(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】触覚応答を備える車両操作ユニット
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240119BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20240119BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G06F3/01 560
B06B1/06 Z
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2021512567
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073550
(87)【国際公開番号】W WO2020049028
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】102018121692.0
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508066083
【氏名又は名称】ベーア-ヘラー サーモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】ケンッピネン,パシ
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,シュテファン
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157264(WO,A1)
【文献】特開2016-031765(JP,A)
【文献】特開昭59-177980(JP,A)
【文献】特開2000-255494(JP,A)
【文献】特表2019-530111(JP,A)
【文献】特表2019-536621(JP,A)
【文献】特開2019-220178(JP,A)
【文献】特表2021-516830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
B06B 1/06
H02N 2/04
H10N 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動作動時の触覚応答を備える車両操作ユニットであって、
筐体(18)と、
手動作動可能な操作素子(12)と、
上記操作素子(12)をパルス的に機械的に励起するための圧電駆動装置(14)とを備え、
上記圧電駆動装置(14)が、上記筐体(18)の筐体壁(16)と上記操作素子(12)との間に配置されており、かつ、
圧電材料からなる圧電アクチュエータ(24)であって、ストランド状に構成され、2つの端部(26)の間に縦方向の延伸を有し、上記縦方向の延伸により画定される有効方向(30)に沿って、駆動時に伸長及び/又は収縮する上記圧電アクチュエータ(24)と、
上記圧電アクチュエータ(24)の上記縦方向の延伸の上記端部(26)に機械的に連結された
変換部材(32)であって、上記圧電アクチュエータ(24)の上記有効方向(30)に生じる上記圧電アクチュエータ(24)の長さの変化を、上記圧電アクチュエータ(24)の上記縦方向の延伸に対して0度以外の角度を向く、上記
変換部材(32)に連結された移動素子の移動に変換するための上記
変換部材(32)とを備え、
上記
変換部材(32)が、第1のブラケット(34)を有し、上記第1のブラケット(34)が、弾性的に構成されている及び/又は弾性材を有し、かつ上記圧電アクチュエータ(24)の上記縦方向の延伸の上記端部(26)の領域において、上記圧電アクチュエータ(24)に機械的に連結されており、
上記第1のブラケット(34)が、上記第1のブラケット(34)が上記圧電アクチュエータ(24)に機械的に連結されている第1の端部(36)及び第2の端部(38)を有し、かつ2つの上記端部(36,38)の間に、斜めの第1の傾斜部(40)及び上記第1の傾斜部(40)と比較して短い斜めの第2の傾斜部(42)を有し、上記第1の傾斜部(40)及び上記第2の傾斜部(42)が、上記ブラケット(34)の上記端部(36,38)間を結ぶ仮想の線を底辺とする三角形の辺のように延び、特に弾性的に互いに接続されており、上記第1の傾斜部(40)が上記第1の端部(36)に特に弾性的に接続されており、上記第2の傾斜部(42)が上記第2の端部(38)に特に弾性的に接続されており、
上記第1のブラケット(34)が上記操作素子(12)に連結され、上記圧電アクチュエータ(24)が上記筐体壁(16)に連結されている、又は上記第1のブラケット(34)が上記筐体壁(16)に連結され、上記圧電アクチュエータ(24)が上記操作素子(12)に連結されている車両操作ユニット。
【請求項2】
上記
変換部材(32)の上記第1のブラケット(34)の上記第1の傾斜部(40)が、上記操作素子(12)に機械的かつ動作可能に接続可能であり、上記圧電アクチュエータ(24)が、上記筐体壁により支持可能であること、又は上記
変換部材(32)の上記第1のブラケット(34)の上記第1の傾斜部(40)が、上記筐体壁(16)に機械的かつ動作可能に接続可能であり、上記圧電アクチュエータ(24)が、上記操作素子(12)により支持可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両操作ユニット。
【請求項3】
上記
変換部材(32)が、上記
変換部材(32)の上記第1のブラケット(34)と同
じ構成の第2のブラケット(34)を有し、2つの上記ブラケット(34)の上記第1の傾斜部(40)の長さ
が同じであり、2つの上記ブラケット(34)の上記第2の傾斜部(42)の長さ
が同じであることを特徴とする請求項1に記載の車両操作ユニット。
【請求項4】
上記
変換部材(32)の2つの上記ブラケット(34)の一方の上記第1の傾斜部(40)が、上記操作素子(1
2)に機械的かつ動作可能に接続可能であり、上記
変換部材(32)の2つの上記ブラケット(34)の他方の上記第1の傾斜部(40)が、上記
変換部材(32)を支持するため、支持素子ではなく上記筐体壁(16)に機械的に連結可能であることを特徴とする請求項3に記載の車両操作ユニット。
【請求項5】
上記
変換部材(32)の2つの上記ブラケット(34)が、上記圧電アクチュエータ(24)の両側で同じ向きに配置されており、2つの上記第1の傾斜部(40)及び2つの上記第2の傾斜部(42)が、対として向かい合って配置されており、2対が、上記圧電アクチュエータ(24)の上記有効方向(30)に沿って隣接して配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両操作ユニット。
【請求項6】
上記
変換部材(32)の2つの上記ブラケット(34)が、上記圧電アクチュエータ(24)の両側で逆向きに配置されており、上記ブラケット(34)の一方の上記第1の傾斜部(40)が、上記ブラケット(34)の他方の第2の傾斜部(42)に、対として向かい合って配置されており、2対が、上記圧電アクチュエータ(24)の上記有効方向(30)に沿って隣接して配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両操作ユニット。
【請求項7】
上記
変換部材(32)の上記ブラケット(34)の少なくとも一方又は上記ブラケット(34)の各々の上記第1の傾斜部(40)が、上記第2の傾斜部(42)の少なくとも1.5倍の長さ又は少なくとも2倍の長さ又は少なくとも2.5倍の長さ又は少なくとも3倍の長さを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両操作ユニット。
【請求項8】
上記
変換部材(32)の2つの上記ブラケット(34)の上記第1の傾斜部(40)が同じ長さであること、及び/又は2つの上記ブラケット(34)の上記第2の傾斜部(42)が同じ長さであることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の車両操作ユニット。
【請求項9】
上記
変換部材(32)の上記ブラケット(34)の少なくとも一方又は上記ブラケット(34)の各々が、金属又はプラスチックを有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両操作ユニット。
【請求項10】
上記
変換部材(32)の上記ブラケット(34)毎に、上記端部(36,38)が、それぞれ上記傾斜部(40,42)に関節接合されており、2つの上記傾斜部(40,42)が、互いに関節接合されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両操作ユニット。
【請求項11】
上記
変換部材(32)の上記ブラケット(34)の少なくとも一方又は上記ブラケット(34)の各々の上記端部(36,38)が、接着又は接続素子により上記圧電アクチュエータ(24)に機械的に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両操作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置を用いた手動作動時の触覚応答を備える車両操作ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電駆動装置において、電気駆動時に圧電素子の長さが有効方向に可変であることが、移動される部品もしくはユニットを機械的に励起させるために利用される。自動車産業における応用事例では、圧電駆動装置が、操作装置における触覚フィードバックの生成に用いられている。このような操作装置は、有効な手動操作が検出されると瞬間的もしくはパルス的に機械的に励起されるタッチパネル又はタッチパッドを有する。このようにして、有効な作動に対する応答を触覚的に操作者に与える触覚フィードバックが得られる。特に、本発明は、専門的には機械的増幅を利用する圧電アクチュエータとも呼ばれる、ギアを備える圧電アクチュエータに関する。
【0003】
圧電アクチュエータもしくはこのようなアクチュエータの圧電的に作用する素子の長さの可変性が、触覚的に認識されるために十分に大きくても、応用対象によっては十分でないことがしばしばある。長さの変化を大きくするために、互いに積層された複数の圧電素子(以下、ピエゾ素子と呼ぶ)を有する圧電アクチュエータが用いられる。このような圧電アクチュエータは、移動変換構造に機械的に作用する。すなわち、比較的大きな力で生じる有効方向への圧電アクチュエータの長さの変化を、より小さな力でより大きな移動に変換する変換ギアに機械的に作用する。
【0004】
先行技術において用いられる圧電アクチュエータ用の変換ギアは、略アーチ状のブラケットを有し、ブラケットは、圧電アクチュエータの有効方向にある端部で、通例、接着により圧電アクチュエータに接続されている。このようなブラケット2つを、圧電アクチュエータの有効軸の延伸の両側に配置することができる。ブラケットは、金属等の比較的硬い材料からなり、圧電アクチュエータの電気駆動時に伸長又は収縮することで、圧電アクチュエータの有効方向に対し鋭角を向く運動要素が生じる。ブラケットの変形により、ブラケットの材料が時間の経過とともに疲労し、圧電駆動装置の機能性に影響を及ぼす場合がある。
【0005】
変換ギアを備える圧電駆動装置の例は、独国実用新案第202008017833号明細書、米国特許第6246132号明細書、米国特許第4952835号明細書、国際公開第2017/1762019号、米国特許第9523294号明細書、欧州特許出願公開第3056977号明細書、国際公開第2014/164018号、国際公開第2016/067831号、米国特許第6465936号明細書、国際公開第2014/096565号、米国特許出願公開第2016/0027263号明細書、独国特許出願公開第102016116763号明細書、特開2008-287402号公報、欧州特許出願公開第1035015号明細書、独国特許出願公告第2305277号明細書、独国特許発明第4214220号明細書及び独国特許出願公告第19981030号明細書に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国実用新案第202008017833号明細書
【文献】米国特許第6246132号明細書
【文献】米国特許第4952835号明細書
【文献】国際公開第2017/1762019号
【文献】米国特許第9523294号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3056977号明細書
【文献】国際公開第2014/164018号
【文献】国際公開第2016/067831号
【文献】米国特許第6465936号明細書
【文献】国際公開第2014/096565号
【文献】米国特許出願公開第2016/0027263号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016116763号明細書
【文献】特開2008-287402号公報
【文献】欧州特許出願公開第1035015号明細書
【文献】独国特許出願公告第2305277号明細書
【文献】独国特許発明第4214220号明細書
【文献】独国特許出願公告第19981030号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長寿命かつ機能性の向上した圧電駆動装置を用いた手動作動時の触覚応答を備える操作ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明により提案されるのは、手動作動時の触覚応答を備える車両操作ユニットであって、
筐体と、
手動作動可能な操作素子と、
上記操作素子をパルス的に機械的に励起するための圧電駆動装置とを備え、
上記圧電駆動装置が、上記筐体の筐体壁と上記操作素子との間に配置されており、かつ、
圧電材料からなる圧電アクチュエータであって、ストランド状に構成され、2つの端部の間に縦方向の延伸を有し、上記縦方向の延伸により画定される有効方向に沿って、駆動時に伸長及び/又は収縮する上記圧電アクチュエータと、
上記圧電アクチュエータの上記縦方向の延伸の上記端部に機械的に連結された変換ギアであって、上記圧電アクチュエータの上記有効方向に生じる上記圧電アクチュエータの長さの変化を、上記圧電アクチュエータの上記縦方向の延伸に対して0度以外の角度を向く、上記変換ギアに連結された移動素子の移動に変換するための上記変換ギアとを備え、
上記変換ギアが、第1のブラケットを有し、上記第1のブラケットが、弾性的に構成されている及び/又は弾性材を有し、かつ上記圧電アクチュエータの上記縦方向の延伸の上記端部の領域において、上記圧電アクチュエータに機械的に連結されており、
上記第1のブラケットが、上記第1のブラケットが上記圧電アクチュエータに機械的に連結されている第1及び第2の端部を有し、かつ2つの上記端部の間に、斜めの第1の傾斜部及び上記第1の傾斜部と比較して短い斜めの第2の傾斜部を有し、上記第1の傾斜部及び上記第2の傾斜部が、上記ブラケットの上記端部間を結ぶ仮想の線を底辺とする三角形の辺のように延び、特に弾性的に互いに接続されており、上記第1の傾斜部が上記第1の端部に特に弾性的に接続されており、上記第2の傾斜部が上記第2の端部に特に弾性的に接続されており、
上記第1のブラケットが上記操作素子に連結され、上記圧電アクチュエータが上記筐体壁に連結されている、又は上記第1のブラケットが上記筐体壁に連結され、上記圧電アクチュエータが上記操作素子に連結されている車両操作ユニットである。
【0009】
本発明に係る操作ユニットの圧電駆動装置は、公知の方法で、圧電材料からなる圧電アクチュエータを有する。圧電アクチュエータは、電圧により駆動される際、有効方向に沿って伸長及び/又は収縮する。ストランド状の圧電アクチュエータの有効方向にある端部で、圧電アクチュエータが変換ギアに動作可能に接続されている。変換ギアは、圧電アクチュエータの伸長又は収縮の度合いを、圧電アクチュエータの有効方向に対し鋭角な移動軸に沿ったより大きなストロークの動きに増幅する。
【0010】
本発明に係る操作ユニットの圧電駆動装置の特徴は、変換ギアの少なくとも1つの第1のブラケットの構成にある。この第1のブラケットは、相対向する2つの端部を有し、その間にブラケットが2つの斜めの第1及び第2の傾斜部を有する。2つの傾斜部は、互いに接続されており、互いに接続された端部のそれぞれ反対側の端部は、2つの上記端部の一方と他方とにそれぞれ接続されている。よって、第1のブラケットは、側面視において、2つの傾斜部を辺とし、2つの端部の間の仮想の接続線により底辺が形成される三角形の形状を有する。
【0011】
このとき、2つの傾斜部の一方、すなわち第1の傾斜部は、他方の傾斜部、すなわち第2の傾斜部より長い。
【0012】
ここで、本発明により提供される2つの傾斜部により、圧電アクチュエータの有効方向における長さの変化が、圧電アクチュエータの縦方向の延伸に対し鋭角を向く移動素子の移動へと、特に効率的に変換される。圧電駆動装置の変換ギアのブラケットには、圧電アクチュエータが電気的に駆動される際にブラケットの材料変形が生じる可撓性の区域が3つしかない。このように材料変形区域の数を減らすことにより、圧電駆動装置が長時間にわたって動作し続けることができる。よって、比較的少ない材料及び低い製造コストで、圧電駆動装置の耐久性が向上する。
【0013】
本発明の別の有用な態様において、第1のブラケットの第1の傾斜部が、移動素子に機械的かつ動作可能に接続可能であり、圧電アクチュエータが、支持素子により支持可能である。第1の傾斜部の領域において第1のブラケットを移動素子に機械的に連結することにより、第1のブラケットの移動時の素子の傾きが低減される。第1の傾斜部は、第2の傾斜部と比較して、長く形成されている。第2の傾斜部は、言わば第1の傾斜部を押す役割を担う。2つの傾斜部の角度位置及びそれらの長さの比により、とりわけ圧電アクチュエータの長さが変化するときの移動素子の移動ストロークが決まる。固定点に対する圧電駆動装置の支持は、支持素子により支持可能な圧電アクチュエータで行われる。
【0014】
本発明の別の好適な態様において、変換ギアが、第1のブラケットと同じ又は実質的に同じ構成の第2のブラケットを有し、2つのブラケットの第1の傾斜部の長さが、異なっている又は同じである又は実質的に同じであり、2つのブラケットの第2の傾斜部の長さが、異なっている又は同じである又は実質的に同じである。移動ストロークと、ストロークに沿った移動にかかる力とがともに、本発明の上記態様の変換ギアの2重ブラケット構造により増大される。2つのブラケットは、同様に構成されており、それぞれ2つの端部を有し、その2つの端部の間に、それぞれ第1及び第2の傾斜部を有する。一方のブラケットの傾斜部の長さ及び角度位置は、他方のブラケットと異なっていてもよい。しかし、2つのブラケットが同様に構成されていることが好適である。
【0015】
変換ギアの2重ブラケット構造において、2つのブラケットの一方の第1の傾斜部が、移動素子に機械的かつ動作可能に接続されており、2つのブラケットの他方の第1の傾斜部が、変換ギアを支持するため、支持素子に機械的に連結可能であると好適である。
【0016】
変換ギアの上述の構造において、2つのブラケットが、圧電アクチュエータの有効軸の両側で、同じ向き又は逆向きに配置されていてもよい。前者の場合、2つのブラケットの2つの第1の傾斜部及び2つの第2の傾斜部が、対として向かい合って配置されている。2対が、圧電アクチュエータの有効軸に沿って隣接している。2つのブラケットの傾斜部が、略ひし形を形成する。2つのブラケットが、圧電アクチュエータの両側で逆向きに配置されている場合、一方のブラケットの第1の傾斜部が、他方のブラケットの第2の傾斜部に対として対向している。ここで、それぞれ一方のブラケットの第1の傾斜部及び他方のブラケットの第2の傾斜部からなる2対は、圧電アクチュエータの有効軸に沿って隣接している。よって、2つのブラケットの第1及び第2の傾斜部は、平行四辺形の辺のような構成となる。
【0017】
既に上で述べたように、変換ギアのブラケットの少なくとも一方又はブラケット各々の2つの傾斜部は、長さが異なっている。例えば、変換ギアのブラケットの少なくとも一方又はブラケットの各々の第1の傾斜部が、第2の傾斜部の少なくとも1.5倍の長さ又は少なくとも2倍の長さ又は少なくとも2.5倍の長さ又は少なくとも3倍の長さを有すると好適である。
【0018】
2つのブラケットの第1の傾斜部は、長さが同じでもよく、これは2つのブラケットの第2の傾斜部についても同様である。
【0019】
既に上で述べたように、変換ギアのブラケットの材料として金属が選択される。または、プラスチックも好適に用いられる。ブラケットに使用される材料が、2つの第1の部分と2つの傾斜部との接続及び2つの傾斜部の間の接続におけるたわみヒンジの機能を有することができることが重要である。たわみヒンジは、例えば、フィルム継手として、又は、ごく一般的には、ブラケットの厚さを小さくすることで実現される。または、ブラケットが、互いに関節接合されている端部及び傾斜部を有していてもよい。いずれの場合も、ブラケットの一方又は双方は弾性的に変形可能であり、特にブラケットの変形区域に関して、適当な構造又は適当な材料の選択により、その弾性的な変形が実現される。しかし、ブラケットの一方又は双方の個々の部分は、ピボットヒンジにより可動に連結されていてもよい。
【0020】
本発明の別の好適な態様において、ブラケットの少なくとも一方又はブラケットの各々の端部が、接着又は接続素子により圧電アクチュエータに機械的に接続されていてもよい。機械的接続素子としては、例えば、ねじ、ボルト等が挙げられる。
【0021】
本発明の別の好適な態様において、圧電アクチュエータが、1つ又は積層された複数の圧電素子を有していてもよい。このとき、積層順は、圧電アクチュエータの縦方向の延伸に沿っていてもよいし、これに直交する方向に沿っていてもよい。
【0022】
以下、図面を参照して実施形態により本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、触覚フィードバックの生成及び手動のタッチ入力への触覚応答のため、圧電駆動装置によりパルス励起されるタッチパッド又はタッチパネルを備える車両操作ユニットを前から見た概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に係る車両操作ユニットに用いられる圧電駆動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、車両用操作ユニット10の前面図であり、操作ユニット10において、操作素子12が、有効な操作命令入力に対して、パルス的機械的励起により触覚応答(触覚フィードバック)がなされるタッチパネル又はタッチパッドとして構成されている。この目的で、操作ユニット10は、例えば、操作ユニット10の筐体18の筐体壁16と、操作素子12との間に配置され機能する圧電駆動装置14を有する。タッチ入力可能な操作素子12の他に、操作ユニット10は、例えば、キー20及び/又は回転アジャスタ22等の他の操作素子をさらに有していてもよい。
【0025】
圧電駆動装置14の斜視拡大図を
図2に示す。圧電駆動装置14は、有効方向も画定する縦方向の延伸を備えるストランド状の、本実施形態においては棒状の素子として構成されている圧電アクチュエータ24を有する。圧電アクチュエータ24は、縦方向の延伸の両側の2つの端部26を有し、本実施形態においては、帯状の圧電素子の積層として構成されている。圧電素子28に電圧が印可されると、圧電アクチュエータ24が、縦方向の延伸に直交して伸長する(又は、印可された電圧の極性によっては、同方向に収縮する)。すなわち、圧電アクチュエータ24が、縦方向の延伸に沿って収縮する(又は、上記電圧の極性によっては、伸長する)。つまり、本実施形態において、圧電アクチュエータ24の有効方向30は、その縦方向の延伸により画定されている。
【0026】
圧電アクチュエータ24の両側もしくは有効方向30の両側に、本実施形態において2つの金属ブラケット34を有する変換ギア32が設けられている。各金属ブラケットは、2つの端部36,38を有し、2つの端部36,38の間に、2つの斜めの部分、すなわち2つの傾斜部40,42が配置されている。2つの傾斜部40,42は、互いに柔軟に接続されており、本実施形態においては、金属ブラケット34の厚さを小さくすることで構成されるたわみヒンジにより接続が実現されている。2つの傾斜部の一方、すなわち第1の傾斜部40は、他方の傾斜部、すなわち第2の傾斜部42より長い。第1の傾斜部40は、第1の端部36に柔軟に接続されており、第2の傾斜部42は、ブラケット34の第2の端部38に柔軟に接続されている。2つのブラケット34の端部36,38は、接着剤44により圧電アクチュエータ24の端部26に、せん断抵抗をもって接続されている。
【0027】
圧電駆動装置14の運動学的挙動は以下の通りである。圧電アクチュエータ24が適切に電気駆動されているとき、圧電アクチュエータ24は、縦方向の延伸、つまり有効方向30に短くなる。すなわち、2つのブラケット34が立ち上がり、外側に、又は
図2の図面上では上もしくは下に向かって移動する。圧電アクチュエータ24の電気駆動が、圧電アクチュエータが縦方向の延伸に沿って伸長するように選択されていると、ブラケット34が圧電アクチュエータ24の方向に移動し、平らな形状となる。ここで、
図1に係る応用事例について操作素子12を瞬間的に機械的に励起するため、両方の場合において実現される移動ストロークが利用される。そのため、操作素子12が、2つのブラケット34の一方の長い第1の傾斜部40に接続され、変換ギア32が、他方のブラケット34の長い第1の傾斜部40により、筐体壁16で支持される。ブラケット34の比較的長い第1の傾斜部40により、操作素子12の機械的励起の際の傾斜運動を可能な限り抑制することができる。
【0028】
圧電アクチュエータ24の長さの変化を、操作素子12用の移動ストロークに変換する際、2つのブラケット34の2つの長い第1の傾斜部40が、力伝達素子として機能し、短い第2の傾斜部42が、これらの力伝達素子の支持素子として機能する。
【0029】
図2及び
図1からも読み取れるように、2つのブラケット34が、ほぼ同じ構成で逆向きに配置されている。これにより、4つの傾斜部40,42が、(圧電駆動装置14の側面視において)言わば平行四辺形の辺を形成する。
【0030】
図2に、2つのブラケット34の第1の端部36が、テーパー状になっていることも示されている。これは、ブラケット34が最大に立ち上がっているとき、第1の傾斜部40に当接する部材(
図1の実施形態においては、操作素子12及び筐体壁16)が、(第1の)端部36の領域において露出し、端部36と接触しないためである。または、上記2つの部材が、ブラケット34に対向する面より突出する突出領域を有していてもよく(
図1参照)、これにより、端部36が上記部材と衝突しない。
【0031】
屈曲区域の数を、1つのブラケット34につき、3つの柔軟な接続(すなわち、関節接合)に減らすことで、一方が操作素子12と接触し、他方が筐体壁16を支持する2つのブラケット34の第1の傾斜部40が、傾斜して空間に存在することになる。すなわち、圧電アクチュエータ24が、上述の部材に対し傾斜して存在することになる。これにより、望ましくない「過剰な屈曲」及びそれに伴うヒンジの機械的な故障が生じにくいため、圧電アクチュエータ又は圧電駆動装置の耐久性を大幅に向上させることができる。さらに、ヒンジ毎に機械的なロスが生じるため、圧電駆動装置の効率も向上する。つまり、機械的なロスが低減されるため、ヒンジの数が少ないほど効率が高い。
【符号の説明】
【0032】
10 操作ユニット
12 操作素子
14 圧電駆動装置
16 筐体壁
18 筐体
20 キー
22 回転アジャスタ
24 圧電アクチュエータ
26 圧電アクチュエータの縦方向の延伸の端部
28 圧電素子
30 圧電アクチュエータの有効方向
32 変換ギア
34 ブラケット
36 ブラケットの第1の端部
38 ブラケットの第2の端部
40 第1のブラケットの第1の傾斜部
42 ブラケットの第2の傾斜部
44 接着剤