(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】オートバイのフロントスイングアームサスペンション
(51)【国際特許分類】
B62K 25/16 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
B62K25/16
(21)【出願番号】P 2021537731
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2019061008
(87)【国際公開番号】W WO2020136510
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】102018000021073
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】実公昭37-028309(JP,Y1)
【文献】特開平07-081652(JP,A)
【文献】特開2009-083638(JP,A)
【文献】特開昭60-022533(JP,A)
【文献】米国特許第06896276(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/00 - 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイ(1)のステアリングハンドルバー(7)に機械的に接続された、または機械的に接続されるように構成されたステアリングアーム(11)と、
ステアリングアーム(11)に回転可能に接続する第1接続部分(13)と、連結可能な前輪(2)に接続するように構成された第2接続部分(14)と、を有するスイングアーム(12)と、
前記スイングアーム(12)に回転可能に接合された取付脚部(22)を有する衝撃吸収群(20)と、
を備え、
前記第1接続部分(13)は、前記スイングアーム(12)が前記ステアリングアーム(11)に対して移動可能な支点(15)を中心に前記ステアリングアーム(11)に対して回転するように、前記スイングアーム(12)を前記ステアリングアーム(11)に回転可能に接続
し、
前記第1接続部分(13)は、定義されたスライド軸に沿って前記スイングアーム(12)が前記ステアリングアーム(11)に対してスライドするように構成されていることを特徴とする、オートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項2】
前記第1接続部分(13)は、前記移動可能な支点(15)を中心に回転するように前記ステアリングアーム(11)に回転可能に接続されたスイングアーム(12)の第1端部であり、前記第2接続部分(14)は、前記連結可能な前輪(2)の回転ピン(16)を担持している、請求項1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項3】
前記スライド軸は、貫通孔またはブラインドスロットホールによって規定されている、請求項
1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項4】
前記ブラインドスロットホールは、前記スイングアーム(12)の前記第1接続部分(13)の内側に規定されている、請求項
3に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項5】
前記ステアリングアーム(11)は、前記貫通孔または前記ブラインドスロットホールに係合するピンを備える、請求項
4に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項6】
前記ステアリングアーム(11)と前記スイングアーム(12)の第1接続部分(13)との間に作動可能に介在する、
弾性支持手段(19)を備える、請求項
1に記載するオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項7】
前記ステアリングアーム(11)は、チャンバ(31)を有するハウジング(30)を備え、その内部に前記第1接続部分(13)が配置され、前記ハウジング(30)は、前記スイングアーム(12)が貫通する貫通開口部(32)を有し、前記第2接続部分(14)は前記ハウジング(30)の外部に配置される、請求項
1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項8】
前記ハウジング(30)に固定されて前記貫通開口部(32)を閉じる弾性変形可能なキャップ(33)をさらに備える、請求項
7に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項9】
前記弾性変形可能なキャップ(33)は、前記スイングアーム(12)が貫通する貫通孔を有している、請求項
8に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項10】
前記スイングアーム(12)が前記取付脚部(22)に対して回転軸を中心に回転できるように、前記取付脚部(22)が前記スイングアーム(12)に回転可能に接合されており、前記取付脚部(22)は、前記ステアリングアーム(11)に対して移動軸に沿ってのみ移動することができる、請求項
1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項11】
前記ステアリングアーム(11)は内部が中空であり、その中に前記衝撃吸収群(20)を少なくとも部分的に収容している、請求項
1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項12】
前記衝撃吸収群(20)は、スプリング(23)とダンパ(24、25)とを備え、前記スプリング(23)は、前記ステアリングアーム(11)に完全に収容されている、請求項
11に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項13】
前記ダンパは、ステム(24)とシース(25)とを備え、前記ステム(24)は、前記シース(25)の内部でスライドするように適合及び構成され、前記ステアリングアーム(11)に収容されている、請求項
12に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項14】
前記支点(15)が、前記オートバイ用フロントサスペンションの沈み込みに伴って前記ステアリングアーム(11)に対して移動可能な軸(15’)を規定している、請求項
1に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項15】
前記オートバイ用フロントサスペンションがステアリング軸(Z-Z)を有し、前記オートバイ用フロントサスペンションの沈み込みにより、前記支点の前記軸(15’)を通過して前記ステアリング軸(Z-Z)を横切る垂線によって定義される距離(d)が変化する、請求項
14に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載のオートバイ用フロントサスペンション(10)を少なくとも1つ備えるオートバイ(1)。
【請求項17】
前記オートバイ(1)がモペットである、請求項
16に記載のオートバイ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送車両のサスペンションの技術分野に関するもので、特にオートバイのフロントスイングアームサスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートバイの分野では、オートバイのフォアキャリッジにスイングアームサスペンションを使用することが知られている。スイングアームサスペンションは、片側フォークまたは両側フォークのいずれであってもよく、一般に、ステアリングアームとも呼ばれる剛体アームからなり、その上に、前輪のピン上で終端するスイングアームが関節接続されている。片側スイングアーム式サスペンションは、例えば欧州特許2996929B1に記載されている。
【0003】
先行技術のオートバイのスイングアームサスペンションでは、ステアリングアームがオートバイのステアリングハンドルバーに機械的に接続されている。さらに、典型的にはスプリングとダンパからなる衝撃吸収群が、スイングアームに取り付けられている。
【0004】
上述した先行技術のオートバイ用フロントスイングアームサスペンションには、いくつかの欠点がある。
【0005】
第1の欠点は、制動時に過度の沈み込みが発生する可能性があることである。実際、制動時には、減速による車両前部への荷重移動の影響で、衝撃吸収群は圧縮される傾向にあり、したがって、運転者およびその他の浮遊質量(乗客、荷物など)を有する車両の静的重量から生じる場合よりも「沈む」傾向にある。
【0006】
フォアキャリッジの沈み込みは、おそらく圧縮のストロークエンドに達したことと関連しており、直接的な結果として車両の姿勢が大きく変化する。
【0007】
しかしながら、事実、例えば2輪のオートバイを考えると、同じ現象は、より多くの車輪を持つ異なるタイプの車両にも適用され、衝撃吸収群の圧縮段階では、車両のトレールは特に減少する。トレールを変更すると、運転者が感じるハンドルバーの感度や応答性が変化する。さらに、制御不良および/または過度の沈み込みが発生すると、一般的にリアサスペンションが拡張され、その結果、制御不良となって後車軸が軽量化され、限界に達すると後輪が地面から離脱する状態になり、運転者が軌道を制御できなくなる可能性がある。
【0008】
沈み込み段階での姿勢の変化は、必ずしも先験的にマイナスの効果をもたらすものではないことに留意すべきである。つまり、過剰な沈み込みは、車両やドライバを危機に陥れるような動的姿勢の変化を伴うため、確かにネガティブであるが、一方で、フロントサスペンションの制御された沈み込みは、ドライバビリティやドライビングフィーリングを促進及び向上させる可能性すらある。
【0009】
実際、ドライバは、フロントサスペンションの沈み込みの程度によっても、車両のダイナミックな挙動を察知することができ、また、タイヤのグリップ限界に達したことを事前に知ることができる。また、前車軸の沈み込みが制御されることで、前車軸の沈み込みが容易になるとともに、トレールの減少により応答性が向上し、ドライバの感度が向上するため、カーブを曲がる際の下り坂が改善される。
【0010】
上記から推測されるように、「ダイブ」と呼ばれるフロントサスペンションの沈み込みは、その大きさに応じて、車両のダイナミックな姿勢を大幅に変化させる。制御されたタイプの沈み込みは、有害ではないだけでなく、車両の運転性と操縦性を向上させる。この点に関して、前記先行技術のスイングアーム式フロントサスペンションでは、サスペンションの剛性に対する制動力の干渉があるため、サスペンションの制御された沈み込みを持つことは容易ではないことに留意すべきである。
【0011】
先行技術のスイングアーム式フロントサスペンションの第2の欠点は、ホイールハブに近い部分の部品の配置があまりコンパクトでないことである。このコンパクト性の欠如は、ブレーキディスクの冷却効率の低下と、美観の悪さの両方につながる。
【0012】
先行技術のスイングアーム式フロントサスペンションの第3の欠点は、サスペンション、またはその少なくとも一部を汚れから適切に保護できないことである。
【0013】
本明細書の一般的な目的は、前述の欠点を完全にまたは部分的に解決することができるスイングアーム式オートバイのスイングアームフロントサスペンションを提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この目的は、一般に請求項1で定義されているようなオートバイのフロントサスペンションによって達成される。前述のオートバイのサスペンションの好ましいおよび有利な実施形態は、添付の従属請求項に定義されている。
【0015】
本発明は、例示として作られたその特定の実施形態の以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろうし、したがって、決して限定されるものではないが、次の段落で簡単に説明された添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、オートバイのスイングアーム式フロントサスペンションの第1の例示的かつ非限定的な実施形態を構成するオートバイの側面平面図であり、前記サスペンションは一部の部品を断面で示している。
【
図2】
図2は、
図1の二輪車用フロントサスペンションの側面図である。
【
図3】
図3は、
図1のサスペンションの一部を断面で示した部分拡大側面図であり、
図1のサスペンションの一部を断面で示している。
【
図5】
図5は、
図1のフロントサスペンションの透視図である。
【
図6】
図6は、オートバイのフロントスイングアームサスペンションの第2の例示的かつ非限定的な実施形態を示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図6のオートバイのフロントサスペンションの上面図である。
【
図8】
図8は、
図6の二輪車用フロントサスペンションの断面図である。
【
図9】
図9は、
図6のサスペンションの一部を断面で示した部分拡大側面図である。
【
図10】
図10は、オートバイのスイングアーム式フロントサスペンションの第3の例示的かつ非限定的な実施形態の概略側面図である。
【
図11】
図11は、オートバイのスイングアーム式フロントサスペンションの第4の例示的かつ非限定的な実施形態の側面概略図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明によるオートバイのフロントサスペンションの2つのそれぞれの動作状態を示す概略図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明によるオートバイのフロントサスペンションの2つのそれぞれの動作状態を示す概略図である。
【0017】
実施形態
添付の図では、同一または類似の要素は同じ数値参照で示される。
【0018】
添付の図は、輸送車両、特に、オートバイ1の一実施形態を示している。図に表されている特定の例では、オートバイ1は、前輪2および後輪3と、駆動モータ4と、支持フレーム5と、サドル6と、ステアリング軸Z-Zを中心に回転できるように支持フレーム5に回転可能に固定されたステアリングハンドルバー7と、を備えるモペットとして考えられており、それによっていかなる制限も導入しない。
【0019】
本明細書の目的のために、用語「オートバイ」は、少なくとも2つの車輪、すなわち前輪2および後輪3を有するあらゆるオートバイを含む、広い意味で考えられる。したがって、このような定義には、3つの車輪を有するオートバイも含まれ、例えば、前車軸に2つの対になったステアリングホイールと後車軸に1つの駆動輪を有するオートバイだけでなく、前車軸に1つのステアリングホイールと後車軸に2つの駆動輪を有するオートバイも含まれる。最後に、前車軸に2つの車輪、後車軸に2つの車輪を持つ、いわゆる四輪車もオートバイの定義に含まれます。
【0020】
よく知られているように、オートバイ1は、ステアリング軸Z-Zに関してステアリングハンドルバー7と一体的に回転するように、ステアリングハンドルバー7に固定されたヘッドチューブ8をさらに備えている。
【0021】
オートバイ1は、前輪2をステアリングチューブ8に固定するように適合および構成されたオートバイ用フロントサスペンション10をさらに備えており、このフロントサスペンション10は、ステアリングチューブ8と前輪2との間に動作可能に介在している。
【0022】
駆動モータ4は、オートバイ1の駆動輪、例では後輪3に、直接的または間接的に動作可能に接続されている。可能な実施形態によれば、駆動モータ4は、内燃機関である。代替実施形態によれば、駆動モータ4は、電気モータまたはハイブリッドモータである。
【0023】
図示して説明した特定の例では、オートバイのフロントサスペンション10は、前輪2の片側に片持ちされたシングルアームのフロントサスペンションであるが、本特許出願は、ダブルアームのサスペンション、すなわちフォークサスペンションにも適用可能であることを示すことに留意すべきである。
【0024】
オートバイのフロントサスペンション10は、オートバイ1のステアリングハンドルバー7に機械的に接続された、または機械的に接続されるのに適したステアリングアーム11を備えている。図に示す特定の非限定的な例では、ステアリングアーム11は、上端の一部がステアリングチューブ8に接続されており、ステアリングチューブ8と一体的にステアリング軸Z-Zを中心に回転できるようになっている。ステアリングアーム11とステアリングチューブ8は、2つの別々の機械的に結合された部分であってもよいが、1つの部材を形成していてもよいことに留意すべきである。
【0025】
オートバイ用フロントサスペンション10は、スイングアーム12をステアリングアーム11に回転可能に接続する第1接続部分13と、スイングアーム12を連結可能な前輪2に接続するように適合された第2接続部分14とを有するスイングアーム12をさらに備えている。
【0026】
オートバイ用フロントサスペンション1は、スイングアーム12に回転可能に接合された取付脚部22を有する衝撃吸収群20をさらに備えている。スイングアーム12の第1接続部分13は、スイングアーム12が、ステアリングアーム11に対して移動可能な支点15を中心にステアリングアーム11に対して回転するように、スイングアーム12をステアリングアーム11に回転可能に接続する。好ましくは、第1接続部分13は、移動可能な支点15を中心に回転するようにステアリングアーム11に回転可能に接合されたスイングアーム12の第1端部であり、第2接続部分14は、前記連結可能な前輪2の回転ピン16を担持している。
【0027】
特に有利な実施形態によれば、オートバイのフロントサスペンション10は、スイングアーム12に固定されたディスクブレーキキャリパ28を含んでいる。例えば、ディスクブレーキキャリパ28は、キャリパ28に加えて、前輪2と一緒に回転するように前輪2に固定されたディスクブレーキ用のディスク29を含むオートバイ1のブレーキ装置28,29の一部である。キャリパ28をスイングアーム12に取り付けることにより、有利なことに、制動時にオートバイのフロントサスペンション10の沈み込みを低減し、前輪2のハブの近傍でサスペンション10を特に整然とコンパクトにすることができる。例えば、キャリパは、支持ブラケット125によって、スイングアーム12に固定されている。好ましくは、スイングアーム12の第2接続部分14は、第1接続部分13とキャリパ28の支持ブラケット125との間に配置されている。例えば、支持ブラケット125は、板状のブラケットである。
【0028】
好ましくは、第2接続部分14は、連結可能な前輪2の回転ピン16を担持している。この回転ピン16は、前輪2の回転軸X-Xを規定する。好ましくは、前輪2の回転ピン16は、スイングアーム12の内部に画定された係止シートに干渉により係合して締め付けられる端部を有し、前輪2を回転可能に支持するように、前記係止シートの外側に突出するさらなる部分を有する。より好ましくは、回転ピン16の前記端部は、回転ピン16とスイングアーム12,32との間の相対的な回転を防止するように、前記係止シート内に締め付けられる。
【0029】
有利な実施形態によれば、スイングアーム12は、第1接続部分13と第2接続部分14との間に介在する第3接続部分を備えている。第3接続部分により、スイングアーム12は、衝撃吸収群20の取付脚部22に回転可能に接続されている。例えば、オートバイ用フロントサスペンション10は、衝撃吸収群20の取付脚部22をスイングアーム12に回転可能に結合するために、スイングアーム12の第3接続部を貫通する、または、第3接続部に係合するヒンジピン18を備えている。
【0030】
特に有利な実施形態によれば、スイングアーム12が、ステアリングアーム11に対して移動軸に沿ってのみ移動可能な回転軸を中心に取付脚部22に対して回転することができるように、取付脚部22がスイングアーム12に回転可能に接続されている。これは、支点16がステアリングアーム11に対して移動自在であることによって可能となる。
【0031】
有利な実施形態によれば、ステアリングアーム11は、内部が中空、例えば管状であり、その中に衝撃吸収群20の少なくとも一部を収容している。この好都合な点は、衝撃吸収群20が汚れや気象にさらされるのを低減するという利点がある。
【0032】
好ましくは、衝撃吸収群20は、例えばステアリングアーム11の内部にも配置された、ステアリングアーム11に固定された取付ヘッド部21を含む。前記取付ヘッド部21は、好ましくは、ヒンジ34によって、ステアリングアーム11にヒンジ結合されていてもよい。
【0033】
好ましい実施形態によれば、オートバイ用フロントサスペンション10において、衝撃吸収群20は、スプリング23とダンパ24,25とを含み、スプリング23は、全体がステアリングアーム11に収容されている。スプリング23は、例えば、衝撃吸収群20の取付ヘッド部21と取付脚部22との間に介在して、取付ヘッド部21と取付脚部22とを離間させようとする弾性スラスト力を発揮する螺旋状のバネである。スプリング23は、好ましくは、ダンパ24を囲む。
【0034】
好ましくは、ダンパは、ステム24とシース25とを含み、ステム24は、シース25内をスライドするように適合及び構成され、ステアリングアーム11内に収容されている。また、この好都合な点は、衝撃吸収群20、特にステム24が汚れや天候にさらされることを低減できるという利点がある。好ましくは、衝撃吸収群20の取付脚部22は、シース25の基部に配置される。
【0035】
図1~
図5を用いて、本発明に係るオートバイ用フロントサスペンション10の第1実施形態を説明する。
【0036】
既述した一般的な特徴とは別に、第1実施形態では、移動可能な支点15は降伏支点である。例えば、スイングアーム12の第1接続部分13は、ステアリングアーム11と第1接続部分13との間に弾性的に固定された円筒形のヒンジによって、スイングアーム12に回転可能にヒンジ付けされている。
図3および
図4に示されているように、回転支点15は、第1接続部分13に規定されたホールを貫通するヒンジピンを有し、弾性支持手段19によって支持アーム11に固定されている。これらの弾性支持手段は、少なくとも1つのサイレントブロック19、本実施例では、スイングアーム12に対して反対側に配置され、ステアリングアーム11に定義された2つのそれぞれのハウジングに配置された1対のサイレントブロック19からなる。
図1~
図5に示すサスペンション10の実施形態の一般原理は、このように、スイングアーム12の第1接続部分13とステアリングアーム11との間に作動的に介在する支点15の弾性支持手段19によって、支点15の可動性を確保することであり、そのため、支点15は降伏支点として定義され得る。特に有利な実施形態によれば、前記弾性支持手段は、方向選択的な弾性を有しており、すなわち、弾性変形が、少なくとも1つの異なる方向(例えば、ステアリング軸に平行な方向)に対して、定義された方向(例えば、回転ピン16に対する半径方向)に沿って大きくなる。
【0037】
別の解決策では、支点15は摺動可能な支点とすることができ、この特徴は、例えば、スイングアーム12の第1接続部分13に、回転支点を規定するヒンジピンが内側に係合するスロットホール穴、すなわち延伸方向に沿って延伸したホールを有するように設けることによって得ることができる。このようにすれば、前述のヒンジピンがステアリングアーム11にそのような方法で固定されるように設けることが可能となる。スロットホールは、貫通していてもよいし、ブラインドであってもよい。前述の延伸方向は、好ましくは地面と平行である。この代替実施形態の一般的な原理は、支点15の移動を可能にするリニアガイドを提供することである。支点15の弾性支持手段19と、支点15がリニアガイドに沿ってスライドする可能性と、の両方を提供する複合的な解決策を提供することは明らかに可能である。
【0038】
図1~
図5の例と一致する有利な実施形態によれば、ステアリングアーム11は、第1接続部分13が配置されるチャンバ31を有するハウジング30を備える。ハウジング30は、第2接続部分14がハウジング30の外側に配置されるように、スイングアーム12によって貫通された貫通開口部32を有する。有利には、オートバイ用フロントサスペンションは、前記ハウジング30に固定されて貫通開口部32を閉じる弾性変形可能なキャップ33をさらに備える。これにより、衝撃吸収群20およびスイングアーム12の一部が汚れにさらされることが大幅に減少する。特に有利な実施形態によれば、弾性変形可能なキャップ33は、スイングアーム12が貫通する貫通孔を有している。
図1~
図5に示す特定の例では、移動可能な支点15のための2つの弾性支持体、特に2つのサイレントブロックが、ハウジングチャンバ30の2つの対向する壁に規定された2つのシートに収容されている。
【0039】
図6~
図9は、上述したものと非常によく似た代替実施形態を示しており、スイングアーム12が、互いに平行に配置された第1のブランチ121および第2のブランチ122と、該ブランチ121,122を接続するブリッジ部123とを備えている点で、後者と異なっている。この2つのブランチ121,122は、衝撃吸収群20の取付脚部22がその間に配置されるように構成され、配置されている。言い換えれば、この代替実施形態では、スイングアーム12はフォークアームである。
図1~
図5の実施形態とは対照的に、ハウジングチャンバ30は設けられていない。
【0040】
図6~9の実施形態では、支点15が可動であるが、それは、
図1~5の実施形態で既に説明したものと同様に、オートバイのフロントサスペンション10が、支点15の弾性支持手段19を構成しているからである。この例では、前述の手段は2つのサイレントブロック19を備え、それぞれがスイングアーム12の各ブランチ121,122に固定され、特にそれぞれのハウジングシートに挿入されている。
【0041】
オートバイのフロントサスペンション10は、好ましくは、支点15を中心に回転し、ブランチ121,122とステアリングアーム11との間に動作可能に介在する回転可能なカップリングブロック124を備える。この回転可能なカップリングブロック124は、好ましくはT字型である。
【0042】
有利な実施形態によれば、
図6~
図9のオートバイのフロントサスペンションは、ステアリングアーム11の下端の一部に固定された、好ましくは弾性を有するベローズキャップ133を備える。
【0043】
また、本実施形態では、衝撃吸収群20の取付脚部22は、実施例ではヒンジピン18によって、スイングアーム12の第3接続部分に回転可能にヒンジ結合されている。好ましくは、このヒンジピン18は、ヒンジピン18すなわち取付脚部がステアリングアーム11に対してスライド軸に沿って移動できるように、ステアリングアーム11に規定された2つのスロットホール128を貫通している。
【0044】
図10は、移動可能な支点15がステアリングアーム11に対して摺動可能である更なる実施形態を模式的に示している。特に、サスペンション10は、支点15にスイングアーム12の第1接続部分13に回転可能にヒンジ結合されたスライダ115を含んでいる。ステアリングアーム11は、スライダ115をガイド軸に沿って移動可能なように摺動可能に支持するリニアガイドを含む。好ましくは、本実施形態においても、スイングアーム12の第2接続部分14が前輪2の回転ピン18を担持し、第1接続部分13と第2接続部分14との間に介在するスイングアーム12の第3接続部に、衝撃吸収群11の取付脚部22が回動可能にヒンジ結合されている。
【0045】
図11は、移動可能な支点15がステアリングアーム11に対して回転可能であるさらなる実施形態を模式的に示している。特に、フロントサスペンション11は、追加の回転可能なアーム113を備えており、このアーム113は、スイングアーム12が追加の回転可能なアーム113に対して、かつ移動可能な支点15を中心に回転するように、スイングアーム12に回転可能にヒンジされており、また、追加の回転可能なアーム113が、追加の、好ましくは固定された支点115を中心に、ステアリングアーム11に対して回転するように、ステアリングアーム11に回転可能にヒンジされている。好ましくは、本実施形態においても、スイングアーム12の第2接続部分14が前輪2の回転ピン16を担持し、第1接続部分13と第2接続部分14との間に介在するスイングアーム12の第3接続部に衝撃吸収群11の取付脚部22が回転可能にヒンジ結合されていることである。
【0046】
移動可能な支点15の動きを明確にするために、
図12Aおよび
図12Bは、本発明のサスペンションの2つの動作状態を示している。
図12Bでは、車輪2(寸法を縮小して示す)が、例えば路面の段差によって上方に移動し、それに伴って回転ピン16も上方に移動している。この動きにより、スイングアーム12が回転し、その結果、衝撃吸収20が圧縮される。衝撃吸収群20は、ステアリングアーム11の中空部内を軸方向にスライドし、そのヒンジポイント34を中心に回転しないように構成されているので、衝撃吸収群20の取付脚部22のヒンジピン18を中心としたスイングアーム12の回転が構成される。前記ヒンジピン18は、前輪2の動きに応じて、衝撃吸収群20の長手方向に沿って上下にスライドする。その結果、
図12Aおよび
図12Bに示すように、支点15は、例えば、第1接続部分13の一部を形成するスロットホールの内部で、前後に移動する。もし、支点15が移動可能または降伏可能でなければ、サスペンション20は動けなくなり、その動作は不完全または非効率となる。
図12Aおよび12Bを引き続き参照すると、支点15がそれぞれの軸15’を定義していることに留意すべきである。サスペンションの沈み込みにより、軸15’は、ステアリングアーム11に対して移動可能である。言い換えれば、軸15’は、ステアリングアーム11に対する相対的な距離を変化させる。さらに別の言い方をすると、直線的な軸Z-Z、すなわちステアリング軸を基準とすると、サスペンションの沈み込みに伴い、支点の軸15’を通過して軸Z-Zを横切る垂線で定義される距離dが変化することになる。例えば、支点の軸15’が後方に行くことで、相対的な距離d’が長くなる。
【0047】
以上説明してきたことに基づいて、このようにして、上述したタイプのオートバイ用スイングアームフロントサスペンションが、先行技術を参照して上述した目的をどのように達成することができるかを理解することができる。
【0048】
実質的に、前述のスイングアーム式オートバイのフロントサスペンションは、負荷に最適に反応する能力が向上しており、先行技術のフロントスイングアームサスペンションのプロダイブまたはアンチダイブ効果を低減または排除することができる。
【0049】
本発明の原理を変更することなく、添付の請求項で定義された本発明の範囲を逸脱することなく、実施形態および実施の詳細は、純粋に非限定的な例として説明および図示されたものに対して大きく変化し得る。