(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ピストンロッド及びフリーピストンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 71/00 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
F02B71/00
(21)【出願番号】P 2021531424
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2019001302
(87)【国際公開番号】W WO2020115549
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518005780
【氏名又は名称】アクエリアス・エンジンズ・(エイ・エム)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUARIUS ENGINES (A.M.) LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコビー,シャウル
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4803960(US,A)
【文献】特表2018-521265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 71/00
F02B 75/28
F01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端に第1燃焼室を有し、反対側の第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に取り付けられたピストンと、
前記ピストンを
通って前記第1及び第2燃焼室
の両方に延びる通路を有するピストンロッドと、
第1燃焼室にガスを選択的に供給するために、第1燃焼室に出入りするように構成され、ピストンロッドの第1側に設けられる少なくとも1つの第1開口と、
前記ピストンロッドの第2側に設けられ、ガスを第2燃焼室に選択的に供給するために、第2燃焼室に出入りするように構成されている少なくとも1つの第2開口と、
を備え、
前記ピストンは、前記第1開口が前記第1燃焼室の外側にあり、前記第2開口が前記第2燃焼室の内側にある第1位置と、前記第1開口が前記第1燃焼室の内側にあり、前記第2開口が前記第2燃焼室の外側にある第2位置との間で摺動可能である、リニアレシプロエンジン。
【請求項2】
前記通路は、前記ピストンの第1側から前記少なくとも1つの第2開口を介して前記ピストンの反対側の第2燃焼室に向かう第1方向にガスを流動させ、前記ピストンの第2側から前記少なくとも1つの第1開口を介して前記ピストンの第1側の第1燃焼室に前記第1方向とは反対の第2方向にガスを流動させるように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記通路は、前記第1位置において、前記ピストンの第1側から前記通路、及び前記少なくとも1つの第2開口を通って、前記ピストンの反対側の第2燃焼室に向かう第1方向にガスを流動させ、前記第2位置において、前記通路、及び前記少なくとも1つの第1開口を通って、前記第1燃焼室に向かう第1方向にガスを流動させるように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記第1燃焼室の外側の第1前室と、
前記第2燃焼室の外側の第2前室と、
を備え、
前記通路は、前記第1前室から前記第2燃焼室にガスを供給し、前記第2前室から前記第1燃焼室にガスを供給するように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第1燃焼室の外側の第1前室と、
前記第2燃焼室の外側の第2前室と、
前記第1前室に隣接する吸込室と、
を備え、
前記通路は、前記第1位置で前記吸込室から前記第2燃焼室にガスを供給し、前記第2位置で前記吸込室から前記第1燃焼室にガスを供給するように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記シリンダは、周辺シリンダ壁と、前記周辺シリンダ壁に設けた少なくとも1つのポートと、を有する請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記ピストンロッドは、第1ピストンロッド部と第2ピストンロッド部とを含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項8】
前記ピストンロッドの少なくとも1つのピストンロッド部は、前記第1前室から前記シリンダを通って前記第2前室まで延びている、請求項4に記載のエンジン。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1開口及び前記少なくとも1つの第2開口は、前記ピストンロッドの径方向と角度を成す軸をそれぞれ有する穴を含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項10】
前記ピストンは、前記少なくとも1つの第1開口及び前記少なくとも1つの第2開口の両方を塞いで前記通路内
の圧力を昇圧可能とする第3位置まで摺動可能であり、前記第1位置又は前記第2位置において、前記昇圧
を前記シリンダ内
で解放させる、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1開口は、前記ピストンロッドの側壁を貫通して延びる複数の穴を含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項12】
前記ピストンロッドの一端を塞ぐように構成されたプラグをさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項13】
前記通路は、前記ピストンロッドの少なくとも一部を中空にする、請求項1に記載のエンジン。
【請求項14】
前記ピストンは、両面ピストンであり、前記ピストンロッドは、一対のピストンロッド部を含み、各ピストンロッド部は、前記両面ピストンの反対面から延びている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項15】
前記ピストンと前記ピストンロッドが一体的に形成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項16】
前記ピストンと前記ピストンロッドは別々に形成され、
前記ピストンと前記ピストンロッドは、ファスナによって固定される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項17】
吸込室をさらに備え、
前記ピストンロッドは開口端を含み、
前記通路は、前記開口端及び前記少なくとも1つの第1開口を介して前記吸込室から前記第1燃焼室にガスを供給し、前記開口端及び前記少なくとも1つの第2開口を介して前記吸込室から前記第2燃焼室にガスを供給するように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項18】
前記第1燃焼室は、前記ピストンの第1端と前記シリンダの第1端との間に画定され、前記第2燃焼室は、前記ピストンの第2端と前記シリンダの第2端との間に区画される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項19】
単一の空気吸込口をさらに備え、
前記単一の空気吸込口と前記ピストンロッド
は、前記第1燃焼室と前記第2燃焼室の両方に
新鮮な空気を流入させるように構成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項20】
前記シリンダの一方側の第1隔離領域と、シリンダの反対側の第2隔離領域と、をさらに含み、前記第1及び第2隔離領域は、交互にシリンダへ充填する間、非活性となるピストンロッド
部分を隔離するように構成されている、請求項19に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の分野に関し、より詳細には、フリーピストンを有する内燃機関の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が知られている。ピストンエンジンの最も一般的なタイプは、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンである。これらのタイプのエンジンは、比較的多数の部品を含み、適切に機能するために、多数の補助システム、例えば、潤滑システム、冷却システム、吸排気弁制御システムなどを必要とする。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態は、リニアレシプロエンジンに関するものであってもよい。リニアレシプロエンジンは、内燃機関を含んでもよい。内燃機関は、第1端に第1燃焼室を有し、反対側の第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、シリンダ内に摺動可能に取り付けられたピストンと、ピストンを介して両燃焼室内に延びる通路を有するピストンロッドと、を含んでいてもよい。第1燃焼室にガスを選択的に供給するために、第1燃焼室に出入りするように構成されたピストンロッドの第1側の少なくとも1つの第1開口と、第2燃焼室にガスを選択的に供給するために、第2燃焼室に出入りするように構成されたピストンロッドの第2側の少なくとも1つの第2開口とを設けてもよい。ピストンは、第1開口が第1燃焼室の外側にあり、第2開口が第2燃焼室の内側にある第1位置と、第1開口が第1燃焼室の内側にあり、第2開口が第2燃焼室の外側にある第2位置との間で摺動可能であってもよい。
【0004】
いくつかの実施形態によれば、2つの燃焼室のそれぞれに別々のタイミングでガスを供給することができるエンジンを提供してもよい。ガスは、ピストンロッドに設けた通路を流れるように常時供給されていてもよい。一方、第1開口及び第2開口のうちのいずれか一方がシリンダと連通するときにのみ、ガスがシリンダに入るようにしてもよい。第1開口は、1以上の開口を含んでいてもよく、第2開口は、1以上の開口を含んでいてもよい。ガスは、エンジンのストロークの様々な段階において、両方の燃焼室に適切に供給するために、ピストンロッドを流動してもよい。
【0005】
本発明の例示的な利点及び効果は、特定の実施形態が図示及び例示によって示されている添付図面を参照した以下の説明から明らかになるであろう。本明細書に記載されている例は、本開示のいくつかの例示的な態様に過ぎない。前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものであり、本発明を制限するものではないことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態に係るフリーピストンエンジンの斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る、シリンダの右側の上死点にピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの部分断面斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る
図1のエンジンの断面斜視図である。
【
図4A】本開示の実施形態に係るピストンキットの図である。
【
図4B】本開示の実施形態に係るピストンキットの図である。
【
図4C】本開示の実施形態に係るピストンキットの図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る、シリンダの右側の上死点にピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る、シリンダの右側からシリンダの左側へのストロークの拡張部分にピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る、シリンダの右側からシリンダの左側へのストロークの拡張部分の終わりにピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る、シリンダの左側でガスを圧縮する初期段階で、ピストンがストロークの弾み部分にある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る、
図8に示された圧縮を超えてシリンダの左側で圧縮が続いているときの
図1のエンジンの断面図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る、シリンダの左側でピストンが上死点にある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る、シリンダの左側からシリンダの右側へのストロークの拡張部分にピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る、シリンダの左側からシリンダの右側へのストロークの拡張部分の終わりにピストンがある状態に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る、シリンダの右側でガスを圧縮する初期段階にある、ストロークの弾み部分に於ける
図1のエンジンの断面図である。
【
図14】本開示の実施形態に係る、
図13に示された圧縮を超えてシリンダの右側で圧縮が続いているときの
図1のエンジンの断面図である。
【
図15】本開示の実施形態に係る、ピストンがシリンダの左側の上死点にある状態に於けるエンジンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、内燃機関に関するものである。本開示は、フリーピストンエンジンの例を提供するが、その最も広い意味での本開示の態様は、フリーピストンエンジンに限定されないことに留意すべきである。むしろ、前述の原理は、他の内燃機関にも適用できるものである。
【0008】
本明細書で使用されるように、特に別段の記載がない限り、「又は」という用語は、実現不可能な場合を除き、すべての可能な組み合わせを包含する。例えば、構成要素がA又はBを含むと記載されている場合、特に他に記載されていないか、実現不可能でない限り、構成要素はA、B、又はA及びBを含んでもよい。第2例として、構成要素がA、B、又はCを含むと記載されている場合、特に他に記載されていないか、実現不可能でない限り、構成要素はA、B、又はC、若しくはA及びB、A及びC、又はB及びC、若しくはA、B及びCを含んでもよい。
【0009】
本開示に係る内燃機関は、エンジンブロックを含んでもよい。「エンジンブロック」という用語は、「シリンダブロック」という用語と同義にも使用され、ピストンを収容する少なくとも1つのシリンダを含む統合された構造体を含んでもよい。フリーピストンエンジンブロックの場合、エンジンブロックは、単一のシリンダを含んでもよいし、複数のシリンダを含んでもよい。
【0010】
本開示に係るシリンダは、エンジンブロック内の少なくとも1つの燃焼室を構成してもよい。本開示に係るいくつかの内燃機関では、燃焼室は、エンジンブロック内のシリンダの片側に配置されてもよい。本開示に係るいくつかの内燃機関では、エンジンブロック内のシリンダの両側に1つずつ2つの燃焼室を含んでもよい。
【0011】
本開示の実施形態はさらに、シリンダ内にピストンを含んでもよい。フリーピストンエンジンで使用される本開示のいくつかの実施形態によれば、ピストンは、反対側の2つのヘッドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ピストンは、シリンダ内に「摺動可能に取り付けられている」と考えてもよい。これは、ピストンが、シリンダの一方の側から他方の側へと、シリンダ内の複数の位置を摺動することができることを意味する。本開示では、ピストンの例を説明しているが、広い意味で本発明は、特定のピストンの構成又は構造に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本開示に係るフリーピストンエンジン10の例示的な実施形態を示す。本明細書で単にエンジンと呼ばれることもあるフリーピストンエンジン10は、内燃機関の一例である。フリーピストンエンジン10は、エンジンブロック8を含む。少なくとも1つの燃焼室を画定するシリンダ12が、エンジンブロック8に含まれ、中心となる長手方向の軸Aを有し、
図2に示すように、シリンダ12に取り付けた両面ピストン50を有していてもよい。ピストン50は、シリンダの第1端からシリンダの反対側の第2端まで第1ストロークで移動し、シリンダの第2端からシリンダの第1端まで戻る第2ストロークで移動するように構成してもよい。
図2は、
図1のエンジンの部分断面斜視図を示す切断図である。
図3は、ピストン50の断面図を含む断面斜視図である。
図5から
図10は、ピストン50のシリンダの第1端から第2端への例示的な移動を示す図である。少なくとも1つのピストンロッド部は、ピストンロッドに接続されていてもよく、少なくとも1つの燃焼室内の位置からシリンダの外部の領域まで延びていてもよい。本明細書では、「ピストンロッド部」という用語は、ピストンから延びるロッド又はシャフトの任意の部分を含む。いくつかの実施形態では、ピストンロッド部は、ピストンを構成する一体構造の一部であってもよく、他の構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、ピストンロッド部は、ピストンの1つの面のみから延びるピストンロッドの一部分であってもよい。
【0013】
一例として、
図2及び
図3に示すように、ピストンロッド40は、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43を含んでもよい。第1ピストンロッド部42は、ピストン50の一方の面から延びていてもよい。第1ピストンロッド部42は、少なくとも1つの燃焼室内の位置から、シリンダの外部の領域65まで延びてもよい。同様に、第2ピストンロッド部43は、ピストン50の反対側の面から、シリンダ12の外部の別の領域67まで延びてもよい。ピストンキットは、第1ピストンロッド部42、第2ピストンロッド部43、及びピストン50を含んでもよい。ピストンロッド部42及び43は、一体化されてもよく、それぞれがピストン50の反対側すなわち反対面から延びる、完全に別個の構造であってもよい。例えば、ピストンキット56は、単一材料から形成されてもよい。ピストンロッド40は、ピストン50と一体化されていてもよい。いくつかの実施形態では、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43は、ピストン50から分離しているが、一体構造であってもよい。
【0014】
シリンダ12は、第1燃焼室71及び第2燃焼室73(
図7参照)を含んでもよい。ピストン50は、軸Aに沿って摺動するように構成してもよく、シリンダ12内の様々な位置に、第1燃焼室71を空気供給源と接続する流体通路、又は第2燃焼室73を空気供給源と接続する流体通路があってもよい。
【0015】
次に、エンジン10の側断面図を示す
図5を参照する。シリンダ12の外部の領域(例えば、領域65及び67)は、シリンダの外部の1以上のガスの供給源からシリンダの両端部の各燃焼室に空気などのガスを供給するように構成された空間であるシリンダの各端部の前室を含んでもよい。例えば、
図5には、第1前室30と第2前室31が示されている。第1前室30は、シリンダ12の外部、すなわち第1燃焼室71の外部にあり、第2前室31は、シリンダ12の外部、すなわち第2燃焼室73の外部にある。前室は、エンジンブロック8を形成する構造体の一部に含まれてもよいし、エンジンブロック8に接続された別の構造体によって形成されてもよい。前室は、ガスを供給する吸込マニホールド(図示せず)に接続されてもよい。ピストンロッド40の一部であってもよい通路46は、第1前室30から第1燃焼室71を含むシリンダ12にガスを供給するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、通路46は、第2前室31から、第2燃焼室73を含むシリンダ12にガスを供給するように構成してもよい。
【0016】
シリンダ12は、周辺シリンダ壁13と、周辺シリンダ壁13に設けた排気ポート18とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、排気ポート18は、単一のポートで構成してもよい。排気ポート18は、燃焼室からの排気ガス又は他のガスを受け取り、排気後処理のためにガスをシリンダから遠ざけるように構成された排気マニホールドに接続されてもよい。上述した方法では、例えば、ピストンロッドの通路は、シリンダの外側の場所から燃焼室にガスを導入するように構成してもよい。またガスは、排気ポート18などを介してシリンダから排出してもよい。実施形態において、シリンダ12の外部の領域65及び67は、その領域がシリンダヘッド14、15と直接接触しているか否かに拘わらず、単にシリンダ12とは反対側の任意の領域を指してもよい。いくつかの実施形態では、シリンダの端ではなく、シリンダと並んで配置されたマニホールドなどからガスを導入するために、他のポートを設けてもよい。このように、一般的な意味では、シリンダの外側の位置は、例えば、シリンダの端であっても、シリンダと並んでいても、両方の組み合わせであってもよい。
【0017】
本開示の実施形態によれば、ピストンロッドは、少なくとも1つの燃焼室とシリンダの外部の領域との間でガスを流動させるように構成された通路を含むようにしてもよい。本明細書で使用される場合、「通路」という用語は、ガスを流動させることができる任意の構造又は空隙によって定義することができる。それは、例えば、ピストンロッド部の少なくとも一部の中に完全に又は部分的に含まれるチャネル又は導管を含んでもよい。
【0018】
例えば、本開示に係るエンジンのいくつかの例示的な実施形態では、ピストンロッド内の通路は、ピストンロッド部42及び43を含み、ピストンロッド40の少なくとも一部は中空としてもよい。いくつかの実施形態では、通路は、ピストン50を完全に貫通してもよい。ピストンロッドの通路と流体連通する可能性のある1つ又はそれぞれのピストンロッド部に開口を形成することにより、流体が開口を介して通路に出入りすることを可能にしてもよい。「流体」には、空気などのガスを含んでもよい。
図2に示すように、第1ピストンロッド部42は、開口45を含んでもよい。開口45は、ピストン50の第1ピストンロッド部42の反対端に配置してもよく、開口端であってもよい。また、ピストンロッド部43は、開口47(
図3参照)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、開口47は閉塞されてもよい。例えば、ピストンロッド部43は、ピストン50の反対側のピストンロッド部43の開口端に螺合されたプラグ49を含んでもよい。
【0019】
図4Aは、ピストンキット56の断面図である。ピストンキット56は、ピストン50などの1つのピストンと、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43などの2つのピストンロッド部を有するピストンロッド40とを含んでもよい。ピストンキット56は、ピストン50を通って両方の燃焼室71及び73に延びる通路46を含んでもよい。すなわち、ピストンキット56は、ピストン50を通って延び、さらにピストン50の第1面を超えて延び、第1面とは反対側のピストン50の第2面を超えて延びる通路を含んでもよい。さらに、ピストンキット56は、プラグ49を含んでもよい。プラグ49は、ピストンロッド40の一端を閉塞するように構成してもよい。例えば、
図4Aは、プラグ49が第2ピストンロッド部43のねじ山に螺合されて開口47を閉塞している様子を示す。プラグ49は、開口47を密閉してもよい。したがって、開口45を介してピストンロッド40に導入された空気は、第1開口44又は第2開口48のいずれかを介してピストンロッド40から強制的に排出されるようにしてもよい。第1開口44、第2開口48、及び開口45は、通路46を介して流体連通してもよい。
【0020】
図4Bは、ピストンキット56の別の図を示す。ピストンキット56の構成要素は互いに固定されてもよい。ピストン50及びピストンロッド40は別個に形成し、ファスナによって固定してもよい。例えば、第1ピストンロッド部42、ピストン50、及び第2ピストンロッド部43を互いに固定するネジ59を設けてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、第1開口44及び第2開口48は、それぞれピストンロッド40の軸方向位置に整列した一連の穴であってもよい。例えば、
図4Bに示すように、第2ピストンロッド部43の第2開口48bは、軸Aに垂直な平面XYに位置する穴であってもよい。穴は、ガスが通路46とピストンロッド40の外部の領域との間を連通するように、第2ピストンロッド部43の壁を完全に貫通して延びていてもよい。
【0021】
図4Cは、第2ピストンロッド部43の平面XYでの断面図である。いくつかの実施形態によれば、穴は、ピストンロッド40の半径方向に対して角度を形成してもよい。例えば、第2開口48bの穴の軸は、ピストンロッド40の半径方向と角度θを形成してもよい。穴の側壁は、ピストンロッド40の半径方向に対して角度を形成する軸と平行な方向に延びてもよい。第2開口48bの穴のうちの他の穴の軸は、ピストンロッド40の半径方向に対して同じ角度を形成してもよいし、異なる角度を形成してもよい。いくつかの実施形態において、角度θは、45度以下であってもよい。いくつかの実施形態では、角度θは、5から25度の範囲内であってもよい。角度のついた側壁を有する開口は、ピストンロッド40を通り、第2開口48bを通って移動するガス流に旋回を付与又は促進するのに有用である。いくつかの実施形態では、ピストンロッド40内に旋回羽根を組み込んでもよい。第2開口48bには、円形の穴に加えて、様々な他の形状を採用してもよい。
【0022】
図3を参照して例示すると、各ピストンロッド部42、43は、シリンダ12の内部と、領域65又は67などのシリンダ12の外部の領域との間でガスを流動させるように構成された導管の少なくとも一部を形成する空間53、55(例えば、ピストンロッド部42、43の中空化された内部)をそれぞれ含んでもよい。また、ピストン50は、シリンダ12の内部の領域と外部の領域との間でガスを流動させるように構成された導管の一部を形成する空間54を含んでもよい。中空化された領域は、例えば、ピストンロッド部又はピストンの中心を貫通する穴であってもよい。空間53、54及び55は、連続していてもよい。通路46は、空間53、54及び55を含んでもよい。
【0023】
図5に示すように、第1燃焼室71は、第1ヘッド14に対向するピストン50の側面と、シリンダ12の第1ヘッド14との間の領域によって画定してもよい。一方、第2燃焼室73は、シリンダ12の第2ヘッド15に対向するピストン50の反対面と、第2ヘッド15との間の領域によって画定してもよい。同様に、
図10に示すように、第2燃焼室73は、シリンダ12の第2ヘッド15に対向するピストン50の側面と、第2ヘッド15との間の領域によって画定してもよい。一方、第1燃焼室71は、シリンダ12の第1ヘッド14に対向するピストン50の側面と、第1ヘッド14との間の領域によって画定してもよい。例えば、シリンダ12のそれぞれの端の上死点位置での燃焼室をクリアランス容積として定義してもよい。同様に、シリンダの反対側の燃焼室を、シリンダ12の残りの開放容積と定義してもよい。勿論、各燃焼室は、ピストンの両側に掃引容積を含み、ピストンがシリンダの一端から反対端まで移動する際に圧縮される可変領域である。掃引容積は、シリンダ12内でのピストン50の往復運動の少なくとも一部の間にピストン50によって変位される容積として定義してもよい。シリンダの総容積は、掃引容積にクリアランス容積を加えたものであってもよい。
【0024】
ピストンロッド40は、第1側にある第1開口44などの少なくとも1つの第1開口と、第1側の反対側の第2側にある第2開口48などの少なくとも1つの第2開口とを含んでもよい。例示的な一実施形態では、例えば、
図5に示すように、第1開口44は、ピストンロッド40の1以上のポートを含んでもよい。第1開口44は、通路46を介してシリンダ12内にガスを供給するための吸込口として機能するように構成してもよい。
図5に示す例示的な実施形態では、複数の円形の穴を含む第1開口44が示されているが、様々な形状及び配置を使用してもよい。例えば、第1開口44は、細長いスロット、溝、角度のついた側壁を有する開口などを含んでもよい。上述したように、
図4Bに示す例示的な第2ピストンロッド部43の断面図である
図4Cは、角度のついた側壁を有する複数の穴を含む第2開口48bを示す。角度の付いた側壁の場合、開口の軸は、ピストンロッド40の半径方向に対して角度がついていてもよい。例えば、
図4Cに示すように、第2開口48bの孔の軸は、第2ピストンロッド部43の半径方向の法線に対して0よりも大きい角度を形成してもよい。角度のついた側壁を含む開口は、シリンダ12に入る流体の流れを旋回させるのに有用であり、流れの特性に影響を与えることができる。第1開口44及び第2開口48も同様に形成してもよい。
【0025】
ピストンロッド40の壁厚は、軸Aに沿って変化させてもよい。例えば、
図5に示すように、ピストンロッド40は、第1開口44又は第2開口48の領域でより厚い側壁を有してもよい。ピストンロッド40の他の部分と比較して開口の領域で厚い側壁は、開口又はその近傍の応力集中を緩和するのに有利な場合がある。さらに、厚い側壁は、実質的に重量を増加させることなく、ピストンロッド40の疲労強度を改善することができる。
【0026】
ピストンロッド40は、ピストン50と共に、シリンダ12内で往復直線運動するように構成してもよい。ピストン50は、複数の位置を通過してシリンダ12内を摺動するように構成してもよい。ピストンロッド40の往復運動により、第1開口44及び第2開口48は、流体をシリンダ12の外部からシリンダ12の内部に選択的に流動させてもよい。第1開口44は、第1燃焼室71にガスを選択的に流動させ、第1燃焼室71に出入りするように構成されるように、ピストンロッド40に配置してもよい。同様に、第2開口48は、第2開口48が第2燃焼室73に出入りしてガスを第2燃焼室73に選択的に流動させる構成となるように、ピストンロッド40に配置してもよい。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ピストンの摺動により、ガスをシリンダ12内に導入することができる一方、ピストン50の反対側にあるガスが混合するのを防止することができる。例えば、ピストン50に取り囲むピストンリングにより、ピストン50を通過する圧縮ガスの漏洩を防止するようにしてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、エンジンブロックの各側のシリンダヘッドは、(例えば、接続されているか、あるいは一体的に形成される)吸気マニホールド(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、一方のシリンダヘッドのみが吸気マニホールドを含んでもよい。通路46は、ピストン50が第1位置にあるときに、シリンダ12の第1端において、第1燃焼室71と吸気マニホールドとの間でガスを流動させるように構成してもよい。さらに、通路46は、ピストン50が第2位置にあるとき、第2燃焼室73と吸気マニホールドとの間でガスを流動させるように構成してもよい。したがって、例えば、
図5を参照すると、領域65からのガスは、第2開口48がシリンダヘッド14を連なるようにしてシリンダ12に入ってもよい。
図10を参照すると、領域65からのガスは、第1開口44がシリンダヘッド14に連なるようにしてシリンダ12に入ってもよい。
【0029】
本開示の実施形態に係るシリンダは、両端が閉塞されていてもよい。例えば、エンジン10のシリンダ12は、複数のファスナによってシリンダ12に接続されるシリンダヘッド14及び15によって、その両端が閉塞されていてもよい。なお、本明細書では、「閉塞される」という用語は、完全に閉塞されていることを必要としない。例えば、シリンダヘッドには、ピストンロッド40が通過する開口が設けられていても、本開示の意味では、シリンダヘッドは「閉塞される」とみなされる。
【0030】
いくつかの実施形態では、シリンダ12の周辺部分に冷却フィン(図示せず)を設けてもよい。エンジン10の代替構成は、シリンダ壁の内部に形成された水通路、又は水冷のためにシリンダ壁の少なくとも一部を被覆するなど、シリンダの冷却を補助する他の外部又は内部の特徴を含んでもよく、シリンダの流体冷却を促進するためにシリンダ周壁の外側に沿って配置された冷却フィン又は他の伝導性又は対流性の熱伝達を促進する特徴の他の構成を含んでもよい。エンジンブロック8は、シリンダ12の周辺側壁に冷却水を循環させるために使用される流体通路21を含んでもよい。流体通路21は、流体ポート5(
図1参照)と連通してもよい。エンジンブロック8は、シリンダヘッド14及び15に冷却水を循環させるために使用される流体通路22をさらに含んでもよい。流体通路22は、流体ポート6と連通してもよい。流体通路22内の冷却水の温度は、流体通路21の温度より高くてもよい。
【0031】
本開示の例示的な実施形態によれば、シリンダ12の周壁13は、シリンダ12の両端間に少なくとも1つの排気ポートを含んでもよい。例示に過ぎないが、シリンダ12は、第1シリンダヘッド14と第2シリンダヘッド15との間のシリンダ12の周側壁に排気ポート18を含んでいてもよく、第1及び第2シリンダヘッド14、15は、シリンダの端に配置される。
図5から
図14に示す例示的な実施形態では、複数の分散した排気ポート18を、シリンダの両端間のシリンダ12の中間点又はそのほぼ近傍で、シリンダ12の周方向に間隔を置いて配置してもよい。排気ポート18は、シリンダからガスを排気する機能を発揮するように、任意の適切なサイズ、形状、及び分布としてもよい。排気ポートの1以上は、例えば、図示するように、シリンダ周壁の軸方向中央領域に配置してもよい。図示する例示的な実施形態では、排気ポート18がシリンダ12の両端の中間に位置するように対称的な構成とされているが、代替的な実施形態では、シリンダヘッド14と15の間の正確な中間点以外の位置でシリンダ周壁と交差する1以上の半径方向の面に排気ポートを配置してもよい。
【0032】
本開示のいくつかの例示的な実施形態によれば、1以上の排気ポート18は、ピストン50が第2燃焼室側にあるとき、第1燃焼室とシリンダの外部との間でガスを流動させるように構成してもよく、ピストンが1以上の排気ポート18の第1燃焼室側にあるときに、第2燃焼室とシリンダの外部との間でガスを流動させるように構成してもよい。例示に過ぎないが、これは、
図8に示すように、ピストン50が1以上の排気ポート18の左側に位置し、ピストン50の右側の燃焼室から1以上の排気ポート18を介してガスを流動させることを可能にする場合に起こる。1以上の排気ポート18は、燃焼室の「外側」の場所へのガスの流れを可能にする。その外側の場所は、図示されるようにシリンダの側面であってもよいし、エンジンに関連する導管19がガスを他の場所に供給してもよい。いくつかの実施形態では、導管19は、排気マニホールド(図示せず)に接続されてもよい。
【0033】
図5を参照すると、吸込マニホールドは、空気などのガスを流動させるための前室を含んでもよく、シリンダ12の反対端で各シリンダヘッド14、15に接続されるか、又は一体的に形成されてもよい。例えば、第1前室30は、シリンダ12の一方側の第1端に形成してもよく、第2前室31は、シリンダ12の反対側の第2端に形成してもよい。前室30及び31のそれぞれは、軸Aの方向に沿って配置した開口28などのピストンロッド開口や、側面開口33などの開口を含んでもよい。側面開口33は、図示されるように、吸込マニホールドの遠位端に配置してもよいし、吸込マニホールドの外周に沿った任意の位置に配置してもよい。
図5に示すように、側面開口33はシールしてもよい。さらに、第1前室30及び第2前室31はそれぞれ、ブッシュ41を含んでもよい。ブッシュ41は、第1及び第2ピストンロッド部42、43が各開口28に摺動して出入りすることを可能にしながら、第1及び第2ピストンロッド部42、43の端を整列させ、支持し、案内し、(例えば、専用のシールによって)密封するために設けてもよい。いくつかの実施形態では、側面開口33は、吸入空気が入るように開口していてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、吸入空気がエンジン10に流入することを可能にするために、吸入室32を設けてもよい。例えば、
図5に示すように、吸入室32は、第1前室30に隣接して配置してもよい。通路46は、吸入室32からシリンダ12にガスを供給するように構成してもよい。ガスは、
図5に示すように、ピストン50の第1位置において、吸込室32から第2燃焼室73に供給してもよく、
図10に示すように、ピストン50の第2位置において、吸込室32から第1燃焼室71に供給してもよい。吸込室32は、吸込開口29を含んでもよい。吸込開口29は、空気などの吸込ガスを軸Aに沿った方向で吸込マニホールドに導くように構成してもよく、吸込開口29は、第1ピストンロッド部42の開口45をガスがほぼ通路46に導かれるように構成してもよい。
図5に示す例示的な実施形態の吸込マニホールドは、ほぼ円筒形の構成を有するものとして図示されているが、代替的な実施形態では、他の形状の輪郭又は断面を有する1以上の吸込マニホールドを提供してもよく、あるいは、吸込マニホールドを、シリンダ12の各端での各シリンダヘッドの内部に形成される1以上の内部通路として、シリンダヘッド14、15内に少なくとも一部を組み込んでもよい。吸込開口29は、他の構成でも、軸Aに沿って吸込室32に接続されるほぼ円筒形の部材を含んでもよい。
【0035】
エンジン10の一端から吸込室32を介して空気を供給することにより、多くの利点を提供するようにしてもよい。例えば、空気は、軸Aにほぼ平行な方向でエンジン10に流入するように方向付けしてもよく、それはエンジン10の長手方向であってもよい。ピストンロッド40は、ほぼ軸Aに沿って延びるように配置された開口45及び通路46を含んでもよい。これにより、空気は、より少ない乱流でピストンロッド40を流動し、圧力損失が低減される。さらに、淀みの領域が最小化される可能性がある。側面開口33を介して空気を流入させるのと比較して、例えば、吸込室32を設けることにより、流れ特性が改善される。
【0036】
空気は、第1前室30及び第2前室31のうちのいずれかを介してエンジン10に導入してもよい。空気は、(シリンダ12の外部の)領域65又は領域67から、第1燃焼室71又は第2燃焼室73を含むシリンダ12の内部に流れるように構成してもよい。空気は、第1前室30及び第2前室31のうちのいずれかを介して、吸込室32からエンジン10に導入してもよい。例えば、ピストン50が第1位置にあるとき、空気は、吸込開口29を通過させた後、
図5に示すように、領域65、通路46及び第2燃焼室73へと流動させることができる。また、ピストン50が第2位置にあるとき、空気は吸込開口29を通過させた後、領域65、第1燃焼室71、通路46及び領域67へと流動させることができる。
【0037】
エンジン10は、シリンダ12の一方の側に第1隔離領域を含み、シリンダ12の他方の側に第2隔離領域を含んでもよい。第1隔離領域は領域65を含んでもよく、第2隔離領域は領域67を含んでもよい。第1及び第2隔離領域は、交互にシリンダへ充填する間、非活性なピストンロッド部を隔離するように構成してもよい。例えば、ピストン50が第1位置にあるとき、空気は、
図5に示すように、吸込開口29から通路46を通って第2燃焼室73に流動させてもよい。
図5に示す位置では、吸込開口29からの空気は、領域67へと流動しない場合がある。したがって、領域67は、ピストンロッド40の一部を隔離してもよい。ピストンロッド40の非活性部分とは、ガスが燃焼室に到達するために流動しない部分を指してもよい。
【0038】
空気は、単一の空気供給源を介してエンジン10に供給してもよい。空気供給源は、ピストン50が第1位置にあるとき、第1燃焼室71と空気供給源との間でガスが流動するように、ピストンロッド40の通路46に流路接続されてもよい。さらに、通路46は、ピストン50が第2位置にあるときに、第2燃焼室73と空気供給源との間でガスが流動するように構成してもよい。空気は、吸込開口29以外の開口によってエンジン10に導入してもよい。例えば、空気は、1以上の側面開口33を介して導入してもよい。他の開口(吸込開口29など)が閉塞される間、第1前室30の側面開口33から空気を導入してもよい。このようにして、第1前室30からシリンダ12にガスを供給してもよい。また、他の開口が閉塞される間、第2前室31の側面開口33から空気を導入してもよい。側面開口33は、空気が軸Aにほぼ垂直な方向からエンジン10内に流入するように構成してもよい。側面開口33は、ガスを第1開口44又は第2開口48を介してほぼ通路46に導くように構成してもよい。例えば、吸込開口29又は側面開口33を介してエンジン10に空気を導入するように開口を構成することで、パッケージの制約を考慮した設計の柔軟性が得られる場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、吸込開口29を介して空気を導入するとき、エンジン10は、細長い空間にパッケージしてもよい。他の実施形態では、側面開口33から空気を導入する場合、エンジン10は、短くてコンパクトな空間にパッケージしてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1前室30及び第2前室31の両方を、エンジン10に空気を供給するように構成してもよい。例えば、第1前室30に設けた側面開口33と、第2前室31に設けた側面開口33との両方を開放してもよい。また、単一の空気供給源は、第1前室30と第2前室31の両方に空気を供給してもよい。
【0040】
各シリンダヘッド14、15は、シリンダ12の各端の燃焼室で反対側の位置関係にあるシリンダ12の各端の各シリンダヘッドのファイアデッキの火炎面に形成されるか、あるいは火炎面と連続する環状すなわちドーナツ状の凹部36に開口する噴射器34(
図1参照)をさらに含んでもよい。凹部36をドーナツ状とし、燃焼室内のガスのより完全な燃焼を促進するために、噴射器34によって噴射された燃料ガスを旋回流としてもよい。また、各シリンダヘッド14、15は、スパークプラグ38を収容して取り付けるための空洞を含んでもよい。また、各シリンダヘッド14、15は、シリンダ12の反対端に、各シリンダヘッド14、15に支持されて通過する各ピストンロッド部42、43を整列させ、支持し、案内し、(例えば、専用のシールによって)シールするためのブッシュ41を収容して取り付けるための空洞を含んでもよい。これは、ピストンロッド部が、両面ピストンの両面から燃焼室に延びる場合の一例である。ピストンロッドがシリンダの両端で延びることができる任意の開口の特定の詳細に拘わらず、シリンダの少なくとも端まで延びるピストンロッドは、本開示の意味において燃焼室を通って延びると言われる。
【0041】
本開示の実施形態に合致する両面ピストンは、第1ストロークでシリンダの第1端からシリンダの反対側の第2端まで移動し、第2ストロークでシリンダの第2端から第1端に戻るように構成してもよい。この移動長は、例えば
図5から
図14に示されており、
図5は第1ストロークの開始を表し、
図10は第1ストロークの終了を表す。これは第2ストロークの開始でもあり得る。
図6から
図9は例示的な中間位置を表す。
図10は、第2ストロークの開始を表してもよく、
図14は、第2ストロークの終了を表してもよい。
図10から
図12は、いくつかの例示的な中間位置を表す。
【0042】
ピストン50は、シリンダ12全体の複数の位置の間で摺動可能であってもよい。例えば、ピストン50は、第1位置と第2位置の間を摺動可能であってもよい。第1位置は、第1開口44がシリンダ12の外側にあり、第2開口48がシリンダ12の内側にある位置であってもよい。第1位置では、第2開口48は、シリンダ12の第2燃焼室の内部にあってもよい。第2位置は、第1開口44がシリンダ12の内側にあり、第2開口48がシリンダ12の外側にある位置であってもよい。第2位置では、第1開口44がシリンダ12の第1燃焼室の内側にあってもよい。第1位置は、エンジンの第1ストロークの開始に対応していてもよく、第2位置は、第1ストロークの終了に対応していてもよい。
【0043】
本開示の様々な例示的な実施形態によれば、ピストンは、ガス膨張圧力下で移動する各ストロークの膨張ストローク部分と、膨張ストローク部分に続くストロークの残りの部分の各ストロークの弾みストローク部分とを可能にするために、シリンダに合わせて形成してもよい。ピストンの第1及び第2各ストロークの膨張ストローク部分は、ピストンが燃焼膨張圧の下で直接移動するときの移動部分である。例えば、ストロークの膨張部分は、シリンダの各端に於けるピストンの燃焼位置から、燃焼ガス(空気及び燃料を含む)の点火が発生したばかりの燃焼室とシリンダの外部の領域との間で排気ガスが交換される点までの部分として定義してもよい。いくつかの実施形態では、膨張ストローク部分の終了は、ピストンが排気ポートを露出させ始める位置と一致していてもよい。
【0044】
各ストローク中のピストンの燃焼位置では、シリンダヘッド14、15によって閉鎖されるように、ピストンの各反対面とシリンダの各端との間にクリアランス容積が残されていてもよい。ピストンが燃焼位置に到達する前に燃焼室に導入された燃焼ガスは、ピストンの面とシリンダヘッドのファイアデッキとの間のピストン側に残ったクリアランス容積に圧縮されてもよい。クリアランス容積内の圧縮ガスは、ガス圧によってピストン50が各シリンダヘッド14、15の1つに接触するのを妨げるような小さな容積に圧縮されてもよい。いくつかの実施形態では、圧縮ガスは燃料/空気混合物を含んでもよく、火花、又は少なくとも一部が燃焼ガスの圧縮に起因する自己点火のいずれかによって点火されてもよい。
【0045】
燃焼位置は、シリンダ12での燃焼現象の開始に対応する軸Aに沿った点であってもよい。また、燃焼位置は、燃焼室内のガスの所定の圧縮比に到達した点であってもよい。例えば、燃焼位置は、燃焼室の圧縮比が10:1に到達した点であってもよい。スパークプラグ38を作動させることにより、燃焼位置で燃焼を開始してもよい。燃焼位置は、ピストン50が方向転換する点であってもよい。また燃焼位置は、ピストン50のゼロ速度位置であってもよい。いくつかの実施形態では、エンジン10は、燃焼が開始された瞬間にピストン50がゼロ速度まで減速するように構成してもよい。燃焼位置は、上述の第1位置に対応してもよいし、エンジン10の第1ストロークの開始に対応してもよい。いくつかの実施形態では、燃焼位置は固定位置であってもよい。しかしながら、燃焼位置は、例えば、スパークプラグ38が作動したとき、又は自動点火が発生するように構成されたときに決定される可変位置であってもよい。
【0046】
各ストロークの膨張ストローク部分は、圧縮された燃焼ガスの点火後に、各燃焼室での燃焼による化学エネルギーがピストンの運動エネルギー(例えば、機械的な仕事)に変換されて発生するものである。ピストンの一方側の各ストロークの膨張ストローク部分と同時に、ピストンの反対側の燃焼室とシリンダの反対端にある吸気マニホールドとの間の膨張ストローク部分の少なくとも一部に、排気ポートを介してガスの流れが発生することがある。
【0047】
いくつかの実施形態において、有用な仕事は、例えば、ピストンロッド40の一端を出力部に機械的に結合することによりエンジン10から引き出してもよい。第2ピストンロッド部43は、ピストン50の反対端が往復直線運動を有用な仕事に変換するように構成された装置に接続されてもよい。例えば、リニアアクチュエータが、開口47で第2ピストンロッド部43に結合されてもよい(例えば、
図5参照)。プラグ49は、直線運動を仕事に変換するように構成されたアクチュエータと一体であってもよい。そのようなアクチュエータは、例えば、発電機を含んでもよい。
【0048】
図5に戻って、ピストン50がシリンダ12の右端から左端に移動するストロークのうちの膨張ストローク部分の初期に、ピストン50は第1位置にあってもよい。この第1位置から、ピストン50の左側の燃焼室と、シリンダ12の右側であってもよい吸込室32との間でガスを流動させてもよい。また第1位置から、ピストン50の左側の燃焼室と、1以上の排気ポート18を介してシリンダ12の外部につながる導管19との間で、ガスを流動させてもよい。ピストン50の左側の燃焼室と導管19との間のガスの連通は、ピストン50の左面が1以上の排気ポート18を越えて移動し、排気弁として機能し、左側の燃焼室と1以上の排気ポート18との間の連通を遮断するまで継続させてもよい。さらに、ピストン50が1以上の排気ポート18を閉鎖する前に、ピストンの左面に最も近い第2開口48が左の燃焼室の外側に移動することにより、ピストンロッド40の通路46を介した吸込室32と左燃焼室との間のガスの連通が遮断されてもよい。このように、ピストンロッド40は、シリンダ12の燃焼室でのガスの吸気段階が排気段階の前に終了するように構成されてもよい。ピストン50の近位面から第2開口48の近位端までの長さは、第2開口48とシリンダ12の内部との間の流体連通が、排気ポート18とシリンダ12の内部との間の流体連通の前に停止するように設定されてもよい。例えば、ピストン50の左面から第2開口48の右端までの長さは、膨張段階でのピストンの移動長よりも大きくなるように設定してもよい。ピストン50の左面から第2開口48の右端までの長さは、膨張段階におけるピストン移動長よりも、少なくともピストン50の長さの4分の1以上大きくてもよい。長さは、例えば、後述するように、通路46内の圧力上昇を抑制するように設定してもよい。
【0049】
図6に示すように、ピストン50は、より離れた位置に移動してもよい。
図6に示す位置では、第2開口48はもはやシリンダ12の内部にはなく、ピストンロッド40の通路46と第2開口48を介したシリンダ12の内部との間の流体連通は停止している。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、ピストン50(軸方向A)の長さ、シリンダ12の長さ、排気ポート18の位置、及び第1及び第2ピストンロッド部42、43での第1及び第2開口44、48の位置は、ピストン50が第1燃焼室で燃焼段階にあるとき、以下のように配置してもよい。ピストン50は、排気ポート18が第1燃焼室と連通するのを遮断し、第1ピストンロッド部42の第1開口44が第1燃焼室の外側にあり、同時に排気ポート18が第2燃焼室と流体連通し、第2ピストンロッド部43の第2開口48が第2燃焼室内にあるように配置してもよい。これは、様々な代替構造によって達成される。図のみを参照して例示すると、ピストン50の長さ、シリンダ12の長さ、排気ポート18の位置、及びピストン50の反対面から延びる各第1及び第2ピストンロッド部42、43の開口44、48の位置は、ピストン50が一方側の第1燃焼室で燃焼段階にあるとき、排気ポート18を第1燃焼室との連通から遮断するように配置してもよい。ピストン50の一方側の第1開口44は、第1燃焼室の外側に残り、ピストン50の一方側の吸込室32と第1燃焼室との間のガスの連通を阻止する。
【0051】
同時に、排気ポート18は、ピストン50の反対側の第2燃焼室と流体連通している。第2ピストンロッド部43の第2開口48は、第2燃焼室内に位置していてもよい。同様に、ピストン50が反対側の第2燃焼室内の別の燃焼段階にあるとき、ピストン50は、排気ポート18が第2燃焼室と流体連通するのを遮断する。ピストン50の第2側の第2開口48は、第2燃焼室の外側に残り、ピストン50の第2側の吸込室32と第2燃焼室との間のガスの連通を阻止する。同時に、排気ポート18は、ピストン50の第1側の第1燃焼室と流体連通する。第1ピストンロッド部42の第1開口44は、第1燃焼室内に位置してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、ピストン50の長さ、シリンダ12の長さ、排気ポート18の位置、及び第1及び第2ピストンロッド部42、43の第1及び第2開口44、48の位置は、ピストン50が第1ストロークを移動し続けているときに、第1開口44がシリンダ12に入る前に、(排気段階の開始と同時に)燃焼段階が終了するように配置してもよい。
図7は、ピストン50の右側の燃焼が終了し、排気段階が開始される位置を図示する。ピストン50の右側で燃焼が終了して排気が開始される正確な位置は、ピストン50の右面が排気ポート18の右端に到達する位置に対応していてもよい。この位置では、第1開口44はシリンダ12の外側にある。
【0053】
膨張ストローク部分(燃焼段階とも呼ばれる)に続いて、ピストン50は、ストロークの残りの部分のための弾みストローク部分で動き続けてもよい。各ストロークの弾みストローク部分は、膨張ストローク部分に続くストロークの残りの部分を含む。本開示の実施形態によれば、ピストン50の第2燃焼室側の第2ストロークの弾みストローク部分のほぼ全部が、第1燃焼室内のガスの圧縮と一致している。すなわち、一方の燃焼室でのストロークの膨張部分に続く弾みを、他方の燃焼室でのガスの圧縮に使用してもよい。これにより、一方の燃焼室での膨張の終わりが、反対の燃焼室での燃焼位置とは異なる位置に一致するエンジン構造によって可能になるかもしれない。このようなエンジン設計は、ストロークの膨張部分に続く、さらなるピストン移動を可能にするかもしれない。いくつかの実施形態では、ストロークの弾み部分の間のさらなるピストン移動は、少なくともピストンの幅であってもよい。ピストンの「幅」は、軸Aの方向におけるピストンの長さと同義であってもよい。いくつかの実施形態では、さらなるピストン移動は、ピストンの幅の複数倍であってもよい。他の実施形態では、さらなるピストン移動量は、ピストンの幅の何分の1、例えば、ピストンの幅の少なくとも半分であってもよい。さらに他の実施形態では、さらなる移動は、ピストンの幅の少なくとも4分の1であってもよい。排気ポート18の少なくとも1つを超えるピストン50のさらなる移動は、ピストンオーバーシュートと呼ばれることがある。
【0054】
各ストロークの弾みストローク部分では、燃焼ガスが着火したばかりの燃焼室と、シリンダ12の外部の領域との間でガス交換してもよい。ガス交換は、シリンダ12の周壁13に形成された排気ポートを介して行ってもよい。ガス交換は、ピストンに接続され、少なくとも1つの燃焼室内の位置からシリンダの外部の領域まで延びるピストンロッド部の通路を介して、シリンダ12内に空気を導入することにより補助してもよい。
図5から
図10を参照して一例を挙げると、
図5のようにシリンダ12内のピストン50の右端の位置から、
図10のようにシリンダ12内のピストン50の左端の位置までの第1ストロークの間でのピストン50及びピストンロッド部42、43の位置を示す。
図10から
図14は、
図10のようにシリンダ12内のピストン50の左端の位置から、
図14のようにシリンダ12内のピストン50の右端の位置までの第2ストロークの間でのピストン50及びピストンロッド部42、43の位置を示す。シリンダ12内のピストン50の左端の位置及び右端の位置は、燃焼ガスが圧縮され、燃焼段階開始時にガスが点火されたストロークの燃焼位置と呼ばれることがある。
図5のようにピストン50が右端の位置にあり、シリンダ12の右端でピストン50の右面とシリンダヘッド14との間のクリアランス容積に圧縮された燃焼ガスが着火するとき、ピストン50は、
図5から
図10に見られるように、シリンダ12の右端から左端までのストロークのための燃焼位置にある。同様に、ピストン50が
図10の左端の位置にあり、ピストン50の左面とシリンダ12の左端のシリンダヘッド15との間のクリアランス容積に圧縮された燃焼ガスが着火するとき、ピストン50は、
図10から
図14に見られるように、シリンダ12の左端から右端までのストロークのための燃焼位置にある。
【0055】
図5は、ピストンキット56が、シリンダ12の右端からシリンダ12の左端へのストロークとして定義される第1ストロークの開始点にある位置を示す。第1ピストンロッド部42、ピストン50、及び第2ピストンロッド部43を含むピストンキット56の構成要素は、ピストンキット56が一単位で移動するように一体的に接合されてもよい。
図5に示す位置では、ピストン50の右側の第1燃焼室71で燃焼段階が開始されてもよい。一方、ピストン50の反対側では、ピストンロッド40の通路46を含む流路を介してシリンダ12内にガスが導入されてもよい。例えば、ガスは、吸込開口29を介して吸込室32に導入されてもよい。ガスは、空気であってもよい。ガスは、周囲の大気圧に対して加圧されていてもよい。第1ピストンロッド部42は開口45を含む。したがって、吸込室32からのガスは、ピストンロッド40の通路46と流体連通している。さらに、第2ピストンロッド部43の開口47が、プラグ49によって閉塞されることにより(又は、第2前室31が例えば気密的に封止されることにより)、ガスは第2開口48を介してシリンダ12内に押し込まれる。この位置では、ピストン50の左側にあるシリンダ12は、ガスで充填され始める。排気ポート18が開放していているので、一部のガスが漏出する可能性がある。
【0056】
燃焼が始まると、ピストン50は左に移動する。
図6に示すように、ピストン50は、シリンダ12の右端からシリンダ12の左端へのストロークのために、燃焼位置から移動し続ける。
図6は、第2ピストンロッド部43の第2開口48がシリンダヘッド15に到達する位置を示す。これに伴い、シリンダ12へのガスの導入が停止する。
【0057】
図7は、ピストン50の右側の第1燃焼室71での燃焼段階が終了し、ピストン50の左側の第2燃焼室73での圧縮段階が開始される位置を示す。燃焼段階は、ピストン50が右側の排気ポート18を露出し始めるときに終了してもよい。同時に、ピストン50の右側の排気段階が始まってもよい。このように、第1燃焼室71が開放されると、排気段階を開始してもよい。また、ピストン50が左側の排気ポート18を完全に覆ったときに、圧縮段階を開始してもよい。このように、圧縮段階は、第2燃焼室73が密閉状態になったときに開始してもよい。ピストン50の幅は、排気ポート18の幅と等しくてもよい。いくつかの実施形態では、ピストン50の右側での燃焼は、ピストン50の左側で始まる圧縮とほぼ同時に終了してもよいが、本開示はそれには限定されない。いくつかの実施形態では、ピストン50の反対側での燃焼段階及び圧縮段階を異なる時間に開始できるようにしてもよい。例えば、ピストン50の幅は、排気ポート18の幅よりも大きくてもよい。したがって、ピストン50の反対側の燃焼段階中に、圧縮が開始されてもよい。同様に、ピストン50の幅は、排気ポート18の幅よりも小さくてもよい。したがって、ピストン50の反対側での圧縮段階が始まる前に、燃焼段階が終了してもよい。
【0058】
ピストン50が左に移動し続けると、
図8に示すように、ピストン50が中央に位置する排気ポート18を丁度通過した位置に到達する。この時点で、排気ポート18は、ピストン50の右側に完全に露出する。このため、ピストン50の右側の第1燃焼室71が排気ポート18と流体連通し、燃焼による排気ガスが燃焼室から排出される。したがって、ストロークの膨張ストローク部分が終了し、ピストンは、膨張ストローク部分の終了後に残る慣性の結果として、弾みストローク部分でシリンダ12の左端に向かって移動し続ける。
【0059】
図8及び
図9に示すように、ピストン50、ピストン50の右側の第1ピストンロッド部42、及び排気ポート18は、第1ピストンロッド部42の第1開口44がピストン50の右側の第1燃焼室71に入る前、ピストン50がシリンダ12の右端からシリンダ12の左端に向かって移動する際に排気ポート18の全体を通過するように構成してもよい。
図9に示すように、右のピストンロッド部42の第1開口44がピストン50の右側の第1燃焼室71に入り始めて、第1燃焼室71と第1開口44との間のガスの流動を許容するまでに、ピストン50は排気ポート18の左側に完全に移動する。様々な構成要素のこのような相対的なサイズ及び間隔は、新鮮な予備圧縮空気又は他のガスがピストン50の右側の第1ピストンロッド部42を介して第1燃焼室71に導入される前に、第1燃焼室71で生成された排気ガスが排気ポート18から排出され始めることを可能にする。様々な代替的な実施形態において、ピストン50の反対面に対するピストンロッド部42、43を介した開口の正確な配置は、ピストンの各面に最も近い吸込ポートが、ピストンの面が排気ポートの近傍を通過した直後に、ピストンと同じ側の各燃焼室に入るように変化させてもよい。これにより、新鮮な予備圧縮空気又は他のガスが導入される前に、排気ガスが各燃焼室から短時間で排出を開始することが可能となる(例えば、
図9及び
図14参照)。
【0060】
図9に示すように、シリンダ12の右端から左端へのストロークの弾みストローク部分でピストン50が排気ポート18を通過した直後に、ピストン50の右面に最も近い第1ピストンロッド部42の第1開口44の縁が、ピストン50の右側の第1燃焼室71に入り始める。この時点で、新鮮な空気などのガスが第1ピストンロッド部42の第1開口44を介して第1燃焼室71に導入された結果、ピストン50の右側で掃気段階が発生するかもしれない。掃気とは、燃焼生成物を含む排気ガスをシリンダ12から押し出して、次のサイクルのために新鮮な空気を取り込むプロセスを指してもよい。次のサイクルが、ほぼ清浄な空気ではなく排気ガスの混合物で始まらないように、ある程度の掃気が望まれる場合がある。第1開口44は、ピストン50がシリンダ12の右端から左端への第1ストロークの弾みストローク部分にあるときに、ガスの流れが第1燃焼室71とシリンダ12の外部の領域との間で連続的に連通するように構成してもよい。
図10に示す例示的な実施形態では、新鮮な予備圧縮空気が、シリンダ12の右端のシリンダヘッド14の反対側に位置するか、あるいはシリンダヘッド14と一体的に位置する吸込室32から第1燃焼室71に導入されてもよい。同時に、排気ガスは、流入する予備圧縮空気又は他のガスによって第1燃焼室71から排気ポート18を介して強制的に排出されてもよい。
【0061】
本開示のいくつかの態様は、ピストン50がシリンダ12の第1端から第2端に移動する際、ピストン50の第1側の第1ストロークの膨張ストローク部分が、ピストン50の第2側の掃気段階及びガス昇圧段階のうちの少なくとも1つと一致するように、シリンダ12及びピストン50がサイズ調整されることを含んでもよい。第2ストロークについて、同様な一致が起こるようにしてもよい。図を参照して非限定的な例を挙げると、
図9及び
図10に示すように、ピストン50がシリンダの左端に向かって移動し続けると、第1燃焼室71とシリンダ12の外部の領域との間でガスが連続的に流動してもよい。吸込室32から第1燃焼室71に導入された予備圧縮空気又は他のガスの連続的な流れは、シリンダ12の冷却を支援するとともに、第1燃焼室71からの排気ガスを掃気し、第1燃焼室71内のガス圧を高めることができる。同様な一致が、
図13及び
図14の第2ストロークについて示されている。いくつかの実施形態では、シリンダ12の一方側での圧縮と、シリンダ12の他方側での掃気及びガス昇圧とが正確に一致してもよい。他の実施形態では、シリンダ12の一方側での圧縮が、シリンダ12の他方側での掃気及びガス昇圧と部分的に一致していてもよい。
【0062】
本開示のいくつかの態様は、ピストン50がシリンダ12の第1端から第2端に向かって移動するときのピストン50の第1側の第1ストロークの弾みストローク部分が、ピストン50の第2側の燃焼室内の圧縮段階と一致するように、シリンダ12及びピストン50がサイズ調整されることを含むことができる。非限定的な例として、シリンダ12の右端からシリンダ12の左端への第1ストロークの弾みストローク部分と同時に、ピストン50が排気ポート18を越えてシリンダ12の左端に向かって移動した後、ピストン50の左側の圧縮段階で、ピストン50の左側のガスが圧縮される。
図10に示すように、ピストン50が左に行ききったときには、ピストン50の左側の燃焼ガスは、第2燃焼室73の残りのクリアランス容積に圧縮され、第2ストロークを開始するために点火が行われる可能性がある。
【0063】
図5から
図14に非限定的な例として最もよく見られるように、シリンダ12及びピストン50は、シリンダ12の右端から左端への第1ストローク中、又はシリンダ12の左端から右端への第2ストローク中にピストン50が移動する総距離が、いずれかのストロークの膨張ストローク部分中にピストン50が移動する距離よりも実質的に大きくなるようなサイズであってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、シリンダ12及びピストン50は、シリンダ12の一方端から反対端までの各ストローク中にピストン50が移動する総距離が、少なくとも一方面から反対面までのピストン50の長さによってストロークの膨張ストローク部分でピストン50が移動する距離を超えるようなサイズであってもよい。他の例示的な実施形態では、シリンダ12及びピストン50は、各ストロークでピストン50が移動する総距離が、ピストン50の一方面でのガスの圧縮中にピストン50が移動する距離を、少なくともピストン50の長さ分だけ超えるようなサイズであってもよい。図に示す例示的な実施形態における一方面から反対面までのピストン50の長さは、シリンダヘッド14、15の少なくとも1つから中央に位置する排気ポート18までの距離の1/2以下であってもよい。このような構成及びピストンとシリンダの相対的なサイズにより、シリンダの反対端で各燃焼が発生した後に、排気ガスを掃気してシリンダを冷却する目的で、新鮮な予備圧縮空気又は他のガスをシリンダに導入する各方向でのピストンのための全ストローク長さを大幅に大きくすることができる場合がある。
【0064】
図10に示すように、シリンダ12の左端から右端へのストロークの膨張ストローク部分の開始時には、ピストン50の右側の第1燃焼室71とシリンダ12の右側の吸込室32との間、及びピストン50の右側の第1燃焼室71と排気ポート18との間でガスが流動してもよい。第1燃焼室71と排気ポート18との間のガスの流動は、ピストン50の右面が排気ポート18を越えて移動し、排気弁として機能し、第1燃焼室71と排気ポート18との間の連通を遮断するまで継続させてもよい。さらに、ピストン50が排気ポート18を閉鎖する前に、第1ピストンロッド部42の第1開口44が第1燃焼室71の外側に移動し、ピストンロッド40を介した吸入室32と第1燃焼室71との間のガスの連通を遮断してもよい。
【0065】
ピストン50の長さ、シリンダ12の長さ、排気ポート18の位置、及びピストン50の反対面から延びる第1及び第2ピストンロッド部42、43の各開口44、48の位置は、ピストン50の左側の第2燃焼室73でピストン50が燃焼段階にあるとき、ピストン50が排気ポート18と第2燃焼室73の連通を遮断するように配置してもよい。一方、ピストン50の左側の第2開口48は、第2燃焼室73の外側に残り、吸込室32と第2燃焼室73との間のガスの連通が妨げられる。同時に、排気ポート18は、ピストン50の右側の第1燃焼室71と流体連通しており、第1ピストンロッド部42の第1開口44は、第1燃焼室71内に位置している。
【0066】
各ストロークの弾みストローク部分は、膨張ストローク部分に続くストロークの残りの部分を包含してもよい。各ストロークの弾みストローク部分では、燃焼ガスの着火が発生したばかりの燃焼室と、シリンダの外部の領域との間でガスが交換されてもよい。ガスの交換は、シリンダの周壁に形成された排気ポートを介して行われることがある。
図10から
図14は、
図10のピストンの左端の位置から
図14のピストンの右端の位置までの第2ストローク中のピストン50及びピストンロッド部42、43の位置を示す。上述のように、シリンダ12内のピストン50の左端及び右端の位置は、各ストロークの燃焼位置と呼ぶことがある。この位置では、燃焼ガスが圧縮され、燃焼段階の始まりでガスが点火している可能性がある。ピストン50が
図10のように左端の位置にあり、シリンダ12の左端でピストン50の左面とシリンダヘッド15との間のクリアランス容積に圧縮された燃焼ガスが点火しているとき、ピストン50は、
図10から
図14で見て、シリンダ12の左端から右端までのストロークの燃焼位置にある。
【0067】
第2ストロークで燃焼が始まると、ピストン50は右に移動する。
図11に示すように、ピストン50は、シリンダ12の左端から右端までのストロークのために燃焼位置から移動し続ける。
図11は、第1ピストンロッド部42の第1開口44がシリンダヘッド14に到達した位置を示す。これに伴い、シリンダ12へのガスの導入が停止する。
【0068】
図12は、ピストン50の左側の第2燃焼室73における燃焼段階が終了し、ピストン50の右側の第1燃焼室71での圧縮段階が開始される位置を示す。燃焼段階は、ピストン50が左側の排気ポートを露出させ始めるときに終了してもよい。同時に、ピストン50の左側の排気段階が始まってもよい。したがって、第2燃焼室73が開放状態になると、排気段階が開始されてもよい。また、ピストン50が右側の排気ポート18を完全に覆ったときに、圧縮段階が開始されてもよい。したがって、第1燃焼室71が密閉状態になったときに、圧縮段階が開始されてもよい。ピストン50の幅と排気ポート18の幅との比に応じて、ピストン50の左側での燃焼段階の終了とピストン50の右側での圧縮の開始とのタイミングを調整してもよい。
【0069】
ピストンが右に移動し続けると、ピストン50は、
図13に示すように、中央に位置する排気ポート18を通過する位置に到達することがある。この時点で、排気ポート18は、ピストン50の左側に完全に露出する。このように、ピストン50の左側の第2燃焼室73が排気ポート18と流体連通し、第2ストロークの膨張ストローク部分の間にピストン50の左側で発生した燃焼からの排気ガスが第2燃焼室73から排出されてもよい。したがって、第2ストロークの膨張ストローク部分が終了し、ピストンは、膨張ストローク部分の終了後に残った慣性の結果として、弾みストローク部分でシリンダ12の右端に向かって移動し続ける。
【0070】
図13に示すように、ピストン50、ピストン50の左側の第2ピストンロッド部43、及び排気ポート18は、ピストンがシリンダ12の左端から右端に向かって移動する際、第2ピストンロッド部43の第2開口48がピストン50の左側の第2燃焼室73に入る前に、ピストン50が排気ポート18の全てを通過するように構成してもよい。
図13に示すように、ピストン50は、左側のピストンロッド部42の第2開口48がピストン50の左側の第2燃焼室73に入り始めて、第2燃焼室73と第2開口48との間のガスの流れを可能にするときまでに、排気ポート18の右側に完全に移動している。様々な構成要素の相対的なサイズ及び間隔は、新鮮な予備圧縮空気又は他のガスがピストン50の左側の第2ピストンロッド部43を介して第2燃焼室73に導入される前に、第2燃焼室73で生成された排気ガスが排気ポート18から排出され始めることを可能にする。様々な代替的な実施形態において、ピストン50の反対面に対するピストンロッド部42、43を介した開口の正確な配置は、ピストンの面が排気ポートの近辺を通過した直後に、ピストンの各面に最も近い吸込ポートがピストンの同じ側の各燃焼室に入るように変化させてもよい。これにより、新鮮な予備圧縮空気又は他のガスが導入される前に、排気ガスが各燃焼室から排出され始めるようにすることができる。
【0071】
図13に示すように、シリンダ12の左端から右端へのストロークの弾みストローク部分でピストン50が排気ポート18を通過した直後に、ピストン50の左面に最も近い第2ピストンロッド部43の第2開口48の縁が第2燃焼室73に入り始める。このとき、新鮮な空気などのガスが第2ピストンロッド部43の第2開口48を介して第2燃焼室73に導入されることで、ピストン50の左側に掃気段階が発生することがある。第2開口48は、ピストン50がシリンダ12の左端から右端への第2ストロークの弾みストローク部分にあるときに、ガスが第2燃焼室73とシリンダ12の外部の領域との間で連続的に流動し得るように構成してもよい。
図14に示す例示的な実施形態では、新鮮な予備圧縮空気が、吸込室32から第2燃焼室73に導入してもよい。同時に排気ガスは、流入した予備圧縮空気又は他のガスによって第2燃焼室73から排気ポート18を介して強制的に排出してもよい。
【0072】
図13及び
図14に示すように、ピストンがシリンダの右端に向かって移動し続けると、ガスが第2燃焼室73とシリンダの外部の領域との間で連続的に流動する。吸込室32から第2燃焼室73に導入される予備圧縮空気又は他のガスの連続的な流れにより、シリンダ12の冷却だけでなく、第2燃焼室73からの排気ガスの掃気、及び第2燃焼室73内のガスの昇圧が支援される。シリンダの左端から右端への第2ストロークの弾みストローク部分と同時に、ピストン50が排気ポート18を越えてシリンダ12の右端に向かって移動した後、ピストン50の右側の圧縮段階で、ピストン50の右側のガスが圧縮される。
図14に示すように、ピストンが右に移動しきったとき、ピストンの右側の燃焼ガスは、第1燃焼室71の残りのクリアランス容積に圧縮され、点火が行われ、シリンダの右端から左端への別のストロークが開始される。以後、このようにしてさらにストロークを続けることができる。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態によれば、エンジン内の他の特定の構造に拘わらず、シリンダ及び両面ピストンは、第1ストローク中にピストンが移動する総距離が、第1ストロークの膨張ストローク部分中にピストンが移動する距離よりも実質的に大きくなるようなサイズであってもよい。
図5から
図10を参照して例示すると、ピストンの総移動距離は、例えば
図5に図示されるようなシリンダ12の右側の燃焼位置から、例えば
図10に図示されるようなシリンダ12の左側の燃焼位置までで測定されてもよい。この総移動距離は、
図5から
図10の進行において、ピストン50が排気ポート18の少なくとも1つに到達したときに発生するストロークの膨張部分よりも実質的に大きい。いくつかの実施形態では、膨張ストロークの終了は、機械的なバルブの開放、又は何らかの他の方法での膨張の停止など、他の事象によって示してもよい。膨張ストローク部分の終了方法に拘わらず、そのような膨張部分のみの移動よりも総移動距離が実質的に大きい限り、本開示の範囲内であると考えられる。非限定的な例として、ストロークの拡張部分とストロークの非拡張部分との間の差が、ピストンの幅の複数倍、ピストンの幅、ピストンの幅の4分の3以上、ピストンの幅の半分以上、又はピストンの幅の4分の1以上のいずれかである場合、総移動距離は実質的に大きいと考えられる。したがって、例えば、両面ピストンは、一方面から反対面までの軸方向の長さが、第1シリンダヘッド及び第2シリンダヘッドの少なくとも一方から排気ポートまでの距離の1/2以下であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、シリンダ及びピストンは、シリンダの一方端から反対端までの各ストローク中に移動する総距離が、ストロークの膨張ストローク部分中にピストンが移動する距離を、少なくとも一方面から反対面までのピストンの長さだけ超えるような大きさであってもよい。他の例示的な実施形態では、シリンダ及びピストンは、各ストロークでピストンが移動する総距離が、ピストンの一方面でガスが圧縮される間にピストンが移動する距離を、少なくともピストンの長さだけ超えるようなサイズであってもよい。図に示す例示的な実施形態における一方面から反対面までのピストン50の長さは、シリンダヘッド14、15の少なくとも1つから排気ポート18までの距離の1/2以下であってもよい。ピストン及びシリンダの構成及び相対的なサイズは、シリンダの反対端で各燃焼が発生した後に、排気ガスを掃気してシリンダを冷却する目的で新鮮な予備圧縮空気又は他のガスをシリンダに導入することができる間、各方向でのピストンの全ストローク長を著しく大きくできる場合がある。
【0075】
いくつかの実施形態では、シリンダ及びピストンは、膨張段階終了後のピストンのオーバーシュートの量が、圧縮容積の長さよりも実質的に大きくなるように構成してもよい。圧縮容積は、上述したように、シリンダ12のクリアランス容積に対応していてもよい。例えば、ピストン50及びシリンダ12は、ピストン50が弾みストローク部分で移動する長さが、燃焼位置においてピストン50の一方側と最も近いシリンダヘッド14、15との間のクリアランス容積の長さよりも実質的に大きくなるようなサイズであればよい。いくつかの実施形態では、オーバーシュート量は、ピストン50の長さの4分の1以上である。このようにオーバーシュート量を、例えば、ピストン50の長さの少なくとも4分の1となるように設定することは、シリンダ12内で掃気が行われるのに十分な時間を確保するのに有用である。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態によれば、内燃機関は、一対のピストンロッド部と、ディスクを有するピストンとを含む、別部品の組立品で形成されるピストンキットを備えるようにしてもよい。例えば
図4Bに示すように、本開示に係るエンジンの様々な実施形態は、ピストン50などの両面ピストンと、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43などの1以上のピストンロッドとを含んでもよい。ピストンロッド部は、ピストンの中心から延びていてもよい。例えば、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43のそれぞれは、ピストン50の半径方向中心から延びていてもよい。このように、ピストン50、第1ピストンロッド部42、及び第2ピストンロッド部43は、同軸であってもよい。ピストン50が軸Aに沿って直線的に移動し、機械的負荷がアクチュエータに接続される第2ピストンロッド部43を介して伝達されるので、負荷は同じ軸Aに沿って伝達されてもよい。さらに、ピストン50に作用する側方力、すなわち軸Aに垂直な方向に作用する力はない。クランクシャフトに接続され、側方力を経験するピストンを備えた従来のエンジンと比較して、ピストン50は、主な移動方向とは異なる方向に作用する側方力を回避することができる。ピストン50は、側方力を経験しないため、応力が小さくなり、蓄積熱が抑制されることにより、冷却の必要がなくなるかもしれない。いくつかの実施形態では、ピストン50は、側方力が作用しないピストンとみなしてもよい。さらに、ピストンキット56は、軸Aを中心としたほぼ回転対称であってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、ピストンキット56は中央面に対して対称であってもよい。中央面は、ピストン50の軸心で、軸Aに垂直な面であってもよい。
【0077】
エンジン10には、単一の空気供給源を設けてもよい。単一の空気供給源は、吸込室に接続してもよい。例えば、
図5から
図14に示すような実施形態では、吸込室32は、空気供給源に接続される吸込開口29を含む。空気供給源は、エンジン10に設けられる唯一の空気供給源であってもよい。吸込室32は、エンジン10の左側にも設けてもよい。例えば、
図5から
図14に示されたエンジン10の構成が反映されてもよい。空気は、大気圧よりも高い圧力で吸込室32に供給してもよい。このようにして空気を供給すると、コンパクトなデザインを実現できる場合がある。さらに、このような設計は、別々の空気供給源を必要とする設計よりも複雑でないかもしれない。
【0078】
単一の空気供給源を設ける場合、吸込室32は、新鮮な空気が第1燃焼室71及び第2燃焼室73の両方に流入可能な構成としてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、第1前室30及び第2前室31は、隔離領域として構成してもよい。隔離領域は、代替シリンダへの充填中に、非活性なピストンロッド部を隔離するように構成されたシリンダ12の外部の領域であってもよい。例えば、第1前室30を、シリンダ12の一方側で第1隔離領域として機能させ、第2前室31を、シリンダ12の反対側で第2隔離領域として機能させてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、複数の空気供給源を設けてもよい。例えば、吸込室32を設けるのではなく、エンジン10が2つの空気供給源を含み、各空気供給源が第1前室30又は第2前室31の一方に空気を供給するように構成されてもよい。エンジン10は、各側面開口33を介して、第1前室30と連通する第1空気供給源と、第2前室31と連通する第2空気供給源とを含んでもよい。2つの空気供給源は、側面開口33の上流側で接続してもよい。1つの空気供給源を分岐させて複数の空気供給源を形成してもよい。本実施形態では、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43の一方又は双方が、閉塞端を含んでもよい。その場合、第1ピストンロッド部42及び第2ピストンロッド部43に追加の開口を設けてもよい。例えば、第1開口44から離間している第1ピストンロッド部42に、さらなる一連の開口を設けてもよい。さらなる一連の開口は、第1開口がシリンダ12内にあるとき、第1前室30からガスが流動するように構成してもよい。また、第1開口44がシリンダ12内にあるとき、さらなる一連の第1開口は、シリンダ12の外部にあるように構成してもよい。さらなる一連の開口の構造は、第1開口44の構造と同様であってもよい。このような一連の開口は、第2ピストンロッド部43にも同様に設けてもよい。
【0080】
ピストンキット56内のガスは、異なる方向に流動してもよい。いくつかの実施形態では、ピストン組立品内の通路は、ピストンの第1側から第2側に向かう第1方向にガスを流動させ、ピストンの第2側から第1側に向かう第2方向にガスを流動させるように構成してもよい。例えば、通路46をピストンロッド40に設けてもよい。通路46は、ピストン50の一方側の領域67から第2開口48を介してシリンダ12の内部に向かう第1方向へのガスの流れを許容するように構成されている。ピストン50は、第2開口48を介してシリンダ12にガスを供給する際、第1位置、例えばシリンダ12の右側の燃焼位置にあってもよい。また、通路46は、ピストン50の反対側の領域65から第1開口44を介してシリンダ12の内部に向かう第2方向へのガスの流れを許容するように構成されてもよい。ピストン50は、第1開口44を介してシリンダ12にガスを供給する時点では、第2位置、例えばシリンダ12の左側の燃焼位置にあってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、ピストンキット56内のガスの流れは、同じ方向であってもよい。例えば、吸込室32が設けられている場合、ガスは、吸込開口29から通路46及び第2開口48を介してシリンダ12内に流入してもよい(
図5参照)。ピストン50の別の位置では、ガスは、吸込開口29から通路46及び第1開口44を介してシリンダ12内に流入してもよい(
図10参照)。
【0082】
図15は、チャンバ39を含むエンジン10の一実施形態を示す。
図15の実施形態は、チャンバ39によって閉塞してもよいことを除いて、
図5の実施形態と同様であってもよい。第2ピストンロッド部43は、プラグ49なしで設けてもよい。チャンバ39は、第2前室31に取り付けるか、あるいは第2前室31と一体化した構造であってもよい。チャンバ39は、気密性の高い方法で密封してもよい。
図15に示すように、ピストン50が第2位置にあるとき、吸込開口29から空気が導入されてもよい。エンジン10の左側が閉塞されているので、ピストンロッド40に導入された空気は、通路46を通って領域67に移動しても、エンジン10の外側領域には逃げない。代わりに、空気は、第1開口44を介してシリンダ12に押し込まれる。このように、エンジン10は、
図5に示したものと同様の方法で機能する。
【0083】
ピストンロッドは、ピストン組立品が、開口が遮断された位置と、開口の少なくとも1つが開放された位置との間で摺動可能となるように構成してもよい。ピストン50の全移動範囲のうちのいくつかの位置では、第1開口44又は第2開口48のいずれもシリンダ12と流体連通していない位置があってもよい。例えば、
図6、
図7、
図8、
図9、
図11、
図12、
図13は、第1開口44及び第2開口48がまだシリンダ12に入っていない例を示す。圧力増強期間は、例えば、
図6の位置と
図9の位置との間に発生する可能性がある。
図6に示すような第1圧力蓄積位置では、吸込開口29から導入されたガスが通路46と流体連通してもよいが、エンジン10から出られないことがある。したがって、領域65、領域67、及び通路46の内部など、吸込室32と流体連通する領域で圧力がかかり始める可能性がある。
図9に示すような第2圧力上昇位置に到達すると、吸込室32と流体連通する領域の内圧が所定のレベルまで上昇することがある。その後、第1開口44がシリンダ12の内部に露出すると、圧力が解放され、高圧空気がシリンダ12の内部に供給されるかもしれない。高圧空気がシリンダ12内に供給されることで、エンジン10が出力する仕事量が増加する可能性がある。例えば、シリンダ12内に導入された高圧空気は、
図9の実施形態に示すように、ピストン50をシリンダ12の左側に向けてさらに前進させる役割を果たしてもよい。
【0084】
本開示の例示的な実施形態に係るエンジンは、さらなる利点をもたらすことができる。例えば、エンジンは、燃焼用の新鮮な空気を連続的に供給しながら、シリンダからの高温の排気ガスのほぼ連続的な掃気を容易にすることができる。ほぼ連続的に導入される新鮮な予備圧縮空気は、シリンダ内の温度を低下させ、エンジンの効率及びエンジンの耐用年数を向上させることができる。
【0085】
本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された例示的な実施形態に様々な変更及び修正を加えることができる。例えば、エンジン10で生成された燃焼ガスは、ターボチャージャーの駆動に使用してもよい。また、シリンダに導入される圧縮空気は、シリンダの反対端から延びて往復運動するピストンロッド部によって駆動される外部のコンプレッサによって加圧されてもよい。また、シリンダ内に導入されたガスを半径方向に誘導しないように、吸込ポートの角度と出口ポートの角度を変えて、シリンダ内に導入されたガスに旋回効果を付与するなどのバリエーションも考えられる。
【0086】
本開示の前記部分を簡略化するために、要素の様々な組み合わせを一緒に説明する。最も広い意味での本開示の態様は、先に説明した特定の組み合わせに限定されないことを理解されたい。むしろ、本開示に合致し、図に例示されているような本発明の実施形態は、以下に列挙された特徴のうちの1以上を、単独で、又は先に説明した特徴と組み合わせて含むことができる。
【0087】
例えば、リニアレシプロエンジンが提供されてもよい。このエンジンは、その第1端に第1燃焼室を有し、反対側の第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、第1燃焼室の端に配置された第1シリンダヘッドと、第2燃焼室の端に配置された第2シリンダヘッドと、シリンダ内に摺動可能に取り付けられたピストンと、前記第1燃焼室及び前記第2燃焼室を貫通して延びる少なくとも1つのピストンロッド部を含むピストンロッドと、を含んでもよく、前記少なくとも1つのピストンロッド部は、前記ピストンの第1側に位置する少なくとも1つの第1ポートと、前記ピストンの第1側とは反対側の第2側に位置する少なくとも1つの第2ポートとを有する。また、以下の要素を設けてもよい。
前記少なくとも1つのピストンロッド部は、ガスを流動させるように構成されたピストンを通って延びる通路を含み、
前記ピストンロッドは、前記少なくとも1つの第1ポート及び前記少なくとも1つの第2ポートを遮断して前記通路内の圧力上昇を可能にする第1位置に摺動可能であり、
前記ピストンロッドは、前記少なくとも1つの第2ポートが開いて前記第2燃焼室に圧縮空気を放出する第2位置に摺動可能であり、
前記ピストンロッドは、前記少なくとも1つの第1ポートが前記第1燃焼室に圧縮空気を放出するために開口する第3位置に摺動可能である。
【0088】
さらに、例えば、第1端に第1燃焼室を有し、反対側の第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、第1端に近接して第1燃焼室の外部に位置する前室と、シリンダ内に摺動可能に取り付けたピストンと、前記ピストンから前記第1燃焼室を通って前記前室に延び、吸込ポート及びその中にある少なくとも1つの第1側壁開口を有する中空管部分を含む第1ピストンロッド部と、前記ピストンから前記第2燃焼室を通って延び、中空部及びその中にある少なくとも1つの第2側壁開口を有する第2ピストンロッド部と、を備えるリニアレシプロエンジンが提供されてもよい。また、以下の要素を設けてもよい。
前記第1ピストンロッド部が、前記第2ピストンロッド部に流路接続され、
前記少なくとも1つの第1側壁開口及び前記少なくとも1つの第2側壁開口が、第1ストローク部において、前記少なくとも1つの吸込ポートが前記前室に位置し、前記前室から前記第1燃焼室に空気を供給するように配置され、
第2ストローク中、少なくとも1つの吸込ポートが前室に位置し、前室から第2燃焼室に空気を供給し、
前記エンジンは、前記単一の空気吸込に接続されたフレッシュエアポンプをさらに含み、
前記エンジンは、前記前室に圧縮空気を供給するポンプをさらに含み、
前記エンジンは2つの燃焼室を含み、
前記単一空気導吸込と前記ピストンロッドが、前記両燃焼室に新鮮な空気を流入させるように構成されている。
【0089】
さらに、例えば、第1端に第1燃焼室を有し、対向する第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、第1端に近接して第1燃焼室の外部に位置する第1前室と、第2端に近接して第2燃焼室の外部に位置する第2前室と、シリンダ内に摺動可能に取り付けられたピストンと、ピストンから第1燃焼室を通って第1前室に延び、細長の第1通路部及び少なくとも1つの第1ポートを有する第1ピストンロッド部と、ピストンから第2燃焼室を通って第2前室に延び、細長の第2通路部及び少なくとも1つの第2ポートを有する第2ピストンロッド部と、を備えるリニアレシプロエンジンが提供されてもよい。また、以下の要素を設けてもよい。
前記第1通路部が前記第2通路部に接続され、
少なくとも1つの第1ポートが第1前室に配置されているとき、少なくとも1つの第2ポートが第2燃焼室に配置されることにより、第1前室と第2燃焼室との間での流動を可能とし、
前記少なくとも1つの第2ポートが前記第2前室に配置されているとき、前記少なくとも1つの第1ポートが前記第1燃焼室に配置されることにより、前記第2前室と前記第1燃焼室との間での流動を可能とする。
【0090】
さらに例えば、第1端に第1燃焼室を有し、反対側の第2端に第2燃焼室を有するシリンダと、燃焼室の外部にある前室と、シリンダ内に摺動可能に取り付けられたピストンと、ピストンから燃焼室を通って前室内に延びるピストンロッドと、を含む内燃機関が提供されてもよい。また、以下の要素を設けてもよい。
前記ピストンロッドは、
前記ピストンに延びる貫通した開口と、少なくとも1つのポートと、
前記前室に加圧空気を供給するための前記前室内のポートであって、前記ピストンの燃焼ストローク中に、加圧空気が前記ピストンロッドを通って移動し、前記ピストンを冷却することを可能にするためのポートと、
を含む。
【0091】
さらに例えば、第1燃焼室をその第1端に有し、第2燃焼室を反対側の第2端に有し、1以上のサイドポートを有するシリンダと、第1燃焼室の端に位置する第1シリンダヘッドと、第2燃焼室の端に位置する第2シリンダヘッドと、シリンダ内に摺動可能に取り付けられた両面ピストンと、ピストンから第1燃焼室を通って第1加圧可能な前室へと延び、細長の第1通路部及び少なくとも1つの第1ポートを有する第1ピストンロッド部と、ピストンから第2燃焼室を通って加圧可能な第2前室へと延び、細長の第2通路部及び少なくとも1つの第2ポートに流れ接続されている第2ピストンロッド部と、を含むリニアレシプロエンジンが提供されてもよい。また、以下の要素を設けてもよい。
前記少なくとも1つの第1ポート及び前記少なくとも1つの第2ポートが、前記両面ピストンが前記燃焼室内の中心位置に位置し、前記第1前室及び前記第2前室が加圧されているときに、前記第1ピストンロッド部及び前記第2ピストンロッド部に静止空気流状態が存在するように、それぞれ配置されている。