(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンの共沸組成物及び共沸様組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240119BHJP
C09K 3/30 20060101ALI20240119BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20240119BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240119BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C09K3/30 J
C09K3/30 G
C11D7/50
C09K5/04 F
C09K5/04 B
C08J9/14 CET
(21)【出願番号】P 2021509156
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2019047605
(87)【国際公開番号】W WO2020041539
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト バイロン ワイソン
(72)【発明者】
【氏名】マーク エル.ロビン
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526171(JP,A)
【文献】特表2010-532395(JP,A)
【文献】特表2013-514450(JP,A)
【文献】特開2015-187249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 3/30
C11D 7/50
C09K 5/04
C08J 9/14
C07C 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z-HFO-1336mzzと、第2の成分と、を含む、組成物であって、前記第2の成分が、
a)n-ブタンと、
b)イソブタンと、からなる群から選択され、
前記第2の成分が、前記Z-HFO-1336mzzと共沸混合物又は共沸様混合物(azeotrope-like mixture)を形成するための有効量で存在
し、
前記第2の成分がn-ブタンである場合、0.2~31.3モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び68.7~99.8モルパーセントのn-ブタンを含み、
前記第2の成分がイソブタンである場合、0.2~18.3モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び81.7~99.8モルパーセントのイソブタンを含む、組成物。
【請求項2】
前記第2の成分が、n-ブタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の成分が、イソブタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、8.1~16.0モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び84.0~91.9モルパーセントのn-ブタンを含む共沸組成物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、-40℃~120℃の温度にわたって2.5psia~329.4psiaの蒸気圧を示す、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、-40℃~120℃の温度で、0.2~31.3モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び68.7~99.8モルパーセントのn-ブタンを含む共沸様組成物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、1気圧、-0.6℃~-1.8℃の温度で、0.5~13.5モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び86.5~99.5モルパーセントのn-ブタンを含む共沸様組成物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、2.8~5.7モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び94.3~97.2モルパーセントのi-ブタンを含む共沸組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、-40℃~110℃の温度にわたって4.1psia~346.3psiaの蒸気圧を示す、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、-40℃~120℃の温度で、0.2~18.3モルパーセントのZ-HFO-1336mzz及び81.7~99.8モルパーセントのi-ブタンを含む共沸様組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
潤滑剤、流動点調整剤(pour point modifier)、消泡剤、粘度改良剤(viscosity improver)、乳化剤分散剤、酸化阻害剤、極圧剤、腐食防止剤、洗剤、触媒、界面活性剤、難燃剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、帯電防止剤、可溶化剤、IR減衰剤、核剤、気泡制御剤(cell controlling agent)、押出助剤、安定化剤、断熱剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、ガス遮断樹脂、ポリマー改質剤、レオロジー改質剤、抗菌剤、蒸気圧調整剤(vapor pressure modifier)、UV吸収剤、架橋剤、浸透性調整剤(permeability modifier)、苦味剤、噴射剤、及び酸捕捉剤からなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
発泡体を形成するプロセスであって、
(a)ポリオールを含む発泡性組成物を発泡剤に添加する工程と、
(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で、前記発泡性組成物をポリイソシアネートと反応させる工程を含み、前記発泡剤が、請求項1に記載の組成物を含む、プロセス。
【請求項13】
前記発泡体が、ポリウレタン又はポリイソシアヌレートである、請求項12に記載のプロセスによって形成される発泡体。
【請求項14】
熱可塑性ポリスチレンポリマーと、請求項1に記載の組成物を含む発泡剤と、を含む発泡体。
【請求項15】
発泡性成分と、発泡剤と、を含む、プレミックス組成物であって、前記発泡剤が、請求項1に記載の組成物を含む、プレミックス組成物。
【請求項16】
冷却を生じさせるためのプロセスであって、
(a)請求項1に記載の組成物を凝縮させる工程と、
(b)前記組成物を冷却対象物の近傍で蒸発させる工程と、を含む、プロセス。
【請求項17】
伝熱媒体を含む伝熱システムであって、前記伝熱媒体が、請求項1に記載の組成物を含む、伝熱システム。
【請求項18】
表面を洗浄する方法であって、請求項1に記載の組成物を前記表面と接触させる工程を含む、方法。
【請求項19】
分配される成分と、噴射剤と、を含む、エアゾール製品であって、前記噴射剤が、請求項1に記載の組成物を含む、エアゾール製品。
【請求項20】
溶質を溶解するためのプロセスであって、前記溶質を、十分な量の請求項1に記載の組成物と接触及び混合する工程を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年8月23日に出願された米国特許仮出願第62/722,149号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンを含む共沸組成物又は共沸様組成物の発見に関する。これらの組成物は、エアゾール噴射剤、冷媒、洗浄剤、熱可塑性及び熱硬化性発泡体製造用の膨張剤(「発泡剤」)、伝熱媒体、ガス状誘電体、溶媒、消火剤及び抑火剤、動力サイクル作動流体、重合媒質、粒子除去流体、キャリア流体、バフ磨き研磨剤、並びに置換乾燥剤として有用である。
【背景技術】
【0003】
過去数十年間にわたり、多くの産業でオゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(ozone depleting chlorofluorocarbon、CFC)類及びヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)類に代わる代替物を見つける取り組みがなされてきた。CFC及びHCFCは、エアゾール噴射剤、冷媒、洗浄剤、熱可塑性及び熱硬化性発泡体用の膨張剤、伝熱媒体、気体誘電体、消火剤及び抑火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ磨き研磨剤、並びに置換乾燥剤としての使用を含む、幅広い用途において使用されてきた。用途の広いこれらの化合物の代替物を探索した結果、多くの産業がヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)類、ヒドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)類、及びヒドロクロロフルオロオレフィン(hydrochlorofluoroolefin、HCFO)類の使用に切り替えている。
【0004】
HFC類は、成層圏オゾンの破壊には寄与しないものの、「温室効果」への寄与(すなわち地球温暖化への寄与)のため、問題とされている。その結果、HFC類は調査の対象となっており、その広く普及した使用も将来的には制限されるおそれがある。HFC類と異なり、多くのHFO類及びHCFO類は大気中で比較的速やかに反応して分解するために温室効果には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(Z-CF3CH=CHCF3、Z-HFO-1336mzz)を含む特定の炭化水素又はフルオロカーボンの混合物は、CFC及びHCFCの代替物質の潜在的な候補として機能し、低い地球温暖化係数(global warming potential、GWP)を示し、成層圏オゾンの破壊には寄与しないものと考えられる。
【0007】
実施形態1.0では、Z-HFO-1336mzzと、第2の成分と、を含む、組成物であって、第2の成分が、
a)n-ブタンと、
b)イソブタンと、からなる群から選択され、
第2の成分が、
Z-HFO-1336mzzと共沸混合物又は共沸様混合物(azeotrope-like mixture)を形成するための有効量で存在する、組成物が提供される。
【0008】
実施形態2.0では、第2の成分が、n-ブタンである、実施形態1.0に記載の組成物が提供される。
【0009】
実施形態3.0では、第2の成分が、イソブタンである、実施形態1.0に記載の組成物が提供される。
【0010】
実施形態4.0では、潤滑剤、流動点調整剤(pour point modifier)、消泡剤、粘度改良剤(viscosity improver)、乳化剤、分散剤、酸化阻害剤、極圧剤、腐食防止剤、洗剤、触媒、界面活性剤、難燃剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、帯電防止剤、可溶化剤、IR減衰剤、核剤、気泡制御剤(cell controlling agent)、押出助剤、安定化剤、断熱剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、ガス遮断樹脂、ポリマー改質剤、レオロジー改質剤、抗菌剤、蒸気圧調整剤(vapor pressure modifier)、UV吸収剤、架橋剤、浸透性調整剤(permeability modifier)、苦味剤、噴射剤、及び酸捕捉剤からなる群から選択される添加剤を更に含む、実施形態1.0に記載の組成物が提供される。
【0011】
実施形態4.1では、潤滑剤、流動点調整剤、消泡剤、粘度改良剤、乳化剤、分散剤、酸化阻害剤、極圧剤、腐食防止剤、洗剤、触媒、界面活性剤、難燃剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、帯電防止剤、可溶化剤、IR減衰剤、核剤、気泡制御剤、押出助剤、安定化剤、断熱剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、ガス遮断樹脂、ポリマー改質剤、レオロジー改質剤、抗菌剤、蒸気圧調整剤、UV吸収剤、架橋剤、浸透性調整剤、苦味剤、噴射剤、及び酸捕捉剤からなる群から選択される添加剤を更に含む、実施形態2.0に記載の組成物が提供される。
【0012】
実施形態4.2では、潤滑剤、流動点調整剤、消泡剤、粘度改良剤、乳化剤、分散剤、酸化阻害剤、極圧剤、腐食防止剤、洗剤、触媒、界面活性剤、難燃剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、帯電防止剤、可溶化剤、IR減衰剤、核剤、気泡制御剤、押出助剤、安定化剤、断熱剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、ガス遮断樹脂、ポリマー改質剤、レオロジー改質剤、抗菌剤、蒸気圧調整剤、UV吸収剤、架橋剤、浸透性調整剤、苦味剤、噴射剤、及び酸捕捉剤からなる群から選択される添加剤を更に含む、実施形態3.0に記載の組成物が提供される。
【0013】
実施形態5.0では、発泡体を形成するプロセスであって、
(a)発泡性組成物を発泡剤に添加する工程と、
(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で、発泡性組成物を反応させる工程と、を含み、
発泡剤が、実施形態1.0に記載の組成物を含む、プロセスが提供される。
【0014】
実施形態5.1では、発泡体を形成するプロセスであって、
(a)発泡性組成物を発泡剤に添加する工程と、
(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で、発泡性組成物を反応させる工程と、を含み、
発泡剤が、実施形態2.0に記載の組成物を含む、プロセスが提供される。
【0015】
実施形態5.2では、発泡体を形成するプロセスであって、
(a)発泡性組成物を発泡剤に添加する工程と、
(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で、発泡性組成物を反応させる工程と、を含み、
発泡剤が、実施形態3.0に記載の組成物を含む、プロセスが提供される。
【0016】
実施形態5.3では、発泡性組成物がポリオールを含む、実施形態5.1又は5.2に記載の発泡体を形成するプロセスが提供される。
【0017】
実施形態6.0では、実施形態5.1~5.3のいずれかに記載のプロセスによって形成される発泡体が提供される。
【0018】
実施形態7.0では、ポリマーと、実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物とを含む、発泡体が提供される。
【0019】
実施形態8.0では、発泡性成分と、発泡剤として実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物とを含む、プレミックス組成物が提供される。
【0020】
実施形態9.0では、冷却を生じさせるためのプロセスであって、実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物を凝縮する工程と、その後、組成物を、冷却対象物の近傍で蒸発させる工程と、を含む、プロセスが提供される。
【0021】
実施形態10.0では、実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物を伝熱媒体として含む、伝熱システムが提供される。
【0022】
実施形態11.0では、表面を洗浄する方法であって、実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物を表面と接触させる工程を含む、方法が提供される。
【0023】
実施形態12.0では、分配される成分と、噴射剤として実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物と、を含む、エアゾール製品が提供される。
【0024】
実施形態13.0では、溶質を溶解するためのプロセスであって、溶質を、十分な量の実施形態2.0~3.0のいずれかに記載の組成物と接触及び混合する工程を含む、プロセスが提供される。
【0025】
実施形態14.0では、表1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、2.2、2.3、2.4、2.5及び2.6のいずれかの見出し項目のいずれかに記載の共沸組成物又は近共沸組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】29.95℃の温度におけるZ-HFO-1336mzz(cis-1336mzz)とn-ブタンとの混合物の気液平衡曲線を示す。
【
図2】29.94℃におけるZ-HFО-1336mzz(cis-1336mzz)とイソブタンとの混合物の気液平衡曲線を示す。
【
図3】未希釈のHFO-1336mzz-Zと比較した、ポリスチレン中のHFO-1336mzz-Z/n-ブタンブレンドの溶解度を示す。
【
図4】未希釈のHFO-1336mzz-Zと比較した、ポリスチレン中のHFO-1336mzz-Z/イソ-ブタンブレンドの溶解度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、n-ブタン及びイソブタンの各々とZ-HFO-1336mzzの共沸組成物及び近共沸組成物に関する。
【0028】
Z-HFO-1336mzzの別の表記としては、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(Z-CF3CH=CHF3)、cis-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(cis-CF3CH=CHF3)、Z-HFO-1336mzz及びHFO-1336mzzZが挙げられる。イソブタンの代替の表記としては、2-メチルプロパンが挙げられる。
【0029】
本発明の共沸又は共沸様組成物は、所望の量を混合又は組み合わせる工程を含む任意の便宜のよい方法により調製することができる。好ましい一方法としては、所望の成分量を秤量し、その後、適切な容器中で各成分を混合することがある。
【0030】
本発明の組成物は、エアゾール噴射剤、冷媒、洗浄剤、熱可塑性及び熱硬化性発泡剤用の発泡剤(泡膨張剤)、伝熱媒体、ガス状誘電体、消火剤及び抑火剤、動力サイクル作動流体、重合媒質、粒子除去流体、キャリア流体、バフ磨き研磨剤、並びに置換乾燥剤としての使用を含む、幅広い用途において使用することができる。
【0031】
本明細書で使用される際、「本発明の組成物(inventive compositions)」及び「本発明の組成物(compositions of the present invention)」という用語は、Z-HFO-1336mzzと、n-ブタン及びイソブタンからなる群から選択される第2の成分との共沸組成物及び近共沸組成物を意味するものとして理解されたい。
【0032】
伝熱媒体としての使用
開示する組成物は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体として作用することができる。そのような伝熱組成物は、流体が相転移するサイクル、すなわち、流体が液体から気体に変化し、再び液体に戻る、又はその逆に変化するサイクルにおける冷媒としても有用であり得る。
【0033】
伝熱システムの例としては、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、冷水機、満液式蒸発冷却機、直接膨張式冷却機、ヒートパイプ、浸漬冷却ユニット、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニット及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
1つの実施形態では、Z-HFO-1336mzzを含む組成物は、冷却、空調、又はヒートポンプシステム若しくは機器を含む可動式伝熱システムにて有用である。別の実施形態では、上記の組成物は、冷却、空調又はヒートポンプシステム若しくは装置を含む固定式伝熱システムにおいて有用である。
【0035】
本明細書で使用される際、「移動式伝熱システム」という用語は、道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送単位に組み込まれる任意の冷却、空調装置、又は加熱装置を意味するものとして理解される。更に、可動式冷却又は空調装置ユニットは、任意の移動キャリアから独立しており、かつ「インターモーダル」システムとして知られている装置を含む。このようなインターモーダルシステムとしては、「コンテナ」(複合海上/陸上輸送)並びに「スワップボディ」(複合道路/鉄道輸送)が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される際、「固定式伝熱システム」という用語は、動作中に定位置に固定されるシステムを意味するものとして理解される。固定式伝熱システムは、建物内に配置されるか若しくは取り付けられてもよく、又はソフトドリンク自動販売機などの屋外に設置される独立型装置の場合もある。これらの固定式用途は、チラー、遷移臨界ヒートポンプ(50℃、70℃、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、又は200℃を超える凝縮器温度で動作するもの)であってよい高温ヒートポンプ、住宅用、商業用、又は産業用空調システムを含む(但しこれらに限定されない)固定式空調装置又はヒートポンプであってよく、窓取り付け式、ダクトレス、ダクト付き、パッケージ型ターミナル、チラー、及び建物の外部であるが建物に接続されたもの(例えばルーフトップシステムなど)であってよい。固定式冷却用途において、開示する組成物は、商業用、工業用又は住宅用の冷蔵庫及び冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラー及びフリーザ、満液式蒸発冷却機、直接膨張式冷却機、ウォークイン及びリーチインクーラー及びフリーザ、並びに組み合わせシステムを含む、高温、中温及び/又は低温冷却機器において有用であり得る。いくつかの実施形態では、開示する組成物は、スーパーマーケットの冷蔵庫システムにおいて使用され得る。
【0037】
したがって、本発明によると、Z-HFO-1336mzzを含む、本明細書に開示するような組成物は、冷却するための方法、加熱するための方法、及び伝熱のための方法に有用であってよい。
【0038】
1つの実施形態では、冷却対象物の近傍において、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを蒸発させる工程と、その後、その組成物を凝縮する工程と、を含む、冷却するための方法が提供される。
【0039】
別の実施形態では、加熱対象物の近傍において、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを凝縮する工程と、その後、その組成物を蒸発させる工程と、を含む、加熱するための方法が提供される。
【0040】
別の実施形態では、伝熱液組成物として、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物を使用する方法が開示される。本方法は、当該組成物を熱源からヒートシンクに輸送する工程を含む。
【0041】
本明細書に開示される組成物は、とりわけ、R-123(又は、HFC-123、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、R-11(又は、CFC-11、トリクロロフルオロメタン)、R-12(又はCFC-12、ジクロロジフルオロメタン)、R-22(クロロジフルオロメタン)、R-245fa(又は、HFC-245fa、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、R-114(又は、CFC-114、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン)、R-236fa(又は、HFC-236fa、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン)、R-236ea(又は、HFC-236ea、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン)、R-124(又は、HCFC-124、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン)を含むがこれらに限定されない、現在使用されている(「現用」)冷媒の代替物として有用であり得る。
【0042】
本明細書で使用するとき、「現用冷媒」という用語は、伝熱システムがそれに対して動作するように設計された冷媒、又は伝熱システム内に存在する冷媒を意味するものとして理解される。
【0043】
別の実施形態では、空のシステムに本発明の組成物を充填することにより、又は現用冷媒を本発明の組成物で実質的に置換することにより、現用冷媒を用いて動作するように設計された伝熱システムを動作させる方法又は熱を伝導するための方法が提供される。
【0044】
本明細書で使用される際、「実質的に置換する」という用語は、現用冷媒をシステムから排出させるか又は現用冷媒をシステムから圧送した後、システムに本発明の組成物を充填することを意味するものとして理解される。システムは、充填する前に1回以上の量の置換冷媒でフラッシングすることができる。システムが本発明の組成物で充填された後にも幾分の少量の現用冷媒がシステム内に存在してもよい点は理解されるであろう。
【0045】
別の実施形態では、現用冷媒及び潤滑剤を含有する伝熱システムを再充填するための方法であって、潤滑剤の相当部分をシステム内に保持しつつ現用冷媒を伝熱システムから実質的に除去する工程と、Z-HFО-1336mzzを含む本組成物の1つを伝熱システムに導入する工程と、を含む、方法が提供される。特定の実施形態では、システム内の潤滑剤は、部分的に置換される。
【0046】
別の実施形態では、Z-HFO-1336mzz含む本発明の組成物は、チラー内の冷媒の補充に使用されてよい。例えば、HCFC-123を使用するチラーの性能が、冷媒の漏出により低下した場合、本来の仕様に性能を戻すために、本明細書に開示される組成物を添加することができる。
【0047】
別の実施形態では、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを含む熱交換システムが提供される。このシステムは、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、ウォーターチラー、満液式蒸発チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニット、及びそれらの組み合わせを有するシステムからなる群から選択される。加えて、Z-HFO-1336mzzを含む組成物は、これらの組成物が主冷媒として用いられることで副伝熱液の冷却を提供し、それにより遠隔地を冷却する二次ループシステムに有用であってよい。
【0048】
蒸気圧縮冷蔵システム、空調システム及びヒートポンプシステムはそれぞれ、蒸発器、圧縮器、凝縮器、及び膨張装置を構成要素として備えている。蒸気圧縮サイクルは、複数の工程において冷媒を再使用し、ある工程においては冷却効果、異なる工程においては加熱効果を生じさせる。上記のサイクルは、以下のように簡単に説明することができる。液体冷媒が膨張装置を通って蒸発機に入り、当該液体冷媒が蒸発機において沸騰し、環境から熱を奪うことによって、低温で蒸気が形成され、冷却が生じる。低圧の蒸気は圧縮機に入り、そこで蒸気が圧縮されて、その圧力及び温度が上昇する。次いで、高圧の(圧縮された)蒸気の冷媒が凝縮機に入り、そこで冷媒が凝縮し、その熱を環境に放出する。冷媒は膨張機器に戻り、それを通じて液体は凝縮機におけるより高圧レベルから蒸発機における低圧レベルに膨張し、このようにして、サイクルを繰り返す。
【0049】
1つの実施形態では、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを含む伝熱システムが提供される。別の実施形態では、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを含む冷却、空調又はヒートポンプ機器が開示される。別の実施形態では、Z-HFO-1336mzzを含む本組成物のいずれかを含む固定式冷却又は空調機器が開示される。更に別の実施形態では、本明細書に開示する組成物を含有する可動式冷却又は空調機器が開示される。
【0050】
潤滑剤及び添加剤
一実施形態では、Z-HFО-1336mzzと少なくとも1種類の添加剤とを含む本組成物の1つが提供される。最も一般的な添加剤は潤滑剤である。潤滑剤及び他の添加剤については、Fuels and Lubricants Handbook:Technology,Properties,Performance and Testing,Ch.15,「Refrigeration Lubricants-Properties and Applications,」Michels,H.Harvey及びSeinel,Tobias H.著MNL37WCD-EB,ASTM International,(June 2003)に述べられており、当該文献を参照により援用するものである。潤滑剤としては、ポリオールエステル類(polyolester、POE)、ナフテン系鉱油類(naphthenic mineral oil、NMO)及びポリアルキレングリコール類(naphthenic mineral oil、PAG)、並びに合成潤滑剤が挙げられる。他の添加剤は、分散剤、酸化阻害剤、極圧剤、腐食防止剤、洗剤、酸捕捉剤を含む、システム内の金属と、又は潤滑剤中の夾雑物と反応することができるという意味で、化学的な活性を有する群から選択される。酸化阻害剤の選択は、潤滑剤の選択に応じて決めることができる。アルキルフェノール類(例えばジブチルヒドロキシトルエン)が、ポリオールエステル潤滑剤において有用であり得る。窒素含有阻害剤(例えばアリールアミン類及びフェノール類)が、鉱油潤滑剤において有用であり得る。酸捕捉剤は、合成潤滑剤系において特に重要であり、アルカノールアミン類、長鎖アミド及びイミン、炭酸塩、及びエポキシドが挙げられる。更なる他の添加剤は、流動点調整剤、消泡剤、粘度改良剤、及び乳化剤からなる群から選択される物理特性を変化させる群から選択される。消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシアミン及びポリアクリレートが挙げられる。
【0051】
発泡体を形成する方法
本発明は更に、(a)発泡性組成物に本発明の組成物を添加する工程と、(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で発泡性組成物を反応させる工程と、を含む、発泡体を形成する方法に関する。
【0052】
独立気泡ポリイソシアネート系発泡体は、例えば建造物の建築及びエネルギー効率の高い電化製品の製造において、断熱目的で広く用いられている。建築業界では、ポリウレタン(ポリイソシアヌレート)ボード材が、その断熱性能及び荷重支持性能のためにルーフィング及びサイディングで用いられている。注入及び噴霧によるポリウレタン発泡体は、断熱性屋根材、貯蔵タンクなどの断熱性大型構造物、冷蔵庫及び冷凍庫などの断熱性装置、断熱性冷蔵トラック及び鉄道車両などをはじめとする様々な用途で広く用いられている。
【0053】
第2のタイプの絶縁性発泡体は、熱可塑性発泡体、主としてポリスチレン発泡体である。ポリオレフィン発泡体(例えばポリスチレン、ポリエチレン、及びポリプロピレン)は、絶縁及び包装用途で広く用いられている。これらの熱可塑性発泡体は一般に、発泡剤としてCFC-12(ジクロロジフルオロメタン)を使用して製造される。より最近では、HCFC類(HCFC-22、クロロジフルオロメタン)又はHCFC類(HCFC-22/HCFC-142b)若しくはHFC類(HFC-152a)のブレンドが、ポリスチレン用の発泡剤として使用されている。一実施形態では、熱可塑性発泡体は、発泡剤として本明細書に記載の共沸組成物を使用することによって調製される。
【0054】
第3の重要なタイプの断熱性発泡体はフェノール系発泡体である。これらの発泡体は、非常に魅力的な引火特性を有し、一般にCFC-11(トリクロロフルオロメタン)及びCFC-113(1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン)発泡剤を用いて製造されてきた。
【0055】
独立気泡型発泡体以外に、連続気泡型発泡体も例えば液体吸収性物品の製造などにおいて商業的な関心の対象となっている。米国特許第6,703,431号(Dietzenら)は、創傷接触材などの液体吸収性衛生物品において有用な熱可塑性ポリマーに基づく連続気泡型発泡体について記載している。米国特許第6,071,580号(Blandら)は、様々な吸収用途で使用することができる吸収性押出熱可塑性発泡体について記載している。連続気泡型発泡体には、例えば米国特許第5,977,271号(Malone)に記載されるような脱気断熱パネルの製造において、脱気又は真空パネル技術における用途も存在する。連続気泡型発泡体を脱気絶縁パネルに使用することで、発泡体の脱気又は真空度、ポリマーの種類、気泡のサイズ、密度、及び連続気泡含有率に応じて厚さ1インチ当たり10~15のR値を得ることが可能である。これらの連続気泡型発泡体は、従来より、CFC、HCFC、又はより最近ではHFCを発泡剤として使用して製造されている。
【0056】
多峰性発泡体も商業的な関心の対象となっており、例えば米国特許第6,787,580号(Chondeら)及び同第5,332,761号(Paquetら)に記載されている。多峰性発泡体とは、多峰性の気泡径分布を有する発泡体のことであり、かかる発泡体は、ほぼ均一な気泡径分布を有する同様の発泡体と比較してより高い断熱値(R値)をしばしば有することから、断熱物品において特に有用性を有する。これらの発泡体は、CFC、HCFC、及びより最近ではHFCを発泡剤として使用して製造されている。
【0057】
これらの様々なタイプの発泡体はいずれも、その製造に発泡(膨張)剤を必要とする。断熱発泡体は、ポリマーを発泡させるためだけでなく、主として断熱値の非常に重要な特徴である蒸気熱伝導率が低いことからハロカーボン発泡剤の使用に頼っている。
【0058】
他の実施形態は、本開示の組成物を使用して調製された発泡性組成物、好ましくは熱硬化性又は熱可塑性組成物を提供する。かかる発泡体の実施形態では、本組成物のうちの1つ以上が、発泡性組成物中に発泡剤又はその一部として含まれ、この組成物は、適切な条件下で反応及び/又は発泡することにより泡又は気泡構造を形成することが可能な1つ以上の更なる成分を好ましくは含む。別の態様は、本開示の組成物を含む発泡剤を含有するポリマー発泡体配合物から作製された発泡体、好ましくは独立気泡型発泡体に関する。
【0059】
特定の実施形態では、発泡体を作製する方法を提供する。かかる発泡体の実施形態では、本開示の組成物を含む発泡剤が発泡性組成物に添加されて発泡性組成物と反応させられ、この発泡性組成物は、適切な条件下で反応及び/又は発泡することにより泡又は気泡構造を形成することが可能な1つ以上の更なる成分を含むことができる。本明細書に参照により援用される「Polyurethanes Chemistry and Technology」、I、II巻、Saunders and Frisch、1962年、John Wiley and Sons,New York,N.Y.に記載されるような当該技術分野では周知の方法のいずれも、これらの発泡体の実施形態に従って使用又は適用することができる。
【0060】
特定の実施形態では、発泡体の作製において他の特定の成分を使用することがしばしば望ましい。これらの更なる成分としては、触媒、界面活性剤、難燃剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、帯電防止剤、可溶化剤、IR減衰剤、核剤、気泡制御剤、押出助剤、安定化剤、断熱剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、ガス遮断樹脂、ポリマー改質剤、レオロジー改質剤、抗菌剤、蒸気圧調整剤、UV吸収剤、架橋剤、浸透性調整剤、苦味剤、噴射剤などがある。
【0061】
ポリウレタン発泡体は一般に、発泡又は膨張剤、及びポリウレタン反応自体及び最終的なポリマーの特性の両方を制御及び調整するために添加される補助化学物質の存在下でイソシアネートをポリオールと組み合わせて反応させることによって作製される。処理の都合上、これらの材料は、一般的に「A剤(A-side)」及び「B剤(B-side)」と称される2つの非反応性部分として予め混合することができる。
【0062】
「A剤」という用語は、イソシアネート又はイソシアネート含有混合物を意味することを意図している。イソシアネート含有混合物は、イソシアネート、発泡又は膨張剤、及び、触媒、界面活性剤、安定化剤、鎖延長剤、架橋剤、水、難燃剤、煙抑制剤、色素、着色材料、充填剤などの補助化学物質を含むことができる。
【0063】
「B剤」という用語は、ポリオール又はポリオール含有混合物を意味することを意図している。ポリオール含有混合物は、ポリオール、発泡又は膨張剤、及び、触媒、界面活性剤、安定化剤、鎖延長剤、架橋剤、水、難燃剤、煙抑制剤、色素、着色材料、充填剤などの補助化学物質を含むことができる。
【0064】
発泡体を作製するには、次に適切な量のA剤とB剤とを組み合わせて反応させる。
【0065】
本明細書に開示されるプロセスによって発泡体を作製する場合、発泡反応混合物が硬化するまでの間、発泡反応混合物を安定化させるために少量の界面活性剤を使用することが一般的に好ましい。かかる界面活性剤は、通常、液体又は固体の有機シリコーン化合物を含むことができる。他の、比較的好ましい界面活性剤としては、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、長鎖アルキル酸硫酸エステル、アルキルスルホン酸エステル及びアルキルアリールスルホン酸の第3級アミン又はアルカノールアミン塩が挙げられる。界面活性剤は、発泡反応混合物を崩壊に対して安定化させ、かつ大きく不均一な気泡の形成を防止するのに十分な量で用いられる。ポリオール100重量部当たり約0.2~約5重量部、又は更にはそれ以上の界面活性剤が通常は十分である。
【0066】
ポリオールとポリイソシアネートとの反応用の1つ以上の触媒を使用することもできる。第3級アミン化合物及び有機金属化合物を含む任意の好適なウレタン触媒を使用することができる。こうした触媒は、ポリイソシアネートの反応速度をある程度増大させる量で用いられる。一般的な量としては、ポリオール100重量部当たり約0.1~約5重量部の触媒である。
【0067】
したがって、一態様では、本発明は、上記に述べた発泡剤の存在下で発泡性組成物を発泡させることにより作製される独立気泡型発泡体に関する。
【0068】
別の態様は、ポリオールと上記に述べた発泡剤とを含む発泡体プレミックス組成物についてのものである。
【0069】
更に、一態様は、発泡体を形成する方法であって、
(a)発泡性組成物に上記に述べた発泡剤を添加する工程と、
(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で、発泡性組成物を反応させる工程と、を含む方法についてのものである。
【0070】
ポリウレタン発泡体に関連して、「発泡性組成物」及び「発泡性成分」という用語は、本明細書では、イソシアネート又はイソシアネート含有混合物を意味するものとして理解される。ポリスチレン発泡体に関連して、「発泡性組成物」及び「発泡性成分」という用語は、本明細書では、ポリオレフィン又はポリオレフィン含有混合物を意味するものとして理解される。
【0071】
更なる態様は、ポリイソシアネート系発泡体を形成する方法であって、上記に述べた発泡剤の存在下で少なくとも1種類の有機ポリイソシアネートを少なくとも1種類の活性水素含有化合物と反応させる工程を含む方法についてのものである。別の態様は、上記の方法により製造されたポリイソシアネート発泡体についてのものである。
【0072】
噴射剤
本発明の別の実施形態は、噴霧可能な組成物中の噴射剤としての本発明の組成物の使用に関する。更に、本発明は、本明細書に述べられる本発明の組成物を含む、噴霧可能な組成物に関する。不活性成分、溶媒及び他の材料とともに噴霧される活性成分が、噴霧可能な組成物中に存在してもよい。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアゾールである。噴霧するのに好適な活性物質としては、これらに限定されるものではないが、防臭剤、香料、ヘアスプレー、洗浄剤、及び研磨剤などの化粧品原料、並びに抗喘息薬及び口臭防止薬などの医薬品が挙げられる。
【0073】
本発明は更に、エアゾール製品を製造するためのプロセスであって、本明細書に述べられる本発明の組成物をエアゾール容器内で有効成分に添加する工程を含み、組成物が噴射剤として機能する、プロセスに関する。
【0074】
溶媒
本発明の組成物は、重合反応用の不活性媒質、金属表面から微粒子を除去するための流体として、例えば、金属部品上に潤滑剤の薄膜を配置するために使用可能なキャリア流体として、又は金属などの研磨された表面からバフ磨き研磨コンパウンドを除去するためのバフ磨き研磨剤としても使用することができる。これらの組成物はまた、宝石若しくは金属部品などから水を除去するための置換乾燥剤として、塩素系の現像剤を含む従来の回路製造技術におけるレジスト現像剤として、又は、1,1,1-トリクロロエタン又はトリクロロエチレンのようなクロロ炭化水素とともに使用される場合には、フォトレジスト用剥離剤としても使用される。地球温暖化への影響が少ない、これらの用途における新規な物質を特定することが望ましい。
【0075】
実質的に定沸点の混合物の2成分共沸組成物又は共沸様組成物を、多くの方法で、選択された条件に応じて特徴付けることができる。例えば、異なる圧力では、所与の共沸組成物又は共沸様組成物の組成は、沸点温度と同様、少なくともある程度変化することが当業者にはよく知られている。それにより、2種類の化合物の共沸組成物又は共沸様組成物は、固有の種類の関係を表し、但し、温度及び/又は圧力に応じて変化する組成を有する。したがって、共沸組成物及び共沸様組成物を定義するには、固定された組成ではなく、組成の範囲が多くの場合に用いられる。
【0076】
本明細書で使用される際、「共沸組成物」という用語は、平衡状態にある所定の温度において、(液相の)沸点圧力が(蒸気相の)露点圧力と同じである(すなわち、X2=Y2である)ことを意味するものとして理解される。共沸組成物を特徴付ける方法の1つに、液体の部分的蒸発又は蒸留によって発生した蒸気が、その蒸気が蒸発又は蒸留された液体と同じ組成を有することがある(すなわち、混合物は、組成が変化することなく蒸留/還流される)。定沸点組成物は、同じ成分の非共沸混合物と比較して、最大沸点又は最小沸点を示すことから共沸性として特徴付けられる。共沸組成物は、一定温度における未希釈の各成分の蒸気圧に対して混合物の蒸気圧の最小値又は最大値によっても特徴付けられる。
【0077】
本明細書で使用される際、「共沸様組成物」及び「近共沸組成物」という用語は、特定の温度での組成物の泡点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、泡点圧力に対して5%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-VP)/BP]×100≦5)。本明細書で使用される際、「3%共沸様組成物」及び「3%近共沸組成物」という用語は、特定の温度での組成物の泡点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、泡点圧力に対して3%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-VP)/BP]×100≦3)。
【0078】
本発明の目的において「有効量」とは、組み合わされた場合に共沸組成物又は共沸様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量として定義される。この定義には、各成分の量が含まれ、これらの量は、共沸組成物又は共沸様組成物が異なる圧力において存在し続ける限りにおいて(但し沸点は異なり得る)、組成物に加えられる圧力に応じて変化し得る。したがって、有効量には、本明細書に記載される以外の温度又は圧力で共沸組成物又は共沸様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量(例えば重量%で表され得る)が含まれる。
【0079】
本明細書で使用される際、「モル分率」という用語は、2成分組成物中の2つの成分のそれぞれのモル数の合計に対する組成物中の1つの成分のモル数の比を意味するものとして理解される(例えばX2=m2/(m1+m2)。
【0080】
任意の2種の化合物の相対揮発度を判定するために、PTx法として知られる方法を用いることができる。この手順では、既知の体積のセル内の総絶対圧力を、2種の化合物の異なる組成について一定温度で測定する。PTx法の使用については、「Phase Equilibrium in Process Design」、Wiley-Interscience Publisher、1970年、Harold R.Null著、124~126頁に詳細に記載されている。参照により本明細書に援用される。得られた圧力対液体組成のデータは、蒸気液体平衡データ(すなわちVLEデータ)とも称される。
【0081】
これらの測定値は、例えば、非ランダム二液(NRTL)式のような活量係数式モデルを用いることによって、PTxセル中の平衡状態の蒸気と液体の組成に変換して液相非理想系を表すことができる。例えば、NRTL式などの活量係数式の使用については、「The Properties of Gases and Liquids」、第4版、McGraw Hill発行、Reid、Prausnitz、及びPoling著、241~387頁、及び「Phase Equilibria in Chemical Engineering」、Butterworth Publishers発行、1985年、Stanley M.Walas著、165~244頁に詳細に記載されている。VLEデータの収集、回帰法による相互作用パラメータの判定、及び系の非理想的挙動を予測するための状態方程式の使用については、「Double Azeotropy in Binary Mixtures of NH3 and CHF2CF2」C.-P.Chai Kao,M.E.Paulaitis,A.Yokozeki,Fluid Phase Equilibria、127巻(1997年)191~203頁に教示されている。上記の参考文献をすべて、参照により本明細書に援用するものである。いかなる理論又は説明に束縛されることも望むものではないが、NRTL式は、PTxセルデータと併せて、本発明のZ-HFO-1336mzz含有組成物の相対揮発度を十分に予測することができ、したがって、蒸留塔などの多段階式分離装置内におけるこれらの混合物の挙動を予測することができると考えられる。
【0082】
請求項、又は組み合わされる請求項中の要素は、それを支持する構造、材料、又は動作の記載をともなわずに、特定の機能を実施するための手段又は工程として本明細書で表現される場合があり、かかる請求項は、明細書に記載される対応する材料又は動作及びそれらの均等物を網羅するものとして解釈されるべきものとする。したがって、例えば、「Z-HFО-1336mzzと第2の成分との共沸混合物又は近共沸混合物を形成するための組成物手段」という用語は、表に示されるもの、及びそれらの均等物を含めた、本明細書で教示される共沸混合物又は近共沸混合物を意味するとして理解されるべきものとする。
【0083】
以下の表中の空間を節約するために、「Z-HFO-1336mzz」を「Z1336mzz」と略してもよい。
【0084】
実施例1:Z-HFО-1336mzz/n-ブタン
Z-HFО-1336mzz/n-ブタンの2成分系を潜在的な共沸及び近共沸挙動について調べた。この2成分系の相対揮発度を判定するため、上記に述べたPTx法を用いた。既知の体積のPTxセル内の圧力を、種々の2成分の組成について29.95℃の一定温度で測定した。収集した実験データを下記表1.1に示す。
【0085】
【表1】
X
2=n-ブタンの液体モル分率
Y
2=n-ブタンの蒸気モル分率
P
exp=実験的に測定された圧力
P
calc=NRTLモデルによって計算された圧力
【0086】
図1は、0~1のn-ブタンの液体モル分率の組成範囲にわたった組成データに対する圧力のプロットを示す。上の曲線は泡点(bubble point、BP)の軌跡を表し、下の曲線は露点(dew point、DP)の軌跡を表している。
図1は、Pxダイアグラム中の最大が43.4psiaの圧力で示されるように、組成物0.856モル分率のn-ブタン及び0.144モル分率のZ-HFO-1336mzz(cis-1336mzz)の29.95℃での共沸混合物の形成を示す。
【0087】
これらのVLEデータに基づき、相互作用係数を抽出した。NRTLモデルを-40~120℃の温度範囲にわたり、10℃刻みで実行し、共沸条件(X2=Y2)が満たされるように圧力を変動させた。得られたZ-HFO-1336mzz/n-ブタン系における共沸混合物の予測を、29.95℃で得られた実験結果とともに表1.2に示す。
【0088】
【0089】
NRTLモデルを用いて、1~24atmの圧力範囲にわたり、1atm刻みで共沸混合物を予測し、その結果を表1.3に示す。
【0090】
【0091】
実験的に測定された結果と比較する目的で、このモデルを-40~120℃の温度範囲にわたって20℃刻みで、また29.95℃で実行した。各温度で、0~1のZ-HFO-1336mzzの液体モル組成の全範囲にわたって0.002刻みで、このモデルを実行した。したがって、モデルは、合計で5010個の温度とZ-HFO-1336mzzの液体モル組成との組み合わせ(10(温度)×501(組成)=5010)で実行された。これらの5010個の組み合わせのうち、一部は共沸性又は近共沸性とみなされたが、出願人が特許請求するのはこれらの組み合わせである。説明を簡単にする目的で、5010個の組み合わせの一覧を、Z-HFO-1336mzzの液体モル組成0.10刻みで、又は近共沸挙動の境界を反映するように編集した。得られた要約された一覧を表1.4に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
1atmにおけるZ-1336mzzとn-ブタンとの間に形成された近共沸混合物を表1.5に示す。説明を簡単にする目的で、これらの組み合わせの一覧を、Z-HFO-1336mzzの液体モル組成0.10刻みで、又は近共沸挙動の境界を反映するように編集した。得られた要約された一覧を表1.5に示す。
【0096】
【0097】
表1.4及び1.5の詳細なデータを、下記の表1.6に大まかにまとめて示す。表1.5の結果から、泡点圧力と露点圧力との間の3%以下の差を有する共沸様組成物は、0.5~13.4モルパーセントのZ-1336mzz及び86.6~99.5モルパーセントのn-ブタンが-0.64~-1.85℃で沸騰する1気圧で存在する。
【0098】
3%共沸様組成物の大まかな範囲([(BP-VP)/BP]×100≦3に基づく)を表1.6に挙げる。
【0099】
【0100】
実施例2:Z-HFO-1336mzz/イソブタン
Z-HFO-1336mzz/イソブタンの2成分系を潜在的な共沸及び近共沸挙動について調べた。この2成分系の相対揮発度を判定するため、上記に述べたPTx法を用いた。既知の体積のPTxセル内の圧力を、種々の2成分の組成について29.94℃の一定温度で測定した。収集した実験データを下記の表2.1に示す。
【0101】
【表7】
X
2=イソブタンの液体モル分率
Y
2=イソブタンの蒸気モル分率
P
exp=実験的に測定された圧力
P
calc=NRTLモデルによって計算された圧力
【0102】
上記の蒸気圧対イソブタンの液体モル分率のデータが
図2にプロットされている。実験データの点は、
図2では中黒の点として示されている。実線は、NRTL式を用いた泡点の予測を示す。破線は、予測された露点を示す。
図2は、PXダイアグラム中の最大が59.5psiaの圧力で示されるように、組成物0.951モル分率のイソブタン及び0.049モル分率のZ-HFO-1336mzz(cis-1336mzz)の29.94℃での共沸混合物の形成を示す。
【0103】
これらのVLEデータに基づき、相互作用係数を抽出した。NRTLモデルを-40~110℃の温度範囲にわたって10℃刻みで使用し、共沸条件(X2=Y2)が満たされるように圧力を変動させた。得られた予測されたZ-HFO-1336mzz/イソブタン(Z1336MZZ/I-BUTANE)における共沸混合物及び29.94℃で実験的に決定されたデータを表2.2に示す。
【0104】
【0105】
このモデルを用いて、1~26atmの圧力範囲にわたって1atm刻みで共沸混合物を予測し、その結果を表2.3に示す。
【0106】
【0107】
実験的に測定された結果と比較する目的で、このモデルを-40~120℃の温度範囲にわたって20℃刻みで、また29.94℃で用いた。各温度で、0~1のZ-HFO-1336mzzの液体モル組成の全範囲にわたって0.002刻みで、このモデルを実行した。したがって、モデルは、合計で5010個の温度とZ-HFO-1336mzzの液体モル組成との組み合わせ(10(温度)×501(組成)=5010)で実行された。これらの5010個の組み合わせのうち、一部は共沸性又は近共沸性とみなされたが、出願人が特許請求するのはこれらの組み合わせである。説明を簡単にする目的で、5010個の組み合わせの一覧を、Z-HFO-1336mzzの液体モル組成0.10刻み又は近共沸挙動の境界を反映するように編集した。得られた要約された一覧を表2.4に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
1atmにおけるZ-1336mzzとイソブタンとの間に形成された近共沸混合物を表2.5に示す。説明を簡単にする目的で、これらの組み合わせの一覧を、Z-HFO-1336mzzの液体モル組成0.10刻みで、又は近共沸挙動の境界を反映するように編集した。得られた要約された一覧を表2.5に示す。
【0111】
【0112】
表2.4及び2.5のデータを、下記表2.6及び2.7に大まかにまとめて示す。共沸様組成物([(BP-VP)/BP]×100≦3に基づく)を表2.6にまとめて示す。
【0113】
【0114】
実施例3:軟化したポリスチレンホモポリマー中のHFO-1336mzz-Z/n-ブタンブレンドの溶解度
この実施例は、軟化ポリスチレン中の未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度と比較して、軟化ポリスチレン中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z)/n-ブタンブレンドの溶解度の向上を示す。
【0115】
軟化ポリスチレン中へのHFO-1336mzz-Z及び20重量%のn-ブタンを含有するHFO-1336mzz-Z/n-ブタンブレンドの溶解度を、以下の手順によって決定した。約78gのポリスチレンサンプルを、125ccのステンレス鋼Parr(著作権)反応器に充填した。反応器を計量し、入口/出口配管に取り付け、油浴に浸し、排気した。HIP圧力発生器(High Pressure Equipment社製)を使用して、予想される溶解度を超える量の発泡剤を排気された反応器へ充填した。油浴を加熱し、最終圧力を記録する前に、179℃の温度で30分間維持した。Parr(著作権)反応器を油浴から取り出し、室温まで冷却した。過剰な(ポリスチレン中に溶解していない)発泡剤を排出又は通気した後、反応器(内部で再固化したポリスチレンを含む)を、計量した。重量増加は、以下の式に従って溶解度として記録した。
溶解度(phr)=(樹脂重量増加÷78)×100(式1)
式中、phrは、ポリスチレン樹脂100部当たりの発泡剤の部数(質量)を表す。
【0116】
予想外に、HFO-1336mzz-Zとn-ブタンとのブレンドは、同じ条件で未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度を有意に超える軟化ポリスチレンへの溶解度を示すことが判明した(
図3)。例えば、179℃及び1,344psiaで5.0g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する軟化ポリスチレンホモポリマー中の未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度は、ポリスチレン100g当たり5.72gのHFO-1336mzz-Z(5.72phr)として推定された。対照的に、20重量%のn-ブタンを含有するHFO-1336mzz-Z/n-ブタンブレンドの溶解度は、同じポリスチレンにおいて、同じ温度及び圧力で、ポリスチレン100g当たり10.68gのHFO-1336mzz-Zの溶解度(10.68phr)を、すなわち、未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度よりも86.7%高い溶解度を示した。
【0117】
実施例4:軟化ポリスチレン中のHFO-1336mzz-Z/イソ-ブタンブレンドの溶解度
この実施例は、軟化ポリスチレン中の純粋なHFO-1336mzz-Zの溶解度と比較して、軟化ポリスチレン中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z)/イソ-ブタンブレンドの溶解度の向上を、また、軟化ポリスチレン中の未希釈のイソ-ブタンの溶解度と比較して、顕著な溶解度の向上を示す。軟化ポリスチレン中に20重量%のイソ-ブタンを含有するHFO-1336mzz-Z、イソ-ブタン及びHFO-1336mzz-Z/イソ-ブタンブレンドの溶解度を、実施例3に記載の手順によって決定した。
【0118】
予想外に、HFO-1336mzz-Zとイソ-ブタンとのブレンドは、同じ条件で未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度を有意に超える軟化ポリスチレンへの溶解度を示し得ることが判明した(
図2)。例えば、179℃及び1,376psiaで5.0g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する軟化ポリスチレンホモポリマー中の未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度は、ポリスチレン100g当たり5.73gのHFO-1336mzz-Z(5.73phr)として推定された。対照的に、20重量%のイソ-ブタンを含有するHFO-1336mzz-Z/イソ-ブタンブレンドの溶解度は、同じポリスチレン及び同じ温度及び圧力において、ポリスチレン100g(10.50phr)当たり10.50gのHFO-1336mzz-Zの、又は未希釈のHFO-1336mzz-Zの溶解度よりも83.2%高い溶解度を示した。顕著には、20重量%のイソ-ブタンを含有するHFO-1336mzz-Z/イソ-ブタンブレンドは、同じポリスチレン及び同じ温度及び圧力において、その未希釈の成分、すなわち、HFO-1336mzz-Z及びイソブ-タンの両方の溶解度よりも有意に高い溶解度を示した。結果を
図4に示す。
【0119】
実施例5:発泡剤としてHFO-1336mzz/HFC-152a/イソ-ブタンを使用するポリスチレン発泡体押出成形
この実施例は、HFO-1336mzz-Z、HFC-152a及びイソ-ブタンを含有する発泡剤ブレンドを使用して、望ましい仕様を満たすXPS発泡体の製造の実現可能性を示す。ポリスチレンは、4g/10分のメルトフローレートを有するスチレンホモポリマー(Total Petrochemicals、PS 535B))であった。核剤(タルク)は、押出加工機内で形成される組成物中にポリスチレン及び発泡剤とともに存在した。
【0120】
9個の、個別に制御され、電気的に加熱されるゾーンを備える50mmの二軸実験室用押出加工機を使用した。押出加工機の最初の4つのゾーンを使用して、ポリマーを加熱及び軟化させた。押出加工機の発泡剤注入位置から端部までの残りのバレルセクションは、選択された、より低い温度に設定した。2mmの開口部を有する環形ダイを、発泡ロッド試料の押出加工に使用した。結果を表3にまとめる。
【0121】
【表13】
*ポリスチレン樹脂100部当たりの部数(質量)
【0122】
表3の結果は、発泡剤として8.6重量%のイソ-ブタンを含有するZ HFO-1336mzz/HFC-152a/イソ-ブタンブレンドを使用することにより、40.1kg/m3の密度及び92.3%個の独立気泡を有する押出ポリスチレン発泡体の形成を可能にすることを示す。
【0123】
実施例6:Z-1336mzz-Zとn-ブタン又はイソ-ブタンとのブレンドで発泡されたポリウレタン発泡体の調製。
この実施例は、一次発泡剤として、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z又はOpteon(登録商標)1100)/n-ブタンとZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン/イソブタンとの共沸ブレンドを有するポリウレタン発泡体を生成する能力を示す。
【0124】
使用した共沸組成物は、表1.3及び2.3に示されるように、1気圧で共沸組成物であった。重量に基づく発泡剤投入量の計算は、以下の表4及び5に提供される。B剤を、発泡剤を添加せずに、2通り1000mLのビーカー内で作製し、4℃の冷蔵庫内に少なくとも1時間置いた。冷却された後、試料をヒュームフードに移して、発泡剤を添加し、完全に組み込まれるまで混合した。イソシアネートA剤(PAPI27)を400mLビーカー内に入れて秤量し、次いでB剤が入ったビーカー内に注いだ。次いで、そのビーカーをArrow Engineering Overhead Stirrerによって4000rpmで3秒間混合し、ワックスコーティングされた厚紙箱に注いだ。次いで、新たに作製された発泡体を含有する厚紙箱を、泡を十分な時間で硬化させるために、換気された領域に一晩置いた。次の朝、サンプルを、バンドソー切断機で、6”×6”×1.5”、1”×1”×1”、及び2”×2”×2”ブロックに切断した。これらの発泡体ブロックを、ASTM C-518毎に熱流量計を用いて熱伝導率について、ASTM D1621毎に圧縮強度について、及び独立気泡含量について試験した。試験後、すべてのデータ値を分析のためにコンパイルしたのであり、その結果を以下の表8に示す。
【0125】
n-ブタン又はイソブタンのいずれかとHFO-1336mzz-Zの共沸ブレンドは、良好なポリウレタン発泡体を作製することが非常に可能であることが判明した。非常に細微な式の最適化により、上記手順を用いて作製されたすべての発泡体の密度、圧縮強度、独立気泡含有物、及び熱伝導率は、許容可能以上のものであると証明された。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
当業者であれば、本発明は、本明細書に記載されるこれらの特定の実施形態のみの範囲に限定されるものではなく、むしろ、そのすべての均等物、変形例、及び拡張例にまで敷衍されるものである点は理解されよう。