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特許7422827コレスチラミン顆粒、経口コレスチラミン製剤、及びそれらの使用
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  • 特許-コレスチラミン顆粒、経口コレスチラミン製剤、及びそれらの使用 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】コレスチラミン顆粒、経口コレスチラミン製剤、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/785 20060101AFI20240119BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 31/554 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
A61K31/785
A61K31/551
A61K31/554
A61K9/16
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61P1/12
A61P1/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P43/00 121
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022135754
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2020506231の分割
【原出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2022166326
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】1750978-7
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509100737
【氏名又は名称】アルビレオ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペル-ヨーラン・ギルベリ
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・オーヴェ・グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】クート・レーヴグレーン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-290822(JP,A)
【文献】国際公開第01/076635(WO,A1)
【文献】特表2005-536502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/04
A61P 1/12
A61P 1/18
A61P 1/16
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各顆粒が少なくとも70%w/wのコレスチラミン、並びに
i.少なくとも6%w/wの結合剤及び少なくとも2%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
ii.少なくとも5%w/wの結合剤及び少なくとも3%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iii.少なくとも6%w/wの結合剤、少なくとも1%w/wのアクリレートコポリマー及び5から15%w/wの微結晶セルロースの組合せ;
を含み、
結合剤が、セルロースエーテル、ビニルピロリドン系ポリマー、又はそれらの組合せを含む、結腸へのコレスチラミンの標的送達のための1つ又は複数のコーティング層で被覆される顆粒。
【請求項2】
結合剤がセルロースエーテルである、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
結合剤が、ビニルピロリドン系ポリマーである、請求項1に記載の顆粒。
【請求項4】
結合剤が、セルロースエーテル及びビニルピロリドン系ポリマーの組合せを含む、請求項1に記載の顆粒。
【請求項5】
セルロースエーテルが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらのセルロースエーテルの2つ以上を含む混合物である、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項6】
ビニルピロリドン系ポリマーがコポビドンである、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項7】
アクリレートコポリマーが、メタクリル酸アンモニオコポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項8】
顆粒が、少なくとも85%w/wのコレスチラミンを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項9】
顆粒の直径が、1000から1600μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項10】
結腸標的送達のために製剤化されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の複数のコレスチラミン顆粒を含む多粒子薬剤送達システム。
【請求項12】
コレスチラミン顆粒が結腸標的送達のために製剤化されている、請求項11に記載の薬剤送達システム。
【請求項13】
結腸標的送達が、酵素-制御放出に基づいている、請求項12に記載の薬剤送達システム。
【請求項14】
結腸標的送達が、pH-及び拡散-制御放出に基づいている、請求項12に記載の薬剤送達システム。
【請求項15】
a)請求項1から9のいずれか一項に記載の複数の顆粒;及び
b)前記顆粒周囲の結腸放出コーティング
を含む、コレスチラミンの結腸への標的送達のための経口製剤。
【請求項16】
結腸放出コーティングが弾性である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
結腸放出コーティングがデンプンを含む、請求項15又は16に記載の製剤。
【請求項18】
デンプンが難消化性デンプンタイプ2(RS2)である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
結腸放出コーティングが、拡散-制御内部コーティング層及び腸溶性外部コーティング層を含む、請求項15又は16に記載の製剤。
【請求項20】
拡散-制御内部コーティング層が、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.2、1:2:0.1又はそれらの組合せを含む、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
腸溶性外部コーティング層が、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項19又は20に記載の製剤。
【請求項22】
胆汁酸吸収不良の治療又は予防における使用のための、請求項15から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
胆汁酸吸収不良が、回腸疾患(クローン病等)、回腸切除若しくは回腸バイパスの結果、胆汁酸の過剰産生若しくは肝臓の胆汁酸合成の不完全なフィードバック阻害の結果、又は胆嚢摘出術、迷走神経切離術、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、セリアック病、膵機能不全(慢性膵炎、嚢胞性線維症)、膵移植、放射線性腸炎、コラーゲン大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、潰瘍性大腸炎若しくは過敏性腸症候群(IBS-D)の結果である、請求項22に記載の使用のための製剤。
【請求項24】
胆汁酸下痢の治療又は予防における使用のための、請求項15から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
IBAT阻害剤の経口投与時の胆汁酸下痢の治療又は予防における使用のための、請求項15から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
IBAT阻害剤の経口投与を含む、胆汁うっ滞性肝疾患の治療時の胆汁酸下痢の治療又は予防における使用のための、請求項15から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
IBAT阻害剤が、
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;若しくは
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-1'-フェニル-1'-[N'-(カルボキシメチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン;
又は医薬品に許容されるその塩
である、請求項26に記載の使用のための製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレスチラミンを含む小さな顆粒に関する。前記顆粒はコレスチラミン含量が高く、且つ1つ又は複数のコーティング層で被覆されるのに十分なほど安定である。本発明はまた、こうした顆粒を含む多粒子薬剤送達システムにも関する。本発明は更に、結腸放出コーティングで被覆された複数のコレスチラミン顆粒を含む、結腸へのコレスチラミンの標的送達のための経口製剤に関する。本発明はまた、胆汁酸吸収不良及び胆汁酸下痢の治療におけるこの製剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁酸吸収不良は結腸における胆汁酸の過剰を特徴とする病態であり、慢性下痢につながることも多い。胆汁酸は肝臓において合成され、且つ抱合されるステロイド酸である。胆汁酸は、肝臓から胆管系を通って小腸内に分泌され、そこで食物中の脂肪及び脂溶性ビタミンの可溶化及び吸収に関与する。回腸に到達すると、胆汁酸は門脈循環中に再吸収され、肝臓に戻る。分泌された胆汁酸のうち少量は回腸中で再吸収されずに結腸に到達する。ここで、細菌作用によって胆汁酸の脱抱合及び脱ヒドロキシル化が起こり、二次胆汁酸であるデオキシコール酸及びリトコール酸が生成する。
【0003】
結腸において、胆汁酸(特に、脱ヒドロキシル化された胆汁酸であるケノデオキシコーレート及びデオキシコレート)は、電解質及び水の分泌を刺激する。これは結腸の運動性を高め、結腸通過時間を短縮する。胆汁酸は、過剰に存在すると、腹部膨満、便意切迫及び便失禁等の他の消化管症状を伴って、下痢を引き起こす。胆汁酸塩又は胆汁酸吸収不良、すなわちBAMのこの病態の理解においては、最近幾つかの進歩が見られている(Pattni及びWalters、Br. Med. Bull. 2009、vol 92、79~93頁; Islam及びDi Baise、Pract. Gastroenterol. 2012、vol. 36(10)、32~44頁)。遠位回腸の胆汁酸吸収不全の原因によって、胆汁酸吸収不良はタイプ1、タイプ2及びタイプ3 BAMに分類されうる。
【0004】
下痢はまた、回腸胆汁酸吸収(IBAT)阻害剤による治療等、胆汁酸産生を増加させる及び/又は小腸による胆汁酸の再吸収に影響を与える薬剤による治療後の大腸における高胆汁酸濃度の結果でもありえる。
【0005】
胆汁酸吸収不良の現在の治療は、消化管中の過剰な胆汁酸を結合することを目的としており、小腸近位部から始まり、それによって胆汁酸による分泌性作用を低減する。この目的で、コレスチラミンは通常胆汁酸封鎖剤として使用される。コレスチラミン(cholestyramine又はcolestyramine; CAS番号11041-12-6)は、強塩基性のアニオン交換樹脂であり、実際のところ水に不溶であり、且つ消化管から吸収されない。それどころか、腸の中で胆汁酸を吸収して結合し、不溶性の複合体を形成する。胆汁酸の当該樹脂への結合時に形成される複合体は、糞便中に排泄される。それによって当該樹脂は、腸肝循環による胆汁酸の通常の再吸収を妨げ、再吸収から除外された分を置き換えるための、コレステロールの胆汁酸への変換の増大をもたらす。この変換は、主として低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールを低下させることによって、血漿コレステロール濃度を低下させる。
【0006】
コレスチラミンはまた、高コレステロール血症、II型抗リポタンパク血症の治療及び2型糖尿病において、脂質低下剤としても使用される。更に、回腸切除、クローン病、迷走神経切離術、糖尿病性迷走神経障害及び放射線照射に関連する下痢の軽減、並びに胆汁うっ滞症患者における掻痒症の治療に使用される。
【0007】
高脂血症及び下痢の現在の治療において、経口コレスチラミン用量は、1日当たり12から24gであり、単回用量として又は最大4回の分割用量として投与される。掻痒症の治療において、4から8gの用量で通常、十分である。コレスチラミンは、消化管への影響を最小限にするために、3から4週間にわたり段階的に導入されてよい。最も一般的な副作用は便秘であり、その他の消化管副作用は、腹部膨満、腹部の不快感及び疼痛、胸やけ、鼓腸及び吐気/嘔吐である。胆汁中のコレステロール濃度の上昇による胆石症のリスク上昇がある。高用量は、脂質の消化管吸収阻害及びそれに付随する脂溶性ビタミンの吸収低下による脂肪便を引き起こすことがある。慢性投与は、ビタミンKの欠乏に関連する低プロトロンビン血症により出血傾向の増大をもたらすことがあり、又はカルシウム及びビタミンDの吸収が障害されることにより骨粗鬆症につながることがある。また、時折、皮疹及び舌、皮膚及び肛門周囲部域の掻痒の報告がある。味及びテクスチャの悪さ並びに種々の副作用のために、患者の>50%が12カ月以内に治療を中止する。
【0008】
コレスチラミンを使用する現在の治療のもう1つの欠点は、この剤が同時に投与された他の薬剤、例えばエストロゲン、チアジド系利尿薬、ジゴキシン及び関連のアルカロイド、ロペラミド、フェニルブタゾン、バルビツーレート、甲状腺ホルモン、ワルファリン及び幾つかの抗生物質等、の吸収を低減することである。したがって、他の薬剤はコレスチラミン投与の少なくとも1時間前又は4から6時間後に投与するべきである。同時投与する薬剤の用量調整を行うことが更に必要なこともある。
【0009】
これらの副作用を考慮すると、コレスチラミンが結腸放出製剤として、すなわち結腸近位部におけるコレスチラミンの放出のために、製剤化されうるのであれば、望ましい。こうした製剤はより低用量のコレスチラミンを必要とする可能性があり、且つテクスチャ及び味に関してより良好な特性を有するはずであり、したがって患者に、より忍容されうる。より重要なことには、コレスチラミンの結腸放出は、増大した結腸の分泌及び運動性を低減するために依然として胆汁酸に結合する一方で、他の薬剤との相互作用を生じるべきではなく、且つ脂質及び脂溶性ビタミンの吸収不良のリスクを誘導すべきではない。患者のコンプライアンスのために、服用する錠剤の数を可能な限り少なく保つことは更に望ましい。したがって、各錠剤は可能な限り多量のコレスチラミンを含有すべきである。
【0010】
EP 1273307は、小腸下部から盲腸までの部域周辺での胆汁酸吸収剤の放出を可能にするようにポリマーで被覆された胆汁酸吸収剤を含む、胆汁酸下痢を防ぐための調製物を開示している。HPMCAS-HF又はエチルセルロースで被覆されたコレスチラミン顆粒が、胃環境を模擬する条件下で、広範な膨潤及び破裂を呈したことが示されている。
【0011】
Jacobsen他(Br. Med. J. 1985、vol. 290、1315~1318頁)は、回腸切除を受けた患者が、酢酸フタル酸セルロースで被覆した500mgコレスチラミン錠剤を(1日12錠)投与された試験を記述している。この試験において、14名の患者のうち5名で、錠剤は所望の部位において崩壊しなかった。
【0012】
WO 2017/138876は、少なくとも70%のコレスチラミンを含むコレスチラミンペレットを開示している。これらペレットは、結合剤として、より少量のビニルピロリドン系ポリマーを含む。
【0013】
WO 2017/138877及びWO 2017/138878は、結腸へのコレスチラミンの標的送達のための経口製剤を開示しており、これらの製剤は、複数の被覆されたコレスチラミンペレットを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】EP 1273307
【文献】WO 2017/138876
【文献】WO 2017/138877
【文献】WO 2017/138878
【文献】WO 93/16055
【文献】WO 94/18183
【文献】WO 94/18184
【文献】WO 96/05188
【文献】WO 96/08484
【文献】WO 96/16051
【文献】WO 97/33882
【文献】WO 98/03818
【文献】WO 98/07449
【文献】WO 98/40375
【文献】WO 99/35135
【文献】WO 99/64409
【文献】WO 99/64410
【文献】WO 00/47568
【文献】WO 00/61568
【文献】WO 00/38725
【文献】WO 00/38726
【文献】WO 00/38727
【文献】WO 00/38728
【文献】WO 00/38729
【文献】WO 01/68096
【文献】WO 02/32428
【文献】WO 03/061663
【文献】WO 2004/006899
【文献】WO 2007/009655
【文献】WO 2007/009656
【文献】DE 19825804
【文献】EP 864582
【文献】EP 489423
【文献】EP 549967
【文献】EP 573848
【文献】EP 624593
【文献】EP 624594
【文献】EP 624595
【文献】EP 624596
【文献】EP 0864582
【文献】EP 1173205
【文献】EP 1535913
【文献】WO 01/66533
【文献】WO 02/50051
【文献】WO 03/022286
【文献】WO 03/020710
【文献】WO 03/022825
【文献】WO 03/022830
【文献】WO 03/091232
【文献】WO 03/106482
【文献】WO 2004/076430
【文献】WO 99/32478
【文献】WO 00/01687
【文献】WO 01/68637
【文献】WO 03/022804
【文献】WO 2008/058628
【文献】WO 2008/058630
【非特許文献】
【0015】
【文献】Pattni及びWalters、Br. Med. Bull. 2009、vol 92、79~93頁
【文献】Islam及びDi Baise、Pract. Gastroenterol. 2012、vol. 36(10)、32~44頁
【文献】Jacobsen他(Br. Med. J. 1985、vol. 290、1315~1318頁)
【文献】Sinha及びKumria、Eur. J. Pharm. Sci. 2003、vol.18、3~18頁
【文献】Marzorati他(LWT-Food Sci. Technol. 2015、vol.60、544~551頁)
【文献】Possemiers他(FEMS Microbiol. Ecol. 2004、vol. 49、495~507頁)
【文献】Carulli他、Aliment. Pharmacol. Ther. 2000、vol.14、issue supplement s2、14~18頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この分野における進歩にも関わらず、更に改善されたコレスチラミン製剤に対するニーズは依然として存在する。特に、高コレスチラミン含有量を有し、且つコーティング過程の間に安定な、小さなコレスチラミン粒子へのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、少なくとも70%のコレスチラミン含有量を有し且つ1つ又は複数のコーティング層を塗布するために従来使用される条件に耐えるに十分なほど安定である、小さく且つ安定な顆粒を提供する。特に、本発明は、各顆粒が少なくとも70%w/wのコレスチラミン、並びに、
i.少なくとも7%w/wの結合剤;又は
ii.少なくとも6%w/wの結合剤及び少なくとも2%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iii.少なくとも5%w/wの結合剤及び少なくとも3%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iv.少なくとも6%w/wの結合剤、少なくとも1%w/wのアクリレートコポリマー及び5から15%w/wの微結晶セルロースの組合せ;
を含む、顆粒群を提供する。
【0018】
顆粒は、顆粒が結腸に到達するまでコレスチラミンの放出を妨げる1つ又は複数のコーティング層で被覆されていてよい。
【0019】
別の一態様において、発明は、本明細書に記載の複数のコレスチラミン顆粒を含む多粒子薬剤送達システムを、より特にコレスチラミン顆粒が結腸標的送達のために製剤化されている薬剤送達システムを、提供する。
【0020】
更に別の一態様において、本発明は本明細書に記載の複数の顆粒及び前記顆粒の周囲の結腸放出コーティングを含む、コレスチラミンの結腸への標的送達のための経口製剤を提供する。小さなコレスチラミン顆粒と結腸放出コーティングの組合せはコレスチラミンの用量を例えば、1.5gを1日2回に低減することを可能にする。コレスチラミンのこの用量は結腸内の過剰な胆汁酸を結合するために十分であると考えられる。したがって、製剤は、胆汁酸吸収不良及び胆汁酸下痢の治療又は予防に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は、胃及び小腸のpHを模擬したアッセイにおける種々の製剤の封鎖プロファイルを示す図である。
図1A】pH5.5における6時間の間の製剤A、B及びCの結果を示す。
図1B】pH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の間の製剤A、B及びCの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
コレスチラミンの小さく且つ安定な顆粒は、コレスチラミンと適切な結合剤とを含む混合物を顆粒化することによって得られることが見出されている。こうした顆粒は、コレスチラミンの含有量が高く且つ1つ又は複数のコーティング層を塗布するために従来使用される条件に耐えるに十分なほど安定である。
【0023】
第一の態様において、本発明は、各顆粒が少なくとも70%w/wのコレスチラミン、並びに
i.少なくとも7%w/wの結合剤;又は
ii.少なくとも6%w/wの結合剤及び少なくとも2%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iii.少なくとも5%w/wの結合剤及び少なくとも3%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iv.少なくとも6%w/wの結合剤、少なくとも1%w/wのアクリレートコポリマー及び5から15%w/wの微結晶セルロースの組合せ;
を含み、
結合剤が、セルロースエーテル、ビニルピロリドン系ポリマー、ショ糖、乳糖、カラギーナン、デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレンオキシド、キトサン、カルナウバロウ、ゼラチン、アカシア、グアーガム及びポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール-グラフトコポリマー、又はそれらの混合物から成る群から選択される1つの剤を含む、顆粒群に関する。
【0024】
本明細書において使用される用語「顆粒」は、湿式造粒によって得られる顆粒を表す。
【0025】
顆粒が、顆粒の乾燥及びコーティングの間等の取扱いの間の機械的ストレスに耐えるに十分なほど安定であることは不可欠である。顆粒の安定性は、固体物質(錠剤、顆粒、球体又はペレット等)が、例えば摩耗、破砕又は変形によって、より小さな小片に縮小される可能性である摩損度によって表すことができる。低度の摩損度は、固体物質が小片に壊れる程度がごくわずかであることを意味する。本明細書において使用される摩損度は、顆粒が、回転、振動、流動化等の機械的ストレスを受けた場合に発生する、顆粒の質量の減少として定義される。摩損度を測定する方法は、当技術分野において既知である(例えば、欧州薬局方第8版、試験2.9.41)。
【0026】
前述したものよりも少量の結合剤及び/又はアクリレートコポリマーを含むことは、顆粒の収率低下及び摩損度上昇をもたらす。摩損度は好ましくは3.5%未満、例えば3.0%未満等、2.5%未満等、又は2.0%未満等、より好ましくは1.5%未満、更により好ましくは1.0%未満、更により好ましくは0.5%未満である。
【0027】
好ましい一実施形態において、本発明は各顆粒が少なくとも70%w/wのコレスチラミン、並びに
i.少なくとも7%w/wの結合剤;又は
ii.少なくとも6%w/wの結合剤及び少なくとも2%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iii.少なくとも5%w/wの結合剤及び少なくとも3%w/wのアクリレートコポリマーの組合せ;又は
iv.少なくとも6%w/wの結合剤、少なくとも1%w/wのアクリレートコポリマー及び5から15%w/wの微結晶セルロースの組合せ;
を含み、結合剤が、セルロースエーテル、ビニルピロリドン系ポリマー、又はそれらの組合せを含む、顆粒群に関する。
【0028】
セルロースエーテルは、医薬及び経口での使用に適したいかなるセルロースエーテルであってもよい。適切なセルロースエーテルの例には、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(エツロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC又はヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はそれらのナトリウム塩(NaCMC)、及び前述のセルロースエーテルの2つ以上を含む混合物が含まれる。
【0029】
ビニルピロリドン系ポリマーは、ポリビニルピロリドン(ポビドン)又はビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(コポビドン)であってよい。ポビドンは、N-ビニルピロリドンから作られる、直鎖状、水溶性ポリマーである。コポビドンは(コポリビドンとしても知られ)、質量比6:4の1-ビニル-2-ピロリドン(ポビドン)と酢酸ビニルの直鎖状、水溶性コポリマーである。好ましい一実施形態において、ビニルピロリドン系ポリマーはコポビドンである。
【0030】
一実施形態において、結合剤はセルロースエーテルである(すなわち、結合剤はビニルピロリドン系ポリマーを含まない)。セルロースエーテルは好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらのセルロースエーテルの2つ以上を含む混合物である。
【0031】
別の一実施形態において、結合剤はビニルピロリドン系ポリマーである(すなわち、結合剤はセルロースエーテルを含まない)。ビニルピロリドン系ポリマーは、好ましくはコポビドンである。
【0032】
更に別の一実施形態において、結合剤はセルロースエーテル及びビニルピロリドン系ポリマーの両方を含む。セルロースエーテルは、好ましくはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらのセルロースエーテルの2つ以上を含む混合物であり、ビニルピロリドン系ポリマーは、好ましくはコポビドンである。
【0033】
アクリレートコポリマーは、アクリレートモノマーを含む、医薬品に許容されるいかなるコポリマーであってもよい。アクリレートモノマーの例は、アクリレート(アクリル酸)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸(メタクリレート)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸トリメチルアンモニオエチル及びメタクリル酸ジメチルアンモニオエチルを含むが、これらに限定されるものではない。幾つかのアクリレートコポリマーが、Eudragit(登録商標)の商品名で知られている。
【0034】
ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)は、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及び低含有量のメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド(第4級アンモニウム基を有するメタクリル酸エステル)のコポリマーである。コポリマーはまた、メタクリル酸アンモニオコポリマーとも称される。コポリマーは不溶性であるがアンモニウム塩の基の存在が、コポリマーを透過性にする。コポリマーは、1:2:0.2混合物(タイプA)として、又は1:2:0.1混合物(タイプB)として入手可能である。タイプA及びタイプBの30%水性分散体は、それぞれ、Eudragit(登録商標) RL 30 D及びEudragit(登録商標) RS 30 Dの商品名で販売されている。
【0035】
ポリ(アクリル酸メチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)7:3:1は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のコポリマーである。酸性媒体には不溶であるが、pH7.0超で塩形成によって溶解する。30%水性分散体は、Eudragit(登録商標) FS 30 Dの商品名で販売されている。
【0036】
ポリ(メタクリル酸-co-アクリル酸エチル)1:1は、アクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマーである。pH5.5未満の酸性媒体には不溶であるが、このpH超で塩形成によって溶解する。30%水性分散体は、Eudragit(登録商標) L 30 D-55の商品名で販売されている。
【0037】
更に適切なアクリル酸コポリマーには、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの水不溶性コポリマーである、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル)2:1が含まれる。30%水性分散体は、Eudragit(登録商標) NE 30 D及びEudragit(登録商標) NM 30 Dの商品名で販売されている。
【0038】
好ましいアクリレートコポリマーは、メタクリル酸アンモニオコポリマー、ポリ(アクリル酸メチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)7:3:1、及びポリ(メタクリル酸-co-アクリル酸エチル)1:1である。より好ましくは、アクリレートポリマーは、メタクリル酸アンモニオコポリマーであり、最も好ましくは、アクリレートポリマーは、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.2である。
【0039】
代替選択肢i~iiiによる顆粒は更に、微結晶セルロース等の賦形剤を含んでよい。微結晶セルロース、すなわちMCCは、より短い結晶性ポリマー鎖を有する、精製され、部分的に解重合されたセルロースである。その結合性能は、MCCを、薬剤処方において最も一般に使用されるフィラー及び結合剤の1つにしている。一実施形態において、代替選択肢i~iiiによる顆粒は、最大10%w/wの微結晶セルロースを、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10%w/w等の微結晶セルロースを含む。別の一実施形態において、代替選択肢i~iiiによる顆粒は、最大5%w/wの微結晶セルロースを含む。別の一実施形態において、代替選択肢i~iiiによる顆粒は、微結晶セルロースを含まない。
【0040】
代替選択肢ivによる顆粒は、5から15%w/wの微結晶セルロースを含み、好ましくは少なくとも10%w/wの微結晶セルロースを、すなわち10、11、12、13、14又は15%w/w等の微結晶セルロースを含む。
【0041】
顆粒は、適切な粒度分布の顆粒分別物を得るために篩過される。コレスチラミン顆粒の直径は、好ましくは500μmから3000μm、より好ましくは750μmから2000μm、更により好ましくは1000から1600μmである。最も好ましい一実施形態において、顆粒の直径は1000から1400μmである。
【0042】
その物理的性質のために、コレスチラミンパウダーは多量の水を吸収でき、それが材料のかなりの膨潤を引き起こす。したがって、乾燥コレスチラミンから湿潤塊を調製するためには、乾燥成分から湿潤塊を調製するのに通常使用されるよりも多くの水を添加する必要がある。好ましくは、水は、コレスチラミンの量(w/w)の少なくとも1.5倍の量で、より好ましくはコレスチラミンの量(w/w)の少なくとも1.75倍の量で、更により好ましくはコレスチラミンの量(w/w)の少なくとも2倍の量で、乾燥成分の混合物に添加される。
【0043】
未被覆顆粒は、水性条件下では、迅速に崩壊する。しかし、未被覆顆粒は、1つ又は複数のコーティング層を顆粒に塗布するために必要な条件に耐えるに十分なほど安定である。
【0044】
コレスチラミン顆粒は、結腸内で過剰な胆汁酸と結合すべきであるところから、結腸標的送達のために製剤化されるべきである。これは、顆粒が結腸に到達するまでコレスチラミンの放出を遅らせる1つ又は複数の層によって、コレスチラミン顆粒をコーティングすることにより達成することができる。
【0045】
したがって、別の一態様において、本発明は本発明の組成物は、本明細書に記載の複数のコレスチラミン顆粒を含む多粒子薬剤送達システムに関する。好ましい一実施形態において、コレスチラミン顆粒は結腸標的送達のために製剤化される。その場合に顆粒は、被覆された顆粒が大腸、特に近位結腸に到達するまで、顆粒からのコレスチラミンの放出を遅らせる1つ又は複数の層によって被覆される。一実施形態において、結腸標的送達は、顆粒の酵素-制御放出に基づいている。別の一実施形態において、結腸標的送達は、顆粒のpH-及び拡散-制御放出に基づいている。
【0046】
コレスチラミンは、溶解性が非常に低いために、被覆されたコレスチラミン顆粒を含む製剤からは「放出」されず、製剤から腸の中に溶解し、拡散する。むしろ、コレスチラミンは、おそらくは、被覆された顆粒の徐々に分解する構造中に留まっている。したがって、本明細書において使用される用語、コレスチラミンの「放出」は、腸の中で構成成分(すなわち、胆汁酸)と結合するための、腸内容物に対するコレスチラミンの利用可能性を表す。
【0047】
別の一態様において、本発明は
a)本明細書に開示の複数の顆粒;及び
b)前記顆粒周囲の結腸放出コーティング
を含む、コレスチラミンの結腸への標的送達のための経口製剤に関する。
【0048】
別の一態様において、本発明は
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング
を含む経口製剤であって、コレスチラミンの70%超が結腸において放出される経口製剤に関する。
【0049】
幾つかの実施形態において、コレスチラミンの75%超が結腸において放出される。他の実施形態において、コレスチラミンの80%超が結腸において放出される。他の実施形態において、コレスチラミンの85%超が結腸において放出される。更に他の実施形態において、コレスチラミンの90%超が結腸において放出される。
【0050】
更に別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング
を含む経口製剤であって、コレスチラミンの30%未満が小腸において放出される経口製剤に関する。
【0051】
幾つかの実施形態において、コレスチラミンの25%未満が小腸において放出される。他の実施形態において、コレスチラミンの20%未満が小腸において放出される。他の実施形態において、コレスチラミンの15%未満が小腸において放出される。更に他の実施形態において、コレスチラミンの10%未満が小腸において放出される。
【0052】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、顆粒が、欧州薬局方第8版、試験2.9.41を用いて測定したとき3.5%未満の摩損度を呈する経口製剤に関する。
【0053】
幾つかの実施形態において、顆粒は3.0%未満の摩損度を呈する。他の実施形態において、顆粒は2.5%未満の摩損度を呈する。他の実施形態において、顆粒は2.0%未満の摩損度を呈する。他の実施形態において、顆粒は1.5%未満の摩損度を呈する。他の実施形態において、顆粒は1.0%未満の摩損度を呈する。更に他の実施形態において、顆粒は0.5%未満の摩損度を呈する。
【0054】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5においてコレスチラミンの30%未満が6時間後に放出される経口製剤に関する。
【0055】
幾つかの実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5においてコレスチラミンの25%未満が6時間後に放出される。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5においてコレスチラミンの20%未満が6時間後に放出される。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5においてコレスチラミンの15%未満が6時間後に放出される。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5においてコレスチラミンの10%未満が6時間後に放出される。
【0056】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5において6時間後に、コール酸の30%未満の封鎖を示す経口製剤に関する。
【0057】
幾つかの実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5において6時間後に、製剤はコール酸の25%未満の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5において6時間後に、製剤はコール酸の20%未満の封鎖を示す。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH5.5において6時間後に、製剤はコール酸の15%未満の封鎖を示す。
【0058】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の後に、コール酸の30%超の封鎖を示す経口製剤に関する。
【0059】
幾つかの実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の後に、製剤はコール酸の35%超の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の後に、製剤はコール酸の40%超の封鎖を示す。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の後に、製剤はコール酸の45%超の封鎖を示す。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH6.8で4時間の後に、製剤はコール酸の50%超の封鎖を示す。
【0060】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間後に、コール酸の30%未満の封鎖を示す経口製剤に関する。
【0061】
幾つかの実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間後に、製剤はコール酸の25%未満の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間後に、製剤はコール酸の20%未満の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間後に、製剤はコール酸の15%未満の封鎖を示す。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間後に、製剤はコール酸の10%未満の封鎖を示す。
【0062】
更に別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、前記顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH7.4で4時間の後に、コール酸の30%超の封鎖を示す経口製剤に関する。
【0063】
幾つかの実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH7.4で4時間の後に、製剤はコール酸の35%超の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH7.4で4時間の後に、製剤はコール酸の40%超の封鎖を示す。他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH7.4で4時間の後に、製剤はコール酸の45%超の封鎖を示す。更に他の実施形態において、米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いて測定したときpH1で2時間、それに続いてpH7.4で4時間の後に、製剤はコール酸の50%超の封鎖を示す。
【0064】
結腸放出コーティングはまた、コレスチラミン顆粒の破裂を防止すべきである。コーティングを通過して拡散する水がコレスチラミンによって吸収されるとき、コレスチラミンの体積の増加が顆粒の膨潤につながる。顆粒のコーティングは、そうした理由から、顆粒の膨潤に耐えるために、十分に弾性があるべきである。顆粒の破裂を防止することにより、コーティングはコレスチラミンの時期尚早な放出を回避する。
【0065】
結腸放出コーティングは、顆粒が結腸の所望の部位に到達するまで、腸内容物に対するコレスチラミンの利用可能性を遅らせる1つ又は複数のコーティング層から成る。細菌環境の変化に基づく(すなわち、酵素-制御放出)若しくはpH変化に基づく(すなわち、pH-制御放出)技術、コーティングの漸進的浸食に基づく(時間-制御放出)技術若しくは透過性フィルムを通過しての拡散に基づく(拡散-制御放出)技術、又は前述の技術の2つ以上の組合せが、顆粒の放出位置及び放出速度を制御するために使用されてよい。
【0066】
酵素-制御放出コーティング
一実施形態において、顆粒周囲の結腸放出コーティングは、結腸におけるコレスチラミンの酵素-制御放出を可能にする。その場合にコーティング層は、結腸内に存在する細菌酵素により分解されるが消化管内に存在するヒト酵素によっては分解されない生分解性ポリマーを含む。顆粒からのコレスチラミンの放出は、細菌環境の変化によって誘発され、実質的には、被覆された顆粒が結腸に到達するまでは妨げられる。
【0067】
生分解性ポリマーは、アゾポリマー又は多糖であってよい。細菌によって分解されうる多糖類の例には、キトサン、ペクチン、グアーガム、デキストラン、イヌリン、デンプン及びアミロース、並びにそれらの誘導体が含まれる(Sinha及びKumria、Eur. J. Pharm. Sci. 2003、vol.18、3~18頁)。結腸放出コーティングは、好ましくはデンプンを含む。
【0068】
デンプンの構造は一般に、腸内細菌叢によってそれほど容易には分解されないアミロースを20~30%(w/w)含み、且つ腸内細菌叢によってより容易に分解されるアミロペクチンを70~80%(w/w)含む。したがって、構造中に存在するアミロース及びアミロペクチンの特定の量に依存して、種々のタイプのデンプンが種々の分解プロファイルを有する。難消化性デンプンは、高アミロース含有量を有し、一般に小腸における消化を逃れる。こうしたデンプンは、その代わりに、結腸において細菌によって消化される。デンプンの天然源及びどのように処理されたかによって、難消化性デンプンは4つのタイプ(RS1からRS4)に分類され、それぞれ異なる特性を有する。高アミローストウモロコシデンプン(すなわち、高アミロースコーンスターチ)等に含まれる難消化性デンプンタイプ2(RS2)は、デンプンの立体配座のために酵素にアクセスしにくい。コレスチラミン顆粒周囲の結腸放出コーティングは、好ましくは、難消化性デンプンタイプ2(RS2)を含む。RS2が調理されるか又は加熱される場合、レトログラデーションと呼ばれる過程においてアミロース及びアミロペクチン結晶構造の再整列が起こり、難消化性デンプンタイプ3(RS3)を生じる。
【0069】
生分解性ポリマーに加えて、コーティング層は、1つ又は複数の更なる有機ポリマーを含む。適切な有機ポリマーの例には、ポリ(アクリル酸メチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.2(Eudragit(登録商標)RL 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.1(Eudragit(登録商標)RS 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル)2:1(Eudragit(登録商標)NE 30 D又はEudragit(登録商標)NM 30 D)及びポリ(酢酸ビニル)(例えば、Kollicoat(登録商標)SR 30 D)が含まれるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、有機ポリマーは、ポリ(アクリル酸メチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)である。
【0070】
pH-及び拡散-制御コーティング
別の一実施形態において、顆粒周囲の結腸放出コーティングは、結腸におけるコレスチラミンのpH-及び拡散-制御放出を可能にする。その場合にコーティングは、顆粒周囲の拡散-制御内部コーティング層及び腸溶性の(pH-制御)外部コーティング層を含む。
【0071】
拡散-制御内部コーティング層は、コレスチラミンの放出改変を提供し、すなわちコレスチラミンを、即座に利用されるのではなく、長時間にわたって利用されるようにする。コーティングは、いかなるpH値においても不溶であるが水及びそこに溶解する小分子に対して透過性である、1つ又は複数のポリマーを含む。こうしたポリマーの例には、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.2(Eudragit(登録商標)RL 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.1(Eudragit(登録商標)RS 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル)2:1(Eudragit(登録商標)NE 30 D又はEudragit(登録商標)NM 30 D)及びポリ酢酸ビニル(Kollicoat(登録商標)SR 30 D)が含まれるが、これらに限定されるものではない。拡散-制御内部コーティングは、好ましくは、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.2(Eudragit(登録商標)RL 30 D)、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.1(Eudragit(登録商標)RS 30 D)又はそれらの組合せを含み、最も好ましくは、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)1:2:0.1を含む。
【0072】
腸溶性コーティング層は、胃において見られる酸性pH値(pH約1~3)において安定且つ不溶であるが、小腸において見られるpH値(pH約6~7)等のより酸性度の低いpH値においては速やかに分解するか又は溶解性となる、pH-感受性ポリマーを含む。こうしたpH-感受性ポリマーの例には、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸メチル)1:1(Eudragit(登録商標)L 100)、ポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸メチル)1:2(Eudragit(登録商標)S 100)、ポリ(メタクリル酸-co-アクリル酸エチル)1:1(Eudragit(登録商標)L 100-55)、ポリ(アクリル酸メチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)、ポリ酢酸フタル酸ビニル、シェラック、アルギン酸ナトリウム、及びゼイン、並びにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。腸溶性コーティングは、好ましくは、ポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸メチル)1:1、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸メチル)1:2を含む群から選択されるpH-感受性ポリマーを含む。腸溶性コーティングは、最も好ましくは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0073】
水がコレスチラミンによって吸収されるとき、コレスチラミンの体積増大は、顆粒の膨潤につながる。したがって、酵素-制御コーティング層又は拡散-制御内部コーティング層は、弾性がある(すなわち、高い破断時伸び率を有する)べきである。コーティング層の弾性のために、コーティングはこの膨潤に耐えることができる。顆粒の破裂及びコレスチラミンの時期尚早な放出が、これにより回避される。コーティングの弾性は、有機ポリマー自体の弾性の結果である可能性があり、又は可塑剤の添加によって誘発されることがある。適切な可塑剤の例には、クエン酸トリエチル、トリ酢酸グリセリル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジブチル及びセバシン酸ジブチルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
コレスチラミン顆粒へのコーティング層の付着性を改善するために、又は顆粒内でのコーティング層とコレスチラミンの間の相互作用を最低限にするために、顆粒とコーティング層の間に、追加のバリアコーティング層がまた、任意選択で存在してよい。バリアコーティング層はまた、2つの異なるコーティング層が、互いに物理的に分離されたままであるべき場合にも存在してよい。バリアコーティング層に特に適切な材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0075】
制御放出コーティング層及び任意選択のバリアコーティング層は、酸及び塩基、可塑剤、流動化剤及び界面活性剤等の1つ又は複数の添加剤を含んでよい。適切な酸の例には、クエン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタスルホン酸、エタンジスルホン酸及びシュウ酸等の有機酸、並びに塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸等の無機酸が含まれる。適切な塩基の例には、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウム等の無機塩基が含まれる。適切な可塑剤の例には、クエン酸トリエチル、トリ酢酸グリセリル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジブチル及びセバシン酸ジブチルが含まれる。適切な流動化剤の例には、タルク、モノステアリン酸グリセリル、オレイン酸、中鎖トリグリセリド及びコロイド状二酸化ケイ素が含まれる。適切な界面活性剤の例には、トデシル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80及びモノオレイン酸ソルビタンが含まれる。
【0076】
粘着防止剤の薄層が、被覆された顆粒に最終的に塗布されてよい。この外層は、被覆された顆粒が、例えば保存中に、粘着し合うのを防止する。適切な粘着防止剤の例には、ヒュームドシリカ、タルク及びステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0077】
コーティング層は、有孔パン及び流動床を含むフィルムコーティングによるもの等の当技術分野において既知の方法によって、コレスチラミン顆粒に塗布されてよい。
【0078】
結腸放出コーティングは、顆粒が大腸に到達するまで、顆粒からのコレスチラミンの放出を実質的に妨げる。好ましくは、小腸においてコレスチラミンの暴露はあるべきではないが、暴露は、多粒子が回盲弁を通過したらすぐに起こるべきである。一実施形態において、コレスチラミンの30%未満が、例えば20%未満が、例えば10%未満が、小腸において放出される。より好ましい一実施形態において、コレスチラミンの5%未満が、小腸において放出される。別の一実施形態において、コレスチラミンの70%超が、例えば80%超が、例えば90%超が、結腸において放出される。より好ましい一実施形態において、コレスチラミンの95%超が、結腸において放出される。
【0079】
結腸放出コーティングは、顆粒に更なる質量及び体積を加える。顆粒のサイズが小さくなればなるほど、最終製剤の体積に対するコーティングの影響は大きくなる。しかし、患者のコンプライアンスのために、製剤の総体積を可能な限り小さく保つことが望ましい。したがってコーティング層は、可能な限り薄くあるべきである。好ましくは、最終製剤におけるコーティングの量は(乾燥質量ベースで)、50%w/w未満、より好ましくは45%w/w未満、より好ましくは40%w/w未満、更により好ましくは35%w/w未満である。
【0080】
顆粒のコレスチラミン含有量は、可能な限り高くあるべきである。したがって未被覆顆粒は、好ましくは少なくとも75%w/wのコレスチラミンを、より好ましくは少なくとも80%w/wのコレスチラミンを、更により好ましくは少なくとも85%w/wのコレスチラミンを、最も好ましくは少なくとも90%w/wのコレスチラミンを含む。最終製剤のコレスチラミン含有量は(乾燥質量ベースで)、好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも55%w/wである。
【0081】
本明細書に記載の経口製剤は、患者の年齢及び全般的身体状態等の要因に応じて、種々の形態で患者に投与されてよい。例えば、製剤は、被覆された顆粒が含まれる1つ又は複数のカプセルの形態で投与されてよい。こうしたカプセルは通常、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン又はデンプン等の胃において酸性条件下で容易に崩壊する分解性の材料を含む。被覆された顆粒は、それによって迅速に、胃の中に放出される。したがって、一態様において、本発明は本明細書において開示の経口製剤を含むカプセルに関する。
【0082】
別法として、被覆された顆粒は、内容物が液体又は柔らかい食物中に分散されていてよい、スプリンクル製剤として投与されてよい。こうした製剤は、より大きなカプセルを飲み込む必要がなく、したがって乳幼児及び高齢者に対して特に有用である。したがって、別の一態様において、本発明は、本明細書において開示の経口製剤を含むスプリンクル製剤に関する。こうした製剤において、被覆された顆粒は、カプセル、サシェ又はスティックパックに包含されてよい。
【0083】
本明細書において開示の経口製剤は、他の製剤に対する幾つかの優位点を提供する。本発明による被覆された小さな顆粒(多粒子)は、消化管を容易に通過することができる。これは、(胃において崩壊しない錠剤又はカプセル等の)モノリシック製剤が時として遭遇するような、製剤が胃において又は回盲弁において等、消化管中で一時的に停滞するリスクを排除する。更に、コレスチラミンは、結腸放出コーティングが消化管下部、特に回腸において分解され始めて、初めて、腸内容物に対して利用可能になる。したがって、胃及び小腸の内容物は、コレスチラミンから効果的に保護され、このことは胃又は小腸においてコレスチラミンを直接放出する製剤に比べて大きな改善である。コレスチラミンは、結腸に到達した後に初めて、腸内容物に対して利用可能になるため、本明細書において開示の経口製剤はまた、コレスチラミンと、他の薬剤又は栄養分等の消化管内の他の成分との望ましくない相互作用を低減する。
【0084】
水性環境におけるコレスチラミンの低溶解性は、直接の測定対象である製剤からのコレスチラミンの放出を妨げる。腸内容物に対するコレスチラミンの経時的及び種々のpH値における利用可能性は、代わりに、消化管の模擬条件下での製剤の封鎖能を測定すること等によって、in vitroで決定されてよい。こうした方法には、実験セクションに記載のように、消化管に典型的な液状媒体中の遊離胆汁酸(すなわち、封鎖される化合物)の量の減少の測定が含まれる。コレスチラミン樹脂のオフィシャルモノグラフ(米国薬局方40、3404頁)も参照のこと。
【0085】
例えば、コレスチラミン製剤の封鎖能は、ProDigest社(ベルギー、ゲント)によって開発されたSimulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem (SHIME(登録商標))を用いて試験されてよい。実験セクションにおいてより詳細に記述されるように、このモデルは、絶食した胃、小腸及び近位結腸の典型的な生理的条件下での、コレスチラミン製剤の胆汁酸結合能のin vitro評価を可能にする。コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)及びデオキシコール酸(DCA)等の胆汁酸が、こうした試験において使用されてよく、又はこれら胆汁酸塩の2つ以上の混合物が使用されてもよい。好ましくはCA、CDCA及びDCAの40:40:20(w/w)混合物がヒト胆汁酸塩の典型的混合物として使用される。コレスチラミン製剤に関する実験は、アッセイにおいて使用される条件下での胆汁酸塩の分解をモニターするために、コレスチラミンを添加しない対照実験と同時に行われるべきである。各実験に関して、試料は選択された時間間隔で採取され、試料中の胆汁酸の濃度は、例えばHPLCによって決定される。これらデータから、各試験試料中の残存胆汁酸のパーセンテージは、相当するインキュベーション時間における試験試料の値の対照試料の値に対する比:
【0086】
【数1】
【0087】
として算出することができる。
【0088】
残存胆汁酸のパーセンテージの時間に対するプロットは、小腸及び結腸インキュベーションの間、胆汁酸の減少、すなわちコレスチラミン製剤による胆汁酸の封鎖を示すことになる。
【0089】
別の一態様において、本発明は、
a)各顆粒がコレスチラミンを含む、複数の顆粒;及び
b)コーティングが結腸におけるコレスチラミンの標的化放出の能力を有する、各顆粒周囲のコーティング、
を含む経口製剤であって、
本明細書の経口製剤が、Simulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME)モデルで測定して、2時間の小腸インキュベーション後に、コール酸、ケノデオキシコール酸、及びデオキシコール酸のうちの1つ又は複数の約30%未満の封鎖を示す経口製剤に関する。
【0090】
幾つかの実施形態において、経口製剤は、Simulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME)モデルで測定して、2時間の小腸インキュベーション後に、コール酸、ケノデオキシコール酸、及びデオキシコール酸のうちの1つ又は複数の約25%未満の封鎖を示す。他の実施形態において、経口製剤は、Simulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME)モデルで測定して、2時間の小腸インキュベーション後に、コール酸、ケノデオキシコール酸、及びデオキシコール酸のうちの1つ又は複数の約20%未満の封鎖を示す。更に他の実施形態において、経口製剤は、Simulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME)モデルで測定して、2時間の小腸インキュベーション後に、コール酸、ケノデオキシコール酸、及びデオキシコール酸のうちの1つ又は複数の約15%未満の封鎖を示す。
【0091】
別の一態様において、本発明は、胆汁酸吸収不良の治療又は予防における使用のための本明細書において開示の製剤に関する。
【0092】
本発明はまた、胆汁酸吸収不良の治療又は予防のための医薬の製造における本明細書において開示の製剤の使用に関する。本発明は更に、こうした治療又は予防を必要とする哺乳類に対して、治療的に有効な量の本明細書において開示の製剤を投与することを含む、胆汁酸吸収不良の治療又は予防のための方法にも関する。
【0093】
胆汁酸吸収不良は、遠位回腸の胆汁酸吸収不全の原因によって、3種類のタイプに分類することができる。タイプ1 BAMは、(末端)回腸疾患(クローン病等)又は(末端)回腸切除又はバイパスの結果である。タイプ2 BAMは、特発性胆汁酸吸収不良又は原発性胆汁酸下痢(BAD)を表すことが多く、胆汁酸の過剰産生の結果であるか又は肝臓の胆汁酸合成の不完全なフィードバック阻害に起因すると考えられる。このフィードバック制御は、ヒトにおいて、回腸ホルモン線維芽細胞成長因子19(FGF19)によって媒介される。最後に、タイプ3 BAMは、胆嚢摘出術、迷走神経切離術、小腸内細菌異常増殖(SIBO)、セリアック病、膵機能不全(慢性膵炎、嚢胞性線維症)、膵移植、放射線性腸炎、コラーゲン大腸炎、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性大腸炎、潰瘍性大腸炎又は過敏性腸症候群(すなわち、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D))の結果でありうる。
【0094】
製剤はまた、回腸胆汁酸吸収(IBAT)阻害剤と組み合わせて使用されてよい。肝疾患、脂肪酸代謝異常又はグルコース利用異常の治療等における、IBAT阻害剤による治療は、胆汁酸レベルの増加をもたらすこと及び/又は小腸による胆汁酸の再吸収に影響を及ぼす結果となることがあり、大腸における胆汁酸の高濃度につながり、したがって下痢を引き起こす。IBAT阻害剤による治療のこの副作用は、本明細書において開示の製剤による治療によって対処又は予防されうる。製剤及びIBAT阻害剤は、同時に、連続的に又は別個に投与されてよい。
【0095】
したがって、別の一態様において、本発明は、IBAT阻害剤の経口投与時の下痢の治療又は予防における使用のための、本明細書において開示の製剤に関する。
【0096】
本発明はまた、IBAT阻害剤の経口投与時の下痢の治療又は予防のための医薬の製造における、本明細書において開示の製剤に使用にも関する。本発明は更に、こうした治療又は予防を必要とする哺乳類に対して、治療的に有効な量のIBAT阻害剤及び本明細書において開示の製剤を投与することを含む、IBAT阻害剤の経口投与時の下痢の治療又は予防のための方法にも関する。
【0097】
好ましい一実施形態において、本発明は、IBAT阻害剤の経口投与を含む、胆汁うっ滞性肝疾患等の肝疾患の治療時の胆汁酸下痢の治療又は予防における使用のための、本明細書において開示の製剤に関する。特に、本発明は、IBAT阻害剤の経口投与を含む、アラジール症候群(ALGS)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、自己免疫性肝炎、胆汁うっ滞性掻痒症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療又は予防における使用のための、本明細書において開示の製剤に関する。
【0098】
別の一実施形態において、本発明は、こうした治療又は予防を必要とする哺乳類に対して、治療的に有効な量の本明細書において開示の製剤を投与することを含む、IBAT阻害剤の経口投与を含む肝疾患の治療時の胆汁酸下痢の治療又は予防のための方法に関する。特に、本発明は、肝疾患がアラジール症候群(ALGS)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、自己免疫性肝炎、胆汁うっ滞性掻痒症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、下痢の治療又は予防のためのこうした方法に関する。
【0099】
本明細書において定義の肝疾患は、肝臓及びそれに連結する臓器、例えば膵臓、門脈、肝実質、肝内胆管系、肝外胆管系、及び胆嚢等、における何らかの胆汁酸依存性疾患である。肝疾患には、肝臓の遺伝性代謝障害;先天性胆汁酸合成異常;先天性胆管異常;胆道閉鎖症;新生児肝炎;新生児胆汁うっ滞;遺伝性形態の胆汁うっ滞;脳腱黄色腫症;BA合成の二次欠損;ツェルベーガー症候群;嚢胞性線維症(肝臓における症状);α1-アンチトリプシン欠損症;アラジール症候群(ALGS);バイラー症候群;胆汁酸(BA)合成の一次欠損;PFIC-1、PFIC-2、PFIC-3及び非特定PFICを含む、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC);BRIC1、BRIC2及び非特定BRICを含む、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC);自己免疫性肝炎;原発性胆汁性肝硬変(PBC);肝線維症;非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);門脈圧亢進症;一般的な胆汁うっ滞;妊娠中の黄疸;薬剤起因性黄疸;肝内胆汁うっ滞症;肝外肝内胆汁うっ滞症;原発性硬化性胆管炎(PSC);胆石及び総胆管結石;胆管系の閉塞を引き起こす悪性腫瘍;胆汁うっ滞又は黄疸に起因する掻痒症;膵炎;進行性胆汁うっ滞症につながる慢性自己免疫性肝疾患;脂肪肝;アルコール性肝炎;急性脂肪肝;妊娠性脂肪肝;薬剤誘発肝炎;鉄過剰症;肝線維症;肝硬変;アミロイドーシス;ウイルス性肝炎;並びに肝臓、胆道系及び膵臓の腫瘍及び新生物に起因する胆汁うっ滞に関連する問題、が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
脂肪酸代謝異常及びグルコース利用異常には、高コレステロール血症、脂質異常症、メタボリックシンドローム、肥満症、脂肪酸代謝異常、グルコース利用異常、インスリン抵抗性が関与する疾患、及び1型及び2型糖尿病が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
IBAT阻害剤は、別の名称で呼ばれることも多い。本明細書において使用される用語「IBAT阻害剤」は、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)、胆汁酸輸送体(BAT)阻害剤、回腸ナトリウム/胆汁酸共輸送体系阻害剤、頂端側ナトリウム-胆汁酸共輸送体阻害剤、胆汁酸再吸収阻害剤(BARI)、及び胆汁酸ナトリウム輸送体(SBAT)阻害剤として、文献において既知の化合物をもまた包含するものと理解されるべきである。
【0102】
本明細書において開示の胆汁酸封鎖剤製剤と組み合わせて使用できるIBAT阻害剤には、ベンゾチアゼピン、ベンゾチエピン、1,4-ベンゾチアゼピン、1,5-ベンゾチアゼピン及び1,2,5-ベンゾチアゼピンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本明細書において開示の胆汁酸封鎖剤製剤と組み合わせて使用できるIBAT阻害剤の適切な例には、WO 93/16055、WO 94/18183、WO 94/18184、WO 96/05188、WO 96/08484、WO 96/16051、WO 97/33882、WO 98/03818、WO 98/07449、WO 98/40375、WO 99/35135、WO 99/64409、WO 99/64410、WO 00/47568、WO 00/61568、WO 00/38725、WO 00/38726、WO 00/38727、WO 00/38728、WO 00/38729、WO 01/68096、WO 02/32428、WO 03/061663、WO 2004/006899、WO 2007/009655、WO 2007/009656、DE 19825804、EP 864582、EP 489423、EP 549967、EP 573848、EP 624593、EP 624594、EP 624595、EP 624596、EP 0864582、EP 1173205及びEP 1535913に開示された化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
特に適切なIBAT阻害剤は、WO 01/66533、WO 02/50051、WO 03/022286、WO 03/020710、WO 03/022825、WO 03/022830、WO 03/091232、WO 03/106482及びWO 2004/076430に開示されたIBAT阻害剤、特に、
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-(カルボキシメチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N'-((S)-1-カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((R)-1-カルボキシ-2-メチルチオエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((R)-1-カルボキシ-2-メチルチオエチル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシ-2-メチルプロピル)-カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシ-2-(R)-ヒドロキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシブチル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N'-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシエチル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-α-[N-((S)-1-カルボキシ-2-メチルプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン;及び
1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-1'-フェニル-1'-[N'-(カルボキシメチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン
から成る群から選択される化合物、
又は医薬品に許容されるその塩である。
【0105】
他の特に適切な、IBAT阻害剤は、WO 99/32478、WO 00/01687、WO 01/68637、WO 03/022804、WO 2008/058628及びWO 2008/058630に開示されたIBAT阻害剤、特に、
1-[4-[4-[(4R,5R)-3,3-ジブチル-7-(ジメチルアミノ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキシド-1-ベンゾチエピン-5-イル]フェノキシ]ブチル]4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンメタンスルホネート;
1-[[4-[[4-[3,3-ジブチル-7-(ジメチルアミノ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキシド-1-ベンゾチエピン-5-イル]フェノキシ]メチル]フェニル]メチル]-4-アザ-1-アゾニアザビシクロ[2.2.2]オクタンクロリド;
1-[[5-[[3-[(3S,4R,5R)-3-ブチル-7-(ジメチルアミノ)-3-エチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキシド-1-ベンゾチエピン-5-イル]フェニル]アミノ]-5-オキソペンチル]アミノ]-1-ジオキシ-D-グルシトール;及び
カリウム((2R,3R,4S,5R,6R)-4-ベンジルオキシ-6-{3-[3-((3S,4R,5R)-3-ブチル-7-ジメチルアミノ-3-エチル-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]チエピン-5-イル)-フェニル]-ウレイド}-3,5-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルメチル)サルフェート、エタノレート、ハイドレート、
から成る群から選択される化合物である。
【0106】
本発明によるコレスチラミン製剤の有効量は、約100mg以上若しくは同量のコレスチラミン、例えば約250mg、500mg、750mg、1000mg、1250mg、1500mg、1750mg又は2000mg以上若しくは同量のコレスチラミンを含むいかなる量であってもよい。例えば、コレスチラミンの有効量は、100mgから5000mg、例えば、250mgから2500mg、250mgから2000mg、500mgから2500mg、500mgから2000mg、又は750mgから2000mg、であってよい。
【0107】
本発明によるコレスチラミン製剤の単位用量は、200から300mgのコレスチラミン、例えば、220から280mg等のコレスチラミン、240から260mg等のコレスチラミン、を含んでよい。単位用量は好ましくは、約250mgのコレスチラミンを含む。1日用量は、単回用量として又は1、2、3又はそれ以上の単位用量に分割して投与されてよい。
【0108】
本明細書において開示の製剤の投与頻度は、患者に対していかなる有意な有害事象又は毒性をも起こすことなく胆汁酸吸収不良状態を低減するいかなる頻度であってもよい。投与頻度は、1週間に1回又は2回から1日数回まで、例えば1日1回又は1日2回等、変動してよい。投与頻度は更に、治療期間中、一定のままであっても可変であってもよい。
【0109】
治療される病態の重症度、治療期間、並びに治療を受ける患者の年齢、体重、性別、食事及び全身症状等の、幾つかの要因が、特定の適用に使用されるべき製剤の投与頻度及び有効量に影響を与える可能性がある。
【0110】
本発明は、いかなる点においても本発明を限定することがない以下の実施例によって更に例証される。引用された全ての文書及び文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0111】
(実施例1)
顆粒の調製
全ての実験は200gスケールで行われた。乾燥成分(コレスチラミン及びコポビドン;以下の表1の量を参照)をKenwood Patissierの中で1分間混合した。Eudragit(登録商標) RL 30 D(30%水性分散体)が実験に含まれた場合、適切な量の分散体を水で全質量が最大約300gになるよう希釈した。次いで、水、又は希釈Eudragit分散体を、約100gずつ3回に分けて、乾燥成分に添加し、各添加後に3分間、混合した。その後、追加分の純水(60から100g)を添加し、その結果、添加した水の総量はコレスチラミンの量(w/w)の約2.1倍に等しくなった。1分間、混合を継続した後、湿潤塊をステンレススチールトレイに移し、乾燥オーブン中、50℃で一晩、乾燥した。
【0112】
乾燥した材料を、4mmの篩を備え、1000rpm(毎分回転数)で作動しているQuadro Comil U5で粉砕した。顆粒を篩過し、1.0から1.6mmの分別物を回収した。1.6mm超の分別物は粉砕機に戻し、再度粉砕した。
【0113】
摩損度試験は、欧州薬局方第8版、試験2.9.41に記載の装置及び手順を用いて行った。顆粒を秤量前に500μmの篩にかけて、いかなるルースダストをも除去した。結果を以下の表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
コーティング実験(以下の実施例3及び実施例4中のコーティング実験等)は、得られた顆粒が1つ又は複数のコーティング層で被覆されるのに十分なほど安定であることを裏付けた。
【0116】
(実施例2)
コレスチラミン顆粒の崩壊試験
実施例1の顆粒(10g)を、プロペラ撹拌機を用いて300rpmで撹拌しながら、400mLのリン酸緩衝液(50mM、pH6.8)に加える。顆粒が完全に崩壊するまでの時間を測定する。
【0117】
(実施例3)
酵素-制御放出用の製剤A~C
実施例1、エントリー1のコレスチラミン顆粒を、Eudragit(登録商標)FS 30 D及び高アミロース天然トウモロコシデンプンをベースとする結腸放出コーティングにより製剤化した。
【0118】
250mgのコレスチラミンを含む単位用量の顆粒の組成を以下に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
コーティング用に、モノステアリン酸グリセロール(GMS)、ポリソルベート80及びクエン酸トリエチル含有のGMSエマルションをEvonik社の一般説明書に従って調製した。次いでエマルションをEudragit(登録商標)FS 30 D(30%水性分散体)と混合した。Eudragit FS 30 Dコーティング分散体の組成を、乾燥質量に基づき、以下に示す。乾燥質量に基づく濃度は、19.8%(w/w)である。
【0121】
【表3】
【0122】
0.3M NaOH溶液を用いて、分散体のpHを5.5に調整した。分散体を、12.9%のデンプン含有の天然デンプン顆粒、0.1% Kolliphor(登録商標)SLS fine、及び水の懸濁液と混合した。Eudragit(登録商標)分散体は、最終フィルム中のポリマーフィルム対デンプンの比が、Eudragit(登録商標)FS 30 Dフィルム40%に対してデンプンが60%となるようにデンプン懸濁液と混合した。コーティングの組成を、乾燥質量に基づき、以下に示す。濃度は、適用された分散体の乾燥質量に基づいて、15%(w/w)である。
【0123】
【表4】
【0124】
コーティング層を、Huttlin Kugelcoater HKC005を用いて塗布した。最初のバッチサイズは、65gであった。コーティング過程は、吸気口温度47~52℃で行われ、生成物温度は27~29℃となった。コーティングの間に顆粒の適切な流動化を達成するよう、気流を調整した。
【0125】
コーティングは、コレスチラミン顆粒が~50%(製剤A)、~75%(製剤B)又は~100%(製剤C)の質量増を得るように塗布された。コーティング後に、顆粒を40℃で2時間加熱処理した。
【0126】
被覆された顆粒は、カプセル、例えばハードゼラチンカプセル、に包含されてよい。最終製剤の(乾燥質量ベースでの)詳細を以下に示す:
【0127】
【表5】
【0128】
(実施例4)
pH-及び拡散-制御放出用の製剤D~F
実施例1のコレスチラミン顆粒を、ポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)系拡散制御内部コーティング並びに酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース系腸溶性外部コーティングを含む結腸放出コーティングによって製剤化する。
【0129】
3つの製剤を、内部コーティングに、以下のような異なる量のポリ(アクリル酸エチル-co-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリド)を用いて製剤化する:
製剤D:100% Eudragit(登録商標) RL 30 D
製剤E:50% Eudragit(登録商標) RL 30 D+50% Eudragit(登録商標) RS 30 D
製剤F:100% Eudragit(登録商標) RS 30 D
【0130】
250mgのコレスチラミンを含む単位用量の顆粒の組成を以下に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
内部コーティング
モノステアリン酸グリセロール(GMS)、ポリソルベート80及びクエン酸トリエチル含有のGMSエマルションをEvonik社の一般説明書に従って調製する。エマルションをEudragit(登録商標)RL30D/Eudragit(登録商標)RS30D分散体(30%w/w)と混合する。内部コーティングフィルムの組成を、乾燥質量に基づき、以下に示す。濃度は、適用された分散体乾燥質量に基づいて、19.8%(w/w)である。
【0133】
【表7】
【0134】
コーティング層を、Huttlin Kugelcoater HKC005を用いて塗布する;バッチサイズ75g。コーティング過程は、吸気口温度45℃で行われ、生成物温度は27~29℃となる。コーティングの間に顆粒の適切な流動化を達成するよう、気流を調整する。コーティングは、顆粒が10%の質量増を得るように塗布される。コーティング後に、顆粒を40℃で24時間加熱処理する。
【0135】
外部コーティング
7%w/w酢酸コハク酸ヒプロメロース、2.45%w/wクエン酸トリエチル、2.1%w/wタルク、0.21%w/wラウリル硫酸ナトリウム及び88.24%w/w水を<15℃の低温で、オーバーヘッドスターラーを用いて30分間混合することにより、腸溶性コーティングを調製する。外部コーティングフィルムの組成を、乾燥質量に基づき、以下に示す。コーティング液は、コーティング過程の間、15℃未満に維持する。
【0136】
【表8】
【0137】
コーティング層を、Huttlin Kugelcoater HKC005を用いて塗布する;バッチサイズ75g。コーティング過程は、吸気口温度55℃で行われ、生成物温度は32℃となる。コーティングの間に顆粒の適切な流動化を達成するよう、気流を調整する。腸溶性コーティングは、顆粒が40%の質量増(内部コーティング塗布後の被覆された顆粒の質量に基づき)を得るように塗布される。コーティング後に、顆粒を40℃/75%RHで48時間加熱処理する。
【0138】
被覆された顆粒は、カプセル、例えばハードゼラチンカプセル、に包含されてよい。最終製剤の(乾燥質量ベースでの)詳細を以下に示す:
【0139】
【表9】
【0140】
(実施例5)
封鎖アッセイ
製剤A、B及びCの封鎖能を胃及び小腸のpHを模擬した簡便なアッセイにおいて決定した。封鎖は、水溶液中のコール酸量の減少を測定することによって決定した。米国薬局方溶解装置2(パドル)、欧州薬局方2.9.3を用いた。
【0141】
pH5.5における封鎖
250mgコレスチラミンに相当する量の製剤A、B及びCを、500mLのコール酸緩衝溶液(0.192mg/mL)、pH5.5が入った容器に加え、内容物を75rpmで6時間撹拌した。溶液の試料を、種々の時点で採取し、50mm×2.1mm、粒子径1.9μmのThermo Hypersil Goldカラムを用いて、カラム温度60℃、移動相30:70 アセトニトリル:リン酸緩衝液(pH3.0)、流速0.75mL/分で、HPLCによりコール酸の分析を行った。各製剤につき3つの反復用試料を分析し平均値を算出した。
【0142】
pH6.8における封鎖
250mgコレスチラミンに相当する量の製剤A、B及びCを、250mLの0.1M塩酸溶液(pH1)が入った容器に加え、内容物を75rpmで2時間撹拌した。次いで、水酸化カリウム/リン酸カリウム緩衝液中コール酸溶液250mLを容器に加え、pH6.8のコール酸の緩衝された溶液(0.192mg/mL)を得た。1分間混合した後、最初の試料を取り出した。その後pHを確認し、必要に応じて、適切な量の0.1M水酸化カリウム溶液を添加して6.8に調整した。その後溶液を更に6時間、混合した。溶液の試料を種々の時点で採取し、50mm×2.1mm、粒子径1.9μmのThermo Hypersil Goldカラムを用いて、カラム温度60℃、移動相30:70 アセトニトリル:リン酸緩衝液(pH3.0)、流速0.75mL/分で、HPLCによりコール酸の分析を行った。各製剤につき3つの反復用試料を分析し平均値を算出した。
【0143】
製剤A~Cの封鎖プロファイルを図1に示す。5.5というpHは、一部の患者及び健常者で発生することもあるが、十二指腸において通常観察されるpHよりもわずかに低い。このpHでは、全ての製剤に関して、封鎖は制限される(図1A)。pH6.8での封鎖は、回腸内の典型的な条件である。このpHにおいて、製剤Aは、4時間後に49%の封鎖を、製剤Bは34%の封鎖を、製剤Cは25%の封鎖を示した(図1B)。
【0144】
(実施例6)
消化管の模擬条件下での製剤のコレスチラミン製剤の封鎖能のin vitroでの決定
コレスチラミン製剤の封鎖能を、ProDigest社(ベルギー、ゲント)によって開発されたSimulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME(登録商標))を用いて試験する。シミュレーターを、絶食した胃、小腸及び近位結腸の典型的な生理的条件下での、胆汁酸塩を結合する封鎖能を評価するよう適合させる。絶食した胃及び小腸に典型的な液体媒体は、先に、Marzorati他(LWT-Food Sci. Technol. 2015、vol.60、544~551頁)によって記述されている。近位結腸についての液体媒体は、ヒト結腸に典型的な安定な微生物コミュニティを含むSHIME(登録商標)マトリックスを含む。ヒト腸の安定な微生物コミュニティを得るための方法は、Possemiers他(FEMS Microbiol. Ecol. 2004、vol. 49、495~507頁)及びその中の文献によって記述されている。封鎖は、水溶液中の胆汁酸の量の減少を測定することにより決定される。コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)及びデオキシコール酸(DCA)の40:40:20(w/w)混合物が、ヒト胆汁酸の典型的混合物として使用される(Carulli他、Aliment. Pharmacol. Ther. 2000、vol.14、issue supplement s2、14~18頁)。
【0145】
純粋な(非製剤化)コレスチラミンパウダーを添加する比較実験もまた実施する。コレスチラミンを添加しない対照実験を、アッセイで使用される結腸条件下での胆汁酸塩の分解をモニターするために、実施する。
【0146】
各実験は、生物学的変動を明らかにするために、3回ずつ行う。
【0147】
絶食胃
91mgのコレスチラミンに相当する量の製剤A、B及びC、並びに純粋なコレスチラミン(91mg)を、14mLの絶食胃液体媒体(pH1.8)に投与する。消化物を37℃で1時間、インキュベートする。
【0148】
小腸
1時間の胃インキュベーションの後に、胆汁酸塩(46.7mM)の既定の40:40:20混合物を含む5.6mLの膵液(pH 6.8)を添加する。小腸消化物を37℃で2時間、インキュベートし、0、60及び120分後に試料を採取する。
【0149】
近位結腸
2時間の腸インキュベーションの後に、SHIME(登録商標)システムの上行結腸由来の42mLの完全SHIME(登録商標)マトリックス(pH6.0)を添加する。結腸消化物を37℃で24時間、インキュベートし、最初の6時間は、1時間毎に、その後は19時間後及び24時間後に試料を採取する。
【0150】
試料の分析
試料中の遊離胆汁酸の濃度を、HPLCを用いて評価する。試料中のCA、CDCA及びDCAの濃度を算出するために、検量線を用いた。1mLの各試料を5000gで2分間、遠心分離した。500μLの上清をメタノール及びリン酸緩衝液の80:20(v:v)混合物500μLと混合し、激しくボルテックスして、0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、UV-Vis検出器を搭載したHitachi Chromaster HPLCに注入する。3種の胆汁酸塩を、逆相C18カラム(Synergi Hydro-RP、4μm、80Å、250×4.6mm)によって分離する。分離は、移動相としてメタノール及びリン酸緩衝液の80:20(v:v)混合物を用いて、室温、均一濃度条件下で行う。分析は、0.7mL/分で、23分間で行い、胆汁酸を210nmで検出する。注入量は胃及び小腸の試料については20μLに、結腸試料については50μLに設定する。
【0151】
結腸インキュベーションに使用される完全SHIME(登録商標)マトリックスは、ウシ由来の脱水新鮮胆汁酸抽出物であるBD Difco(商標) Oxgall(カタログ番号212820)から生成された(分解)胆汁酸塩を含む。この混合物の正確な組成は未知であるが、結腸試料中には、より多量の遊離胆汁酸塩があることが見込まれうる。したがって、全SHIME(登録商標)マトリックス中に存在する遊離胆汁酸塩の「ベースライン」を考慮に入れるために、バックグラウンド(すなわち、胆汁酸塩混合物無添加のブランク試料)の値を、各試料から減算する。
【0152】
対照試料中の各種胆汁酸の測定濃度は、腸、特に結腸における微生物塩代謝(例えば、脱抱合、脱水素、脱ヒドロキシル化)の効果及び程度を示すことになる。結腸試料におけるCA、CDCA及びDCAの濃度の突然且つ大きな減少は、小腸から結腸インキュベーションへの移行の間に観察されることがある。
【0153】
試験した各試料中の残存胆汁酸のパーセンテージは、相当するインキュベーション時間における試験試料の値の対照試料の値に対する比として算出できる。残存胆汁酸のパーセンテージの時間に対するプロットは、小腸及び結腸インキュベーションの間の、胆汁酸の減少、すなわちコレスチラミン製剤による胆汁酸の封鎖を示すことになる。
図1A
図1B