐C(=O)OR42、及び‐C(=O)R43から選択され;
上記式中、
30は、(C‐C10)ヒドロカルビル、アミノで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、(C‐C)アルコキシカルボニルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニル、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C‐C10)オキサアルキル、CHR44NHR45、及びグアニジノから選択され;
上記式中、
44は任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
45はH、メチル、及び(C‐C)アルコキシカルボニルから選択され;
40及びR41は、水素及び(C‐C)ヒドロカルビルから独立に選択され;
42は(C‐C)アルキルであり;
43は(C‐C)アルキルであり;
50は、H又は(C‐C)アルキルであり;
、R、R及びRは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐(C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから独立に選択され;
ただし、Arは、
がCであり;
がN‐Rであり;かつ
がHでも(C‐C)アルキルでもない
という場合に限り、
【化4】
を含む。
【0020】
第3の態様では、本発明は、神経変性疾患を治療する方法であって、式(III):
【化5】
の化合物を投与することを含む方法に関し、上記式中、
は、O、S、及びN‐Rから選択されるか、又は、WがNである場合にWはさらにC‐R50であってよく;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はN又はC‐Rであり;
はCであるか、又は、WがC‐R50である場合にWはNであってよく;
上記式中、
は、H、(C‐C)アルキル、‐CHOC(=O)R30、‐CHOP(=O)OR40OR41、‐C(=O)OR42、及び‐C(=O)R43から選択され;
上記式中、
30は、(C‐C10)ヒドロカルビル、アミノで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、(C‐C)アルコキシカルボニルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニル、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C‐C10)オキサアルキル、CHR44NHR45、及びグアニジノから選択され;
上記式中、
44は任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
45はH、メチル、及び(C‐C)アルコキシカルボニルから選択され;
40及びR41は、水素及び(C‐C)ヒドロカルビルから独立に選択され;
42は(C‐C)アルキルであり;
43は(C‐C)アルキルであり;
50は、H又は(C‐C)アルキルであり;
、R、R及びRは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐(C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから独立に選択され;
及びR10は、水素、重水素、ハロ、(C‐C)アルキル、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、及びアミノから独立に選択され;
及びRは、水素、重水素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、及びハロ(C‐C)アルコキシから独立に選択され;
は、水素、重水素、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ハロ(C‐C)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、及びアミノから選択され;
ただし、Rは、
(a)WがN‐Rであり;
(b)Rが水素であり;
(c)W、W、W、W、W、及びWがC‐Hであり;
(d)WがC‐Rであり;
(e)WがCであり;かつ
(f)R及びR10が水素である
という場合には、水素でも(C‐C)アルキルでもない。
【0021】
第4の態様では、本発明は、特に神経変性疾患の治療のための、内科的治療における方法及び式I、II、若しくはIIIの上記化合物、又は式I、II、若しくはIIIの化合物を含んでいる医薬組成物の使用に関する。そのような神経変性疾患には、患者の、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、前頭側頭型変性症、レビー小体型認知症、運動ニューロン疾患、及び脱髄疾患が挙げられる。方法には、本明細書中に記載された有効な量の化合物又は医薬組成物を投与することが含まれる。
【0022】
第5の態様では、本発明は、特に患者の老齢化に関連する認知障害及び神経炎症の治療のための、内科的治療における方法及び式I、II、若しくはIIIの上記化合物、又は、式I、II、若しくはIIIの化合物を含んでいる医薬組成物の使用に関する。上記方法は、本明細書中に記載された治療上有効な量の化合物又は医薬組成物を患者に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PについてAPIの血漿中濃度を示す図。
図2】プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PについてAPIの脳中濃度を示す図。
図3】プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PについてAPIの肝臓中濃度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
置換基は概して導入される場合に定義され、その定義は明細書全体を通じて、かつ全ての独立請求項において、維持される。
【0025】
第1の組成物の態様では、本発明は、本明細書に記載されるような式(I):
【化6】
の化合物に関連している。
【0026】
第2の組成物の態様では、本発明は、本明細書に記載されるような式(II):
【化7】
の化合物に関連している。
【0027】
方法の態様では、本発明は、本明細書に記載されるような式(III):
【化8】
の化合物に関連している。
【0028】
下記に記載される実施形態では、化合物は、別段の定めがない限り式I、II、又はIIIの化合物であってよい。
【0029】
式II及びIIIのいくつかの実施形態では、WはN‐Rである。式II及びIIIの他の実施形態では、WはOである。式II及びIIIのさらに別の実施形態では、WはSである。式II及びIIIのさらに別の実施形態では、Wは、好ましくはWがNである場合に、C‐R50である。WがC‐R50であるいくつかの実施形態では、R50はHである。WがC‐R50である他の実施形態では、R50は(C‐C)アルキルである。
【0030】
式I、II、及びIIIのいくつかの実施形態では、Rは‐CHOC(=O)R30であり、前記式中、R30は、(C‐C10)ヒドロカルビル、アミノで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、(C‐C)アルコキシカルボニルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換された(C‐C10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニル、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C‐C10)オキサアルキル、及びグアニジノから選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、Rが‐CHOC(=O)R30である場合、R30は、(a)(C‐C)アルキル;(b)(C‐C)アルキルアミノで置換されたフェニル;(c)天然アミノ酸のデスカルボキシ残基;(d)カルボキシルで置換された(C‐C)ヒドロカルビル;(e)(C‐C)オキサアルキル;及び(d)ピリジル、から選択される。
【0032】
式II及びIIIのいくつかの実施形態では、RはHである。式II及びIIIの他の実施形態では、Rは(C‐C)アルキルである。
【0033】
式I、II、及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I、II、及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。いくつかの実施形態では、Wは、C‐H、C‐F、C‐D、C‐CF、C‐CH、C‐Cl、C‐Br、C‐OH、C‐OCH、C‐NH、C‐CFH、C‐OCF、C‐OCFH、C‐CD、及びC‐CONHから選択される。いくつかの実施形態では、Wは、C‐H、C‐F、C‐D、C‐CFH、C‐CD、及びC‐CFから選択される。
【0034】
がC‐Rである実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから選択される。
【0035】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、水素、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、水素、ハロ、及びペルフルオロ(C‐C)アルキルから選択される。
【0036】
式I、II、及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I、II、及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。いくつかの実施形態では、Wは、N、C‐H、C‐NH、C‐F、C‐CF、C‐D、C‐OCH、C‐CN、C‐OH、C‐Cl、C‐CH、C‐CFH、C‐OCF、C‐OCFH、C‐CD、及びC‐Brから選択される。いくつかの実施形態では、Wは、N、C‐H、C‐NH、C‐F、C‐CF、C‐CFH、C‐CD、及びC‐Dから選択される。
【0037】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから選択される。
【0038】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、H、ハロ、及びペルフルオロ(C‐C)アルキルから選択される。
【0039】
式I、II、及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I、II、及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。いくつかの実施形態では、Wは、N、C‐H、C‐NH、C‐F、C‐CF、C‐D、C‐OCH、C‐CN、C‐OH、C‐Cl、C‐CH、C‐CFH、C‐OCF、C‐OCFH、C‐CD、及びC‐Brから選択される。いくつかの実施形態では、Wは、N、C‐H、C‐NH、C‐F、C‐CF、C‐CFH、C‐CD、及びC‐Dから選択される。
【0040】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから選択される。
【0041】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、H、ハロ、及びペルフルオロ(C‐C)アルキルから選択される。
【0042】
式I、II、及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I、II、及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。いくつかの実施形態では、Wは、C‐H、C‐F、C‐D、C‐CF、C‐CH、C‐Cl、C‐Br、C‐OH、C‐OCH、C‐NH、C‐CFH、C‐OCF、C‐OCFH、C‐CD、及びC‐CONHから選択される。いくつかの実施形態では、Wは、C‐H、C‐F、C‐D、C‐CFH、C‐CD、及びC‐CFから選択される。
【0043】
がC‐Rである実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、(C‐C)アシル、(C‐C)アルコキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C‐C)アルコキシカルボニルアミノ[‐HNC(=O)O‐アルキル]、カルボキサミド[‐C(=O)NH2]、(C‐C)アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C‐C)アルキルアミノ、ジ(C‐C)アルキルアミノ、メルカプト、(C‐C)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C‐C)アルキルスルホニル、及び(C‐C)アシルアミノから選択される。
【0044】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、水素、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、ヒドロキシ、ニトリル、ハロ又はカルボキサミドから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、水素、ハロ、及びペルフルオロ(C‐C)アルキルから選択される。
【0045】
式I及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I及びIIIの他の実施形態では、WはC‐R、好ましくはC‐Hである。
【0046】
がC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロ、(C‐C)アルキル、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、及びアミノから選択される。
【0047】
式I及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、及びハロ(C‐C)アルコキシから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは水素又は(C‐C)アルキルである。
【0048】
式I及びIIIのいくつかの実施形態では、WはNである。式I及びIIIの他の実施形態では、WはC‐Rである。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、ハロ(C‐C)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、及びアミノから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、H、(C‐C)アルキル、アミノ、(C‐C)アルコキシ、ハロ(C‐C)アルコキシ、及びヒドロキシから選択される。WがC‐Rであるいくつかの実施形態では、Rは、H、tert‐ブチル、アミノ、及びメトキシから選択され、WがNであるか又はRが水素である場合はtert‐ブチルであることが好ましい。
【0049】
式II及びIIIのいくつかの実施形態では、WがCR50であるとき、WはNである。式II及びIIIの他の実施形態では、WがNR、O、又はSであるとき、WはCである。
【0050】
式I及びIIIのいくつかの実施形態では、Rは、水素、重水素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C‐C)アルキル、(C‐C)アルキル、(C‐C)アルコキシ、及びハロ(C‐C)アルコキシから選択される。好ましい実施形態では、Rが水素でありRがHであるとき、Rはtert‐ブチルである。
【0051】
式I及びIIIのいくつかの実施形態では、R10は、水素、重水素、ハロ、(C‐C)アルキル、ペルフルオロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ、(C‐C)アルコキシ、ペルフルオロ(C‐C)アルコキシ、及びアミノから選択され、好ましくはHである。
【0052】
式IIのいくつかの実施形態では、Arは
【化9】
である。式IIの他の実施形態では、Arは
【化10】
である。式IIのさらに別の実施形態では、Arは
【化11】
である。式IIの他の実施形態では、Arは
【化12】
である。式IIのさらに別の実施形態では、Arは
【化13】
である。
【0053】
審査の際に、ある一定の化学種及び化学種群が本願の発明者らに特許可能ではないということが見出されるかもしれない。この場合、出願人の特許請求の範囲の中の化学種及び化学種群を除外することは、特許審査手続の人為結果とみなされるべきであって、公有の状態にない化学種群I、II、及びIIIに属する全ての化学種を包含する本発明者らの構想又は本発明の記述を反映するとみなされるべきではない。
【0054】
本明細書中で使用されるように、また当業者には理解されるように、「化合物」を挙げるときは、明示的にさらに限定されるのでないかぎり、その化合物の塩を含むように意図される。特定の実施形態において、用語「式の化合物」とは、その化合物又は該化合物の薬学的に許容可能な塩を指す。
【0055】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容可能な毒性のない酸又は塩基、例えば無機酸及び無機塩基並びに有機酸及び有機塩基から、調製された塩を指す。本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸及び有機酸を含む薬学的に許容可能な毒性のない酸から調製可能である。本発明の化合物について適切な薬学的に許容可能な酸付加塩には、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、安息香酸、ホウ酸、ラク酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、炭酸、クエン酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ギ酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフチレンスルホン酸、硝酸、オレイン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、ピバル酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクラティック(teoclatic)、p‐トルエンスルホン酸、などが挙げられる。化合物が酸性の側鎖を含む場合、本発明の化合物について適切な薬学的に許容可能な塩基付加塩には、限定するものではないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛から作製された金属塩、又はリジン、アルギニン、N,N’‐ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N‐メチルグルカミン)及びプロカインから作製された有機塩が挙げられる。さらなる薬学的に許容可能な塩には、適切な場合、毒性のないアンモニウムカチオン並びにカルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸のアニオンであって1~20個の炭素原子を有するアルキルに結合したものが挙げられる。
【0056】
式I、II、及びIIIの化合物を原体そのままの化学物質として投与することが可能な場合もあるが、該化合物を医薬組成物として提供することが望ましい。さらなる態様によれば、本発明は、式I若しくは式IIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を、前記化合物又は塩の1以上の薬学的に許容可能な担体及び場合により1以上の他の治療薬成分と一緒に含んでいる、医薬組成物を提供する。担体は、調合物の他の成分との適合性があり該調合物の被投与者に対して有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0057】
調合物には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内及び関節内など)、直腸及び局所(経皮、口腔内、舌下及び眼内など)投与に適しているものが含まれる。最も適切な経路は、被投与者の状態及び障害に応じて変化しうる。調合物は、便利なように単位用量形態で提供されることが可能であり、薬学分野でよく知られた方法のうちいずれかで調製可能である。全ての方法に、式I、II若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩(「活性成分」)を、1以上の副成分を構成する担体と合わせるステップが含まれる。一般に、調合物は、活性成分を液体担体又は微粉固体担体又は両方と均一かつ徹底的に合わせること、次いで必要な場合には該生成物を所望の調合物に成形することにより、調製される。
【0058】
経口投与に適している本発明の調合物は、所定量の活性成分を各々含有しているカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤のような個別の単位として;散剤若しくは顆粒剤として;水性の液体若しくは非水性の液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は、水中油型の乳濁液若しくは油中水型の乳濁液として、提供可能である。活性成分が、巨丸剤、舐剤又はペースト剤として提供されることも可能である。
【0059】
錠剤は、圧縮又は湿製によって、場合により1以上の副成分を含めて、作製可能である。圧縮錠剤は、散剤又は顆粒剤のような流動性のある形態の活性成分を、場合により結着剤、滑沢剤、不活性の希釈剤、潤滑剤、表面活性剤又は分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することにより調製可能である。湿製錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で成型することにより作製可能である。錠剤は、場合によりコーティング又は割線が施されてもよく、錠剤中の活性成分の持続放出、遅延放出又は制御放出を提供するように調合されてもよい。
【0060】
非経口投与のための調合物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び意図される被投与者の血液と等張な調合物を提供する溶質を含有しうる、水性及び非水性の滅菌注射用溶液が挙げられる。非経口投与のための調合物には、懸濁化剤及び増粘剤を含有しうる、水性及び非水性の滅菌懸濁液も挙げられる。該調合物は、単位用量又は多回投与用量の容器で、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、かつ、使用直前に滅菌液体担体、例えば生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの追加のみを要するフリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保管されてもよい。臨時の注射用溶液及び懸濁液が、前述した種類の無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製されてもよい。
【0061】
本発明の化合物が放射性同位体で標識された形態で存在しうること、すなわち該化合物は、自然界で通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を含んでいる1以上の原子を含有しうることは、認識されるであろう。水素、炭素、リン、フッ素、及び塩素の放射性同位体には、それぞれH、H、13C、14C、15N、35S、18F、及び36Clが挙げられる。これらの放射性同位体及び/又は他の原子の他の放射性同位体を含有する化合物は、本発明の範囲内にある。トリチウム化体すなわちH、及び炭素14すなわち14Cの放射性同位体は、調製の容易さ及び可検出性から特に好ましい。同位体11C、13N、15O及び18Fを含有する化合物は、陽電子放出断層撮影に適している。本発明の式I、II、及びIIIの放射性同位体標識化合物並びにそのプロドラッグは、一般に当業者によく知られた方法で調製することが可能である。好都合なことに、そのような放射性同位体標識化合物は、放射性同位体で標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な放射性同位体標識試薬を用いることにより、実施例及びスキームにおいて開示された手順を実行することで調製することが可能である。
【0062】
本明細書中で提供される化合物は、患者の神経変性疾患の治療であって該患者に治療上有効な量の式I、II、又はIIIの化合物を投与することを含む方法のために、使用することができる。
【0063】
別段の定義のない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は全て、本開示が属する分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。有機化学者(すなわち当業者)が利用する略語の総合リストは、Journal of Organic Chemistry(米)の各巻の第1号に掲載されている。典型的には"Standard List of Abbreviations"と題した表で示されるこのリストは、参照により本願に組込まれる。本明細書中で言及された用語に複数の定義が存在する場合、別段の定めがない限り本項の定義が優先される。
【0064】
本明細書中で使用されるように、用語「含んでいる」及び「備えている」、又はこれらの文法上の変化形は、明示された特徴、整数、ステップ又は構成要素を指定しているとみなされるが、1以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素又はこれらの集まりが加わることを排除しない。この用語には、「~で構成されている」及び「実質的に~で構成されている」という用語が包含される。
【0065】
「実質的に~で構成されている」という文言又はその文法上の変化形は、本明細書中で使用される場合、明示された特徴、整数、ステップ又は構成要素を指定しているとみなされるが、1以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素又はこれらの集まりが加わることは、その追加の特徴、整数、ステップ、構成要素又はこれらの集まりが特許請求の範囲に記載の組成物又は方法の基本的かつ新規な特性を物質的に変化させない場合に限り、排除しない。
【0066】
「患者」には、本明細書中で使用されるように、ヒト及び他の動物、特に哺乳動物の両方が含まれる。従って、方法はヒトの治療用及び動物用の適用の両方に適用可能である。いくつかの実施形態では、患者は哺乳動物、例えば霊長類である。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
【0067】
治療には、疾患と診断された患者に対し本明細書中に記載の化合物を投与することを伴う可能性があり、活動性の症状のない患者への化合物の投与を伴う場合もある。反対に、治療には、特定の疾患を発症するリスクがある患者、又は疾患の生理学的な症状を1つ以上訴えている患者に対し、その疾患の診断がなされていなくても、組成物を投与することを伴う場合がある。
【0068】
本発明の剤形に関連する用語「投与する」、「投与すること」又は「投与」は、治療を必要とする対象者の身体にその剤形を導入する行為を指す。本発明の剤形が、1以上の他の(それぞれの剤形の)活性作用薬と組み合わされて与えられる場合、「投与」及びその変化形は各々、本発明の剤形及び他の活性作用薬の同時的及び/又は連続的な導入を含むものと理解される。記載された剤形のうち任意のものの投与には、並行投与、同時投与又は連続投与が含まれる。状況によっては、複数の治療法がほぼ同時に、例えば互いにおよそ数秒以内~数時間以内に施される。
【0069】
本明細書中に記載された化合物の「治療上有効な」量とは、典型的には所望の効果を達成するのに十分な量であり、疾患状態の性質及び重症度、並びに化合物の効力に応じて変化しうる。予防のために活動性の疾患の治療とは異なる濃度が使用されうることは、認識されるであろう。治療上の有益性は、患者がその原因疾患で依然苦しんでいたとしても、原因疾患に関連する生理的症状のうち1以上がその患者において改善が観察されるように軽減することで、達成される。
【0070】
本明細書全体にわたり、用語及び置換基はその定義を保持する。
【0071】
‐C20炭化水素には、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びこれらの組み合わせが含まれる。例としては、ベンジル、フェネチル、シクロヘキシルメチル、アダマンチル、カンフォリル及びナフチルエチルが挙げられる。ヒドロカルビルは、水素及び炭素のみを元素成分として構成された任意の置換基を指す。脂肪族炭化水素は芳香族ではない炭化水素であり;飽和又は不飽和、環式、直鎖状又は分岐状であることが可能である。脂肪族炭化水素の例には、イソプロピル、2‐ブテニル、2‐ブチニル、シクロペンチル、ノルボルニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素には、ベンゼン(フェニル)、ナフタレン(ナフチル)、アントラセンなどが挙げられる。
【0072】
別段の定めがない限り、アルキル(又はアルキレン)は、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素構造及びそれらの組み合わせを含むように意図される。アルキルは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子のアルキル基を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、s‐ブチル、t‐ブチルなどが挙げられる。
【0073】
シクロアルキルは炭化水素の一部であり、3~8個の炭素原子の環式炭化水素基を含む。シクロアルキル基の例には、cy‐プロピル、cy‐ブチル、cy‐ペンチル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0074】
別段の定めがない限り、用語「炭素環」は、環の原子が全て炭素であって任意の酸化状態である環系を含むように意図される。よって(C‐C10)炭素環は、非芳香族系及び芳香族系、例えばシクロプロパン、ベンゼン及びシクロヘキセンのような系を指し;(C‐C12)炭素多環は、ノルボルナン、デカリン、インダン及びナフタレンのような系を指す。炭素環は、別途限定されないかぎり、単環、二環及び多環を指す。
【0075】
複素環(ヘテロサイクル)とは、1~4個の炭素がN、O、及びSで構成されている群から選択されたヘテロ原子に置き換えられた脂肪族又は芳香族炭素環残基を意味する。窒素及び硫黄のヘテロ原子は場合により酸化していてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により四級化していてもよい。別段の定めがない限り、複素環は非芳香族(ヘテロ脂肪族)又は芳香族(ヘテロアリール)であってよい。複素環の例には、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する時は一般にメチレンジオキシフェニルと呼ばれる)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。ヘテロシクリル残基の例には、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル(歴史的にチオフェニルとも呼ばれる)、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル及びテトラヒドロキノリニルが挙げられる。
【0076】
アルコキシ又はアルコキシルは、酸素を介して親構造に結合した直鎖状又は分岐状の構成の1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子の基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。低級アルコキシとは、1~4個の炭素を含有する基を指す。本願については、アルコキシ及び低級アルコキシにはメチレンジオキシ及びエチレンジオキシが挙げられる。
【0077】
オキサアルキルとは、1以上の炭素(及び該炭素に関連する水素)が酸素に置き換えられたアルキル基を指す。例としては、メトキシプロポキシ、3,6,9‐トリオキサデシルなどが挙げられる。オキサアルキルという用語は、当分野で理解されているように意図される[American Chemical Society, “Naming and Indexing of Chemical Substances for Chemical Abstracts”, (米)の第196段落を参照、ただし第127段落(a)の制約は伴わない]、すなわち該用語は、酸素が隣接する原子に単結合で結合している(エーテル結合を形成している)化合物を指し;カルボニル基に見出されるような二重結合した酸素は指していない。同様に、チアアルキル及びアザアルキルは、それぞれ1以上の炭素が硫黄又は窒素で置き換えられているアルキル基を指す。例としてはエチルアミノエチル及びメチルチオプロピルが挙げられる。
【0078】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。1つの実施形態では、ハロゲンはフッ素又は塩素原子であってよい。
【0079】
別段の定めがない限り、アシルは、ホルミル並びに、カルボニル官能基によって親構造に結合した直鎖状、分岐状、環式の構成の1、2、3、4、5、6、7及び8個の炭素原子の基であって飽和、不飽和及び芳香族並びにこれらの組み合わせであるものを指す。例としてはアセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリルなどが挙げられる。低級アシルとは、1~4個の炭素を含有する基を指す。二重結合した酸素は、それ自体を置換基として指す場合には「オキソ」と呼ばれる。
【0080】
本明細書中で使用されるように、用語「場合により置換された」は、「非置換であるか又は置換された」と互換的に使用可能である。用語「置換された」は、指定された基の中の1以上の水素原子の、指定されたラジカルによる置き換えを指す。例えば、置換されたアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルなどは、各残基の1以上のH原子が、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アシル、アルコキシアルキル、ヒドロキシ低級アルキル、カルボニル、フェニル、ヘテロアリール、ベンゼンスルホニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロアルコキシ、オキサアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル[‐C(=O)O‐アルキル]、アルコキシカルボニルアミノ[HNC(=O)O‐アルキル]、アミノカルボニル(カルボキサミドとしても知られる)[‐C(=O)NH]、アルキルアミノカルボニル[‐C(=O)NH‐アルキル]、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、(アルキル)(アリール)アミノアルキル、アルキルアミノアルキル(シクロアルキルアミノアルキルを含む)、ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルコキシ、ヘテロシクリルアルコキシ、メルカプト、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、スルホニルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノ、アミジノ、アリール、ベンジル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシイミノ、アルコキシイミノ、オキサアルキル、アミノスルホニル、トリチル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、ベンジルオキシフェニル、及びベンジルオキシに置き換えられた、アルキル、アリール、シクロアルキル又はヘテロシクリルを指す。「オキソ」も、「場合により置換された」において関係する置換基に含まれるが;オキソは二価のラジカルなので、オキソが置換基として適切でない状況が存在すること(例えばフェニルについて)は、当業者には認識されるであろう。1つの実施形態では、1、2、又は3個の水素原子が指定のラジカルに置き換えられる。アルキル及びシクロアルキルの場合には、4個以上の水素原子がフッ素に置き換えられることも可能であり;実際に、全ての利用可能な水素原子をフッ素に置き換えることも考えられる。
【0081】
置換基Rは、一般に導入される時に定義され、その定義は明細書全体にわたって、かつ全ての独立請求項において、保持される。互変異性が見込まれる、表示されたか又は特許請求の範囲において主張された全ての化合物は、考えられる全ての互変異性体が含まれるように意図される。
【0082】
実験の部
化合物の調製は、様々な化学基の保護及び脱保護を伴う可能性がある。保護及び脱保護の必要性、並びに適切な保護基の選択は、当業者であれば容易に決定することができる。その目的に適した基については、化学分野の標準的な教科書、例えばT.W.Greene and P.G.M.Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, (米), John Wiley and Sons, New York, 1999; Jeremy Robertson, “Protecting Group Chemistry”, 1st Ed., (英), Oxford University Press, 2000及びMichael B. Smith, “March's Advanced Organic chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure”, 5th Ed., (米), Wiley-Interscience Publication, 2001において議論されている。
【0083】
ベンゾイミダゾール化合物は、i)場合により置換された2‐ニトロアニリンを、ハイドロサルファイトナトリウムの存在下でアリールアルデヒドと反応させること(D. Fokas ら, Synthesis, (独), 2005, Vol.1, p.47-56)又はii)酸塩化物を、場合により置換された1,2‐フェニレンジアミンと反応させた後に、中間体アミドを縮合環化すること、のいずれかにより合成された。
【0084】
[方法A 2‐ニトロアニリンとアリールアルデヒドとの反応から得たベンゾイミダゾール]
実施例1. 2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール
【化14】
2‐ニトロアニリン(691mg、5.00mmol)及び4‐tert‐ブチルベンズアルデヒド(836μL、5.00mmol、1.0等量)のエタノール(20mL)中の溶液を、新たに調製した1Mハイドロサルファイトナトリウム水溶液(15mL、15.0mmol、3.0等量)で処理し、該混合物を70℃で14時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、5M水酸化アンモニウム水溶液(10mL)を添加して反応停止させ、形成された固体を濾別して回収し、水で数回洗浄した。生成物を再結晶させてエタノール‐水を取り除き、オフホワイトの固体を得た(739mg、59%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 12.84 (1H, br s), 8.10 (2H, d, J= 8.4 Hz), 7.57 (4H, app d, J = 8.4 Hz, overlapping br), 7.21-7.17 (2H, m), 1.33 (9H, s); LCMS: rt 2.48-2.52 min, +ve ESI m/z 250.8 ([M + H]+, 100%), -ve ESI m/z 248.7 (M - H]-, 100%).
【0085】
[方法B 酸塩化物を1,2‐フェニレンジアミンと反応させた後の中間体アミドの縮合環化から得たベンゾイミダゾール]
実施例2. 2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐イミダゾ[4,5‐c]ピリジン
【化15】
3,4‐ジアミノピリジン(437mg、4.00mmol)及びトリエチルアミン(669μL、4.80mmol、1.2等量)のDMF(15mL)中の冷却(0℃)溶液に、4‐tert‐ブチルベンゾイルクロリド(781μL、4.00mmol、1.0等量)のDMF(1mL)中の溶液を滴下して処理した。この混合物を周囲温度になるまで放置し、12時間撹拌した。該混合物を、激しく撹拌中の氷水(240mL)に添加し、形成された固体を濾別により回収した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→0:100)により精製してN‐(4‐アミノピリジン‐3‐イル)‐4‐(tert‐ブチル)ベンズアミドを白色固体として得た(369mg、34%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 9.66 (1H, s), 8.09 (1H, s), 7.89 (2H, d, J= 8.4 Hz), 7.80 (1H, d, J = 5.2 Hz), 7.55 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.44 (1H, d, J = 5.2 Hz), 5.17 (2H, s), 1.32 (9H, s); LCMS: rt 2.46-2.50 min, +ve ESI m/z 269.7 ([M + H]+, 100%), -ve ESI m/z 267.7 (M - H]-, 100%).
【化16】
【0086】
N‐(4‐アミノピリジン‐3‐イル)‐4‐(tert‐ブチル)ベンズアミド(135mg、0.50mmol)の氷酢酸(5mL)中の溶液を70℃で14時間加熱した。該溶液を周囲温度まで冷却し、酢酸エチル(50mL)の中に流し入れた。有機層を、水(2×5mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×5mL)、塩水(5mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を最小限の酢酸エチル(~0.5mL)に再懸濁させ、撹拌しながらヘキサンを滴下して処理し、形成された沈殿物を濾別し乾燥させて、2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐イミダゾ[4,5‐c]ピリジンを白色固体として得た(34mg、27%)。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 8.88 (1H, s), 8.32 (1H, d, J = 5.6 Hz), 8.09 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.64 (3H, app d, J = 8.4 Hz, overlapping), 1.39 (9H, s); LCMS: rt 2.41-2.45 min, +ve ESI m/z 251.8 ([M + H]+, 100%), -ve ESI m/z 249.7 (M - H]-, 100%).
【0087】
ベンゾチアゾール化合物は、場合により置換された2‐アミノチオフェノールを酸塩化物と反応させた後に加熱することにより合成した。
【0088】
[方法C 酸塩化物と2‐アミノチオフェノールとの反応から得たベンゾチアゾール]
実施例3. 2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1,3‐ベンゾチアゾール
【化17】
2‐アミノチオフェノール(1.070mL、10mmol)のNMP(20mL)中の溶液に4‐tert‐ブチルベンゾイルクロリド(2.930mL、15mmol、1.5等量)を滴下して処理し、この溶液を100℃に6時間加熱した。冷却した反応物を氷水(300mL)に流し入れ、濃NHOH水溶液を添加してpHを9~10に調整した。該混合物をフィルタ処理し、沈殿物を水で数回洗浄した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製して白色の結晶性固体を得た(1.831g、65%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.07 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.03 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.90 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.49 (1H, td, J = 7.8, 0.8 Hz), 7.37 (1H, td, J = 7.8, 0.8 Hz), 1.37 (9H, s); LCMS: rt 4.58-4.62 min, +ve ESI m/z 268.1 ([M + H]+, 100%).
【0089】
ベンゾオキサゾール化合物は、場合により置換された2‐アミノフェノールを酸塩化物と反応させた後に加熱することにより合成した。
【0090】
[方法D 酸塩化物と2‐アミノフェノールとの反応から得たベンゾオキサゾール]
実施例4. 2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1,3‐ベンゾオキサゾール
【化18】
2‐アミノフェノール(1.091mL、10mmol)のNMP(5mL)中の冷却(0℃)溶液に、4‐tert‐ブチルベンゾイルクロリド(1.953mL、10mmol、1.0等量)を滴下して処理した後、ピリジン(1.011mL、12.5mmol、1.25等量)を添加し、この溶液を180℃で3時間撹拌した。この反応液を水‐MeOH(80:20、20mL)に流し入れ、該混合物を0℃に冷却した。沈殿生成物を濾別してフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→75:25)により精製し、白色固体を得た(1.977g、75%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.19 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.79-7.75 (1H, m), 7.59-7.57 (1H, m), 7.55 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.36-7.33 (2H, m), 1.38 (9H, s); LCMS: rt 4.38-4.42 min, +ve ESIm/z 252.1 ([M + H]+, 100%).
【0091】
イミダゾ[1,2‐a]ピリジンは、2‐アミノピリジンを塩基の存在下で2‐ブロモ‐1‐フェニルエタン‐1‐オンとともに加熱することにより合成した。
【0092】
[方法E 2‐アミノピリジンと2‐ブロモ‐1‐フェニルエタン‐1‐オンとの反応から得たイミダゾ[1,2-a]ピリジン]
実施例5. 2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)イミダゾ[1,2‐a]ピリジン
【化19】
ピリジン‐2‐アミン(63.8mg、0.68mmol)及び2‐ブロモ‐1‐(4‐tert‐ブチルフェニル)エタノン(0.136mL、0.68mmol)をフラスコに入れてアセトニトリル(2.7mL)に溶解し、続いて重炭酸ナトリウム(114mg、1.36mmol)を添加した。反応物を1時間還流し、次いで冷却した。沈殿物を濾過で取り除き、濾液を減圧下で蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(50:50のEtOAC:ヘキサン)で精製して2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)イミダゾ[1,2‐a]ピリジン(0.061g、35%)を黄色の固体として得た。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 8.42 (1H, d, J = 6.9 Hz), 8.16 (1H, s), 7.85 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.55 (1H, d, J = 9.1 Hz), 7.49 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.32 (1H, t, J = 7.9 Hz), 6.92 (1H, t, J = 6.8 Hz), 1.36 (9H, s); LCMS: rt 2.51-2.55 min, +ve ESI m/z250.8 ([M + H]+, 100%).
【0093】
[方法F 1‐アルキル‐ベンゾイミダゾールを得るためのベンゾイミダゾールのアルキル化]
1‐アルキル‐ベンゾイミダゾールは、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムの存在下でハロゲン化アルキルを滴下して添加することにより合成した。
実施例6. 2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1‐メチル‐ベンゾ[d]イミダゾール
【化20】
白色固体。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 7.73 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.68 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.65 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.55 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.35 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.31 (1H, t, J = 7.8 Hz), 3.90 (3H, s), 1.40 (9H, s); LCMS: rt 2.63-2.67 min, +ve ESI m/z 264.8 ([M + H]+, 100%).
【0094】
実施例7~78についての名称、構造、分光学的データ、及び合成方法(S.M.)を表1に示す。
【表1】
【0095】
ベンゾイミダゾールのプロドラッグは以下に記載するような方法G及びHによって合成した。
【0096】
[方法G ハロメチルエステル及びハロメチルカルボナートとの反応から得たベンゾイミダゾールのプロドラッグ]
ベンゾイミダゾールのプロドラッグは、還流中のアセトンの中でヨウ化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの存在下にてベンゾイミダゾールをクロロメチルエステルとともに加熱することにより調製するが、又は別例として、還流中のアセトンの中でヨウ化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの存在下にてベンゾイミダゾールをクロロメチルカルボナートとともに加熱することにより調製することも可能である(実施例6‐P~9‐P及び11‐P)。
【化21】
【0097】
以下に記載されるような典型的な手法では、ベンゾイミダゾール(1.0mmol)のアセトン(10mL)中の溶液を、炭酸ナトリウム(2.0~3.0mmol)、ヨウ化ナトリウム(1.0~1.5mmol)、及び場合により保護されたクロロメチルエステル(1.0~1.5mmol)で処理する。この混合物を反応が完了するまで加熱還流する。次いで該混合物をフィルタ処理し、溶媒を蒸発させた後にシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィを使用して精製する。生成物の脱保護は、当分野で知られているような標準的実施手順を使用して行われる(実施例10‐P及び12‐P)。
【0098】
別例として、ベンゾイミダゾールを水素化ナトリウムで処理した後にブロモメチルエステルを添加して、所望のプロドラッグを得る(実施例5‐P)。
実施例1‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチルアセタート
【化22】
【0099】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(250mg、1.00mmol)のDMF(5mL)中の冷却(0℃)溶液を、少量ずつの水素化ナトリウム(60%の鉱油中分散液、40mg、1.00mmol、1.0等量)で処理し、周囲温度で1時間撹拌した。該混合物を0℃に冷却し、酢酸ブロモメチル(98uL、1.00mmol、1.0等量)を滴下して処理し、周囲温度で48時間撹拌した。この反応物をHO(100mL)に流し入れ、EtOAc(4×25mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(25mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗製の残渣を、シリカを用いるフラッシュクロマトグラフィでヘキサン‐EtOAc(100:0→60:40)を用いて溶出して精製し、白色の結晶性固体として表題化合物を得た(108mg、32%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.83-7.81 (1H, m), 7.80 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.62-7.60 (1H, m), 7.57 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.36-7.33 (2H, m), 6.18 (2H, s), 2.18 (3H, s), 1.38 (9H, s). LCMS: rt 3.27-3.47 min, +ve ESI m/z 322.8 ([M + H]+, 100%).
実施例2‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチルブチラート
【化23】
【0100】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(501mg、2.00mmol)、炭酸ナトリウム(636mg、6.00mmol、3.0等量)、及びヨウ化ナトリウム(450mg、3.00mmol、1.5等量)のアセトン(20mL)中の混合物を、クロロメチルブタノアート(382μL、3.00mmol、1.5等量)で処理し、該混合物を還流しながら24時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、フィルタ処理し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製するとろう状の固体が得られ、この固体をヘキサンでトリチュレーションして白色固体を得た(143mg、20%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.83-7.81 (1H, m), 7.80 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.62-7.60 (1H, m), 7.56 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.35-7.33 (2H, m), 6.18 (2H, s), 2.41 (2H, t, J = 7.4 Hz), 1.74-1.67 (2H, app. sextet, J= 7.4 Hz), 1.38 (9H, s), 0.96 (3H, t, J= 7.4 Hz); LCMS: rt 3.62-3.78 min, +ve ESIm/z 350.9 ([M + H]+, 100%).
実施例3‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチルイソブチラート
【化24】
【0101】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(501mg、2.00mmol)、炭酸ナトリウム(636mg、6.00mmol、3.0等量)、及びヨウ化ナトリウム(450mg、3.00mmol、1.5等量)のアセトン(20mL)中の混合物を、クロロメチル2‐メチルプロパノアート(379μL、3.00mmol、1.5等量)で処理し、該混合物を還流しながら24時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、フィルタ処理し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製するとろう状の固体が得られ、この固体をヘキサンでトリチュレーションして白色固体を得た。
実施例4‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチルピバラート
【化25】
【0102】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(250mg、1.00mmol)、炭酸ナトリウム(159mg、1.50mmol、1.5等量)、及びヨウ化ナトリウム(165mg、1.10mmol、1.1等量)のアセトン(10mL)中の混合物を、クロロメチルピバラート(159μL、1.10mmol、1.1等量)で処理し、該混合物を還流しながら24時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、フィルタ処理し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製して白色固体を得た(41mg、11%)。LCMS: rt 3.87-3.91 min, +ve ESIm/z 364.9 ([M + H]+, 100%).
実施例5‐P. tert‐ブチル((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)スクシナート
【化26】
【0103】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(1001mg、4.00mmol)、炭酸ナトリウム(848mg、8.00mmol、2.0等量)、及びヨウ化ナトリウム(660mg、4.40mmol、1.1等量)のアセトン(40mL)中の混合物をtert‐ブチル(クロロメチル)スクシナート(ClCHOC(=O)CHCHC(=O)OC(CH)(980mg、4.40mmol、1.1等量)で処理し、該混合物を還流しながら48時間加熱した。
この混合物を周囲温度まで冷却し、フィルタ処理し、溶媒を減圧下で蒸発させた。
残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製するとろう状の固体が得られ、この固体をヘキサンでトリチュレーションして白色固体を得た(487mg、28%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.83-7.80 (3H, m, overlapping), 7.61-7.59 (1H, m), 7.57 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.35-7.33 (2H, m), 6.20 (2H, s), 2.69 (2H, t, J = 6.5 Hz), 2.60 (2H, t, J= 6.5 Hz), 1.41 (9H, s), 1.38 (9H, s); LCMS: rt 3.80-3.90 min, +ve ESI m/z 437.1 ([M + H]+, 100%).
実施例6‐P. 4‐((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メトキシ)‐4‐オキソブタン酸
【化27】
【0104】
tert‐ブチル((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)スクシナート(実施例9‐P、87mg、0.200mmol)のジクロロメタン(0.5mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(0.5mL)で処理し、該溶液を周囲温度で4時間撹拌した。この溶液を減圧下で蒸発させ、高真空下で乾燥させて白色の結晶性固体を得た(70mg、92%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.02 (1H, m), 7.92 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.86-7.84 (1H, m), 7.71 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.61-7.60 (2H, m), 6.32 (2H, s), 6.01 (1H, br s), 2.73 (4H, s), 1.39 (9H, s). LCMS: rt 2.90-2.94 min, +ve ESI m/z 380.9 ([M + H]+, 100%).
実施例7‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル4‐(((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ベンゾアート
【化28】
【0105】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(1001mg、4.00mmol)、炭酸ナトリウム(1272mg、12.00mmol、3.0等量)、及びヨウ化ナトリウム(660mg、4.40mmol、1.1等量)のアセトン(40mL)中の混合物をクロロメチル4‐(((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ベンゾアート(1319mg、4.40mmol、1.1等量)で処理し、該混合物を還流しながら48時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、フィルタ処理し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→70:30)により精製して白色固体を得た(532mg、26%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.04 (2H, d, J = 8.3 Hz), 7.87-7.83 (3H, m, overlapping), 7.68-7.66 (1H, m), 7.58 (2H, d, J = 8.3 Hz), 7.39-7.34 (4H, m, overlapping), 6.43 (2H, s), 4.93 (1H, br s), 4.38 (2H, d, J = 5.2 Hz), 1.46 (9H, s), 1.38 (9H, s); LCMS: rt 3.88-3.92 min, +ve ESI m/z 514.1 ([M + H]+, 100%).
実施例8‐P. (4‐(((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メトキシ)カルボニル)‐フェニル)メチルアンモニウムヒドロクロリド
【化29】
【0106】
(2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル4‐(((tert‐ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ベンゾアート(462mg、0.90mmol)の酢酸エチル(13.5mL)中の溶液を、エタノール中の2.5M塩化水素溶液(3.6mL、9.00mmol、10.0等量)で処理し、該溶液を周囲温度で24時間撹拌した。この溶液を減圧下で蒸発させ、真空下で乾燥させた。得られた固体をメタノール‐ジエチルエーテル中で再結晶させて微細な白色針状結晶を得た(337mg、93%)。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 8.24-8.22 (1H, m), 8.14 (2H, d, J = 8.3 Hz), 8.01-7.99 (2H, m), 7.90-7.87 (3H, m), 7.76-7.70 (2H, m), 7.63-7.60 (2H, m), 6.69 (2H, s), 4.21 (2H, s), 1.45 (9H, s). LCMS: rt 2.66-2.70 min, +ve ESIm/z 414.0 ([M + H]+, 20%).
【0107】
[方法H ジアルキルクロロメチルホスファートとの反応から得たベンゾイミダゾールのプロドラッグ]
ベンゾイミダゾールのプロドラッグは、ベンゾイミダゾールを過剰量の水素化ナトリウムで処理した後にジアルキルクロロメチルホスファートで処理することにより調製する。ジtert‐ブチルクロロメチルホスファートの場合には、得られた生成物を酸加水分解に供してジヒドロゲンホスファートのプロドラッグを得ることができる。上記の手法は、Chassaingら(Journal of Medicinal Chemistry, (米), 2008, Vol.51, p.1111)及びFlores-Ramosら(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, (オランダ), 2014, Vol.24, p.5814)が報告した手法の変法である。
【化30】
実施例9‐P. ジtert‐ブチル((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)ホスファート
【化31】
【0108】
2‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐1H‐ベンゾイミダゾール(2.00g、8.00mmol)のDMF(35mL)中の冷却(0℃)溶液に、水素化ナトリウム(60%の油中分散液、1.12g、28.0mmol、3.5等量)を少量ずつ添加し、該混合物を周囲温度で1時間撹拌した。この混合物を冷却し(0℃)、ジtert‐ブチルクロロメチルホスファートのDMF(5mL)中の溶液(2.41mL、10.4mmol、1.3等量)を滴下して処理し、周囲温度で12時間撹拌した。該混合物を冷却し(0℃)、DCM(150mL)で希釈し、注意深くHO(50mL)を滴下し次いで少量ずつ添加して処理した。層を分離して有機層をHO(3×50mL)、塩水(2×50mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、溶媒を蒸発させた。粗製物を、シリカを用いるフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン‐EtOAc、100:0→50:50)により精製し、得られた油状物を-20℃で一晩保管して結晶化させた。この結晶塊をヘキサン(3×10mL)でトリチュレーションして白色固体を得た(2.54g、64%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.87 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.82-7.80 (1H, m), 7.76-7.74 (1H, m), 7.56 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.36-7.32 (2H, m), 6.00 (2H, d, J= 8.2 Hz), 1.43 (18H, s), 1.38 (9H, s); LCMS: rt 3.7-3.8 min, +ve ESI m/z 473.0 ([M + H]+, 100%).
実施例10‐P. ジヒドロゲン((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)ホスファート
【化32】
【0109】
周囲温度の1,4‐ジオキサン(0.5mL)中のジtert‐ブチル((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)ホスファート溶液(118mg、0.25mmol)に、1,4‐ジオキサン(0.5mL)中の4M塩化水素溶液を滴下して処理し、該混合物を20時間撹拌した。この反応混合物を1,4‐ジオキサン(1.0mL)で希釈し、沈殿物を濾別し、冷ジオキサン(1.0mL)、冷ジエチルエーテル(1.0mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させて白色の結晶性固体を得た(69mg、73%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 8.04 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.96 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.87 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.76 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.62-7.56 (2H, m), 6.05 (2H, d, J = 9.0 Hz), 1.37 (9H, s); LCMS: rt 2.1-2.2 min, +ve ESI m/z360.8 ([M + H]+, 100%), -ve ESIm/z 358.7 ([M - H]-, 100%).
実施例11‐P. ジソディウム((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)ホスファート
【化33】
【0110】
周囲温度のメタノール(5mL)中のジヒドロゲン((2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル)ホスファート(180mg、0.500mmol)の懸濁液に、メタノール中の0.5Mナトリウムメトキシド溶液(2mL、1.00mmol、2.0等量)を滴下して処理した。得られた透明な溶液を減圧下で蒸発させ、高真空下で乾燥させて白色固体を得た(196mg、96%)。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 7.92-7.89 (3H, m, overlapping), 7.79-7.77 (3H, m, overlapping), 7.50 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.46 (1H, t, J= 7.5 Hz), 5.88 (2H, d, J = 4.3 Hz), 1.40 (9H, s); LCMS: rt 2.06-2.10 min, +ve ESI m/z 360.8 ([M + H]+, 100%), -ve ESI m/z 358.7 ([M - H]-, 100%).
【0111】
合成された他のプロドラッグ誘導体は以下に示す通りである。カルバマートの実施例は、典型的にはベンゾイミダゾール先駆物質をピリジン/ジクロロメタン中で適切なクロロギ酸エステルで処理することにより形成された。
実施例12‐P. (2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)メチル(tert‐ブトキシカルボニル)‐L‐アラニナート
【化34】
実施例13‐P. エチル2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐カルボキシラート
【化35】
実施例14‐P. メチル2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐カルボキシラート
【化36】
実施例15‐P. エチル2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐カルボキシラート
【化37】
実施例16‐P. プロピル2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐カルボキシラート
【化38】
実施例17‐P. 1‐(2‐(4‐(tert‐ブチル)フェニル)‐1H‐ベンゾ[d]イミダゾール‐1‐イル)エタン‐1‐オン
【化39】
【0112】
生物学的試験
酸化的代謝は骨髄性細胞の表現型に抗炎症性の作用を及ぼし(O'Neill LA, Frontiers in Immunology, (スイス), 2014, Vol.5, 420)、Ppargc1aはこのエネルギー代謝経路を促進する可能性がある(Spiegelman BM, Novartis Foundation Symposium, (米) 2007)。よって、Ppargc1aの薬理学的活性化は骨髄性細胞の炎症反応を阻害すると予想された。この現象はTNF‐α阻害試験により培養物中で測定可能である。
【0113】
≪TNF‐α阻害を測定するための細胞試験の実施手順≫
ネズミ動物の骨髄性細胞株BV2又はヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、10%ウシ胎児血清及び1%L‐グルタミン1%ペニシリンを補足したRPMI1640培地(カタログ番号11875119、ギブコ)で培養する。これらの細胞を次に、100ng/mlのリポポリサッカライド(LPS、O111:B4、カタログ番号L2630、シグマ)で24時間刺激する。LPS刺激の結果、BV2細胞又はPBMCによって炎症性サイトカインTNF‐αが分泌されるが、その量は、製造業者の実施手順書(BV2はカタログ番号558273、PBMCはカタログ番号558299、BDバイオサイエンス)に従って培養上清試料中でELISAによって定量可能である。実施例の化合物1~78がBV2細胞又はPBMCによるTNF‐α産生を阻害するかどうか判定するために、細胞を様々な濃度の化合物が存在する状態で培養し、ジメチルスルホキシド(ビヒクル対照)が存在する状態で培養された同じ細胞によるTNF‐α産生に対してTNF‐α産生が何倍低減されるかを決定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0114】
ミクロソーム安定性試験及びCaco‐2透過性試験を、本発明の選択化合物について実施した。
【0115】
≪ミクロソーム安定性試験の実施手順≫
ヒト肝臓ミクロソーム(コーニング#452117、ロット38291)又はマウス肝臓ミクロソーム(コーニング#452701、ロット番号6328004)を個別に、終濃度11.25mgタンパク質/化合物として、KxPO4、pH7.4(100mM)、MgCl2(10mM)、及び被験化合物(1μM)と組み合わせ、プレインキュベートした(10分、37℃)。次に、NADPH(1mM)を添加して反応を開始させた(全容積100μL)。様々な時点(0、10、20、及び40分)において、アセトニトリル中のClem停止溶液(100μL、625ng/mL)(シプロテクス)で反応を停止させた。試料を4000gで20分間遠心分離処理し、希釈し(75μLを75μLの0.1%ギ酸水溶液に添加)、LC‐MS/MSで分析した。結果を表3に示す。
【0116】
≪Caco‐2透過性試験の実施手順≫
Caco‐2細胞を、5%COの雰囲気中DMEMで維持した。輸送実験のために細胞5×10個/ウェルをポリカーボネート製フィルタのインサート上に播種し、21±4日間増殖及び分化させてから細胞単層を実験に使用した。見かけの透過係数を、輸送体阻害剤としてのエラクリダールの存在下及び非存在下において、A→B方向及びB→A方向について決定した。最大3種の被験物及び参照化合物をpH7.4のハンクス平衡塩類溶液に溶解して終濃度10μMとした。試験は、25mMのHEPES(pH7.4)を含有するHBSS中にて37℃で実施した。この試験に先立ち、単層を予め暖めたHBSS中で洗った。実験の最初に、被験物を含有している予め暖めたHBSSを単層のドナー側に添加し、被験物を含まないHBSSをレシーバ側に添加した。レシーバ側のアリコートは2時間のインキュベーション期間にわたって採取し;ドナー側のアリコートは0時間及び2時間で採取した。アリコートを、内部標準を含有する0.1%のギ酸を含む等体積のメタノール/水で希釈した。該混合物をLC‐MS/MSで分析した。見かけの透過係数(Papp)を、式:Papp=(dCrec/dt)/(A×C0,donor)]×10を使用して計算したが、前記式中、dCrev/dtはレシーバ側区画内の経時的な濃度変化であり、C0,donorは時間0におけるドナー側区画内の濃度であり、Aは細胞が存在する区画の面積である。結果を表3に示す。
【表3】
【0117】
薬物動態試験(マウス)を、本発明の実施例1、6‐P、8‐P、及び11‐Pの化合物について実施した。実施例1、6‐P、8‐P、及び11‐Pの化合物を10mg/kgとしてマウスに経口投与した(n=2)。血漿、脳、及び肝臓を、0.5時間、1時間、2時間、及び4時間で採取した。この試料をLCMSで分析して、実施例1の化合物、すなわちプロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐Pの医薬品活性成分(API)のレベルを決定した。
【0118】
図1は、プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PのAPIの血漿中レベルを示す。
図2は、プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PのAPIの脳中レベルを示す。
図3は、プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PのAPIの肝臓中レベルを示す。
【0119】
概して、図1~3は、プロドラッグの実施例6‐P、8‐P、及び11‐PがマウスPK試験において血漿、脳、及び肝臓の中に測定可能な量のAPIをもたらしたことを示している。
【0120】
典型的な実施形態について例証の目的で述べてきたが、前述の説明及び実施例は本発明の範囲に対する限定と見なされるべきではない。従って、当業者は、様々な改変形態、適応形態及び代替形態を、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく思い付くことが可能である。
図1
図2
図3