(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】試薬カセット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/31 20060101AFI20240119BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240119BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G01N1/31
C12M1/00 A
G01N35/00 C
(21)【出願番号】P 2021516664
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 AU2019051375
(87)【国際公開番号】W WO2020118378
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】504466373
【氏名又は名称】ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LEICA BIOSYSTEMS MELBOURNE PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ダービシャー
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・スタニスロウ・パミータ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィルコック
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ウィリアム・ボーイズ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510263(JP,A)
【文献】特開平08-058792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181646(WO,A1)
【文献】特開2010-091469(JP,A)
【文献】実開平06-076863(JP,U)
【文献】特表2009-544959(JP,A)
【文献】特表2016-532879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
35/00-37/00
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器を染色装置に配置して装填するためのカセットであって、
前記カセットは、
ベースと、複数のコンパートメントを画定するために前記ベースから立ち上がった壁とを有するハウジングを含み、
各コンパートメントは、試薬容器を受け入れるように構成され、
前記ハウジングは、
2つのハウジング部分を含み、前記2つのハウジング部分は、それぞれの第1の端部で旋回可能に結合され、開いた構成と閉じた構成との間で旋回するように構成さ
れ、
前記開いた構成において、前記2つのハウジング部分は、互いに概ね180度相対的に配向され、前記閉じた構成において、前記2つのハウジング部分は、並んで配置され、
前記閉じた構成の前記ハウジングの各部分は、前記カセットが
前記染色装置に装填されたときに、前記染色装置内に配置された、隣接するチャネルの対のうちの対応する1つの中に受け入れられることが可能であ
り、
ハウジングが閉じた構成にあるとき、前記2つのハウジング部分は、染色装置内に配置された隣接するチャネルの対の間の間隔に対応する所定の距離だけ互いに離間している、
カセット。
【請求項2】
前記ハウジングの各部分は、各コンパートメントの位置に、その壁を実質的に貫通して延び、前記コンパートメント内に受け入れられた試薬容器の対応する突出部を少なくとも部分的に受け入れる開口部を含み、前記試薬容器が前記コンパートメント内に正しく配置されることを確かにする、
請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
各ハウジング部分の前記壁は側壁であり、前記ハウジングが閉じた構成にあるときに、
前記2つのハウジング部分のうちの1つに関連する前記開口部のみが外部に面している、
請求項2に記載のカセット。
【請求項4】
各試薬容器は、前記試薬容器の壁に旋回可能に結合された蓋を含み、前記カセットは、前記ハウジングが前記開いた構成にあるときにのみ、前記2つのハウジング部分の両方に関連する前記コンパートメント内に受け入れられたそれらの前記試薬容器の前記蓋を開くことができるように構成されている、
請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
前記ハウジングが前記閉じた構成にあるときに、
前記2つのハウジング部分を所定の位置にロックするロック手段をさらに含む、
請求項1~4のいずれか1つに記載のカセット。
【請求項6】
前記ロック手段は、前記2つのハウジング部分のそれぞれの第2の端部に配置されている、
請求項5に記載のカセット。
【請求項7】
前記ロック手段は、スナップフィット構造の形をとり、一方のハウジング部分の前記第2の端部はカンチレバーフックを含み、他方のハウジング部分の前記第2の端部は、前記ハウジングが前記閉じた構成にあるときに前記カンチレバーフックを受け入れるように構成された相補的な凹部を含む、
請求項6に記載のカセット。
【請求項8】
前記ベースは、前記ハウジングの対向する横方向の側壁から外側に延びて一対のフランジを画定し、前記ハウジングが前記閉じた構成にあるときに、前記カセットが実質的に前記染色装置の中に装填されるとき、前記ハウジングの各部分の前記フランジが、前記染色装置内に配置された前記隣接するチャネルの対のそれぞれに関連する対応する一対の横方向に対向する整列ガイドによって摺動して受け入れられ得る、
請求項1に記載のカセット。
【請求項9】
前記2つのハウジング部分のうちの少なくとも1つは、染色装置に関連するソレノイドロックによってその動きが作動され、カセットが実質的に前記染色装置内に装填されたときに前記カセットを前記染色装置内の所定の位置に実質的にロックするための、ばね付勢付きのディテントピンを受け入れるように構成された凹部を含む、
請求項1に記載のカセット。
【請求項10】
前記凹部は少なくとも1つのハウジング部分の前記第1の端部に位置する、
請求項9に記載のカセット。
【請求項11】
前記凹部は少なくとも1つのハウジング部分と関連する前記ベースの一部を通って延びる、
請求項9又は10に記載のカセット。
【請求項12】
前記カセットの前記染色装置への装填および前記染色装置からの取り外しを容易にするハンドルをさらに含む、
請求項1に記載のカセット。
【請求項13】
前記ハンドルはその前記第1の端部に位置する凹部を含むハウジング部分の、第2の端部に位置する、
請求項12に記載のカセット。
【請求項14】
前記ハンドルは、その前記コンパートメント内に装填された前記複数の試薬容器の識別と関連する識別子を表示するための表示パネルを含む、
請求項12又は13に記載のカセット。
【請求項15】
前記ハウジングが前記開いた構成のときに前記2つのハウジング部分を所定の位置にロックするためのロック手段をさらに含む、
請求項1に記載のカセット。
【請求項16】
前記ロック手段は、前記2つのハウジング部分それぞれの第1の端部に位置する、
請求項15に記載のカセット。
【請求項17】
前記ロック手段は、スナップフィット構造の形をとり、一方のハウジング部分の前記第1の端部は、カンチレバーフックを含み、他方のハウジング部分の前記第1の端部は、前記ハウジングが前記開いた構成にあるときに前記カンチレバーフックと係合するように構成された相補的なリップを含む、
請求項15又は16に記載のカセット。
【請求項18】
前記ハウジングが前記閉じた構成で前記カセットが前記染色装置に装填されたときに、前記染色装置内に配置された隣接するチャネルの対の各チャネルに含まれるセンサにより、前記2つのハウジング部分のうち対応する1つが存在することが判断されるように構成される、
請求項1に記載のカセット。
【請求項19】
前記カセットが前記染色装置に装填されるとき、前記ハウジングの各コンパートメントは、前記染色装置内の所定の位置に配置され、前記染色装置に関連するプローブが、各コンパートメント内に受け入れられた前記試薬容器の開口部から位置的に正確に挿入されて、そこから試薬を引き出すことができるようになる、
請求項1に記載のカセット。
【請求項20】
前記ハウジングは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むグループから選択されたエンジニアリングポリマから製造される、
請求項1に記載のカセット。
【請求項21】
前記ハウジングはステンレス鋼から製造される、
請求項1に記載のカセット。
【請求項22】
前記複数のコンパートメントそれぞれを画定する前記壁は、前記試薬容器がそこに受け入れられたときに前記試薬容器との摩擦嵌合を提供するための少なくとも1つのリブを含む、
請求項1に記載のカセット。
【請求項23】
前記ベースは、前記複数のコンパートメントそれぞれの位置において排水口を含む、
請求項1に記載のカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセットに関し、より詳細には、スライド上に配置された組織サンプルを処理するための自動染色装置に試薬を配置し、装填するための試薬カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
解剖病理学的サンプルなどの生物学的サンプルの処理を自動化するための装置はよく知られている。処理は、免疫化学、インサイチュ(in-situ)異種交配、特殊染色、細胞学において典型的な種類の染色手順を含んでもよい。染色作業の自動化により、病理検査完了の迅速化が図られ、早期診断や、場合によっては早期処置につながることもある。染色は通常、生物学的サンプルの組織学的特徴を強調するために、顕微鏡のスライド上に置かれたサンプルに対して行われ、しばしばサンプルは少量の試薬と一緒に培養される。多くの場合、自動化されたサンプルの染色では、ロボットアームを操作して試薬のアリコート(aliquot)を送達し、染色が実行される。
【0003】
使用されている既存の自動染色装置の例では、組織サンプルはスライド上に置かれ、装置のスライド処理モジュールに移動され、試薬を使用して処理される。ここでのサンプルの処理は、染色プロトコルに従って所定の順序でスライド上のサンプルに試薬を分注するように構成された1つ以上のロボットによって自動的に行われる。
【0004】
自動化された染色装置を介してスライド上のサンプルの処理能力を増大させることは望ましいことであるが、それは、多くの要因によってしばしば妨げられる。例えば、試薬カセットの場合、オペレータのエラーにより、カセットに装填される試薬容器の数が不十分であったり、実際に個数が誤っていたり、あるいは、試薬容器が誤った位置や方向で試薬カセットに装填されたりして、染色装置が試薬容器を正しく識別することが不可能となる。さらに、複数の試薬カセットを染色装置にセットする必要がある場合には、これらのエラーはさらに悪化する可能性がある。
【0005】
本発明は、先行技術の欠陥の少なくとも一部を克服または実質的に改善する、または少なくとも代替手段を提供するような試薬カセットを提供することを目的とするものである。
【0006】
本明細書において、先行技術として挙げられている特許文書またはその他の事項への言及は、その文書または事項が知られていたこと、またはその文書または事項が含む情報が、請求項のいずれかの優先日において一般的な知識の一部であったことを認めるものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、試薬容器を染色装置に配置して装填するためのカセットが提供され、該カセットは以下を含む。ベースと、複数のコンパートメントを画定するためにベースから立ち上がった壁とを有するハウジングであって、各コンパートメントは、試薬容器を受け入れるように構成されており、ハウジングは、そのそれぞれの第1の端部で旋回可能に結合され、開いた構成と閉じた構成との間で旋回するように構成された2つの部分を含み、閉じた構成のハウジングの各部分は、カセットがその中に装填されたときに、染色装置内に配置された隣接するチャネルの対のうちの対応する1つの中に受け入れられることが可能である。
【0008】
好ましくは、ハウジングの各部分は、各コンパートメントの位置に、その壁を実質的に貫通して延び、コンパートメント内に受け入れられた試薬容器の対応する突出部を少なくとも部分的に受け入れる開口部を含み、試薬容器がコンパートメント内に正しく配置されることを確かにする。
【0009】
好ましくは、各ハウジング部分の壁は側壁であり、ハウジングが閉じた構成にあるときに、2つのハウジング部分のうちの1つに関連する開口部のみが外部に面している。
【0010】
好ましくは、各試薬容器は、試薬容器の壁に旋回可能に結合された蓋を含み、カセットは、ハウジングが開いた構成にあるときにのみ、2つのハウジング部分の両方に関連するコンパートメント内に受け入れられたそれらの試薬容器の蓋を開くことができるように構成されている。
【0011】
好ましくは、カセットは、ハウジングが閉じた構成にあるときに、2つのハウジング部分を所定の位置にロックするロック手段をさらに含む。
【0012】
好ましくは、ロック手段は、2つのハウジング部分のそれぞれの第2の端部に配置されている。
【0013】
一実施形態では、ロック手段は、スナップフィット構造の形をとり、一方のハウジング部分の第2の端部はカンチレバーフックを含み、他方のハウジング部分の第2の端部は、ハウジングが閉じた構成にあるときにカンチレバーフックを受け入れるように構成された相補的な凹部を含む。
【0014】
好ましくは、ハウジングが閉じた構成にあるとき、2つのハウジング部分は、染色装置内に配置された隣接するチャネルの対の間の間隔に対応する所定の距離だけ互いに離間している。
【0015】
好ましくは、ベースは、ハウジングの対向する横方向の側壁から外側に延びて一対のフランジを画定し、ハウジングが閉じた構成にあるときに、カセットが実質的に染色装置の中に装填されるとき、ハウジングの各部分のフランジが、染色装置内に配置された隣接するチャネルの対のそれぞれに関連する対応する一対の横方向に対向する整列ガイドによって摺動して受け入れられ得る。
【0016】
好ましくは、2つのハウジング部分のうちの少なくとも1つは、染色装置に関連するソレノイドロックによってその動きが作動され、カセットが実質的に染色装置内に装填されたときにカセットを染色装置内の所定の位置に実質的にロックするための、ばね付勢付きのディテントピンを受け入れるように構成された凹部を含む。
【0017】
好ましくは、凹部は少なくとも1つのハウジング部分の第1の端部に位置する。
【0018】
好ましくは、凹部は少なくとも1つのハウジング部分と関連するベースの一部を通って延びる。
【0019】
好ましくは、カセットは、カセットの染色装置への装填および染色装置からの取外しを容易にするためのハンドルをさらに含む。
【0020】
好ましくは、ハンドルはその第1の端部に位置する凹部を含むハウジング部分の、第2の端部に位置する。
【0021】
一実施形態において、ハンドルは、そのコンパートメント内に装填された複数の試薬容器の識別と関連する識別子を表示するための表示パネルを含む。
【0022】
好ましくは、カセットは、ハウジングが開いた構成のときに2つのハウジング部分を所定の位置にロックするためのロック手段をさらに含む。
【0023】
好ましくは、ロック手段は、2つのハウジング部分それぞれの第1の端部に位置する。
【0024】
一実施形態では、ロック手段は、スナップフィット構造の形をとり、一方のハウジング部分の第1の端部は、カンチレバーフックを含み、他方のハウジング部分の第1の端部は、ハウジングが開いた構成にあるときにカンチレバーフックと係合するように構成された相補的なリップ(lip)を含む。
【0025】
好ましくは、染色装置内に配置された隣接するチャネルの対の各チャネルは、ハウジングが閉じた構成でカセットが染色装置に装填されたときに、2つのハウジング部分のうち対応する1つの存在を判断するように構成されたセンサを含む。
【0026】
好ましくは、カセットが染色装置に装填されるとき、ハウジングの各コンパートメントは、染色装置内の所定の位置に配置され、染色装置に関連するプローブが、位置的に正確に各コンパートメント内に受け入れられた試薬容器の開口部から挿入されて、そこから試薬を引き出すことができるようになる。
【0027】
好ましくは、ハウジングは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むグループから選択されたエンジニアリングポリマから製造される。
【0028】
一実施形態において、ハウジングはステンレス鋼から製造される。
【0029】
好ましくは、複数のコンパートメントそれぞれを画定する壁は、試薬容器がそこに受け入れられたときに試薬容器との摩擦嵌合を提供するための少なくとも1つのリブを含む。
【0030】
好ましくは、ベースは、複数のコンパートメントそれぞれの位置において排水口を含む。
【0031】
本発明のその他の態様も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の範囲内に入る可能性を有するいかなる他の形態にもかかわらず、本発明の好ましい実施形態を、例示としてのみ、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る試薬カセットの斜視図であり、やや開いた構成の試薬カセットを前から見ている。
【
図2】
図2は、
図1の試薬カセットを後ろから見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の試薬カセットを、閉じた構成で前から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の閉じた構成の試薬カセットを後ろから見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1の試薬カセットの斜視図であり、開いた構成の試薬カセットを前から見ている。
【
図6】
図6は、
図1の試薬カセットの斜視図であり、開いた構成の試薬カセットを後ろから見ている。
【
図7】
図7は、
図1の試薬カセットの、閉じた構成の底面図である。
【
図8】
図8は、
図1の試薬カセットの、閉じた構成の平面図である。
【
図9】
図9は、
図1の試薬カセットの、閉じた構成の側面図である。
【
図11】
図11は、
図1の試薬カセットの、開いた構成でのヒンジ部の斜視図である。
【
図14】
図14は、
図1の試薬カセットを1つ以上受容する自動染色装置の斜視図である。
【
図15】
図15は、
図1の試薬カセットの斜視図であり、複数の試薬カセットコンパートメントの対応する1つに装填された複数の試薬容器を含む。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、上述の説明に関連して限定することを意図していないことを理解されたい。
【0035】
本発明は、
図14に示すような染色装置に試薬容器を配置して装填するための試薬カセット10の発見に根拠を置いており、試薬カセット10とは、その第1の端部で旋回可能に連結された2つの個々の試薬カセットを含み、2つの個別の試薬カセットを受け入れるために通常使用されるはずの、染色装置500に関連する隣接する一対のチャネル510を占めるように構成されている。
【0036】
この構成により、個々の試薬カセットに関連する標準的な数以上のコンパートメントを含む試薬カセット10を提供することが可能となり、検出キットなどのキットの一部として提供される任意の試薬容器を、単一のアイテムとして一緒にパッケージ化して販売することができるようになる。この点において、キットに関連する様々な試薬は、試薬カセット10のハウジング内の所定のコンパートメントに予め装填することができ、それによって、正しい数の試薬容器が正しい順序で装置500に装填されたことを自動染色装置500が容易に認識できるようになる。
【0037】
試薬カセットのキット形態は、顧客(例えば、米国食品医薬品局(FDA))が使用する登録済みおよび/または検証済みの試薬を提供し、規制上認証されたシステムを提供するために使用されることも可能である。
【0038】
一例として、
図14に示す染色装置500は、Leica Biosystems(登録商標)社のBOND-III Fully Automated IHC and ISH Stainerの形態をとっていてもよく、試薬容器は、DS9800 Bond Polymer Refine Detection Kit、DS9390 Bond Polymer Refine Red Detection Kit、またはDS9477 ChromoPlex 1 Dual Detection for Bond Kitを含んでいてもよい。
【0039】
以下に、
図14に示す染色装置500に関連する隣接する一対のチャネル510に試薬容器を配置して装填するように構成された、本発明の好ましい実施形態による試薬カセット10について詳細に説明する。
【0040】
[ハウジング]
図1~
図10に示すように、試薬カセット10は、ヒンジ機構を介してそれぞれの第1の端部で旋回可能に結合された2つの部分100、200の形態をとるハウジングを含む。2つのハウジング部分100、200は、理想的には、スライド染色装置に関連する化学物質に対して耐性のある材料から製造される。
【0041】
例えば、一実施形態では、2つのハウジング部分100、200は、射出成形などの適切な製造プロセスを用いてエンジニアリングポリマから製造される。
【0042】
好ましいエンジニアリングポリマは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、高密度ポリプロピレン(HDPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選択される。
【0043】
第1のハウジング部分100は、ベース110と、一対の側壁120、130と、一対の端壁140、150と、複数の仕切り壁160、165、170、175とを含み、これらはすべてベース110から立ち上がって、複数のコンパートメント(概括的な参照符号Xa-Xeが与えられる)を画定する。各コンパートメントXa-Xeは、
図15に示すコンパートメントXa-Xeに装填された試薬容器のような試薬容器を受け入れるように構成される。2つの横方向の側壁120、130はそれぞれ、側壁120、130に対して概ね90度の角度で、対応する側壁120、130の上部から外向きに延びる対応するリップ125、135を有する。
【0044】
図1~
図6および
図8に示すように、各コンパートメントXa-Xeに装填され得る試薬容器の視覚的な識別子として使用するために、第1のハウジング部分100の複数のコンパートメントXa-Xeのうちの対応する1つの位置で、各リップ125、135の上面に一連の数字「1、2、3、4、および5」が記されている。
【0045】
試薬容器がコンパートメントXa-Xe内に受け入れられたときに、試薬容器に対して摩擦嵌合が発生することを確かにするために、複数のコンパートメントXa-Xeを画定する側壁120、130、端壁140、150、および仕切り壁160、165、170、175のうちの1つまたは複数は、試薬容器の対応する壁とぴったりと係合するようにコンパートメントXa-Xeに対して内側に突出する少なくとも1つのリブを含む。
【0046】
第2のハウジング部分200は、ベース210と、一対の側壁220、230と、一対の端壁240、250と、複数の仕切り壁260、265、270、275とを含み、これらはすべてベース210から立ち上がって複数のコンパートメント(概括的な参照符号Xf-Xjが与えられる)を画定し、各コンパートメントXf-Xjは、コンパートメントXf-Xjに装填された
図15に示す試薬容器のような試薬容器を受け入れるように構成されている。2つの横方向の側壁220、230はそれぞれ、対応する側壁220、230の上部から外側に向かって、側壁220、230に対して概ね90度の角度で延びる対応するリップ225、235を有する。
【0047】
図1~
図6および
図8に示すように、各コンパートメントXf-Xjに装填され得る試薬容器の視覚的な識別子として使用するために、複数のコンパートメントXf-Xjのうちの対応する1つの位置で、各リップ225、235の上面に、一連の数字「6、7、8、9、および10」が記されている。
【0048】
ここでも、試薬容器がコンパートメントXf-Xj内に受容されたときに、試薬容器に対して摩擦嵌合が発生することを確かにするために、複数のコンパートメントXf-Xjを画定する側壁220、230、端壁240、250、および仕切り壁260、265、270、275のうちの1つ以上は、試薬容器の対応する側壁とぴったりと係合するようにコンパートメントXf-Xjに対して内側に突出する少なくとも1つのリブを含む。
【0049】
例えば
図1に示すように、第2のハウジング部分200は、端壁250から外側に延びる概して長方形の部分280を含む。部分280は、概して、第2のハウジング部分200の幅の約半分であり、第2のハウジング部分200の側壁230の近くに位置している。
【0050】
ハウジングが閉じた位置にあるときに、部分280の内向きとみなされる表面から外向きに延びるのは、突出部の一方の側に取り付けられたカンチレバーフック285を備える突出部である。
【0051】
以下でより詳細に説明されるように、カンチレバーフック285は、ハウジングが閉じた構成にあるときに2つのハウジング部分100、200を一緒にロックするための、ロック機構の一部を形成する。
【0052】
加えて、
図2、
図4~
図6、および
図10に示すように、第1のハウジング部分100の側壁130および第2のハウジング部分200の側壁230は、いずれも、複数のコンパートメントXa-Xjのうちの対応する1つの位置で側壁130、230を実質的に貫通して延びる概ね円形の開口部(概括的な参照符号Aa-Ajが与えられる)を含んでいる。
【0053】
例えば、
図1、
図3、および
図5に示すように、第1のハウジング部分100の側壁130を通って延びるこれらの概ね円形の開口部Aa-Aeは、対応するコンパートメントXa-Xeに装填された試薬容器の側壁の1つから外向きに延びる対応する突出部、突起部またはボール(図示せず)を少なくとも部分的に受け入れるようにそれぞれ配置される。この突起は、試薬容器がコンパートメントXa-Xe内で適切に配向されていること示す、オペレータ用の触覚インジケータとなる。各コンパートメントXa-Xeに装填される可能性のある試薬容器の視覚的な識別子として使用するために、開口部Aa-Aeの対応する1つの位置の上の側壁130の外面に、一連の数字「1、2、3、4、および5」が記されている。
【0054】
同じ意味で、これらの概ね円形の開口部Aa-Aeのそれぞれの下に位置するのは、概ね長方形の形状の開口部(図示せず)であり、やはり、そのコンパートメントXa-Xeに装填された試薬容器の同じ側壁から外側に延びる対応する突出部(図示せず)を少なくとも部分的に受け入れるように配置されている。
図5に示すように、第1のハウジング部分100の側壁130を通って延びる長方形状の開口部は、パネル180によって視界から隠されており、このパネルは、例えば、ラベル付けおよび/または識別の目的で使用することができる。
【0055】
同様に、また、
図2、
図4および
図6に示すように、第2のハウジング部分200の側壁230を通って延びるこれらの概ね円形の開口部Af-Ajはそれぞれ、対応するコンパートメントXf-Xjに装填された試薬容器の側壁の1つから外向きに延びる対応する突出部、突起部またはボール(図示せず)を少なくとも部分的に受け入れるように配置されている。この突起は、試薬容器がコンパートメントXi-Xj内で適切に配向されていることをオペレータに示すための触覚インジケータとなる。ここでも、各コンパートメントXf-Xjに装填される可能性のある試薬容器の視覚的な識別子として使用するために、開口部Af-Ajの対応する1つの位置の上の側壁230の外面に、一連の数字「6、7、8、9、および10」が記されている。
【0056】
概して長方形状の開口部Bf-Bjは、容器を少なくとも部分的に受容するように配置されており、任意で容器を所定の位置にロックしてもよいが、対応する突出部(図示せず)は、そのコンパートメントXf-Xjに装填された試薬容器の同じ側壁から外向きに延びてもよい。
【0057】
この構成により、各試薬容器が第1および第2のハウジング部分100、200の対応するコンパートメントXa-Xj内に正しく配置される(すなわち、正しく配向される)ことを確かにする。これは、試薬カセット10が染色装置500に装填されたときに、各コンパートメントXa-Xjが染色装置500内の所定の位置に配置され、染色装置500に関連するプローブ(図示せず)がソフトウェアによって制御されて、コンパートメントXa-Xjの1つの中に受け入れられた特定の試薬容器の開口部を位置的に正確に見つけることができ、ソフトウェアで制御されたプローブが開口部から入って試薬容器から試薬を取り出すことができるようにするために重要である。実際、試薬容器の上部にある開口部が中央に配置されていない場合、試薬容器の向きが悪いと、そこにプローブを移動させるようソフトウェアがプログラムされた特定の座標に開口部が配置されていないことを意味する。
【0058】
図3および
図4に示すように、第2のハウジング部分200に関連する概ね円形の開口部Af-Ajおよび概ね長方形状の開口部Bf-Bjのみが、ハウジングが閉じた構成にあるときに外部に面している。
【0059】
[排水口]
図7および
図8に示すように、第1および第2のハウジング部分100、200のためのベース110、210はそれぞれ、複数の排水口(概括的な参照符号Da-Djが与えられる)を含み、複数のコンパートメントXa-Xjのそれぞれの位置に開口部Da-Djが設けられている。
【0060】
[フランジ]
例えば、
図1~
図6に示すように、第1および第2のハウジング部分100、200のためのベース110、210は、両方とも、対応するハウジング部分100、200の、対向する横方向の側壁120、130および220、230から外向きに延びて、一対の横方向に対向するフランジ110f、110gおよび210f、210gを画定し、ハウジングが閉じた構成にあるときに、ハウジングの各部分100、200のフランジ110f、110gおよび210f、210gが、試薬カセット10がその中に実質的に装填されているときに、染色装置500内に位置する隣接する一対のチャネル510のそれぞれに関連する対応する一対の横方向に対向する整列ガイド(図示せず)によってスライド可能に受け入れられるようにする。
【0061】
[ハンドル]
また、試薬カセット10は、染色装置500の隣接する一対のチャネル510への試薬カセット10の出し入れを容易にするために使用するハンドル300を含む。
【0062】
当業者には、ハンドル300が、あらゆる形態をとり得ることが明らかであろう。
【0063】
一実施形態では、
図1~
図10に示すように、ハンドル300は、概して長方形状の本体320の形態をとり、本体320の壁322、下向きに傾斜した面324、および概して垂直な後面326によって画定される中央空洞325を有し、2つの面324、326が収束して、空洞325内に捕捉されたいかなる流体も排出できるようにするための開口部325Aを画定する。
【0064】
ハンドル300と第1のハウジング部分100の端壁150との間に配置されているのは、第1のハウジング部分100の長手方向の軸に対して概ね直交して配向されている概して長方形状の中空の本体部分330であり、
図2および
図5に示すように、本体部分330の30~50%程度の部分は、ハウジングが閉じた構成にあるときに第1のハウジング部分100の内向きの側と考えられる側に向かって側壁120を越えて延びる。そして、
図7に示すように、本体部分330のサイズは、第2のハウジング部分200の第2の端部に位置する部分280の、より小さいサイズと相補的である。
【0065】
以下でより詳細に説明されるように、また、
図2および
図5に示されるように、本体部分330は、ハウジングが閉じた構成にあるときに本体部分330の内向きとみなされる端部を少なくとも部分的に貫通して延びる凹部330Aも含む。凹部330Aは、部分280の内向きの表面から外向きに延びるカンチレバーフック285と相補的なリップ(図示せず)を内部に備えて構成されており、これにより、以下でより詳細に説明するように、凹部とカンチレバーフック285の両方が同じロック機構の相補的な部品を構成している。
【0066】
ハンドル300は、本体部分330の30~50%程度の部分から外向きに延びている。この構造により、ハウジングが閉じた構成にあるとき、ハンドル300は、第1のハウジング部分100のコンパートメントXa-Xeと第2のハウジング部分200のコンパートメントXf-Xjとの間の概ね中間に延びる長手方向軸に沿って配置される。
【0067】
図1~
図6、
図9および
図10に示すように、ハンドル300は、試薬カセット10の複数のコンパートメントにキット形態で予め装填された任意の試薬容器の識別に関連する識別子(図示せず)を表示する際に使用する表示パネル350を含む。
【0068】
また、試薬カセット10には、バーコード、QRコード(登録商標)などのラベルや、RFIDリーダなど、試薬カセット10やその中にある試薬容器を機械的にまたはその他の方法で識別するための読み取りおよび/または書き込みデバイスなど、さらなる識別子を設けたり、配置したりしてもよい。これらの識別子は、装置500に在庫情報を提供することができ、また、追跡、在庫管理、試薬の品質保証、有効期限管理、または、試薬容器のある場合とない場合の両方において、試薬カセット100に関連する他のそのような情報の提供のために利用することができる。
【0069】
試薬に関連して述べると、その固有の消耗品コード(consumable code)をコード化する機械可読コードは、試薬カセット10や試薬容器の一部に貼られるラベルに印刷されてもよいし、試薬容器および/または試薬カセット10の外面に直接印刷されてもよい。試薬の機械可読コードは、ロット番号、試薬のタイプ、容量、および/または類似物をコード化してもよく、使用中の装置500によって読み取り可能であってもよい(または、容器は2つの機械可読コードを含み、そのうちの1つはユーザ装置(図示せず)によってスキャン可能であり、そのうちの1つは使用中の装置500によってスキャン可能であってもよい)。
【0070】
複数の試薬容器を含む試薬キットに関連して述べると、キットの固有の消耗品コードをコード化する機械可読コードは、キットキャリアに貼られるラベルに印刷されてもよいし、キットキャリアに直接印刷されてもよい。試薬キットの機械可読コードは、試薬キット内の各試薬容器の機械可読コードに基づくものでもよい。例えば、試薬キットの機械可読コードは、試薬キット内の試薬容器の機械可読コードのそれぞれにコード化された情報のコード化された組み合わせを含んでいてもよい。
【0071】
表示パネル350は、ハンドル300の本体320の向きに対して概ね45度の角度でハンドル300の後面326から上向きに延びる、ハンドル300と概ね同じ幅の細長いシート部材352によって画定される。次に、シート部材352は、基本的に、それ自体に約90度折り返されて、表示パネル350の表示面355を形成する概ね平坦な長方形の表面を画定する。その後、シート部材352は、再び約90度折り畳まれた後に、概して長方形の本体部分330の上面まで延びる。結果として得られる表示パネル面355は、例えば、コンパートメントXa-Xjに装填された複数の試薬容器からなるキットの識別子でカセット10にラベルを付ける際に使用するために、バーコード、QRコード(登録商標)、RFIDタグなどを貼付または印刷するために使用されてもよい。
【0072】
[ヒンジ]
当業者には、ヒンジ機構が、あらゆる形態をとり得ることが明らかであろう。
【0073】
例えば、一実施形態において、ヒンジ機構はバレル型のヒンジ構成の形態を採る。
【0074】
特に、
図2、
図4、
図5、
図9および
図10に示すように、また、
図11により接近して示すように、第2のハウジング部分200は、第2のハウジング部分200の第1の端部に形成された、その上部が切り詰められた概して三角形状の中空ブラケット290を含む。ブラケット290は、2つの横側壁220、230のうちの対応する1つの上側部分から外向きに延びる2つのリップ225、235の高さよりも上に延びている。ブラケット290の内向きと考えられる角部分から外向きに延びるのは、一対の間隔を空けて配置されたバレル292、295である。バレル292、295が角部分から延びる角度は、バレル292、295が第1のハウジング部分100の長手方向の軸に対して中心から外れて配置されることを確かにする。
【0075】
第1のハウジング部分100は、その上部が切り詰められた同様の形状のブラケット190を含み、このブラケットは、第1のハウジング部分100の第1の端部に形成されており、2つの横方向側壁120、130のうちの対応する1つの上部から横方向外側に延びる2つのリップ125、135の高さを超えて延びている。
【0076】
ブラケット190の内向きと考えられる角部分から外向きに延びているのは、顎のある(barbed)ヘッド部分を有する、間隔を空けて下向きに配向された一対のスナップロックピン192、195である。スナップロックピン192、195が角部分から延びる角度は、スナップロックピン192、195が第1のハウジング部分100の長手方向の軸に対して中心から外れて配置されることを確かにする。
【0077】
2つのスナップロックピン192、195は、2つのバレル292、295に関連する間隔と相補的な距離だけ互いに離間している。この点において、2つのハウジング部分100、200は、第1のハウジング部分100の2つのスナップロックピン192、195を第2のハウジング部分200の対応するバレル292、295を通して挿入して、2つのハウジング部分100、200のそれぞれの第1の端部において旋回可能な構成を形成することによって、互いに動作可能に結合することができる。実際、スナップロックピン192、195の顎ヘッド部分が対応するバレル292、295を通過すると、それは拡がり、2つのハウジング部分100、200が容易に分離してしまう可能性が低減する。
【0078】
このヒンジ構成によって、ハウジングは、2つのハウジング部分100、200が互いに相対的に概ね180度配向されている開いた構成(
図5および6に示す)と、2つのハウジング部分100、200が並んで配置されている閉じた構成(
図3および4に示す)との間で旋回するように構成されている。ハウジングは、バレル292、295および対応するスナップロックピン192、195がともに設定されている位置関係によって、180度よりも大きな位置への回転が防止される。
【0079】
[ロック手段]
カセット10は、ハウジングが閉じた構成にあるときに、染色装置500内の隣接する一対のチャネル510に装填する準備をするために、2つのハウジング部分100、200を所定の位置にロックするロック手段をさらに含む。
【0080】
一実施形態では、
図1、
図2および
図5に示すように、ロック手段は、第2のハウジング部分200の第2の端部に位置する部分280に関連するカンチレバーフック285と、本体部分330内の凹部330A内に位置する相補的なリップ(図示せず)との間のスナップフィット構造の形態をとっている。
【0081】
使用において、2つのハウジング部分100、200のそれぞれの第2の端部が一緒に合わせられると、小さい部分280の内向きの表面から延びるカンチレバーフック285を有する突出部が、本体部分330内の凹部330Aに入り、ここで、内部に配置されたリップが、スナップフィット構造を介してカンチレバーフック285と係合して、ハウジングが閉じた構成にあるときに2つのハウジング部分100、200を一緒にロックするように構成されている。
【0082】
図7および
図8に示すように、2つのハウジング部分100、200のそれぞれの第1の端部におけるバレル292、295および対応するスナップロックピン192、195のそれぞれの向きは、第1のハウジング部分100の第2の端部に位置する本体部分330および第2のハウジング部分200の第2の端部に位置する、より小さい部分280の30~50%程度の外向きに延びる部分との組み合わせにより、ハウジングが閉じた構成にあるときに、2つのハウジング部分100、200が、染色装置500内に位置する隣接する一対のチャネル510の間の間隔に対応する所定の距離だけ互いに十分に離間しており、カセット10が染色装置500内に装填されたときに、各ハウジング部分100、200が隣接する一対のチャネル510の対応する1つの中に受け入れられるようにする。
【0083】
閉じた構成から開いた構成へのハウジングの開帳を容易にするために、第2のハウジング部分200は、第2のハウジング部分200の第2の端部に形成された部分280の上面から上向きに延びるタブ288を含む。使用時には、オペレータは、単にハンドル300の本体部分320を持ち、タブ280を優しく引っ張って、ハウジングを閉じた構成から解放することができる。
【0084】
カセット10は、ハウジングが開いた構成のときに、2つのハウジング部分100、200をその配置でロックするための追加のロック手段を含んでもよい。
【0085】
一実施形態では、
図2、
図4および
図12に示すように、追加のロック手段は、スナップフィット構造の形態をとり、この場合、第2のハウジング部分200は、2つのバレル292、295の間にある位置で、ブラケット290の外面から延びるカンチレバーフック296を含む。
【0086】
第1のハウジング部分100は、ブラケット190の外面から延びる相補的なリップ196を、2つの下向きに角度を付けられたスナップロックピン192、195の間となる位置に含み、ハウジングが開いた構成にあるときにカンチレバーフック296と係合するように構成されている。
【0087】
カンチレバーフック296は、オペレータが、ハウジングを閉じた構成に配置するのに必要な方向に、2つのハウジング部分100、200のそれぞれに穏やかな力を加えることによって、カンチレバーフック296をリップ196から解放することができるように、十分な柔軟性を有する。
【0088】
[ディテントピン]
カセット10は、ハウジングが閉じた構成にあるときに、染色装置500内の所定の位置にロックまたは保持されることができるように構成されている。
【0089】
一実施形態においては、および
図2、
図4、
図7、
図9、および
図12に示すように、第1のハウジング部分100は、第1のハウジング部分100の第1の端部に位置するブラケット190のベース部を通って延びる凹部197を含む。
【0090】
染色装置500は、複数のチャネル510のうちの1つの直下に配置された対応する概ね垂直なチャネル(図示せず)内にそれぞれ摺動可能に取り付けられた複数のばね仕掛けのディテントピン(図示せず)を含む。
【0091】
このように、試薬カセット10の2つのハウジング部分510が染色装置500の隣接する一対のチャネル510内に受け入れられると、第1のハウジング部分100を含むチャネル510の真下の垂直チャネル内に摺動可能に取り付けられたばね付勢付きのディテントは、ディテントピンの概して尖った上部が、第1のハウジング部分100の第1の端部でブラケット190のベース部を通って延びる凹部197内に実質的に位置するまで、垂直チャネルに沿って上方に移動するように付勢される。これにより、試薬カセット10を染色装置500内の所定の位置に保持するための手段が提供される。
【0092】
ディテントピンがばねで付勢されていることにより、試薬カセット10のハンドル300を単に引っ張るだけで、染色装置500のチャネル510から試薬カセット10を取り外すことが可能である。この動作により、ブラケット190のベース部がディテントピンの上部に作用して、ディテントピンが概して垂直なチャネルに沿って下方に押し下げられ、それによって試薬カセット10を取り外すことができる。
【0093】
[ソレノイドロック]
試薬カセット10を染色装置500内の所定の位置にロックする必要が生じた場合、これを達成するためのロック機構は、染色装置500のチャネル510の下方に配置されたソレノイドロック(図示せず)の形態をとる。
【0094】
ソレノイドロックの作動は、染色装置500内に位置する隣接する一対のチャネル510の一方または両方に関連する1つまたは複数のセンサ(図示せず)が、カセット10が染色装置500に装填されたときに、対応するチャネル510内に位置する(閉じた構成の)ハウジングの2つのハウジング部分100、200のうちの対応する1つの存在を判断するときに起こってもよい。
【0095】
具体的には、ソレノイドロックは、カセット10が染色装置500に装填されたことを検知すると、これらのセンサのうちの1つからの信号を受けて作動する。これにより、電磁界が発生し、ソレノイドロックの本体に対して移動可能に取り付けられた金属ボルト(図示せず)が、金属ボルトの少なくとも一部がソレノイドロックの本体内に部分的に位置する格納位置から、金属ボルトが、第1のハウジング部分100の第1の端部にあるブラケット190のベース部を通って延びる凹部197内に係合しているばね付勢付きのディテントピンに向かって、本体から概ね水平方向に離れるように反発する伸長位置へと移行する。伸長位置にある金属ボルトは、係合されたばね付勢付きのディテントピンの真下に位置しており、これにより、オペレータによって試薬カセット10に引っ張り力が加えられたときに、ブラケット190のベース部がばね付勢付きのディテントピンの上部に作用してディテントピンが下方に押し下げられることを防止し、それによって試薬カセット100を染色装置500内の所定の位置にロックすることができる。
【0096】
ソレノイドロックに加えて、ハウジング部分100、200のそれぞれ対応するベース110、210から外側に延びるフランジ110f、110gおよび210f、210gは、ソフトウェア制御されたプローブが試薬容器のそれぞれの開口部に係合するように正確に位置決めされることを妨げてしまい得る、染色装置500内のカセット10の横方向の位置ずれの制限をするだけではない(例えば、
図15に示す蓋付き試薬容器を参照)。フランジ110f、110gおよび210f、210gはまた、ディテントピンが凹部197内に係合しているときに発生する可能性のある、染色装置500内のカセット10のチャネル510内の垂直方向の位置ずれの制限も援助する。
【0097】
試薬カセット10をロック状態から解除するには、オペレータが染色装置500のコントロールパネル(図示せず)でソレノイドロックを解除するだけでよい。これにより、電磁界が除去され、金属ボルトが伸長位置から格納位置に戻り、それにより、係合しているばね付勢付きのディテントピンが垂直チャネル内で自由に動くことができるようになる。
【0098】
別の一構成においては、ソレノイドロックは単にラッチングソレノイドであってもよく、そこでは金属ボルトが格納位置から伸長位置に移行するように瞬間的に電力が印加され、電力が除去されても、金属ボルトは伸長位置に維持される。金属ボルトを解放するには、ラッチングソレノイドに反対の電圧をかけ、金属ボルトを格納位置に戻し、再び電源が入るまでその状態が維持される。
【0099】
上述したように、カセット10が染色装置500に装填されると、各コンパートメントXa-Xjは、染色装置500のチャネル510内の所定の位置に配置されるので、染色装置500に関連するプローブ(図示せず)は、コンパートメントXa-Xjの1つの中に受け入れられた特定の試薬容器の開口部を位置的に正確に見つけるようにソフトウェアによって制御される。プローブが一旦正しい位置に置かれると、ソフトウェアプログラムは、プローブを試薬容器の開口部を通って下降させ、そこから試薬を吸引することを可能にする。
【0100】
[優位点]
上述した本発明の好ましい実施形態による試薬カセット10は、多くの利点を提供するものである。
【0101】
例えば、ハウジングが閉じた構成にあるとき、2つのハウジング部分100、200は、染色装置500内の隣接する一対のチャネル510に装填されるように、互いに十分に離間している。これは、複数の個別のカセットを受け入れるように構成されている従来の染色装置500が、本発明の、より良い言葉が無いため「折り畳み可能な」試薬カセット10とでも呼ぶべきもの、を収容するように変更する必要がないので有益である。
【0102】
さらに、従来の染色装置500と共に使用するために製造された試薬容器は、典型的には、試薬容器が使用されていないときに開口部を覆うために使用するように、試薬容器の側壁の1つに旋回可能に結合された蓋を含む(例えば、
図15に示す蓋付き試薬容器を参照)。試薬カセット10を染色装置500に装填するには、これらの蓋を開けて開口部を晒す必要がある。しかし、試薬容器は、染色装置500のチャネル510内に配置されたときに同じ方向を向くような特定の向きで、2つのハウジング部分100、200のコンパートメントXa-Xjに装填されなければならないところ、ハウジングが閉じた状態では、2つのハウジング部分100、200が接近しすぎていて、第2のハウジング部分200のコンパートメントXf-Xj内の試薬容器の蓋を開けることができないが、ハウジングが開いた状態では、2つの別々の試薬カセットが使用される場合と同様に、試薬容器の蓋を開けることが可能である。
【0103】
[その他の実施形態]
別の実施形態において、ハウジングの2つの部分100、200は、例えば316ステンレス鋼などの、好ましくは医療用金属などの金属から製造されてもよい。
【0104】
[定義]
明細書において範囲、例えば温度範囲、時間範囲、又は濃度範囲が与えられるとき、全ての中間範囲及び部分範囲、さらに与えられた範囲内に含まれる全ての個々の値が、開示に含まれることを意図している。ここで明細書に含まれる範囲又は部分範囲内のいかなる部分範囲又は個々の値も、請求の範囲から除外され得ることは明らかである。
【0105】
明細書で定義および使用されているすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0106】
本願では、「約」という用語は、装置に固有の誤差のばらつき、値を決定するために採用されている方法、または試験対象者間に存在するばらつきを含むことを示すために使用されている。
【0107】
本明細書で使用されるにあたり、1つを示唆する表現は、明確にそうではないと示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0108】
本明細書で使用される「及び/又は」という表現は、そのように結合した要素の「どちらか一方または両方」、すなわち、いくつかの場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数の要素は、同じ方法で解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合された要素の「1つまたは複数」である。他の要素は、「及び/又は」句によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連しているか、または関連していないかにかかわらず、任意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への参照は、「含む」のようなオープンエンドの言語と一緒に使用される場合、ある実施形態では、Aのみ(任意にB以外の要素を含む)を参照することができ、別の実施形態では、Bのみ(任意にA以外の要素を含む)を参照することができ、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む)を参照することができる、などが挙げられる。
【0109】
ここで使用されるにあたり、「内側」、「外側」、「下側」、「下に」、「下の」、「上側」、「上の」などの空間的に相対的な表現は、図面に図示された1つの構成要素又は構成を別の構成要素又は構成との相対的関係を説明することを容易にするために使用される。空間的に相対的な表現は、図に示される向きに加えて、装置の使用中又は動作中に異なる向きとなることも包含することを意図しているかもしれない。
【0110】
本発明を、限られた数の実施形態に関連して説明してきたが、前述の説明に照らして多くの代替案、変更、および変形が可能であることは、当業者は理解するであろう。したがって、本発明は、開示された本発明の主旨および範囲内に入る可能性のあるすべてのそのような代替案、修正および変形を包含することを意図している。
【0111】
この明細書において、「含む」、「から成る」、「構成する」、の表現が使用されるとき、言及した特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を規定するものであるが、その他の特徴、整数、ステップ、又はコンポーネント、又はそれらのグループの存在を除外するものではないと解釈されるべきである。