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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240119BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240119BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240119BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240119BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240119BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240119BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/30
G02B1/11
G02B5/02 B
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
B32B7/023
B32B37/14 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547026
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2020000452
(87)【国際公開番号】W WO2020145714
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003684
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523379845
【氏名又は名称】杉金光電(南京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ゲ・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒュン・ナ
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145679(JP,A)
【文献】特開2007-052204(JP,A)
【文献】特開2017-194717(JP,A)
【文献】特開2003-207620(JP,A)
【文献】特開2005-292646(JP,A)
【文献】特開平04-292937(JP,A)
【文献】特開2017-156399(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0072993(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025909(US,A1)
【文献】国際公開第19/054406(WO,A1)
【文献】特表2016-504632(JP,A)
【文献】特開2017-223940(JP,A)
【文献】特開2015-222368(JP,A)
【文献】特開2013-122530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00-1/18
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理前にポリエステルフィルムを平らな面上に位置させたり、重力方向と水平な方向に前記ポリエステルフィルムを位置させたり、あるいは平坦度を確保できるその他の位置に前記ポリエステルフィルムを位置させた後、前記ポリエステルフィルムの全部または一部を50℃~150℃の範囲内の温度のスチームに10秒~1時間の間露出させる方式でスチーム処理を行い、
前記スチーム処理後に前記ポリエステルフィルムの表面に光学層を形成し、
前記光学層が表面に形成されている前記ポリエステルフィルムを熱処理し、
熱処理前の前記ポリエステルフィルムは第1方向での収縮力が5.5N~15Nの範囲内であり、
熱処理前の前記ポリエステルフィルムの前記第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が10以上であり、
熱処理は下記の数式2を満足する温度で遂行し、
[数式2]
(Tg-60)℃≦T≦(Tg+50)℃
数式2において、Tgは前記ポリエステルフィルムのガラス転移温度であり、Tは熱処理温度であり、前記ガラス転移温度および熱処理温度の単位は℃であり、熱処理は10秒~1,000秒の間遂行する、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
光学層は、ハードコーティング層、反射防止層、防眩層または帯電防止層を含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
熱処理前のポリエステルフィルムの第2方向での収縮力(S2)が0.01N~2Nの範囲内である、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
熱処理前のポリエステルフィルムの第1方向での収縮力(SB)と熱処理後のポリエステルフィルムの前記第1方向での収縮力(SA)の比率(SB/SA)が1を超過する、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
熱処理後のポリエステルフィルムは第1方向での収縮力が5N~10Nの範囲内である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
熱処理後のポリエステルフィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が13以上である、請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載された製造方法で製造された光学フィルムと面内一方向に光吸収軸が形成されている偏光フィルムを付着する段階を含む、偏光板の製造方法。
【請求項8】
偏光フィルムの光吸収軸方向の偏光板の収縮力(SP)と前記光吸収軸方向と垂直な方向の偏光板の収縮力(SV)の比率(SP/SV)が0.7~1.5の範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
偏光フィルムの光吸収軸と平行な方向での偏光板の収縮力が6.5N~15Nの範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項10】
光吸収軸と垂直な方向での偏光板の収縮力が6.0N~15Nの範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項11】
光学フィルムのポリエステルフィルムの第1方向での収縮力が5N~10Nの範囲内であり、前記第1方向と偏光フィルムの光吸収軸が互いに垂直となるように偏光フィルムと光学フィルムを付着する、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項12】
ポリエステルフィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が13以上である、請求項11に記載の偏光板の製造方法。
【請求項13】
光吸収軸と平行な方向での偏光フィルムの収縮力が0.1~15Nの範囲内である、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項14】
偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度が0度~10度の範囲内または80度~100度の範囲内にある、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項15】
偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度が35度~55度の範囲内または125度~145度の範囲内にある、請求項に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年1月11日付提出された大韓民国特許出願第10-2019-0003684号に基づいて優先権を主張し、該当大韓民国特許出願文献に開示された内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は光学フィルムまたは偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
偏光板は多様なディスプレイ装置で光の状態を制御するために適用される光学フィルムである。通常偏光板は、偏光機能を有している偏光フィルムの一面または両面に保護フィルムを付着して製造される。
【0004】
偏光板はディスプレイ装置の使用環境によって多様な温度および湿度の条件に露出されるため、耐久性が要求される。例えば、偏光板は、温度および湿度のような外部環境によっても設計された光学特性を安定的に維持しなければならず、クラック(crack)などのような機械的欠陥も発生してはならない。
【0005】
偏光フィルムの保護フィルムは偏光板が前記のような要求物性を満足できるように選択されなければならない。
【0006】
最近ではより薄いディスプレイ装置に対する要求も増加しつつ、ベンディング(bending)を誘発しない薄い偏光板に対する要求も存在する。偏光板に含まれる偏光フィルムやその他の構成要素は通常延伸工程を経て製造されるため、外部の温度および湿度によっては応力を発生させる傾向がある。このような応力は薄いディスプレイ装置でベンディングを誘発しかねず、そのようなベンディングはディスプレイ装置の性能に悪影響を与えかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、光学フィルムおよび偏光板の製造方法に関する。本出願では偏光板で要求される光学的および機械的耐久性を効果的に満足させ、ディスプレイ装置に適用された時にベンディングを誘発しない偏光板を形成できる光学フィルムとその光学フィルムを適用した偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本出願では、薄いディスプレイ装置に適用される偏光板および/または薄い厚さの偏光板でもベンディングを誘発することなく、要求される光学的および機械的耐久性を実現できる光学フィルムとその光学フィルムを適用した偏光板の製造方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で角度を定義する用語のうち、垂直、平行、直交または水平などは、目的とする効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、平行、直交または水平を意味し、前記垂直、平行、直交または水平の範囲は製造誤差(error)または偏差(variation)等の誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差または約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0010】
本明細書で言及する物性のうち測定温度が該当物性に影響を及ぼす場合、特に別途に規定しない限り、前記物性は常温で測定した物性である。
【0011】
本明細書で用語常温は特に加温または減温されていない状態での温度であって、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上でありながら、約27℃以下の温度を意味し得る。また、特に別途に規定しない限り、本明細書で言及する温度の単位は℃である。
【0012】
本明細書で言及する物性のうち測定圧力が該当物性に影響を及ぼす場合、特に別途に規定しない限り、前記物性は常圧で測定した物性である。本明細書で用語常圧は特に加圧または減圧させていない自然そのままの圧力であって、通常大気圧と同じ1気圧程度の圧力を意味する。
【0013】
本明細書で言及する物性のうち測定湿度が該当物性に影響を及ぼす場合、特に別途に規定しない限り、前記物性は約0RH%~100RH%の範囲内のいずれか一つの湿度、例えば、約90RH%以下、約80RH%以下、約70RH%以下、約60RH%以下、約50RH%以下、約40RH%以下、約30RH%以下、約20RH%以下、約18RH%以下、15RH%以下または約10RH%以下であるか、約1RH%以上、約2RH%以上、約5RH%以上、約10RH%以上、約15RH%以上、約20RH%以上、約25RH%以上、約30RH%以上、約35RH%以上、約40RH%以上、または約45RH%以上の相対湿度で測定した物性である。前記で単位RH%は該当湿度が相対湿度(単位:%)であることを意味する。
【0014】
特に別途に規定しない限り、本明細書で言及するある2つの方向がなす角度は前記二つの方向がなす鋭角乃至鈍角のうち鋭角であるか、または時計回り方向および反時計回り方向に測定された角度のうち小さい角度であり得る。したがって、特に別途に規定しない限り、本明細書で言及する角度は正数である。ただし、場合により、時計回り方向または反時計回り方向に測定された角度間の測定方向を表示するために、前記時計回り方向に測定された角度および反時計回り方向に測定された角度のうちいずれか一つの角度を正数で表記し、他の一つの角度を負数で表記してもよい。
【0015】
本出願の光学フィルムの製造方法は、光学層が表面に形成されている高分子フィルムを熱処理する段階を含むことができる。
【0016】
本出願の方法で製造される光学フィルムは、光学的に意図された一つ以上の機能を示すフィルムであり得、例えば、偏光フィルムの保護フィルムであり得る。
【0017】
本出願では、表面に光学層が形成された状態で高分子フィルムを熱処理することによって確保される前記高分子フィルムの特性が、目的とする偏光板の製造に大きく寄与することを確認した。このような熱処理は、特に後述するような機械的非等方性を有する高分子フィルムに対して効果的である。前記光学層は高分子フィルムの一表面にのみ形成されたものであり得る。すなわち、高分子フィルムの熱処理は、前記高分子フィルムに光学層が非対称的に形成された状態で遂行され得る。
【0018】
前記で高分子フィルムの表面に形成される光学層の種類は特に制限されない。光学層は、例えば、いわゆるハードコーティング層、反射防止層または防眩層(Anti-glare layer)または帯電防止層(anti-static layer)等を含む層であるか、前記言及された層が示す機能の中で2つ以上の機能が複合化された光学層であり得る。
【0019】
前記ハードコーティング層は、通常偏光板や光学フィルムの表面でのスクラッチ防止などを目的に形成される。反射防止層は、通常偏光板や光学フィルムの表面での外光反射の防止を目的に実施され、防眩層は、偏光板や光学フィルムの表面での外光反射によって視認性が低下することを防止する目的で形成される層である。また、帯電防止層は、通常光学フィルムの電気抵抗を適正水準に調整して、光学フィルムが不要にまたは過度に帯電する現象を防止するために形成される層である。
【0020】
前記言及された光学層の材料とその形成方法は偏光板などの光学フィルム業界に広く知られており、本出願ではこのような公知の材料および方法が適用され得る。
【0021】
通常前記言及された光学層は光硬化性バインダーを含み、したがって本出願で適用される前記光学層も光硬化性バインダーを含む。前記で光硬化性バインダーは、光硬化性乃至は光重合性の化合物を硬化乃至重合させて形成されたバインダーを意味する。また、前記で光硬化性乃至は光重合性の化合物の硬化乃至重合を誘導する光の範疇には、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびガンマ線はもちろん、アルファ-粒子線(alpha-particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)または電子線(electron beam)のような粒子ビームなどが含まれ得る。通常的には紫外線または電子線硬化型乃至は重合性化合物が前記光学層のバインダーとして使われる。
【0022】
代表的な光硬化性乃至は光重合性化合物としては、アクリル系化合物が例示され得る。
【0023】
例えば、前記アクリル系化合物をバインダーとして含有するコーティング組成物をコーティングし、前記化合物を架橋または重合させて前記光学層を形成することができる。したがって、前記光学層は、前記アクリル系化合物の架橋物または硬化物をバインダーとして含む硬化性組成物の架橋層または硬化層であり得る。
【0024】
適用可能なアクリル系化合物の非制限的な例には、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジエステル;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレートなどの化合物や、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレートまたはトリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレートなどの3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能化合物などが含まれる。
【0025】
前記光学層または前記光学層を形成するための硬化性組成物は、前記バインダーに追加で必要な機能を確保するための任意の添加剤をさらに含むことができる。例えば、前記光学層または硬化性組成物は、前記アクリル化合物の硬化乃至架橋を開始あるいは促進させるための開始剤や触媒、該当光学層の屈折率を制御するための高屈折あるいは低屈折の粒子、界面活性剤またはレベリング剤などの任意の添加剤をさらに含むことができ、その種類は特に制限されない。
【0026】
前記光学フィルムの製造方法は、前記熱処理前に前記高分子フィルムをスチーム処理する段階;および前記スチーム処理された高分子フィルムの表面に前記光学層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0027】
前記スチーム処理段階は前記高分子フィルムをスチームに露出させる段階であり、この段階によって前記高分子フィルムの平坦度が改善し得る。平坦度が改善した高分子フィルムの表面に前記光学層を形成した後に前述した熱処理を経ることによって、目的とする特性をより効果的に確保することができる。
【0028】
前記スチーム処理を遂行する方式は特に制限されない。例えば、高分子フィルムを平らな面上に位置させたり、重力方向と水平な方向に高分子フィルムを位置させたり、あるいは平坦度を確保できるその他の位置に高分子フィルムを位置させた後、高分子フィルムの全部または一部をスチームに露出させる方式で遂行することができる。
【0029】
前記処理に適用されるスチームとしては、高分子フィルムのガラス転移温度などを考慮して適正範囲の温度のスチームを適用して前記スチーム処理を遂行することができる。一例示において、前記スチーム処理時に適用されるスチームの温度は50℃~150℃の範囲内であり得る。前記スチーム温度は他の例示において、約55℃以上、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以上、約75℃以上または約80℃以上であるか、約145℃以下、約140℃以下、約135℃以下、約130℃以下、約125℃以下、約120℃以下、約115℃以下、約110℃以下、約105℃以下または約100℃以下程度でもよい。
【0030】
前記スチーム処理を遂行する時間は目的とする高分子フィルムの平坦度が確保され得る範囲内に設定することができ、具体的な範囲は高分子フィルムの状態、スチームの温度などによって変動し得る。通常前記スチーム処理は10秒~1時間の間遂行され得る。前記スチーム処理時間は他の例示において、約55分以下、約50分以下、約45分以下、約40分以下、約35分以下、約30分以下、約25分以下、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下または約1分以下であるか、約20秒以上程度でもよい。
【0031】
前記スチーム処理後に前記光学層を形成する方式は特に制限されず、光学層を形成する公知の方式により光学層を形成することができる。例えば、前述したバインダーとしてのアクリル化合物とその他必要な添加剤を使って製造した硬化性組成物を高分子フィルムの一面にコーティングした後、アクリル化合物を架橋乃至は重合させる方式で光学層を形成することができる。
【0032】
前記熱処理が遂行される高分子フィルムは、機械的に特定の非対称性を有するフィルムであり得る。このようなフィルムを前記熱処理工程に適用することによって目的を効果的に達成することができる。
【0033】
本明細書で言及する各高分子フィルムの物性の測定は、本明細書の実施例の項目に記述した方式により測定する。
【0034】
本明細書で使う用語高分子フィルムの第1方向および第2方向は、前記高分子フィルムの面内の任意の方向である。例えば、高分子フィルムが延伸高分子フィルムである場合、前記面内の方向は前記高分子フィルムのMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向によって形成される面内の方向であり得る。他の例示において、前記第1方向は、高分子フィルムが延伸高分子フィルムである場合にMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向のうちいずれか一つの方向であり、第2方向はMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向のうち他の一方向であり得る。
【0035】
一つの例示において、本明細書で言及する高分子フィルムの第1方向は、前記TD方向であり得る。
【0036】
前記高分子フィルムの非対称性は高分子フィルムの収縮力によって代弁され得る。本明細書で言及する収縮力(光学フィルム、高分子フィルム、偏光フィルムまたは偏光板の収縮力)は、下記の実施例で記載した方式で測定したものである。また、前記収縮力は高分子フィルム単独または高分子フィルム上に前記光学層が形成されている状態で測定したものであり得る。
【0037】
一例示において、前記高分子フィルムは、前記熱処理前に第1方向(例えば、前述したTD方向)での収縮力が5.5N~15Nの範囲内であり得る。前記高分子フィルムの第1方向での収縮力は他の例示において、約6N以上、約6.5N以上、約7N以上または約7.5N以上であるか、約15N以下、14N以下、13N以下、12N以下、11N以下、10N以下、9N以下または8N以下であり得る。このような一方向での高い収縮力は、熱処理工程後に目的とする光学フィルムが効果的に形成されるようにする。
【0038】
前記高分子フィルムは、熱処理前に前記第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向に垂直な面内第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が10以上であり得る。前記比率(S1/S2)は他の例示において、約11以上、約12以上、約13以上、約14以上、約15以上または約15.5以上であるか、約150以下、約140以下、約130以下、約120以下、約110以下、約100以下、約90以下または約80以下程度であり得る。前記で面内第2方向は一例示において、前記MD方向であり得る。
【0039】
前記高分子フィルムは、前記熱処理前に前記第2方向(例えば、前述したMD方向)での収縮力が0.01N~2Nの範囲内であり得る。前記高分子フィルムの第2方向での収縮力は他の例示において、約0.03N以上、約0.05N以上、約0.07N以上または約0.09N以上であるか、約1.8N以下、1.6N以下、1.4N以下、1.2N以下、1N以下、0.8N以下または0.6N以下程度であり得る。このような一方向での高い収縮力は、熱処理工程後に目的とする光学フィルムが効果的に形成されるようにする。
【0040】
前記のような相対的に高い収縮力および/または収縮力の非対称性を有する高分子フィルムとしては、略3,000nmあるいはそれ以上の高い位相差を示すいわゆる高延伸PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムまたはSRF(Super Retardation Film)などとして知られているフィルムが代表的に知られている。したがって、本出願で前記高分子フィルムは、例えば、ポリエステル高分子フィルムであり得る。前記のようなフィルムそのものは業界で公知であり、このようなフィルムは製造過程での高延伸などによって機械的物性が大きな非対称性を示す。業界で公知とされた状態の前記高分子フィルムの代表的な例としては、PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムなどのようなポリエステルフィルムであり、例えば、Toyobo社から供給される商品名SRF(Super Retardation Film)系列のフィルムがある。
【0041】
通常延伸PETフィルムはPET系樹脂を溶融/押出で除膜し、延伸して製造した1層以上の一軸延伸フィルムまたは除膜後に縦および横延伸して製造した1層以上の二軸延伸フィルムである。
【0042】
PET系樹脂は通常繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートからなる樹脂を意味し、他のジカルボン酸成分とジオール成分を含んでもよい。他のジカルボン酸成分としては、特に限定されはしないが、例えばイソフタル酸、p-ベータ-オキシエトキシ安息香酸、4,4’-ジカルボキシジフェニル、4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジフ酸、セバシン酸および/または1,4-ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0043】
他のジオール成分としては、特に限定されはしないが、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
前記ジカルボン酸成分やジオール成分は必要に応じて2種以上を組み合わせて使うことができる。また、p-オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を併用してもよい。また、他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびカーボネート結合などを含有するジカルボン酸成分、またはジオール成分が利用されてもよい。
【0045】
PET系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸、エチレングリコールおよび/または必要に応じて他のジカルボン酸または他のジオールを直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステルおよびエチレングリコールおよび/または必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステルまたは他のジオールをエステル交換反応させた後重縮合させる方法、およびテレフタル酸および/または必要に応じて他のジカルボン酸のエチレングリコールエステルおよび/または必要に応じて他のジオールエステルを重縮合させる方法などが採用される。
【0046】
それぞれの重合反応には、アンチモン系、チタン系、ゲルマニウム系またはアルミニウム系化合物を含む重合触媒、または前記複合化合物を含む重合触媒を使うことができる。
【0047】
重合反応条件は使われる単量体、触媒、反応装置および目的とする樹脂物性に応じて適切に選択することができ、特に制限されるものではないが、例えば反応温度は通常約150℃~約300℃、約200℃~約300℃または約260℃~約300℃である。また、反応圧力は通常大気圧~約2.7Paであり、反応後半には減圧側であり得る。
【0048】
重合反応はジオール、アルキル化合物または水などの離脱反応物を揮発させることによって進行される。
【0049】
重合装置は反応槽が一つで完結するものでもよく、または複数の反応槽を連結したものでもよい。この場合、通常重合度によって反応物は反応槽間を移送されながら重合される。また、重合後半に横型反応装置を具備し、加熱/混錬しながら揮発させる方法も採用することができる。
【0050】
重合終了後の樹脂は溶融状態で反応槽や横型反応装置から放出された後、冷却ドラムや冷却ベルトなどで冷却・粉砕されたフレーク状の形態で、または押出機に導入されてひも状に押出された後、裁断されたペレット状の形態で得られる。また、必要に応じて、固相重合を行って分子量を向上させたり低分子量成分を減少させたりすることもできる。PET系樹脂に含まれ得る低分子量成分としては、環状3量体成分が挙げられるが、このような環状3量体成分の樹脂中での含量は通常5000ppm以下または3000ppm以下に調節される。
【0051】
PET系樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒に樹脂を溶解させ、30℃で測定した極限粘度で示したとき、通常0.45~1.0dL/g、0.50~10dL/gまたは0.52~0.80dL/gの範囲である。
【0052】
PET系樹脂は必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば潤滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤および耐衝撃性改良剤などが挙げられる。その添加量は光学物性に悪影響を及ぼさない範囲にすることが好ましい。
【0053】
PET系樹脂はこのような添加剤の配合のために、および後述するフィルム成形のために、通常押出機によって組み立てられたペレット状で利用される。ペレットの大きさや形状は特に制限されるものではないが、通常高さ、直径がすべて5mm以下である円柱状、球状または扁平球状である。このようにして得られるPET系樹脂はフィルム状に成形し、延伸処理することによって、透明で均質な機械的強度が高いPETフィルムにすることができる。その製造方法としては、特に限定されはしないが、例えば次に記載する方法が採用される。
【0054】
乾燥させたPET樹脂からなるペレットを溶融押出装置に供給し、融点以上に加熱して溶融させる。次いで、溶融した樹脂をダイから押出、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化させて、実質的に非結晶状態の未延伸フィルムを得る。この溶融温度は使われるPET系樹脂の融点や押出機により定められるものであり、特に制限されるものではないが、通常250℃~350℃である。また、フィルムの平面性を向上させるためには、フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法または液体塗布密着法が好ましく採用される。静電印加密着法とは、通常フィルムの上面側にフィルムの流れと直交する方向に線状電極を設置し、その電極に約5~10kVの直流電圧を印加することによってフィルムに正電荷を提供して、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラムの表面の全体または一部(例えばフィルム両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することによって、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。必要に応じて両者を併用してもよい。使われるPET系樹脂は必要に応じて2種以上の樹脂、構造や組成が異なる樹脂を混合してもよい。例えば、ブロッキング防止剤としての粒状充填材、紫外線吸収剤または帯電防止剤などが配合されたペレットと、無配合のペレットを混合して利用するものなどが挙げられる。
【0055】
押出させるフィルムの積層数は必要に応じて2層以上としてもよい。例えば、ブロッキング防止剤としての粒状充填材を配合したペレットと無配合のペレットを準備し、他の押出機から同じダイに供給して「充填材配合/無配合/充填材配合」の2種3層からなるフィルムを押出させるものなどが挙げられる。
【0056】
前記未延伸フィルムはガラス転移温度以上の温度で通常、まず押出方向に縦延伸される。延伸温度は通常70℃~150℃、80~130℃または90~120℃である。また、延伸倍率は通常1.1~6倍または2~5.5倍である。延伸は1回で終えてもよく、必要に応じて複数回に分けて行ってもよい。
【0057】
このようにして得られる縦延伸フィルムは、この後に熱処理を行うことができる。引き続き、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。この熱処理温度は通常150℃~250℃、180~245℃または200~230℃である。また、熱処理時間は通常1~600秒間または1~300秒間または1~60秒間である。
【0058】
弛緩処理の温度は通常90~200℃または120~180℃である。また、弛緩量は通常0.1~20%または2~5%である。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下になるように、弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することができる。
【0059】
一軸延伸および二軸延伸フィルムを得る場合、通常縦延伸処理後に、または必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後、テンターによって横延伸が行われる。この延伸温度は通常70℃~150℃、80℃~130℃または90℃~120℃である。また、延伸倍率は通常1.1~6倍または2~5.5倍である。この後、熱処理および必要に応じて弛緩処理を行うことができる。熱処理温度は通常150℃~250℃または180℃~245℃または200~230℃である。熱処理時間は通常1~600秒間、1~300秒間または1~60秒間である。
【0060】
弛緩処理の温度は通常100~230℃、110~210℃または120~180℃である。また、弛緩量は通常01~20%、1~10%または2~5%である。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下になるように、その弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することができる。
【0061】
一軸延伸および二軸延伸処理においては、横延伸後、ボーイングで代表されるような配向主軸の変形を緩和させるために、再度熱処理を行ったり延伸処理を行ったりすることができる。ボーイングによる配向主軸の延伸方向に対する変形の最大値は通常45度以内、30度以内または15度以内である。また、ここで延伸方向とは、縦延伸と横延伸との中で、延伸率が大きい方向を指す。
【0062】
PETフィルムの二軸延伸では、通常横延伸倍率の場合が縦延伸倍率より若干大きく行われ、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長い方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常前記のように横方向に延伸され、この場合、延伸方向とは、同様に長い方向に対して垂直方向をいう。
【0063】
配向主軸とは、延伸PETフィルム上の任意の点での分子配向方向をいう。また、配向主軸の延伸方向に対する変形とは、配向主軸と延伸方向との角度差をいう。また、その最大値とは、長い方向に対して垂直方向上での値の最大値をいう。配向主軸の確認方法は公知とされており、例えば位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製造)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製造)を利用して測定することができる。
【0064】
本出願で適用される前記高分子フィルムの厚さは用途により決定されるものであって、特に制限されない。例えば、前記高分子フィルムの厚さは、約20μm~250μmの範囲内であり得る。前記厚さは他の例示において、約240μm以下、約230μm以下、約220μm以下、約210μm以下、約200μm以下、約190μm以下、約180μm以下、約170μm以下、約160μm以下、150μm以下、約140μm以下、約130μm以下、約120μm以下、約110μm以下または100μm以下であり得るか、約30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上または70μm以上程度であり得る。
【0065】
前記高分子フィルムの熱処理は、前記第1方向での熱処理前の高分子フィルムの収縮力(SB)と熱処理後の高分子フィルムの収縮力(SA)の比率(SB/SA)が略1を超過できるように遂行され得る。前記比率(SB/SA)は他の例示において、約1.01以上、約1.02以上、約1.03以上、1.04以上、約1.05以上、約1.06以上、約1.07以上、約1.08以上、約1.09以上、約1.1以上、約1.11以上、約1.12以上、約1.13以上、1.14以上、約1.15以上、約1.16以上、約1.17以上、約1.18以上、約1.19以上、約1.2以上、約1.21以上、約1.22以上または約1.23以上となるか、あるいは約10以下、約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、約1.9以下、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下または約1.3以下程度になり得る。前記高分子フィルムの第1方向での収縮力が前記範囲内に補正されるように遂行する熱処理によって、全体的な高分子フィルムの物性が目的とする水準に維持され得る。
【0066】
前記高分子フィルムは熱処理後に前記第1方向での収縮力が略5~10Nの範囲内に属し得る。前記熱処理後の第1方向での収縮力は他の例示において、約5.1N以上、約5.2N以上、約5.3N以上、約5.4N以上、約5.5N以上、5.6N以上、5.7N以上、5.8N以上、5.9N以上、6N以上、6.1N以上、6.2N以上、6.3N以上、6.4N以上、6.5N以上、6.6N以上、6.7N以上、6.8N以上、6.9N以上、約7N以上または約7.1N以上であるか、約9.5N以下、約9N以下、約8.5N以下、約8以下、約7.5N以下、7.3N以下、7.2N以下、7.1N以下、7.0N以下または6.9N以下であり得る。前記高分子フィルムの第1方向での収縮力が前記範囲内に補正されるように遂行する熱処理によって、全体的な高分子フィルムの物性が目的とする水準に維持され得る。
【0067】
前記高分子フィルムは、熱処理後に前記第1方向(例えば、前記TD方向)での収縮力(S1)と前記第1方向に垂直な面内第2方向(例えば、前記MD方向)での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が13以上であり得る。前記比率(S1/S2)は他の例示において、約14以上、約15以上、約16以上、約17以上または約17.5以上であるか、約150以下、約140以下、約130以下、約120以下、約110以下、約100以下、約90以下または約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下または約38以下程度であり得る。前記高分子フィルムの収縮力が前記範囲内に補正されるように遂行する熱処理によって、全体的な高分子フィルムの物性が目的とする水準に維持され得る。
【0068】
前記高分子フィルムは、前記熱処理後に前記第2方向(例えば、前述したMD方向)での収縮力が0.05N~3Nの範囲内であり得る。前記高分子フィルムの第2方向での収縮力は他の例示において、約0.07N以上、約0.09N以上、約0.1N以上、約0.15N以上または約0.2N以上であるか、約1.8N以下、1.6N以下、1.4N以下、1.2N以下、1N以下、0.8N以下、0.6N以下または約0.4N以下程度であり得る。前記高分子フィルムの収縮力が前記範囲内に補正されるように遂行する熱処理によって、全体的な高分子フィルムの物性が目的とする水準に維持され得る。
【0069】
通常熱処理温度が高くなったり、熱処理時間が長くなると、収縮力が減少する傾向があるため、これを勘案して熱処理条件を適切に調節することができる。
【0070】
前述した高延伸ポリエステルフィルムは、前述した通り非対称性を示すが、それ自体では本出願で目的とする収縮力特性の達成が容易ではない。したがって、本出願では前記高延伸ポリエステルフィルムに対して所定の熱処理を遂行してその特性を調節する。例えば、高分子フィルムは該当フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、所定範囲の温度での熱処理を通じて収縮力を減少させることができる。例えば、該当保護フィルムのガラス転移温度をTgとする時(単位:℃)、Tg-60(℃)~Tg+50(℃)の範囲内の温度で熱処理することによって、収縮力などを目的とする範囲に調節することができる。このような場合、一般的にいわゆるMD(Machine Direction)方向よりはTD(transverse direction)方向での収縮力が制御される。
【0071】
前記熱処理温度は他の例示において、Tg+45℃以下、Tg+40℃以下、Tg+35℃以下、Tg+30℃以下、Tg+25℃以下、Tg+20℃以下、Tg+15℃以下、Tg+10℃以下、Tg+5℃以下、Tg℃以下、Tg-5℃以下、Tg-10℃以下、Tg-15℃以下、Tg-20℃以下、Tg-25℃以下、Tg-30℃以下またはTg-35℃以下程度であるか、Tg-55℃以上、Tg-50℃以上、Tg-45℃以上またはTg-40℃以上であり得、前記でTgはガラス転移温度である。
【0072】
本出願では、高延伸ポリエステルフィルムに対して前記のような温度で熱処理を遂行することにより、前記目的とする特性の確保が可能な点を確認した。熱処理が遂行される時間は特に制限されず、目的特性を考慮して調節することができ、通常約10秒~1,000秒の範囲内で遂行され得る。前記熱処理時間は他の例示において、約15秒以上、約20秒以上、約25秒以上または約30秒以上であるか、約900秒以下、約850秒以下、約800秒以下、約750秒以下、約700秒以下、約650秒以下、約600秒以下、約550秒以下、約500秒以下、約450秒以下、約400秒以下、約350秒以下、約300秒以下、約250秒以下、約200秒以下、約150秒以下、約100秒以下または約90秒以下程度でもよい。
【0073】
前記のような熱処理を経て高分子フィルムの非対称性を目的とする水準に補正して光学フィルムを形成することができる。
【0074】
本出願はさらに、前記のような方式で製造された光学フィルムを使って偏光板を製造する方法に関する。
【0075】
本明細書で用語偏光フィルムと偏光板は異なる意味を有する。用語偏光フィルムは、例えば、ヨウ素のような異方性物質が吸着および配向されているPVA(poly(vinyl alcohol))系フィルムのように偏光機能を示す機能性素子自体を意味し、偏光板は前記偏光フィルムと共に他の要素を含む素子を意味する。前記で偏光フィルムと共に含まれる他の要素としては、偏光フィルムの保護フィルム、視野角補償フィルム、ハードコーティング層、位相差フィルム、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層または低反射(Low Reflection)層などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0076】
本出願の方法によって製造された光学フィルムは、前記偏光フィルムと共に偏光板に含まれる他の要素であり得、一例示において、前記偏光フィルムの保護フィルムとして前記光学フィルムが適用され得る。
【0077】
本出願で製造される偏光板は、全体の厚さが200μm以下であり得る。すなわち、前記偏光板は、前述した多様な要素を含むことができるが、最終厚さは前記範囲内に制限され得る。偏光板の厚さを200μm以下にする場合、薄い厚さが要求される多様な用途に効果的に対処することができる。通常偏光板には前記偏光板をディスプレイ装置に適用するための粘着剤層が形成されており、前記粘着剤層を保護するために、離型フィルムを前記粘着剤層に付着させておくか、または、偏光板の最外側に一時的に離型性の表面保護シートを付着させておく場合がある。本出願で言及する前記200μm以下の厚さは、前記離型フィルムや表面保護シートのように最終的に偏光板をディスプレイに適用する時に除去される部位は除いた厚さである。前記厚さは他の例示において、約195μm以下、約190μm以下、約185μm以下、約180μm以下、約175μm以下、約170μm以下、約165μm以下、約160μm以下、約155μm以下、約150μm以下、約145μm以下または約140μm以下程度であり得る。前記偏光板の厚さの下限は特に制限されるものではないが、一般的に約50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、110μm以上または120μm以上程度であり得る。
【0078】
本明細書で言及する厚さは対象物品の主な表面と主な裏面を連結する最短距離、最大距離または平均距離を意味し得、一定部分の製造誤差乃至偏差が存在することもある。
【0079】
前記偏光板は、基本的に偏光フィルムおよび前記光学フィルムを含むことができ、このとき前記光学フィルムは前記偏光フィルムの保護フィルムとして含まれ得る。また、前記偏光板は、粘着剤層を含むことができる。このような粘着剤層は前記偏光板をディスプレイ装置に付着するための粘着剤層であり得る。粘着剤層が含まれる場合、偏光板の構成要素は前記光学フィルム、偏光フィルムおよび粘着剤層の順に配置され得る。
【0080】
したがって、前記製造方法は前記方法で製造された光学フィルムと偏光フィルムを付着する段階を含むことができる。また、前記偏光板の製造方法は、前記偏光フィルムの光学フィルムが付着する面と反対側の面に粘着剤層を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0081】
前記粘着剤層は、LCDやOLEDなどのディスプレイ装置に前記偏光板を付着するために存在し得る。前記粘着剤層を形成する粘着剤は特に制限されず、例えばアクリル系重合体、シリコン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルまたはフッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適切に選択して使うことができる。前述したように前記粘着剤層の露出面については、実用に供するまでの間にその汚染防止などを目的として、離型フィルムが臨時付着されてカバーされ得る。
【0082】
粘着剤層の厚さは通常5μm~100μmの範囲内であり得る。前記厚さは他の例示において、約10μm以上、15μm以上または20μm以上であるか、約90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下または30μm以下であり得る。
【0083】
前記偏光フィルムとしては、面内の一方向に沿って光吸収軸が形成されている偏光フィルムを使うことができる。このような偏光フィルムは多様に公知とされている。一例示において、前記偏光フィルムとしては、代表的な線形吸収型偏光フィルムであるポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol)、以下PVA)系偏光フィルムを使うことができる。このような偏光フィルムは通常PVAフィルムおよび前記PVAフィルムに吸着配向された異方吸収性物質を含む。前記異方吸収性物質としては、多様な二色性色素が使われ得、代表的にはヨウ素系列の物質が使われ得る。このような偏光フィルムは一般的にヨウ素系吸水性線形PVA偏光フィルムと呼ばれる。
【0084】
例えば、前記PVA系偏光フィルムはPVA系フィルムに、膨潤、染色、架橋および延伸などの各処理を実施し、洗浄および乾燥工程を経て製造することができる。後述するように前記偏光フィルムは収縮力が所定範囲に調節され得るが、前記工程のうちいずれか一つの工程で工程条件を調節して前記収縮力を調節することができる。一般的に収縮力は、前記工程のうち延伸工程時に延伸倍率などに影響を受け得る。すなわち、延伸倍率が高いと収縮力が高くなり、低いと低くなり得る。しかし、このような方式は収縮力を調節できる一つの例示的な方法に該当し、偏光フィルムの製造分野の当業者は目的により望む収縮力を有する偏光フィルムを容易に製造することができる。
【0085】
本出願の偏光フィルムは、前記ヨウ素系吸収型線形PVA偏光フィルムであって、PVA系フィルムおよび前記PVA系フィルム上に吸着配向されている異方吸収性物質を含むことができる。
【0086】
前記でPVA系フィルムとしては、例えば、従来偏光フィルムに使われている一般的なPVA系フィルムが使われ得る。このようなPVA系フィルムの材料としては、PVAまたはその誘導体が挙げられる。PVAの誘導体としては、ポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールなどが挙げられ、その他にもエチレンまたはプロピレンなどのオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸またはクロトン酸などの不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステルまたはアクリルアミドなどによって変成されたものが挙げられる。PVAの重合度は通常的に100~10000程度、1000~10000程度であり、鹸化度は80モル%~100モル%程度であるが、これに制限されるものではない。
【0087】
PVA系フィルムとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体系列の部分鹸化フィルムなどの親水性高分子フィルム、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン系配向フィルムなども例示され得る。
【0088】
PVA系フィルムの中には、可塑剤または界面活性剤などの添加剤が含まれていてもよい。前記で可塑剤としては、ポリオールやその縮合物などが例示され得、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどが例示され得る。このような可塑剤が使われる場合にその比率は特に制限されず、通常的にPVA系フィルムのうち略20重量%以下であり得る。
【0089】
偏光フィルムに含まれ得る異方吸収性物質の種類も特に制限されない。本出願では公知の異方吸収性物質の中で前述した光学的特性を満足させることができるものが適切に選択され得る。異方吸収性物質の例としてはヨウ素が例示され得る。偏光フィルム内の異方吸収性物質の比率も、望む物性を満足させることができる範囲であれば特に制限されない。
【0090】
偏光フィルムは、例えば、PVA系フィルムに、染色、架橋および延伸工程を少なくとも遂行して製造することができる。
【0091】
染色工程では、前記PVA系フィルムにヨウ素のような異方吸収性物質を吸着および/または配向させることができる。このような染色工程は延伸工程と共に遂行され得る。染色は、前記フィルムを、異方吸収性物質を含む溶液、例えば、ヨウ素溶液に浸漬させて一般的に遂行され得る。ヨウ素溶液でヨウ素溶液としては、例えば、ヨウ素および溶解補助剤であるヨウ化物によってヨウ素イオンを含有させた水溶液などが使われ得る。前記でヨウ化物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫またはヨウ化チタンなどが使われ得る。前記ヨウ素溶液の中でヨウ素および/またはヨウ化イオンの濃度は、目的により通常の範囲内で制御され得る。染色工程でヨウ素溶液の温度は通常的に20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、浸漬時間は通常的に10秒~300秒または20秒~240秒程度であるが、これに制限されるものではない。
【0092】
偏光フィルムの製造過程で遂行される架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を使って遂行することができる。架橋工程の順序は特に制限されず、例えば、染色および/または延伸工程と共に遂行するか、または別途に進行することができる。架橋工程は複数回実施してもよい。前記ホウ素化合物としては、ホウ酸またはホウ砂などが使われ得る。ホウ素化合物は、水溶液または水と有機溶媒の混合溶液の形態で一般的に使われ得、通常的にはホウ酸水溶液が使われる。ホウ酸水溶液でのホウ酸濃度は、架橋度とそれによる耐熱性などを考慮して適正範囲に選択され得る。ホウ酸水溶液などにもヨウ化カリウムなどのヨウ化物を含有させることができる。
【0093】
架橋工程の処理温度は通常的に25℃以上、30℃~85℃または30℃~60℃程度の範囲であり、処理時間は通常的に5秒~800秒間または8秒~500秒間程度であるが、これに制限されるものではない。
【0094】
延伸工程は、一般的に1軸延伸で遂行する。このような延伸は、前記染色および/または架橋工程と共に遂行してもよい。延伸方法は特に制限されず、例えば、湿潤式延伸方式が適用され得る。このような湿潤式延伸方法では、例えば、染色後延伸を遂行することが一般的であるが、延伸は架橋とともに遂行され得、複数回または多段で遂行してもよい。
【0095】
湿潤式延伸方法に適用される処理液にヨウ化カリウムなどのヨウ化物を含有させることができる。延伸で処理温度は通常的に25℃以上、30℃~85℃または50℃~70℃の範囲内程度であり、処理時間は通常10秒~800秒または30秒~500秒間であるが、これに制限されるものではない。
【0096】
延伸過程で総延伸倍率は配向特性などを考慮して調節することができ、PVA系フィルムの本来の長さを基準として総延伸倍率が3倍~10倍、4倍~8倍または5倍~7倍程度であり得るが、これに制限されるものではない。前記で総延伸倍率は延伸工程以外の膨潤工程などにおいても延伸を伴う場合には、各工程における延伸を含んだ累積延伸倍率を意味し得る。このような総延伸倍率は、配向性、偏光フィルムの加工性乃至は延伸切断可能性などを考慮して適正範囲に調節され得る。前述したように前記延伸倍率の制御を通じて収縮力の制御が可能になり得る。
【0097】
偏光フィルムの製造工程では前記染色、架橋および延伸に加えて、前記工程を遂行する前に膨潤工程を遂行してもよい。膨潤によってPVA系フィルム表面の汚染やブロッキング防止剤を洗浄することができ、また、これによって染色偏差などの不均一を減らすことができる効果もある。
【0098】
膨潤工程では通常的に水、蒸溜水または純水などが使われ得る。当該処理液の主成分は水であり、必要であれば、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物または界面活性剤などのような添加物や、アルコールなどが少量含まれていてもよい。
【0099】
膨潤過程での処理温度は通常的に20℃~45℃または20℃~40℃程度であるが、これに制限されない。膨潤偏差は染色偏差を誘発し得るため、このような膨潤偏差の発生が可能な限り抑制されるように工程変数が調節され得る。必要に応じて、膨潤工程でも適切な延伸が遂行され得る。延伸倍率は、PVA系フィルムの本来の長さを基準として6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍または2倍~3倍程度であり得る。膨潤過程での延伸は、膨潤工程後に遂行される延伸工程での延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が発生しないように制御することができる。
【0100】
偏光フィルムの製造過程では金属イオン処理が遂行され得る。このような処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬することによって実施する。これを通じて偏光フィルム内に金属イオンを含有させることができるが、この過程で金属イオンの種類乃至は比率を調節することによってもPVA系偏光フィルムの色調調節が可能である。適用され得る金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガンまたは鉄などの遷移金属の金属イオンが例示され得、このうち適切な種類の選択によって色調の調節が可能なこともある。
【0101】
偏光フィルムの製造過程では染色、架橋および延伸後に洗浄工程が進行され得る。このような洗浄工程は、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物溶液によって遂行することができ、水を使って遂行してもよい。
【0102】
このような水による洗浄とヨウ化物溶液による洗浄は組み合わせられてもよく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールまたはプロパノールなどの液体アルコールを配合した溶液が使われてもよい。
【0103】
このような工程を経た後に乾燥工程を遂行して偏光フィルムを製造することができる。乾燥工程では、例えば、偏光フィルムに要求される水分率などを考慮して適切な温度で適切な時間の間遂行され得、このような条件は特に制限されない。
【0104】
本出願で適用する偏光フィルムの厚さは通常約5μm~25μmの範囲内であり得る。前記厚さは他の例示において、約24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下または17μm以下であり得るか、約6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上または16μm以上程度であり得る。
【0105】
前記偏光フィルムは、面内の一方向での収縮力が約0.1N~15Nの範囲内であり得る。前記面内の一方向は例えば、前述した光吸収軸が形成された方向であり得る。前記収縮力は14.5N以下、14N以下、13.5N以下、13N以下、12.5N以下、12N以下、11.5N以下、11N以下、10.5N以下、10N以下、10N以下、9.5N以下または9N以下であり得るか、または0.5N以上、1N以上、2N以上、3N以上、4N以上、5N以上、6N以上、7N以上または8N以上であり得る。
【0106】
前記のような収縮力の偏光フィルムは、入手可能な偏光フィルムの中から前記収縮力を有する偏光フィルムを選択するか、あるいは前述した通り、製造過程で延伸条件などの工程条件を制御して適用することができる。通常PVA系フィルムを使って製造した偏光フィルムを光吸収軸方向で前記言及した範囲の収縮力を示すため、一般的には本出願で前記PVA系フィルムを製造された偏光フィルム、すなわちPVA系偏光フィルムが使われ得る。
【0107】
本出願の製造方法では、前記のような偏光フィルムと前記光学フィルムを付着する段階を遂行する。
【0108】
本出願の製造方法で前記偏光フィルムと前記光学フィルムの付着は、前記偏光フィルムの光吸収軸方向の全体の偏光板の収縮力(S)と前記光吸収軸方向と垂直な方向の全体の偏光板の収縮力(S)の比率(S/S)が0.7~1.5の範囲内となるように遂行され得る。前記比率(S/S)は他の例示において、約0.71以上、約0.72以上、約0.73以上、約0.74以上、約0.75以上、約0.76以上、約0.77以上、約0.78以上、約0.79以上、約0.8以上、約0.81以上、約0.82以上、約0.83以上、約0.84以上、約0.85以上、約0.86以上、約0.87以上、約0.88以上、約0.89以上、約0.9以上、約0.91以上、約0.92以上、約0.93以上、約0.94以上、約0.95以上、約0.96以上または約0.97以上であるか、約1.49以下、約1.48以下、約1.47以下、約1.46以下、約1.45以下、約1.44以下、約1.43以下、約1.42以下、約1.41以下、約1.4以下、約1.39以下、約1.38以下、約1.37以下、約1.36以下、約1.35以下、約1.34以下、約1.33以下、約1.32以下、約1.31以下、約1.30以下、約1.29以下、約1.28以下、約1.27以下、約1.26以下、約1.25以下、約1.24以下、約1.23以下、約1.22以下、約1.21以下、約1.2以下、約1.19以下、約1.18以下、約1.17以下、約1.16以下、約1.15以下、約1.14以下、約1.13以下、約1.12以下、約1.11以下、約1.1以下、約1.09以下、約1.08以下、約1.07以下または約1.06以下であり得る。前記比率を調節することによって、目的とする偏光板、すなわち厚さおよび光吸収軸方向、そして偏光板のサイズなどにかかわらず、ベンディング乃至はツイスティングを防止できる偏光板を形成することができる。
【0109】
本出願の製造方法で前記偏光フィルムと光学フィルムの付着はまた、前記偏光フィルムの光吸収軸と平行な方向での全体の偏光板の収縮力が6.5N~15Nの範囲内であり得る。前記収縮力は、他の例示において、約6.6N以上、6.7N以上、6.8N以上、6.9N以上、7N以上、7.1N以上、7.2N以上、7.3N以上、7.4N以上、7.5N以上、7.6N以上または7.7N以上であるか、14.9N以下、14.8N以下、14.7N以下、14.6N以下、14.5N以下、14.4N以下、14.3N以下、14.2N以下、14.1N以下、14N以下、13.9N以下、13.8N以下、13.7N以下、13.6N以下、13.5N以下、13.4N以下、13.3N以下、13.2N以下、13.1N以下、13N以下、12.9N以下、12.8N以下、12.7N以下、12.6N以下、12.5N以下、12.4N以下、12.3N以下、12.2N以下、12.1N以下、12N以下、11.9N以下、11.8N以下、11.7N以下、11.6N以下、11.5N以下、11.4N以下、11.3N以下、11.2N以下、11.1N以下、11N以下、10.9N以下、10.8N以下、10.7N以下、10.6N以下、10.5N以下、10.4N以下、10.3N以下、10.2N以下、10.1N以下、10N以下、9.9N以下、9.8N以下、9.7N以下、9.6N以下、9.5N以下、9.4N以下、9.3N以下、9.2N以下、9.1N以下、9N以下、8.9N以下、8.8N以下、8.7N以下、8.6N以下、8.5N以下、8.4N以下、8.3N以下、8.2N以下、または8.1N以下であり得る。前記比率を調節することによって、目的とする偏光板、すなわち厚さおよび光吸収軸方向、そして偏光板のサイズなどにかかわらず、ベンディング乃至はツイスティングを防止できる偏光板を形成することができる。
【0110】
本出願の製造方法はまた、前記偏光フィルムの光吸収軸と垂直な方向での全体の偏光板の収縮力が6N~15Nの範囲内となるように遂行され得る。前記収縮力は、他の例示において、約6.1N以上、約6.2N以上、約6.3N以上、約6.4N以上、約6.5N以上、6.6N以上、6.7N以上、6.8N以上、6.9N以上、7N以上、7.1N以上または7.2N以上であるか、14.9N以下、14.8N以下、14.7N以下、14.6N以下、14.5N以下、14.4N以下、14.3N以下、14.2N以下、14.1N以下、14N以下、13.9N以下、13.8N以下、13.7N以下、13.6N以下、13.5N以下、13.4N以下、13.3N以下、13.2N以下、13.1N以下、13N以下、12.9N以下、12.8N以下、12.7N以下、12.6N以下、12.5N以下、12.4N以下、12.3N以下、12.2N以下、12.1N以下、12N以下、11.9N以下、11.8N以下、11.7N以下、11.6N以下、11.5N以下、11.4N以下、11.3N以下、11.2N以下、11.1N以下、11N以下、10.9N以下、10.8N以下、10.7N以下、10.6N以下、10.5N以下、10.4N以下、10.3N以下、10.2N以下、10.1N以下、10N以下、9.9N以下、9.8N以下、9.7N以下、9.6N以下、9.5N以下、9.4N以下、9.3N以下、9.2N以下、9.1N以下、9N以下、8.9N以下、8.8N以下、8.7N以下、8.6N以下、8.5N以下、8.4N以下、8.3N以下、8.2N以下、または8.1N以下であり得る。前記比率を調節することによって、目的とする偏光板、すなわち厚さおよび光吸収軸方向、そして偏光板のサイズなどにかかわらず、ベンディング乃至はツイスティングを防止できる偏光板を形成することができる。
【0111】
前記のような偏光板の形成のために、光学フィルムと偏光フィルムの付着時に付着位置が制御され得る。例えば、前記付着は前記高分子フィルムの第1方向、すなわち前記熱処理後の収縮力が5N~10Nの範囲内である方向(例えば、高分子フィルムのTD方向)が前記偏光フィルムの光吸収軸と互いに垂直となるように遂行され得る。
【0112】
したがって、前記付着工程で適用される高分子フィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)(熱処理後の前記比率)は13以上であり得る。
【0113】
前記熱処理後の高分子フィルムまたは光学フィルムの第1方向での収縮力や、収縮力の比率(S1/S2)およびその他の特性の具体的な事項は前述の通りである。
【0114】
前述した偏光フィルムの光吸収軸方向の収縮力を勘案する時、前記のような付着工程によって前記光吸収軸方向と平行な面内方向の偏光フィルムの収縮力(SPVA)と光学フィルム(高分子フィルム)の前記第1方向での収縮力(SPro)の比率(SPro/SPVA)が0.1~5の範囲内であり得る。前記比率は他の例示において、約0.15以上、約0.2以上、約0.25以上、約0.3以上、約0.35以上、約0.4以上、約0.45以上、約0.5以上、約0.55以上、約0.6以上または約0.65以上であるか、約4.5以下、約4以下、約3.5以下、約3以下、約2.5以下、約2以下、約1.5以下、約1以下、約0.95以下、約0.9以下、約0.85以下、約0.8以下または約0.75以下程度であり得る。
【0115】
前記のような配置を通じて本出願では、厚さ、光吸収軸の形成方向および偏光板のサイズにかかわらず、耐久性や曲げまたはツイスティングの問題がない偏光板を提供することができる。
【0116】
例えば、前記偏光板の製造過程は、下記の数式1によるA値の範囲が0.01~26N・mmの範囲内となるように遂行され得る。すなわち、偏光板の製造時に適用される光学フィルムと偏光フィルムの収縮力を考慮して、前記光学フィルム、粘着剤層および/または偏光フィルムの厚さまたは前記の他に偏光板に含まれる各要素の厚さを調節することによって、下記の数式1を満足させることができる。数式1を満足させる偏光板の製造過程では、偏光フィルムの前記光学フィルムが付着されない面上に粘着剤層を形成する過程をさらに含むことができる。
【0117】
[数式1]
A=aХ(SPVAХ(T+b)+SProХ(T+b))
【0118】
数式1でSPVAは前記偏光フィルムの光吸収軸方向の収縮力であり、SProは光学フィルムの前記偏光フィルムの光吸収軸方向と平行な方向の収縮力と光学フィルムの前記光吸収軸方向と垂直な方向の収縮力のうち大きな収縮力であり、Tは前記粘着剤層の最も下部から前記偏光フィルムの中心までの距離で(単位:mm)であり、Tは前記粘着剤層の最も下部から前記光学フィルムの中心までの距離(単位:mm)であり、aは0.5~2の範囲内の数であり、bは0.14~0.6の範囲内の数である。
【0119】
前記数式1のA値は、偏光板のベンディング(bending)特性を反映する。偏光板が前記A値を有すると、その偏光板が薄く形成される場合にもLCDやOLEDなどのディスプレイ装置に適用された時に曲げやツイスティングを誘発せず、耐久性および光学特性が優秀なディスプレイ装置を提供することができる。
【0120】
前記数式1のA値は、他の例示において、0.05N・mm以上、0.1N・mm以上、0.15N・mm以上、0.2N・mm以上、0.25N・mm以上、0.3N・mm以上、0.35N・mm以上、0.4N・mm以上、0.45N・mm以上、0.5N・mm以上、0.55N・mm以上、0.6N・mm以上、0.65N・mm以上、0.7N・mm以上、0.75N・mm以上、0.8N・mm以上、0.85N・mm以上、0.9N・mm以上、0.95N・mm以上、0.1N・mm以上、0.5N・mm以上、1N・mm以上、1.5N・mm以上、2N・mm以上、2.5N・mm以上、3N・mm以上、3.5N・mm以上、4N・mm以上、4.5N・mm以上、5N・mm以上、5.5N・mm以上、6N・mm以上、6.5N・mm以上、7N・mm以上、7.5N・mm以上、8N・mm以上、8.5N・mm以上、9N・mm以上、9.5N・mm以上、10N・mm以上、11N・mm以上、12N・mm以上、13N・mm以上、14N・mm以上、15N・mm以上、16N・mm以上、17N・mm以上、18N・mm以上、19N・mm以上または20N・mm以上程度であるか、25N・mm以下、24N・mm以下、23N・mm以下、22N・mm以下、21N・mm以下、20N・mm以下、19N・mm以下、18N・mm以下、17N・mm以下、16N・mm以下、15N・mm以下、14N・mm以下、13N・mm以下、12N・mm以下、11N・mm以下、10N・mm以下、9N・mm以下、8N・mm以下、7N・mm以下、6N・mm以下または5N・mm以下であり得る。
【0121】
前記A値は、前記規定されたaおよび/またはbの全体範囲内で前記記述した数値範囲内に属するが、あるいはaの範囲内のいずれか一つの値およびbの範囲内のいずれか一つの値を代入した時に前記記述した数値範囲に属してもよい。
【0122】
前記数式1でa値は0.5~2の範囲内の数であり得る。前記a値は他の例示において、約0.55以上、約0.6以上、約0.65以上、約0.7以上、約0.75以上、約0.8以上、約0.85以上、約0.9以上、約1以上または約1.5以上であるか、1.9以下、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下、約1.1以下、約1.0以下、約0.95以下、約0.9以下、約0.85以下、約0.8以下、約0.75以下、約0.7以下または約0.65以下でもよい。
【0123】
前記数式1でb値は0.14~0.6の範囲内の数であり得る。前記数式1に代入されるb値は、他の例示において、0.15以上または0.2以上であるか、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下または0.3以下であり得る。一例示において、前記偏光板がLCDに適用される場合、前記b値は前記LCDパネルの厚さにより決定され得、例えば、前記LCDパネルの厚さ(単位:mm)の1/2倍が前記b値となり得る。
【0124】
例えば、前記偏光板の製造方法で前記光学フィルムと偏光フィルムの付着は公知の接着剤を使って遂行することができる。したがって、前記偏光板で前記光学フィルムと偏光フィルムの間には接着剤層がさらに含まれ得る。
【0125】
接着剤としては、例えば、従来の偏光板で偏光フィルムと光学フィルムの付着に使用していた接着剤層を使うことができる。
【0126】
接着剤層は、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤;アクリル系接着剤;ビニルアセテート系接着剤;ウレタン系接着剤;ポリエステル系接着剤;ポリオレフィン系接着剤;ポリビニルアルキルエーテル系接着剤;ゴム系接着剤;塩化ビニル-ビニルアセテート系接着剤;スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)接着剤;スチレン-ブタジエン-スチレンの水素添加物(SEBS)系接着剤;エチレン系接着剤;およびアクリル酸エステル系接着剤などの一種または二種以上を含むことができる。前記のような接着剤は、例えば、水系、溶剤系または無溶剤系接着剤組成物を使って形成することができる。また、前記接着剤組成物は、熱硬化型、常温硬化型、湿気硬化型、活性エネルギー線硬化型または混成硬化型接着剤組成物であり得る。
【0127】
このような接着剤を使って偏光フィルムと光学フィルムを付着する方式は特に制限されず、接着剤組成物を偏光フィルムまたは光学フィルムに塗布し、前記偏光フィルムと光学フィルムを合紙した後に硬化させる方式や液滴方式などを使うことができる。
【0128】
このような接着剤層の厚さは、例えば、約1μm~5μmまたは約2μm~4μmの範囲内であり得る。
【0129】
前記のような本出願の偏光板は前述した要素の他にも必要な他の構成を含むことができる。
【0130】
追加構成として偏光板は、前記偏光フィルムと粘着剤層の間に硬化樹脂層または異なる種類の偏光フィルムの保護フィルムをさらに含むことができる。より薄い厚さの偏光板の形成のためには保護フィルムよりは硬化樹脂層が有利であるが、前記保護フィルムも適用され得る。このような硬化樹脂層は通常ハードコーティング層とも呼ばれ、一般的に偏光板でいずれか一つの光学フィルムを省略する代わりに適用されている。本出願で適用され得る前記硬化樹脂層の種類は特に制限されず、前記薄い偏光板を提供するために使われている多様な種類の硬化樹脂層をすべて適用することができる。通常このような硬化樹脂層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂などを含むことができ、このような樹脂層は多様に公知になっている。
【0131】
このような硬化樹脂層の厚さは、例えば、約4μm~10μmまたは約4.5μm~10μmの範囲内であり得る。
【0132】
本出願で適用され得る保護フィルムの種類も特に制限されず、公知の材料から適切に選択され得る。
【0133】
本出願の偏光板は前述した通り、目的に応じて、公知の他の構成、例えば、位相差板、光視野角補償フィルムおよび/または輝度向上フィルムからなる群から選択された一つ以上の機能性層をさらに含むこともでき、したがって前記製造方法ではこのような機能性層を必要な位置に形成する段階をさらに含むことができる。
【0134】
前記偏光板は適用される用途、例えば、適用されるディスプレイ装置の種類や該当装置のモード(mode)等によって多様な形態で構成され得る。
【0135】
例えば、前記偏光板で前記偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度は0度~10度の範囲内または80度~100度の範囲内にあり得る。前記角度は他の例示において、9度以下、8度以下、7度以下、6度以下、5度以下、4度以下、3度以下、2度以下または1度以下であり得る。また、前記角度は他の例示において、約81度以上、82度以上、83度以上、84度以上、85度以上、86度以上、87度以上、88度以上、89度以上または90度以上であるか、99度以下、98度以下、97度以下、96度以下、95度以下、94度以下、93度以下、92度以下、91度以下または90度以下程度でもよい。
【0136】
他の例示において、前記偏光板で前記偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度は35度~55度の範囲内または125度~145度の範囲内にあり得る。
【0137】
前記角度は他の例示において、約36度以上程度、37度以上程度、38度以上程度、39度以上程度、40度以上程度、41度以上程度、42度以上程度、43度以上程度、44度以上程度または45度以上程度であるか、54度以下程度、53度以下程度、52度以下程度、51度以下程度、50度以下程度、49度以下程度、48度以下程度、47度以下程度、46度以下程度または45度以下程度であり得、また、約126度以上程度、127度以上程度、128度以上程度、129度以上程度、130度以上程度、131度以上程度、132度以上程度、133度以上程度、134度以上程度または135度以上程度であるか、144度以下程度、143度以下程度、142度以下程度、141度以下程度、140度以下程度、139度以下程度、138度以下程度、137度以下程度、136度以下程度または135度以下程度であり得る。
【0138】
通常偏光フィルムおよび偏光板は四角形であり、前記光吸収軸と前記角度をなす偏光フィルムの一辺は前記四角形の任意の一辺であり得る。例えば、前記四角形が長方形であれば、前記一辺は前記長方形の長辺または短辺であり得る。
【0139】
本出願の場合、偏光板の適用用途によって光吸収軸がどのような方式で形成されても適切な性能の偏光板を提供することができる。
【0140】
また、本出願はディスプレイ装置に関し、例えば、LCDやOLEDに関する。前記LCDやOLEDなどのディスプレイ装置は本出願の前記偏光板を含むことができる。前記ディスプレイ装置は例えば、LCDパネルやOLEDパネルなどのディスプレイパネルと前記ディスプレイパネルに付着された本出願の前記偏光板を含むことができる。
【0141】
本出願のディスプレイ装置に適用され得る前記ディスプレイパネルの種類やそのパネルに付着される偏光板の位置などは特に制限されない。すなわち、前記本出願の偏光板が適用される限り、多様な公知の方式で前記ディスプレイパネルは具現され得る。
【発明の効果】
【0142】
本出願では、偏光板で要求される光学的および機械的耐久性を効果的に満足させ、ディスプレイ装置に適用された時にベンディングを誘発しない偏光板を形成できる光学フィルムとその光学フィルムを適用した偏光板の製造方法を提供することができる。本出願では、薄いディスプレイ装置に適用される偏光板および/または薄い厚さの偏光板においてもベンディングを誘発することなく、要求される光学的および機械的耐久性を実現できる光学フィルムとその光学フィルムを適用した偏光板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0143】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記の実施例によって制限されるものではない。
【0144】
本明細書で言及する用語MDは、特に別途に規定しない限り、延伸フィルムのMachine Directionを意味し、TDは特に別途に規定しない限り、延伸フィルムのtransverse directionを意味する。
【0145】
1.収縮力の測定
本明細書で言及する偏光フィルム、光学フィルム、高分子フィルムまたは偏光板の収縮力はTA社のDMA装備を使って下記の方式で測定した。試片は、幅が約5.3mmであり、長さが約15mmになるように製作し、前記試片の長さ方向の両末端を測定装備のクランプに固定した後、収縮力を測定した。前記で試片の長さ15mmはクランプに固定される部位を除いた長さである。前記のように試片をクランプに固定した後、preload 0Nの状態でstrain 0.1%が維持されるように試料を引っ張って固定した後、下記の温度条件の高温でstrain 0.1%が維持される時にかかる収縮力を測定した。収縮力の結果は下記の温度条件の80℃安定化後に120分が経過した後の値を測定した。前記収縮力は略48%程度に維持された相対湿度で測定した。
【0146】
<測定温度条件および時間>
温度:25℃start→3分後75℃→7分後80℃安定化(Acceleration条件はない)
測定時間:120分
【0147】
製造例1.PVA系偏光フィルム(A)の製作
偏光フィルムの製作に使われる厚さが約45μm程度であるPVA(poly(vinyl alcohol))フィルム(日本合成社、重合度約3,000内外)を約20℃~30℃の範囲の温度の純水溶液で膨潤(swelling)させた後、30℃~40℃程度の温度のヨウ素溶液で約10秒~30秒程度染色工程を進行した。この後、約40℃程度の温度のホウ酸溶液(濃度:約2重量%)で約20秒間洗浄工程を遂行した後に50℃~60℃および約4.0重量%濃度のホウ酸溶液内で約6倍延伸し、延伸後約2~4重量%の濃度のKI溶液で補色工程を遂行し、乾燥させて厚さが約17μm程度である偏光フィルムを製作した。前記製作されたPVA系偏光フィルムの光吸収軸方向の収縮力(以下、MD収縮力)を測定した結果、略8~10N程度であった。
【0148】
実施例1.
高分子フィルムの熱処理
PET(Polyethylene terephthalate)高分子フィルム(SRFフィルム、厚さ:80μm、メーカー:Toyobo、製品名:TA055、ガラス転移温度:80℃、熱処理前TD方向収縮力:約7.53N、MD方向収縮力:約0.1~0.5Nの範囲)に対して次の方式で熱処理を進行した。まず前記SRFフィルムを温度が略80℃~100℃程度であるスチームに、平坦度が改善される程度の時間(約20秒~60秒)の間露出させて平坦化工程を遂行した。引き続き、前記SRFフィルムの一面に光学層として防眩層(AG層)を形成した。前記防眩層は、ウレタンアクリレートバインダー(Kyoeisha社、PE3A)に屈折率が約1.555水準(基準波長:550nm)であり、表面に水酸基を有する有機粒子(メーカー:Sekisui社、平均粒径:2μm)を20:1の重量比率(ウレタンアクリレートバインダー:有機粒子)で混合した硬化性組成物を使って形成した。前記硬化性組成物を前記SRFフィルムの一面にコーティングし、紫外線を150mJ/cmの光量で照射して前記バインダーを架橋および重合させることによって光学層を形成したが、このように形成された防眩層の厚さは略4μm程度であった。
【0149】
引き続き前記光学層が形成されたSRFフィルムを略40℃程度の温度で30秒~90秒の間維持して熱処理を遂行した。前記熱処理工程後に前記SRFフィルムのTD(transverse direction)方向の収縮力は約7.18N程度であり、MD方向収縮力は約0.2~0.35N程度の水準であった。
【0150】
偏光板の製作
前記熱処理されたSRFフィルムを保護フィルムとして適用して偏光板を次の方式で製作した。まず、製造例1で製造されたPVA偏光フィルム(MD収縮力:8~10N、厚さ:17μm)の一面にエポキシ系紫外線硬化型接着剤(厚さ:2μm~3μm)を使って前記SRFフィルムを付着した。前記付着時にはSRFフィルムのTD(transverse direction)方向とPVA偏光フィルムのMD方向(吸収軸方向)が略垂直となるように付着し、光学層が形成されていない面をPVA偏光フィルムに付着した。引き続き、前記PVA偏光フィルムのSRFフィルムが付着されていない面にエポキシ系ハードコーティング層を約5~7μm程度の厚さで形成した。その後、ハードコーティング層の下部に約25μm程度の厚さのアクリル系粘着剤層を形成して偏光板を製作した。前記製作された偏光板全体の偏光フィルムのMD方向に沿った収縮力は略8Nであり、偏光フィルムのTD方向に沿った収縮力は略9.5N程度であった。前記製作された偏光板に対して前記数式1のA値を求めた結果、略3.94Nmm~6.41Nmm程度であった。前記A値の範囲の下限は、数式1にaとして0.78を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、7.18Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用し、/Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。また、前記A値の範囲の上限は、数式1にaとして1.27を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、7.18Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用し、Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。
【0151】
実施例2.
実施例1と同じ方式でスチーム処理および光学層形成処理を遂行したSRFフィルムを略60℃程度の温度で30秒~90秒の間維持して熱処理を遂行した。前記熱処理工程後に前記SRFフィルムのTD(transverse direction)方向の収縮力は約6.86N程度であり、MD方向の収縮力は約0.2~0.35N程度の水準であった。前記SRFフィルムを使って実施例1と同様にして偏光板を製造した。前記製作された偏光板の偏光フィルムのMD方向に沿った収縮力は略8Nであり、偏光フィルムのTD方向に沿った収縮力は略8.18N程度であった。前記製作された偏光板に対して前記数式1のA値を求めた結果、略4.25Nmm~5.78Nmm程度であった。前記A値の範囲の下限は、数式1にaとして0.86を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、6.86Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用し、Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。また、前記A値の範囲の上限は、数式1にaとして1.17を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、6.86Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用したし、Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。
【0152】
実施例3.
実施例1と同じ方式でスチーム処理および光学層形成処理を遂行したSRFフィルムを略80℃程度の温度で約30秒~90秒の間維持して熱処理を遂行した。前記熱処理工程後に前記SRFフィルムのTD(transverse direction)方向の収縮力は約6.08N程度であり、MD方向の収縮力は約0.2~0.35N程度の水準であった。前記SRFフィルムを使って実施例1と同様にして偏光板を製造した。前記製作された偏光板の偏光フィルムのMD方向に沿った収縮力は略8Nであり、偏光フィルムのTD方向に沿った収縮力は略7.28N程度であった。
【0153】
前記製作された偏光板に対して前記数式1のA値を求めた結果、略3Nmm~7.25Nmm程度であった。前記A値の範囲の下限は、数式1にaとして0.64を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、6.08Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用し、Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。また、前記A値の範囲の上限は、数式1にaとして1.55を適用し、bとして0.25mm(=適用LCDパネル厚さ(mm)/2)を適用し、SPVAとして、約9Nを適用し、SProとして、6.08Nを適用し、Tとして、0.0395mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)/2)を適用し、Tとして0.0905mm(=粘着剤厚さ(25μm)+ハードコーティング層厚さ(6μm)+偏光フィルム厚さ(17μm)+接着剤層厚さ(2.5μm)+保護フィルム厚さ(80μm)/2)を適用して求めた。
【0154】
ベンディング特性評価
それぞれの実施例で製作された偏光板を一般の32インチLCD(Liquid Crystal Display)パネル(厚さ:約500μm)の上部面と下部面にそれぞれ偏光板の粘着剤層を通じて付着した。引き続き前記LCDパネルの平面度(初期平面度)を測定した。その後、前記パネルを60℃の温度のチャンバー内に72時間の間投入した後、取り出して2時間経過時点と24時間経過時点におけるパネル変化量を測定して下記の表1に整理した。下記の表1で用語平面度は、液晶パネルで上部偏光板側に最も多く曲がった部分と下部偏光板側に最も多く曲がった部分の差であり、このような平面度は公知の3次元測定機((株)トクイン)を使って確認することができる。
【0155】
【表1】
(付記)
(付記1)
光学層が表面に形成されている高分子フィルムを熱処理する段階を含む、光学フィルムの製造方法。
(付記2)
光学層は、ハードコーティング層、反射防止層、防眩層または帯電防止層を含む、付記1に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記3)
熱処理前に高分子フィルムを50℃~150℃の範囲内の温度のスチームで10秒~1時間の間処理する段階および前記スチーム処理後に高分子フィルムの表面に光学層を形成する段階をさらに遂行する、付記1に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記4)
熱処理前の高分子フィルムは第1方向での収縮力が5.5N~15Nの範囲内である、付記1に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記5)
熱処理前の高分子フィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が10以上である、付記4に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記6)
熱処理前の高分子フィルムの第2方向での収縮力(S2)が0.01N~2Nの範囲内である、付記5に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記7)
熱処理前の高分子フィルムの第1方向での収縮力(SB)と熱処理後の高分子フィルムの前記第1方向での収縮力(SA)の比率(SB/SA)が1を超過する、付記4に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記8)
熱処理後の高分子フィルムは第1方向での収縮力が5N~10Nの範囲内である、付記1に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記9)
熱処理後の高分子フィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が13以上である、付記8に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記10)
熱処理は下記の数式2を満足する温度で遂行する、付記1に記載の光学フィルムの製造方法:
[数式2]
(Tg-60)℃≦T≦(Tg+50)℃
数式2において、Tgは高分子フィルムのガラス転移温度であり、Tは熱処理温度であり、前記ガラス転移温度および熱処理温度の単位は℃である。
(付記11)
熱処理は10秒~1,000秒の間遂行する、付記1に記載の光学フィルムの製造方法。
(付記12)
付記1に記載された製造方法で製造された光学フィルムと面内一方向に光吸収軸が形成されている偏光フィルムを付着する段階を含む、偏光板の製造方法。
(付記13)
偏光フィルムの光吸収軸方向の偏光板の収縮力(SP)と前記光吸収軸方向と垂直な方向の偏光板の収縮力(SV)の比率(SP/SV)が0.7~1.5の範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記14)
偏光フィルムの光吸収軸と平行な方向での偏光板の収縮力が6.5N~15Nの範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記15)
光吸収軸と垂直な方向での偏光板の収縮力が6.0N~15Nの範囲内となるように光学フィルムを偏光フィルムに付着する、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記16)
光学フィルムの高分子フィルムの第1方向での収縮力が5N~10Nの範囲内であり、前記第1方向と偏光フィルムの光吸収軸が互いに垂直となるように偏光フィルムと光学フィルムを付着する、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記17)
高分子フィルムの第1方向での収縮力(S1)と前記第1方向と垂直な第2方向での収縮力(S2)の比率(S1/S2)が13以上である、付記16に記載の偏光板の製造方法。
(付記18)
光吸収軸と平行な方向での偏光フィルムの収縮力が0.1~15Nの範囲内である、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記19)
偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度が0度~10度の範囲内または80度~100度の範囲内にある、付記12に記載の偏光板の製造方法。
(付記20)
偏光フィルムの一辺と前記偏光フィルムの光吸収軸がなす角度のうち小さい角度が35度~55度の範囲内または125度~145度の範囲内にある、付記12に記載の偏光板の製造方法。